説明

増殖性疾患の診断および治療における、細胞周期制御または細胞周期進行に影響を与える真核生物遺伝子の利用

本発明は、RNA−仲介干渉(RNAi)の方法によって同定可能である、細胞分裂の間の細胞周期進行における、種々のC.elegans遺伝子の、およびそれらの対応する遺伝子産物の、明らかな機能的役割に、そして、そのすべての生物学的に機能的な誘導体を含む、前記遺伝子の機能的オーソログの同定および単離に関する。本発明はさらに、抗−増殖性薬剤の開発または単離における、(前記オーソログを含む)前記遺伝子および遺伝子産物の利用、特に適切なスクリーニング方法におけるそれらの利用、および増殖性および他の疾患の診断および治療のためのそれらの利用に関する。特に、本発明は、増殖性疾患の治療のための、前記遺伝子から由来する、小干渉RNAの利用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患、特に増殖性疾患の治療における、細胞周期制御または細胞周期進行を干渉する薬剤の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
後生動物細胞分裂(有糸分裂)は、娘細胞への細胞物質の正確な伝達を確かにするために、きつく協調され、完全に調節され、綿密にモニタされなければならない、非常に複雑で、高度に調節された細胞工程の組からなる。これらの工程における欠陥は、全ての形態のがんを含む、広い範囲の、増殖性疾患と呼ばれるものを引き起こすと知られている。細胞分裂は、数少ないか、そうでなければすべての形態のがんの原因に共通する細胞工程のみをあらわすので、その特異的な阻害は、治療的な介入の好ましい部位として認識されてきた。
【0003】
有糸分裂阻害剤薬物は、もっとも有益な種類の化学治療剤の1つとして認識されているが、この種類の新規の薬物候補物を発見するためのスクリーニングの試みが、単一のタンパク質であるチューブリンを標的化する薬剤を同定しうるという、かかるスクリーンの強力な固有の傾向によって不確定なものとされてきた。チューブリンは重合化して、有糸分裂スピンドル機能およびクロマチン分離のために必要である第1細胞骨格要素である微小管を形成する。しかしながらかかる微小管は、分離するしないにかかわらず、ほとんど全ての細胞型によって偏在的に必要であり、したがって、多くの望まない副作用が、抗−チューブリン薬物によって引き起こされる事実を説明する。
【0004】
おそらく、チューブリンを標的化する非常に成功した抗悪性腫瘍薬のもっとも知られた例は、パクリタキセルと、その市販されている誘導体である、タキソールである。その適用性は、問題のある副作用の範囲によって、適切な投与レジメを決定における困難によって、非常に限定されてきた。タキソール治療は結果として、アナフィラキシーおよび、治療が必要な呼吸困難および高血圧によって特徴づけられる過敏症反応、血管性浮腫、および臨床試験の患者の2〜4%での広汎性じんましんを引き起こす。タキソールは、コルチコステロイドの前治療の後に投与されるが、致命的な反応が起こる。生命を脅かす心不整脈となる重度の伝導性異常が、1パーセント未満の患者で起こり、ペースメーカーの挿入によって治療されなければならない。タキソールは、妊娠女性において、胎児の損傷または胎児死亡を引き起こしうる。さらに、投与は一般的に、頻脈、低血圧、顔面紅潮、皮膚反応および呼吸の短化(穏やかな呼吸困難)を伴う。これらの強力な副作用の理由は、チューブリンが、スピンドル形成において重要な役割を果たすのみでなく、また、たとえば細胞骨格発生および細胞間タンパク質伝達のような他の細胞工程においても、明らかな役割を果たすからである。
【0005】
結果として、タキソールは、ここ三十年間の新規の抗がん治療で、もっとも成功したものであると多くの者に認められてきたが、いまだに、タキソールの不利な部分を示すことのない抗がん薬物に対する必要性が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の根本的な問題は、改善された強力な抗がん薬物、特に重度の副作用の少ない薬物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本問題は、細胞周期進行の阻害のための、医薬品の製造のために、
a)配列番号5、7、9、11、13、1、3にて表される核酸配列、
b)100残基にわたり、少なくとも25%のa)による核酸によってコードされているタンパク質との配列同一性を示し、および/またはBLAST配列解析プログラムを用いたコンピュータ補助検索で、最大で10-5のe値で検出可能である、ポリペプチドをコードしている核酸配列、
c)中程度または高い逼迫性の条件下で、(a)または(b)に対応する配列を持つ核酸分子と、ハイブリッド形成可能な核酸分子の配列、
d)(a)、(b)または(c)で定義したような配列のいずれかのアンチセンス−配列、
e)(a)、(b)、(c)または(d)の断片、
f)(a)、(b)、(c)、(d)または(e)にて定義したような配列のいずれかに対応する、アンチセンスまたはセンス方向での、2本鎖RNAまたは1本鎖RNA、
からなる配列の群から選択される配列を持つ、核酸分子を含む単離核酸分子の利用によって解決される。
【0008】
本発明は、細胞周期進行を干渉する薬剤を提供するという概念に基づいている。細胞周期進行は、細胞分裂に不可欠である。
【0009】
微小管形成と対照をなして、細胞周期進行は、細胞分裂に特有の工程であるので、細胞周期進行に関連する標的タンパク質の阻害は、結果として、有糸分裂の十分な機能的な障害、ならびに、他の明らかな細胞周期の阻害によって引き起こされる副作用の数の減少となる。
【0010】
本発明は、細胞周期進行に関与する種々のタンパク質および遺伝子に関して、初めて開示する。細胞分れおよび細胞周期進行はすでに広く研究されているが、本発明は、いくつかの種類の標的遺伝子、対応する遺伝子産物、および先には細胞分裂に、特に細胞周期進行には関与しないとされた他の薬剤を提供する。この新規に同定された、これらの標的遺伝子およびこれらの対応する遺伝子産物、その相同物、オーソログおよび誘導体の機能は、がんを含む増殖性疾患に対する広範囲の医薬品の開発にて、利用可能である。これらの医薬品は、増殖性疾患の治療、特に、細胞分裂、細胞分裂の調節に関連する疾病の場合にて使用可能であり、または細胞周期制御または細胞周期進行に依存する。さらに、新規に同定された機能が、診断における使用、および診断試薬の開発を可能にする。
【0011】
細胞周期制御または細胞周期進行に関与する標的遺伝子の同定のために、ラージスケールのRNAi技術に基づくスクリーンを、C.elegansゲノム中、19514(99.7%を意味する)の予想されるオープンリーディングフレームに対して実施した。このラージスケールスクリーンの実行のために、個々のオープンリーディングフレームに対応する2本鎖RNAを産出し、生体C.elegans雌雄同体にマイクロ−注入し、得られた胚を、経時的DIC顕微鏡を用いて、24時間後に解析した。
【0012】
線虫C.elegansは、その発達を通して、ほとんど全体が半透明体を示し、それによって、胚形成のもっとも早期の段階に対してさえも、非常に詳細な細胞学的試料において、比類のない顕微鏡における手段を提供する。その短い生存サイクル(3〜5日間)、その培養の簡便性、およびその低維持コストと共に、この重要な特徴によって、C.elegansが、おそらく間違いなく、すべての後生動物の中でもっとも研究されたものである。また、配列データが、C.elegansゲノムの97%以上で入手可能である(C.elegans Sequencing Consortium.「線虫C.elegansのゲノム配列:調査生物学に対するプラットホーム(Genome sequ
ence of nematode C.elegans:a platform for investigating biology.)」Science 282,2012−2018(1998))。したがって、C.elegansは、RNA干渉(RNAi)の新規技術を適用するための、最適な有機物である。本技術は、対象のコード配列の部分に対応する2本鎖RNA(dsRNA)分子を生体虫に導入することによって仲介されるので、遺伝子発現の、標的化、配列−特異的阻害からなる(Fireら「シノラブディス・エレガンスにおける、2本鎖RNAによる強力で、特異的な遺伝子干渉(Potent and specific genetic interference by
double−stranded RNA in Caenorhabditis elegans.)」Nature 391,806−811(1998))。現在までに試験された非常の多くの大多数のC.elegans遺伝子に関して、明らかに検出可能な、試験した虫のF1子孫における(およびいくつかの場合、治療した虫自身における)機能表現型の欠損を伴う、標的化遺伝子の発現の配列−特異的阻害が産出されることが示されてきた。
【0013】
本発明の文脈において、胚細胞分裂の第1ラウンドを表記するために、非常に証拠力のある顕微鏡アッセイとの組み合わせで、ゲノムRNA干渉(RNAi)に基づく、C.elegansにおけるスクリーニングアッセイを利用した(Sulstonら「線虫シノラブディス・エレガンスの肺細胞系列(The embryonic cell lineage of the nematode Caenorhabditis elegans.)」Dev.Biol.100,64−119(1983)、Gonczyら「変異解析による、1つの細胞分裂期 シノラブディス・エレガンス胚における細胞分裂工程の詳細(Dissection of cell division processes in the one cell stage Caenorhabditis elegans embryo by mutatiysis.)」J Cell Biol 144,927−946(1999))。この技術の組み合わせで、選択した遺伝子、また種々の選択した遺伝子類を、前例のない速度および効率で、機能的に特性化可能である。
【0014】
DIC顕微鏡作製映像を解析して、これらの試料を同定し、それによって細胞分裂が変化したか、または中断したかを同定した。強固で、一定で再現可能な様式で解析を実施するために、各映像を、47の異なるパラメータに関して解析した。言い換えると、47の、正常の細胞分裂(すなわち、野生型虫での細胞分裂)の特徴を、全C.elegansゲノムにわたり、RNAiのゲノム−ワイド適用によって産出された、各RNAi表現型に対してスコア化した。
【0015】
DICアッセイの完全な確認および検証、およびアッセイが産出した情報の深さによって、等価の表現型が、非常に関連したタンパク質、同一のファミリーまたは機能的に等価なタンパク質内のタンパク質を表すことが発見されたことが分かった。言い換えると、2つの別々に解析した遺伝子のRNAi誘導表現型が同一である場合、2つのタンパク質は、同一のタンパク質の種類内であるか、または同一の機能を共有するか、少なくとも、両方が、同一の生物学的機構または工程に関与するか、で非常にありうる。したがって、スクリーンをそれらの機能にしたがって、タンパク質をクラス分け、またはグループ分けするために使用することが可能である。結果として、同様のRNAi表現型を引き起こす任意の遺伝子が、単一の機構的クラス内で考慮されることに関連し、証明される。
【0016】
本明細書にしたがった「核酸(nucleic acids)」には、DNA、RNA、ペプチド核酸、モルホリノ類、およびリン酸チオエート類またはリン酸アミデート類等の、リン酸ジエステル以外の骨格構造を持つ核酸のような、すべての公知の核酸が含まれる。
【0017】
「細胞周期進行の阻害(inhibition of cell cycle progression)」には、細胞周期進行の停止または拘束、ならびに遅延または鈍化が含まれる。特に、「細胞周期進行の阻害(inhibition of cell cycle progression)」は、早期段階、好ましくは、核分裂の前、特に、細胞質の分裂(細胞質分裂)の前での、細胞周期進行の停止または拘束、ならびに遅延または鈍化が含まれる。
【0018】
本発明の好ましい実施様態において、核酸分子には、配列番号5、7、9、11、13、1、3で表されるような配列の群から選択される配列を持つ、核酸分子が含まれる。好ましくは、核酸分子は、前記配列の群から選択される配列を持つ核酸分子からなる。
【0019】
語句「含む(comprise)」は好ましくは、核酸、または対応するRNAsまたはタンパク質の治療的利用または発現のためのベクターのような、たとえば、診断利用または治療利用のために、記述された配列を持つ核酸が、機能的に関連する、配列を含む核酸を意味する。好ましくは、配列の上流または下流の任意のさらなる核酸は、20kb以下である。より好ましくは、語句「含む」は、ゲノムBACまたはYACクローンのような、配列を図らずも含む、大きな構造には関連しない。
【0020】
詳細には、個々の配列番号は以下の配列を示す。
配列番号1 C.elegans遺伝子F59E12.11のヌクレオチド配列(Wormbase登録番号CE28570)
配列番号2 C.elegans遺伝子F59E12.11の推定アミノ酸配列(登録番号CE28570)
配列番号3 F59E12.11のヒトオーソログのヌクレオチド配列(GenBank登録番号NM_058169)
配列番号4 F59E12.11のヒトオーソログの推定アミノ酸配列(GenBank登録番号NP_477517)
配列番号5 C.elegans遺伝子Y71H2B.3のヌクレオチド配列(Wormbase登録番号CE24630)
配列番号6 C.elegans遺伝子Y71H2B.3の推定アミノ酸配列(Wormbase登録番号CE24630)
配列番号7 Y71H2B.3のヒトオーソログのヌクレオチド配列(GenBank登録番号NM_001551)
配列番号8 Y71H2B.3のヒトオーソログの推定アミノ酸配列(GenBank登録番号NP_001542)
