説明

塗装建築板及び塗装建築板の塗装状態判定方法

【課題】どの色のインクを噴射するノズルヘッドに噴射不良が発生しているかを、容易に且つ迅速に検知することができ、カラー塗装不良が多発することを防ぐことができる塗装建築板を提供する。
【解決手段】基板1の一方の端縁に係合片2を設けると共に、基板1同士の接続時に他の基板1の係合片2の背面側に係合される受け係合片3を基板1の他方の端縁に突設し、複数種の色のインクを各色毎に異なるノズルベッドから噴射するインクジェットプリンターに基板1を通すことによって、各ノズルヘッドから噴射される複数色のインクで基板1の表面にカラー塗装が施された塗装建築板に関する。このカラー塗装と同時に受け係合片3の表面に、各ノズルヘッドから噴射されるインクが個々に塗装され、各色毎に塗装状態確認用マーク5が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンターでカラー塗装を施した塗装建築板、及びカラー塗装の塗装状態の判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外装材などとして使用される塗装建築板は、窯業系等の基板の表面に塗装を施して作製されている。そして基板に塗装を施すにあたっては、従来からスプレー塗装機、ロールコーター塗装機、フローコーター塗装機などを用いて塗料を塗布することによって行なうのが一般的である。しかしこのようなスプレー、ロールコート、フローコートなどでは、複雑な柄模様に塗装を施すことが難しく、特に外装材のように不規則な凹凸を設けた基板に塗装を施すことは困難である。一方、凸版や凹版などの印刷ロールを用いて塗装することも行なわれているが、この場合には同じ柄模様が繰り返して表れる塗装になって、単調な模様になり易く、また塗装する柄模様を変更する場合には印刷ロールを取り替える必要があって、基板ごとに異なる模様を塗装することはできない。
【0003】
そこで最近、インクジェットプリンターを塗装機として用い、基板を送りながら、このインクジェットプリンターのノズルヘッドからインクを噴射させることによって、基板の表面をインクジェット印刷で塗装することが提案されている(例えば特許文献1等参照)。
【0004】
インクジェットプリンターではノズルヘッドから噴射させたインクで、基板の表面に対して非接触で印刷して塗装を行なうことができるものであり、またノズルヘッドからのインクの噴射を制御することによって、基板の任意の位置に任意の柄模様となるようにインクを噴射することができるものであり、表面に凹凸を有する基板であっても複雑な柄模様で印刷して塗装を行なうことができるものである。
【0005】
ここで、基板1の表面にカラー塗装する場合、図2に示すようなインクジェットプリンター13が用いられている。インクジェットプリンター13についての詳細構成は後述するが、インクジェットプリンター13はノズルヘッド9とノズルヘッド9にインクを供給するインク供給タンク11を備えており、その下方に送りコンベア14が配置してある。ノズルヘッド9はイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクを噴射する4種類のノズルヘッド9y,9c,9m,9kから形成してあり、各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kは送りコンベア14に沿って一列に配列してある。
【0006】
そして、基板1を送りコンベア14で送ってノズルヘッド9y,9c,9m,9kの下を順に通過させ、この際に、制御システムで制御しながら各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10からインクを噴射させ、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクのドットを基板1の表面に塗着させることによって、基板1に塗装を施すことができるものである。このように複数のノズルヘッド9y,9c,9m,9kから噴射される複数の色のインクのドットをマトリクス状に集合させ、集合した各色の混合色として視覚上認識される色を発色させることができるものであり、各色のドットの密度や配置を変えることによって、任意の色を発色させることができ、カラー塗装を行なうことができるものである。
【特許文献1】特開2005−74686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにインクジェットプリンター13の各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kからイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクを噴射させて基板1の表面に塗着させることによって、カラー塗装を行なうことができるが、ノズルヘッド9y,9c,9m,9kの一部のものに、インク詰りなどが生じてインクの噴射不良が発生すると、一部の色のインクが噴出されなかったり、噴出量が不足したりして、設計された正常な塗装色でカラー塗装を行なうことができず、塗装不良が発生することになる。
