変位算出方法、描画データの補正方法、描画方法および描画装置
【課題】 本発明は、基板に局所的でない歪が発生している場合でも、基板の広い領域の歪みの傾向をとらえて的確にその変位を算出できる変位算出方法、描画装置を提供する。
【解決手段】 アライメントマークM11〜M14、M21〜M24、M31〜M34、M41〜M44、の各位置におけるX方向のずれ量ΔXを算出し、そのずれ量から第1スプライン曲線SL1を描き、評価点E(xe、ye)のX位置(X=xe)における補正値ΔX1〜ΔX4を算出する。ΔX1〜ΔX4から第1副スプライン曲線SL1Sを描き評価点E(xe、ye)のY位置(X=ye)における補正値ΔXeを算出し、X方向の補正量とする。Y方向の補正量も同様に算出する。
【解決手段】 アライメントマークM11〜M14、M21〜M24、M31〜M34、M41〜M44、の各位置におけるX方向のずれ量ΔXを算出し、そのずれ量から第1スプライン曲線SL1を描き、評価点E(xe、ye)のX位置(X=xe)における補正値ΔX1〜ΔX4を算出する。ΔX1〜ΔX4から第1副スプライン曲線SL1Sを描き評価点E(xe、ye)のY位置(X=ye)における補正値ΔXeを算出し、X方向の補正量とする。Y方向の補正量も同様に算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位算出方法、描画データの補正方法、描画方法および描画装置に関し、特にプリント基板、半導体基板、液晶基板などを描画対象とする直接描画装置において描画データに対して行う補正処理に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザー光などの露光用光を走査しつつ照射することによってプリント基板、半導体基板、液晶基板などの描画対象物(以下、単に基板とも称する)に局所的な露光を連続的に行うことにより、所望の回路パターン等を描画して形成する直接描画装置(直描装置)が、従来より公知である。
【0003】
直描装置による回路パターンの描画は、回路パターンの設計データから変換された、直描装置が処理可能な記述形式を有するデータである描画データに従って行われる。ただし、上述のような基板においては、そり、ゆがみや、前工程での処理に伴う歪などの変形が生じていることがあるものの、設計データは、通常、これらの変形を考慮せずに作成されているため、変換された描画データをそのまま用いて回路パターンを描画したとしても、先に形成した回路パターンとの位置関係がずれたりして十分な描画品質が得られず、歩留まりを向上させることができない。
【0004】
そのため、この種の直描装置においては、あらかじめ描画対象たる基板の形状を測定して、得られた測定結果から基板の各点(以下、評価点という)の変位を算出し、その変位に整合するように描画データ自体を補正する、ローカルアライメントと呼ばれる補正処理をしておき、その補正後の描画データを用いて描画を行うことが提案されている。特許文献1では、対象である描画データを囲む四角形の頂点四点の位置情報から、描画データの補正量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-3441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、対象である描画データを囲む近傍四点の位置情報から補正量を算出しているため、その描画データの近傍における局所的な基板の歪みに対応した補正は可能であるが、それよりも大きな領域の範囲で、例えば基板全体がうねるように歪んでいる場合には、正確に補正をすることができない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板に局所的でない歪が発生している場合でも、基板の広い領域の歪みの傾向をとらえて的確にその変位を算出できる変位算出方法、およびそれに基づいて描画データの補正をすることができる描画データの補正方法および描画方法ならびに描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、互いに交差する第1の座標軸方向および第2の座標軸に沿って基板の表面に格子状に配置された複数の基準点の変位から、任意の評価点の変位を算出する変位算出方法であって、基板面に規定された複数の基準点の位置情報を得る工程と、前記位置情報に基づき、前記評価点の近傍の複数の基準点について、それぞれの座標軸方向ごとの変位を検出する工程と、 検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうちどちらか一方の変位について、以下のA乃至Dの工程、すなわちA:第1の座標軸方向に並び、かつ第2の座標軸の値が等しい複数の基準点の組について、各組ごとに、当該基準点における変位の値と第1の座標軸の値との関係を示す第1スプライン曲線を算出する第1スプライン算出工程、B:算出した各組ごとの第1スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における、各組ごとの変位の値を算出する第1スプライン指示値算出工程、C:第1スプライン曲線に基づき算出した各組ごとの変位の値と、各組の第2の座標軸の値との関係を示す第1副スプライン曲線を算出する第1副スプライン算出工程、D:算出した第1副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における変位の値を算出する第1副スプライン指示値算出工程、を実行することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の変位算出方法において、前記どちらか一方の変位について、さらに以下のE乃至Hの工程、すなわちE:第2の座標軸方向に並び、かつ第1の座標軸の値が等しい複数の基準点の別の組について、各別の組ごとに、当該基準点における変位の値と第2の座標軸の値との関係を示す第2スプライン曲線を算出する第2スプライン算出工程、F:算出した各別の組ごとの第2スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における、各別の組ごとの変位の値を算出する第2スプライン指示値算出工程、G:第2スプライン曲線に基づき算出した各別の組ごとの変位の値と、各別の組の第1の座標軸の値との関係を示す第2副スプライン曲線を算出する第2副スプライン算出工程、H:算出した第2副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における変位の値を算出する第2副スプライン指示値算出工程、を実行し、前記第1副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値と、前記第2副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値との平均値を算出することを特徴とする変位算出方法である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の変位算出方法において、前記検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうち他方の変位についても、前記A乃至Dの工程を実行することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1記載の変位算出方法において、前記検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうち他方の変位について、さらに以下のE乃至Hの工程、すなわちE:第2の座標軸方向に並び、かつ第1の座標軸の値が等しい複数の基準点の別の組について、各別の組ごとに、当該基準点における変位の値と第2の座標軸の値との関係を示す第2スプライン曲線を算出する第2スプライン算出工程、F:算出した各別の組ごとの第2スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における、各別の組ごとの変位の値を算出する第2スプライン指示値算出工程、G:第2スプライン曲線に基づき算出した各別の組ごとの変位の値と、各別の組の第1の座標軸の値との関係を示す第2副スプライン曲線を算出する第2副スプライン算出工程、H:算出した第2副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における変位の値を算出する第2副スプライン指示値算出工程、を実行することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項3記載の変位算出方法において、前記検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうち他方の変位について、さらに以下のE乃至Hの工程、すなわちE:第2の座標軸方向に並び、かつ第1の座標軸の値が等しい複数の基準点の別の組について、各別の組ごとに、当該基準点における変位の値と第2の座標軸の値との関係を示す第2スプライン曲線を算出する第2スプライン算出工程、F:算出した各別の組ごとの第2スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における、各別の組ごとの変位の値を算出する第2スプライン指示値算出工程、G:第2スプライン曲線に基づき算出した各別の組ごとの変位の値と、各別の組の第1の座標軸の値との関係を示す第2副スプライン曲線を算出する第2副スプライン算出工程、H:算出した第2副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における変位の値を算出する第2副スプライン指示値算出工程、を実行し、前記第1副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値と、前記第2副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値との平均値を算出することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、描画データを入力する工程と、請求項1乃至5のいずれかに記載の変位算出方法により基板表面の評価点の変位を算出する工程と、算出した評価点の変位に基づき、入力した前記描画データのうち評価点に描画すべき画素の位置を変位させた描画データを作成する描画データ補正工程と、を備えたことを特徴とする描画データの補正方法である。
【0014】
請求項7の発明は、描画データを入力する工程と、請求項1乃至5のいずれかに記載の変位算出方法により基板表面の評価点の変位を算出する工程と、算出した評価点の変位に基づき、入力した前記描画データのうち評価点に描画すべき画素の位置を変位させた描画データを作成する描画データ補正工程と、前記描画データ補正工程によって補正した描画データに基づき、基板に対して描画を行う描画工程と、を備えたことを特徴とする描画方法である。
【0015】
請求項8の発明は、表面に互いに交差する第1の座標軸方向および第2の座標軸方向に沿って複数の基準点が格子状に配置された基板に対して描画を行う描画装置であって、描画データを入力する入力手段と、前記基板の表面を撮像する撮像機構と、撮像された基板表面の複数の基準点の位置情報を算出する位置算出手段と、算出された前記位置情報に基づき、前記描画データの評価点の近傍に位置する複数の基準点について、座標軸方向ごとの変位を検出する変位検出手段と、前記変位検出手段により検出された変位の値により、前記評価点の位置の変位を算出する評価点変位算出手段と、前記変位算出手段により算出された評価点変位と入力された描画データに基づき、描画する画素を変位させて描画データを補正する描画データ補正手段と、前記描画データ補正手段により補正された描画データにより描画を行う描画手段と、を備え、前記評価点変位算出手段は、一方の座標軸方向に並び、かつ他方の座標軸の値が等しい複数の基準点の組について、各組ごとに、当該基準点における変位の値と一方の座標軸の値との関係を示す第1方向スプライン曲線を算出する第1スプライン算出手段と、算出した各組ごとの第1方向スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記一方の座標軸の値における、各組ごとの変位の値を算出する第1スプライン指示値算出手段と、第1方向スプライン曲線に基づき算出した各組ごとの変位の値と、各組の他方の座標軸の値との関係を示す第1副スプライン曲線を算出する第1副スプライン算出手段と、算出した第1副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記他方の座標軸の値における変位の値を算出する第1副スプライン指示値算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、請求項8に記載の描画装置において、前記変位検出手段により検出した変位を第1の座標軸方向成分と第2の座標軸方向成分に分離する分離手段をさらに備え、前記評価点変位算出手段は、前記分離手段により分離された前記第1の座標軸方向成分および第2の座標軸方向成分のそれぞれに基づいて、評価点の変位の第1の座標軸方向成分と第2の座標軸成分を算出するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1ないし請求項5の発明によれば、基板に局所的でない歪が発生している場合でも、基板の広い領域の歪みの傾向をとらえて的確にその変位を算出できる。