配列番号9 Y71H2B.3のラットオーソログのヌクレオチド配列(GenBank登録番号NM_031624)
配列番号10 Y71H2B.3のラットオーソログの推定アミノ酸配列(GenBank登録番号AAD05364またはNP_113812)
配列番号11 Y71H2B.3のハエオーソログのヌクレオチド配列(GenBank登録番号AAF003639)
配列番号12 Y71H2B.3のハエオーソログの推定アミノ酸配列(GenBank登録番号AAF53289)
配列番号13 Y71H2B.3の酵母オーソログのヌクレオチド配列(GenBank登録番号NC_001145、塩基対327481〜328581)
配列番号14 Y71H2B.3の酵母オーソログの推定アミノ酸配列(GenBank登録番号NP_013741)
他の特定しない限り、核酸およびポリペプチド/タンパク質の操作は、分子生物学および免疫学の標準の方法を用いて実施可能である(たとえば、Maniatisら(198
9),Molecular cloning:A laboratory manual,Cold Spring Harbor Lab.,Cold Spring Harbor,NY、Ausubel,F.M.ら(eds.)「分子生物学の現在のプロトコール(Current protocols in Molecular Biology)」、John WileyおよびSons,1995,Tijssen,P.,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,Elsevier Press,Amsterdam,Oxford,New York,1985を参照のこと)。
【0021】
本発明は、モデル有機体C.elegansにおける細胞分裂で、重要な機能を持つものとして同定された遺伝子を記述している。モデル有機体における調査を実施するための基礎は、C.elegans中の遺伝子に対して新規に発見された機能が、ヒトを含む他の種にて保存されうることである。細胞分裂、ならびに細胞周期制御および進行は、進化の間に非常に保存され、したがって、C.elegansにおける遺伝子機能を発見すること、およびヒトホモログまたはオーソログに対する機能を特徴づける、または指定するために情報を用いることのアプローチが非常に証明されている。
【0022】
維持における1つの主題は、遺伝子機能が、配列の多大な相違をもって維持されうることである。本発明において、この維持の主題は定義されていない。しかしながら、他の遺伝子が、結果として、本発明において請求されたものと同様の遺伝子産物として同定される遺伝子産物となる機能を持つと発見される場合に、本発明はまた、かかる遺伝子に対して適用を請求する。
【0023】
しかしながら、進化の間の遺伝子の保存の特に頻繁な主題は、遺伝子配列が保存されうることである。この保存の主題は、特に細胞分裂のような非常に保存された工程に関与する遺伝子に対して、頻繁である。このことは、DNAヌクレオチド配列または遺伝子のタンパク質コード配列が、異なる種で非常に同様であり、言い換えれば、遺伝子の機能が、異なる種で同一であることを示唆している。
【0024】
したがって、さらに好ましい実施形態において、核酸分子は、配列番号5、7、9、11、13、1、3によってコードされたタンパク質と、アミノ酸レベルで、100残基にわたり、少なくとも25%、好ましくは100残基にわたり少なくとも30%、より好ましくは、100残基にわたり少なくとも50%、特に、100残基にわたり少なくとも70%の配列同一性を示すポリペプチドをコードする配列を持つ。
【0025】
これらの非常に高い配列類似性は、通常、上記配列のオーソログまたはホモログであるポリペプチドによって示される。ホモログは、同一または他の種からの同一の配列を持つタンパク質である(ホモログの配列類似性は、種形成事象から、または遺伝子複製から由来し、すなわちホモログは、任意の種の関連タンパク質、または他の種における同一のタンパク質である)。ホモログのサブグループは、本質的に、オーソログとして定義される。オーソログは、他の種と比較したものと同様のタンパク質であるが、他の種から由来する(オーソログの配列類似性は、遺伝子複製よりも種形成事象から由来する)。細胞分裂のような保存工程において、ホモログおよびオーソログタンパク質、特にオーソログタンパク質は、同一の生物学的機能を果たす可能性が非常に高いことが、当業者によって知られている。この場合、もっとも関連する生物学的機能は、細胞周期制御または進行への関与、特にそれに対する要求である。
【0026】
都合良く、本発明の文脈にて同定されたC.elegans遺伝子のヒトオーソログは、増殖、細胞生存および有糸分裂に必要であることが示された(実施例11を参照のこと)。この発見は、ヒトオーソログが、細胞周期制御または進行に必要であり、増殖性疾患
の診断および治療の文脈において利用可能である。
【0027】
当業者は、オーソログおよびオーソログを同定するための異なる方法および原理に熟知している。本発明の文脈において、ホモログおよびオーソログを、実施例1にて記述した手順にしたがって、配列類似性に基づいて同定した。
【0028】
核酸分子にはまた、最大で10-5のe値、好ましくは最大で10-12のe値、特に最大で10-20のe値で、コンピュータ補助データベース検索/アライメントにて検出可能な配列、またはそれらの断片が含まれ得、それによって、データベース配列が、下記のa)で定義されるような配列と比較される。核酸分子がまた、本発明の原理にしたがって、オーソログと考慮される配列を含みうる(実施例1を参照のこと)。一般的に、配列同一性の程度を、本技術分野で公知のタンパク質配列アライメントを実施可能である、任意のソフトウェアプログラムによって計算可能である。ここで、同一のアミノ酸領域が、その長さが変化可能なギャップによって遮られることも含まれる。
【0029】
この種類の解析またはアライメントに関して、「BLAST配列解析プログラム」が特に好ましい。配列解析のために使用しうる「BLAST配列解析プログラム」は、好適に利用可能であり、当業者に公知である。配列アライメントのための公知の解析プログラム、特に「BLAST配列解析プログラム」は、比較した配列間の相同性の程度を特性化するために、「e値」と呼ぶものを計算する。一般的に、小さなe値は、高い配列類似性を特性化し、一方で、e値が大きければ大きいほど、より小さな配列の類似性を特性化する。
【0030】
配列変化において必要な類似性の程度は、配列の意図する利用に依存する。配列の機能を改善するため、または方法論の利点を提供するために設計される、変異、挿入および欠損変異に影響を与えることが、当業者によって可能である。
【0031】
上記の配列 IDによってコードされたタンパク質との以上の配列同一性の程度は、上記配列に対して強く相同的であるようなポリペプチドに対して、特に、a)のポリペプチドに対して「オーソログ的である」または「類似的である」ポリペプチド類に特徴的である。
【0032】
表1は、対応するC.elegans遺伝子のホモログおよびオーソログとの、アミノ酸レベルでのアライメントに関して計算されたe値を示している。それによって、1アミノ酸レベルで10-5以下のe値は、対応するC.elegans遺伝子のホモログを特性化する。C.elegans遺伝子がそれ自身、10-5以下のe値もつ、同定されたホモログの逆数である場合、ホモログは、オーソログとして同定される(実施例1も参照のこと)。
【0033】
【表1】

【0034】
さらに好ましい実施形態によると、核酸分子は、中程度/高逼迫性の条件下、(a)または(b)の核酸配列とハイブリッド形成可能である、ヌクレオチド配列を含む。
【0035】
かかるハイブリッド、2本鎖形成および安定性は、ハイブリッドの2本の鎖間の十分な相補性に依存し、ある程度の不適合が許容可能である。したがって、本発明の核酸分子およびプローブには、前記配列変化が、対象の標的ヌクレオチド配列との安定なハイブリッドの形成を許容する、本来の配列に対して、十分な配列類似性を持つ限り、上記の同定された配列の変異(単一および多重両方)、欠損、挿入、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0036】
このDNAまたはRNA配列が、特定のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドプローブに「ハイブリッド形成」するかどうかを決定するために好適な実験条件は、5×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)緩衝液中、10分間のハイブリッド形成と、5×SSC、5×Denhardt溶液、0.5% SDSおよび100mg/mlの還元超音波処理サケ精子DNA(Maniatisら,1989)の溶液中でのフィルターの前ハイブリッド形成、それに続く、10ng/ml濃度のランダムプライム化(Feinberg,A.P.and Vogelstein,B.(1983),Anal.Biochem.132:6−13)、32P−dCTP標識化(特異的活性>1×109cpm/μg)プローブを含む同様の溶液中での、およそ45℃にて12時間のハイブリッド形成に関して試験するために、DNAまたはRNAを含むフィルターの予浸が伴う。ついでフィルターを2回、30分間、2×SSC、0.5% SDS中、少なくとも55℃(低逼迫性)、少なくとも60℃(中逼迫性)、好ましくは少なくとも65℃(中/高逼迫性)、より好ましくは、少なくとも70℃(高逼迫性)、またはもっとも好ましくは、少なくとも75℃(非常に高逼迫性)で、2回洗浄する。プローブが選択した条件下でハイブリッド形成する分子を、x線フィルムまたは「リン撮像装置」を用いて検出する。
【0037】
さらに好ましい実施形態によると、核酸分子はまた、(a)、(b)または(c)にて定義されたような配列のいずれかのアンチセンス配列を持ちうる。
【0038】
さらに好ましい実施形態によると、以上で記述したような核酸分子の断片を使用しうる。
【0039】
本明細書で使用する語句「断片(fragmengt)」は、分子、および目的に依存して、異なる意味を持ちうる。当業者は、関連する目的のために、どのようにして適切な
断片を選択するかを知っている。好ましくは、断片は、それが由来する配列に対して特異的であるべきである。語句「特異的(specific)」の意味が、本技術分野で公知である。好ましくは、この文献での特異的は、配列断片で実施したBLAST検索にて、(断片が由来する)本来の配列が、一般に知られる利用の文脈にて、対応するすべての他の配列(たとえば、調査資料中に存在する、他の全ての核酸の配列)よりも、低いe値で同定されうることを意味する。より好ましくは、本来の配列は、同定された他のすべての配列と比較して、もっとも低いe値で同定されるべきである。あるいは、「特異的」は、適用した条件下で、断片が、それが由来する核酸分子にのみ結合することを意味する。特異的の基準は、通常、15ヌクレオチドより大きい、好ましくは、19ヌクレオチドより大きい断片によって達成される。好ましくは、断片は、高い複雑性の配列領域から選択される。低い複雑性領域は、データベース検索、または標準の配列解析プログラムにて利用可能な、低複雑性フィルターによって同定可能である。「生物学的に活性な(biologically active)」断片または誘導体は、当業者によって合成可能である。これによって、断片または誘導体は、由来する核酸と同様の「生物学的機能(biological function)」を持つべきである。本発明にしたがって、もっとも関連する生物学的機能は、細胞周期制御、特に、細胞周期進行への関与、阻害、活性化、または、要求である。
【0040】
(a)〜(e)下でのように定義された単離核酸分子を、in vitroまたはin
vivoいずれかで、特に細胞周期を阻害することによって、細胞分裂および/または細胞増殖に影響を与えるために利用しうる。
【0041】
前記核酸分子を用いる細胞周期進行の阻害を、当業者に知られている異なる方法によって達成可能である。たとえば、単離した核酸分子を、対応するタンパク質またはポリペプチドを過剰発現させるために、強力なプロモーターの下流に挿入しうる。タンパク質またはポリペプチドの過剰発現が、内因性タンパク質の生物学的機能の抑制を導きうる。核酸に欠損または他の変異を導入することによって、または好適な断片を用いることによって、ドミナントネガティブなペプチドまたはポリペプチドをコードしている配列を産出可能である。かかるドミナントネガティブペプチドまたはポリペプチドは、対応する内因性タンパク質の機能を阻害可能である。
【0042】
特定の核酸を、細胞周期進行を阻害するために、内因性遺伝子の発現(転写および/または翻訳)を阻害するために使用可能である。たとえば、以上で同定したような配列を含むペプチド核酸は、遺伝子と、DNA三重構造を形成することによって、対応する内因性遺伝子の発現を抑制可能である。アンチセンスモルホリノオリゴヌクレオチドまたはリボザイムのような他の核酸を、内因性遺伝子から転写されたRNAを干渉するために利用可能である。
【0043】
自動化遺伝子合成の適用によって、天然に存在する遺伝子の配列変化を産出するための機会が提供される。対応するアミノ酸配列の合成変異体をコードしているポリヌクレオチドが、たとえば、1つ以上のアミノ酸置換、欠損または添加となりうるように、産出可能であることは評価できる。また、所望の特徴、たとえば反応性または検出可能基を持つ前記核酸配列を提供する(モルホリノ類を含む)1つ以上の合成ヌクレオチド誘導体を調製可能である。所望の特徴を持つ合成誘導体をまた、対応するポリペプチド内に含めてよい。天然に存在する配列の、少なくとも1部分の生物学的活性または生物学的機能を示している、またはたとえば、ホモログ遺伝子または遺伝子産物の同定のためのプローブとして、利用することが好適である、以上で同定した遺伝子および遺伝子産物のかかる誘導体および断片のすべてが、本発明の目的内に含まれる。また、活性または機能が、天然に存在する配列の生物学的活性または生物学的機能に反対に作用しているような誘導体および断片、たとえば、ドミナント・ネガティブ分子をコードしている誘導体および断片も含まれ
