説明

壁パネル用防水材、壁パネル施工方法及び構造

【課題】上側壁パネルに雌実が無い場合であっても上下の壁パネル間の継目の止水を図ることができる壁パネル用シール部材と、この壁パネル用シール部材を用いた施工方法及び構造を提供する。
【解決手段】サンドイッチパネル10を雄実11と雌実12とを嵌合させながら下段側から順次に積み上げ、ビス等によって柱や既存壁などに取り付ける。軒下などの張出し44があり、サンドイッチパネル10の上端が張出し44と干渉するときには、サンドイッチパネル10を現場寸法に合わせて水平方向に切断し、切断した上半側の残片よりなるサンドイッチパネル10Aを施工する。該パネル10Aと、直下のサンドイッチパネル10の上端との間を壁パネル用シール部材1でシールする。このシール部材は防水粘着剤層3,4を介して各サンドイッチパネル10,10Aに付着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁パネル用防水材と、壁パネルの施工方法及び構造に関するものである。詳しくは、上端面に雄実を有した第1の壁パネルの上段側に第2の壁パネルを施工するに際し、該第2の壁パネルとして第1の壁パネルを水平に切断した際に廃材を出さないよう残片を利用する場合に好適な壁パネル用防水材、壁パネル施工方法及び構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の柱や既存壁面に壁パネルを留め付け、その上に塗装やタイル張りを施すことは周知である。
【0003】
特開平10−317579号公報には、この壁パネルとして、上端面に雄実を設け、下端面に雌実を設けたものが記載されている。下段側の壁パネルを施工した後、上段側の壁パネルを施工するに際し、この雄実を雌実に嵌合させる。この雄実と雌実とが嵌合することにより、上段側壁パネルに掛った水が壁パネルの前面に沿って流れ落ち、下段側壁パネルの裏側に回り込むことが防止される。
【特許文献1】特開平10−317579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第7図に示すように、上端に雄実41を有し、下端に雌実42を有した壁パネル40を下段側から順次に壁パネルを積み上げて柱43や既存壁面に取り付けていった場合において、例えば軒下などの張出し44が張り出しているために最上段の壁パネル40Aとして、壁パネル40を水平方向に切断して上下幅を小さくしたものを用いて納め込む場合がある。
【0005】
水平に切断した壁パネルの下側残片を用いるときには、この下側残片に雌実42が存在するから、この雌実42を下段側壁パネル40の雄実41に嵌合させて水仕舞い(壁パネル裏側への水の浸入防止)を図ることができる。
【0006】
ところが、第7図のように切断した残片のうちの上側のもの40Aを利用するときには、雌実は無いので、実嵌合が為されず、実嵌合による水仕舞いを図ることができない。この際、切断した残片のうち、上側の切断残片を利用することなく廃棄したのでは、材料の無駄になる。
【0007】
本発明は、パネルの廃材を出すことなく、切断残片を利用するための構造であって、上側壁パネルに雌実が無い場合であっても上下の壁パネル間の継目の止水を図ることができる壁パネル用防水材と、壁パネル施工方法及び構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の施工構造は、第1の壁パネルと同形状のパネルを水平に切断し、切断後のパネル上部を第2のパネルとし、第1の壁パネルの上部に、該第2の壁パネルが設置され、該第1の壁パネル上端部の前面及び上端面を覆うように防水材が取付けられたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の施工構造は、請求項1において、前記防水材がテープ状のシール部材であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の壁パネル施工構造は、請求項1又は2において、前記防水材は第2の壁パネルの下端部の後面に付着し、該第2の壁パネルの下端面と第1の壁パネルの上端面との間を通り、第1の壁パネルの上端部の全面に付着しているテープ状シール部材を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の壁パネル施工構造は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記第1の壁パネルは、上端面に雄実を有し、該雄実は該第1の壁パネルの前面よりも後端しており、前記壁パネル用シール部材は第1の壁パネルの前面から非突出となっていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