説明

塗装スプレー缶

【課題】一般大衆ユーザでも手軽に高品質を維持した銀鏡メッキ塗装が可能な塗装スプレー缶。
【解決手段】第一液12と第二液13を充填した可撓性を有する第一袋体3および第二袋体4と、下端を該第一袋体3および第二袋体4に上端を容器本体2上部2cに設けたバルブ手段5にそれぞれ連通した第一連通管6および第二連通管7と、該操作部材8に形成され、該バルブ手段5を介して第一連通管6および第二連通管7に連通する第一噴射ノズル9および第二噴射ノズル10と、第一袋体3および第二袋体4を周囲から加圧する充填剤11とを具備し、バルブ手段5を開操作したときに、充填剤11の圧力により第一液12および第二液13が第一、第二両噴射ノズル9,10から同時に吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀鏡反応を利用した銀鏡塗装(「銀鏡メッキ塗装」ともいう。)に用いられる塗装スプレー缶に関する。
【背景技術】
【0002】
クロムメッキ技術は重金属類である環境負荷物質を多用するため、近年、その代替技術として銀鏡反応を応用して被塗装素材の表面に純銀の皮膜を形成する鏡面処理技術の需要が増大している。これは環境に優しい銀鏡メッキ技術であり、本出願人も非特許文献1に開示されているように、新開発の二頭ガンを使用し、樹脂、金属、竹、陶器類、ゴム等のほとんどの被塗装物に深みと輝きある銀鏡仕上げを工場内で業務として実施し、また、二頭ガンを含む業務用パッケージ器材(銀鏡メッキ塗装システム)およびその溶剤を販売しているところである。
【0003】
しかし、かかる銀鏡メッキ塗装システムは一般の個人ユーザ等には大がかりな設備であり、一般ユーザ等が手軽で簡便に使用することができない。
そこで、一般大衆でも手軽に銀鏡メッキを行えるスプレー缶方式のものの技術開発が要請される。
【0004】
ところで、従来、スプレー缶内部に二つの内容物を収納し、これら内容物を噴射させるスプレー缶に関する技術としては、特許文献1〜特許文献3が、また、内容物を袋体に充填して、袋体外部から圧力をかけて袋体内の内容物を噴射させる技術として特許文献4,特許文献5がそれぞれ公知である。
【非特許文献1】http://mirror-art.jp/index.html
【特許文献1】特開2004−322030号公報
【特許文献2】特開2003−292072号公報
【特許文献3】特開平11−278554号公報
【特許文献4】特開2001−253484号公報
【特許文献5】実開昭63−156987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載のスプレー缶は、第一容器に第二容器を連結部材により上下に連結し、二液をバルブから吐出させる構造を有する技術である。特許文献2のものは、外容器と内容器との二重構造容器に形成したスプレー缶である。特許文献3は2つの容器を横に並列に結合した形態のスプレー缶構造である。
しかしながら、特許文献1〜特許文献3のスプレー缶にあっては、内容物(溶液)を加圧してノズルから噴射させる噴射剤と、内容物とが直接にスプレー缶内で触れるという隔離構造を有していないため、内容物と噴射剤とが混合し、内容物の純度が低下するという問題がある。換言すると、このような形態のスプレー缶を銀鏡メッキ塗装用に用いたとすると、銀鏡メッキの仕上がり時におけるメッキ品質がすこぶる悪いものとなる問題がある。
【0006】
また、上記の特許文献4には、二溶液を噴射する構造のスプレー缶であるが、外容器内の内容物(成分)は噴射剤(噴射ガス)と混合可能な形態であり、したがって重度の低下した内容物が噴射される。しかも、袋体内の内容物(成分)と外容器内の内容物とがバルブで混合された態様で噴射されるため、鏡面メッキ塗装に適さない構造のものである。
また、上記の特許文献5にあっては、容器内に袋体を吊り下げた形態のスプレー缶構造を有するが、二つの内容物(溶液)を噴射する構造ではない。
【0007】
本発明は、上記の技術的課題に鑑みてなされたもので、一般ユーザでも手軽に高品質を維持した銀鏡メッキ塗装が可能な塗装スプレー缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。