【0018】
また請求項6の発明によれば、算出した変位に基づき適正な描画データを補正することができる。
【0019】
また請求項7ないし9の発明によれば、算出した描画データに基づき適正に描画を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る描画装置1の概略構成を示す図である。
【図2】描画データと基板の歪を示す図である。
【図3】プリント基板を製造する方法の概要を示す流れ図である。
【図4】アライメントマークMの配置と画像要素Eを示す図である。
【図5】アライメントマークMの変位とそのX方向成分を示す図である。
【図6】アライメントマークMの変位のX方向成分をを縦軸にとった図である。
【図7】アライメントマークMの変位のX方向成分とX軸の値との関係を示す第1スプライン曲線を示す図である。
【図8】第1スプライン曲線に基づく評価点EのX軸の値(X=xe)における変位の値X1の算出を示す図である。
【図9】算出した評価点EのX軸の値(X=xe)における変位の値ΔX1を横軸にとった図である。
【図10】他のアライメントマークの組から算出した評価点EのX軸の値(X=xe)における変位の値ΔX2、ΔX3、ΔX4を横軸にとった図である。
【図11】第1スプライン曲線に基づき算出した変位の値と、Y軸の値との関係を示す第1副スプライン曲線を示す図である。
【図12】第1副スプライン曲線に基づく評価点EのY軸の値(Y=ye)における変位の値ΔXeの算出を示す図である。
【図13】ステップS14における補正量算出の詳細を示す流れ図である。
【図14】従来の方法による補正結果の一例を示す図である。
【図15】本発明による補正結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施の形態>
【0022】
<描画装置の概要>
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る描画装置1の概略構成を示す図である。描画装置1は、露光用光であるレーザー光LBを走査しつつ照射することによってプリント基板、半導体基板、液晶基板などの描画対象たる基板Sに局所的な露光を連続的に行うことにより、基板S上に所望の回路パターンについての露光画像を描画する直接描画装置(直描装置)である。
【0024】
描画装置1は主として、描画データDDを生成するデータ処理装置2と、描画データDDに基づいて実際に描画(露光)を行う露光装置3とから構成される。なお、データ処理装置2と露光装置3とは一体に設けられる必要はなく、両者の間のデータの授受が可能とされている限りにおいて、物理的に離間していてもよい。
【0025】
データ処理装置2は、演算回路、記憶装置等を備えたいわゆるマイクロコンピュータよりなり、内蔵する描画データ補正手段21(後述する)が実行する補正量の算出、補正処理を含む各種演算処理等を行う。詳しくは、例えばCADなどのパターン設計装置4によって作成された回路パターンの設計データであるパターンデータDPに基づいて、露光装置3における処理データである描画データDDを生成する。パターンデータDPは、通常、ポリゴンなどのベクターデータとして記述されてなる。一方、露光装置3は、ラスターデータとして記述されている描画データDDに基づいて露光を行うので、データ処理装置2は、パターンデータDPをラスターデータに変換する必要がある。なお、本実施の形態に係る描画装置1では、必要な場合には後述する態様にて補正処理を行ったうえで描画データDDを生成する。これにより、基板Sに変形が生じている場合であっても、所望された通りの回路パターンを基板Sに描画することができるようになっている。
【0026】
露光装置3は、データ処理装置2から与えられた描画データDDに従って、基板Sに対する描画を行う装置である。露光装置3は、各部の動作を制御する描画コントローラ31と、基板Sを載置するためのステージ32と、レーザ光LBを出射する光源33と、ステージ32に載置された基板Sの被描画面Saを撮像する撮像装置34とを主として備える。
【0027】
露光装置3においては、ステージ32と光源33との少なくとも一方が、互いに直交する水平二軸方向である主走査方向と副走査方向とに移動可能とされてなる。これにより、基板Sをステージ32に載置した状態で、ステージ32と光源33とを主走査方向に相対的に移動させつつ光源33からレーザ光LBを照射できるようになっている。あるいはさらに、ステージ32は水平面内で回転移動可能とされていてもよいし、光源33は垂直方向に移動可能とされていてもよい。使用するレーザ光LBの種類は、描画対象たる基板Sの種類などに応じて適宜に定められてよい。
【0028】
また、光源33には例えばDMD(デジタルミラーデバイス)などの変調手段33aが備わっており、変調手段33aによる変調を受けつつ光源33から出射されたレーザ光LBがステージ32上の基板Sに照射されるようになっている。より具体的には、描画に先立ち、まず、描画コントローラ31により、画素位置ごとの露光の有無が設定されてなる描画データDDの記述内容に従った、変調手段33aの変調単位ごとのレーザ光LBの照射のオン/オフ設定が行われる。光源33がステージ32に対して(その上に載置された基板Sに対して)主走査方向に相対的に移動している間に、斯かるオン/オフ設定に従って光源33からレーザ光LBが出射されることで、ステージ32上の基板Sに、描画データDDに基づく変調を受けたレーザ光LBが照射されることになる。
【0029】
ある位置について主走査方向にレーザ光LBが走査されて当該位置についての露光が終了すると、副走査方向に所定距離だけ光源33が相対移動し、再び当該位置について主走査方向にレーザ光LBが走査される。これを繰り返すことにより、基板S上に描画データDDに従った画像(露光画像)が形成される。
【0030】
撮像装置34は、主として、ステージ32に載置された基板Sの表面すなわち被描画面Saに形成された、アライメントマークMを撮像するために備わる。斯かる位置決めマークの撮像画像は、マーク撮像データDMとして、上述のようにデータ処理装置2に供される。もちろん、撮像装置34が他の目的のために撮像を行える態様であってもよい。
【0031】
なお、基板Sにおけるアライメントマークの形成態様は、その位置を正確に特定できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、貫通孔など、機械的加工により形成されたアライメントマークを利用する態様であってもよいし、印刷プロセスやフォトリソグラフィープロセスなどによってパターニングされたアライメントマークを用いる態様であってもよい。本実施形態では、第1層のパターンである銅配線パターンとともにアライメントマークのデータが1層目のパターンデータDP1に含まれており、銅配線パターンの形成と同時に基板Sの表面に形成される。
【0032】
<補正処理の基本概念>
【0033】
以下、次に、描画データDDを生成する場合に行われる補正処理について、その基本概念を説明する。
【0034】
一般に、パターンデータDPは、変形がなく被描画面が平坦な理想的な形状の基板を想定して作成されているが、実際の基板には、そり、ゆがみや、前工程での処理に伴う歪などの変形が生じている場合がある。そのような場合、パターンデータDPで設定されている配置位置のままに基板Sに回路パターンを描画しても、所望された生産物を得ることができないことから、基板Sに生じている歪み等の状態に見合った回路パターンが形成されるように、回路パターンの形成位置座標を基板Sの状態に応じて変換するローカルアライメント処理が必要となる。本実施の形態において描画データDDを生成する際に行う補正処理とは、端的に言えば、座標変換処理である。
【0035】
図2は、露光装置3のローカルアライメントにおけるパターンデータDP、DP2の関係を説明するための図である。ここでは、基板Sに対して図2(A)に示すアライメントマークMを含むパターンデータDP1、図2(B)に示すパターンデータDP2をこの順に露光し、最終的に図2(C)に示すようにこの2つのパターンデータDP1、DP2にそれぞれ含まれる円C1,C2が重なる位置関係となるパターンを形成することが目的であるとする。
【0036】
なお、このように2つのパターンデータを重ねて形成する場合としては、例えば、プリント基板の銅配線パターンとそれに重ねるソルダーレジストのパターンを形成する場合、多層プリント基板の配線パターンの1層目と2層目を形成する場合、両面プリント基板の表面配線パターンと裏面配線パターンを形成する場合(ただしこの場合に、裏面配線パターンを裏面側から露光する場合には、パターンは裏返しにする)等が考えられる。
【0037】
今、プリント基板Sの銅配線パターンをパターンデータDP1で、それに重ねるソルダーレジストのパターンをパターンデータDP2で、それぞれ形成してプリント基板Sを製造する場合を考える。この場合、まずプリント基板Sの全面に形成した銅層の上にフォトレジスト膜を形成し、そのフォトレジスト膜にパターンデータDP1から生成した描画データDDを露光し、現像し、エッチングをして銅配線パターンを形成する。続いて、そのプリント基板Sの銅配線パターンの上にソルダーレジスト層を塗布またはラミネートにより形成し、パターンデータDP2から生成した描画データDDを露光し、現像する。
【0038】
しかるにこの場合、銅配線パターンを形成する過程では、現像、エッチングやそれらに伴う水洗、加熱乾燥等の工程が施されるので、それによってプリント基板Sに伸縮や歪みが生じ、図2(D)に示すようなプリント基板Sとパターンの変形が生じたとする。このプリント基板Sに対してパターンデータDP2の形をそのままに描画データDDを生成して露光すると、最終的に形成されるパターンは図2(E)のようになり、2つのパターンデータDP1、DP2にそれぞれ含まれる円C1,C2の位置関係にずれが生じてしまい、目的とするパターンが形成できない。
【0039】
従って、この場合には、このパターンデータDP2をそのまま露光するのではなく、プリント基板Sの変形(すなわち、プリント基板Sに形成されたパターンデータDP1の変形、変位)を考慮して、図2(F)に示すようにパターンデータDP2'に補正し変形する。そしてその変形したパターンデータDP2'から描画データDDを生成して露光を行い、最終的なパターンが図2(G)となるようにする。このパターンデータDP2の補正による変形がローカルアライメントである。なお、プリント基板Sの変形は、例えばプリント基板Sに形成した位置指標(例えばアライメントマークM)を基準点として撮像するなどして読み取り、その変位により認識することができる。なお、パターンデータDP2にはアライメントマークMは含まれないが、図2(F)では位置関係を示すために描いてある。
【0040】
<プリント基板の製造工程>
【0041】
本発明を用いて基板に回路パターンを描画してプリント基板を製造する方法の概要につき、以下に説明する。ここでは樹脂基台の片面プリント配線基板に銅配線パターンを形成し、その上にソルダーレジストのパターンを形成するものとする。図3はデータ処理装置2が実行するこの方法の制御プログラムの全体の概要(装置の動作の概要を含む)を示す流れ図である。
【0042】
<第1層のパターン形成>
【0043】
まず、予め、パターン設計装置4において、作成しようとするプリント基板の銅配線パターンと、その上に形成するソルダーレジストのパターンを設計し、銅配線パターンのデータを1層目のパターンデータDP1とし、ソルダーレジストのパターンのデータを2層目のパターンデータDP2として、パターン設計装置4内にある図示しない記憶装置に記憶してあるものとする。なお、このとき、1層目のパターンデータDP1には、基板S面にXY座標を考えたとき、X、Yそれぞれの方向に所定間隔ずつあけて、各方向に少なくとも4個以上、すなわち合計16個以上、十字型のアライメントマークMaを配列して加えておく。
【0044】
始めに、作成されたパターンデータDP1をデータ処理装置2に送信し、データ処理装置2で読み込む(ステップS1)。データ処理装置2は読み込んだパターンデータDP1を露光装置3で処理可能なラスター形式のデータである初期描画データD1に変換したうえで、この初期描画データD1をそのまま描画データDDとして露光装置3の描画コントローラ31に送信する(ステップS2)。すなわち、ここでは1層目の描画であるから、初期描画データD1に基づく露光時以前には、基板Sにはパターンは形成されておらず歪等も存在しないので、データの補正は必要ないため行わず、パターンデータDP1の初期描画データD1をそのまま描画データDDとする。なお、このラスター形式への変換処理には公知の技術を利用可能である。
【0045】
描画データDDが描画装置1に送信されると、露光装置3に描画対象物である基板Sが搬入され、ステージ32に対して位置決めされた状態で固定される(ステップS3)。基板Sは樹脂基台の片面に銅層が形成されたプリント基板であって、露光装置3に搬入される際には、その銅層のパターニングのために銅層上にフォトレジスト膜が形成されている。なお、露光装置3へのかかる基板Sの搬入あるいは後述する搬出は、描画コントローラ31の指示により図示しない搬送装置によって行ってもよいし、オペレータが手作業で行ってもよい。
【0046】
