説明

塗装用スプレイノズル

【課題】空気を旋回流として噴出するように構成されたものにおいて、塗装パターンの大きさを可変させ塗装範囲を調整する。
【解決手段】塗装用スプレイノズル1は、塗料を円環状に吐出する塗料吐出口9の外側に2層のエア噴出部14,15を備え、これら2層のエア噴出部14,15のうち内側の第1エア噴出部14は、塗料吐出口9から円環状に吐出される塗料の吐出方向に沿って空気を直線状に噴出するように構成され、外側の第2エア噴出部15は、塗料吐出口9から円環状に吐出される塗料の吐出方向に空気を旋回流として噴出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料を円環状に吐出する塗料吐出口を備えた塗装用スプレイノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の塗装用スプレイノズルを備えたものとして、例えば特許文献1に記載の塗装用スプレイ装置がある。
このものは、ノズル本体の中心部に塗装用スプレイノズルの軸方向に延びる塗料通路を有しており、この塗料通路の先端部にほぼ円柱状をなす塗料ガイドを備えている。そして、この塗料ガイドの先端部の外周面と塗料通路の先端部の内周面との間で、円環状のスリット状をなす塗料吐出口を形成している。このような構成の塗装用スプレイ装置において、塗装を行う場合には、塗料通路に塗料が供給され、その塗料が塗料吐出口から円環状に吐出される。さらに、塗料吐出口から吐出された塗料は、塗料吐出口を囲むように環状に設けられた霧化エア噴出口から噴出される霧化エアによって霧化されるようになっている。
【0003】
また、従来のものとして、例えば図10に示す塗装用スプレイノズル101は、中心部の塗料通路102の内部に塗料ガイド103を備えており、この塗料ガイド103の先端部の外周面と塗料通路102の先端部の内周面との間で、円環状のスリット状をなす塗料吐出口104を形成している。そして、この塗装用スプレイノズル101は、塗料通路102に供給される塗料を塗料吐出口104から円環状に吐出するようになっている。
【0004】
また、塗装用スプレイノズル101は、塗料吐出口104の外側に、空気を旋回流として噴出するエア噴出部105を備えている。このエア噴出部105の途中部には、螺旋状の溝部106が設けられており、塗装用スプレイノズル101は、当該螺旋状の溝部106に空気を通すことによって、塗料吐出口104から円環状に吐出される塗料の吐出方向に空気を旋回流として噴出するようになっている。
【0005】
このような構成の塗装用スプレイノズル101において、塗料吐出口104から吐出された塗料は、エア噴出部105から噴出される空気の旋回流によって霧化(微粒化)されるとともに拡散され、塗装パターン(塗料の噴出形状)がほぼ円形となるいわゆる丸パターンにて塗料が噴出されるようになっている。このような塗装用スプレイノズル101は、いわゆる丸吹きタイプと呼ばれている。
【特許文献1】特開2006−263709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、塗装用スプレイノズルにおいては、塗装対象のサイズや使用する塗料の種類などに応じて、塗装パターンの大きさ(上記した丸パターンの直径)を適宜可変させ塗装範囲を調整することが望まれている。しかしながら、上述のような螺旋状の溝部106に空気を通すことによって空気を旋回流として噴出する構成の塗装用スプレイノズル101では、塗装パターンの大きさは、螺旋状の溝部106の設計(溝の傾斜角度など)によって決定されてしまい、任意に可変させることができない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、空気を旋回流として噴出するように構成されたものにおいて、塗装パターンの大きさを可変させることができ塗装範囲を調整することができる塗装用スプレイノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、塗料を円環状に吐出する塗料吐出口を備えた塗装用スプレイノズルにおいて、前記塗料吐出口の外側に2層のエア噴出部を備え、これら2層のエア噴出部のうち内側の第1エア噴出部は、前記塗料吐出口から円環状に吐出される塗料の吐