る。
【0044】
細胞周期制御、特に細胞周期進行に機能的に関連する種々の遺伝子のヌクレオチド配列が本明細書で提供されると、遺伝子合成および/または増幅の自動化技術を、in vitroでの前記核酸分子を同定するために使用しうる。いくつかのコード配列の長さのために、自動化合成の適用が、長さにして、約300までのヌクレオチドを、個々に合成し、ついで、最終アセンブリのために、正確な成功率でライゲートする、段階化遺伝子構造が要求されうる。個々に合成された遺伝子領域を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて、アセンブリする前に増幅可能である。PCR増幅の技術もまた、最終遺伝子/核酸分子の全てまたは部分を直接産出するためにも使用しうる。この場合、プライマーは、一片で、または対で互いにライゲートしうるいくつかの片でのいずれかで、最終産物のPCR増幅を開始することが可能であるように合成される。この目的のために、cDNAまたはゲノムDNAを、PCR増幅のための鋳型として使用しうる。cDNA鋳型は、市販されている、または自己構築cDNAライブラリーより由来しうる。
【0045】
さらなる好ましい実施形態によって、本発明は、細胞周期進行を阻害する医薬品の合成において、RNAの形態、特にアンチセンスRNAおよび2本鎖RNAの形態での、以上で同定した核酸分子またはその断片の利用に関する。また、リボザイムを、以上で同定した配列のために合成可能であり、対応する内因性遺伝子から転写されたRNAを分解するために利用可能である。
【0046】
以上で述べたように、2本鎖RNAオリゴヌクレオチドは、2本鎖でのRNAのいずれかの鎖に非常に相同的である、遺伝子(類)の発現のサイレンシングに影響する。最近の発見によって、元々C.eleganceにて発見された、RNA干渉(RNAi)と呼ばれるこの効果が、哺乳動物、特にヒト細胞でも観察可能であることが明らかになった。したがって、RNA干渉による特定の遺伝子機能の阻害がまた、哺乳動物細胞、特にまたヒト細胞にて実施されうる。
【0047】
図1で示したように、C.elegans中、RNAiによって、(a)〜(f)下で定義されたような核酸分子の阻害が、細胞周期進行を改善することによって、細胞分裂を阻害する。
【0048】
特に好ましいのは、RNAi技術の治療適用、特にヒトまたはヒト細胞での適用におけるこれらのRNAi技術の治療適用分子の利用である。
【0049】
哺乳動物細胞に特に好適なRNAi技術によって、「低分子干渉RNA」(siRNA)として知られる2本鎖RNAオリゴヌクレオチド類の利用がなされる。
【0050】
したがって、さらに好ましい実施形態によると、本発明は、以上で同定した任意の配列に対応する配列を持つ、低分子干渉RNAを含む核酸分子の利用に関する。
【0051】
これらのsiRNA分子を、哺乳動物細胞内、好ましくはヒト細胞内で、特に、増殖性疾患の治療のために、(a)〜(f)下で定義されたような核酸配列を含む、本発明の遺伝子の発現の治療的サイレンシングのために利用可能である。
【0052】
哺乳動物での特定の標的遺伝子の阻害は、標的遺伝子に対して特異的である(以上を参照のこと)配列を持つsiRNA分子の、哺乳動物細胞内への導入によって達成される。siRNAは、第1および第2RNA鎖を含み、両方が互いにハイブリッド形成し、第1RNA鎖の配列が、a)〜f)にて定義されたような配列の1つの断片であり、第2RNA鎖の配列が、第1RNA鎖のアンチセンス鎖である。siRNA分子は、特徴的な2−
または3−ヌクレオチド3’−オーバーハング配列を持ちうる。siRNA分子の各鎖は、好ましくは19〜31ヌクレオチドの長さを持つ。
【0053】
siRNAは、細胞トランスフェクション、特にリポフェクション、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションの任意の好適で公知の方法によって、哺乳動物細胞内に導入可能である。RNAオリゴヌクレオチドは、任意の公知のRNA合成方法によると、in vitroまたはin vivoにて、合成し、互いにハイブリッド形成可能である。
【0054】
哺乳動物細胞内、およびヒト細胞内で、疾患に関連する遺伝子の遺伝子発現を阻害する可能性によって、薬理学的組成物のための興味深い治療薬である、疾患に関連する遺伝子の配列を持つ、siRNAを産出可能な、siRNAまたは、siRNAを産出可能なベクター系を作製する。特に、本発明で定義した配列を持つ、またはかかる遺伝子の1つに相同的であるか、オーソログ的である、siRNAを、細胞周期進行の阻害のため、および疾患、特に増殖性疾患を治療する医薬品の製造に利用可能である(以下を参照のこと)。同様に、かかるsiRNAを産出可能である核酸ベクターを、かかる医薬品の製造のために利用可能である。
【0055】
他の実施形態において、本発明は、核酸分子が、好適な条件下で、センス−RNA−鎖およびアンチセンス−RNA−鎖を含む2本鎖RNA−分子を産出可能である、少なくとも1つの核酸発現ベクター内に含まれ、各RNA−鎖は、他から独立して、19〜31ヌクレオチドの長さを持つ、以上で定義したような核酸分子の利用に関する。
【0056】
この他の方法(また、Tuschl,Nature Biotechnology,Vol.20,pp.446−448にて記述された)において、siRNA自身の代わりにsiRNAを産出可能なベクター系を、遺伝子発現をダウンレギュレートするために、哺乳動物細胞内に導入する。
【0057】
かかるベクターによって産出されるRNA鎖の好ましい長さは、一般的にsiRNAに対して好ましいものに対応する(以下を参照のこと)。
【0058】
上記2本鎖RNA分子の産出のための「好適な条件(suitable conditions)」は、本技術分野の状態によると、ハイブリッド形成するときに、2本鎖RNA分子を形成する、上記配列および長さを持つ、第1および第2RNA鎖の発現を許容する、すべてのin vivoまたはin vitroである。上記2本鎖RNA分子の産出のために、特に好ましい「好適な条件」は、ヒト生細胞または動物細胞中の「in vivo条件」または培養ヒトまたは動物細胞中の「in vitro条件」である。
【0059】
「核酸発現ベクター(nucleic acid expression vector)」は、たとえばプラスミドのような、クロモソーム外構成要素であり得、その複製が、クロモソーム複製に依存しない。あるいは、ベクターは、宿主細胞内、特に哺乳動物宿主細胞内に導入されたときに、宿主細胞ゲノム内に統合され、その統合されたクロモソーム(類)と一緒に複製されるものでありうる。好ましくは、「核酸発現ベクター(nucleic acid expression vector)」は、通常、ヒトにおける遺伝子治療方法で適用される発現ベクター、特にレトロウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターでありうる。
【0060】
対象のコーディング配列は、必要であれば、好適な末端またはポリアデニル化配列に動作可能に連結しうる。RNA、特にsiRNAの場合、「コーディング配列(coding sequence)」は、対応するRNA鎖またはRNA鎖類をコードしている、ま
たは対応する配列を意味する。
【0061】
さらに、ベクターは、哺乳動物宿主細胞内で、ベクターを複製可能にするDNA配列を含みうる。かかる配列の例は、特に宿主細胞が哺乳動物細胞である場合、複製のSV40起源である。
【0062】
哺乳動物細胞内での発現に好適である多数のベクターが、本技術分野で公知であり、これらのいくつかが市販されている。好適であり得る、いくつかの市販されている哺乳動物発現ベクターには、制限はしないが、pMC1neo(ストラタジーン(Stratagene))、pXT1(ストラタジーン)、pSG5(ストラタジーン)、pcDNAI(インビトロジェン(Invitrogen))、EBO−pSV2−neo(ATCC
37593)、pBPV−1(8−2)(ATCC 37110)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)が含まれる。すべての本技術分野で公知の好適な遺伝子治療ベクターが好ましい。
【0063】
本発明の特定の好ましい実施形態において、ベクターはレトロウイルスベクターである。レトロウイルスは、ヒト細胞のような細胞の感染の後に、DNAに逆転写され、続いて、宿主細胞のゲノム内に統合されるゲノムを持つRNAウイルスである。レトロウイルスは、その宿主細胞に、レセプター仲介エンドサイトーシスによって侵入する。細胞へのエンドサイトーシスの後、レトロウイルスベクターの発現が、サイレンス化されて、単一の細胞のみが感染することが確かにされる。ウイルスDNAのゲノム内への統合が、インテグラーゼと呼ばれるウイルスコードタンパク質によって仲介され、ここで、この仲介の場所は定義されていない。レトロウイルスベクターは、また「レトロウイルス形質導入(retroviral transduction)」として当業者に公知である、レセプター仲介エンドサイトーシスによる宿主細胞へのその移動が、特に効果的であるので、遺伝子治療法におけるその利用のために、特に好ましい。当業者はまた、「パッケージング細胞(packaging cells)」と呼ばれるものを用いて、どのようにして、かかるレトロウイルスベクターを宿主細胞内へ導入するかを知っている。
【0064】
本発明の他の特に好ましい実施形態において、ベクターは、アデノウイルスベクターまたはその誘導体である。アデノウイルスベクターは、複製可能および複製不全ベクター両方を含む。後者には、E1遺伝子中のベクター欠損が含まれる。
【0065】
組み換え体ベクターは、哺乳動物、特にヒト細胞の形質導入またはトランスフェクションを可能にする好適な薬理学的キャリアーによって、哺乳動物宿主細胞内に導入する。好ましい形質導入/トランスフェクション技術には、限定はしないが、リポソーム仲介トランスフェクション、ウイルス仲介トランスフェクションおよびリン酸カルシウムトランスフェクションが含まれる。
【0066】
好ましい実施形態において、本発明は、以上で定義したようなsiRNAを産出可能なベクターシステムの利用に関し、そこで、siRNAに対応する前記核酸は、第1プロモーターの制御下、センスRNA鎖に対応する核酸を含む第1発現カセット、および第2プロモーターの制御下、アンチセンスRNA鎖に対応する核酸を含む第2発現カセットを含む、少なくとも1つの核酸発現ベクター中に含まれる。
【0067】
上記ベクター系中、ベクターは、2つの個々のプロモーターを含み、第1プロモーターは、センス鎖の転写を制御し、第2プロモーターは、アンチセンス鎖の転写を制御する(また、Tuschl,Nature Biotechnology,Vol.20,pp.446−448にて記述されている)。最後に、siRNA2本鎖が、第1および第2RNA鎖のハイブリッド形成によって構築される。
【0068】
語句「発現カセット(expression cassette)」は、本明細書で、特異的な標的ポリペプチドの発現のために、必要であるか、有益である全ての成分を含んで定義される。「発現カセット」には、限定はしないが、(たとえば対象のsiRNAまたはポリペプチドをコードしているか、相当している)対象それ自身の核酸配列、および「制御配列(control sequences)」が含まれうる。これらの「制御配列」には、限定はしないが、対象の核酸配列に動作可能に連結するプロモーター、リボソーム結合部位、転写開始および終結シグナル、および任意にレプレッサー遺伝子または種々のアクティベーター遺伝子が含まれうる。制御配列は、対象の核酸配列に天然に結合している場合に、「同種(homologous)」であると呼ばれ、そうでない場合に「異種(heterologous)」と呼ばれる。語句「動作可能に連結した(operably linked)」は、その意図した目的、すなわち所望のタンパク質の発現、RNAの場合、所望のRNAの転写、と一致して機能するように、設計されることを示唆する。
【0069】
上述した「発現カセット」にて使用されるプロモーターは、選択した宿主細胞、好ましくは哺乳動物宿主細胞、好ましくはヒト宿主細胞内で、転写活性を示す任意のDNA配列であり得る。プロモーターは、宿主細胞に対して、同種または異種いずれかで、タンパク質をコードしている遺伝子より由来しうる。
【0070】
先行技術において公知の一般的な各プロモーターにおけるプロモーターを利用可能であるので、哺乳動物宿主細胞内、特にヒト宿主細胞内での、適切な条件下、対象の遺伝子の発現が可能になる。特に、小核RNA(snRNA)U6またはヒトRNAse P RNA H1を正常にコードしている、RNAポリメラーゼIII転写ユニットから由来するプロモーターを、治療的siRNAを発現するために、プロモーターとして利用可能である。ポリメラーゼIIIプロモーターのIII型クラスのメンバーである、これらの特に好ましいプロモーターU6およびH1 RNAは、第1転写ヌクレオチド(+1位)を除いて、転写領域の上流にのみ局在する。
【0071】
好ましい実施形態において、本発明は、以上で同定した核酸配列に関して、siRNAを産出可能なベクター系の利用に関し、そこで、配列は、1本鎖RNA分子を導くプロモーターの制御下、センスRNA鎖の、およびアンチセンスRNA鎖の配列を含む発現カセットを含む、少なくとも1つの核酸発現ベクターに含まれ、1本鎖RNA分子は、バック折り畳み、ステムループ構造を形成可能である。
【0072】
本ベクター系(また、Tuschl,Nature Biotechnology,Vol.20,pp.446−448にて記述された)にて、単一RNA鎖のみが、単一のプロモーターの制御下で産出され、そこで、RNA分子鎖は、最終2本鎖siRNA分子のセンスおよびアンチセンス鎖両方を含む。この構造により、ステムループ形成下、相補的センスおよびアンチセンス配列のハイブリッド形成によって、RNA鎖のバック折り畳みが導かれる。最後に、この折り畳みバックステムループ構造の細胞内処理によって、siRNAができる。
