説明

塩基性セラミックス含有スラリー組成物

【課題】分散性向上と帯電防止性向上の両立が可能な塩基性セラミックス含有スラリー組成物の提供。
【解決手段】一般式(1)構成単位aと一般式(2)構成単位bと一般式(3)構成単位cを含有するアニオン性高分子分散剤(A)、少なくとも1種のカチオンを有する帯電防止剤(B)、非水系溶媒、塩基性セラミックス材料、バインダー樹脂を含有するスラリー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性セラミックス含有スラリー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス成形品は、エレクトロセラミックス部品として高度な電子機器分野にも使用される。このようなセラミックス製電子部品の製造には、セラミックス原料微粉末及び分散剤を含有するスラリー組成物が使用される。とりわけ、電気機器分野で利用されるシート成形法によるセラミックス成形品(電子部品)の製造では、セラミックス原料の微粉化、スラリー組成物中のセラミックス原料微粉末の分散性の向上(すなわち粘度の低下)、及び焼成前のセラミックスシート(グリーンシート)の帯電防止性が要求される。スラリー組成物の粘度が高いとセラミックス成形品の平滑性低下やボイド、クラックなどの欠陥が生じやすくなる。また、セラミックスシートが帯電すると静電気によりくずが付着しやすくなり不良品率が増加し製品精度が低下する。
【0003】
特許文献1は、ポリオキシアルキレン誘導体及びマレイン酸を含むポリカルボン酸系共重合体分散剤と、セラミックス原料粉末とを含むセラミックス製造用スラリー組成物を開示する。また、特許文献2は、アミジニウムカチオンを構成成分とする有機塩酸を含む分散剤を利用したセラミックス製造用スラリー組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−261911号公報
【特許文献2】特開2002−321981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から塩基性セラミックス原料の微粉化にともない、アニオン性高分子分散剤によるセラミックス原料微粉末の分散性の向上は試みられているが、分散性の向上とセラミックスシートの帯電防止性の向上とは両立が困難である。一般に帯電防止効果が優れているアニオン性帯電防止剤は、それ自身が塩基性セラミックス原料に吸着し、ブリードアウトしにくくなるために十分な帯電防止効果が得られない。また、カチオン性帯電防止剤は、セラミックス原料の分散剤として用いられるアニオン性高分子分散剤との相互作用により、同様に、ブリードアウトしにくくなるために十分な帯電防止効果が得られない。また、近年、セラミックスの小型化、高速化、高容量化等のためセラミックスシートの薄膜化が進められているため、分散性及び帯電防止性に優れたセラミックス製造用スラリー組成物が求められている。
【0006】
本発明は、塩基性セラミックス材料の分散性の向上とセラミックシートの帯電防止性の向上の両立が可能な、塩基性セラミックスを含有するスラリー組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明におけるスラリー組成物は、下記一般式(1)で表される構成単位(a)と下記一般式(2)で表される構成単位(b)と下記一般式(3)で表される構成単位(c)とを含有するアニオン性高分子分散剤(A)、イミダゾリニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、及びピロリジニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンを有する帯電防止剤(B)、非水系溶媒、塩基性セラミックス材料、並びにバインダー樹脂を含有するスラリー組成物に関する。
【0008】
【化1】

[前記式(1)及び(2)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は同一又は異なり水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R7は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R8は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、X1は酸素原子又はNHを示し、Mは水素原子又は陽イオンを示し、nは1〜50の数を示す。
前記式(3)中、R9、R10及びR11は同一又は異なり水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、X2は酸素原子又はNHを示し、R12及びR13は炭素数1〜30の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基又はアリール基を示す。]
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塩基性セラミックス材料の分散性の向上とセラミックシートの帯電防止性の向上の両立が可能な、塩基性セラミックスを含有するスラリー組成物の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、一般式(1)で表される構成単位(a)と一般式(2)で表される構成単位(b)と一般式(3)で表される構成単位(c)を含有する共重合体(アニオン性高分子分散剤A)と、所定のカチオン(帯電防止剤B)とを組み合わせれば、塩基性セラミックス含有スラリー組成物の分散性とセラミックシートの帯電防止性の両物性を向上できるという知見に基づく。両物性の向上の両立が可能となるメカニズムの詳細は不明であるが、以下のことが推定される。まず、高分子分散剤(A)の構成単位(a)が主として塩基性セラミックス材料表面へ強く吸着することで、該高分子分散剤が塩基性セラミックス材料表面から脱離することが抑制される。そして、該高分子分散剤の構成単位(c)が主として非水系溶媒中への再溶出を抑制するために、該高分子分散剤が塩基性セラミックス材料表面を被覆することができる。この被覆層(吸着層)における高分子分散剤の構成単位(b)が、主として塩基性セラミックス材料粒子間に強い立体的斥力をもたらすため、塩基性セラミックス材料粒子同士の凝集を抑制するために微分散性が向上する。さらに、帯電防止剤(B)は、分子内π電子の共役によるカチオンの非局在化、及び、環状構造による立体的な相互作用の阻害により、塩基性セラミックス原料に吸着しない。また、帯電防止剤(B)は、アニオン性高分子分散剤との相互作用も小さい。それゆえ、ブリードアウトが容易に起こり、帯電防止性が向上する。但し、これらは推定であって、本発明は、これらメカニズムに限定されない。
【0011】
すなわち、本発明は、一つの態様において塩基性セラミックス材料を含有するスラリー組成物(以下「本発明におけるスラリー組成物」ともいう。)であって、一般式(1)で表される構成単位(a)と一般式(2)で表される構成単位(b)と一般式(3)で表される構成単位(c)とを含有するアニオン性高分子分散剤(A)、イミダゾリニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、及びピロリジニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンを有する帯電防止剤(B)、非水系溶媒、塩基性セラミックス材料、並びにバインダー樹脂を含有するスラリー組成物に関する。本発明におけるスラリー組成物によれば、塩基性セラミックス材料の分散性と本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性の両物性を向上できるという効果が奏され得る。つまり、本発明におけるスラリー組成物は、第一に、非水系溶媒中において塩基性セラミックス材料(粉末)の良好な微分散性を実現できる。すなわち、塩基性セラミックス粒子を一次粒子径の状態又はそれに近い状態に分散できる。また、本発明におけるスラリー組成物は、第二に、セラミックス含有スラリー組成物から得られる焼成前のセラミックス成形品(セラミックスシート)の帯電を良好に防止できる。
【0012】
本明細書においてセラミックス材料の「微分散性」とは、セラミックス材料(粒子)が、一次粒子径の状態又はそれに近い状態で分散することをいう。微分散性が向上することにより、スラリー組成物の粘度が低減し、平滑性が高く、ボイド、クラックなどの欠陥が少ない良好なセラミックス成形品を得ることが可能となる。すなわち、スラリー組成物の粘度が低いほどセラミックス材料の「微分散性」に優れることになる。また、本明細書において「帯電防止性」とは、スラリー組成物を用いてセラミックス材料をシート状に成形して得られる焼成前のセラミックスシート(グリーンシート)の剥離帯電量の程度が低いことをいい、セラミックスシートの剥離帯電量が低いほどセラミックス材料の「帯電防止性」に優れることになる。
【0013】
[構成単位(a)]
高分子分散剤(A)である共重合体における構成単位(a)は、下記一般式(1)で表される構成単位である。構成単位(a)はカルボキシル基又はそれが中和された基を有するものであり、塩基性セラミックス材料表面へ強く吸着することで、該高分子分散剤(共重合体)が塩基性セラミックス材料表面から脱離することを抑制する働きを有すると考えられる。
【0014】
【化2】