出方向に沿って空気を直線状に噴出するように構成され、外側の第2エア噴出部は、前記塗料吐出口から円環状に吐出される塗料の吐出方向に空気を旋回流として噴出するように構成されていることに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗装用スプレイノズルによれば、塗料を円環状に吐出する塗料吐出口の外側に備えられた2層のエア噴出部のうち、内側の第1エア噴出部から噴出される空気は、塗料吐出口から円環状に吐出される塗料の吐出方向に沿って直線状に噴出されることから、塗料吐出口から吐出された塗料を円形に絞り塗装範囲を狭める作用を有する。一方、外側の第2エア噴出部から噴出される空気は、塗料吐出口から円環状に吐出される塗料の吐出方向に旋回流として噴出されることから、塗料吐出口から吐出された塗料を拡散させ塗装範囲を広げる作用を有する。従って、これら第1エア噴出部及び第2エア噴出部から噴出される空気の噴出量をそれぞれ変更することにより、塗料を円形に整える作用と塗料を拡散させる作用のバランスを調整することができ、これにより、塗装パターンの大きさを可変させることができ塗装範囲を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1ないし図8を参照して説明する。
図1は塗装用スプレイノズル1の縦断側面図、図2は塗装用スプレイノズル1の側面図、図3は塗装用スプレイノズル1を一部破断して示す斜視図、図4は塗装用スプレイノズル1の正面図、図5は塗装用スプレイノズル1の背面図である。塗装用スプレイノズル1は、ノズルベース2と、ノズルコア3と、塗料ガイド4と、第1ノズルキャップ5と、第2ノズルキャップ6と、リテイニングナット7とを備えて構成されている。
【0011】
ノズルベース2は、その後端部2aが、塗装用装置(例えば、図6ないし図8に示す塗装用スプレイ装置21)などに着脱可能に取り付けられる取付部となっている。また、ノズルベース2の前端部には、ノズルコア3が取り付けられる円形の凹部2b、この凹部2bよりも大径であり第1ノズルキャップ5が取り付けられる取付部2c、この取付部2cよりも大径で、且つ、ノズルベース2の後端部2aよりも小径でありリテイニングナット7が取り付けられる取付部2dが設けられている。なお、このノズルベース2は、塗装用スプレイノズル1の装着対象となる装置の種類に応じて、例えば、後述するノズルベース23(図6ないし図8参照)などに適宜交換されるものである。
【0012】
このノズルベース2の後端部2aの中心部には、図5にも示すように、塗装用スプレイノズル1に塗料を供給するための塗料供給口2eが設けられている。また、この塗料供給口2eの周囲(この場合、塗料供給口2eを挟んで対向する2箇所)には、塗装用スプレイノズル1に空気を供給するための第1エア供給口2f及び第2エア供給口2gが設けられている。
【0013】
塗料供給口2eは、塗装用スプレイノズル1の軸方向(図1では左右方向)に延びる塗料供給管路2hを通して、ノズルベース2前端部の凹部2bの中央部に連通されている。また、第1エア供給口2fは、凹部2bに向かって傾斜して延びる第1エア供給管路2iを通して、凹部2b底部の縁部(図1では下端部)に連通されている。また、第2エア供給口2gは、凹部2bの外側の部分において塗装用スプレイノズル1の軸方向に延びる第2エア供給管路2jを通して、ノズルベース2の前端部に連通されている。
【0014】
ノズルコア3は、ノズルベース2の凹部2b内にリング状のパッキン8を介して挿入されている。このノズルコア3の中心部には、塗装用スプレイノズル1の軸方向に延びる塗料通路3aが設けられている。この塗料通路3aは、その先端部側の開口部分が後端部側の開口部分よりも径が小さな小径部3bとなっており、この小径部3bと後端部側の大径部3cとの間に、テーパ面3dを有している。また、ノズルコア3の外周部には、塗装用スプレイノズル1の軸方向に延びる複数のエア通路3e(図1では2つ示す)が設けられている。なお、ノズルコア3の後端側の外周部には、ノズルベース2の凹部2bの周壁部に嵌め込まれたOリングが配設されている。
【0015】