(1)すなわち、本発明は塗装スプレー缶であって、耐圧容器本体内部に収納され、第一液と第二液とを充填した可撓性を有する第一袋体および第二袋体と、下端を該第一袋体および第二袋体に上端を前記容器本体上部に設けたバルブ手段にそれぞれ連通した第一連通管および第二連通管と、前記バルブ手段を開閉操作する操作部材と、該操作部材に形成され、該バルブ手段を介して前記第一連通管および第二連通管に連通する第一噴射ノズルおよび第二噴射ノズルと、前記容器本体に充填され、前記第一袋体および第二袋体を周囲から加圧する充填剤とを具備し、前記操作部材により前記バルブ手段を開操作したときに、前記充填剤の圧力により前記第一液および第二液が前記第一連通管および第二連通管を経由して前記第一、第二両噴射ノズルから同時に吐出されることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る塗装スプレー缶では、第一袋体の第一液は、第一連通管、バルブ手段、および第一噴射ノズルで構成される流路を、第二袋体の第二液は、第二連通管、バルブ手段、および第二噴射ノズルで構成される流路を経由して同時に吐出(噴射)されるように構成している。これにより、操作部材を操作することで充填剤の圧力により第一袋体および第二袋体の外部が加圧され、第一液および第二液が同時に第一噴射ノズルおよび第二噴射ノズルから噴射する。
【0010】
これにより、塗装用溶液は第一袋体および第二袋体内に充填されるため、第一、第二両液が充填剤と混ざり合うことを回避でき、一般家庭でも手軽、かつ、簡便に高品質の塗装を実現できるようになる。
【0011】
なお、係る塗装スプレー缶は、銀鏡メッキ塗装だけに限定されるものでなく、一般の塗装溶液等にも応用できるのは勿論である。
【0012】
(2)また、前記容器本体に仕切り部材を設け、該仕切り部材で形成される容器本体の上室に前記第一袋体を、容器本体の下室に前記第二袋体をそれぞれ配置し、さらに、該仕切り部材を貫通して前記第二連通管を配管したことを特徴とする。
【0013】
これによれば、一つの容器本体を仕切り部材により上下二室に仕切ったので、上室に収納される第一袋体をこの仕切り部材で支持することができ、また、下室に収納される第二袋体は容器本体の底部に着座して支持される。このため、スプレー缶全体の構成をコンパクトにでき、手軽に塗装作業を行うことができるようになる。
【0014】
この場合、上室および下室は仕切り部材により独立した密閉空間とした形態にすることも可能であるが、仕切り部材を介して上室と下室とが連通し、充填剤が往来する形態であってもよいのは言うまでもない。
【0015】
(3)また、前記仕切り部材は、前記上室と下室とを連通するように形成されたことを特徴とする。
【0016】
これによれば、充填剤を上室と下室とに個別に充填する必要はなく、単に容器本体内へ充填剤を充填するだけで、第一袋体および第二袋体を同時に外側から加圧することが可能で、コスト安価に塗装スプレー缶を製作できるようになる。
【0017】
(4)また、前記第一液の成分は、硝酸銀溶液またはアンモニア水で、前記第二液の成分はアンモニア水または硝酸銀溶液であることを特徴とする。
係る構成では、第一袋体からは硝酸銀溶液またはアンモニア水が、第二袋体からはアンモニア水または硝酸銀溶液が第一噴射ノズルおよび第二噴射ノズルから同時に噴射可能である。このため、被塗装面に硝酸銀溶液およびアンモニア溶液を吐出することにより、銀鏡反応による銀鏡メッキ塗装が手軽かつ簡便に施すことができるようになる。
【0018】
したがって、従来技術のようなクロムメッキ工法における重金属のような環境負荷物質を使用しないため、人と環境に優しい銀鏡メッキを実現できる。
【0019】
(5)また、前記第一袋体および第二袋体を、ポリエチレンで形成したことを特徴とする。
係る構成により、第一袋体および第二袋体は内部に充填した第一液および第二液に溶けることを回避できる。すなわち、袋体が破損して充填剤が浸入し、硝酸銀溶液やアンモニア溶液と混合する事態を防止でき、したがって、高品質な銀鏡メッキ塗装を得ることができるようになる。
【0020】
(6)また、前記充填剤は、LPガス(液化石油ガス)または圧縮窒素ガスであることを特徴とする。
これにより、上室内の第一袋体および下室内の第二袋体を外部から加圧し、この加圧力により第一液および第二液に圧縮力が効率的に作用するようになり、第一噴射ノズルおよび第二噴射ノズルからの所定の吐出圧で内容物(硝酸銀溶液、アンモニア溶液)を噴射させることができるようになる。
【0021】
(7)また、前記第一連通管および第二連通管を、SUS304(ステンレス)またはポリエチレンで形成したことを特徴とする。
この構成により、第一連通管および第二連通管は硝酸銀溶液、アンモニア溶液、ならびに充填剤に晒されても耐腐食性が高いため、第一、第二連通管の腐食による損傷を良好に回避できるようになり、信頼性ある塗装スプレー缶を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、塗装スプレー缶を手に把持して、自動車用バンパ、ステアリングホィール、ボデー外板等種々の被塗装物に噴射することで、一般ユーザでも手軽、簡便に高品質の銀鏡メッキ塗装が行える塗装スプレー缶を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図5を参照して詳述する。図1は一実施形態に係る塗装スプレー缶の概要を模式的に示した外観図、図2は該塗装スプレー缶の容器本体の内部を正面から透視してみた透視図、図3は図2を右側面から内部を透視してみた透視図、図4は図2に対応する正面縦断面図である。
