説明

変位量検出装置

【課題】 製造が容易であり、生産コストを低減することができる変位量検出装置を提供する。
【解決手段】 検出対象物21が角変位することによって、検出対象物21と第1および第2検出用コイル25a,25bとの相対距離が変化すると、第1および第2検出用コイル25a,25bのインダクタンスが変化し、第1および第2検出用コイル25a,25bのインダクタンスが変化して、発振回路22の発振周波数が変化する。各発振回路22の発振周波数に基づいて、信号処理部23が参照用の電気信号を検出対象物21の変位量に相当する電気信号に変換して出力するので、変位する部分にコイルを巻回する必要がなくなり、製造に高度な加工技術が必要としないので、製造が容易となり、また生産コストを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象物の変位量に相当する電気信号を出力する変位量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、変位量検出装置である巻線型レゾルバ装置1を簡略化して示す図である。巻線型レゾルバ装置1は、固定子と回転子とのそれぞれが、鉄心と巻線とによって構成される。固定子には、その鉄心に励磁(REF)巻線2が巻き付けられ、回転子には、その鉄心にSIN巻線3と、COS巻線4とが巻き付けられる。励磁巻線2を交流電圧で励磁すると、SIN巻線3の出力端子と、COS巻線4の出力端子とに交流の出力電圧がそれぞれ誘起される。励磁巻線2を励磁する交流電圧を、Vsinωtとし、回転子の回転角度をθとし、励磁巻線2とSIN巻線3およびCOS巻線4の変圧比をそれぞれkとすると、SIN巻線3の出力端子から出力される交流電圧は、kVsinωt・sinθとなり、COS巻線4の出力端子から出力される交流電圧は、kVsinωt・cosθとなる。また、固定子と回転子の関係を逆にしてもよい(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
図10は、変位量検出装置である差動変圧装置10を簡略化して示す図である。差動変圧装置10は、1次コイル11と、2つの2次コイル12,13と、1次コイル11および2つの2次コイル12,13を磁気的に結合させる可動鉄心(コア)14とを含んで構される。1次コイル11を交流電圧で励磁すると、2次コイル12,13の各出力端子に交流の出力電圧がそれぞれ誘起される。各2次コイル12,13の出力端子に誘起される出力電圧は、可動鉄心の変位量に比例し、1次コイル11を励磁する交流電圧を、Vsinωtとすると、2次コイル12,13の出力端子から出力される交流電圧は、それぞれVsinωt,Vsinωtとなる(たとえば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2798340号公報
【特許文献2】特開平6−105487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した巻線型レゾルバ装置1は、作製にあたり、高精度の鉄心加工技術および極細線を鉄心のスロットに多数巻回する特殊な工程が必要であり、作製に特別な施設およびコア抜き、積層、巻線など高度な加工技術および熟練したノウハウが必要である。そのため製造が難しく、製品単価が高価となってしまうという問題がある。
【0006】
また前述した差動変圧装置10についても、1次コイル11と2次コイル12,13とをそれぞれ巻き付けるためには、高度な加工技術および熟練したノウハウが必要であり、そのため製造が難しく、製品単価が高価となってしまうという問題がある。
【0007】
したがって本発明の目的は、巻線型レゾルバ装置および差動変圧装置などに比べて、製造が容易であり、生産コストを低減することができる変位量検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、検出対象物との相対距離の変化に応じてインダクタンスが変化する検出用コイルをそれぞれ備え、発振周波数が前記検出用コイルのインダクタンスに依存する複数の発振回路と、
交流の予め定める電気信号が与えられ、各発振回路の発振周波数に基づいて、前記予め定める電気信号を検出対象物の変位量に相当する電気信号に変換して出力する信号処理部とを含むことを特徴とする変位量検出装置である。