塗料ガイド4は、塗料通路3aの中心部に配置されている。この塗料ガイド4は、前部に短円柱状の径大部4aを有している。また、図3にも示すように、塗料ガイド4は、その径大部4aの後部側の外周部に、周方向に複数(この場合、周方向に等間隔を有する4箇所に4つ)の突部4bを有している。また、塗料ガイド4は、各突部4bの後部に、それぞれ当該突部4bよりもさらに突出するテーパ部4cを有している。
【0016】
この塗料ガイド4は、塗料通路3a内に後方から挿入され、先端部の径大部4aの外周面と塗料通路3aの小径部3bの先端部内周面との間で、円環状のスリット状をなす塗料吐出口9を形成している。従って、塗料吐出口9は、図4にも示すように、塗料ガイド4の周囲において円環状をなしている。
【0017】
また、塗料吐出口9を形成する部分の後部において、塗料ガイド4の4つの突部4bの外周面は、それぞれ塗料通路3aの小径部3bの内周面に当接する。また、各突部4bのテーパ部4cは、それぞれ塗料通路3aのテーパ面3dに当接する。これにより、塗料ガイド4は、前方への抜止めがなされるとともに、塗料通路3aの中心部に固定される。これに伴い、塗料ガイド4の先端部の径大部4aが塗料吐出口9の中心部に配置され、これら径大部4aと小径部3bとの間に形成される塗料吐出口9のスリット幅が極力均等に形成されるようになっている。なお、この場合、塗料ガイド4は、塗料通路3aを通る塗料によって前方へ押圧されるようになっている。また、塗料通路3aを通る塗料は、塗料吐出口9から塗装用スプレイノズル1の前方に向かって円環状に吐出される。
【0018】
第1ノズルキャップ5は、その後端部がテーパ状の開口部5aとなっており、この開口部5a内に上記ノズルコア3が後方から挿入されている。これにより、ノズルコア3が先端部側から第1ノズルキャップ5によって覆われた構成となっている。第1ノズルキャップ5は、その先端部側の開口部分が後端部側の開口部5aよりも径が小さな小径部5bとなっており、この小径部5bの内周面とノズルコア3先端部の外周面との間で、円環状のスリット状をなす第1エア噴出口10を形成している。従って、第1エア噴出口10は、図4にも示すように、塗料吐出口9を囲うように円環状をなしている。
【0019】
この第1ノズルキャップ5の先端部側の外周部には、塗装用スプレイノズル1の軸方向、即ち、塗料吐出口9から円環状に吐出される塗料の吐出方向(図1では左方向)に対して傾斜した螺旋状の溝部5cが形成されている。また、第1ノズルキャップ5の後端部側の外周部には、塗装用スプレイノズル1の軸方向に延びる複数のエア通路5d(図1では2つ示す)が設けられている。
【0020】
第2ノズルキャップ6は、その後端部側がテーパ状の開口部6aとなっており、この開口部6a内に上記第1ノズルキャップ5が後方から挿入されている。これにより、第1ノズルキャップ5が先端部側から第2ノズルキャップ6によって覆われた構成となっている。第2ノズルキャップ6は、その先端部側の開口部分が後端部側の開口部6aよりも径が小さなテーパ状の小径部6bとなっており、この小径部6bの内周面と第1ノズルキャップ5先端部の外周面との間で、円環状のスリット状をなす第2エア噴出口11を形成している。従って、第2エア噴出口11は、図4にも示すように、第1エア噴出口10及び塗料吐出口9を囲うように円環状をなしている。また、第2ノズルキャップ6の開口部6aの平坦な内周面に、第1ノズルキャップ5の螺旋状の溝部5cを構成する突部5eの外周面が当接し、これにより、螺旋状エアスリット12が形成されている。
【0021】
リテイニングナット7は、ほぼ円筒状をなしており、その後端部側の大径部7aがノズルベース2の取付部2dの外周部に嵌合し、その前端部側の小径部7bが第2ノズルキャップ6の後端部側の環状突部6cに係合している。これにより、リテイニングナット7は、ノズルベース2との間において、ノズルコア3と第1ノズルキャップ5と第2ノズルキャップ6とを連結状態に保持している。
【0022】
このように構成された塗装用スプレイノズル1には、塗料供給口2eと塗料供給管路2hと塗料通路3aと塗料吐出口9とによって塗料噴出部13が形成されている。また、第1エア供給口2fと第1エア供給管路2iとエア通路3eと第1エア噴出口10とによって第1エア噴出部14が形成されている。また、第2エア供給口2gと第2エア供給管路2jとエア通路5dと螺旋状エアスリット12と第2エア噴出口11とによって第2エア噴出部15が形成されている。即ち、第2エア噴出部15は、内部(途中部)に、塗料吐出口9から円環状に吐出される塗料の吐出方向に対して傾斜した螺旋状の溝部5cを有した構成となっている。