【0024】
塗装スプレー缶1の概要構成を説明する。塗装スプレー缶1は、耐圧性能を考慮して製作した容器本体2と、容器本体2の内部に収納される第一袋体3および第二袋体4と、容器本体2の上部に設けられるバルブ手段5(図1では、図示を省略)と、第一袋体3とバルブ手段5とを連通する第一連通管6と、第二袋体4とバルブ手段5とを連通する第二連通管7と、バルブ手段5を開閉操作する機能を有する操作部材8と、操作部材8に形成されると共に、上記の第一連通管6および第二連通管7にそれぞれ連通する第一噴射ノズル9および第二噴射ノズル10と、容器本体2の内部空間に充填され、第一袋体3および第二袋体4をその周囲から加圧する充填剤11とで構成される。
【0025】
第一袋体3および第二袋体4には、内容物として第一液12および第二液13(図4,図5参照)が充填されていて、操作部材8を下へ押し込むことにより、バルブ手段5が開作動すると、充填剤11で加圧された第一液12および第二液13は、第一連通管6および第二連通管7からバルブ手段5を経由して第一噴射ノズル9および第二噴射ノズル10から図示されない被塗装物へ吐出できるようになっている。
【0026】
塗装スプレー缶1をより具体的に説明していく。容器本体2はブリキ、スズ−ニッケル系鋼板、アルミニウム、あるいはステンレス等の金属板を用い、横断面円形状の胴部2a、底部2b、および上部2cを有する缶として成形加工により形成される。そして、容器本体2は、その内部空間に充填される充填剤11が外部へ漏洩しないように気密に保持され、かつ、充填剤の圧力に耐え得る耐圧構造に形成される。
【0027】
容器本体2の胴部2a中間には、例えば上記の金属素材と同じ素材で形成された仕切り部材14が固着され、内部空間を上室15と下室16との二分割構造に形成している。この場合、仕切り部材14は、上室15と下室16とが独立した完全密閉空間となるように仕切り、充填剤11が行き来しない形態にしてもよく、また、仕切り部材14に適宜の透過孔を穿って充填剤11が上下両室15,16の間を自由に流通する形態にしてもよい。
第一袋体3は上室15内に収容されて仕切り部材14に着座している。第二袋体4は下室16内に収容されて底部2bに着座している。第一袋体3には、銀鏡メッキ塗装に使用される第一液としての硝酸銀溶液12が、また、第二袋体4には、第二液としてのアンモニア溶液13がそれぞれ充填される。なお、上記とは逆に、第一液をアンモニア溶液とし、第二液を硝酸銀溶液としてもよい。
【0028】
第一、第二両袋体3,4はポエチレン樹脂材を用い、可撓性を有するように薄膜状で内部に液体を収容保持できるように形成される。両袋体3,4はポリエチレン樹脂材で形成されるので、硝酸銀溶液やアンモニア溶液に溶けて破れることがない。これにより、万一、袋体3,4が破れて充填剤が浸入して第一液12や第二液13に混じる事態が生じるのを阻止し、銀鏡メッキの品質低下や銀鏡メッキに支障を来したりしないようにしている。なお、本実施形態では各袋体3,4をポリエチレン樹脂材を使用して形成したが、これ以外の柔軟性と気水密性を具備する合成樹脂材を用いて形成してもよいのは勿論である。
第一袋体3とバルブ手段5との間、および第二袋体4とバルブ手段5との間にはそれぞれ第一連通管6および第二連通管7が設けられる。第二連通管7は第一袋体3に干渉しないように上室15内で屈曲され、仕切り部材14を貫通して下室16へ伸び第二袋体5に結合される。各連通管6,7は好ましくは、SUS304と称される強度の高いステンレス材でなる管を使用するが、ポリエチレン製の管であってもよい。
【0029】
上記の充填剤11としては、LPガス(液化石油ガス)が用いられ、容器本体2内に充填される。これにより、第一、第二両袋体3,4はその周囲から加圧されるので、第一連通管6および第二連通管7内部は、第一液12および第二液13で常時充満する状態が維持されることとなる。
【0030】
次に、バルブ手段5を図4,図5を参照して説明する。該バルブ手段5は容器本体2の上部2c中央に気水密機能を有するパッキン(シール材)17を介してハウジング18を有し、このハウジング18を共通に持つ同一構造の第一バルブ19と、第二バルブ20とが並列に配置される。例えば、第一バルブ19は、第一連通管6に連通する連通孔20aと、ハウジング18の内部を上下に摺動する摺動子21と、摺動子21を常時上方へ付勢するスプリングSとを具備する。
【0031】