[前記一般式(1)において、R1、R2、及びR3は同一又は異なり、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、Mは水素原子又は陽イオンを示す。]
【0015】
構成単位(a)としては、カルボキシル基を有する酸性モノマー(以下、酸性モノマー(a)という)由来の構成単位や、重合後に中和可能な酸性基を付加できるモノマー由来の構成単位などが挙げられる。また、構成単位(a)は、構成単位(b)を形成する非イオン性モノマーと共重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーに由来する構成単位であることが好ましい。構成単位(a)は、重合後にカルボキシル基を付加して得られるものであってもよい。
【0016】
前記酸性モノマー(a)としては、下記一般式(8)で表されるモノマーが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸(塩)、クロトン酸(塩)などが挙げられるが、塩基性セラミックス材料の微分散性向上、及び高分子分散剤への構成単位(a)の導入の容易性の観点からから、(メタ)アクリル酸(塩)が好ましい。
【0017】
【化3】

[前記一般式(8)において、R1、R2、及びR3は同一又は異なり、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、Mは水素原子又は陽イオンが好ましい。]
【0018】
前記一般式(1)及び(8)において、Mが陽イオンである場合、陽イオンとしては、特に制限されないが、一価の陽イオンが挙げられ、具体的には、Li+、Na+、K+など一価の金属イオン、及び、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンなどが挙げられる。電子材料用途では、金属イオンの残存による電気特性への影響からアンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンが好ましい。
【0019】
前記一般式(1)及び(8)において、塩基性セラミックス材料の微分散性向上、及び高分子分散剤への構成単位(a)の導入の容易性の観点から、R1及びR2は水素原子であることが好ましく、R3は水素原子又はメチル基であることが好ましく、Mは水素原子であることが好ましい。
【0020】
また、重合後にカルボキシル基を付加させる方法としては、例えば高分子化合物中に存在する中和可能でない酸性基を中和可能な官能基に変換する方法が挙げられる。この場合、中和可能でない酸性基とは、例えばエステル基やアミド基が挙げられる。これらの中和可能でない酸性基を、例えば、加水分解してカルボキシル基とすることができる。
【0021】
高分子分散剤(A)である共重合体を構成する全構成単位中の構成単位(a)の割合は、塩基性セラミックス材料への吸着率を高くし塩基性セラミックス材料の微分散性を向上する点から、5〜45重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましく、10〜35重量%がさらに好ましい。
【0022】
[構成単位(b)]
高分子分散剤(A)である共重合体における構成単位(b)は、下記一般式(2)で表される構成単位である。構成単位(b)は非イオン性であり、塩基性セラミックス材料粒子間に強い立体的斥力をもたらし、無機顔料粒子同士の凝集を抑制すると考えられる。
【0023】
【化4】

[前記一般式(2)において、R4、R5及びR6は同一又は異なり、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R7は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R8は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、X1は酸素原子又はNHを示し、Mは水素原子又は陽イオンを示し、nは1〜50の数を示す。]
【0024】
構成単位(b)としては、非イオン性モノマー(以下、非イオン性モノマー(b)ともいう)由来の構成単位や、重合後に非イオン性基を導入できるモノマー由来の構成単位等が挙げられる。非イオン性基としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基等が挙げられる。
【0025】
非イオン性モノマー(b)としては、例えばメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、エトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、3−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0026】
これらの中では、非イオン性モノマー(b)としては、塩基性セラミックス材料の微分散性向上及び分散安定性の観点から、下記一般式(9)で表される非イオン性モノマーが好ましく、ポリエチレンオキシド鎖の重合度が1〜50であるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0027】
【化5】