【0023】
このような構成の塗装用スプレイノズル1は、例えば自動ガンなどからなる塗装用スプレイ装置21(図6ないし図8参照)のノズル取付部22に装着して使用する。ここで、塗装用スプレイ装置21の構成について説明する。図6ないし図8は、それぞれ、塗装用スプレイノズル1を装着した塗装用スプレイ装置21の異なる断面を示す図である。
【0024】
図6ないし図8に示すノズルベース23は、上述のノズルベース2に代わるものであり、塗装用スプレイ装置21のノズル取付部22の先端部に備えられている。このノズルベース23は、ノズル取付部22の外郭を構成するカバー部材24の内部において、後端部側の取付部本体25と一体的に収容されている。
【0025】
図6に示すように、ノズルベース23は、中心部に塗料供給口23eを有しているとともに、この塗料供給口23eの周囲に第1エア供給口23f及び第2エア供給口23gを有している。これら第1エア供給口23f及び第2エア供給口23gは、塗装用スプレイ装置21の取付部本体25に設けられた第1エア供給路26及び第2エア供給路27にそれぞれ接続されている。これら第1エア供給路26及び第2エア供給路27は、取付部本体25内を軸方向(前後方向)に延びており、取付部本体25の後端部において第1エア供給用ジョイント28及び第2エア供給用ジョイント29に接続されている。
【0026】
これら第1エア供給用ジョイント28及び第2エア供給用ジョイント29は、それぞれ第1エアバルブ21a及び第2エアバルブ21bを介して、例えばエアポンプを備えてなるエア供給源(図示せず)に接続されている。
【0027】
また、図7に示すように、ノズルベース23の塗料供給口23eの側部には、取付部本体25内を軸方向(前後方向)に延びる塗料供給路30が接続されている。図示はしないが、この塗料供給路30は、塗料用バルブを介して塗料供給源(例えば塗料タンク)に接続されている。塗料供給口23e内部には、ピストン31が軸方向(前後方向)に移動可能に配設されている。このピストン31は、その前端側に軸方向(図では左方)に延びるニードル32を備えているとともに、後端側のばね33によって塗装用スプレイノズル1側(図では先端側)に付勢されている。ニードル32は、その前端部がテーパ状に形成されており、塗料供給口23e内をピストン31とともに軸方向に沿って往復移動するようになっている。塗料供給口23eの前端部に設けられた弁口34は、ニードル32の往復移動に伴い、当該ニードル32の前端部が当接,離間することによって開放,閉塞されるようになっている。
【0028】
また、図8に示すように、ノズルベース23の塗料供給口23eの側部(上記ピストン31に対向する部分)には、取付部本体25内を軸方向(前後方向)に延びるパイロットエア供給路35が接続されている。このパイロットエア供給路35は、取付部本体25の後端部においてパイロットエア供給用ジョイント36に接続されている。このパイロットエア供給用ジョイント36は、パイロットエアバルブ21c(図6参照)を介して、例えばエアポンプを備えてなるエア供給源(図示せず)に接続されている。
【0029】
パイロットエアバルブ21cが開かれて、パイロットエア供給路35を介して塗料供給口23e内に圧縮空気が供給されると、圧縮空気の圧力によってピストン31がニードル32とともに後方に移動し、弁口34が開放される。一方、パイロットエアバルブ21cが閉じられて、塗料供給口23e内に圧縮空気が供給されなくなると、ばね33の付勢力によってピストン31がニードル32とともに前方に移動し、弁口34が閉塞される。
【0030】
また、ノズルベース23の塗料供給口23eの側部(上記ニードル32に対向する部分)には、取付部本体25内を軸方向(前後方向)に延びる塗料排出路37が接続されている。この塗料排出路37は、ニードル32の周囲に設けられたパッキン部38が損傷等した場合に、塗料供給口23eから漏れ出す塗料を排出するためのものである。
【0031】
