説明

壁面緑化装置及びその製造方法

【課題】容易に製造できる壁面緑化装置を提供する。
【解決手段】壁面緑化装置100は、生きている植物を飾るためのもので、胴縁1と、胴縁1に取り付けられ、植物を活着させる栽植シート2とを備える。胴縁1及び栽植シート2はそれぞれ複数設けられる。胴縁1は横に架設される。栽植シート2は横及び縦に並べられる。胴縁1は壁8に固定される。壁面緑化装置100はさらに、栽植シート2の上方に取り付けられる灌水ホース30,31と、上部に取り付けられ、灌水ホース30,31と接続される貯水槽4と、栽植シート2を覆うように取り付けられる保護ネット5と、下部に取り付けられ、前方に突出するように取り付けられる受け皿6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面緑化装置及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、生きている植物を飾るための壁面緑化装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008−54611には、装置の重量が軽く荷重制限に対応し易く、保肥・保水の期間が長く保たれて水管理等の省略が図れ、植裁物の倒伏や飛散が防止できて安全な施設であり、ビルの壁面のみでなくコンクリート擁壁の緑化にも使用可能な壁面緑化装置が開示されている。この壁面緑化装置に使用する植生マットは、保肥力、保水力の高い植生基盤土を2〜5cm厚で敷き詰め、その上にポリエステルの不織布、ポリエチレンの平織ネットシートを重ね上部とし、植生基盤土の移動防止のための底部と上部が一体化するように縦横所定間隔で縫製形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−54611号公報
【特許文献2】特願2009−204363号(同一出願人の未公開先願)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された壁面緑化装置では、植生マットに植生基盤土を2〜5cm厚で敷き詰めているので、壁面緑化装置を容易に製造できない。
【0005】
本発明の目的は、容易に製造できる壁面緑化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明による壁面緑化装置は、生きている植物を飾るための壁面緑化装置であって、胴縁と、栽植シートとを備える。栽植シートは、胴縁に取り付けられ、植物を活着させる。
【0007】
本発明によれば、栽植シートを胴縁に取り付けるだけで、壁面緑化装置を容易に製造できる。
【0008】
好ましくは、胴縁及び栽植シートはそれぞれ複数設けられる。胴縁は、横、縦又は斜めに架設される。栽植シートは、横、縦又は斜めに並べられる。
【0009】
この場合、広範囲の壁面緑化を容易に実現することができる。
【0010】
好ましくは、胴縁は壁に固定される。
【0011】
この場合、壁面緑化装置は倒れにくい。
【0012】
好ましくは、壁面緑化装置はさらに、灌水ホースを備える。灌水ホースは、栽植シートの上方に取り付けられる。
【0013】
この場合、栽植シートに容易に灌水することができる。
【0014】
好ましくは、壁面緑化装置はさらに、貯水槽を備える。貯水槽は、壁面緑化装置の上部に取り付けられ、灌水ホースと接続される。
【0015】
この場合、貯水槽内の水を灌水に利用することができる。
【0016】
好ましくは、壁面緑化装置はさらに、保護ネットを備える。保護ネットは、栽植シートを覆うように取り付けられる。
【0017】
この場合、栽植シートに生えている植物を保護することができる。
【0018】
好ましくは、壁面緑化装置はさらに、受け皿を備える。受け皿は、壁面緑化装置の下部に取り付けられ、前方に突出するように取り付けられる。
【0019】
この場合、花、葉などが落ちた場合、受け皿で受け止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態による壁面緑化装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した壁面緑化装置の平面図である。
【図3】図1に示した壁面緑化装置の正面図である。
【図4】図3に示した壁面緑化装置の拡大正面図である。
【図5】図1中のV―V線に沿った断面図である。
【図6】図1に示した壁面緑化装置の製造方法における胴縁を壁に取り付ける工程を示す斜視図である。
【図7】図6に示した工程に続き、胴縁に栽植シートを取り付ける工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
[壁面緑化装置の構成]
図1を参照して、壁面緑化装置100は、生きている植物を飾るためのもので、胴縁1と、栽植シート2と、灌水ホース30及び31と、貯水槽4と、受け皿6とを備えている。
【0023】
胴縁1は、本例では4本あり、アルミで構成されている。胴縁1は、横(ほぼ水平)に架設され、壁8に固定される。本例では、胴縁1は横に架設されているが、縦若しくは斜め、又は横、縦及び斜めの組み合わせで架設されてもよい。
【0024】
栽植シート2は、吸水性及び保水性を有し、たとえば、不織布、織布、フェルト、スポンジ、ウレタン、海綿など、吸水性及び保水性に富む材料を加工したものを用いることができるが、植物の根が張りやすいものを用いるのが好ましい。栽植シート2の具体例は、後述する。
【0025】