[前記式(9)において、R4、R5及びR6は同一又は異なり、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、R7は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が好ましく、R8は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、X1は酸素原子又はNHが好ましく、nは1〜50の数が好ましい。]
【0028】
前記一般式(2)及び(9)において、塩基性セラミックス材料の微分散性向上、及び高分子分散剤への構成単位(b)の導入の容易性の観点から、R4及びR5は水素原子が好ましく、R7はエチレン基又はプロピレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基であり、X1は酸素原子が好ましい。また、前記一般式(2)及び(9)において、塩基性セラミックス材料の微分散性向上、及び無機顔料用高分子分散剤への構成単位(b)の導入の容易性の観点から、nは1〜50の数が好ましく、1〜40がより好ましく、1〜30がさらに好ましく、3〜30がさらにより好ましく、5〜30がさらにより好ましい。n個のR7は、同一でも異なっていても良い。
【0029】
高分子分散剤(A)である共重合体を構成する全構成単位中の構成単位(b)の割合は、塩基性セラミックス材料の微分散性を高くする点から、50〜90重量%が好ましく、55〜85重量%がより好ましく、55〜80重量%がさらに好ましい。
【0030】
[構成単位(c)]
高分子分散剤(A)である共重合体における構成単位(c)は、下記一般式(3)で表される構成単位である。構成単位(c)は疎水性であり、塩基性セラミックス材料が非水系溶媒中へ再溶出することを抑制していると考えられる。
【0031】
【化6】

[前記一般式(3)において、R9、R10、及びR11は同一又は異なり、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、X2は酸素原子又はNHを示し、R12及びR13は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基又はアリール基を示す。]
【0032】
構成単位(c)としては、下記一般式(10)で表される疎水性モノマー(c)に由来する構成単位が挙げられる。
【0033】
【化7】

[前記式(10)式中、R9、R10、及びR11は同一又は異なり、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、X2は酸素原子又はNHが好ましく、R12及びR13は炭素数1〜30の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基又はアリール基が好ましい。]
【0034】
前記一般式(3)及び(10)の疎水性モノマー(c)において、塩基性セラミックス材料の微分散性向上、及び高分子分散剤への構成単位(c)の導入の容易性の観点から、R9及びR10は水素原子が好ましく、R11は水素原子又はメチル基が好ましく、R12は炭素数1〜22のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。R12は、具体的にはメチル基、エチル基、(ノルマル又はイソ)プロピル基、ブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基等が挙げられ、塩基性セラミックス材料の微分散性向上の観点から、メチル基、エチル基、(ノルマル又はイソ)プロピル基が好ましく、メチル基がより好ましい。同様の点から、X2は酸素原子が好ましく、R13は炭素数1〜22のアルキル基又はフェニル基が好ましく、塩基性セラミックス材料の微分散性向上の観点から、フェニル基がより好ましい。
【0035】
前記一般式(10)の疎水性モノマー(c)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどのエステル化合物、ブチル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミドなどのアミド化合物、1−デセン、1−オクタデセンなどのα―オレフィン及びスチレンが挙げられる。中でも、塩基性セラミックス材料の分散性及び分散安定性の観点から、メチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、スチレンが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、スチレンがより好ましい。
【0036】
また、塩基性セラミックス材料の微分散性向上の観点から、全構成単位中の構成単位(c)の含有量は、非イオン性構成単位(b)に対する重量比(構成単位(c)/構成単位(b))で0.05〜0.7が好ましく、0.1〜0.6がより好ましく、0.1〜0.5がさらに好ましく、0.15〜0.4がさらにより好ましい。
【0037】
[アニオン性高分子分散剤(A)の調製]
高分子分散剤(A)は、構成単位(a)と構成単位(b)と構成単位(c)とを含有するアニオン性共重合体である。高分子分散剤(A)は、例えば、酸性モノマー(a)、非イオン性モノマー(b)、及び疎水性モノマー(c)を含むモノマー成分を溶液重合法で重合させるなど、公知の方法で得ることができる。本発明の一実施形態において、構成単位(a)の全構成単位中の割合(重量%)は、好ましくは、重合に用いる全モノマー成分における酸性モノマー(a)及び/又は重合後にカルボキシル基を付加できるモノマーの割合(重量%)とみなすことができる。また、構成単位(b)の全構成単位中の割合は、好ましくは、重合に用いる全モノマー成分における非イオン性モノマー(b)及び/又は重合後に非イオン性基を導入できるモノマーの割合(重量%)とみなすことができる。また、構成単位(c)の構成単位(b)に対する重量比(構成単位(c)/構成単位(b))は、好ましくは、重合に用いる全モノマー成分における疎水性モノマー(c)の、非イオン性モノマー(b)及び/又は重合後に非イオン性基を導入できるモノマーに対する重量比とみなすことができる。したがって、本発明は、その他の態様において、本発明の高分子分散剤の製造方法であって、酸性モノマー(a)及び/又は重合後にカルボキシル基を付加できるモノマー、非イオン性モノマー(b)及び/又は重合後に非イオン性基を導入できるモノマー、並びに、疎水性モノマー(c)を、それぞれ、前述した構成単位(a)、(b)及び(c)の含有量で含むモノマー成分を重合させることを含むことを含む製造方法である。
【0038】
溶液重合に用いられる溶媒としては、例えば芳香族系炭化水素(トルエン、キシレン等)、低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン)、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の有機溶媒を使用することができる。溶媒量(重量基準)は、モノマー全量に対し0.5〜10倍量が好ましい。
【0039】
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えばアゾ系重合開始剤、ヒドロ過酸化物類、過酸化ジアルキル類、過酸化ジアシル類、ケトンぺルオキシド類等が挙げられる。重合開始剤量は、モノマー成分全量に対し0.01〜5モル%が好ましく、0.01〜3モル%がより好ましく、0.01〜1モル%がさらに好ましい。重合反応は、窒素気流下、60〜180℃の温度範囲で行うのが好ましく、反応時間は0.5〜20時間が好ましい。
【0040】
重合の際には、さらに重合連鎖移動剤を添加してもよい。重合連鎖移動剤の具体例としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、メルカプトコハク酸等のメルカプタン類;チウラムジスルフィド類;炭化水素類;不飽和環状炭化水素化合物;不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0041】
高分子分散剤(A)において、構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)の配列は、ランダム、ブロック、又はグラフトのいずれでも良い。また、前述の含有量の範囲をすべて満たす範囲で、これら構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。
【0042】
高分子分散剤(A)の重量平均分子量は、塩基性セラミックス材料の微分散性向上の観点から、1000〜20万が好ましく、2000〜20万がより好ましく、1.5万〜20万がさらに好ましく、1.5万〜10万がさらにより好ましく、2万〜10万がさらにより好ましい。また、塩基性セラミックス材料の平均粒径(後述するBET比表面積に基づく平均粒径)が100nm未満の小粒径(例えば、20〜80nm、好ましくは30〜70nm)の場合は、高分子分散剤(A)の重量平均分子量は、高分子分散剤(A)とバインダー樹脂(特にブチラール樹脂)との相互作用によるセラミックス粒子の凝集を抑制し、塩基性セラミックス材料の微分散性を向上する観点から1000〜17000が好ましく、1000以上15000未満がより好ましく、2000以上15000未満がさらに好ましく、2000〜10000がさらにより好ましく、4000〜10000がさらにより好ましく、6000〜8000がさらにより好ましい。なお、重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した値であり、測定条件の詳細は実施例に示す通りである。
【0043】
以上のようにして製造される高分子分散剤(A)は、非水系溶媒における塩基性セラミックス材料の微分散性に優れる。
【0044】
[帯電防止剤(B)]
本発明におけるスラリー組成物は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、イミダゾリニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、及びピロリジニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンを有する帯電防止剤(B)を含有する。
【0045】
イミダゾリニウムカチオンとしては、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0046】
【化8】