このように塗装用スプレイノズル1を装着した塗装用スプレイ装置21を用いて塗装を行う場合には、塗装用スプレイ装置21から塗装用スプレイノズル1の塗料噴出部13に塗料(例えば、水系塗料、メタリック系塗料、溶剤系塗料など)が供給され、その塗料が塗料吐出口9から塗装用スプレイノズル1の前方に向かって円環状に、且つ、薄膜状(フィルム状)の筒状に吐出される。
【0032】
これとともに、塗装用スプレイ装置21から塗装用スプレイノズル1の第1エア噴出部14に圧縮空気が供給され、その空気が第1エア噴出口10から噴出される。この場合、第1エア噴出口10からの空気は、塗料吐出口9から塗装用スプレイノズル1の前方に向かって円環状に吐出される塗料の吐出方向に沿って直線状に噴出される。
【0033】
また、塗装用スプレイ装置21から塗装用スプレイノズル1の第2エア噴出部15に圧縮空気が供給され、その空気が第2エア噴出口11から噴出される。この場合、第2エア噴出口11からの空気は、螺旋状の溝部5c(螺旋状エアスリット12)を通過することによって、塗料吐出口9から塗装用スプレイノズル1の前方に向かって円環状に吐出される塗料の吐出方向に対して旋回流として噴出される。
【0034】
ここで、第1エア噴出口10からの直線状に噴出する空気は、塗料吐出口9から吐出された塗料を円形に絞り塗装範囲を狭める作用を有する。一方、第2エア噴出口11から旋回流として噴出する空気は、塗料吐出口9から吐出された塗料を拡散させ塗装範囲を広げる作用を有する。従って、塗料吐出口9から吐出された塗料は、霧化(微粒化)された状態で、塗装パターン(塗料の噴出形状)がほぼ円形に整えられつつも僅かに拡散した丸パターンにて噴出されるようになる。
【0035】
また、この場合、第1エア噴出口10からの空気噴出量と第2エア噴出口11からの空気噴出量は、塗装用スプレイ装置21の第1エアバルブ21a及び第2エアバルブ21bの開閉を制御して圧縮空気の供給量をそれぞれ調整することによって、制御可能に構成されている。
【0036】
即ち、第1エアバルブ21a及び第2エアバルブ21bを何れも全開した場合(第1エアバルブ21a:ON,第2エアバルブ21b:ON)、第1エア噴出口10から空気が直線状に噴出されるとともに、第2エア噴出口11から空気が旋回流として噴出される。従って、上記したような円形に整えられつつも僅かに拡散した丸パターンにて塗料が噴出される。
【0037】
そして、第1エアバルブ21aの開度を小さくすると、第1エア噴出口10から直線状に噴出する空気噴出量が第2エア噴出口11から旋回流として噴出する空気噴出量よりも小さくなる。従って、塗料を円形に整える作用よりも塗料を拡散させる作用の方が大きくなり、塗料吐出口9から吐出された塗料は、拡散した若干大きめの丸パターンにて噴出されるようになる。
【0038】
一方、第2エアバルブ21bの開度を小さくすると、第1エア噴出口10から直線状に噴出する空気噴出量よりも第2エア噴出口11から旋回流として噴出する空気噴出量が小さくなる。従って、塗料を拡散させる作用よりも塗料を円形に整える作用の方が大きくなり、塗料吐出口9から吐出された塗料は、円形に絞られた若干小さめの丸パターンにて噴出されるようになる。
【0039】
また、第1エアバルブ21aを全閉すると(第1エアバルブ21a:OFF)、第1エア噴出口10から直線状に噴出する空気がなくなり、第2エア噴出口11から旋回流として噴出する空気のみが塗料吐出口9から吐出された塗料に直接接触するようになる。従って、塗料吐出口9から吐出された塗料は、塗料を拡散させる作用のみを受けることによって、拡散された大きな丸パターンにて噴出されるようになる。
【0040】
一方、第2エアバルブ21bを全閉すると(第2エアバルブ21b:OFF)、第2エア噴出口11から旋回流として噴出する空気がなくなり、第1エア噴出口10から直線状に噴出する空気のみが塗料吐出口9から吐出された塗料に接触するようになる。従って、塗料吐出口9から吐出された塗料は、塗料を円形に絞る作用のみを受けることによって、絞られた小さな丸パターンにて噴出されるようになる。
【0041】