【0008】
そしてカラー塗装は、複数色のインクのドットをマトリクス状に集合させた混合色で行なわれるため、基板1に施されたカラー塗装の状態を見ても、どの色のインクが噴射不良になっているかを目視で確認して判断することは難しい。特に一部のインクの噴射が完全に停止するのではなく、インクの出が悪くなって噴射量が少ない場合には、カラー塗装の不良状態は微妙であり、どの色のインクに噴射不良が発生しているかの判断は難しい。また、屋内に設置されている塗装ラインは一般に暗いため、カラー塗装の不良状態が微妙であるときには、基板1に施されたカラー塗装の状態を目視で検査しても、カラー塗装不良が見逃されることがあり、このときにはそのまま塗装が継続されてカラー塗装不良が多発するおそれがある。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、どの色のインクを噴射するノズルヘッドに噴射不良が発生しているかを、容易に且つ迅速に検知することができ、カラー塗装不良が多発することを防ぐことができる塗装建築板及び塗装建築板の塗装状態判定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る塗装建築板は、基板1の一方の端縁に係合片2を設けると共に、基板1同士の接続時に他の基板1の係合片2の背面側に係合される受け係合片3を基板1の他方の端縁に突設し、複数種の色のインクを各色毎に異なるノズルベッド9から噴射するインクジェットプリンター13に基板1を通すことによって、各ノズルヘッド9から噴射される複数色のインクで基板1の表面にカラー塗装が施された塗装建築板であって、このカラー塗装と同時に受け係合片3の表面に、各ノズルヘッド9から噴射されるインクが個々に塗装され、各色毎に塗装状態確認用マーク5が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
各色の塗装状態確認用マーク5は、各ノズルヘッド9から噴射されるインクの塗装で単色に形成されているものであり、各色の塗装状態確認用マーク5を視覚観察することによって、どの色のインクを噴射するノズルヘッド9に噴射不良が発生しているかを、容易に且つ迅速に検知することができるものであり、カラー塗装不良の発生を迅速に検知してカラー塗装不良が多発することを防ぐことができるものである。しかも受け係合片3は、塗装建築板を家屋の外壁などに施工するにあたって、基板1同士を接続する際に、他の基板1の係合片2に隠れて見えなくなるものであり、受け係合片3に塗装した塗装状態確認用マーク5で外観を損なうようなことはないものである。
【0012】
また請求項2の発明は、請求項1において、各色の塗装状態確認用マーク5は、インクの色の濃度を変えて濃淡を設けて形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
塗装状態確認用マーク5に濃淡を設けることによって、単色で形成される塗装状態確認用マーク5を視覚観察するにあたって、インクの噴出不良を容易に判断することができるものである。
【0014】
また請求項3の発明は、請求項2において、色の濃度が変わる境界を仕切り線6で仕切って成ることを特徴とするものである。
【0015】
塗装状態確認用マーク5において濃淡の濃度が変わる境界を仕切り線6で仕切ることによって、濃淡の差が明確になり、インクの噴出不良をより容易に判断することができるものである。
【0016】
また本発明の請求項4に係る塗装建築板の塗装状態判定方法は、基板1の表面にインクジェットプリンター13でカラー塗装して請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗装建築板を製造するにあたって、受け係合片3に塗装された塗装状態確認用マーク5に基づいて、各ノズルヘッド13からのインクの噴射状態の良否を判定することを特徴とするものである。
【0017】
各色の塗装状態確認用マーク5を視覚観察することによって、どの色のインクを噴射するノズルヘッド9に噴射不良が発生しているかを、容易に且つ迅速に判定することができるものであり、カラー塗装不良が多発することを防ぐことができるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、各色の塗装状態確認用マーク5は、各ノズルヘッド9から噴射されるインクの塗装で単色に形成されているので、各色の塗装状態確認用マーク5を視覚観察することによって、どの色のインクを噴射するノズルヘッド9に噴射不良が発生しているかを、容易に且つ迅速に検知することができ、カラー塗装不良の発生を迅速に検知してカラー塗装不良が多発することを防ぐことができるものであり、しかも受け係合片3は、塗装建築板を家屋の外壁などに施工するにあたって、基板1同士を接続する際に、他の基板1の係合片2に隠れて見えなくなるものであり、受け係合片3に塗装した塗装状態確認用マーク5で外観を損なうようなことはないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0020】