摺動子21の外周面には図示はしないが、ハウジング18内周面との間で第一液12を流通可能な上下方向の溝が形成されている。摺動子21の上方には摺動子21と一体に通路23を有するステム22が形成され、該ステム22には通路23とハウジング18内部とを連通する連通孔25が穿たれている。図5に示すスプレー缶の不使用状態では、連通孔25はパッキン17に塞がれ、第一袋体3を大気と連通するのを遮断するが、使用時、操作部材8を下方へ押し込んだときに、連通孔25はハウジング18の内部空間に臨むようになっている。こうして、連通孔25がパッキン17に塞がれるかどうかで第一袋体3が大気に非連通か連通するようにしている。
【0032】
第二バルブ20の構造も、第一バルブ19のそれと同一であるので、第一バルブ19に用いたと同じ符号を付すことで、その詳細構造の説明はここでは割愛することとする。
操作部材8は、第一バルブ19および第二バルブ20のステム22を嵌合することにより支持されると共に、その内部に各ステム22の通路23に連通する二個の噴射通路26が形成される。二個の噴射通路26の出口には第一噴射ノズル9および第二噴射ノズル10が設けられ、ここから第一液12および第二液13が被塗装物へ噴射されるようになっている。
【0033】
こうして、操作部材8をスプリングSのバネ力に抗して押し込むことで、一対のステム22が同時にハウジング18内を下方へ摺動させることができ、第一液12および第二液13を同時に噴射ノズル12,13から外部へ吐出できるようになっている。
【0034】
本実施形態の塗装スプレー缶1の作用を説明する。塗装スプレー缶1により銀鏡塗装を行う場合は、塗装スプレー缶1を手に把持して行う。銀鏡塗装を行わない場合には、図4に示すように、各摺動子21は各スプリングSのバネ力により上方へ付勢され、各連通孔25はパッキン17に塞がれている。このため、第一袋体3および第二袋体4は大気から遮断された状態を維持し、その結果、第一液(例えば、硝酸銀溶液)12および第二液(例えば、アンモニア溶液)は各噴射ノズル9,10から外部へ吐出されることはない。
この状態から操作部材8を下方へ押し込むと、図5に示すように、各ステム22と一体の各摺動子18はスプリングSのバネ力に抗して下方へ移動し、各連通孔25はパッキン17による閉止状態から解脱し、ステム22内の各通路23はハウジング18の内部と連通する。これにより、バルブ手段5は開操作され、第一袋体3および第二袋体4は大気と連通し、その結果、充填材11に加圧された第一液12および第二液13は、第一連通管6および第二連通管7から各連通孔25を軽油して各通路23,各噴射通路26を流動して第一噴射ノズル9および第二噴射ノズル10から被塗装物へ同時に噴射され、銀鏡塗装が行われることとなる。もっとも、充填材11は噴射されることはない。
【0035】
操作部材8を押し込む力を取り除くと、図4に示す状態に、換言すると、各スプリングSのバネ力で摺動子18は上方へ復帰し、各連通孔25は再びパッキン17で閉止される状態になる。このため、第一袋体3および第二袋体4は大気との連通が遮断され、第一液12および第二液13の噴射をカットすることができる。
第一袋体3および第二袋体4は柔軟性かつ可撓性ある素材、すなわちポリエチレンで形成されているので、第一液12および第二液13が減少するに及んで充填材11の加圧作用により容積が小さくなるようにしぼんでいく。したがって、第一連通管6および第二連通管7と、ハウジング18内部には常に第一液12および第二液13が充満する状態が維持される。
【0036】
このように、本実施形態に係る塗装スプレー缶1によれば、一般ユーザでも大がかりな銀鏡メッキシステムを用いることなく、塗装スプレー缶1を片手に把持して、片手で操作部材8を操作するだけの簡単な操作で、手軽で容易かつ簡便に銀鏡メッキ塗装を行うことができ、ひいては一般大衆向け商品として提供できる利点を有する。
【0037】
また、塗装スプレー缶1を構成する各要素、すなわち、各袋体3,4、各連通管6,7、各バルブ19,20、および操作部材8は第一液12,第二液13に溶けない物性を具備した素材で形成しているため、硝酸銀溶液およびアンモニア溶液の純度を低下することがない。この結果、銀鏡メッキ塗装の仕上がりは高品質なものを確保することができる利点がある。
【0038】
また、本塗装スプレー缶1によれば、従来技術のようなクロムメッキ技術とは異なり、重金属のような環境負荷物質を一切使用しないので、環境汚染を惹起する事態を回避できる利点もある。
以上、本発明を上記実施形態により説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明の範囲に含まれるものである。
【0039】
上記実施形態では、銀鏡メッキ塗装に用いる塗装スプレー缶1の場合を例に挙げて説明したが、勿論、これ以外の通常の塗装を行う場合にも適用できるのは言うまでもない。
また、上記実施形態に挙げたバルブ手段5の構造は一例であり、その他構造であってもよいものである。
【0040】