描画装置3に基板Sが搬入されると、描画コントローラ31は光源33の変調手段33a、ステージ32等を制御して、初期描画データD1によって変調されたレーザ光LBを照射して描画処理を行い、基板Sのパターニングを行う(ステップS4)。具体的には、基板Sの表面に形成されているフォトレジストに、初期描画データD1に基づく感光部分が形成される。
【0047】
初期描画データD1による描画処理が終了すると、基板Sは露光装置3から搬出される(ステップS5)。もし複数枚の基板Sを同様に処理する場合には、処理枚数をカウントして、所定枚数が終了したかを判断し(ステップS6)、終了していなければステップS2に戻る。終了していればステップS7に進む。
【0048】
露光装置3による描画処理が終了した基板Sは図示しない現像装置に運ばれて現像、エッチングおよびそれらに伴う水洗、熱処理等の処理が施される(ステップS7)。そしてこのステップS7が終了すると、基板S表面の銅層がパターニングされて所定の配線パターンとなっており、これで第1層のパターン形成が終了した。
【0049】
<第2層のパターン形成>
【0050】
次に、基板Sに対して第2層のパターン形成が行われるが、まず、ステップS7にて所定の配線パターンが形成された基板Sは、図示しない被膜形成装置へ運ばれ、その基板Sの表面全体に、ソルダーレジストが塗布またはラミネート等の手段により被膜形成される(ステップS8)
【0051】
一方で、パターン設計装置4においてステップS1にて作成されたソルダーレジストのパターンのデータ(2層目のパターンデータDP2)を、パターン設計装置4からデータ処理装置2に送信し、データ処理装置2で読み込む(ステップS9)。データ処理装置2は露光装置3で処理可能なラスター形式のデータである初期描画データD2に変換する。この初期描画データD2は、直ちに描画装置1の描画コントローラ31に送信するのではなく、後述する補正のためにデータ処理装置2の内部記憶装置(図示せず)に記憶しておく(ステップS10)。
【0052】
ステップS8でソルダーレジスト層が形成された基板Sは、再度、描画装置1に搬入され、ステージ32に対してステップS3と同様に位置決めされた状態で固定される(ステップS11)。
【0053】
次に、ステージ32に固定された基板Sは撮像装置34によって撮像され、撮像された画像はマーク撮像データDMとして描画コントローラ31を解してデータ処理装置2へ送信される(ステップS12)。具体的には、この実施形態では、撮像装置34は基板Sの上側を向いている感光膜面(描画面)全体を撮影するが、それは後述の如く基板Sの描画面に形成されたアライメントマークMの位置検出を行うためであるから、必要なアライメントマークMの撮像ができるならば必ずしも基板S全体を撮像するものである必要はない。
【0054】
データ処理装置2は、受信したマーク撮像データDMを処理して基板S表面に形成されている全てのアライメントマークMを認識、抽出し、その位置検出を行う(ステップS13)。基板Sはステージ32に対して描画時(ステップS3)と同様に位置決めされて固定されているので、基板Sに変形や歪がなければ、露光装置3に対しては描画時と同じ位置に検出されることになるが、実際には、描画後の現像、エッチング等の処理によって基板Sに変形や歪が生じることが多く、アライメントマークMの一部または全部の位置がずれて検出される。
【0055】
続いてデータ処理装置2は、かかるアライメントマークMの位置ずれ、すなわち基板Sの変形、歪等に対して、次に露光しようとする初期描画データD2に対して補正量を算出し(ステップS14)、かかる補正量により補正処理を行い、補正済みの描画データDDを得る(ステップS15)。そしてこの補正処理によって、先に初期描画データD1により形成した銅配線パターンのある基板Sの表面の変形や歪に対して、これから描画しようとする初期描画データD2を補正し、その補正済みの描画データDDに基づいて描画することで、先に形成した銅配線パターンと、今回形成するソルダーレジストパターンの位置関係のずれをなくし、あるいは軽減する。これにより十分な描画品質、製品品質が得られることとなる。なおこのステップS14を含む補正処理については後に詳述する。
【0056】
次にデータ処理装置2は、ステップS15で得た補正済みの描画データDDを露光装置3の描画コントローラ31に送信し、描画コントローラ31は光源33の変調手段33a、ステージ32等を制御して、かかる描画データDDによって変調されたレーザ光LBを照射して描画処理を行い、基板Sのパターニングを行う(ステップS16)。具体的には、基板Sの表面に形成されているソルダーレジストに、描画データDDに基づく感光部分が形成される。
【0057】
描画データDDによる描画処理が終了すると、基板Sは露光装置3から搬出される(ステップS17)。もし複数枚の基板Sを同様に処理する場合には、処理枚数をカウントして、所定枚数が終了したかを判断し(ステップS18)、終了していなければステップS11に戻る。終了していればステップS19に進む。
【0058】
露光装置3による描画処理が終了した基板Sは図示しない現像装置等に運ばれて現像等のパターン形成に必要な処理が施される(ステップS19)。そしてこのステップS19が終了すると、基板S表面の銅層上にのソルダーレジストがパターニングされて所定のソルダーレジストパターンとなっており、これで第2層のパターン形成が終了する。
【0059】
<補正処理の概要>
【0060】
次に本発明の上述したステップS14における初期描画データD2に対する補正量算出の処理の概要を説明する。図4はパターンデータDP1におけるアライメントマークMの配置と、その部分に対応するパターンデータDP2に含まれる画像要素Eの設計位置(以下、補正元といい、その座標は(xe、ye)とする。)を示す。図に白抜き十字で示すアライメントマークM11、M12、M13、・・・、M21、M22、M23、・・・は、XY平面に格子状の行列に配置されている(以下ではこれらを総称してアライメントマークMという)。図4ではその一部分である4行4列部のみ示す。
【0061】
ここで、図3のステップS12、S13で検出したアライメントマークMの位置が基板Sに生じた歪によってステップS4で描画した位置からずれている場合に、その基板Sに画像要素Eを描画するための位置の補正を行うものとする。この場合、画像要素Eが評価点Eであり、その位置補正の補正量の算出には、画像要素Eの周囲の4点のアライメントマークM22、M23、M32、M33の4点と、さらにその周囲の12点のアライメントマークの、合計16点(すなわち、アライメントマークM11〜M14、M21〜M24、M31〜M34、M41〜M44、)のずれ量を用いる。
【0062】
画像要素Eの位置補正の補正量の算出は、大きく分けて次の工程で行う。
(1)各アライメントマークMの移動先の位置と元位置からのずれ量取得。
(2)評価点のX方向の補正量算出。
(3)評価点のY方向の補正量算出。
【0063】
<補正量算出処理の詳細>
各工程について以下に詳しく説明する。図13はステップS14の詳細を示す図である。
【0064】
(1)まず、各アライメントマークMの移動先の位置と元位置からのずれ量を取得する。(ステップS141)ここでは撮像したアライメントマークM11〜M14の画像を処理してそれらのずれ量を算出する。ステップS12、S13で検出したアライメントマークM11〜M14が、それぞれ図5の黒十字で示す位置にずれていたとする。アライメントマークM11について、元位置からずれの移動先の位置へのベクトルを考える。この場合、移動先の位置へのベクトルは図5のv11である。このベクトルv11が元位置からのずれ量となる。他のアライメントマークM12〜M14、M21〜M24、M31〜M34、M41〜M44についても同様に求められる。
【0065】
工程(2)は次の工程からなる。
【0066】
(2−1)各アライメントマークM11〜M14の各位置におけるずれ量(変位)をX軸方向成分とY軸方向成分に分離し、X方向のずれ量ΔXを算出する。(ステップS142)アライメントマークM11について、ベクトルv11をX方向成分とY方向成分に分けると、X方向成分は図5のv11xである。これがアライメントマークM11のX方向のずれ量ΔX11となる。他のアライメントマークM12〜M14についても同様にずれ量ΔX12、ΔX13、ΔX14が求められる。
【0067】
(2−2)各アライメントマークM11〜M14の各位置においてX方向のずれ量ΔXを縦軸にとる。ここでは、図6に示すように、アライメントマークM11について、X方向のずれ量ΔX11を縦軸にとる。これはすなわちベクトルv11のX方向成分v11xを縦軸に向けることを意味する。他のアライメントマークM12〜M14についても同様にずれ量ΔX12、ΔX13、ΔX14を縦軸にとる。
【0068】
(2−3)各アライメントマークM11〜M14の間で、縦軸に描いた移動先のX軸量(ΔX)について、横方向(X方向)のスプライン曲線SL1を生成する(ステップS143)。ここでは、図7に示すように、各アライメントマークM11〜M14に関して、縦軸に描いた移動先のX軸量(ΔX)の各点を、横方向になめらかな曲線すなわちスプライン曲線SL1でつなぐ。これは例えばこの四点を通る三次元方程式であらわされる。すなわちこの工程において、X軸方向に並び、かつY軸の値が等しいアライメントマークM11〜M14の組について、これらアライメントマークM11〜M14におけるX軸方向の変位の値とX軸の値との関係を示す第1スプライン曲線SL1を算出している。
【0069】
(2−4)描いたスプライン曲線SL1の、補正元E(xe、ye)のX位置(X=xe)における補正値ΔX1を算出する(ステップS144)。ここでは、図8に示すように、X位置(xe)の線の、アライメントマークM11〜M14を結ぶY位置の直線から、先に(2−3)で描いたスプライン曲線SL1までの距離がΔX1であり、これは図8におけるベクトルX1の大きさである。アライメントマークM11〜M14の直線上におけるX=xeの点での補正値を意味する。すなわちこの工程において、第1スプライン曲線SL1に基づき、評価点E(xe、ye)のX軸の値(X=xe)における変位の値を算出している。
【0070】
(2−5)算出した補正値ΔX1を、X位置(X=xe)における各アライメントマークM11〜M14のY位置において、横軸に生成する。ここでは、図9に示すように、アライメントマークM11〜M14を結ぶY位置の横軸上に、X位置(X=xe)の線から補正値ΔX1をとる。これは図8におけるベクトルX1をX位置(X=xe)の線から横軸に向けることと等しい。
【0071】
(2−6)各アライメントマークM21〜M24、M31〜M34、M41〜M44についても、上記(2−2)〜(2−5)と同様にしてX位置(X=xe)におけるΔX2、ΔX3、ΔX4を算出し、X位置(xe)における各Y位置において、横軸に生成する。ここでは、図10に示すように、アライメントマークM21〜M24、M31〜M34、M41〜M44についても、同様にしてX位置(X=xe)におけるΔX2、ΔX3、ΔX4を算出し、X位置(X=xe)における各Y位置において、横軸に生成する。なお、この処理は上記(2−2)〜(2−5)と同様であるので、図13ではステップS142〜144に含めている。
【0072】
(2−7)描いたΔX1、ΔX2、ΔX3、ΔX4について、縦(Y)方向のスプライン曲線SL1Sを生成する(ステップS145)。ここでは、図11に示すように、ΔX1、ΔX2、ΔX3、ΔX4の位置に関して、(2−3)と同様にしてスプライン曲線SL1Sを生成する。すなわちこの工程において、各アライメントマークの組ごとの第1スプライン曲線SL1に基づき算出したX位置(X=xe)における変位の値と、各組のY軸の値との関係を示す第1副スプライン曲線SL1Sを算出している。
【0073】
(2−8)描いたスプライン曲線SL1Sの、補正元E(xe、ye)のY位置(Y=ye)における値ΔXeを算出する(ステップS146)。ここでは、図12に示すように、(2−7)で描いたスプライン曲線SL1Sと補正元E(xe、ye)のY位置(Y=ye)における値ΔXeを算出する。すなわちこの工程において、算出した第1副スプライン曲線SL1Sに基づき、評価点E(xe、ye)のY軸の値(Y=ye)における変位の値を算出している。これはすなわち評価点E(xe、ye)における変位の値であるので、このΔXeを補正元E(xe、ye)のX方向の補正量とする。
【0074】
工程(3)では工程(2)と同様の手順をY方向に関して行い、補正元E(xe、ye)のY方向の補正量ΔYeを算出する。なお、この工程(3)は工程(2)と同様であるから図13ではこの工程(3)の記載を省略している。
【0075】
最終的に、補正元E(xe、ye)に対して算出したΔXeとΔYeを補正量として、補正元Eすなわち画像要素E(xe、ye)の補正後の描画位置は、(xe+ΔXe、ye+ΔYe)となる。そしてその座標に基づきパターンデータDP2から描画データDDを生成する。なお、以上の実施形態において、ステップS14、S15が描画データを補正する描画データ補正手段21に相当する。
【0076】
<変形例>
【0077】