基板1は例えば窯業系の矩形の板として形成されるものであり、長手側での一方の側端に係合片2が、他方の側端に受け係合片3がそれぞれ全長に亘って一体に突設してある。この基板1から作製される塗装建築板を外壁材などとして家屋の外壁などの下地8に取付施工する場合、複数の基板1を上下あるいは左右に並べて接続するが、図7に示すように、隣合う一方の基板1の受け係合片3の前面側に、他方の基板1の係合片2を係合させて接続を行なうものであり、従って受け係合片3は他の基板1の係合片2の裏側に隠れて外部に露出することがなくなる部分である。
【0021】
次に、この基板1の表面にインクジェットプリンター13で柄模様をカラー塗装する方法について説明する。インクジェットプリンター13は、図2に概略構成を示すように、ノズルヘッド9、ノズルヘッド9にインクを供給するインク供給タンク11、ノズルヘッド9からのインクの噴射を制御する印刷制御システム12などから形成されるものであり、インクジェットプリンター13は基板1を水平姿勢で送る送りコンベア14の上方に配置してある。
【0022】
ノズルヘッド9はインクジェットプリンター13の下端に設けられているものであり、建築板1の送り方向と垂直な方向に長いラインヘッドとして形成してある。ノズルヘッド9の下面には、ノズルヘッド9の長手方向に沿って多数の噴射ノズル10が設けてあり、高密度のdpiで塗装を行なうことができるようにしてある。ノズルヘッド9はイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクを噴出する4種類のノズルヘッド9y,9c,9m,9kから形成してあり、フルカラー印刷によるカラー塗装を行なうことができるようにしてある。インク供給タンク11も同様に4種類のものからなるものであり、イエローのインクを供給するインク供給タンク11yはノズルヘッド9yに、シアンのインクを供給するインク供給タンク11cはノズルヘッド9cに、マゼンタのインクを供給するインク供給タンク11mはノズルヘッド9mに、ブラックのインクを供給するインク供給タンク11kはノズルヘッド9kにそれぞれ接続してある。そして各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kは基板1の送り方向に沿って配列してある。
【0023】
印刷制御システム12は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、印刷データ作成部、印刷制御部、噴射ノズル制御部等を備えて形成してある。印刷データ作成部は、原画をスキャナ等して得た柄模様パターンのデータを入力して保存するものであり、印刷制御部は、塗装を行なう基板1に応じた柄模様パターンのデータを印刷データ作成部から取り出し、この柄模様パターンのデータに基づいて、噴射ノズル制御部に制御信号を出力するものである。また噴射ノズル制御部はノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10に接続してあり、噴射ノズル制御部から入力される制御信号に基づいて各噴射ノズル10を制御するものである。各噴射ノズル10は例えばピエゾ制御方式により噴射を制御されるようになっており、噴射ノズル制御部で各噴射ノズル10を制御することによって、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各インクの噴射と停止を個別に制御して、柄模様パターンに対応したフルカラー印刷による柄模様のカラー塗装を行なうことができるものである。
【0024】
そして、基板1を送りコンベア14で送ってノズルヘッド9y,9c,9m,9kの下を順に通過させ、この際に、印刷制御システム12で上記のように制御しながらノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10からインクを噴射させて、基板1の表面に塗着させることによって、基板1に柄模様のカラー塗装を施すことができるものである。ここで、ノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10からのインクの噴射は、基板1の送り方向の先頭側の端縁がノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10の直下に達したときを基準にして開始されるように、基板1の送りに対して噴射のタイミングを合わせる必要があるが、例えば、基板1の到達をセンサーなどで検知し、このセンサーによる検出信号が印刷制御システム12の噴射ノズル制御部に入力されると、検出信号が入力されてから所定時間後にノズルヘッド9y,9c,9m,9kの各噴射ノズル10からのインクの噴射が開始されるようにして、基板1の送りに対して噴射のタイミングを合わせるようにしてある。