【0009】
また本発明は、前記検出対象物は、厚み方向の一表面が前記各検出用コイルに臨んで設けられ、前記一表面に対して傾斜して交わる軸線まわりに角変位し、
少なくとも2つの前記検出用コイルは、前記軸線まわりに予め定める間隔をあけて設けられることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記検出対象物が変位してもインダクタンスが一定となる位置に設けられる参照用コイルを備え、発振周波数が参照用コイルのインダクタンスに依存する第2発振回路を含み、
2つの前記検出用コイルのうちの一方の検出用コイルは、他方の検出用コイルを前記軸線まわりに予め定める角度だけ角変位させた位置に設けられ、
前記信号処理部は、
前記各発振回路で発振した各電気信号に、第2発振回路で発振した電気信号をそれぞれ乗算する乗算部と、
乗算部によって得られる電気信号から、検出対象物の角変位の正弦波および余弦波をそれぞれ抽出し、抽出した正弦波および余弦波にそれぞれ基づいて、前記予め定める電気信号の一部を通過して出力する信号処理部とを含むことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、少なくとも2つの前記コイルは、予め定める方向に配列され、前記検出対象物の予め定める方向への変位に伴って、一方のコイルを備える発振回路の発振周波数が増加するとき、他方のコイルを備える発振回路の発振周波数が減少するように設けられることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記検出対象物が変位してもインダクタンスが一定となる位置に設けられる参照用コイルを備え、発振周波数が参照用コイルのインダクタンスに依存する第2発振回路を含み、
前記信号処理部は、
前記発振回路で発振した電気信号に、第2発振回路で発振した電気信号をそれぞれ乗算する乗算部と、
前記乗算部によって得られる電気信号から、前記各発振回路における発振周波数の増加および減少に応じた電圧を抽出し、抽出した電圧に基づいて、前記予め定める電気信号の一部を通過して出力する信号処理部とを含むことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記信号処理部は、予め定める電気信号を整流して電力を取得する電力取得部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検出対象物が変位することによって、検出対象物と検出用コイルとの相対距離が変化すると、検出用コイルのインダクタンスが変化する。発振回路の発振周波数は、検出用コイルのインダクタンスに依存するので、検出用コイルのインダクタンスが変化すると、発振回路の発振周波数が変化する。各発振回路の発振周波数に基づいて、前記予め定める電気信号を検出対象物の変位量に相当する電気信号に変換して出力するので、従来の技術の巻線型レゾルバ装置1と比較すると、変位する部分にコイルを巻回する必要がなくなり、差動変圧装置10と比較すると1次コイルが不要となる。変位する部分にコイルを巻回する構成および1次コイルを巻回する構成では、高度な加工技術が必要であるが、本発明では、このような構成を必要としないので、高度な加工技術がなくても変位量検出装置を構成することができ、製造が容易となり、また生産コストを低減することができる。
【0015】
また信号処理部としては、従来の技術において固定子側の巻線および1次コイルに通電される参照信号と同様の信号を予め定める電気信号として入力し、この予め定める電気信号の一部分を、発振回路の発振周波数に基づいて出力することができる構成であればよく、このような回路構成は簡単であり、精度が高い処理回路を容易に実現することができ、信頼性の高い変位検出装置を構成することができる。
【0016】
また本発明によれば、検出対象物を板状として、厚み方向の一表面を各コイルに臨んで設け、前記一表面に対して傾斜して交わる軸線まわりに角変位させ、少なくとも2つの前記検出用コイルは、前記軸線まわりに予め定める間隔をあけて配置されることによって、2つの検出用コイルのうちの一方の検出用コイルに接続される発振回路から出力される電気信号と、他方の検出用コイルに接続される発振回路から出力される電気信号の周波数を異ならせることができる。これらの周波数が異なる2つの電気信号に基づいて、信号処理部が予め定める電気信号を検出対象物の変位量に相当する電気信号に変換することによって、信号処理部からは、巻線型レゾルバ装置の2つの出力信号と同等の回転角度を表す電気信号を出力することができ、これによって、巻線型レゾルバ装置と同様の機能を有する装置を実現することができる。したがって、特殊な製造技術を必要とせずに、現行の巻線型レゾルバをそのまま置換することができる低コストの変位量検出装置を実現することができる。