上記実施形態では、X方向の補正量算出時に、アライメントマークM11〜M14についてX方向のスプライン曲線SL1を描き、同様にアライメントマークM21〜M24、M31〜M34、M41〜M44についても、X方向のスプライン曲線SL1を描き、その後、ΔX1、ΔX2、ΔX3、ΔX4について、縦(Y)方向のスプライン曲線SL1Sを生成したが、先に縦(Y)方向のスプライン曲線を描いてもよい。すなわち、アライメントマークM11〜M41についてX方向のずれ量ΔXを横方向(X方向)に取り、Y方向のスプライン曲線を描く。それをアライメントマークM12〜M42、M13〜M43、M14〜M44まで繰り返し、算出したΔX1、ΔX2、ΔX3、ΔX4を縦(Y)軸に生成し、それについて横(X)方向のスプライン曲線を描いて補正量ΔXeを算出できる。あるいは、これら両方の計算を行ってそれらでそれぞれ算出された補正量ΔXeの平均値をとってもよい。これは、Y方向の補正量ΔYeに関しても同様である。
【0078】
また、上記実施形態では、X方向の補正量算出時に、X方向のスプライン曲線SL1を先に描き、その後、縦(Y)方向のスプライン曲線SL1Sを生成し、さらにY方向の補正量算出も同様に行ったが、Y方向の補正量算出時にはX方向の補正量算出時と異なる方法で行ってもよい。すなわちY方向の補正量算出時にY方向のスプライン曲線を先に描き、その後、横(X)方向のスプライン曲線を生成してもよい。またその逆に、X方向の補正量算出時に、Y方向のスプライン曲線を先に描き、その後、横(X)方向のスプライン曲線を生成し、Y方向の補正量算出時にはX方向のスプライン線を先に描き、その後、縦(Y)方向のスプライン曲線を生成してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では補正元Eの周囲の16点のアライメントマークから補正量を算出したが、例えばパターンデータDP2の描画領域の角部など、周囲に4行4列の16点のアライメントマークが取れない場合には、例えば3行3列のアライメントマークを使用してスプライン線を描いてもよい。なお、上記説明においてスプライン線を描くということは、その座標から対応する数式を算出することであり、必ずしも図表を描くことのみを意味するわけではない。
【0080】
また、アライメントマークは正方形の格子状に限らず、長方形等であってもよく、等間隔でなくてもよく、また必ずしも格子状の行列である必要はないが、基準点として用いるために少なくとも一方向には直線上に並んでいる必要がある。もし直線上に適当なアライメントマークがない場合には、近傍のアライメントマークから直線上に位置するような点を補間して算出し、その点を基準点として用いればよい。その補間方法としては、例えば周囲にある3つのアライメントマークとその点との距離およびそれら3点のアライメントマークにおけるX方向、Y方向のそれぞれの変位量を計測し、逆距離加重補間法を用いてその点での変位量を補間するなどの方法が考えられる。
【0081】
なお、本発明の描画装置としては、変位検出手段により検出された変位の値により、評価点の位置の変位を算出する評価点変位算出手段としては、上記実施形態のようにX方向のスプライン曲線を先に描き、その後、Y方向のスプライン曲線を生成する場合と、Y方向のスプライン曲線を先に描き、その後、X方向のスプライン曲線を生成する場合と、それぞれに専用のソフトウエアまたはハードウエアを用意してもよいが、座標軸が違うだけであるので、両方の場合で共用できるソフトウエアまたはハードウエアを用いてもよい。
【0082】
<効果>
【0083】
以上のように本発明によれば、例えば基板全体がうねるように歪んでいるような場合のように、基板に局所的でない歪が発生している場合でも、複数の基準点の変位からスプライン曲線を利用して、基板の広い領域の歪みの傾向をとらえて的確にその変位を算出でき、また、算出した変位に基づき適正な描画データを補正することができる。また、算出した描画データに基づき適正に描画を行うことができる。
【0084】
図14および図15はパターンデータDP1の補正結果の一例を示し、図14は従来の共一次内挿法と呼ばれる方法によるもの、図15は本発明の変位算出方法、補正方法を用いたものである。これらは同じパターンデータDP1をもちいたもので、パターンデータDP1では、白抜きの小さな四角形が評価点で、正方形の格子状に配列されたものである。黒塗りの小さな四角形が基準点となるアライメントマークであって、5×5の正方形の格子状に配列されている。そして、どちらも最上部に横方向に並んだ5点、最下部に横方向に並んだ5点、それらの中間に横方向に並んだ5点の合計15点のアライメントマークは移動しておらず、残りの10点のアライメントマークが上下にうねったように移動している場合の全ての評価点の補正結果を示す。従来の方法では、移動したアライメントマークの近傍の評価点が角張ったような配列になっているのに対し、本発明では、スプライン曲線を反映したようななだらかな配列となっており、基板等のうねったような歪に対して、より的確な補正ができていると考えられる。
【符号の説明】
【0085】
1 描画装置
2 データ処理装置
3 露光装置
21 描画データ補正手段
33 光源
33a 変調手段
34 撮像手段
M11、M12、M13・・・、M44 アライメントマーク
E 評価点
SL1 第1スプライン曲線
SL1S 第1副スプライン曲線
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位算出方法、描画データの補正方法、描画方法および描画装置に関し、特にプリント基板、半導体基板、液晶基板などを描画対象とする直接描画装置において描画データに対して行う補正処理に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザー光などの露光用光を走査しつつ照射することによってプリント基板、半導体基板、液晶基板などの描画対象物(以下、単に基板とも称する)に局所的な露光を連続的に行うことにより、所望の回路パターン等を描画して形成する直接描画装置(直描装置)が、従来より公知である。
【0003】
直描装置による回路パターンの描画は、回路パターンの設計データから変換された、直描装置が処理可能な記述形式を有するデータである描画データに従って行われる。ただし、上述のような基板においては、そり、ゆがみや、前工程での処理に伴う歪などの変形が生じていることがあるものの、設計データは、通常、これらの変形を考慮せずに作成されているため、変換された描画データをそのまま用いて回路パターンを描画したとしても、先に形成した回路パターンとの位置関係がずれたりして十分な描画品質が得られず、歩留まりを向上させることができない。
【0004】
そのため、この種の直描装置においては、あらかじめ描画対象たる基板の形状を測定して、得られた測定結果から基板の各点(以下、評価点という)の変位を算出し、その変位に整合するように描画データ自体を補正する、ローカルアライメントと呼ばれる補正処理をしておき、その補正後の描画データを用いて描画を行うことが提案されている。特許文献1では、対象である描画データを囲む四角形の頂点四点の位置情報から、描画データの補正量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-3441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、対象である描画データを囲む近傍四点の位置情報から補正量を算出しているため、その描画データの近傍における局所的な基板の歪みに対応した補正は可能であるが、それよりも大きな領域の範囲で、例えば基板全体がうねるように歪んでいる場合には、正確に補正をすることができない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板に局所的でない歪が発生している場合でも、基板の広い領域の歪みの傾向をとらえて的確にその変位を算出できる変位算出方法、およびそれに基づいて描画データの補正をすることができる描画データの補正方法および描画方法ならびに描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、互いに交差する第1の座標軸方向および第2の座標軸に沿って基板の表面に格子状に配置された複数の基準点の変位から、任意の評価点の変位を算出する変位算出方法であって、基板面に規定された複数の基準点の位置情報を得る工程と、前記位置情報に基づき、前記評価点の近傍の複数の基準点について、それぞれの座標軸方向ごとの変位を検出する工程と、 検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうちどちらか一方の変位について、以下のA乃至Dの工程、すなわちA:第1の座標軸方向に並び、かつ第2の座標軸の値が等しい複数の基準点の組について、各組ごとに、当該基準点における変位の値と第1の座標軸の値との関係を示す第1スプライン曲線を算出する第1スプライン算出工程、B:算出した各組ごとの第1スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における、各組ごとの変位の値を算出する第1スプライン指示値算出工程、C:第1スプライン曲線に基づき算出した各組ごとの変位の値と、各組の第2の座標軸の値との関係を示す第1副スプライン曲線を算出する第1副スプライン算出工程、D:算出した第1副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における変位の値を算出する第1副スプライン指示値算出工程、を実行することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の変位算出方法において、前記どちらか一方の変位について、さらに以下のE乃至Hの工程、すなわちE:第2の座標軸方向に並び、かつ第1の座標軸の値が等しい複数の基準点の別の組について、各別の組ごとに、当該基準点における変位の値と第2の座標軸の値との関係を示す第2スプライン曲線を算出する第2スプライン算出工程、F:算出した各別の組ごとの第2スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における、各別の組ごとの変位の値を算出する第2スプライン指示値算出工程、G:第2スプライン曲線に基づき算出した各別の組ごとの変位の値と、各別の組の第1の座標軸の値との関係を示す第2副スプライン曲線を算出する第2副スプライン算出工程、H:算出した第2副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における変位の値を算出する第2副スプライン指示値算出工程、を実行し、前記第1副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値と、前記第2副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値との平均値を算出することを特徴とする変位算出方法である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の変位算出方法において、前記検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうち他方の変位についても、前記A乃至Dの工程を実行することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1記載の変位算出方法において、前記検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうち他方の変位について、さらに以下のE乃至Hの工程、すなわちE:第2の座標軸方向に並び、かつ第1の座標軸の値が等しい複数の基準点の別の組について、各別の組ごとに、当該基準点における変位の値と第2の座標軸の値との関係を示す第2スプライン曲線を算出する第2スプライン算出工程、F:算出した各別の組ごとの第2スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における、各別の組ごとの変位の値を算出する第2スプライン指示値算出工程、G:第2スプライン曲線に基づき算出した各別の組ごとの変位の値と、各別の組の第1の座標軸の値との関係を示す第2副スプライン曲線を算出する第2副スプライン算出工程、H:算出した第2副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における変位の値を算出する第2副スプライン指示値算出工程、を実行することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項3記載の変位算出方法において、前記検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうち他方の変位について、さらに以下のE乃至Hの工程、すなわちE:第2の座標軸方向に並び、かつ第1の座標軸の値が等しい複数の基準点の別の組について、各別の組ごとに、当該基準点における変位の値と第2の座標軸の値との関係を示す第2スプライン曲線を算出する第2スプライン算出工程、F:算出した各別の組ごとの第2スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における、各別の組ごとの変位の値を算出する第2スプライン指示値算出工程、G:第2スプライン曲線に基づき算出した各別の組ごとの変位の値と、各別の組の第1の座標軸の値との関係を示す第2副スプライン曲線を算出する第2副スプライン算出工程、H:算出した第2副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における変位の値を算出する第2副スプライン指示値算出工程、を実行し、前記第1副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値と、前記第2副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値との平均値を算出することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、描画データを入力する工程と、請求項1乃至5のいずれかに記載の変位算出方法により基板表面の評価点の変位を算出する工程と、算出した評価点の変位に基づき、入力した前記描画データのうち評価点に描画すべき画素の位置を変位させた描画データを作成する描画データ補正工程と、を備えたことを特徴とする描画データの補正方法である。