【0025】
上記のように基板1の表面にインクジェットプリンター13でカラー塗装する際に、同時に、図1(a)(b)に示すように、基板1の受け係合片3に塗装状態確認用マーク5を塗装して形成するようにしてある。基板1は受け係合片3を設けた端縁と直交する端縁を先頭にして送りコンベア14でインクジェットプリンター13に送られるものであり、各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kからインクを噴射して基板1の表面にカラー塗装する際に、同時に並行して、各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kから噴射されるインクで塗装状態確認用マーク5を塗装することができるものである。この塗装状態確認用マーク5は、インクジェットプリンター13が備える各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kから噴射される各色のインクを個別に受け係合片3の表面に塗着させることによって、各色のインク毎に独立して形成されるものである。例えば上記のようにノズルヘッド9がイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクを噴出する4種類のノズルヘッド9y,9c,9m,9kから形成されている場合、ノズルヘッド9yから噴射されるイエローのインクで塗装状態確認用マーク5yが、ノズルヘッド9cから噴射されるシアンのインクで塗装状態確認用マーク5cが、ノズルヘッド9mから噴射されるマゼンタのインクで塗装状態確認用マーク5mが、ノズルヘッド9kから噴射されるブラックのインクで塗装状態確認用マーク5kが形成されるものである。
【0026】
ここで、インクジェットプリンター13の全てのノズルヘッド9y,9c,9m,9kからインクが良好に噴射されることによって、基板1の表面に設計された通りの柄模様をカラー塗装することができる。このときには、受け係合片3に形成される各塗装状態確認用マーク5y,5c,5m,5kは、ノズルヘッド9y,9c,9m,9kから良好に噴出されるインクで塗装されているので、全ての塗装状態確認用マーク5y,5c,5m,5kは同じ均一な濃度で形成されている。従って、受け係合片3に塗装された塗装状態確認用マーク5y,5c,5m,5kを目視観察して、全ての塗装状態確認用マーク5y,5c,5m,5kが同じ均一な濃度で形成されていることが確認されれば、全てのノズルヘッド9y,9c,9m,9kからインクが良好に噴出されていると判断することができ、カラー塗装の状態は良好であると判定することができる。
【0027】
一方、インクジェットプリンター13に設けられたノズルヘッド9y,9c,9m,9kのうち、インク詰りなどして一部のノズルヘッド9y,9c,9m,9kにおいてインクの噴出不良が発生すると、設計された柄模様のカラー塗装を行なうことができず、塗装不良が発生する。そしてこのときには、受け係合片3に形成される各塗装状態確認用マーク5y,5c,5m,5kのうち、噴射状態が正常なノズルヘッド9y,9c,9m,9kから噴射されるインクで塗装される塗装状態確認用マーク5y,5c,5m,5kは同じ均一な濃度で形成されるが、噴出不良が発生しているノズルヘッド9y,9c,9m,9kから噴出されるインクで塗装される塗装状態確認用マーク5y,5c,5m,5kは、形成されないか、あるいは濃度が他のものより薄くかすれたものとなる。例えば、ノズルヘッド9c、9m、9kの噴出状態は正常であるが、ノズルヘッド9yに噴出不良が発生すると、塗装状態確認用マーク5c,5m,5kは同じ均一な濃度で形成されるが、ノズルヘッド9yからインクが全く噴射されないときには塗装状態確認用マーク5yは形成されなくなり、またノズルヘッド9yからのインクの噴射量が少ないときには塗装状態確認用マーク5yは濃度が薄くかすれたものとなる。
【0028】
ここで、各塗装状態確認用マーク5y,5c,5m,5kは単色のインクで形成されているので、塗装状態確認用マーク5yが形成されていないときは勿論、塗装状態確認用マーク5yの濃度が薄い場合も、他の塗装状態確認用マーク5c,5m,5kとの濃度の差を容易に見分けることができるものであり、塗装状態確認用マーク5y,5c,5m,5kを目視観察することによって、塗装状態確認用マーク5yの塗装状態に異常があることを直感的に判別することができる。従って、塗装状態確認用マーク5y,5c,5m,5kを目視観察して、塗装状態確認用マーク5yに異常があると判別されると、ノズルヘッド9yにインクの噴出不良があるということを容易に且つ迅速に検知することができるものであり、基板1の表面に施されたカラー塗装の状態を検査するまでもなく、カラー塗装不良が発生していることを容易に且つ迅速に判定することができるものである。従って、このときにはインクジェットプリンター13による塗装を直ちに停止することによって、以後の塗装不良の発生を防ぐことができるものであり、またどのノズルヘッド9y,9c,9m,9kにインクの噴出不良が発生しているかを知ることができるので、インクの噴出不良が発生しているノズルヘッド9y,9c,9m,9kを取り替えたり補修したりすることによって、迅速に塗装を再開することができるものである。