[前記式(4)中、R14は水素原子、又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示し、R15は炭素数1〜21のアルキル基を示し、R16、R17は同一又は異なり水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【0047】
前記一般式(4)で表される化合物は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、R14は水酸基を有していてもよい炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、R15は炭素数7〜17のアルキル基が好ましく、R16及びR17は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。
【0048】
前記一般式(4)で表される化合物は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウム、1−エチル−1−ヒドロキシエチル−2−プロピルイミダゾリニウム、1−エチル−1−ヒドロキシエチル−2−ヘプチルイミダゾリニウム、1−エチル−1−ヒドロキシエチル−2−ノニルイミダゾリニウム、1−エチル−1−ヒドロキシエチル−2−ウンデシルイミダゾリニウム、1−エチル−1−ヒドロキシエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリニウムが好ましい。これらのなかでも、同様の観点から、1−エチル−1−ヒドロキシエチル−2−ウンデシルイミダゾリニウム、及び−エチル−1−ヒドロキシエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリニウムがより好ましい。
【0049】
イミダゾリウムカチオンとしては、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、下記一般式(5)で表される化合物が好ましい。
【0050】
【化9】

[前記式(5)中、R19は水素原子又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示し、R18及びR20は同一又は異なり炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【0051】
前記一般式(5)で表される化合物は本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、R19は水素原子が好ましく、R18及びR19は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0052】
前記一般式(5)で表される化合物は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチルイミダゾリウムが好ましい。これらのなかでも、同様の観点から、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムがより好ましい。
【0053】
ピリジニウムカチオンとしては、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0054】
【化10】

[前記式(6)中、R21は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R22、R23、及びR24は同一又は異なり水素原子又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【0055】
前記一般式(6)で表される化合物は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、R21は炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、R22、R23、及びR24は水素原子又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。
【0056】
前記一般式(6)で表される化合物は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−プロピルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウムが好ましい。これらのなかでも、同様の観点から、1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウムがより好ましい。
【0057】
ピロリジニウムカチオンとしては、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、下記一般式(7)で表される化合物が好ましい。
【0058】
【化11】