【0014】
請求項7の発明は、描画データを入力する工程と、請求項1乃至5のいずれかに記載の変位算出方法により基板表面の評価点の変位を算出する工程と、算出した評価点の変位に基づき、入力した前記描画データのうち評価点に描画すべき画素の位置を変位させた描画データを作成する描画データ補正工程と、前記描画データ補正工程によって補正した描画データに基づき、基板に対して描画を行う描画工程と、を備えたことを特徴とする描画方法である。
【0015】
請求項8の発明は、表面に互いに交差する第1の座標軸方向および第2の座標軸方向に沿って複数の基準点が格子状に配置された基板に対して描画を行う描画装置であって、描画データを入力する入力手段と、前記基板の表面を撮像する撮像機構と、撮像された基板表面の複数の基準点の位置情報を算出する位置算出手段と、算出された前記位置情報に基づき、前記描画データの評価点の近傍に位置する複数の基準点について、座標軸方向ごとの変位を検出する変位検出手段と、前記変位検出手段により検出された変位の値により、前記評価点の位置の変位を算出する評価点変位算出手段と、前記変位算出手段により算出された評価点変位と入力された描画データに基づき、描画する画素を変位させて描画データを補正する描画データ補正手段と、前記描画データ補正手段により補正された描画データにより描画を行う描画手段と、を備え、前記評価点変位算出手段は、一方の座標軸方向に並び、かつ他方の座標軸の値が等しい複数の基準点の組について、各組ごとに、当該基準点における変位の値と一方の座標軸の値との関係を示す第1方向スプライン曲線を算出する第1スプライン算出手段と、算出した各組ごとの第1方向スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記一方の座標軸の値における、各組ごとの変位の値を算出する第1スプライン指示値算出手段と、第1方向スプライン曲線に基づき算出した各組ごとの変位の値と、各組の他方の座標軸の値との関係を示す第1副スプライン曲線を算出する第1副スプライン算出手段と、算出した第1副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記他方の座標軸の値における変位の値を算出する第1副スプライン指示値算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、請求項8に記載の描画装置において、前記変位検出手段により検出した変位を第1の座標軸方向成分と第2の座標軸方向成分に分離する分離手段をさらに備え、前記評価点変位算出手段は、前記分離手段により分離された前記第1の座標軸方向成分および第2の座標軸方向成分のそれぞれに基づいて、評価点の変位の第1の座標軸方向成分と第2の座標軸成分を算出するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1ないし請求項5の発明によれば、基板に局所的でない歪が発生している場合でも、基板の広い領域の歪みの傾向をとらえて的確にその変位を算出できる。
【0018】
また請求項6の発明によれば、算出した変位に基づき適正な描画データを補正することができる。
【0019】
また請求項7ないし9の発明によれば、算出した描画データに基づき適正に描画を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る描画装置1の概略構成を示す図である。
【図2】描画データと基板の歪を示す図である。
【図3】プリント基板を製造する方法の概要を示す流れ図である。
【図4】アライメントマークMの配置と画像要素Eを示す図である。
【図5】アライメントマークMの変位とそのX方向成分を示す図である。
【図6】アライメントマークMの変位のX方向成分をを縦軸にとった図である。
【図7】アライメントマークMの変位のX方向成分とX軸の値との関係を示す第1スプライン曲線を示す図である。
【図8】第1スプライン曲線に基づく評価点EのX軸の値(X=xe)における変位の値X1の算出を示す図である。
【図9】算出した評価点EのX軸の値(X=xe)における変位の値ΔX1を横軸にとった図である。
【図10】他のアライメントマークの組から算出した評価点EのX軸の値(X=xe)における変位の値ΔX2、ΔX3、ΔX4を横軸にとった図である。
【図11】第1スプライン曲線に基づき算出した変位の値と、Y軸の値との関係を示す第1副スプライン曲線を示す図である。
【図12】第1副スプライン曲線に基づく評価点EのY軸の値(Y=ye)における変位の値ΔXeの算出を示す図である。
【図13】ステップS14における補正量算出の詳細を示す流れ図である。
【図14】従来の方法による補正結果の一例を示す図である。
【図15】本発明による補正結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施の形態>
【0022】
<描画装置の概要>
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る描画装置1の概略構成を示す図である。描画装置1は、露光用光であるレーザー光LBを走査しつつ照射することによってプリント基板、半導体基板、液晶基板などの描画対象たる基板Sに局所的な露光を連続的に行うことにより、基板S上に所望の回路パターンについての露光画像を描画する直接描画装置(直描装置)である。
【0024】
描画装置1は主として、描画データDDを生成するデータ処理装置2と、描画データDDに基づいて実際に描画(露光)を行う露光装置3とから構成される。なお、データ処理装置2と露光装置3とは一体に設けられる必要はなく、両者の間のデータの授受が可能とされている限りにおいて、物理的に離間していてもよい。
【0025】
データ処理装置2は、演算回路、記憶装置等を備えたいわゆるマイクロコンピュータよりなり、内蔵する描画データ補正手段21(後述する)が実行する補正量の算出、補正処理を含む各種演算処理等を行う。詳しくは、例えばCADなどのパターン設計装置4によって作成された回路パターンの設計データであるパターンデータDPに基づいて、露光装置3における処理データである描画データDDを生成する。パターンデータDPは、通常、ポリゴンなどのベクターデータとして記述されてなる。一方、露光装置3は、ラスターデータとして記述されている描画データDDに基づいて露光を行うので、データ処理装置2は、パターンデータDPをラスターデータに変換する必要がある。なお、本実施の形態に係る描画装置1では、必要な場合には後述する態様にて補正処理を行ったうえで描画データDDを生成する。これにより、基板Sに変形が生じている場合であっても、所望された通りの回路パターンを基板Sに描画することができるようになっている。
【0026】
露光装置3は、データ処理装置2から与えられた描画データDDに従って、基板Sに対する描画を行う装置である。露光装置3は、各部の動作を制御する描画コントローラ31と、基板Sを載置するためのステージ32と、レーザ光LBを出射する光源33と、ステージ32に載置された基板Sの被描画面Saを撮像する撮像装置34とを主として備える。
【0027】
露光装置3においては、ステージ32と光源33との少なくとも一方が、互いに直交する水平二軸方向である主走査方向と副走査方向とに移動可能とされてなる。これにより、基板Sをステージ32に載置した状態で、ステージ32と光源33とを主走査方向に相対的に移動させつつ光源33からレーザ光LBを照射できるようになっている。あるいはさらに、ステージ32は水平面内で回転移動可能とされていてもよいし、光源33は垂直方向に移動可能とされていてもよい。使用するレーザ光LBの種類は、描画対象たる基板Sの種類などに応じて適宜に定められてよい。
【0028】
また、光源33には例えばDMD(デジタルミラーデバイス)などの変調手段33aが備わっており、変調手段33aによる変調を受けつつ光源33から出射されたレーザ光LBがステージ32上の基板Sに照射されるようになっている。より具体的には、描画に先立ち、まず、描画コントローラ31により、画素位置ごとの露光の有無が設定されてなる描画データDDの記述内容に従った、変調手段33aの変調単位ごとのレーザ光LBの照射のオン/オフ設定が行われる。光源33がステージ32に対して(その上に載置された基板Sに対して)主走査方向に相対的に移動している間に、斯かるオン/オフ設定に従って光源33からレーザ光LBが出射されることで、ステージ32上の基板Sに、描画データDDに基づく変調を受けたレーザ光LBが照射されることになる。
【0029】
ある位置について主走査方向にレーザ光LBが走査されて当該位置についての露光が終了すると、副走査方向に所定距離だけ光源33が相対移動し、再び当該位置について主走査方向にレーザ光LBが走査される。これを繰り返すことにより、基板S上に描画データDDに従った画像(露光画像)が形成される。
【0030】
撮像装置34は、主として、ステージ32に載置された基板Sの表面すなわち被描画面Saに形成された、アライメントマークMを撮像するために備わる。斯かる位置決めマークの撮像画像は、マーク撮像データDMとして、上述のようにデータ処理装置2に供される。もちろん、撮像装置34が他の目的のために撮像を行える態様であってもよい。
【0031】
なお、基板Sにおけるアライメントマークの形成態様は、その位置を正確に特定できる限りにおいて、特に限定されない。例えば、貫通孔など、機械的加工により形成されたアライメントマークを利用する態様であってもよいし、印刷プロセスやフォトリソグラフィープロセスなどによってパターニングされたアライメントマークを用いる態様であってもよい。本実施形態では、第1層のパターンである銅配線パターンとともにアライメントマークのデータが1層目のパターンデータDP1に含まれており、銅配線パターンの形成と同時に基板Sの表面に形成される。
【0032】
<補正処理の基本概念>
【0033】
以下、次に、描画データDDを生成する場合に行われる補正処理について、その基本概念を説明する。
【0034】
一般に、パターンデータDPは、変形がなく被描画面が平坦な理想的な形状の基板を想定して作成されているが、実際の基板には、そり、ゆがみや、前工程での処理に伴う歪などの変形が生じている場合がある。そのような場合、パターンデータDPで設定されている配置位置のままに基板Sに回路パターンを描画しても、所望された生産物を得ることができないことから、基板Sに生じている歪み等の状態に見合った回路パターンが形成されるように、回路パターンの形成位置座標を基板Sの状態に応じて変換するローカルアライメント処理が必要となる。本実施の形態において描画データDDを生成する際に行う補正処理とは、端的に言えば、座標変換処理である。
【0035】
図2は、露光装置3のローカルアライメントにおけるパターンデータDP、DP2の関係を説明するための図である。ここでは、基板Sに対して図2(A)に示すアライメントマークMを含むパターンデータDP1、図2(B)に示すパターンデータDP2をこの順に露光し、最終的に図2(C)に示すようにこの2つのパターンデータDP1、DP2にそれぞれ含まれる円C1,C2が重なる位置関係となるパターンを形成することが目的であるとする。
【0036】
なお、このように2つのパターンデータを重ねて形成する場合としては、例えば、プリント基板の銅配線パターンとそれに重ねるソルダーレジストのパターンを形成する場合、多層プリント基板の配線パターンの1層目と2層目を形成する場合、両面プリント基板の表面配線パターンと裏面配線パターンを形成する場合(ただしこの場合に、裏面配線パターンを裏面側から露光する場合には、パターンは裏返しにする)等が考えられる。
【0037】
今、プリント基板Sの銅配線パターンをパターンデータDP1で、それに重ねるソルダーレジストのパターンをパターンデータDP2で、それぞれ形成してプリント基板Sを製造する場合を考える。この場合、まずプリント基板Sの全面に形成した銅層の上にフォトレジスト膜を形成し、そのフォトレジスト膜にパターンデータDP1から生成した描画データDDを露光し、現像し、エッチングをして銅配線パターンを形成する。続いて、そのプリント基板Sの銅配線パターンの上にソルダーレジスト層を塗布またはラミネートにより形成し、パターンデータDP2から生成した描画データDDを露光し、現像する。
【0038】
しかるにこの場合、銅配線パターンを形成する過程では、現像、エッチングやそれらに伴う水洗、加熱乾燥等の工程が施されるので、それによってプリント基板Sに伸縮や歪みが生じ、図2(D)に示すようなプリント基板Sとパターンの変形が生じたとする。このプリント基板Sに対してパターンデータDP2の形をそのままに描画データDDを生成して露光すると、最終的に形成されるパターンは図2(E)のようになり、2つのパターンデータDP1、DP2にそれぞれ含まれる円C1,C2の位置関係にずれが生じてしまい、目的とするパターンが形成できない。