【0073】
本発明による他の好ましい実施形態において、「核酸発現ベクター(nucleic acid expression vector)」には、1本鎖のRNA分子へ導く単一のプロモーターの制御下、センスRNA鎖の、およびアンチセンスRNA鎖の配列を含む発現カセットが含まれる。この1本鎖RNA分子はそれによって、バック折り畳みステムループ構造を形成可能である。これらの発現した「ヘアピンRNA分子(hairpin RNA−molecule)」が続いて、細胞内処理の後にsiRNAとなる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態において、本発明によるsiRNAの発現となる、核酸発現ベクターがまず、または遺伝子治療適用に好適で、哺乳動物、特にパッケージング細胞のようなヒト標的細胞に感染可能である、治療的、非毒性ウイルス粒子、ウイルス由来粒子内に導入される。
【0075】
好ましい実施形態において、siRNAの第1および第2RNA鎖は、互いに独立して、19〜25ヌクレオチドの、より好ましくは20〜25ヌクレオチドの、もっとも好ましくは20〜22ヌクレオチドの長さを持ちうる。
【0076】
他の好ましい実施形態において、siRNAの第1および第2RNA鎖は、互いに独立して、26〜30ヌクレオチド、より好ましくは26〜28ヌクレオチド、もっとも好ましくは27ヌクレオチドの長さを持ちうる。
【0077】
本発明はまた、以上で定義した配列によってコードされたタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドの利用、および/または関与する方法に関する。
【0078】
他の態様において、本発明は、細胞周期進行を阻害する医薬品の製造において、
a)配列番号6、8、10、12、14、2、4にて開示される配列、
b)100残基にわたり、少なくとも25%のa)による配列のいずれかとの配列同一性を示す配列、
c)(a)または(b)にて定義したような配列の断片、
からなる配列の群から選択される配列を持つ、ペプチドまたはポリペプチドを含む、単離ペプチドまたはポリペプチドの利用に関する。
【0079】
タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドは、本技術分野にて公知の種々の方法によって細胞内に導入可能である。たとえば、両親媒性分子は、膜透過性であり、細胞に直接侵入可能である。(通常脂溶性分子か、または膜貫通ドメインを含む)膜結合タンパク質またはポリペプチドは、直接細胞膜内に挿入し得、したがってその生物学的機能を達成可能である。導入または細胞内取り込みの他の方法には、マイクロインジェクション、リポフェクション、レセプター仲介エンドサイトーシス、または好適な担体分子、特に担体ペプチドの利用が含まれる。好適な担体ペプチドには、HIV−tat、アンテナペディア関連ペプチド類(ペネトラチン類)、ガルパラン(トランスポータン)、ポリアルギニン含有ペプチド類またはポリペプチド類、Pep−1、単純ヘルペスウイルスVP−22タンパク質が含まれるか、またはこれらより由来可能である。他の可能性のある導入方法は、かかるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを発現可能な核酸ベクターを導入することである。
【0080】
単離ポリペプチドを産出するための好適な方法が、本技術分野で公知である。例えば、かかる方法には、ポリペプチドをコードしている動作可能に連結した核酸分子を含む発現ベクターを、好適な宿主細胞内に輸送すること、前記宿主細胞を、前記ポリペプチドまたはその断片の発現を許容する条件下で、培養すること、および任意に培養培地中への発現ポリペプチドの分泌、が含まれる。細胞型に依存して、異なる所望する改変、たとえばグリコシル化が達成可能である。
【0081】
タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドはまた、たとえば固相合成(Merrifield 合成)によるように、合成的に産出しうる。
【0082】
本発明で利用するポリペプチドにはまた、融合ポリペプチドが含まれうる。かかる融合ポリペプチドにおいて、他のポリペプチドを、対象のポリペプチドまたはその断片のN−末端またはC−末端にて融合しうる。融合ポリペプチドは、他のポリペプチドをコードし
ている核酸配列(またはその一部)を、本発明の核酸配列(またはその一部)に融合することによって産出される。融合ポリペプチドを産出するための技術は、本技術分野で公知であり、インフレームであり、融合ポリペプチドの発現が、同様のプロモーター(類)およびターミネーターの制御下であるような、コード配列のライゲーションが含まれる。
【0083】
対象のポリペプチドの発現はまた、in vitro産出合成mRNAを用いて実施しうる。合成mRNAは、小麦胚芽抽出物および網状赤血球抽出液を限定はしないが含む、種々の細胞を含まない系にて効果的に翻訳可能であり、同様に、カエル卵母細胞、好ましくはアフリカツメガエル卵母細胞を限定はしないが含む、細胞に基づく系にて効果的に翻訳可能である。
【0084】
前記単離タンパク質またはポリペプチドを用いる細胞周期進行の阻害を、当業者に知られている異なる方法によって達成可能である。タンパク質またはポリペプチドの過剰発現は、内因性タンパク質生物学的機能の抑制を導きうる。欠損または他の変異の導入によって、または好適な断片の利用によって、ドミナントネガティブペプチドまたはポリペプチドをコードしている配列を産出可能である。かかるドミナントネガティブペプチドまたはポリペプチドは、対応する内因性タンパク質の機能を阻害可能である。たとえば、断片または変異体を、結合部位のみからなるが、酵素的に不活性である(すなわちその生物学的機能が部分的に欠損している)ように産出可能である。かかるドミナントネガティブ分子は、細胞内結合パートナーへ結合し、したがって、内因性分子の活性化を阻害することによって、内因性タンパク質またはポリペプチドの生物学的機能を干渉しうる。
【0085】
他の態様において、本発明は、細胞周期の進行の阻害のための医薬品の製造のための、以上で定義したような配列を含む少なくとも1つのポリペプチドに対して指向する、抗体の利用に関する。
【0086】
本明細書で使用する語句、「抗体(antibody)」には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびに、抗原またはハプテンに結合可能なFv、FabおよびF(ab)2のようなそれらの断片が含まれる。本発明はまた、所望の抗原特異性を示している非ヒトドナー抗体のアミノ酸配列を、ヒトアクセプター抗体の配列と組み合わせる、「ヒト化(humanized)」ハイブリッド抗体も意図する。
【0087】
ドナー配列は通常、少なくともドナーの抗原結合アミノ酸残基を含むが、同様にドナー抗体の他の構造的および/または機能的に相関するアミノ酸残基も含みうる。かかるハイブリッドは、本技術分野でよく知られているいくつかの方法によって調製可能である。
【0088】
具体的には、特にヒト化形態での、前記抗体およびその好適な断片を、がんおよび他の治療的疾患を治療するための方法にて、治療薬として利用しうる。
【0089】
前記抗体の利用にはまた、上記同定核酸分子またはそれらの対応するポリペプチドの治療的阻害も含まれる。特に、この利用は、増殖性疾患を指向しうる。
【0090】
抗体または断片を、本技術分野で公知の任意の方法によって、体内に導入しうる。抗体、特に断片の、生細胞内での伝達は、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質に関して記述したように達成しうる。抗原が細胞外または細胞外ドメインである場合、抗体は、細胞内伝達の必要なしに、このドメインに結合することによって、その機能を達成しうる。
【0091】
抗体を、本目的のための確立されたリンカー技術によって、放射標識、酵素標識、発光標識、蛍光標識などのような、検出可能な標識に共役的に結合可能である。標識化は特に、たとえば、コンピュータ技術、PET(ポジトロン放射トモグラフィー)、またはSP
ECT(単一光子放射コンピュータトモグラフィー)によって、診断目的(以下を参照のこと)のため、または体内または新生物腫瘍内の抗体の分布をモニタするために有用である。
【0092】
他の実施形態において、本発明は、増殖性疾患の治療または治療のための医薬品の製造のために、以上で定義したような、核酸分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または抗体の利用に関する。
【0093】
好ましい実施形態において、疾患は、冠動脈再狭窄または新生物疾患であり、後者は好ましくは、リンパ腫、肺がん、大腸がん、卵巣がんおよび乳がんからなる群より選択される(以上を参照のこと)。
【0094】
本発明による「増殖性疾患(proliferative diseases)」は、たとえばがんのような、過剰な細胞分裂または増殖に関連する疾患である。好ましくは、増殖性疾患は、再狭窄、特に冠動脈再狭窄、または新生物疾患であり、後者は好ましくは、リンパ腫、肺がん、大腸がん、卵巣がんおよび乳がんからなる群より選択される。
【0095】
再狭窄は、血管形成またはステント移植の部位での組織の増殖による、血管の再狭窄である。ステントは、先にブロックした動脈の開口を維持するための、きわめて小さな金属チューブである。しかしながら、再狭窄は、移植したステントを持つ多くの患者で発達し、したがって、第2の血管形成、ステント移植または冠動脈バイパス手術までを必要とする。
【0096】
新生物疾患は、新規に形成される組織または細胞によって引き起こされる疾患である。本発明の文脈において、もっとも関連する新生物疾患は、新生物腫瘍、特に、リンパ腫、肺がん、大腸がん、卵巣がんおよび乳がんからなる群より選択されるものである。
【0097】
他の態様において、本発明は、細胞周期進行を活性化する医薬品の製造において、
a)配列番号5、7、9、11、13、1、3にて表される核酸配列、
b)100残基にわたり、少なくとも25%のa)による核酸によってコードされているタンパク質との配列同一性を示す、および/またはBLAST配列解析プログラムを用いた、コンピュータ補助検索で、最大で10-5のe値で検出可能である、ポリペプチドをコードしている核酸配列、
c)中程度または高い逼迫性の条件下で、(a)または(b)に対応する配列を持つ核酸分子と、ハイブリッド形成可能な核酸分子の配列、
d)(a)、(b)または(c)で定義したような配列のいずれかのアンチセンス−配列、
e)(a)、(b)、(c)または(d)の断片、
f)(a)、(b)、(c)、(d)または(e)にて定義したような配列のいずれかに対応する、DNA配列、
からなる配列の群から選択される配列を持つ、核酸分子を含む、単離核酸分子の利用に関する。
【0098】
他の態様において、本発明は、細胞周期進行を活性化する医薬品の製造において、
a)配列番号6、8、10、12、14、2、4にて開示される配列、
b)100残基にわたり、少なくとも25%のa)による配列のいずれかとの配列同一性を示す配列、
c)(a)または(b)にて定義したような配列の断片、
からなる配列の群から選択される配列を持つ、ペプチドまたはポリペプチドを含む、単離ペプチドまたはポリペプチドの利用に関する。
【0099】
他の態様において、本発明は、細胞周期進行を活性化する医薬品の製造において、以上で定義したような配列を含む少なくとも1つのペプチドまたはポリペプチドに対して指向する、抗体の利用に関する。
【0100】
したがって、以上で同定した核酸配列、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質および抗体を含む他の利用または方法は、細胞周期進行が異常である、欠損している、または陰性に影響をしている疾患の治療に対して指向している。
【0101】
異常、欠損または陰性に影響している細胞周期進行を持つ疾患は、アポトーシスの増加および発生疾患、特に増殖遅延または傷の治癒の遅れによって特徴づけられうる。
【0102】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、疾患が、アポトーシスの増加、増殖遅延または傷治癒の遅延によって特徴づけられる、疾患の治療の利用または方法に関する。
【0103】
「細胞周期進行の活性化(activation of cell cycle progression)」には、細胞周期進行の開始および刺激両方が含まれる。
【0104】
利用には、限定はされないが、前記標的遺伝子の発現の直接または間接活性化のための、および/または前記標的遺伝子の機能の活性化のための、前記核酸分子およびそれらに対応するポリペプチドの利用が含まれる。特に、利用には、細胞周期制御、特に細胞周期進行に関与する内因性遺伝子の機能または活性化の欠如の、置換または補完が含まれうる。
【0105】
RNAまたはポリペプチドの発現は、好適なプロモーター、好ましくは構造性または同種プロモーターを含むゲノムDNAまたはcDNAの導入によって達成されうる。あるいは、任意の好適な核酸発現ベクターを利用可能である(以上も参照のこと)。コードされたタンパク質またはポリペプチドは、細胞周期制御または進行において同様の生物学的機能を持ち、特に、細胞周期進行を活性化する能力を持つ、全長または部分または断片ペプチドでありうる。
【0106】
本技術分野で公知のすべての遺伝子治療技術を、細胞周期進行に陰性に影響を与えている疾患を患っている対象の細胞または組織へ、配列を導入するために使用可能である。以上で同定した配列の導入に対して特に有用なのは、ウイルスベクター、たとえば、レトロウイルスまたはアデノウイルスベクター、リポフェクションおよびエレクトロポレーションである。
【0107】
タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドはまた、任意の公知のin vivoまたはin vitro法によって産出可能であり、細胞内へ直接導入可能である(以上を参照のこと)。