【0029】
図1の実施の形態では塗装状態確認用マーク5は、受け係合片3のうち、インクジェットプリンター13への基板1の送り方向の先端側の端部において、受け係合片3の長手方向と平行で且つ分離した短い直線として形成してある。
【0030】
受け係合片3に設ける塗装状態確認用マーク5の態様はこの図1のものに限定されるものではなく、各種の態様で形成することが可能である。例えば図3(a)は、受け係合片3の長手方向と垂直な分離した直線として形成してある。また図3(b)(c)では、塗装状態確認用マーク5を帯状に密接させた状態で形成してあり、図3(b)は受け係合片3の長手方向と平行に、図3(c)は受け係合片3の長手方向と垂直に、それぞれ形成するようにしてある。さらに図3(d)では、塗装状態確認用マーク5を丸形状で形成するようにしてあり、形状はこのような丸形状の他に、三角形状、四角形状など任意の形状に形成することができ、アルファベット等の文字や数字、記号などで塗装状態確認用マーク5を形成することもできる。
【0031】
上記の図1や図3の実施の形態では、塗装状態確認用マーク5は受け係合片3の端部の一箇所に設けるようにしたが、塗装状態確認用マーク5を設ける位置はどこでもよく、また複数個所に設けてもよく、例えば図4のように受け係合片3の長手方向の両端部と中央部に塗装状態確認用マーク5を設けるようにすることができる。このように受け係合片3の長手方向の複数個所、すなわちインクジェットプリンター13に基板1を送る方向に沿った複数個所に塗装状態確認用マーク5を設けるようにすれば、塗装状態確認用マーク5を設けた各位置において基板1に施されるカラー塗装の状態を判定することができるものある。
【0032】
また、塗装状態確認用マーク5は図5のように受け係合片3の長手方向の全長に設けるようにしてもよい。図5(a)では塗装状態確認用マーク5を直線として、図5(b)では塗装状態確認用マーク5を点線として、図5(c)では塗装状態確認用マーク5を鎖線として形成してあるが、その他任意の形状で塗装状態確認用マーク5を形成することができる。このように受け係合片3の長手方向の全長、すなわちインクジェットプリンター13に基板1を送る方向の全長に沿って塗装状態確認用マーク5を設けるようにすれば、基板1の全長において、基板1に施されるカラー塗装の状態を判定することができるものある。
【0033】
図6は本発明の他の実施の形態を示すものであり、塗装確認用マーク5y,5c,5m,5kを各ノズルヘッド9y,9c,9m,9kから噴射されるイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクで塗装して、帯状に形成するにあたって、インクのドット密度を変えることによって色の濃度を変え、各塗装確認用マーク5y,5c,5m,5kが、濃度の濃い部分と濃度の薄い部分の複数の領域からなるように形成してある。
【0034】
図6(a)の実施の形態では、色の濃度が最も高い高濃度領域Hと、色の濃度が薄い低濃度領域Lと、色の濃度がその中間の中濃度領域Mとから形成するようにしてあり、各塗装確認用マーク5y,5c,5m,5kは、濃度が高い領域から低い領域へと、高濃度領域H、中濃度領域M、低濃度領域Lの順に並べて形成するようにしてある。例えば、高濃度部Hは濃度100%、中濃度部Mは濃度70〜40%、低濃度領域Lは濃度30〜10%というように形成することができる。また、各塗装確認用マーク5y,5c,5m,5kは、濃度が同じ領域同士を隣り合わせにして密接させ、濃度が異なる領域間に隙間を形成するようにしてある。勿論、濃度の段階数や濃度変化の程度はこれらに限定されるものではなく、任意に設定することができるものであり、また濃度の変化も上記のように段階的なものでなく、連続的に徐々に変化させるようにしてもよい。
【0035】
このように、各塗装確認用マーク5y,5c,5m,5kを色の濃淡を設けて形成することによって、塗装確認用マーク5y,5c,5m,5kを視覚検査するときに、濃度の同じ領域同士を複数段階で、例えば高濃度領域H同士、中濃度領域M同士、低濃度領域L同士の三段階で、塗装確認用マーク5y,5c,5m,5kを比較して視覚検査することができるものであり、いずれかの塗装状態確認用マーク5y,5c,5m,5kに塗装状態の異常があれば、それを容易に判断することができ、ノズルヘッド9y,9c,9m,9kのインク噴射不良を容易に発見することができるものである。特にノズルヘッド9y,9c,9m,9kからのインクの噴射量が不足する不良が発生した場合、低濃度領域Lなど濃度の低い領域では塗装がなされないことになり、インクの噴射不良の発生をより容易に発見することができるものである。