【0039】
従って、この場合には、このパターンデータDP2をそのまま露光するのではなく、プリント基板Sの変形(すなわち、プリント基板Sに形成されたパターンデータDP1の変形、変位)を考慮して、図2(F)に示すようにパターンデータDP2'に補正し変形する。そしてその変形したパターンデータDP2'から描画データDDを生成して露光を行い、最終的なパターンが図2(G)となるようにする。このパターンデータDP2の補正による変形がローカルアライメントである。なお、プリント基板Sの変形は、例えばプリント基板Sに形成した位置指標(例えばアライメントマークM)を基準点として撮像するなどして読み取り、その変位により認識することができる。なお、パターンデータDP2にはアライメントマークMは含まれないが、図2(F)では位置関係を示すために描いてある。
【0040】
<プリント基板の製造工程>
【0041】
本発明を用いて基板に回路パターンを描画してプリント基板を製造する方法の概要につき、以下に説明する。ここでは樹脂基台の片面プリント配線基板に銅配線パターンを形成し、その上にソルダーレジストのパターンを形成するものとする。図3はデータ処理装置2が実行するこの方法の制御プログラムの全体の概要(装置の動作の概要を含む)を示す流れ図である。
【0042】
<第1層のパターン形成>
【0043】
まず、予め、パターン設計装置4において、作成しようとするプリント基板の銅配線パターンと、その上に形成するソルダーレジストのパターンを設計し、銅配線パターンのデータを1層目のパターンデータDP1とし、ソルダーレジストのパターンのデータを2層目のパターンデータDP2として、パターン設計装置4内にある図示しない記憶装置に記憶してあるものとする。なお、このとき、1層目のパターンデータDP1には、基板S面にXY座標を考えたとき、X、Yそれぞれの方向に所定間隔ずつあけて、各方向に少なくとも4個以上、すなわち合計16個以上、十字型のアライメントマークMaを配列して加えておく。
【0044】
始めに、作成されたパターンデータDP1をデータ処理装置2に送信し、データ処理装置2で読み込む(ステップS1)。データ処理装置2は読み込んだパターンデータDP1を露光装置3で処理可能なラスター形式のデータである初期描画データD1に変換したうえで、この初期描画データD1をそのまま描画データDDとして露光装置3の描画コントローラ31に送信する(ステップS2)。すなわち、ここでは1層目の描画であるから、初期描画データD1に基づく露光時以前には、基板Sにはパターンは形成されておらず歪等も存在しないので、データの補正は必要ないため行わず、パターンデータDP1の初期描画データD1をそのまま描画データDDとする。なお、このラスター形式への変換処理には公知の技術を利用可能である。
【0045】
描画データDDが描画装置1に送信されると、露光装置3に描画対象物である基板Sが搬入され、ステージ32に対して位置決めされた状態で固定される(ステップS3)。基板Sは樹脂基台の片面に銅層が形成されたプリント基板であって、露光装置3に搬入される際には、その銅層のパターニングのために銅層上にフォトレジスト膜が形成されている。なお、露光装置3へのかかる基板Sの搬入あるいは後述する搬出は、描画コントローラ31の指示により図示しない搬送装置によって行ってもよいし、オペレータが手作業で行ってもよい。
【0046】
描画装置3に基板Sが搬入されると、描画コントローラ31は光源33の変調手段33a、ステージ32等を制御して、初期描画データD1によって変調されたレーザ光LBを照射して描画処理を行い、基板Sのパターニングを行う(ステップS4)。具体的には、基板Sの表面に形成されているフォトレジストに、初期描画データD1に基づく感光部分が形成される。
【0047】
初期描画データD1による描画処理が終了すると、基板Sは露光装置3から搬出される(ステップS5)。もし複数枚の基板Sを同様に処理する場合には、処理枚数をカウントして、所定枚数が終了したかを判断し(ステップS6)、終了していなければステップS2に戻る。終了していればステップS7に進む。
【0048】
露光装置3による描画処理が終了した基板Sは図示しない現像装置に運ばれて現像、エッチングおよびそれらに伴う水洗、熱処理等の処理が施される(ステップS7)。そしてこのステップS7が終了すると、基板S表面の銅層がパターニングされて所定の配線パターンとなっており、これで第1層のパターン形成が終了した。
【0049】
<第2層のパターン形成>
【0050】
次に、基板Sに対して第2層のパターン形成が行われるが、まず、ステップS7にて所定の配線パターンが形成された基板Sは、図示しない被膜形成装置へ運ばれ、その基板Sの表面全体に、ソルダーレジストが塗布またはラミネート等の手段により被膜形成される(ステップS8)
【0051】
一方で、パターン設計装置4においてステップS1にて作成されたソルダーレジストのパターンのデータ(2層目のパターンデータDP2)を、パターン設計装置4からデータ処理装置2に送信し、データ処理装置2で読み込む(ステップS9)。データ処理装置2は露光装置3で処理可能なラスター形式のデータである初期描画データD2に変換する。この初期描画データD2は、直ちに描画装置1の描画コントローラ31に送信するのではなく、後述する補正のためにデータ処理装置2の内部記憶装置(図示せず)に記憶しておく(ステップS10)。
【0052】
ステップS8でソルダーレジスト層が形成された基板Sは、再度、描画装置1に搬入され、ステージ32に対してステップS3と同様に位置決めされた状態で固定される(ステップS11)。
【0053】
次に、ステージ32に固定された基板Sは撮像装置34によって撮像され、撮像された画像はマーク撮像データDMとして描画コントローラ31を解してデータ処理装置2へ送信される(ステップS12)。具体的には、この実施形態では、撮像装置34は基板Sの上側を向いている感光膜面(描画面)全体を撮影するが、それは後述の如く基板Sの描画面に形成されたアライメントマークMの位置検出を行うためであるから、必要なアライメントマークMの撮像ができるならば必ずしも基板S全体を撮像するものである必要はない。
【0054】
データ処理装置2は、受信したマーク撮像データDMを処理して基板S表面に形成されている全てのアライメントマークMを認識、抽出し、その位置検出を行う(ステップS13)。基板Sはステージ32に対して描画時(ステップS3)と同様に位置決めされて固定されているので、基板Sに変形や歪がなければ、露光装置3に対しては描画時と同じ位置に検出されることになるが、実際には、描画後の現像、エッチング等の処理によって基板Sに変形や歪が生じることが多く、アライメントマークMの一部または全部の位置がずれて検出される。
【0055】
続いてデータ処理装置2は、かかるアライメントマークMの位置ずれ、すなわち基板Sの変形、歪等に対して、次に露光しようとする初期描画データD2に対して補正量を算出し(ステップS14)、かかる補正量により補正処理を行い、補正済みの描画データDDを得る(ステップS15)。そしてこの補正処理によって、先に初期描画データD1により形成した銅配線パターンのある基板Sの表面の変形や歪に対して、これから描画しようとする初期描画データD2を補正し、その補正済みの描画データDDに基づいて描画することで、先に形成した銅配線パターンと、今回形成するソルダーレジストパターンの位置関係のずれをなくし、あるいは軽減する。これにより十分な描画品質、製品品質が得られることとなる。なおこのステップS14を含む補正処理については後に詳述する。
【0056】
次にデータ処理装置2は、ステップS15で得た補正済みの描画データDDを露光装置3の描画コントローラ31に送信し、描画コントローラ31は光源33の変調手段33a、ステージ32等を制御して、かかる描画データDDによって変調されたレーザ光LBを照射して描画処理を行い、基板Sのパターニングを行う(ステップS16)。具体的には、基板Sの表面に形成されているソルダーレジストに、描画データDDに基づく感光部分が形成される。
【0057】
描画データDDによる描画処理が終了すると、基板Sは露光装置3から搬出される(ステップS17)。もし複数枚の基板Sを同様に処理する場合には、処理枚数をカウントして、所定枚数が終了したかを判断し(ステップS18)、終了していなければステップS11に戻る。終了していればステップS19に進む。
【0058】
露光装置3による描画処理が終了した基板Sは図示しない現像装置等に運ばれて現像等のパターン形成に必要な処理が施される(ステップS19)。そしてこのステップS19が終了すると、基板S表面の銅層上にのソルダーレジストがパターニングされて所定のソルダーレジストパターンとなっており、これで第2層のパターン形成が終了する。
【0059】
<補正処理の概要>
【0060】
次に本発明の上述したステップS14における初期描画データD2に対する補正量算出の処理の概要を説明する。図4はパターンデータDP1におけるアライメントマークMの配置と、その部分に対応するパターンデータDP2に含まれる画像要素Eの設計位置(以下、補正元といい、その座標は(xe、ye)とする。)を示す。図に白抜き十字で示すアライメントマークM11、M12、M13、・・・、M21、M22、M23、・・・は、XY平面に格子状の行列に配置されている(以下ではこれらを総称してアライメントマークMという)。図4ではその一部分である4行4列部のみ示す。
【0061】
ここで、図3のステップS12、S13で検出したアライメントマークMの位置が基板Sに生じた歪によってステップS4で描画した位置からずれている場合に、その基板Sに画像要素Eを描画するための位置の補正を行うものとする。この場合、画像要素Eが評価点Eであり、その位置補正の補正量の算出には、画像要素Eの周囲の4点のアライメントマークM22、M23、M32、M33の4点と、さらにその周囲の12点のアライメントマークの、合計16点(すなわち、アライメントマークM11〜M14、M21〜M24、M31〜M34、M41〜M44、)のずれ量を用いる。
【0062】
画像要素Eの位置補正の補正量の算出は、大きく分けて次の工程で行う。
(1)各アライメントマークMの移動先の位置と元位置からのずれ量取得。
(2)評価点のX方向の補正量算出。
(3)評価点のY方向の補正量算出。
【0063】
<補正量算出処理の詳細>
各工程について以下に詳しく説明する。図13はステップS14の詳細を示す図である。
【0064】
(1)まず、各アライメントマークMの移動先の位置と元位置からのずれ量を取得する。(ステップS141)ここでは撮像したアライメントマークM11〜M14の画像を処理してそれらのずれ量を算出する。ステップS12、S13で検出したアライメントマークM11〜M14が、それぞれ図5の黒十字で示す位置にずれていたとする。アライメントマークM11について、元位置からずれの移動先の位置へのベクトルを考える。この場合、移動先の位置へのベクトルは図5のv11である。このベクトルv11が元位置からのずれ量となる。他のアライメントマークM12〜M14、M21〜M24、M31〜M34、M41〜M44についても同様に求められる。
【0065】
工程(2)は次の工程からなる。
【0066】
(2−1)各アライメントマークM11〜M14の各位置におけるずれ量(変位)をX軸方向成分とY軸方向成分に分離し、X方向のずれ量ΔXを算出する。(ステップS142)アライメントマークM11について、ベクトルv11をX方向成分とY方向成分に分けると、X方向成分は図5のv11xである。これがアライメントマークM11のX方向のずれ量ΔX11となる。他のアライメントマークM12〜M14についても同様にずれ量ΔX12、ΔX13、ΔX14が求められる。
【0067】
(2−2)各アライメントマークM11〜M14の各位置においてX方向のずれ量ΔXを縦軸にとる。ここでは、図6に示すように、アライメントマークM11について、X方向のずれ量ΔX11を縦軸にとる。これはすなわちベクトルv11のX方向成分v11xを縦軸に向けることを意味する。他のアライメントマークM12〜M14についても同様にずれ量ΔX12、ΔX13、ΔX14を縦軸にとる。
【0068】
(2−3)各アライメントマークM11〜M14の間で、縦軸に描いた移動先のX軸量(ΔX)について、横方向(X方向)のスプライン曲線SL1を生成する(ステップS143)。ここでは、図7に示すように、各アライメントマークM11〜M14に関して、縦軸に描いた移動先のX軸量(ΔX)の各点を、横方向になめらかな曲線すなわちスプライン曲線SL1でつなぐ。これは例えばこの四点を通る三次元方程式であらわされる。すなわちこの工程において、X軸方向に並び、かつY軸の値が等しいアライメントマークM11〜M14の組について、これらアライメントマークM11〜M14におけるX軸方向の変位の値とX軸の値との関係を示す第1スプライン曲線SL1を算出している。
【0069】
(2−4)描いたスプライン曲線SL1の、補正元E(xe、ye)のX位置(X=xe)における補正値ΔX1を算出する(ステップS144)。ここでは、図8に示すように、X位置(xe)の線の、アライメントマークM11〜M14を結ぶY位置の直線から、先に(2−3)で描いたスプライン曲線SL1までの距離がΔX1であり、これは図8におけるベクトルX1の大きさである。アライメントマークM11〜M14の直線上におけるX=xeの点での補正値を意味する。すなわちこの工程において、第1スプライン曲線SL1に基づき、評価点E(xe、ye)のX軸の値(X=xe)における変位の値を算出している。