の壁パネル施工構造は、請求項1ないし4のいずれか1項において、第1の壁パネルの前面上部と第2の壁パネルの前面下部とに跨って防水層が形成され、該防水層を覆うように該第1及び第2の壁パネルの前面に塗り仕上げ又はタイル張り仕上げが施されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の壁パネル施工方法は、第1の壁パネルを設置した後、該第1の壁パネルの上側に第2の壁パネルを設置する工程を有する壁パネル施工方法において、第2の壁パネルの下端部の後面にテープ状シール部材の上縁部を付着させておき、該第2の壁パネルを第1の壁パネルの上側に設置した後、該シール部材の下縁部を該第1の壁パネルの上端部の前面に付着させることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7の壁パネル施工方法は、請求項6において、該第1の壁パネルの上側に第2の壁パネルを設置するのに先立って、第2の壁パネルの下端部の後面にテープ状シール部材の上縁部を付着させると共に該第2の壁パネルの下端面に該シール部材の幅方向の中央部を付着させておくことを特徴とするものである。
【0015】
請求項8の壁パネル用防水材は、一方の第1面と他方の第2面とを有した基材テープと、該基材テープの第1面のうち基材の幅方向の一方の側に設けられた第1の防水粘着剤層と、該基材テープの第2面のうち基材の幅方向の他方の側に設けられた第2の防水粘着剤層と、を有するものである。
【0016】
請求項9の壁パネル用防水材は、請求項8において、該第1の防水粘着剤層の幅が第2の防水粘着剤層の幅よりも大きいことを特徴とするものである。
【0017】
請求項10の壁パネル用防水材は、請求項8又は9において、該第1及び第2の防水粘着剤層が剥離シートで覆われていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、第1の壁パネルと同形状のパネルを水平に切断し、切断後のパネルの上部も利用するため廃材が出ない。しかも、壁パネル用防水材が上下の壁パネルの間を通って下段側壁パネルの上端部前面にまで延在し、この上端部前面に付着しているため、上下の壁パネル間の止水を図ることができる。本発明の壁パネル用シール部材を用いると、切断により上段側壁パネルの下端面に雌実が無い場合に十分に止水を行うことができる。
【0019】
上記の防水材はテープ状のシール部材であるため、壁パネルに不陸がある場合でも壁パネルにシール部材を密着させることができる。また、本発明の防水材は上段側壁パネルの下端面の後面に付着しているため、より水が上下の壁パネル間に侵入したとしても立ち上がり部によって壁パネル裏側へ通水することはない。
【0020】
上記の付着は、シール部材に設けられた防水粘着剤層により行うことが好ましい。
【0021】
この防水粘着剤層を剥離シートで覆っておき、施工現場で該剥離シートを剥離させて壁パネルに付着させるようにすることにより、施工能率が向上する。
【0022】
第2の壁パネルの下端部後面と下端面との双方に付着させることができるように、基材テープの第1面の防水粘着剤層の幅を第2面の防水粘着剤層よりも大きくしておくことが望ましい。
【0023】
本発明構造において、第1の壁パネルの上端の雄実を該第1の壁パネルの前面よりも後退させ、壁パネル用シール部材を第1の壁パネルの前面から非突出となるようにすることにより、壁パネル前面を平坦に仕上げることが容易となる。
【0024】
壁パネルの仕上げを行うには、上下の壁パネルに跨って防水層を設けた後、塗り仕上げ又はタイル張り仕上げを行うのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る壁パネルを用いた壁を示す断面図、第2図は同分解斜視図、第3図(a)は、シール部材の斜視図、同(b)は剥離を備えたシール部材の断面図、第4,5図はサンドイッチパネルを示す断面図と斜視図である。
【0026】
この実施の形態では、壁パネルとしてサンドイッチパネル10を用いている。第4,5図の通り、このサンドイッチパネル10は、前面を構成する第1金属板11と、後面を構成する第2金属板12と、第1金属板11と第2金属板12との間に一体に設けられた発泡ポリウレタンフォーム等からなる断熱材13とを有している。
【0027】
サンドイッチパネル10の上端には、厚みを小さくするようにして雄実10aが形成され、下端面には、雄実10aが挿入され得る雌実10bが形成されている。各金属板11,12の上端側は、それぞれ雄実10aの前面及び後面をも覆っている。また、各金属板11,12の下端側は、サンドイッチパネル10の前面側及び後面側から雌実10b内に回り込んでいる。雌実10bの奥端面にはゴムパッキン10cが設けられている。