[前記式(7)中、R25及びR26は同一又は異なり炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【0059】
前記一般式(7)で表される化合物は本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、R25及びR26は炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。
【0060】
前記一般式(7)で表される化合物は本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、1,1−ジメチルピロリジニウム、1,1−ジエチルピロリジニウム、1−エチル−1−メチルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムが好ましい。
【0061】
帯電防止剤(B)のカチオンとしては、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、前記一般式(5)で表される化合物(イミダゾリウムカチオン)又は前記一般式(6)で表される化合物(ピリジニウムカチオン)が好ましく、前記一般式(5)で表される化合物(イミダゾリウムカチオン)であることがより好ましい。
【0062】
帯電防止剤(B)は、一態様において、前述のカチオンそのものであってもよく、その他の態様において、アニオンとの塩であっても良い。塩としては、発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性の向上並びに微分散性と帯電防止性の両立の観点、並びに、電気特性の低下やさびの発生原因となりうるハロゲン化合物を含まないことから、有機アニオンとの塩が好ましい。
【0063】
有機アニオンとしては、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、以下の有機酸化合物のアニオンが好ましい; ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、イソカプロン酸、エチル酪酸、メチル吉草酸、イソカプリル酸、プロピル吉草酸、エチルカプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、イソクロトン酸、3−ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプチン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、オレイン酸、3−メチルクロトン酸などの飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸; トルイル酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、イソプロピル安息香酸、ブチル安息香酸、イソブチル安息香酸、sec−ブチル安息香酸、tert−ブチル安息香酸、レゾルシン安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸などの芳香族カルボン酸; メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、アルキル(炭素数8〜24)ベンゼンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸化合物。これらの中でも、帯電防止剤(B)は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、メタンスルホン酸、及びエタンスルホン酸の塩であることが好ましい。
【0064】
帯電防止剤(B)の分子量は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、510以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下がさらに好ましく、100以上が好ましい。
【0065】
スラリー組成物における帯電防止剤(B)の含有量は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性の向上の観点から塩基性セラミックス材料に対して0.05重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また、バインダー樹脂の可塑性の増加を抑制してセラミックス成形品の強度を維持する観点から塩基性セラミックス材料に対して2重量%以下が好ましく、1.5重量%以下がより好ましい。スラリー組成物における帯電防止剤(B)の含有量は、塩基性セラミックス材料の微分散性と焼成前のスラリー組成物のセラミックスシートの強度維持の観点から塩基性セラミックス材料に対して0.05〜2重量%が好ましく、0.1〜1.5重量%がより好ましく、0.15〜1重量%がさらに好ましい。
【0066】
さらに、スラリー組成物における帯電防止剤(B)は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性の向上の観点から高分子分散剤(A)に対する含有量の比(B/A)(重量比)が0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることが好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましい。また、スラリー組成物における帯電防止剤(B)の高分子分散剤(A)に対する含有量比(B/A)は、塩基性セラミックス材料の分散性の維持の観点から2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下がさらに好ましい。スラリー組成物における帯電防止剤(B)の高分子分散剤(A)に対する含有量比(B/A)は本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の向上の両立の観点から、0.05〜2.0が好ましく、0.1〜2.0がより好ましく、0.2〜1.5がさらに好ましく、0.3〜1.0がよりさらに好ましい。
【0067】
[非水系溶媒]
本発明におけるスラリー組成物中の非水系溶媒は非水系(有機溶剤)であれば特に限定されないが、塩基性セラミックス材料の微分散性向上、及び前記高分子分散剤との相溶性の観点から、溶解度パラメータが20〜30(MPa)1/2であるものが好ましく、21〜26(MPa)1/2であるものがさらに好ましい。具体的には、キシレン(18.2)、酢酸エチル(18.2)、トルエン(18.3)、テトラハイドロフラン(18.5)、メチルエチルケトン(19.3)、アセトン(19.7)、ブチルセロソルブ(20.2)、ジメチルホルムアミド(24.7)、n−プロパノール(24.9)、エタノール(26.2)、ジメチルスルホキシド(26.4)、n−ブタノール(28.7)、メタノール(29.7)などの有機溶剤が挙げられる。( )内の数値は、溶解度パラメータである。なお、本明細書において、非水系溶媒の溶解度パラメータとは、Hildebrand Solubility Parametersのことをいう。
【0068】
また、2種以上の有機溶剤を組み合わせて、適当な溶解度パラメータを調整することができる。このような混合溶剤の溶解度パラメータは、実験的に求めることもできるが、簡便な方法として、混合溶剤の各成分の溶解度パラメータと体積分率から計算して求めることもできる。例えば、トルエンとエタノールを体積分率50:50で混合した場合、その溶解度パラメータは、(18.3)×0.5+(26.2)×0.5=22.3となる。
【0069】
本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシート(グリーンシート)の帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、非水系溶媒は、高分子分散剤(A)の構成単位(c)が由来するモノマー(疎水性モノマー(c))との溶解度パラメータ差(Δsp)が2.0(MPa)1/2以上であることが好ましく、3.0(MPa)1/2以上がより好ましい。なお、本明細書において、モノマーの溶解度パラメータとはFedorsの方法[R.F.Fedors. Polym. Eng. Sci.,14,147(1974)]により計算された値をいう。
【0070】
[塩基性セラミックス材料]
一般に、セラミックス材料の表面は酸点、塩基点の両方をもっている。非水系溶媒中における酸及び塩基の強度は逆滴定法で求めることが可能であり、分散させたいセラミックス材料が酸性であるか塩基性であるか同定することができる。逆滴定法とは、あらかじめ濃度が既知である塩基性試薬(又は酸性試薬)を一定の割合で無機顔料と混合し、十分に中和させた後、遠心分離機などで、固液分離させ、その上澄み液を滴定し、減少した塩基性試薬の量(又は酸性試薬の量)から酸量(又は塩基量)を求める方法である。本発明において塩基量及び酸量は下記により求められる。
【0071】
1)塩基量の求め方
セラミックス材料2gを精秤(サンプル量)し、1/100N酢酸−トルエン/エタノール(容量比48:52)溶液30mLに入れ、超音波洗浄器(Branson社製、型式1510J−MT)で1時間分散処理する。24時間静置後、無機顔料分散液溶液の一部を遠心分離機(日立社製型式CP−56G)を用いて、25,000rpm、60分の条件で固液分離する。分離した液体部10mLをフェノールフタレイン指示薬が添加されているトルエン/エタノール溶剤(容量比2:1)20mLに加えた後、1/100N水酸化カリウム−エタノール溶液にて中和滴定する。この時の滴定量をXmL、1/100N酢酸−トルエン/エタノール(容量比48:52)10mLを中和するのに必要な滴定量をBmL、サンプル量をSgとすると、以下の式で、塩基量が求められる。