栽植シート2は、植物を活着させるためのもので、ステンレス製ビス71で胴縁1に取り付けられている。栽植シート2は、本例では9枚あり、縦及び横(格子状)に並べられている。各栽植シート2は、対応する2本の胴縁1の間に架け渡されている。本例では、栽植シート2は縦及び横に並べられているが、横のみ、縦のみ、斜めのみ又はそれらの組み合わせで並べられてもよい。栽植シート2に植えられる植物は、たとえばハツユキカズラ、アキシラリス、モッコウバラ、ヘデラヘリックス、ヘデラカナリエンシス、テイカカズラ、コクリュウ、又はフイリヤブランである。
【0026】
灌水ホース30及び31は、それぞれホースバンド33A及び33Bを備えている。ホースバンド33Aは、灌水ホース30の中腹部に巻かれ、灌水ホース30を下段の栽植シート2の上方に取り付けている。ホースバンド33Bは、灌水ホース31の中腹部に巻かれ、灌水ホース31を上段の栽植シート2の上方に取り付けている。灌水ホース30は、蛇口35と接続される。
【0027】
貯水槽4は、たとえばアルミで構成されている。貯水槽4は、壁面緑化装置100の上部に取り付けられている。
【0028】
受け皿6は、たとえばアルミで構成されている。受け皿6は、壁面緑化装置100の下部に取り付けられている。受け皿6は、前方に突出するように取り付けられている。
【0029】
胴縁1、貯水槽4及び受け皿6は、アルミで構成されているが、特に限定されない。たとえば、木や鉄などで構成されてもよい。ただし、アルミは、木や鉄に比べ軽くて、腐食しにくい。
【0030】
図2及び図3を参照して、貯水槽4は、その底に穴44を備えている。灌水ホース31は、その中腹部に接続部36を備えている。接続部36は、穴44に接続される。
【0031】
図4を参照して、灌水ホース30は、複数の穴34を備えている。灌水ホース31も灌水ホース30と同様に、図示されていないが、複数の穴を備えている。
【0032】
図3及び図4を参照して、蛇口35を開放すると、水は蛇口35から灌水ホース30に流入し、複数の穴34を通って栽植シート2に供給される。また、図2及び図3を参照して、貯水槽4の水は穴44及び接続部36を通って灌水ホース31に流入し、さらに穴を通って栽植シート2に供給される。このように、壁面緑化装置100は、灌水ホース30及び31を備えているため、栽植シート2に容易に灌水することができる。
【0033】
図5を参照して、壁面緑化装置100はさらに、保護ネット5を備えている。保護ネット5は、栽植シート2を覆うように、貯水槽4及び受け皿6に取り付けられている。
【0034】
栽植シート2としては、吸水性樹脂を不織布に混合したものを用いるのが好ましく、たとえば特開平11−206241号公報に開示された育苗シートを用いることができる。より具体的には、三洋化成工業株式会社の「三洋育苗シート」を用いることができる。
【0035】
吸水性樹脂を含む栽植シート2としては、たとえば特開2001−37344号公報に開示された樹脂シート、特開2008−199984号公報に開示された栽植基盤、特開2008−54611号公報に開示された植生マット、特開2000−287536号公報に開示された植物栽培培地用基体を用いることができる。
【0036】
吸水性樹脂としては、たとえば特開2007−319029号公報に開示された園芸用保水剤を用いることができる。より具体的には、有限会社三鶴園芸の「AGポリマ」、三洋化成工業株式会社の「サンフレッシュ」及び「アクアパール」、三菱化学株式会社のサンダイヤポリマー「アクアパール」(登録商標)、住友精化株式会社の「アクアキープ」、メビオール株式会社の「SkyGel」(登録商標)を用いることができる。
【0037】
不織布としては、たとえば王子キノクロス株式会社の「TDS不織布」及び「パルクロス」を用いることができる。抗菌作用を有する不織布としては、たとえば金井重要工業株式会社の除菌フィルタ「バイテクリーンAGフィルタ」を用いることができる。
【0038】
その他、栽植シート2としては、株式会社千古屋の育苗資材「楽楽紙」、播種シートなどを用いることもできる。
【0039】
[壁面緑化装置の製造方法]
次に、壁面緑化装置100の製造方法について説明する。
【0040】
まず、図6を参照して、胴縁1を構築する。具体的には、複数の胴縁1を横に架設し、ステンレス製ビス70で壁8に固定する。
【0041】
次に、図7を参照して、栽植シート2を胴縁1に取り付ける。具体的には、栽植シート2を横3列及び縦3列に並べ、各栽植シート2の4角にビス71を打ち込むことにより栽植シート2を取り付ける。
【0042】
次に、再び図3を参照して、灌水ホース30及び31を栽植シート2の上方に取り付ける。具体的には、灌水ホース30及び31をホースバンド33A及び33Bで巻き、ホースバンド33A及び33Bを栽植シート2の上方に取り付ける。そして、灌水ホース30を蛇口35と接続する。
【0043】
次に、貯水槽4を壁面緑化装置100の上部に取り付ける。そして、図2及び図3に示すように、灌水ホース31の接続部36を貯水槽4の穴44に接続する。
【0044】
次に、再び図1を参照して、受け皿6を壁面緑化装置100の下部に、前方に突出するように取り付ける。
【0045】
なお、灌水ホース30及び31、貯水槽4並びに受け皿6を上記の順に取り付ける必要はなく、いずれの順に取り付けてもよい。
【0046】
次に、図示されていないが、植物を栽植シート2に活着させる。具体的には、栽植シート2の任意の箇所に切り込みを入れ、その切り込みに植物を植え付ける。本例では、栽植シート2を胴縁1に取り付けた後、植物を栽植シート2に活着させているが、逆に、植物を栽植シート2に活着させた後、栽植シート2を胴縁1に取り付けてもよい。
【0047】
最後に、図5を参照して、栽植シート2を覆うように保護ネット5を取り付ける。具体的には、保護ネット5を貯水槽4及び受け皿6に渡るように張り付ける。
【0048】
[実施の形態の効果]
本実施の形態によれば、栽植シート2を胴縁1に取り付けるだけで、壁面緑化装置100を容易に製造できる。