【0108】
好適な抗体が、結合する標的タンパク質の生物学的機能を活性化するために利用可能であることが知られている。活性化は、標的タンパク質への結合に際して、立体配座的変化を誘導することによって起こりうる。他の可能性は、抗体が、2つ以上のタンパク質に結合し、これらを、十分に近い物理的な距離まで連結して、標的タンパク質の相互作用を誘導することである。後者の活性化様式は特に、膜結合二量体レセプターに関して知られている。
【0109】
使用した核酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質および抗体に関する特定の実施形態に関して、本発明の他の利用に関して以上で定義したものと同様のものが適用される。
【0110】
他の実施形態において、本発明は、
a)以上で定義したような核酸分子または核酸発現ベクター、
b)以上で定義したような配列を含むペプチドまたはポリペプチド、
c)(b)にしたがった少なくとも1つのペプチドまたはポリペプチドに対して指向する抗体、
からなる群より選択される、単離核酸分子、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体を含む医薬品に関する。
【0111】
好ましくは、この単離核酸分子は、RNA分子であり、好ましくは、2本鎖である。特に、単離核酸分子は、本発明によるsiRNA分子である。
【0112】
医薬品は、がんのような任意の種類の増殖性疾患の治療のため、好ましくは、細胞周期制御または細胞周期進行が、役割を果たす疾患の治療、特に、リンパ腫、肺がん、大腸がん、卵巣がんまたは乳がんの治療方法で利用または適用されうる。
【0113】
医薬品はまた、異常または欠損細胞周期進行に関連する任意の種類の疾患の治療、特に、アポトーシスの増加、発達疾病または異常(特に増殖遅延)および傷治癒の遅延の治療方法で利用または適用しうる。
【0114】
医薬品およびそれらの投与に対する以下の考慮がまた、以上で開示した利用に対してと同様に、本発明の医薬品にも適用される。
【0115】
医薬品には、好ましくは、好適な薬理学的に許容可能な担体、好ましくは、ウイルスベクターを寄生させ得るウイルス粒子またはウイルス由来粒子、リポソーム、特にカチオン性リポソーム、リン酸カルシウムなどを含むトランスフェクション溶液がさらに含まれる。好ましくは、哺乳動物標的細胞に入る、発現ベクターまたは発現ベクターを含むウイルス粒子の能力を増強可能である担体を利用する。医薬品にはまたさらに、他の担体基質、好ましくはデンプン、ラクトース、脂質、ステアリン酸、アルコール、生理学的NaCl溶液またはさらなる添加物、特に安定剤、維持剤、色素および香料が含まれうる。
【0116】
医薬品はまた、他の好適な基質を含みうる。たとえば、RNAまたはsiRNAを含む医薬品がまた、2本鎖RNA分子を安定化させる、および/または2本鎖RNA分子またはDNA発現ベクターを、ヒトまたは動物細胞にトランスフェクト、または注入可能にする基質を含みうる。
【0117】
投与は、公知の方法によって実施可能であり、そこで、核酸を、所望の細胞にin vitroまたはin vivoで導入する。治療適用のために、医薬品は、溶液、特に注射可能溶液、クリーム、軟膏、錠剤、懸濁液、顆粒などの形態でありうる。医薬品は、任意の方法にて、特に、注射によって、経口、経鼻、直腸適用によって投与しうる。医薬品は、特に、非経口で投与でき、これは、消化器官に入らないことを意味し、たとえば、皮下注射によってである。医薬品をまた、注入または注射のための溶液の形態で、静脈内に注射しうる。他の好適な投与形態は、クリーム、軟膏、スプレーおよび他の経皮治療基質の形態で、または鼻スプレー、エアロゾルのような、吸入可能基質の形態で、またはマイクロカプセルまたはインプラントの形態で、皮膚上への直接投与でありうる。
【0118】
上記配列を持つ2本鎖RNA分子を含むか、またはかかる2本鎖RNA分子を発現可能な核酸ベクターを含むか、いずれかの医薬品に対する、最適な投与形態および/または投与量は、治療すべき疾患の型および進展に依存する。
【0119】
好ましくは、活性剤または阻害剤を、薬理学的に効果的な量で投与する。本明細書で使用するところの、活性剤または阻害剤の「薬理学的に効果的な量(pharmaceutically effective amount)」は、in vitroで処理した細胞内、またはin vivoで治療した対象内のいずれかで、所望の薬理学的結果を達成するために効果的な量である。特に、薬理学的に効果的な量は、いくつかの時点で、増殖性疾患、または異常または欠損細胞周期進行に関連した疾患に関連した1つ以上の臨床的に定義した病理学的効果に、陽性に影響を与えるために十分な量である。薬理学的に効果的な量は、選択した特定の活性剤または阻害剤に依存して変化し得、また、治療すべき対象に関連した種々の因子および状態、および疾患の重症度に依存する。たとえば、活性剤または阻害剤が、in vivoで投与されるべき場合、患者の年齢、体重、性別および一般的な健康、ならびに前臨床動物試験にて得た、投与応答曲線および毒性データのような因子が、考慮されるべき因子でありうる。該薬剤(活性剤または阻害剤)に関する薬理学的に効果的な量の決定は、当業者が可能である。好ましくは、活性剤または阻害剤は、0.1〜50%/薬理学的組成物の重量、より好ましくは10〜30%の濃度で存在する。
【0120】
本発明による阻害剤、活性剤または薬物はまた、「小分子(small molecule)」である。小分子は、タンパク質、ペプチド抗体または核酸ではなく、5000Da未満、好ましくは2000Da未満、より好ましくは2000Da未満、もっとも好ましくは500Da未満の分子量を示す、分子である。かかる小分子は、ライブラリーから開始する、ハイスループット手順/スクリーニングアッセイにて同定しうる。かかる方法は、本技術分野で公知である。好適な小分子はまた、組み合わせ化学として公知の方法によって設計し、またはさらに改変可能である。
【0121】
本明細書によって提供され、(a)〜(f)にて定義されたような配列の1つを持つ遺伝子/タンパク質を、細胞周期進行を阻害する、または活性化する新規の薬剤に関する、ハイ−スループットまたは他のスクリーンにて使用可能である。特に、かかるスクリーンによって同定された、クロマチン分離の阻害剤を、増殖性疾患の治療のため、特に、細胞周期制御または細胞周期進行が役割を果たす疾患の治療のための、医薬品として使用しうる。
【0122】
他の態様において、本発明は、増殖性疾患、または異常な細胞周期進行に関連する疾患のin vitro診断のための、以上で定義したような配列を含む、単離核酸分子の利用、または、以上で定義したような配列を含む、少なくとも1つのポリペプチドに特異的に結合するリガンドの利用に関する。
【0123】
好ましい実施形態において、診断は、以上で定義したような増殖性疾患に関する。
他の好ましい実施形態において、診断は、以上で定義したように、異常、欠損または陰性に影響された細胞周期進行に関連する疾患に関する。細胞分裂の間の「異常(abnormal)」細胞周期進行の疾患には、細胞周期進行が欠損するか、陰性に影響される、疾患が含まれる。
【0124】
増殖性疾患において、以上で同定した配列に対応する内因性遺伝子の発現が増加されうる。
【0125】
細胞周期進行が異常、欠損または陰性に影響された疾患において、対応する内因性遺伝子の発現は低くなりうる。さらに、対応する内因性遺伝子が変異され得、対応するタンパク質の活性が低くなるか、または機能しなくなる。
【0126】
以上で同定した核酸分子およびプローブの診断利用には、限定はしないが、特に、以上
で特性化した核酸配列(特にcDNA、RNA)を含む内因性核酸分子に対する定量的ハイブリッド形成による、生物学的プローブ(好ましくは、限定はしないが、組織試料、細胞抽出液、体液など)中の前記標的遺伝子の発現の定量的検出が含まれうる。
【0127】
内因性遺伝子およびそれらの対応するタンパク質の発現を、組織試料、体液、および組織および細胞抽出液中で、in vivoにて解析可能である。発現解析を、RNA in situハイブリッド形成、(定量的RT−PCRを含む)PCR、および、沈殿、受動的凝集、酵素免疫反応(ELISA)技術および放射免疫アッセイ技術を限定はしないが含む、種々の血液学的または免疫学的アッセイのような、本技術分野で公知の任意の方法によって実施可能である。
【0128】
診断利用にはまた、以上で同定した核酸配列に対応する内因性遺伝子における変異の検出も含まれる。
【0129】
好適な核酸プローブは、標準の手順にしたがったDNA合成の利用によって、または、好ましくは長い配列に関して、選択した鋳型配列および選択したプライマーでのPCR技術の利用によって合成しうる。このプローブは、放射活性または非放射活性標識を含む、当業者に公知の、任意の好適な標識で標識化しうる。典型的な放射性標識には、32P、125I、35Sなどが含まれる。放射性同位体で標識したプローブを、DNaseおよびDNAポリメラーゼを用いる、従来のニック翻訳反応によってDNA鋳型より構築可能である。非放射性標識には、たとえば、ビオチンまたはチロキシンのようなリガンド、または種々の発光または蛍光化合物が含まれる。このプローブはまた、たとえば、一方の末端において同位体標識で、そして他の末端においてビオチン標識で、異なる型の標識で両方の末端で標識化しうる。標識化プローブおよび試料を次に、ハイブリッド形成緩衝溶液中で混合し、アニーリングが起こるまで、適切な温度に維持可能である。かかる核酸プローブをまた、診断目的以外、たとえば、さらなるホモログまたはオーソログの同定のためにも利用しうる。
【0130】
前記ポリペプチドに対して特異的に結合する「リガンド(ligand)」が本技術分野で公知である。かかるリガンドには、たとえば細胞内結合パートナー、抗体、分子親和性体のようなタンパク質またはポリペプチド、および小分子が含まれる。特異的に結合するリガンドは、たとえば、酵母2−ハイブリッドスクリーンおよびアフィニティークロマトグラフィーによって、本技術分野で公知の標準スクリーニングアッセイによって同定可能である(以下も参照のこと)。特異的に結合するリガンドは、それが相互作用する分子を阻害すること、または活性化することのような、他の機能を達成する必要がない。
【0131】
好ましい実施形態において、リガンドは、以上で定義したような配列を含む、少なくとも1つのポリペプチドに特異的に結合する抗体である。
【0132】
本発明による「特異的に結合する(specific binding)」は、同定されるべきポリペプチド(標的ポリペプチド)が、試料中に存在する他の任意のポリペプチドよりもより高い親和性で結合することを意味する。少なくとも3倍高い親和性、より好ましくは少なくとも10倍高い親和性、もっとも好ましくは少なくとも50倍高い親和性が好ましい。非特異的結合(「交差反応性(cross−reactivity)」)は、標的ポリペプチドが、たとえば、ウエスタンブロット上でその大きさによって、明確に同定可能である場合に許容されうる。
【0133】
好ましくは、特異的に結合するリガンドを、たとえば、蛍光標識、酵素、分子タグ(たとえばGST、myc−タグなど)、放射反応性同位体、または標識化した基質、たとえば、標識化した第2抗体で標識化可能である。MRI(磁気共鳴イメージング)に関して
、リガンドを、ガドリニウム、超常磁性酸化鉄またはランタニド類によって、キレートしうる。PRT(ポジトロン放射トモグラフィー)またはSPECT(単一光子放出コンピュータトモグラフィー)に関して、一般的に利用される同位体には、11C、18F、15O、13N、86Y、90Yおよび16Coが含まれる。
【0134】
他の態様において、本発明は、増殖性疾患または異常な細胞周期進行に関連した疾患のin vitro診断のために、以上で定義したような単離核酸分子、および/または以上で定義したような、少なくとも1つのポリペプチドに対して指向するリガンドを含む、診断キットに関する。
【0135】
診断キットには、標識化または非標識の、以上で同定した遺伝子または遺伝子産物の、好適な単離核酸またはアミノ酸配列、および/またはそれに対する結合リガンド(たとえば抗体)、および適切であり本技術分野で公知である助剤が含まれる。アッセイは、液体相アッセイならびに(すなわち、支持体上に固定化した1つ以上の試薬での)固体相アッセイでありうる。診断キットにはまた、診断すべき疾患を示唆する他の分子に対して指向するリガンドも含まれうる。
【0136】
他の態様において、本発明は、細胞周期進行を阻害する、または活性化する薬物の同定および特性化のための、スクリーニングアッセイでの、以上で定義したような、単離核酸分子または核酸発現ベクターの利用、または、以上で同定したような配列を含む少なくとも1つのポリペプチドに対して指向する抗体の利用に関する。
【0137】
他の態様において、本発明は、細胞周期進行を阻害または活性化する、相互作用薬物のためのスクリーニングアッセイにおける、以上で定義したような配列を持つ、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の利用に関する。かかる相互作用薬物はまた、上述したように、診断のためのリガンドとして使用しうる。
【0138】
本発明による「スクリーニングアッセイ(screening assay)」は、基質のライブラリーをスクリーニングすることによって、細胞周期進行を阻害する、または活性化する、基質、特に可能性ある薬物を同定可能にするアッセイに関する。本発明による「スクリーニングアッセイ」はまた、以上で定義した核酸、ポリペプチド、ペプチドまたは抗体に結合可能な基質に関して、ライブラリーをスクリーンするアッセイにも関する。好適なライブラリーには、たとえば、小分子、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体が含まれうる。
【0139】