また、上記実施形態では、第一バルブ19および第二バルブ20を共通のハウジング18で結合した態様で形成した場合について説明したが、図6に示すように、各バルブ19,20を切り離して別個に独立した態様に形成することも可能である。
【0041】
また、上記実施形態では、容器本体2の内部を仕切り部材14により上下に二分割し、そこに第一袋体3および第二袋体4を個別に収納した態様で構成したが、この代わりに、容器本体2内部を仕切り部材により左右に分割し、左右の各室にそれぞれ第一袋体および第二袋体を収納する態様に構成してもよい。係る構成によっても、上記実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
また、充填材11としてはLPガスを使用したが、この代わりに、圧縮した窒素ガス、あるいは適宜の不活性ガスを圧縮して充填してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、銀鏡メッキ塗装等に用いられる塗装スプレー缶に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る塗装スプレー缶の概要を模式的に示した外観図である。
【図2】上記塗装スプレー缶の容器本体の内部を正面から透視してみた透視図である。
【図3】図2を右側面から内部を透視してみた透視図である。
【図4】図2に対応する正面縦断面図である。
【図5】銀鏡メッキ塗装を行う状態を説明する図4と同様の正面縦断面図である。
【図6】上記実施形態の変形例における図2と同様の透視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 塗装スプレー缶
2 容器本体
3 第一袋体
4 第二袋体
5 バルブ手段
6 第一連通管
7 第二連通管
8 操作部材
9 第一噴射ノズル
10 第二噴射ノズル
11 充填材
12 第一液
13 第二液
14 仕切り部材
15 上室
16 下室
17 パッキン
18 ハウジング
19 第一バルブ
20 第二バルブ
21 摺動子
22 ステム
23 通路
25 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器本体内部に収納され、第一液と第二液とを充填した可撓性を有する第一袋体および第二袋体と、下端を該第一袋体および第二袋体に上端を前記容器本体上部に設けたバルブ手段にそれぞれ連通した第一連通管および第二連通管と、前記バルブ手段を開閉操作する操作部材と、該操作部材に形成され、該バルブ手段を介して前記第一連通管および第二連通管に連通する第一噴射ノズルおよび第二噴射ノズルと、前記容器本体に充填され、前記第一袋体および第二袋体を周囲から加圧する充填剤とを具備し、前記操作部材により前記バルブ手段を開操作したときに、前記充填剤の圧力により前記第一液および第二液が前記第一連通管および第二連通管を経由して前記第一、第二両噴射ノズルから同時に吐出されることを特徴とする塗装スプレー缶。
【請求項2】
前記容器本体に仕切り部材を設け、該仕切り部材で形成される容器本体の上室に前記第一袋体を、容器本体の下室に前記第二袋体をそれぞれ配置し、さらに、該仕切り部材を貫通して前記第二連通管を配管したことを特徴とする請求項1記載の塗装スプレー缶。
【請求項3】
前記仕切り部材は、前記上室と下室とを連通するように形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の塗装スプレー缶。
【請求項4】
前記第一液の成分は、硝酸銀溶液またはアンモニア水で、前記第二液の成分はアンモニア水または硝酸銀溶液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装スプレー缶。
【請求項5】
前記第一袋体および第二袋体を、ポリエチレンで形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗装スプレー缶。
【請求項6】
前記充填剤は、LPG(液化石油ガス)または圧縮窒素ガスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗装スプレー缶。
【請求項7】
前記第一連通管および第二連通管を、SUS304(ステンレス)またはポリエチレンで形成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の塗装スプレー缶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−23684(P2009−23684A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188345(P2007−188345)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(507243083)
【Fターム(参考)】