【0017】
また本発明によれば、乗算部によって第2発振回路で発振した電気信号を発振回路で発振した電気信号に乗算し、信号処理部によって、乗算部で得られた電気信号から、検出対象物の角変位の正弦波および余弦波をそれぞれ抽出し、抽出した正弦波および余弦波にそれぞれ基づいて予め定める電気信号の一部を通過させて出力するので、周囲温度などの環境の変化による発振周波数への影響を受けにくくすることができる。また2つの前記検出用コイルのうちの一方の検出用コイルは、他方の検出用コイルを前記軸線まわりに予め定める角度、たとえば90度の角変位させた位置に設けられており、これによって信号処理部は、乗算部によって得られる電気信号から、検出対象物の角変位の正弦波および余弦波をそれぞれ容易に抽出することができる。信号処理部が、抽出した正弦波および余弦波のそれぞれに基づいて、予め定める電気信号の一部を通過して出力することによって、巻線型レゾルバの2つの出力信号と同等の回転角度を表す電気信号が出力される。
【0018】
また本発明によれば、検出対象物の予め定める方向への変位すると、予め定める方向に配列される2つのコイルのうち一方のコイルを備える発振回路の発振周波数が増加し、他方のコイルを備える発振回路の発振周波数が減少し、各発振回路の発振周波数は、検出対象物の予め定める方向への変位量に応じて変化する。検出対象物の予め定める方向への変位量に応じて各発振回路の発振周波数の変化に基づいて、信号処理部が予め定める電気信号を検出対象物の変位量に相当する電気信号に変換することによって、信号処理部からは、差動変圧装置の2つの出力信号と同等の変位量を表す電気信号を出力することができ、これによって、差動変圧装置と同様の機能を有する装置を実現することができる。したがって、特殊な製造技術を必要とせずに、現行の差動変圧装置をそのまま置換することができる低コストの変位量検出装置を実現することができる。
【0019】
また本発明によれば、乗算部によって第2発振回路で発振した電気信号を発振回路で発振した電気信号に乗算し、信号処理部によって、乗算部で得られた電気信号から各発振回路における発振周波数の増加および減少に応じた電圧を抽出し、抽出した電圧にそれぞれ基づいて予め定める電気信号の一部を通過させて出力するので、周囲温度などの環境の変化による発振周波数への影響を受けにくくすることができる。信号処理部は、乗算部によって得られる電気信号から各発振回路における発振周波数の増加および減少に応じた電圧を抽出し、抽出した電圧に基づいて、予め定める電気信号の一部を通過して出力することによって、信号処理部からは、差動変圧装置の2つの出力信号と同等の変位量を表す信号が出力される。
【0020】
また本発明によれば、信号処理部が動作するための電力は、予め定める電気信号を整流して生成されるので、電源を別体で設ける必要がなく、装置をより簡素化することができ、低コスト化を図ることができる。また電源が必要ではないので、従来からの変位量検出装置に換えてそのまま用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の一形態の変位量検出装置20の構成を示す図である。
【図2】検出対象物21の平面図である。
【図3】検出対象物21とコイル25との相対距離と、発振回路22の発振周波数との関係を説明するための図である。
【図4】検出対象物21とコイル25との相対距離と、発振回路22の発振周波数との関係を模式的に示すグラフである。
【図5】発振回路22を模式的に示す回路図である。
【図6】第1および第2ゲート部35,36における動作を説明する図である。
【図7】図7は第1および第2ゲート部35,36の出力信号を生成する信号処理手順を説明するための波形図であり、図7(1)は第1および第2ゲート部35,36の入力信号波形を示し、図7(2)は図7(1)の入力信号に同期した基準パルス信号波形を示し、図7(3)はカットオフ信号波形を示し、図7(4)は切出された出力信号波形を示す。
