説明

変位測定方式及び方法

【課題】工事進行中の現場で他の測定パラメータと同時性のある測定を実行することができる変位測定方式及び方法を提供することである。
【解決手段】被測定体の測定点間を連結する連結ロッド4,5,6と、当該ロッド長を測定する変位計10,11,12と、ロッドに取りつけた傾斜計13,14,15を備える。前記連結点を前記被測定体に固定し、前記変位計で測定されたロッド長と前記傾斜計で測定された傾斜角から得られる区間変位を累積し、各測点の縦横座標を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は対象測定物の座標を算出する変位測定方式及び方法に関し、特に2次元変位及び3次元変位を測定する方式、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの断面形状を測定する方法は、機械的測定方法あるいは光学的測定方法がある。機械的測定方法は、断面の各点から対向する各点間の長さを測定するためにロッドやワイヤを張り長さ変化を測定し、測定点間の角度をトランシットを用いて測定し、各測定点のX−Y座標を求める方法である。
【0003】
一方、光学的測定方法は、トンネル断面各所にターゲットを設け、測量機器(トータルステーション)あるいはカメラ等の光学機器をトンネル軸方向中心に設置し、光学的に断面各点の座標を測定する方法である。尚、長さ変化はレーザー距離計を用いて測定される。
【0004】
なお、トンネル断面形状の測定法に関しては、例えば、以下に示す非特許文献1に示されている。
【0005】
【非特許文献1】松本伸、他3名、第37回地盤工学研究発表会(大阪)「臨海大井町駅新設に伴う駅舎部地中接合工事(その2:動態観測計画)」、社団法人地盤工学会、2002年7月、p.1649−1650
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの方法は何れも測定装置を他の工事に係る作業領域に設置する必要がある。工事現場の作業領域への測定機器の設置によって、工事をする者の歩行をはじめとして作業の妨げとなり、測定のために他の作業を中断することが避けられず、施工前後の変化量の測定に限られていた。したがって、施工の経過に伴う時間的に連続した形状変化を測定することが出来なかった。
【0007】
尚、トンネル形状測定の真の目的は駆体に加わる応力や近接して行われる他の工事に伴う応力や変形、あるいは周辺地盤の変状など、関連する測定結果とトンネル形状の変化から安全性、経済性を高めるために測定結果をフィードバックする情報化施工のための資料として活用することである。
【0008】
そのためには他の工事に影響を与えず時間的に連続して自動測定を行うことが可能な測定法が望まれている。
【0009】
しかしながら、従来の光学的測定法ではトンネル断面のターゲットを測量するために軸方向中心に測量機器あるいはカメラなどの光学機器を設置することが必要であり、従来の機械的測定法では対向する各点間の長さを測定するためのロッドやワイヤが必要であり、これらの測定要素はトンネル空間の他の作業領域を占有していた。
【0010】
例えば、トンネルに近接する工事による壁面への影響やNATM工法における内空変位の収束状況などは、他の関連工事と同時に継続して測定することが重要であるが、上記したようなトンネル空間を占有する従来の測定方法では他の関連工事と同時に継続して測定することはできなかった。
【0011】
本発明の目的は、これらの測定要素をトンネル周面の可能な限り狭いスペースで得ることができ、工事進行中の現場で他の測定パラメータと同時性のある測定を実行することができる変位測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
トンネル断面の周面に複数の測定点を設け、隣接する測定点間の長さと隣接する点間の角度を測定することによって各点の座標を計算することが可能である。このために測定点を長さ可変のロッドで結び、ヒンジを設けて角度可変とし、各ロッドに対して鉛直に固定された傾斜計で鉛直に対する角度変化を測定することによって初期設定角との変化を測定する。一方測定点間を連結するロッドの長さ変化を測定する。円周の起点を決め、隣接角と点間距離から座標を求めこの座標から隣接点の座標を求める手順を繰り返すことによって測定点の2次元座標を算出することができる。
【0013】
次に、各ロッドを連結するヒンジにロッドに対して水平・直角方向の隣接ロッドの相対角度を測定し、ロッド長と相対角度から水平・直角方向座標を求め、この座標から隣接点座標を求める手順を繰り返すことによって三次元座標を算出することができる。
【発明の効果】
【0014】
変位測定対象物の各測定点に傾斜計と変位計一体構造とした計器を取りつけ、連結ロッドでそれぞれ隣接点と連結することによって上記の測定を実行することができるので、測定対象物の空間の内、測定作業に占有されるスペースは壁面のみとなる。したがって、測定対象物の壁面以外の空間を測定作業以外の他の作業に有効に使用することができ、他の工事進行の障害にならず、時間的に連続して、長期間自動測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1を参照してトンネル内空の形状測定における実施の形態について説明する。
【0016】
図中の1,2,3などはトンネル内空形状を測定するために設けられた測定点である。各測定点の隣接点間は長さ可変のロッド4,5,6などが回転軸7,8,9などで連結される。各連結ロッドの長さ可変部には軸方向変位計10,11,12などがあり、各ロッドには傾斜計13,14,15などが取りつけられており各ロッドに対して鉛直に固定される。各ロッドの傾斜計は初期の各ロッドの姿勢に対して鉛直に固定され、ロッド可変長部の変位計は初期長さを基準点として固定される。図2は各測定点がトンネル内空の変位によって移動した時の状況を示した図である。軸方向変位計10,11,12および傾斜計13,14,15は各点の初期設定点に対する変化量に応答する。各点の座標は以下の計算で求めることができる。尚、ここでは(x,y)、(x,y)、(x,y)について求めることとする。