このように、第1エアバルブ21a及び第2エアバルブ21bの開閉を制御することにより、塗料吐出口9から噴出される塗料の丸パターンの大きさ(直径)を調整することができる。また、第1エアバルブ21aを全閉した状態と第2エアバルブ21bを全閉した状態とを選択的に切り替える制御を行うことによって、大小2つのサイズの丸パターンを選択可能とすることができる。なお、特に第1エアバルブ21aを全閉してしまうと、塗料吐出口9から吐出された塗料が、第1エア噴出口10から塗装用スプレイノズル1内部に入り込むおそれがある。従って、第1エアバルブ21aは全閉とせず、第1エア噴出口10から僅かでも空気を噴出させることが望ましい。
【0042】
以上に説明したように本実施形態によれば、塗装用スプレイノズル1は、塗料吐出口9の外側に、2層のエア噴出部14,15を備えており、これら2層のエア噴出部14,15のうち内側の第1エア噴出部14は、塗料吐出口9から前方に向かって円環状に吐出される塗料の吐出方向に沿って空気を直線状に噴出するように構成され、外側の第2エア噴出部15は、塗料吐出口9から前方に向かって円環状に吐出される塗料の吐出方向に空気を旋回流として噴出するように構成されている。
【0043】
従って、これら第1エア噴出部14及び第2エア噴出部15から噴出される空気の噴出量をそれぞれ変更することにより、空気の直線流による塗料を円形に整える作用と、空気の旋回流による塗料を拡散させる作用とのバランスを調整することができ、これにより、塗装パターンの大きさを可変させることができ塗装範囲を調整することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図9を参照しながら説明する。上述の第1の実施形態では、第2エア噴出部15の内部に、塗料吐出口9から円環状に吐出される塗料の吐出方向に対して傾斜した螺旋状の溝部5cを備えた構成を示した。これに代わり、本実施形態では、第2エア噴出部42の先端部に、塗料吐出口9から円環状に吐出される塗料の吐出方向に対して傾斜した通気路41cを備えた構成を示す。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0045】
図9に示すように、上述の第2ノズルキャップ6に代わる第2ノズルキャップ41は、その先端部が平面部41aとなっており、この平面部41aの中央部に円形の開口部41bを有している。この開口部41bの内周面は、第1ノズルキャップ5の先端部の外周面に当接している。そして、第2エア噴出部15に代わる第2エア噴出部42は、第2ノズルキャップ41の平面部41aに、複数(この場合、第1エア噴出口10の周方向に沿って等間隔を有する5箇所に5つ)の通気路41cを有している。即ち、詳しい図示はしないが、第2エア供給口2gと第2エア供給管路2jとエア通路5dと螺旋状エアスリット12と通気路41cとによって第2エア噴出部42が形成されている。
【0046】
第2エア噴出部42が先端部に有する通気路41cは、それぞれ、円環状の塗料吐出口9及び第1エア噴出口10の周方向に沿って円弧状に湾曲して延びている。また、これら通気路41cは、塗料吐出口9から塗装用スプレイノズル1の前方に向かって円環状に吐出される塗料の吐出方向に対して傾斜している。そして、第2エア噴出口11の通気路41cは、第1エア噴出口10及び塗料吐出口9を断続的に囲うように環状に配置されている。
【0047】
このような構成の塗装用スプレイノズル1を用いて塗装を行う場合において、塗装用スプレイ装置21から第2エア噴出部42に供給された圧縮空気は、通気路41cを通過することによって、塗料吐出口9から塗装用スプレイノズル1の前方に向かって円環状に吐出される塗料の吐出方向に旋回流として噴出される。
【0048】
そして、本実施形態においても、第1エア噴出部14及び第2エア噴出部42から噴出される空気の噴出量をそれぞれ変更することにより、空気の直線流による塗料を円形に整える作用と、空気の旋回流による塗料を拡散させる作用とのバランスを調整することができ、これにより、塗装パターンの大きさを可変させることができ塗装範囲を調整することができる。
【0049】
なお、通気路41cは、第1エア噴出口10の周方向に沿って不等間隔を有して配置するようにしてもよい。また、通気路41cの数は5つに限られるものではなく、適宜変更して実施することができる。従って、これよりも多い数(例えば、第1エア噴出口10の周囲に6つ)で構成してもよいし、これよりも少ない数(例えば、第1エア噴出口10の上下左右に4つ、第1エア噴出口10を挟む左右2箇所に2つ、第1エア噴出口10の周囲に1つ)で構成してもよい。