【図8】本発明の実施の他の形態の変位量検出装置50の構成を示す図である。
【図9】変位量検出装置である巻線型レゾルバ装置1を簡略化して示す図である。
【図10】変位量検出装置である差動変圧装置10を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施の一形態の変位量検出装置20の構成を示す図である。図2は、検出対象物21の平面図である。図1では、理解の容易のために検出対象物21についても図示している。変位量検出装置20は、電子式レゾルバ装置であって、巻線型レゾルバ装置と同様な機能を有し、検出対象物21の角変位量、すなわち回転角度を検出し、角変位量に相当する電気信号を出力する。また第2検出用コイル25bと、参照用コイル25rとは、図1において実際には重なるが、理解の容易のために離れて図示している。
【0023】
変位量検出装置20は、複数の発振回路22a,22b,22r(以下、総称する場合には、添字a,b,rは省略する)と、信号処理部23とを含んで構成される。検出対象物21は、金属などの磁性を有する材料によって形成される。
【0024】
発振回路22は、発振周波数と同じ周波数の正弦波の電気信号を出力する。発振回路22は、検出対象物21との相対距離の変化に応じてインダクタンスが変化するコイル25a,25b,25r(以下、総称する場合には、添字a,b,rは省略する)を含んで構成される。
【0025】
コイル25は、第1および第2検出用コイル25a,25bと、参照用コイル25rとを含む。第1および第2検出用コイル25a,25bと、参照用コイル25rとは、インダクタンスなどの電気的特性が互いに等しくなるように形成される。第1および第2検出用コイル25a,25bと、参照用コイル25rとは、たとえば板状のプリント配線基板の一表面上に配置され、このプリント配線基板の一表面上において、参照用コイル25rの磁気軸を中心とし、半径をRとする同心円上に90°の間隔をあけてそれぞれ配置される。第1および第2検出用コイル25a,25bと、参照用コイル25rとは、検出対象物21に臨んで設けられる。第1および第2検出用コイル25a,25bの検出対象物21に臨む端面および参照用コイル25rの検出対象物21に臨む端面は、各コイル25a,25b,25rの磁気軸に垂直な第1仮想平面上にそれぞれ設けられる。コイル25は、略円柱状のボビンに電線が巻回されて形成される。コイル25は、磁気軸がプリント配線基板の一表面に垂直となるように、プリント配線基板の一表面上において間隔をあけてそれぞれ配列される。
【0026】
検出対象物21は、板状に形成され、本実施の形態では円板形状を有する。検出対象物21は、前記コイル25に厚み方向の一表面21aを臨ませて設けられる。前記一表面21aは平面に形成される。検出対象物21は、前記第1仮想平面に垂直であって、参照用コイル25rの磁気軸に平行な軸線Lに垂直な第2仮想平面に対して、検出対象物21の前記一表面21aを、予め定める角度φ傾けた状態で、軸線Lまわりに回転可能に配置される。この軸線Lは、参照用コイル25rの磁気軸の延びる直線上に配置される。したがって参照用コイル25rと検出対象物21との相対距離xrは、検出対象物21が軸線Lまわりに角変位したとしても不変(xr=xo)である。以下、第1検出用コイル25aと検出対象物21との相対距離x1が、最も小さくなるとき(x1=xo−R×tanφ)を検出対象物21の基準位置という。基準位置からの軸線Lまわりの角変位量をθとすると、参照用コイル25rと検出対象物21との相対距離xr、第1検出用コイル25aと検出対象物21との相対距離x1、および第2検出用コイル25bと検出対象物21との相対距離x2は、それぞれ次式(1)で表される。
【0027】
【数1】

【0028】
各発振回路22の発振周波数は、コイル25のインダクタンスに依存する。すなわち発振回路22から出力される正弦波の周波数は、検出対象物21とコイル25との相対距離に応じて変化する。信号処理部23は、各発振回路22から与えられる正弦波の周波数に基づいて、検出対象物21の角変位量に相当する電気信号を出力する。
【0029】