本発明は、細胞周期進行を阻害する、または活性化する、または前記核酸、ポリペプチド、ペプチドまたは抗体に結合する基質の同定のためのアッセイ、または特性化のためのアッセイに関する。特に、本発明は、薬物に対するスクリーニングアッセイに関する。かかる薬物は、非特異的化合物のライブラリー、ならびにすでに他の疾患の治療のための公知の薬物のライブラリーから同定および特性化しうる。かかる公知の薬物に対して、また、可能性のある副作用および治療的適用用量が公知である。
【0140】
好適な薬物には、「相互作用薬物(interacting drugs)」、すなわち、以上で同定したポリペプチドまたは核酸に結合する薬物が含まれる。かかる相互作用薬物は、結合する分子を阻害、または活性化しうる。相互作用基質の例は、以上で同定した配列を含むペプチド核酸、アンチセンスRNA、siRNA、リボザイム、アプトマー、抗体および分子親和性体(キャッチマブス(CatchMabs)、Netherlands)である。かかる薬物は、増殖性疾患の治療の、医薬品の製造および方法のための利用を含む、本発明の任意の態様にしたがって利用しうる。かかる相互作用薬物はまた、細胞周期制御または細胞周期進行に関連する疾患の診断のために、標識化も可能であり、
またリガンドとして利用可能である。
【0141】
好適なスクリーニングアッセイが、本技術分野で公知である。たとえば、本発明の好ましい実施形態において、細胞周期進行を阻害する、または活性化する、阻害剤または活性剤の同定および特性化のためのスクリーニング方法には、以下の段階が含まれる。
a)以上で定義したような核酸分子または核酸発現ベクターの、宿主細胞または宿主器官への形質導入、
b)阻害または活性化分子に対する少なくとも1つの候補が存在する、または存在しないかいずれかで、段階(a)の核酸によってコードされるか、または対応する、ポリペプチドまたはRNAの過剰発現を許容する条件下での、段階a)にて得た、宿主細胞または宿主器官の培養、
c)前記培養細胞または器官における細胞周期進行の解析、およびそれによる、細胞周期進行の阻害剤または活性化の同定。
【0142】
本明細書で使用する語句「発現ベクター(expression vector)」は、RNAまたはsiRNA発現ベクターのみに関連するだけでなく、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を発現しているベクターにも関連する。
【0143】
発現ベクターの宿主細胞または宿主器官への伝達は、限定はしないが、リン酸カルシウム形質導入、リポフェクション、マイクロインジェクションを含む、すべての公知の形質導入またはトランスフェクション技術によって実施しうる。宿主細胞/宿主器官は、損傷した細胞分裂の、好ましくは、損傷した細胞周期制御または細胞周期進行の検出を可能にする、すべての好適な細胞または器官でありうる。特に好ましい宿主器官は、その透明な体によって、細胞周期進行を含む、細胞分裂間の不全の簡単な検出が可能になるので、C.elegansである。脊椎動物細胞、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト細胞、特にヒト細胞株もまた好ましい宿主細胞である。発現ベクターは、以上で定義したような核酸配列の発現の可能にする、好適である任意の公知のベクターでありうる。好ましい発現ベクターは、以上で定義したような、RNA、ペプチドまたはポリペプチドの過剰発現を許容するプロモーターを含む、発現カセットを含む。
【0144】
発現ベクターの宿主細胞/宿主器官への伝達の後、宿主細胞または宿主器官の一部分を、少なくとも1つの阻害剤または活性剤分子の存在下、発現、好ましくは、以上で定義したようなRNA、ペプチドまたはポリペプチドの過剰発現を可能にする、培養条件下で、培養する。トランスフェクトした宿主細胞の他の部分を、同様の培養条件下、ただし、阻害剤または活性剤分子のない状態で培養する。
【0145】
最後に、適切なインキュベーション時間/培養期間の後、少なくとも1つの阻害剤または活性剤分子に対する候補の存在下、または存在しない条件で培養した、宿主細胞または宿主器官に関する、増殖状態および/または細胞分裂を検出するか、または好ましくは定量化する。この検出または定量化段階は、特に宿主器官がC.elegansまたは、経時的蛍光またはDIC顕微鏡によって解析可能である他のほとんど透明な器官である場合、好ましくは経時的蛍光またはDIC顕微鏡によって実施する。検出/定量化段階はまた、増殖状態または細胞分裂の程度を検出するのに好適である、本技術分野で公知の他の任意の技術、好ましくは全ての種類の顕微鏡技術によって実施しうる。
【0146】
他の好ましい実施形態において、宿主基質のライブラリーからの、細胞周期進行を阻害する、または活性化する相互作用分子の同定および特性化のためのスクリーニング方法は、以下の段階を含む。
a)宿主細胞内で、以上で定義したような核酸分子配列によってコードされたポリペプチドを、組み換え体的に発現させること、
b)前記組み換え体的に発現した段階(a)のポリペプチドを、単離し、任意に精製すること、
c)試験基質を任意に標識化すること、および/または前記組み換え体的に発現したポリペプチドを標識化すること、
d)前記組み換え体的に発現したポリペプチドを、固体相に固定化すること、
e)前記固定化ポリペプチドと、少なくとも1つの試験基質を接触させること、
f)任意に一回以上の洗浄段階、
g)固体相にて固定化したポリペプチドに対する、少なくとも1つの試験基質の結合を検出すること、および
h)細胞周期進行の阻害または活性化のための、機能アッセイを実施すること。
【0147】
段階a)には、好適な発現系からの、特に、細胞を含まない翻訳、細菌発現、または昆虫細胞中のバキュロウイルスに基づく発現からの、以上で同定したポリペプチドまたはその誘導体の組み換え発現が含まれる。
【0148】
段階b)には、当業者が知っている適切な生化学的技術で、前記組み換え発現したポリペプチドの単離と、任意にそれに続く精製が含まれる。
【0149】
あるいは、これらのスクリーニングアッセイにはまた、融合タンパク質として、または変性タンパク質として、特に、「タグ」配列を含むタンパク質として、前記ポリペプチドの発現を含む、以上で同定したポリペプチドの誘導体の発現も含まれうる。これらの「タグ」配列は、前記標的遺伝子のコード配列のN−またはC−末端いずれかに、「インフレーム」にライゲートしている、短い核酸配列からなる。組み換え発現した遺伝子を標識化するために一般的に使用されているタグは、ヒスチジンのみからなる、特に6以上のヒスチジンからなる、ホモポリペプチドをコードしている、ポリヒスチジンタグ、GST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)、c−myc、FLAG(登録商標)、MBP(マルトース結合タンパク質)およびGFPである。この文脈において、語句「ポリペプチド(polypeptide)」は、単に、配列ID番号1〜31の核酸配列を持つポリペプチド、その天然に存在するホモログ、好ましくはオーソログ、より好ましくはヒトオーソログだけを含むのではなく、これらのポリペプチドの誘導体、特にタグ配列を含む融合タンパク質またはポリペプチドも含む。
【0150】
これらのポリペプチド、特に、適切なタグ配列によって標識化されたもの(たとえばHisタグまたはGSTタグ)を、標準のアフィニティークロマトグラフィープロトコールによって、特に、両方とも市販されている抗Hisタグ抗体に、または抗GST抗体に連結したクロマトグラフィー樹脂を用いることによって精製しうる。あるいは、Hisタグ化分子を、Niイオンを用いる、金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによって精製しうる。「標識特異的」抗体の利用の代替として、精製にはまた、前記ポリペプチドに対する抗体の利用も含まれうる。以上で記述したような、組み換え発現した標的遺伝子の精製段階(段階2)を含むスクリーニングアッセイは、本発明の本態様の好ましい実施形態である。
【0151】
任意に、段階c)にて、相互作用に関して試験した化合物を、放射性同位体の組み込みによって、または発光または蛍光化合物との反応によって、標識化しうる。あるいは、またはさらに、組み換え発現したポリペプチドを標識化しうる。
【0152】
段階d)において、組み換え発現したポリペプチドを、固相、特に(限定はしないが)クロマトグラフィー樹脂に固定化する。固相への結合は、共有結合の産出によって好ましく確立される。
【0153】
段階e)にて、前記ポリペプチドまたはその複合体(特に薬物ライブラリー)の、可能性のある相互作用パートナーでありうる、候補化学物質を、固定化ポリペプチドとの接触に適用する。
【0154】
任意に、段階f)にて、1つ以上の洗浄段階を実施して良い。結果として、固定化ポリペプチドと強力に相互作用する化合物のみが、固体(固定化)相に結合したまま残る。
【0155】
段階g)において、ポリペプチドと、特異的結合間の相互作用を、特に、バックグラウンドレベル以上で、固相に結合したままの標識の量をモニタすることによって、検出する。
【0156】
かかる相互作用分子を、以上で記述したような診断の目的のために、機能的特性化せずに利用しうる。
【0157】
段階h)にて、相互作用分子をさらに、細胞周期進行の阻害または活性化のために解析する。かかる解析または機能アッセイは、本技術分野で公知の任意のアッセイ系にしたがって実施可能である。好適なアッセイには、宿主細胞または宿主器官の、相互作用分子の存在下(試験条件)または存在しない状態(対照条件)での培養、および試験および対照条件下での細胞周期進行の比較、が含まれる。
【0158】
他の態様において、本発明は、細胞周期進行の阻害剤または活性剤が、以上で記述した任意のスクリーニング方法にしたがって同定され、適切な量で合成され、薬理学的組成物内に処方される、薬理学的組成物の調製方法に関する。
【0159】
阻害剤または活性剤分子を合成するために好適な方法は、本技術分野で公知である。たとえば、ペプチドまたはポリペプチドを、組み換え発現によって合成可能であり(また以下を参照のこと)、抗体を、ハイブリドーマ細胞株または免疫化動物より得ることが可能である。小分子を、任意の公知の有機合成方法にしたがって合成可能である。
【0160】
適切な量は、薬理学的に効果的な量に関連する。
同様に、前記阻害剤または活性剤は、以上で記述した任意のスクリーニング方法によって提供され、薬理学的組成物内に処方しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0161】
以下の実施例は、これらに限定することなしに、本発明を例示している。
[実施例1]
他の種における、機能的オーソログを同定するためのプロトコール
オーソログ遺伝子を同定するために、以下の手順を利用した。同定した相同アミノ酸配列自身を、BLAST検索のために利用した。本来のC.elegansタンパク質を、10-5未満のe値での、BLASTヒットによって同定し、同定したホモログを、オーソログとして定義した。BLAST検索を、デフォルトパラメータおよび低複雑性フィルターをオンにして実施した。相同遺伝子の同定のための他のパラメータは、配列同一性の割合であり得る。100残基にわたり、30%の配列同一性が、相同遺伝子を定義する。BLASTが完了した後、多数の配列アライメントを、適切なソフトウェア(たとえば、CLUSTALW)を用いて実施し、近隣結合系統樹を作製する。当業者は、系統樹から、ヒトオーソログを同定可能である。特に、単一の種分化事象において分離された、またはツリー上で非常に関連しているヒト配列が、オーソログでありうる。
【0162】
[実施例2]
RNAi実験のためのdsRNA分子の産出
第1に、オリゴヌクレオチドプライマー対配列を、標準のPCR技術を用いて、対照のコード領域の遺伝子の部分を増幅するために選択した。プライマー対は、コード配列の少なくとも500塩基を含むPCR産物、または500残基より小さな遺伝子のための最大コード塩基を含むPCR産物を産出するために選択した。両方のDNA鎖から、in vitro RNA転写反応のための鋳型として、PCR産物の続く利用を許容するために、T7ポリメラーゼプロモーター配列
【0163】
【化1】

【0164】
を、フォワードプライマーの5’末端に加え、T3ポリメラーゼプロモーター配列
【0165】
【化2】

【0166】
を、リバースプライマーの5’末端に加えた。オリゴヌクレオチドプライマーの合成は、商業的供給業者(シグマゲノシス(Sigma−Genosys)、UKまたはMWG−バイオテック(MWG−Biotech)、Germany)によって完了した。
【0167】
PCR反応を、0.8μMプライマーと、およそ1.0μgの野生型(N2株)ゲノムDNA鋳型を用いて、Taqポリメラーゼで、50μlの容量中で実施した。PCR産物をEtOH沈殿し、70% EtOHで洗浄し、7.0μl TE中で再懸濁した。1.0μlのPCR反応液を、T3およびT7 RNAポリメラーゼを用いて、5μlの転写反応液のために、各2つの新鮮なチューブ内にピペットした。別々のT3およびT7転写反応を、製造業者の取扱説明書(アンビオン(Ambion)、Megascriptキット)にしたがって実施し、それぞれを、RNaseを含まない水で50μlまで希釈し、混合した。
【0168】
混合したRNAを、製造業者の取扱説明書(キアゲン(Qiagen))にしたがって、RNeasyキットを用いて精製し、総量130μlのRNaseを含まないH2O中に希釈した。50μlのこの液体を、10μlの6×注射緩衝液(40mM KPO4 pH7.5、6mMクエン酸カリウム、pH 7.5、4% PEG6000)と混合した。RNAを、68℃にて10分間、37℃にて30分間加熱することによってアニールした。最終dsRNAの濃度を、0.1〜0.3μg/μlの範囲であると測定した。T3およびT7転写反応、ならびにdsRNA種のPCRの産物を、1%アガロースゲル上に流し、品質制御目的のために試験した。2本鎖化の成功を、非還元ゲルに流した時に、1本鎖RNAに関する、ゲル移動度のシフトをスコア化することによって査定した。