【0070】
(2−5)算出した補正値ΔX1を、X位置(X=xe)における各アライメントマークM11〜M14のY位置において、横軸に生成する。ここでは、図9に示すように、アライメントマークM11〜M14を結ぶY位置の横軸上に、X位置(X=xe)の線から補正値ΔX1をとる。これは図8におけるベクトルX1をX位置(X=xe)の線から横軸に向けることと等しい。
【0071】
(2−6)各アライメントマークM21〜M24、M31〜M34、M41〜M44についても、上記(2−2)〜(2−5)と同様にしてX位置(X=xe)におけるΔX2、ΔX3、ΔX4を算出し、X位置(xe)における各Y位置において、横軸に生成する。ここでは、図10に示すように、アライメントマークM21〜M24、M31〜M34、M41〜M44についても、同様にしてX位置(X=xe)におけるΔX2、ΔX3、ΔX4を算出し、X位置(X=xe)における各Y位置において、横軸に生成する。なお、この処理は上記(2−2)〜(2−5)と同様であるので、図13ではステップS142〜144に含めている。
【0072】
(2−7)描いたΔX1、ΔX2、ΔX3、ΔX4について、縦(Y)方向のスプライン曲線SL1Sを生成する(ステップS145)。ここでは、図11に示すように、ΔX1、ΔX2、ΔX3、ΔX4の位置に関して、(2−3)と同様にしてスプライン曲線SL1Sを生成する。すなわちこの工程において、各アライメントマークの組ごとの第1スプライン曲線SL1に基づき算出したX位置(X=xe)における変位の値と、各組のY軸の値との関係を示す第1副スプライン曲線SL1Sを算出している。
【0073】
(2−8)描いたスプライン曲線SL1Sの、補正元E(xe、ye)のY位置(Y=ye)における値ΔXeを算出する(ステップS146)。ここでは、図12に示すように、(2−7)で描いたスプライン曲線SL1Sと補正元E(xe、ye)のY位置(Y=ye)における値ΔXeを算出する。すなわちこの工程において、算出した第1副スプライン曲線SL1Sに基づき、評価点E(xe、ye)のY軸の値(Y=ye)における変位の値を算出している。これはすなわち評価点E(xe、ye)における変位の値であるので、このΔXeを補正元E(xe、ye)のX方向の補正量とする。
【0074】
工程(3)では工程(2)と同様の手順をY方向に関して行い、補正元E(xe、ye)のY方向の補正量ΔYeを算出する。なお、この工程(3)は工程(2)と同様であるから図13ではこの工程(3)の記載を省略している。
【0075】
最終的に、補正元E(xe、ye)に対して算出したΔXeとΔYeを補正量として、補正元Eすなわち画像要素E(xe、ye)の補正後の描画位置は、(xe+ΔXe、ye+ΔYe)となる。そしてその座標に基づきパターンデータDP2から描画データDDを生成する。なお、以上の実施形態において、ステップS14、S15が描画データを補正する描画データ補正手段21に相当する。
【0076】
<変形例>
【0077】
上記実施形態では、X方向の補正量算出時に、アライメントマークM11〜M14についてX方向のスプライン曲線SL1を描き、同様にアライメントマークM21〜M24、M31〜M34、M41〜M44についても、X方向のスプライン曲線SL1を描き、その後、ΔX1、ΔX2、ΔX3、ΔX4について、縦(Y)方向のスプライン曲線SL1Sを生成したが、先に縦(Y)方向のスプライン曲線を描いてもよい。すなわち、アライメントマークM11〜M41についてX方向のずれ量ΔXを横方向(X方向)に取り、Y方向のスプライン曲線を描く。それをアライメントマークM12〜M42、M13〜M43、M14〜M44まで繰り返し、算出したΔX1、ΔX2、ΔX3、ΔX4を縦(Y)軸に生成し、それについて横(X)方向のスプライン曲線を描いて補正量ΔXeを算出できる。あるいは、これら両方の計算を行ってそれらでそれぞれ算出された補正量ΔXeの平均値をとってもよい。これは、Y方向の補正量ΔYeに関しても同様である。
【0078】
また、上記実施形態では、X方向の補正量算出時に、X方向のスプライン曲線SL1を先に描き、その後、縦(Y)方向のスプライン曲線SL1Sを生成し、さらにY方向の補正量算出も同様に行ったが、Y方向の補正量算出時にはX方向の補正量算出時と異なる方法で行ってもよい。すなわちY方向の補正量算出時にY方向のスプライン曲線を先に描き、その後、横(X)方向のスプライン曲線を生成してもよい。またその逆に、X方向の補正量算出時に、Y方向のスプライン曲線を先に描き、その後、横(X)方向のスプライン曲線を生成し、Y方向の補正量算出時にはX方向のスプライン線を先に描き、その後、縦(Y)方向のスプライン曲線を生成してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では補正元Eの周囲の16点のアライメントマークから補正量を算出したが、例えばパターンデータDP2の描画領域の角部など、周囲に4行4列の16点のアライメントマークが取れない場合には、例えば3行3列のアライメントマークを使用してスプライン線を描いてもよい。なお、上記説明においてスプライン線を描くということは、その座標から対応する数式を算出することであり、必ずしも図表を描くことのみを意味するわけではない。
【0080】
また、アライメントマークは正方形の格子状に限らず、長方形等であってもよく、等間隔でなくてもよく、また必ずしも格子状の行列である必要はないが、基準点として用いるために少なくとも一方向には直線上に並んでいる必要がある。もし直線上に適当なアライメントマークがない場合には、近傍のアライメントマークから直線上に位置するような点を補間して算出し、その点を基準点として用いればよい。その補間方法としては、例えば周囲にある3つのアライメントマークとその点との距離およびそれら3点のアライメントマークにおけるX方向、Y方向のそれぞれの変位量を計測し、逆距離加重補間法を用いてその点での変位量を補間するなどの方法が考えられる。
【0081】
なお、本発明の描画装置としては、変位検出手段により検出された変位の値により、評価点の位置の変位を算出する評価点変位算出手段としては、上記実施形態のようにX方向のスプライン曲線を先に描き、その後、Y方向のスプライン曲線を生成する場合と、Y方向のスプライン曲線を先に描き、その後、X方向のスプライン曲線を生成する場合と、それぞれに専用のソフトウエアまたはハードウエアを用意してもよいが、座標軸が違うだけであるので、両方の場合で共用できるソフトウエアまたはハードウエアを用いてもよい。
【0082】
<効果>
【0083】
以上のように本発明によれば、例えば基板全体がうねるように歪んでいるような場合のように、基板に局所的でない歪が発生している場合でも、複数の基準点の変位からスプライン曲線を利用して、基板の広い領域の歪みの傾向をとらえて的確にその変位を算出でき、また、算出した変位に基づき適正な描画データを補正することができる。また、算出した描画データに基づき適正に描画を行うことができる。
【0084】
図14および図15はパターンデータDP1の補正結果の一例を示し、図14は従来の共一次内挿法と呼ばれる方法によるもの、図15は本発明の変位算出方法、補正方法を用いたものである。これらは同じパターンデータDP1をもちいたもので、パターンデータDP1では、白抜きの小さな四角形が評価点で、正方形の格子状に配列されたものである。黒塗りの小さな四角形が基準点となるアライメントマークであって、5×5の正方形の格子状に配列されている。そして、どちらも最上部に横方向に並んだ5点、最下部に横方向に並んだ5点、それらの中間に横方向に並んだ5点の合計15点のアライメントマークは移動しておらず、残りの10点のアライメントマークが上下にうねったように移動している場合の全ての評価点の補正結果を示す。従来の方法では、移動したアライメントマークの近傍の評価点が角張ったような配列になっているのに対し、本発明では、スプライン曲線を反映したようななだらかな配列となっており、基板等のうねったような歪に対して、より的確な補正ができていると考えられる。
【符号の説明】
【0085】
1 描画装置
2 データ処理装置
3 露光装置
21 描画データ補正手段
33 光源
33a 変調手段
34 撮像手段
M11、M12、M13・・・、M44 アライメントマーク
E 評価点
SL1 第1スプライン曲線
SL1S 第1副スプライン曲線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する第1の座標軸方向および第2の座標軸に沿って基板の表面に格子状に配置された複数の基準点の変位から、任意の評価点の変位を算出する変位算出方法であって、
基板面に規定された複数の基準点の位置情報を得る工程と、
前記位置情報に基づき、前記評価点の近傍の複数の基準点について、それぞれの座標軸方向ごとの変位を検出する工程と、
検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうちどちらか一方の変位について、以下のA乃至Dの工程、すなわち
A:第1の座標軸方向に並び、かつ第2の座標軸の値が等しい複数の基準点の組について、各組ごとに、当該基準点における変位の値と第1の座標軸の値との関係を示す第1スプライン曲線を算出する第1スプライン算出工程、
B:算出した各組ごとの第1スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における、各組ごとの変位の値を算出する第1スプライン指示値算出工程、
C:第1スプライン曲線に基づき算出した各組ごとの変位の値と、各組の第2の座標軸の値との関係を示す第1副スプライン曲線を算出する第1副スプライン算出工程、
D:算出した第1副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における変位の値を算出する第1副スプライン指示値算出工程
を実行することを特徴とする変位算出方法。
【請求項2】
請求項1記載の変位算出方法において、
前記どちらか一方の変位について、さらに以下のE乃至Hの工程、すなわち
E:第2の座標軸方向に並び、かつ第1の座標軸の値が等しい複数の基準点の別の組について、各別の組ごとに、当該基準点における変位の値と第2の座標軸の値との関係を示す第2スプライン曲線を算出する第2スプライン算出工程、
F:算出した各別の組ごとの第2スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における、各別の組ごとの変位の値を算出する第2スプライン指示値算出工程、
G:第2スプライン曲線に基づき算出した各別の組ごとの変位の値と、各別の組の第1の座標軸の値との関係を示す第2副スプライン曲線を算出する第2副スプライン算出工程、
H:算出した第2副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における変位の値を算出する第2副スプライン指示値算出工程
を実行し、前記第1副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値と、前記第2副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値との平均値を算出することを特徴とする変位算出方法。
【請求項3】
請求項1に記載の変位算出方法において、
前記検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうち他方の変位についても、前記A乃至Dの工程を実行することを特徴とする変位算出方法。
【請求項4】
請求項1記載の変位算出方法において、
前記検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうち他方の変位について、さらに以下のE乃至Hの工程、すなわち
E:第2の座標軸方向に並び、かつ第1の座標軸の値が等しい複数の基準点の別の組について、各別の組ごとに、当該基準点における変位の値と第2の座標軸の値との関係を示す第2スプライン曲線を算出する第2スプライン算出工程、
F:算出した各別の組ごとの第2スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における、各別の組ごとの変位の値を算出する第2スプライン指示値算出工程、
G:第2スプライン曲線に基づき算出した各別の組ごとの変位の値と、各別の組の第1の座標軸の値との関係を示す第2副スプライン曲線を算出する第2副スプライン算出工程、
H:算出した第2副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における変位の値を算出する第2副スプライン指示値算出工程
を実行することを特徴とする変位算出方法。
【請求項5】
請求項3記載の変位算出方法において、
前記検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうち他方の変位について、さらに以下のE乃至Hの工程、すなわち
E:第2の座標軸方向に並び、かつ第1の座標軸の値が等しい複数の基準点の別の組について、各別の組ごとに、当該基準点における変位の値と第2の座標軸の値との関係を示す第2スプライン曲線を算出する第2スプライン算出工程、