塩基量(μmol/g)=30×(B−X)/S
【0072】
2)酸量の求め方
セラミックス材料2gを精秤(サンプル量)し、1/100N n−ブチルアミン−トルエン/エタノール(容量比48:52)溶液30mLに入れ、超音波洗浄器(Branson社製、型式1510J−MT)で1時間分散処理する。24時間静置後、セラミックス材料溶液の一部を遠心分離機(日立社製型式CP−56G)を用いて、25,000rpm、60分の条件で固液分離する。分離した液体部10mLをブロムクレゾールグリーン指示薬が添加されているトルエン/エタノール溶剤(容量比2:1)20mLに加えた後、1/100N 塩酸−エタノール溶液にて中和滴定する。この時の滴定量をXmL、1/100N n−ブチルアミン−トルエン/エタノール(容量比48:52)10mLを中和するのに必要な滴定量をBmL、サンプル量をSgとすると、以下の式で、酸量が求められる。
酸量(μmol/g)=30×(B−X)/S
【0073】
本明細書において、塩基性セラミックス材料とは、前記定義の塩基量が前記定義の酸量よりも大きな値をもつ無機化合物であり、具体的には、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、及び、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの金属炭酸塩、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどの複合酸化物を含む。
【0074】
塩基性セラミックス材料の平均粒径は、スラリー組成物の取扱い及び成形の容易性の観点から500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。また、微分散性と帯電防止性の両立の観点から、5nm以上が好ましく、7nm以上がより好ましく、8nm以上がさらに好ましい。塩基性セラミックス材料の平均粒径としては、本発明におけるスラリー組成物の取扱い性、成形容易性、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性、及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の観点から、5〜500nmが好ましく、7〜200nmがより好ましく、8〜100nm以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、塩基性セラミックス材料の平均粒径(BET比表面積に基づく平均粒径)は、好ましくは粉末状の塩基性セラミックス材料の平均粒径をいい、以下のようにして測定される。
【0075】
塩基性セラミックス材料の平均粒径は、粒子径R(m)の球と仮定して、窒素吸着法により測定されたBET比表面積S(m2/g)、無機微粒子の比重ρ(g/cm3)を用いて、求めることができる。すなわち、BET比表面積は単位重量当たりの表面積であるので、表面積をA(m2)、粒子の重量をW(g)とすると、
S(m2/g)=A(m2)/W(g)
=[4×π×(R/2)2]/[4/3×π×(R/2)3×ρ×106
=6/(R×ρ×106
の関係式が求められる。粒子径の単位を変換すると、
R(nm)=6000/(S×ρ)
の式となり、平均粒径(BET比表面積に基づく平均粒径)求めることができる。例えば、チタン酸バリウム(比重6.0)のBET比表面積が5.0(m2/g)であれば、その平均粒径(BET比表面積に基づく平均粒径)は、200nmとなる。
【0076】
一方、本明細書において、塩基性セラミックス材料の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(好適には3000〜30000倍)又は透過型電子顕微鏡(好適には10000〜300000倍)の写真を画像解析することにより求めることができるものをいう。具体的には、拡大写真等を用い、個々の粒子の最大長を少なくとも200個の粒子について測定し、該長さを直径とする球の体積を算出し、小粒径側からの累積体積頻度が50%となる粒径(D50)を体積中位粒径とする。
【0077】
スラリー組成物における塩基性セラミックス材料の含有量としては、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、5〜60重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましく、15〜40重量%がさらに好ましい。また、塩基性セラミックス材料100重量部に対する高分子分散剤(A)の含有量は、塩基性セラミックス材料の粒径により異なるが、例えば、体積中位粒径(D50)が10〜500nmの塩基性セラミックス材料を使用する場合、0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。
【0078】
[バインダー樹脂]
スラリー組成物は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの強度維持の観点からバインダー樹脂を含有する。バインダー樹脂として、ポリビニルアルコール、カチオン化でんぷん、メチルセルロース、エチルセルロース、ブチラール樹脂(ポリビニルブチラール)、(メタ)アクリルアミド重合体、(メタ)アクリル酸重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)などが挙げられ、中でも、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの可撓性の観点からエチルセルロース、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)、(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)がより好ましい。
【0079】
スラリー組成物におけるバインダー樹脂の含有量は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの強度維持及びバインダー機能発揮の観点から塩基性セラミックス材料に対して0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、2重量%以上がさらに好ましい。また、バインダー樹脂の含有量は、スラリー組成物の粘度低下の点から、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、12重量%以下がさらに好ましい。バインダー樹脂の含有量は、本発明におけるスラリー組成物を用いて得られる焼成前のセラミックスシートの帯電防止性及び塩基性セラミックス材料の分散性の向上の両立の観点から、塩基性セラミックス材料に対して0.5〜20重量%が好ましく、より好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは2〜12重量%である。
【0080】
[スラリー組成物の製造方法]
本発明におけるスラリー組成物は、高分子分散剤(A)を用いて塩基性セラミックス材料を非水系溶媒に分散させる工程を含む製造方法によって製造できる。前記の分散工程は、例えば、高分子分散剤(A)、塩基性セラミックス材料、及び非水系溶媒を、好ましくはジルコニアビーズと共に、混合することを含む。その後、帯電防止剤(B)及びバインダー樹脂を含む残りの成分を混合して本発明におけるスラリー組成物を得ることができる。各成分の含有量は上述を参照して決定できる。
【0081】
[スラリー組成物]
本発明におけるスラリー組成物によれば、塩基性セラミックス材料の微細な分散と成形品の帯電防止性との両立を達成できる。本発明におけるスラリー組成物は、塩基性セラミックス材料の微分散性に優れるため、粒子の再凝集を抑制し、好ましくは塩基性セラミックス材料を平均粒径に近い状態で分散できる。すなわち、本発明によれば、スラリー組成物製造前のセラミックス材料の平均粒径とスラリー組成物中のセラミックス材料の平均粒径との比(スラリー組成物中のセラミックス材料の平均粒径/スラリー組成物製造前のセラミックス材料の平均粒径)が小さいスラリー組成物を提供できる。本発明におけるスラリー組成物は、該比を、好ましくは1〜1.9、より好ましくは1〜1.8、さらに好ましくは1〜1.7、さらにより好ましくは1〜1.5とすることができる。
【0082】
また、本発明では、スラリー組成物における塩基性セラミックス材料の凝集粒子の発生度合は、D90/D50の比で定義され、この比が小さいほど凝集粒子が発生していないことを示す。したがって、本明細書において微分散性は、D90/D50の比を指標として評価できる。スラリー組成物における塩基性セラミックス材料のD90/D50は、1.0〜3.0が好ましく、1.0〜2.1がより好ましく、1.0〜1.9がさらに好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。同様に、体積粒径粒径(D90)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して90%になる粒径を意味する。
【0083】