【0169】
[実施例3]
dsRNAの注入と表現型分析 dsRNAを、野生型(N2株)若生体雌雄同体の両方の生殖腺の合胞体部分に相互に注射し、この動物を20℃にて24時間インキュベートした。ついで胚を注射した動物から切り離しを、細胞分裂工程中の可能性のある欠損に関して、すでに記述されたように(Gonczyら「変異解析による、1つの細胞分裂期 シノラブディス・エレガンス胚における細胞運列工程の解剖(Dissection of cell division processes in the one cell stage Caenorhabditis elegans embryo by
mutational analysis.)」J Cell Biol. 144,927−946(1999))、5秒ごとに1イメージを捕獲し、経時的微分干渉コント
ラストビデオ顕微鏡によって解析した。各実験に関して、少なくとも3つの異なる注射した虫を、受精後すぐに、4細胞分裂期まで、この様式で撮影した。2つのさらなる注射した虫からの胚を、より短い期間、それぞれ2細胞および4細胞分裂期をカバーして、記録し、これによって、各実験にて、少なくとも5匹の注射した虫に関して記録した。
【0170】
いくつかの場合、注射した動物の解剖の間の、構造の統合性の欠如によって証明されたように、胚が、浸透性変化に対する急性の感受性を示した。この制限を克服するために、注射した動物を解剖せずに、かわりに、0.1%トリカインおよび0.01%テトラミソールを含むM9培地中、10分間麻酔し、アガロースパッド上、そのままマウントし、子宮内のF1胚形成を観察した(Kirbyら,Dev.Diol.142,203−215(1990))。体壁を介して見ることによる光学分解は、解剖した胚を観察することによって実施したものと等しくはなく、これらの場合は、実施される表現型解析は限定された。
【0171】
3匹の注射した虫をまた、dsRNAの注射の24時間後、3つの新鮮なプレートに移し、18℃にて維持した。3日後、プレートを、F1幼虫(L2’s−L4’s)の存在、ならびにそれらの発育期に関して、立体顕微鏡(20〜40x 総倍率)で確認した。この3日後、プレートを、F1生体、ならびにそれらの総体形態、およびF2子孫の存在に関して、再び調査した。
【0172】
[実施例4]
C.elegans遺伝子F59E12.11の特性化
dsDNAを設計し、RNAiによるC.elegans遺伝子の発現を特異的にサイレンス化するために使用し、これによって、この後生動物における、胚細胞分裂の最初の回においてその機能的関与を試験した。dsRNAを、PCR増幅した、F59E12.11遺伝子の野生型ゲノムDNA断片より、in vitroで合成した。PCRのために、以下のプライマー対を利用した。それぞれフォワードおよびリバースプライマーとして
【0173】
【化3】

【0174】
および
【0175】
【化4】

【0176】
である。dsRNAを精製し、生体雌雄同体虫内に注射した。RNAi処理の表現型結果を、経時的微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡を用いて、注射した虫のF1子孫にて、24時間後に記録した。胚の記録は、受精後〜20分で開始し、一方、雌性前核は、その減数分裂を15〜20分後までに完了している。
【0177】
対照虫には、注射をしないか、無関係のdsRNAを注射した。無関係なdsRNAは、実験的なdsRNAと同様のヌクレオチド組成物からなるが、ヌクレオチドは無作為な順番であった。かかる対照虫のF1子孫において、最初の2回の胚細胞分裂の細胞事象は、DIC顕微鏡によって観察されるように、非常に制限された多様性を示すことが発見さ
れた。表現型偏差の可能性に関して試験し、スコア化したすべての工程を、図5にて列記し、例示する。簡単に記すと、胚の前−後極性をまず、卵へ入った直後、皮質における、雄性前核の部分によって決定する。これは、胚の縦軸にそって、雄性前核まで細胞質の中央部分に通じる卵黄顆粒の明確に協調した流れおよびそれと同時に一連の皮質波、または胚後部へ向かって進む波を伴う。その後すぐに、雄性および雌性前核が、非常にパターン化された移動を受けて、結果として、胚の後部半分内で集合し、その後、胚の縦軸にそったさらなる有糸分裂スピンドルを設定するために、前核対および関連する中心対の集中および回転がおきる。前核エンベロープの同期崩壊後、明らかに二極性有糸分裂スピンドルが、はじめは短いが、ついで延長される。これらの運動は、後部スピンドル極の、わずかな後部置換が同時におこり、一方前核スピンドル極はほぼ一定のままである。ついでこれによって、後期および終期の間の、スピンドルの非対称性配置となり、それによって、細胞質分裂溝の非対称性配置となり、等しくない大きさの娘細胞が産出される。より小さな後部P1割球およびより大きな前部AB割球。AB核がついで、AB細胞の中心に直接移動する一方で、その二重中心対の1つが導かれる、前部P1皮質への再移動の間に、明白な90°回転が起こる前に、P1核は典型的には、さらに細胞の後部へ移動する。これは、P1割球がついで、AB割球のそれと垂直に、胚の縦軸に沿って分割することを保証する。これらの2つの分割は、P1が、ABより2〜3分間遅れて、非同期的に起こる。
【0178】
dsRNAを注射した虫のF1胚において、以下の高度に再現可能な表現型が観察された(図1)。胚は、異常な細胞質外見を示す。極にて、未濃縮クロモソーム物質が観察可能である(矢印)。胚は、後核形成の前に発育を拘束する。表現型は、浸透圧不安定性が伴い、胚が卵殻をみたすことによって、それ自身を示す。表現型は胚性致死である。
【0179】
全ての観察された表現型は、有糸分裂の間の細胞周期進行における、F59E12.11遺伝子機能の必要性を示唆している。この機能は、後生動物にわたって、細胞分裂に必須であるので、この遺伝子、およびその任意のホモログおよび誘導体が、抗−増殖性試薬を含む、広範囲の治療の発展における利用のための、優れたツールであることを示している。F59E12.11遺伝子配列の解析によって、タンパク質のN−末端半分で、配列類似性がある、ヒト(GenBank登録番号NP_477517)において、明確なオーソログが明らかになる。オーソログは、現在まで、それに帰する機能を持っていなかった。遺伝子を、細胞周期制御または細胞周期進行に関連づける情報は存在していない。タンパク質レベルでの、非常に高い配列保存に基づいて、これらの遺伝子が、ヒトにおいて、細胞周期進行において、等価の機能をもつタンパク質を非常にコードする傾向にあると結論づけることができる。
【0180】
[実施例5]
C.elegans遺伝子Y71H2B.3の特性化
dsDNAを設計し、RNAiによるC.elegans遺伝子の発現を特異的にサイレンス化するために使用し、これによって、この後生動物における、胚細胞分裂の最初の2回においてその機能的関与を試験した。dsRNAを、PCR増幅した、Y71H2B.3遺伝子の野生型ゲノムDNA断片より、in vitroで合成した。PCRのために、以下のプライマー対を利用した。それぞれフォワードおよびリバースプライマーとして
【0181】
【化5】

【0182】
および
【0183】
【化6】

【0184】
である。dsRNAを精製し、生体雌雄同体虫内に注射した。RNAi処理の表現型結果を、経時的微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡を用いて、注射した虫のF1子孫にて、24時間後に記録した。胚の記録は、受精後〜20分で開始し、一方、雌性前核は、その減数分裂を、4細胞分裂期まで、〜30分後、完了している。
【0185】
注射しないか、無関係なdsDNAを注射した、対照虫のF1子孫において、胚細胞分裂の最初の2回の細胞性事象が、DIC顕微鏡によって観察され、実施例3で記述したように、非常に制限された変動を示すことがわかった。
【0186】
dsRNAを注射した虫のF1胚において、以下の高度に再現可能な表現型が観察された(図3)。胚の前方で、異常なブレブ形成を伴って、(図3Aで、十字形で象徴した)皮質波打ちの欠損があり、結果として、疑似−開裂段階における強度の弱まった溝となる(図3B、白色矢印)。前核は小さく、形が不揃いである(図3BおよびC、黒色矢印)。前核は満足なものであるが、集まってはおらず、有糸スピンドルが、胚の後方で設定される。スピンドルは短く、ほとんど見られず、スピンドルロッキングを欠き(図3E)、結果として、クロモソーム分離欠損となる(図3FおよびG)。二細胞分裂期にて、異常な皮質ブレブ形成が観察された(図3G、矢印)。P1細胞は、正常より有意に遅くに分裂する(図3H、矢印)。
【0187】
全ての観察された表現型は、有糸分裂の間の細胞周期進行における、Y71H2B.3遺伝子機能の必要性を示唆している。この機能は、後生動物にわたって、細胞分裂に必須であるので、この遺伝子、およびその任意のホモログおよび誘導体が、抗−増殖性試薬を含む、広範囲の治療の発展における利用のための、優れたツールであることを示している。Y71H2B.3遺伝子配列の解析によって、ヒト(GenBank登録番号NP_001542)、ラット(GenBank登録番号AAD05264またはNP_113812)、ハエ(GenBank登録番号AAF53289)、およびサッカロマイセス セルビシエ(GenBank登録番号NP_013741)において、オーソログが明らかになる。同定されたオーソログは、免疫グロブリン−結合タンパク質1であり、これは、B−細胞における、IgR−仲介シグナル伝達に関与する。細胞周期進行または細胞分裂における役割を持つ、Y71H2B.3またはこれらのオーソログに関する情報は存在しない。
【0188】
[実施例6]
RNAi処理の効果:ヒト細胞での処理
siRNAの設計および合成
ヒト細胞における全ての実験のために、19bpの相補配列コアと3’末端での2塩基のオーバーハングからなる、長さにして21塩基の、短い2本鎖干渉RNAs(siRNAs)を、Cenixによって設計し、アンビオン社(Ambion Inc.)Austin,Texas,USAによって化学的に合成した。
【0189】
以下のsiRNA配列を利用した。
【0190】
【化7】

【0191】
トランスフェクション
HeLa細胞を、リポフェクションに基づくトランスフェクションプロトコールを用いて、100nMの最終濃度で、siRNAで処理した。
【0192】
トランスフェクションの24時間前に、HeLa細胞を、6,000細胞/ウェルの密度で、96ウェルプレート中にまいた。
【0193】
トランスフェクション当日に、トランスフェクション混合液を以下のように調製した。10μMのsiRNAストック1μlを、16μlのOptiMEM(インビトロジェン社(Invitrogen Inc.))で希釈し、0.4μlのOligofectamineトランスフェクション試薬(インビトロジェン)を、2.4μlのOptiMEMで希釈した。複合体形成のために、両方の溶液をゆっくりと混合し、室温で20分間インキュベートした。培養培地を細胞から取り除き、80μlの新鮮な培地(DMEM、インビトロジェン)を加え、続いて、20μlのトランスフェクション混合液を加えた。細胞を37℃にて4時間インキュベートし、30%ウシ胎児血清を含む50μlの新鮮な培地を加え、つづいて、48〜72時間インキュベートした。
定量的RT−PCR(qRT−PCR)による、サイレンシングレベルの検出
トランスフェクションの48時間後、全RNAを、Invisorbキット(インビテックGmbH(Invitek GmnH)、Berlin)を用いて、RNAi処理した細胞より抽出し、cDNAを、ABI TaqMan逆転写試薬(アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)、USA)で産出した。どちらにおいても、製造業者の取扱説明書に従った。定量的リアルタイムPCRを、以下のプロトコールを用いて実施した。5.5μlの2×SybrGreen PCRミックス(アプライド バイオシステムズ)を、3μlの試料cDNAと、2.5μlの遺伝子特異的PCRプライマーの2μM溶液と混合し、続いて、ABI−7900−HTリアル−タイムPCR機械中で、50℃にて2分間−95℃にて10分間−45サイクル(95℃ 15秒間−60℃ 1分間)−95℃で15秒間−60℃で15秒間−95℃で15秒間にて、インキュベートした。遺伝子特異的反応に加えて、第2の、参照反応を核cDNA試料に関して、18S rRNAに対するプライマーを用いて実施した。異なる遺伝子特異的試料からの増幅シグナルを、これらのそれぞれの試料に対して、18S rRNAにおける参照値を用いて正常化し、対照(アンビオン社からのスクランブルsiRNA)処理細胞からの試料と比較した。
【0194】
増殖アッセイ
RNAi処理後の生細胞の数を定量するために、ATPレベルを、ATPliteアッセイ(パーキン エルマー(Perkin Elmer))を用いて、トランスフェクション72時間後に測定した。細胞を抽出し、製造業者の取扱説明書にしたがって処理した。ルミネセンス読み取りを、Victor 2多重標識リーダー(パーキンエルマー)上で実施した。グラフ表示の目的のために、未処理細胞の増殖を100と設定した。
【0195】
アポトーシスアッセイ
RNAi処理細胞におけるプログラムされた細胞死のレベルを、製造業者の取扱説明書にしたがって、プロメガ(Promega)による、Caspase 3/7特異的蛍光分析アッセイApoOneを用いて、トランスフェクション72時間後に決定した。読み取りを、Victor 2多重標識リーダー(パーキンエルマー)上で実施した。グラフ表示の目的のために、未処理細胞のアポトーシス率を100と設定した。
【0196】
有糸分裂指数(MI)
ヒストンH3のセリン10におけるリン酸化が、有糸分裂の顕著な特徴と考えられ、早前期に現れ、終期の間に消える。免疫蛍光顕微鏡を用いて、好適な蛍光標識化第2抗体によって検出した、リン−ヒストンH3抗体の結合の増加によって、有糸分裂細胞が明らかにされ得る。