F:算出した各別の組ごとの第2スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における、各別の組ごとの変位の値を算出する第2スプライン指示値算出工程、
G:第2スプライン曲線に基づき算出した各別の組ごとの変位の値と、各別の組の第1の座標軸の値との関係を示す第2副スプライン曲線を算出する第2副スプライン算出工程、
H:算出した第2副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における変位の値を算出する第2副スプライン指示値算出工程
を実行し、前記第1副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値と、前記第2副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値との平均値を算出することを特徴とする変位算出方法。
【請求項6】
描画データを入力する工程と、
請求項1乃至5のいずれかに記載の変位算出方法により基板表面の評価点の変位を算出する工程と、
算出した評価点の変位に基づき、入力した前記描画データのうち評価点に描画すべき画素の位置を変位させた描画データを作成する描画データ補正工程と、
を備えたことを特徴とする描画データの補正方法。
【請求項7】
描画データを入力する工程と、
請求項1乃至5のいずれかに記載の変位算出方法により基板表面の評価点の変位を算出する工程と、
算出した評価点の変位に基づき、入力した前記描画データのうち評価点に描画すべき画素の位置を変位させた描画データを作成する描画データ補正工程と、
前記描画データ補正工程によって補正した描画データに基づき、基板に対して描画を行う描画工程と、
を備えたことを特徴とする描画方法。
【請求項8】
表面に互いに交差する第1の座標軸方向および第2の座標軸方向に沿って複数の基準点が格子状に配置された基板に対して描画を行う描画装置であって、
描画データを入力する入力手段と、
前記基板の表面を撮像する撮像機構と、
撮像された基板表面の複数の基準点の位置情報を算出する位置算出手段と、
算出された前記位置情報に基づき、前記描画データの評価点の近傍に位置する複数の基準点について、座標軸方向ごとの変位を検出する変位検出手段と、
前記変位検出手段により検出された変位の値により、前記評価点の位置の変位を算出する評価点変位算出手段と、
前記変位算出手段により算出された評価点変位と入力された描画データに基づき、描画する画素を変位させて描画データを補正する描画データ補正手段と、
前記描画データ補正手段により補正された描画データにより描画を行う描画手段と、
を備え、
前記評価点変位算出手段は、
一方の座標軸方向に並び、かつ他方の座標軸の値が等しい複数の基準点の組について、各組ごとに、当該基準点における変位の値と一方の座標軸の値との関係を示す第1方向スプライン曲線を算出する第1スプライン算出手段と、
算出した各組ごとの第1方向スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記一方の座標軸の値における、各組ごとの変位の値を算出する第1スプライン指示値算出手段と、
第1方向スプライン曲線に基づき算出した各組ごとの変位の値と、各組の他方の座標軸の値との関係を示す第1副スプライン曲線を算出する第1副スプライン算出手段と、
算出した第1副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記他方の座標軸の値における変位の値を算出する第1副スプライン指示値算出手段と、
を備えたことを特徴とする描画装置。
【請求項9】
請求項8に記載の描画装置において、
前記変位検出手段により検出した変位を第1の座標軸方向成分と第2の座標軸方向成分に分離する分離手段をさらに備え、
前記評価点変位算出手段は、前記分離手段により分離された前記第1の座標軸方向成分および第2の座標軸方向成分のそれぞれに基づいて、評価点の変位の第1の座標軸方向成分と第2の座標軸成分を算出するものであることを特徴とする描画装置。
【請求項1】
互いに交差する第1の座標軸方向および第2の座標軸に沿って基板の表面に格子状に配置された複数の基準点の変位から、任意の評価点の変位を算出する変位算出方法であって、
基板面に規定された複数の基準点の位置情報を得る工程と、
前記位置情報に基づき、前記評価点の近傍の複数の基準点について、それぞれの座標軸方向ごとの変位を検出する工程と、
検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうちどちらか一方の変位について、以下のA乃至Dの工程、すなわち
A:第1の座標軸方向に並び、かつ第2の座標軸の値が等しい複数の基準点の組について、各組ごとに、当該基準点における変位の値と第1の座標軸の値との関係を示す第1スプライン曲線を算出する第1スプライン算出工程、
B:算出した各組ごとの第1スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における、各組ごとの変位の値を算出する第1スプライン指示値算出工程、
C:第1スプライン曲線に基づき算出した各組ごとの変位の値と、各組の第2の座標軸の値との関係を示す第1副スプライン曲線を算出する第1副スプライン算出工程、
D:算出した第1副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における変位の値を算出する第1副スプライン指示値算出工程
を実行することを特徴とする変位算出方法。
【請求項2】
請求項1記載の変位算出方法において、
前記どちらか一方の変位について、さらに以下のE乃至Hの工程、すなわち
E:第2の座標軸方向に並び、かつ第1の座標軸の値が等しい複数の基準点の別の組について、各別の組ごとに、当該基準点における変位の値と第2の座標軸の値との関係を示す第2スプライン曲線を算出する第2スプライン算出工程、
F:算出した各別の組ごとの第2スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における、各別の組ごとの変位の値を算出する第2スプライン指示値算出工程、
G:第2スプライン曲線に基づき算出した各別の組ごとの変位の値と、各別の組の第1の座標軸の値との関係を示す第2副スプライン曲線を算出する第2副スプライン算出工程、
H:算出した第2副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における変位の値を算出する第2副スプライン指示値算出工程
を実行し、前記第1副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値と、前記第2副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値との平均値を算出することを特徴とする変位算出方法。
【請求項3】
請求項1に記載の変位算出方法において、
前記検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうち他方の変位についても、前記A乃至Dの工程を実行することを特徴とする変位算出方法。
【請求項4】
請求項1記載の変位算出方法において、
前記検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうち他方の変位について、さらに以下のE乃至Hの工程、すなわち
E:第2の座標軸方向に並び、かつ第1の座標軸の値が等しい複数の基準点の別の組について、各別の組ごとに、当該基準点における変位の値と第2の座標軸の値との関係を示す第2スプライン曲線を算出する第2スプライン算出工程、
F:算出した各別の組ごとの第2スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における、各別の組ごとの変位の値を算出する第2スプライン指示値算出工程、
G:第2スプライン曲線に基づき算出した各別の組ごとの変位の値と、各別の組の第1の座標軸の値との関係を示す第2副スプライン曲線を算出する第2副スプライン算出工程、
H:算出した第2副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における変位の値を算出する第2副スプライン指示値算出工程
を実行することを特徴とする変位算出方法。
【請求項5】
請求項3記載の変位算出方法において、
前記検出したそれぞれの座標軸方向ごとの変位のうち他方の変位について、さらに以下のE乃至Hの工程、すなわち
E:第2の座標軸方向に並び、かつ第1の座標軸の値が等しい複数の基準点の別の組について、各別の組ごとに、当該基準点における変位の値と第2の座標軸の値との関係を示す第2スプライン曲線を算出する第2スプライン算出工程、
F:算出した各別の組ごとの第2スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第2の座標軸の値における、各別の組ごとの変位の値を算出する第2スプライン指示値算出工程、
G:第2スプライン曲線に基づき算出した各別の組ごとの変位の値と、各別の組の第1の座標軸の値との関係を示す第2副スプライン曲線を算出する第2副スプライン算出工程、
H:算出した第2副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記第1の座標軸の値における変位の値を算出する第2副スプライン指示値算出工程
を実行し、前記第1副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値と、前記第2副スプライン指示値算出工程により算出された変位の値との平均値を算出することを特徴とする変位算出方法。
【請求項6】
描画データを入力する工程と、
請求項1乃至5のいずれかに記載の変位算出方法により基板表面の評価点の変位を算出する工程と、
算出した評価点の変位に基づき、入力した前記描画データのうち評価点に描画すべき画素の位置を変位させた描画データを作成する描画データ補正工程と、
を備えたことを特徴とする描画データの補正方法。
【請求項7】
描画データを入力する工程と、
請求項1乃至5のいずれかに記載の変位算出方法により基板表面の評価点の変位を算出する工程と、
算出した評価点の変位に基づき、入力した前記描画データのうち評価点に描画すべき画素の位置を変位させた描画データを作成する描画データ補正工程と、
前記描画データ補正工程によって補正した描画データに基づき、基板に対して描画を行う描画工程と、
を備えたことを特徴とする描画方法。
【請求項8】
表面に互いに交差する第1の座標軸方向および第2の座標軸方向に沿って複数の基準点が格子状に配置された基板に対して描画を行う描画装置であって、
描画データを入力する入力手段と、
前記基板の表面を撮像する撮像機構と、
撮像された基板表面の複数の基準点の位置情報を算出する位置算出手段と、
算出された前記位置情報に基づき、前記描画データの評価点の近傍に位置する複数の基準点について、座標軸方向ごとの変位を検出する変位検出手段と、
前記変位検出手段により検出された変位の値により、前記評価点の位置の変位を算出する評価点変位算出手段と、
前記変位算出手段により算出された評価点変位と入力された描画データに基づき、描画する画素を変位させて描画データを補正する描画データ補正手段と、
前記描画データ補正手段により補正された描画データにより描画を行う描画手段と、
を備え、
前記評価点変位算出手段は、
一方の座標軸方向に並び、かつ他方の座標軸の値が等しい複数の基準点の組について、各組ごとに、当該基準点における変位の値と一方の座標軸の値との関係を示す第1方向スプライン曲線を算出する第1スプライン算出手段と、
算出した各組ごとの第1方向スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記一方の座標軸の値における、各組ごとの変位の値を算出する第1スプライン指示値算出手段と、
第1方向スプライン曲線に基づき算出した各組ごとの変位の値と、各組の他方の座標軸の値との関係を示す第1副スプライン曲線を算出する第1副スプライン算出手段と、
算出した第1副スプライン曲線に基づき、前記評価点の前記他方の座標軸の値における変位の値を算出する第1副スプライン指示値算出手段と、
を備えたことを特徴とする描画装置。
【請求項9】
請求項8に記載の描画装置において、
前記変位検出手段により検出した変位を第1の座標軸方向成分と第2の座標軸方向成分に分離する分離手段をさらに備え、
前記評価点変位算出手段は、前記分離手段により分離された前記第1の座標軸方向成分および第2の座標軸方向成分のそれぞれに基づいて、評価点の変位の第1の座標軸方向成分と第2の座標軸成分を算出するものであることを特徴とする描画装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−79739(P2012−79739A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220717(P2010−220717)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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