【0036】
図6(b)の実施の形態では、各塗装確認用マーク5y,5c,5m,5kの間、及び濃度が変化する境界にそれぞれ仕切り線6を設けて仕切るようにしてある。図の実施の形態では各塗装確認用マーク5y,5c,5m,5kの高濃度領域H、中濃度領域M、低濃度領域Lを仕切り線6で囲んでこれらを仕切るようにしてある。仕切り線6は濃色で形成するのが好ましく、例えばノズルヘッド9kから噴射されるブラックのインク、ノズルヘッド9cから噴射されるシアンのインク、あるいはノズルヘッド9y,9c,9m,9kから噴射されるイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各インクが混合された混合黒色インクで形成することができる。その他の構成は図6(a)のものと同じである。
【0037】
図6(a)の実施の形態のように各塗装確認用マーク5y,5c,5m,5kにおいて濃度の異なる領域が隣接している場合、作業環境の明るさや目視検査する見方によっては、濃度が異なる領域間の差の相違を判別し難い場合があり、特にマゼンタやイエローの単色は濃度の変化の差の判断が難しい場合があるが、このように仕切り線6で仕切ることによって、濃度の異なる領域(高濃度領域H、中濃度領域M、低濃度領域L)を相互に独立させた状態で視認することができ、濃度が異なる領域間の差の相違の判別が容易になるものである。
【0038】
ここで、上記の各実施の形態のように、塗装状態確認用マーク5は受け係合片3に塗装されるが、記述の図7に示すように、基板1にカラー塗装を施して作製される塗装建築板を外壁材などとして家屋の外壁などの下地8に取付施工する場合、隣合う一方の基板1の受け係合片3の前面側に、他方の基板1の係合片2を係合させるので、受け係合片3は他方の基板1の係合片2の裏側に隠れて外部に露出することがなくなる部分である。従って、受け係合片3に塗装される塗装状態確認用マーク5は施工状態では外部に露出しないものであり、塗装状態確認用マーク5で外観を損なうようなことはないものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る塗装建築板の実施の形態の一例を示すものであり、(a)は正面図、(b)は一部の拡大した正面図である。
【図2】同上のインクジェットプリンターによる塗装を示す概略図である。
【図3】同上の塗装建築板の実施の形態の他の一例を示すものであり、(a)乃至(d)はそれぞれ一部の拡大した正面図である。
【図4】同上の塗装建築板の実施の形態の他の一例を示す正面図である。
【図5】同上の塗装建築板の実施の形態の他の一例を示すものであり、(a)乃至(c)はそれぞれ一部の拡大した正面図である。
【図6】同上の塗装建築板の実施の形態の他の一例を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ一部の拡大した正面図である。
【図7】塗装建築板の施工状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 基板
2 係合片
3 受け係合片
5 塗装状態確認用マーク
6 仕切り線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の端縁に係合片を設けると共に、基板同士の接続時に他の基板の係合片の背面側に係合される受け係合片を基板の他方の端縁に突設し、複数種の色のインクを各色毎に異なるノズルベッドから噴射するインクジェットプリンターに基板を通すことによって、各ノズルヘッドから噴射される複数色のインクで基板の表面にカラー塗装が施された塗装建築板であって、このカラー塗装と同時に受け係合片の表面に、各ノズルヘッドから噴射されるインクが個々に塗装され、各色毎に塗装状態確認用マークが形成されていることを特徴とする塗装建築板。
【請求項2】
各色の塗装状態確認用マークは、色の濃度を変えて濃淡を設けて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗装建築板。
【請求項3】
色の濃度が変わる境界を仕切り線で仕切って成ることを特徴とする請求項2に記載の塗装建築板。
【請求項4】
基板の表面にインクジェットプリンターでカラー塗装して請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗装建築板を製造するにあたって、受け係合片に塗装された塗装状態確認用マークに基づいて、各ノズルヘッドからのインクの噴射状態の良否を判定することを特徴とする塗装建築板の塗装状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−80542(P2008−80542A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260403(P2006−260403)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】