また、通気路41cは、円弧状のものに限られるものではなく、例えば、第1エア噴出口10の接線方向に延びる直線状の通気路(キリ孔)で構成してもよい。
【0050】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上述の各実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。
【0051】
螺旋状の溝部5cの旋回方向、旋回角度、溝の数、溝の間隔などは適宜変更して実施することができる。
本発明の塗装用スプレイノズル1は、上述したような塗装用スプレイ装置21に限らず、例えば、使用者がトリガを操作することによって塗料を噴出する構成の塗装用スプレイガンのノズルとしても使用することができる。要するに、本発明は、塗料吐出口から噴出する塗料を旋回流に乗せて塗装対象に噴き付ける構成の塗装用のノズル全般に適用することができる。
【0052】
塗料ガイド4は、塗料通路3a内において、例えばコイル状のばね部を有する針金状の支持部材によって支持され、ばね部の弾性力によって前方に押圧されるように構成してもよい。
【0053】
本発明は、塗料を円環状に吐出する塗料吐出口を備えた塗装用スプレイノズルに主として適用するものであるが、これに限られるものではなく、例えば、楕円環状の塗料吐出口を備えた塗装用スプレイノズルや、円環状に吐出した塗料に上下方向からパターンエア(塗装パターンを成形するための空気流)を噴出する構成の塗装用スプレイノズルなどにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであり、塗装用スプレイノズルの縦断側面図
【図2】塗装用スプレイノズルの側面図
【図3】塗装用スプレイノズルの内部構成を示す破断斜視図
【図4】塗装用スプレイノズルの正面図
【図5】塗装用スプレイノズルの背面図
【図6】塗装用スプレイノズルを装着した塗装用スプレイ装置の断面図
【図7】異なる断面を示す図6相当図
【図8】異なる断面を示す図6相当図
【図9】本発明の第2の実施形態に係る図4相当図
【図10】従来の塗装用スプレイノズルを示す図1相当図
【符号の説明】
【0055】
図面中、1は塗装用スプレイノズル、5cは螺旋状の溝部、9は塗料吐出口、14は第1エア噴出部、15は第2エア噴出部、41cは通気路、42は第2エア噴出部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を円環状に吐出する塗料吐出口を備えた塗装用スプレイノズルにおいて、
前記塗料吐出口の外側に2層のエア噴出部を備え、
これら2層のエア噴出部のうち内側の第1エア噴出部は、前記塗料吐出口から円環状に吐出される塗料の吐出方向に沿って空気を直線状に噴出するように構成され、外側の第2エア噴出部は、前記塗料吐出口から円環状に吐出される塗料の吐出方向に空気を旋回流として噴出するように構成されていることを特徴とする塗装用スプレイノズル。
【請求項2】
前記第2エア噴出部は、内部に、前記塗料吐出口から円環状に吐出される塗料の吐出方向に対して傾斜した螺旋状の溝部を有しており、当該螺旋状の溝部に空気を通すことによって、空気を旋回流として噴出することを特徴とする請求項1記載の塗装用スプレイノズル。
【請求項3】
前記第2エア噴出部は、先端部に、前記塗料吐出口から円環状に吐出される塗料の吐出方向に対して傾斜した通気路を有しており、当該通気路に空気を通すことによって、空気を旋回流として噴出することを特徴とする請求項1記載の塗装用スプレイノズル。
【請求項4】
前記第1エア噴出部からの空気噴出量と前記第2エア噴出部からの空気噴出量が制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の塗装用スプレイノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−149048(P2010−149048A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329937(P2008−329937)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】