【0049】
また、胴縁1及び栽植シート2はそれぞれ複数設けられ、胴縁1は、横に架設され、栽植シート2は、横及び縦に並べられているため、この壁面緑化装置100は、広範囲の壁面緑化を容易に実現することができる。
【0050】
また、胴縁1が壁8に固定されているため、この壁面緑化装置100は倒れにくい。
【0051】
また、灌水ホース30及び31が栽植シート2の上方に取り付けられているため、この壁面緑化装置100は栽植シート2に容易に灌水することができる。
【0052】
また、貯水槽4が壁面緑化装置100の上部に取り付けられ、灌水ホース31と接続されているため、この壁面緑化装置100は貯水槽4内の水を灌水に利用することができる。
【0053】
また、保護ネット5が栽植シートを覆うように取り付けられているため、この壁面緑化装置100は、栽植シート2に生えている植物を保護することができる。
【0054】
また、受け皿6が壁面緑化装置100の下部に取り付けられ、前方に突出するように取り付けられているため、この壁面緑化装置100は、花、葉などが落ちた場合、受け皿6で受け止めることができる。
【0055】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、胴縁1は壁8に固定されているが、胴縁は植木鉢、大型プランタ、可動式パーテーションなどの土台に構築され、その胴縁に栽植シートが取り付けられてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、栽植シート2のみが並べられているが、装飾パネルなどと一緒に並べられてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、栽植シート2はビス71で取り付けられているが、接着材やネジなどで取り付けられてもよい。
【0058】
本実施の形態では、灌水ホース30、31は、それぞれ蛇口35、貯水槽4に接続されているが、灌水ホースは1つだけ設けられても、3つ以上設けられても、あるいは全く設けられなくてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態では、貯水槽4が取り付けられているが、建物に取り付けられている既存の樋を貯水槽4として用いてもよい。また、貯水槽4又は受け皿6は設けられなくてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 胴縁
2 栽植シート
4 貯水槽
5 保護ネット
6 受け皿
8 壁
30,31 灌水ホース
100 壁面緑化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている植物を飾るための壁面緑化装置であって、
胴縁と、
前記胴縁に取り付けられ、前記植物を活着させる栽植シートとを備える、壁面緑化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の壁面緑化装置であって、
前記胴縁及び前記栽植シートはそれぞれ複数設けられ、前記胴縁は、横、縦又は斜めに架設され、前記栽植シートは、横、縦又は斜めに並べられる、壁面緑化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の壁面緑化装置であって、
前記胴縁は壁に固定される、壁面緑化装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の壁面緑化装置であってさらに、
前記栽植シートの上方に取り付けられる灌水ホースを備える、壁面緑化装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の壁面緑化装置であってさらに、
前記壁面緑化装置の上部に取り付けられ、前記灌水ホースと接続される貯水槽を備える、壁面緑化装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の壁面緑化装置であってさらに、
前記栽植シートを覆うように取り付けられる保護ネットを備える、壁面緑化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の壁面緑化装置であってさらに、
前記壁面緑化装置の下部に取り付けられ、前方に突出するように取り付けられる受け皿を備える、壁面緑化装置。
【請求項8】
生きている植物を飾るための壁面緑化装置の製造方法であって、
胴縁を構築する工程と、
前記植物を活着させる栽植シートを前記構築された胴縁に取り付ける工程とを備える、壁面緑化装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の壁面緑化装置の製造方法であって、
前記胴縁及び前記栽植シートはそれぞれ複数設けられ、
前記構築する工程は、前記胴縁を横、縦又は斜めに架設する工程を含み、
前記取り付ける工程は、前記栽植シートを横、縦又は斜めに並べる工程を含む、壁面緑化装置の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の壁面緑化装置の製造方法であって、
前記構築する工程は、前記胴縁を壁に固定する工程を含む、壁面緑化装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−78367(P2011−78367A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234322(P2009−234322)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(508083116)有限会社ハートグリーン (2)
【Fターム(参考)】