図3は、検出対象物21とコイル25との相対距離と、発振回路22の発振周波数との関係を説明するための図である。図4は、検出対象物21とコイル25との相対距離と、発振回路22の発振周波数との関係を模式的に示すグラフである。図4において、横軸は、検出対象物21とコイル25との相対距離を表し、縦軸は、周波数を表す。図4において実線26の曲線によって示す検出対象物21とコイル25との相対距離と、発振回路22の発振周波数との関係は、検出対象物21とコイル25との相対距離を変化させる毎に発振回路22の発振周波数を測定することによって得られる。このグラフを用いると、発振回路22の発振周波数に基づいて、検出対象物21とコイル25との相対距離を算出することができる。
【0030】
基準となる相対距離xoから、微小に変位したときの発振周波数fを次式(3)で示す。
f(x)=a0+a1(x−xo)=a0+a1×Δx …(3)
式(3)において、a1は、比例係数であり、基準となる相対距離xoからの変位(x−xo)をΔxとしている。
【0031】
図5は、発振回路22を模式的に示す回路図である。本実施の形態の発振回路22は、タンク回路41と、負性抵抗素子42とを含んで構成される。タンク回路41は、コイル25とコンデンサ43とが並列に接続されて構成される。負性抵抗素子42とタンク回路41とは、並列に接続される。図5では、コイル25を理想的なコイルとして図示しているが、コイル25は、実際には抵抗成分を含む。理想的なタンク回路41では電力が消費されないが、実際のタンク回路41では、前記抵抗成分によって電力が消費される。この消費された電力が負性抵抗素子42によって補給されるので、タンク回路41の共振周波数において発振が起こる。発振回路22の発振周波数は、タンク回路41の共振周波数にほぼ一致する。このタンク回路41の共振周波数は、コイル25のインダクタンスに依存し、このコイル25のインダクタンスは、検出対象物21との相対距離に依存する。したがって、図4に示すように、発振回路22の発振周波数は、コイル25と検出対象物21との相対距離の変化に応じて変化する。負性抵抗素子42は、たとえば演算増幅器およびトランジスタなどの増幅器を含んで実現される。
【0032】
参照用コイル25rを有する発振回路22(以下、参照用発振回路22rという場合がある)の発振周波数をfrとし、第1検出用コイル25aを有する発振回路22(以下、第1発振回路22aという場合がある)の発振周波数をf1とし、第2検出用コイル25bを有する発振回路22(以下、第2発振回路22bという場合がある)の発振周波数をf2として、式(1)の各相対距離xr,x1,x2をそれぞれ式(3)に代入すると、各発振回路22の発振周波数は、次式(4)で表される。
【0033】
【数2】

【0034】
式(4)においてa1(−R×tanφ)を不変な定数としてAとおいた。コイル25のインダクタンスは、検出対象物21との距離に反比例し、発振周波数はインダクタンスに反比例するので、発振周波数は、前述の式(4)に示すように距離の一次関数で近似することができる。式(4)において温度因子によって変化するのは、a0およびAである。
【0035】
信号処理部23は、各発振回路22から出力される電気信号に基づいて、検出対象物21の角変位量に相当する電気信号を出力する。信号処理部23は、第1乗算部31と、第2乗算部32と、第1低域通過フィルタ33と、第2低域通過フィルタ34と、第1ゲート部35と、第2ゲート部36とを含んで構成される。
【0036】
第1乗算部31は、第1発振回路22aと、参照用発振回路22rとに接続され、第1発振回路22aから出力される電気信号と、参照用発振回路22rから出力される電気信号とを乗算することによって同期整流を行い、乗算した電気信号を第1低域通過フィルタ33に与える。次式(8)に第1低域通過フィルタ33に与えられる電気信号を示す。
【0037】
【数3】

【0038】
式(5)においてtは、時間を表し、φ1は、第1発振回路22aから出力される電気信号の初期位相を表し、φrは、参照用発振回路22rから出力される電気信号の初期位相を表す。第1乗算部31は、第1低域通過フィルタ33に接続される。式(5)に示すように、第1低域通過フィルタ33に与えられる電気信号は、周波数が│f1−fr│の低周波数の余弦波と、周波数がf1+frの高周波数の余弦波との重ね合わせである。
【0039】