本発明におけるスラリー組成物は、電子機器分野に用いられるセラミックス成形品に用いることができる。例えば、シート、鋳込み、プレス、押出し、射出などの成形法により薄いシート状に成形する場合、本発明におけるスラリー組成物であれば、微分散性に優れるから薄く平坦性の良好なシート状成形品を容易に製造でき、またその成形品の帯電を良好に防止できる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0085】
[高分子分散剤(A)の合成]
高分子分散剤A1(MAA/PEGMA9/SMA)の合成
還流管、攪拌装置、温度計、窒素導入管を取り付けた、セパラブルフラスコにメタクリル酸(MAA:和光純薬工業社製試薬)2.25g、メタクリル酸ステアリル(SMA:新中村化学社製 NK−エステル S)2.25g、メトキシポリエチレングリコール(9)メタクリレート(PEGMA9:新中村化学社製 NK−エステル M−90G、エチレンオキサイドの平均付加モル数 9)10.5g、トルエン(和光純薬工業社製試薬)6.0gを仕込み、窒素置換し、65℃に加熱する。槽内が65℃に到達後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65B:和光純薬工業社製)0.45g、トルエン2.5gの混合物を添加した。その後、メタクリル酸20.25g、メタクリル酸ステアリル20.25g、メトキシポリエチレングリコール(9)メタクリレート94.5g、トルエン90g、V−65B4.05gの混合液を3時間かけて滴下した。65℃で3hr攪拌後、冷却した。濃度調整のためにトルエンを添加し、高分子分散剤A1のトルエン溶液を得た。高分子分散剤溶液の不揮発分は39.4重量%で、高分子分散剤の重量平均分子量は44200であった。なお、高分子分散剤溶液の不揮発分は、以下のようにして測定した。シャーレにガラス棒と乾燥無水硫酸ナトリウム10gを量り取り、そこにポリマー溶液2gを入れ、ガラス棒で混合し、105℃の減圧乾燥機(圧力8kPa)で2hr乾燥する。乾燥後の重さを量り、次式より得られた値を不揮発分とした。
不揮発分={[サンプル量−(乾燥後の重さ−(シャーレの重さ+ガラス棒の重さ+無水硫酸ナトリウムの重さ))]/サンプル量}×100
【0086】
また、高分子分散剤A1の重量平均分子量は、下記条件のGPCにより測定した。下記のその他の高分子分散剤の重量平均分子量も同様に測定した。
【0087】
高分子分散剤A2〜A7の合成
下記表1に示す原料と仕込み量を用いて、高分子分散剤A1と同様の方法にて、高分子分散剤A2〜A7を合成した。各高分子分散剤溶液の不揮発分と重量平均分子量も下記表1に記載する。下記表1において、MAAはメタクリル酸、PEGMAはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、SMAはステアリルメタクリレート、MMAはメチルメタクリレート、Stはスチレンを表す。
【0088】
〔重量平均分子量の測定法〕
溶離液を毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、予め作成した検量線に基づき算出した。検量線の作成には、以下の単分散ポリスチレンを標準試料として用いた。
測定装置:HLC−8120GPC(東ソー社製)
測定条件:試料溶液 0.5wt%N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液
溶離液 :60mmol/L H3PO4,50mmol/L LiBr/ DMF
カラム :α−M + α−M(東ソー社製)
検出器 :示差屈折率
検量線 :東ソー社製 5.26×102、1.02×105、8.42×106;西尾工
業社製 4.0×103、3.0×104、9.0×105(数字はそれぞれ分子量)
【0089】
[スラリー組成物の調製]
前述の高分子分散剤A1〜A7、後述する帯電防止剤B1〜B6、混合有機溶媒、チタン酸バリウム粉末、及びバインダー樹脂を用いて下記表2に示す実施例1〜11及び比較例1〜4のスラリー組成物を調製した(チタン酸バリウムの固形分濃度35%)。
【0090】
具体的には、チタン酸バリウム(BET比表面積より計算した平均粒径50nm)20g、アニオン性高分子分散剤(A)0.4g(有効分)を直径1mmのジルコニアビーズ50gと一緒に100mLの容器に入れ、トルエン/エタノール=48/52(容積比)の混合溶媒を加え、チタン酸バリウムの固形分濃度が50%になるように調整し、卓上型ボールミルにて、96時間、分散処理をおこなった。次いで、ブチラール樹脂1.6g、可塑剤としてジオクチルフタレート0.32g、帯電防止剤(B)0.16g、トルエン/エタノール=48/52(容積比)の混合溶媒を加えて、チタン酸バリウムの固形分濃度が35%になるように調整し、卓上型ボールミルにて、2時間混合し、スラリー組成物を得た。
【0091】
帯電防止剤(B)として、以下のものを使用した。なお、B1については、特開2009−280744号公報に記載されている公知の方法にて合成し、B2〜B6については市販品を用いた。
B1:1−エチル−1−ヒドロキシエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリニウム・エチルサルフェート(1−ヒドロキシエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリンと硫酸ジエチルとを反応させて得られた反応物;分子量504.7、合成品)
B2:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・エチルサルフェート(分子量236.3、シグマアルドリッチ社製)
B3:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・メチルサルフェート(分子量250.3、シグマアルドリッチ社製)
B4:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート(分子量206.3、東京化成社製)
B5:1−エチル−3−メチルピリジニウムエチルサルフェート(分子量247.3、東京化成社製)
B6:1−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウム・エチルサルフェート(分子量263.3、東京化成社製)
また、高分子分散剤C1として市販されているアニオン性高分子分散剤であるマリアリムAKM−0531(日本油脂社製)を使用し、帯電防止剤D1としてラウリルアミンのエチレンオキシド2モル付加物を硫酸ジエチルと反応させることで得られる4級アンモニウム塩(合成品)を用いた(下記表2、比較例2及び3)。
【0092】
〔分散性の評価方法〕
調製した実施例1〜11及び比較例1〜4のスラリー組成物について、25℃、せん断速度10sec-1の条件にて、粘度測定をおこなった(ブルックフィールド社製DV−IIを使用)。スラリーの粘度が低い方ものが、粘度の高いものと比較して、分散性が良好である。下記表2に測定結果を示す。
【0093】
[セラミックスシートの成形]
調製した実施例1〜11及び比較例1〜4のスラリー組成物を使用してセラミックスシートを成形し、下記の方法で帯電防止性を評価した。
【0094】
実施例1〜11及び比較例1〜4のスラリー組成物を50μmのアプリケーターを用いて、シリコーン処理された離型フィルム(帝人ヂュポン社製ピューレックス)に塗工し、60℃にて16時間乾燥し、セラミックスシートを得た。
【0095】
〔帯電防止性の評価方法〕
離型フィルムとともに、セラミックスシートを4cmx10cmの寸法の試験片に裁断し、塗工面と反対側(フィルム側)を下にして、90度剥離試験用治具を装着した卓上型精密試験機(島津製作所社製オートグラフAGS−X)の台座に両面テープを用いて固定した。次に、セラミックスシートの片端を離型フィルムから少し剥離した後、1cm/秒の速度にて90度剥離し、セラミックスシートの剥離面側の帯電量の最大値を3cm離れたところに設置した静電気センサー(キーエンス社製SK−200)にて測定した。この剥離帯電量が小さいほど、帯電防止性が良好である。表2に測定結果を示す。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
前記表2に示すとおり、実施例1〜11において高分子分散剤(A)と帯電防止剤(B)との組み合わせにより、スラリー組成物の粘度が低減し(微分散性が向上し)、かつ、剥離帯電量が低減された(帯電防止性が向上した)。なお、比較例4はスラリー組成物の粘度が高くセラミックスシートを形成することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したとおり、本発明は、セラミックス成形を行う分野、例えば、セラミックス製電子部品の製造に関する分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位(a)と下記一般式(2)で表される構成単位(b)と下記一般式(3)で表される構成単位(c)とを含有するアニオン性高分子分散剤(A)、イミダゾリニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、及びピロリジニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンを有する帯電防止剤(B)、非水系溶媒、塩基性セラミックス材料、並びにバインダー樹脂を含有するスラリー組成物。
【化1】