【0197】
96ウェル顕微鏡プレート中のRNAi処理細胞を、以下のプロトコールを用いて染色した。細胞をPBSで洗浄し、30分間室温で、4%パラ−ホルムアルデヒドにて固定し、続いてPBSで3回洗浄した。ついで細胞を浸透性にし、10%Triton X−100および2%BSAの存在下で、30分間ブロックした。懸濁液を取り除き、抗Phospho Histone H3(マウスモノクローナル抗体クローン6G3、セル シグナリング テクノロジーズ(Cell Signalling Technologies))を、室温で2時間、1:750の希釈にて加え、続いて、PBSで3回洗浄した。Phosph Histone H3標識化核の検出のために、Alexa Flour 568(モレキュラー プローブス(Molecular Probes))に連結した、ヤギ抗マウス抗体(1:500)を、すべての核の検出のために、0.5μg/ml Dapi(4’、6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、ジヒドロクロライド)、FluoroPureTMグレード、モレキュラー プローブス)を含む溶液中に加えた。室温で2時間のインキュベーションの後、細胞を4回洗浄し、イメージを、自動化顕微鏡系(Discovery−1、ユニバーサル イメージング社(Universal Imaging Inc.))を用いて、最小6イメージ/ウェルで、撮った。Metamorph−HCSイメージ処理ソフトウェアを使用して、有糸分裂と総核数を決定した。有糸分裂指数は、この細胞集団における全ての核にわたる、有糸分裂の区画を象徴する。グラフ表示の目的のために、未処理細胞のMIを100と設定した。
【0198】
RNAi処理の効果
C.elegans遺伝子F59E12.11のヒトオーソログである、NP_477517.1に対して指向するsiRNAを用いるHeLa細胞のRNAi処理は、結果として、対照処理細胞と比較して、細胞増殖の40%減少と、アポトーシスの率の2倍の増加となる。C.elegans遺伝子Y71H2B.3のヒトオーソログである、NP_001542.1に対して指向するsiRNAを用いるHeLa細胞のRNAi処理は、結果として、対照処理細胞と比較して、細胞増殖の80%減少、アポトーシス率の2.5倍の増加、および有糸分裂指数の有意な減少となる。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】図1は、F59E12.11に対して指向したdsRNA(RNAi)で処理した、C.elegans親F0から、F1子孫での、最初の回の細胞分裂の、経時的記録よりとった、DIC顕微鏡画像を示している。
【図2】図2は、F59E12.11と、対応するヒトオーソログの、アミノ酸配列アライメントを示している。
【図3】図3は、Y71H2B.3に対して指向したdsRNA(RNAi)で処理した、C.elegans親F0から、F1子孫での、最初の2回の細胞分裂の、経時的記録よりとった、DIC顕微鏡画像を示している。
【図4】図4は、Y71H2B.3と、その対応するヒトおよびハエオーソログの、アミノ酸配列アライメントを示している。
【図5】図5は、野生型未処理C.elegansにおける、最初の2回の細胞分裂の、経時的記録よりとった、DIC顕微鏡画像を示している。
【図6】図6は、HeLa細胞のRNAi処理後、残っているmRNAレベルを示している。それぞれ、NP_477517.1およびNP_001542/1、C.elegans遺伝子のヒトオーソログF59E12.11およびY71H2B.3に対して指向しているRNAiでの、HeLa細胞の処理が、結果として、対象処理試料と比較して、10%以下のmRNAレベルの特異的減少となる、ことを示している。
【図7】図7は、HeLa細胞における、細胞増殖、アポトーシス率および有糸分裂における、RNAi処理の効果を示している。グラフ表示のために、未処理細胞の増殖、アポトーシス率およびMIを100に設定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞周期進行を阻害する医薬品の製造において、
a)配列番号5、7、9、11、13、1、3にて表される核酸配列、
b)100残基にわたり、少なくとも25%のa)による核酸によってコードされているタンパク質との配列同一性を示し、および/またはBLAST配列解析プログラムを用いたコンピュータ補助検索で、最大で10−5のe値で検出可能である、ポリペプチドをコードしている核酸配列、
c)中程度または高い逼迫性の条件下で、(a)または(b)に対応する配列を持つ核酸分子と、ハイブリッド形成可能な核酸分子の配列、
d)(a)、(b)または(c)で定義したような配列のいずれかのアンチセンス−配列、
e)(a)、(b)、(c)または(d)の断片、
f)(a)、(b)、(c)、(d)または(e)にて定義したような配列のいずれかに対応する、アンチセンスまたはセンス方向での、2本鎖RNAまたは1本鎖RNA、
からなる配列の群から選択される配列を持つ、核酸分子を含む単離核酸分子の利用。
【請求項2】
該単離核酸分子が、請求項1に記載の配列のいずれかに対応する配列を持つ、低分子干渉RNAを含む、請求項1に記載の利用。
【請求項3】
該核酸分子が、好適な条件下で、センス−RNA−鎖およびアンチセンス−RNA−鎖を含む、2本鎖RNA−分子を産出可能である、少なくとも1つの核酸発現ベクター内に含まれ、各RNA−鎖が、他から独立して、19〜31ヌクレオチドの長さを持つ請求項1に記載の利用。
【請求項4】
該核酸分子が、第1プロモーターの制御下、センスRNA鎖に対応する核酸を含有する、第1発現カセット、および第2プロモーターの制御下、アンチセンスRNA鎖に対応する核酸を含有する、第2発現カセットを含む、少なくとも1つの核酸発現ベクター内に含まれる、請求項1に記載の利用。
【請求項5】
該核酸分子が、1本鎖−RNA−分子を導くプロモーターの制御下、センスRNA鎖およびアンチセンスRNA鎖に対応する核酸を含有する発現カセットを含む、少なくとも1つの核酸発現ベクター内に含まれ、該1本鎖RNA−分子が、バック−折り畳み、ステムループ構造を形成可能である、請求項1に記載の利用。
【請求項6】
各RNA鎖が、互いに独立して、20〜25の長さ、好ましくは、20〜22ヌクレオチドの長さを有する、請求項2〜5のうちいずれか1項に記載の利用。
【請求項7】
各RNA鎖が、互いに独立して、26〜28の長さ、好ましくは27ヌクレオチドの長さを有する、請求項2〜5のうちいずれか1項に記載の利用。
【請求項8】
細胞周期進行を阻害する医薬品の製造において、
a)配列番号6、8、10、12、14、2、4にて開示されたような配列、
b)100残基にわたり、少なくとも25%のa)による配列のいずれかとの配列同一性を示す配列、
c)(a)または(b)にて定義したような配列の断片、
からなる群から選択される配列を持つ、ペプチドまたはポリペプチドを含む、単離ペプチドまたはポリペプチドの利用。
【請求項9】
細胞周期進行を阻害する医薬品の製造において、請求項8にて定義したような配列を持
つ、少なくとも1つのペプチドまたはポリペプチドに対して指向される抗体の利用。
【請求項10】
該医薬品が、増殖性疾患の治療用である、請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の利用。
【請求項11】
該疾患が、冠動脈再狭窄または新生物疾患であり、後者が好ましくは、リンパ腫、肺がん、大腸がん、卵巣がんおよび乳がんからなる群より選択される、請求項10に記載の利用。
【請求項12】
細胞周期進行を活性化する医薬品の製造において、
a)配列番号5、7、9、11、13、1、3にて表される核酸配列、
b)100残基にわたり、少なくとも25%のa)による核酸によってコードされているタンパク質との配列同一性を示し、および/またはBLAST配列解析プログラムを用いたコンピュータ補助検索で、最大で10−5のe値で検出可能である、ポリペプチドをコードしている核酸配列、
c)中程度または高い逼迫性の条件下で、(a)または(b)に対応する配列を持つ核酸分子と、ハイブリッド形成可能な核酸分子の配列、
d)(a)、(b)または(c)で定義したような配列のいずれかアンチセンス−配列、e)(a)、(b)、(c)または(d)の断片、
f)(a)、(b)、(c)、(d)または(e)にて定義したような配列のいずれかに対応する、RNA配列、
からなる配列の群から選択される配列を持つ、核酸分子を含む単離核酸分子の利用。
【請求項13】
細胞周期進行を活性化する医薬品の製造において、
(a)配列番号6、8、10、12、14、2、4にて開示されたような配列、
(b)100残基にわたり、少なくとも25%のa)による配列のいずれかとの配列同一性を示す配列、
(c)(a)または(b)にて定義したような配列の断片、
からなる群から選択される配列を持つ、ペプチドまたはポリペプチドを含む、単離ペプチドまたはポリペプチドの利用。
【請求項14】
細胞周期進行を活性化する医薬品の製造において、請求項8にて定義したような配列を持つ、少なくとも1つのペプチドまたはポリペプチドに対して指向される抗体の利用。
【請求項15】
該医薬品が、アポトーシスの増加、増殖遅延または傷治癒の遅れによって特徴づけられる疾患の治療用である、請求項12〜14のうちいずれか1項に記載の利用。
【請求項16】
a)請求項1〜7のうちのいずれか1項で定義したような核酸分子または核酸発現ベクター、
b)請求項8にて定義したような配列を含む、ペプチドまたはポリペプチド、
c)(b)による、少なくとも1つのペプチドまたはポリペプチドに対して指向する抗体、
からなる群より選択される単離核酸分子、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体を含む、医薬品。
【請求項17】
増殖性疾患または異常細胞周期進行に関連した疾患のin vitro診断において、請求項1にて定義したような配列を含む、単離核酸分子の利用、または請求項8にて定義したような配列を含む、少なくとも1つのポリペプチドに特に結合するリガンドの利用。
【請求項18】
該疾患が、冠動脈再狭窄または新生物疾患であり、後者が好ましくは、リンパ腫、肺が
ん、大腸がん、卵巣がんおよび乳がんからなる群より選択される、請求項17に記載の利用。
【請求項19】
増殖性疾患または異常細胞周期進行に関連した疾患のin vitro診断のための、請求項1または2にて定義したような配列を含む、単離核酸分子、または請求項8にて定義したような少なくとも1つのポリペプチドに対して指向するリガンドを含む、診断キット。
【請求項20】
細胞周期進行を阻害、または活性化する薬物の同定および特性化のためのスクリーニングアッセイにおいて、請求項1〜7のうちいずれか1項で定義されたような、単離核酸分子の、または核酸発現ベクターの、または請求項8にて定義されたような配列を含む、少なくとも1つのポリペプチドに対して指向する抗体の利用。
【請求項21】
細胞周期進行を阻害、または活性化する相互作用薬物に関するスクリーニングアッセイにおける、請求項8にて定義されたような配列を持つポリペプチドの利用。
【請求項22】
a)請求項1〜7のうちいずれか1項で定義したような核酸分子または核酸発現ベクターの、宿主細胞または宿主器官への形質導入、
b)阻害または活性化分子に対する少なくとも1つの候補が存在する、または存在しないかいずれかで、段階a)の核酸によってコードされるか、または対応する、ポリペプチドまたはRNAの過剰発現を許容する条件下での、段階a)にて得た、宿主細胞または宿主器官の培養、
c)培養された該細胞または器官における細胞周期進行の解析、およびそれによる、細胞周期進行の阻害剤または活性剤の同定、
の段階を含む、細胞周期進行を阻害、または活性化する、阻害または活性化分子の同定および特性化のためのスクリーニング方法。
【請求項23】
a)宿主細胞内で、請求項1にて定義したような核酸分子配列によってコードされたポリペプチドを、組み換え体的に発現させること、
b)該組み換え体的に発現した段階(a)のポリペプチドを、単離し、任意に精製すること、
c)試験基質を任意に標識化すること、および/または該組み換え体的に発現したポリペプチドを標識化すること、
d)該組み換え体的に発現したポリペプチドを、固体相に固定化すること、
e)該固定化ポリペプチドと、少なくとも1つの試験基質を接触させること、
f)任意に一回以上の洗浄段階、
g)固体相にて固定化したポリペプチドに対する、少なくとも1つの試験基質の結合を検出すること、および
h)細胞周期進行の阻害または活性化のための、機能アッセイを実施すること、
の段階を含む、試験基質のライブラリーからの、細胞周期進行を阻害、または活性化する相互作用分子の同定および特性化のためのスクリーニング方法。
【請求項24】
細胞周期進行の阻害剤または活性剤が、請求項22または23によって同定され、適切な量で合成され、薬理学的組成物中に処方される、薬理学的組成物の調製方法。
【請求項25】
細胞周期進行の阻害剤または活性剤が、請求項22または23によって提供され、薬理学的組成物内に処方される、薬理学的組成物の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−505825(P2007−505825A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525791(P2006−525791)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010308
【国際公開番号】WO2005/025624
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(506087152)セニックス・バイオサイエンス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】CENIX BIOSCIENCE GMBH
【Fターム(参考)】