【0028】
このサンドイッチパネル10を壁面に取り付けるには、前記第7図のように、雄実11と雌実12とを嵌合させながら下段側から順次に積み上げ、ビス等によって柱や既存壁などに取り付ける。
【0029】
前記第7図のように、軒下などの張出し44があり、サンドイッチパネル10の上端が張出し44と干渉するときに、サンドイッチパネル10を現場寸法に合わせて水平方向に切断し、納め込む。この際、切断により余った上半分の残片は隣の列のパネルとして用いることができる。この実施の形態では、切断した上半側の残片よりなるサンドイッチパネル10Aを用いている。このサンドイッチパネル10Aには雌実10bがないので、その直下のサンドイッチパネル10の上端との間を壁パネル用シール部材1でシールする。
【0030】
このシール部材1は、第3図の通り、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルなどの耐水性と屈曲性を有した合成樹脂テープよりなる基材テープ2と、該基材テープ2の一方の面(第1面)に設けられた第1防水粘着剤層3と、他方の面(第2の面)に設けられた第2防水粘着剤層4とを有する。
【0031】
防水粘着剤層3,4としてはブチルゴム等が好適である。
【0032】
第1防水粘着剤層3は、基材テープ2の一方の長側辺に沿って設けられ、第2防水粘着剤層4は、他方の長側辺に沿って設けられている。
【0033】
第1防水粘着剤層3の基材テープ2の剥離の幅は、第2防水粘着剤層4の幅よりも大である。第1防水粘着剤層3の該幅は、基材テープ2の幅の50%以上であることが好ましく、特に50〜80%程度が好適である。第2防水粘着剤層4の幅は、基材テープ2の幅の10〜30%程度が好適である。
【0034】
未使用のシール部材1にあっては、各防水粘着剤層3,4は第3図(b)の通り、剥離シート5,6で覆われている。
【0035】
このシール部材1を用いてサンドイッチパネル10Aの施工を行うには、まず剥離シート5を剥離して防水粘着剤層3を露出させ、第2図の通り、サンドイッチパネル10Aの下端部後面から下端面にかけて防水粘着剤層3を介してシール部材1をサンドイッチパネル10Aに貼着する。
【0036】
第2図(a)の符号1aは、シール部材1のうちサンドイッチパネル10Aの後面に付着した部分を示し、1bは下端面に付着した部分を示す。1cは、まだサンドイッチパネル10に付着していない下辺部分を示す。
【0037】
シール部材1をサンドイッチパネル10Aの下端面にも付着させているので、該下辺部分1cは下端面から前方へ張り出している。
【0038】
この状態でサンドイッチパネル10Aをサンドイッチパネル10の上端に載置し、次いで、剥離シート6を剥離させ、防水粘着剤層4を介して下辺部分1cをサンドイッチパネル10の雄実10aの前面に付着させる。
【0039】
なお、雄実10aは、サンドイッチパネル10の前面及び後面のいずれからも若干後退しており、雄実10aとサンドイッチパネル10の前面及び後面との間に段差が存在する。下辺部分1cはこの段差内に納まっており、シール部材1はサンドイッチパネル10の前面から突出しないようになっている。
【0040】
このシール部材1がサンドイッチパネル10Aの後面から下端面を経てサンドイッチパネル10の前面にまで配材され、且つサンドイッチパネル10Aの後面とサンドイッチパネル10の前面とに防水粘着剤層3,4を介して付着しているため、サンドイッチパネル10Aの前面に掛った水は、サンドイッチパネル10A,10の裏側に浸入することなく、サンドイッチパネル10の前面に沿って流れ落ちる。
【0041】
この実施の形態では、サンドイッチパネル10Aとしてサンドイッチパネル10の切断後の上側の残片を利用しているので、材料の無駄を回避することができる。なお、切断後の下側の残片も同様に、軒下部分等に施工することができ、この場合は、該残片の雌実10bをサンドイッチパネル10の雄実10aに嵌合させることにより、止水を図ることができる。
【0042】
この実施の形態では、上記のようにサンドイッチパネル10,10Aを施工した後、サンドイッチパネル10,10Aの板間の継目に跨ってネット8を当て、パテ等の接着剤9を塗着し、接着剤9内にネット8を塗り込める。その後、サンドイッチパネル10,10Aの前面側に塗り仕上げ又はタイル張り仕上げを施すことにより、美麗な壁を構築することができる。
【0043】
なお、この実施の形態では、シール部材1の下辺部分1cの下縁に沿ってのみ防水粘着剤層4が設けられているので、該下辺部分1cをサンドイッチパネル10の前面に付着させるときは、下辺部分1cを十分に下に引張り、緩みや皺を生じさせることなく、防水粘着剤層4を介してサンドイッチパネル10の前面に貼着させ易い。