[前記式(1)及び(2)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は同一又は異なり水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R7は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R8は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、X1は酸素原子又はNHを示し、Mは水素原子又は陽イオンを示し、nは1〜50の数を示す。
前記式(3)中、R9、R10及びR11は同一又は異なり水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、X2は酸素原子又はNHを示し、R12及びR13は炭素数1〜30の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基又はアリール基を示す。]
【請求項2】
帯電防止剤(B)が、下記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種のカチオンを有する、請求項1記載のスラリー組成物。
【化2】



[前記式(4)中、R14は水素原子、又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示し、R15は炭素数1〜21のアルキル基を示し、R16及びR17は同一又は異なり水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。
前記式(5)中、R19は水素原子又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示し、R18及びR20は同一又は異なり炭素数1〜4のアルキル基を示す。
前記式(6)中、R21は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R22、R23、及びR24は同一又は異なり水素原子又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。
前記式(7)中、R25及びR26は同一又は異なり炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【請求項3】
帯電防止剤(B)が、前記一般式(5)で表されるイミダゾリウムカチオンを有する、請求項2記載のスラリー組成物。
【請求項4】
帯電防止剤(B)が有するカチオンが、分子量が300以下である、請求項1から3のいずれかに記載のスラリー組成物。
【請求項5】
前記塩基性セラミックス材料が、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、酸化チタン、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、及びジルコン酸カルシウムからなる群から選ばれる無機化合物である、請求項1から4のいずれかに記載のスラリー組成物。

【公開番号】特開2011−195436(P2011−195436A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37410(P2011−37410)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】