【0017】
=(l+Δl)cos(θ+Δθ)
=(l+Δl)sin(θ+Δθ)
=x+(l+Δl)cos(θ+Δθ)
=y+(l+Δl)sin(θ+Δθ)
=xn−1+(l+Δl)cos(θ+Δθ)
=yn−1+(l+Δl)sin(θ+Δθ)
ここでx〜xは各座標x座標であり、y〜yは各点のy座標であり、l〜lは初期ロッド長であり、Δl〜Δlはロッド長の変化量であり、θ〜θはロッドの初期角度であり、Δθ〜Δθは角度の変化量である。
【0018】
上記計算に使用する傾斜測定値にはロッドに対する傾斜計の初期固定角度の誤差、あるいは個々の傾斜計が持つ測定誤差などが含まれるため、最終累積値がゼロに成らないことがあり得る。各点の測定長をX、各点の累積変位をYとし、最小二乗法によって求めた一次式y=ax+bの各測定距離の値yを差引くことによって累積誤差を最小にすることができる。
【0019】
各ロッドの連結点にはロッドに対して水平・直角方向角度を測定する角度計16,17,18等の測定値に基いて以下の計算によって水平・直角方向座標を求めることが出来る。
【0020】
=(l+Δl)sinα
=z+(l+Δl)sin(α+α
=z+(l+Δl)sin(α+α+α
=zn−1+(l+Δl)sin(α+α+…+α
ここで、z〜zは各点のz座標であり、l〜lは各点間のロッド長であり、Δl〜Δlはロッド長の変化量を示し、α〜αは各点のz方向角度を示している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の変位測定方式の構成を示した図であり、各測定点間を連結するロッドと変位計および傾斜計の関係を示した図である。
【図2】2次元変位計算法の一例を示した図であり、各測定点で求めた傾斜および変位量から2次元座標を計算する手順を示した図である。
【図3】3次元変位計算法の一例を示した図であり、各測定点で求めた傾斜、変位量、及びZ方向角度からZ軸方向の変位を計算する手順を示した図である。
【符号の説明】
【0022】
1,2,3 測定点
4,5,6 連結ロッド
7,8,9 ロッド回転軸
10,11,12 軸方向変位計
13,14,15 傾斜計
16,17,18 横方向変位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定体の複数測定点の隣接する測定点間を連結する長さ可変のロッドと、
ロッドの長さ変化を測定する変位計と、
ロッドに取りつけた固定角度可変の傾斜計を備え、
前記連結点を前記被測定体に固定し、前記変位計で測定されたロッド長と前記傾斜計で測定された傾斜角から得られる区間変位を累積し、各測定点の縦横座標を求めることを特徴とする変位測定方式。
【請求項2】
被測定体の複数測定点の隣接する測定点間を連結する長さ可変のロッドと、
ロッドの長さ変化を測定する変位計と、
ロッドに取りつけた固定角度可変の傾斜計
前記ロッドの連結点に隣接する2つのロッドの相対角を測定する角度計を備え、
前記連結点を前記被測定体に固定し、前記変位計で測定されたロッド長と前記傾斜計で測定された傾斜角から得られる測定区間変位を累積し、各測定点の縦横座標を求め、
前記角度計で測定された相対角と前記ロッド長に基づいて各測定区間のロッドに対する直角方向変位を求め、各測定点のZ軸座標を求めることを特徴とする変位測定方式。
【請求項3】
前記連結部にはロッド回転軸が設けられ、前記隣接している2つのロッドは前記ロッド回転軸で連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載の変位測定方式。
【請求項4】
被測定体の複数の測定点に固定された連結部に取り付けられたロッドの長さ変化を測定するステップと、
前記ロッドの水平軸に対する傾斜角を測定するステップと、
前記測定されたロッド長と前記測定された傾斜角から区間変位を求めるステップと、
前記区間変位を累積し、各測定点の縦横座標を求めるステップ
を有することを特徴とする変位測定方法。
【請求項5】
被測定体の複数の測定点に固定された連結部に取り付けられたロッドの長さ変化を測定するステップと、
前記ロッドの水平軸に対する傾斜角を測定するステップと、
前記測定されたロッド長と前記測定された傾斜角から区間変位を求めるステップと、
前記区間変位を累積し、各測定点の縦横座標を求めるステップと、
前記ロッドの連結点に隣接する2つのロッドの相対角を測定するステップと、
前記測定された相対角と前記測定されたロッド長に基づいて各測定区間のロッドに対する直角方向変位を求め、各測定点のZ軸座標を求めるステップ
を有することを特徴とする変位測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−162539(P2006−162539A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357995(P2004−357995)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年7月9日 社団法人地盤工学会主催の「第39回 地盤工学研究発表会」において文書をもって発表
【出願人】(504454509)
【出願人】(504456031)
【出願人】(390027177)坂田電機株式会社 (16)
【出願人】(504456053)株式会社坂田電機宮崎研究センター (2)
【Fターム(参考)】