【0044】
本発明は、サンドイッチパネル以外の壁パネルを用いた場合にも適用可能である。第6図はその一例を示すものであり、雄実及び雌実のない壁パネル20,20を施工している。各壁パネル20の下端面及び上端面は壁パネル20の前面及び後面と垂直である。
【0045】
シール部材1は、上段側の壁パネル20の下端部後面及び下端面に付着されて前記第2図と同様にして施工に供される。壁パネル20,20を重ね合わせた後、下段側の壁パネル20の上端部前面にシール部材1の下辺部分を付着させる。その後の仕上げは前記実施の形態と同様に行われる。
【0046】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施の形態を示す縦断面図である。
【図2】実施の形態を示す分解斜視図である。
【図3】シール部材の構成図である。
【図4】(a)図はサンドイッチパネルの全体断面図、(b),(c)図はサンドイッチパネルの上部及び下部の拡大図である。
【図5】サンドイッチパネルの斜視図である。
【図6】別の実施の形態に係る構造を示す断面図である。
【図7】壁パネルの施工納まりを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 壁パネル用シール部材
2 基材テープ
3,4 防水粘着剤層
5,6 剥離シート
10,10A サンドイッチパネル
20 壁パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の壁パネルと同形状のパネルを水平に切断し、切断後のパネル上部を第2のパネルとし、第1の壁パネルの上部に、該第2の壁パネルが設置され、該第1の壁パネル上端部の前面及び上端面を覆うように防水材が取付けられたことを特徴とする施工構造。
【請求項2】
請求項1において、前記防水材がテープ状のシール部材であることを特徴とする施工構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記防水材は第2の壁パネルの下端部の後面に付着し、該第2の壁パネルの下端面と第1の壁パネルの上端面との間を通り、第1の壁パネルの上端部の全面に付着しているテープ状シール部材を備えたことを特徴とする壁パネル施工構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記第1の壁パネルは、上端面に雄実を有し、該雄実は該第1の壁パネルの前面よりも後端しており、前記壁パネル用シール部材は第1の壁パネルの前面から非突出となっていることを特徴とする壁パネル施工構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、第1の壁パネルの前面上部と第2の壁パネルの前面下部とに跨って防水層が形成され、該防水層を覆うように該第1及び第2の壁パネルの前面に塗り仕上げ又はタイル張り仕上げが施されていることを特徴とする壁パネル施工構造。
【請求項6】
第1の壁パネルを設置した後、該第1の壁パネルの上側に第2の壁パネルを設置する工程を有する壁パネル施工方法において、
第2の壁パネルの下端部の後面にテープ状シール部材の上縁部を付着させておき、
該第2の壁パネルを第1の壁パネルの上側に設置した後、該シール部材の下縁部を該第1の壁パネルの上端部の前面に付着させることを特徴とする壁パネル施工方法。
【請求項7】
請求項6において、該第1の壁パネルの上側に第2の壁パネルを設置するのに先立って、
第2の壁パネルの下端部の後面にテープ状シール部材の上縁部を付着させると共に該第2の壁パネルの下端面に該シール部材の幅方向の中央部を付着させておくことを特徴とする壁パネル施工方法。
【請求項8】
一方の第1面と他方の第2面とを有した基材テープと、
該基材テープの第1面のうち基材の幅方向の一方の側に設けられた第1の防水粘着剤層と、
該基材テープの第2面のうち基材の幅方向の他方の側に設けられた第2の防水粘着剤層と、
を有する壁パネル用防水材。
【請求項9】
請求項8において、該第1の防水粘着剤層の幅が第2の防水粘着剤層の幅よりも大きいことを特徴とする壁パネル用防水材。
【請求項10】
請求項8又は9において、該第1及び第2の防水粘着剤層が剥離シートで覆われていることを特徴とする壁パネル用防水材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−77766(P2007−77766A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270426(P2005−270426)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】