第1低域通過フィルタ33は、式(5)の右辺の第2項の高周波数の余弦波を除去して、右辺の第1項の低周波数の余弦波を通過させて第1ゲート部35に与える。第1ゲート部35は、第1低域通過フィルタ33に接続される。第1低域通過フィルタ33の遮断周波数は、式(5)の右辺の第1項の周波数と右辺の第2項の周波数との間に選ばれ、たとえば検出対象物21が基準位置のときの{(f1+fr)+│f1−fr│}/2に選ばれる。
【0040】
第1低域通過フィルタ33から出力される電気信号の周波数は、│f1−fr│=│a0+A×cosθ−a0│=A×cosθとなり、第1低域通過フィルタ33によって余弦波が抽出されて、この余弦波の電気信号を第1ゲート部35に与える。
【0041】
第2乗算部32は、第2発振回路22bと、参照用発振回路22rとに接続され、第2発振回路22bから出力される正弦波と、参照用発振回路22rから出力される正弦波とを乗算し、乗算した電気信号を第2低域通過フィルタ34に与える。次式(6)に第2低域通過フィルタ34に与えられる電気信号を示す。
【0042】
【数4】

【0043】
式(6)においてφ2は、第2発振回路22bから出力される正弦波の初期位相を表す。第2乗算部32は、第2低域通過フィルタ34に接続される。式(6)に示すように、第2低域通過フィルタ34に与えられる電気信号は、周波数が│f2−fr│の低周波数の余弦波と、周波数がf2+frの高周波数の余弦波との重ね合わせである。
【0044】
第2低域通過フィルタ34は、式(6)の右辺の第2項の高周波数の余弦波を除去して、右辺の第1項の低周波数の余弦波を通過させて第2ゲート部36に与える。第2ゲート部36は、第2低域通過フィルタ34に接続される。第2低域通過フィルタ34の遮断周波数は、式(6)の右辺の第1項の周波数と右辺の第2項の周波数との間に選ばれ、たとえば検出対象物21が基準位置のときの{(f2+fr)+│f2−fr│}/2に選ばれる。
【0045】
第2低域通過フィルタ34から出力される周波数は、│f2−fr│=│a0+A×sinθ−a0│=A×sinθとなり、第2低域通過フィルタ34によって正弦波が抽出されて、この正弦波の電気信号を第2ゲート部36に与える。
【0046】
第1および第2ゲート部35,36には、それぞれ予め定める電気信号である参照信号がそれぞれ個別に与えられるとともに、第1ゲート部35には、前記第1低域通過フィルタ33から前記余弦波の電気信号が与えられ、第2ゲート部36には、前記第2低域通過フィルタ34から前記正弦波の電気信号が与えられる。
【0047】
図6は、第1および第2ゲート部35,36における動作を説明する図である。まず図6(1)は、参照用の電気信号の波形を示す。図6(2)は、参照用の電気信号の一部を切出した波形であって、信号処理部23から出力される電気信号の波形の一例を示す。図6(1)および(2)において、縦軸は電圧を示し、横軸は位相を表す。
【0048】
巻線型レゾルバ装置は、励磁用の電気信号が与えられ、回転角度に応じてその正弦および余弦に比例する電気信号を出力する。これらの正弦および余弦に比例する電気信号を、レゾルバデジタル(RD)コンバータに代表される信号変換器で処理することによって、回転角度に比例した検出量を得ることができる。巻線型レゾルバ装置は、回転トランスの原理で二次巻線に誘導される電圧を利用するものであるが、これと同等の機能を得るために、与えられた参照用の電気信号に対して、図6(2)の斜線部で示すように、その一部を切出した波形を考える。本実施の形態における参照用の電気信号は、巻線型レゾルバ装置における励磁用の電気信号に対応する。
【0049】
参照用の電気信号を次式(7)で表し、図6(2)に示す参照用の電気信号の1波長の区間で、−π/2−αから−π/2の区間、−αから+αの区間、およびπ/2からπ/2+αの区間を切出したときの波形の基本波成分を求めると、斜線部波形の基本波成分a1は、次式(8)のようになる。αは、0≦α≦π/2に選ばれる。ここで参照用の正弦波の電気信号をVrとし、斜線部波形の基本波成分をa1とする。斜線部波形の基本波成分a1は、フーリエ級数の係数である。また、電圧をVとする。
【0050】
Vr=V・cosωt …(7)
a1=∫Vr・cosωt・d(ωt)
=∫V・cosωt・d(ωt) …(8)
【0051】
ここで、斜線部の各区間を計算すると、以下(a)〜(c)のようになる。
(a)−αから+α区間の計算値:A1=α+(sin2α)/2
(b)π/2からπ/2+αの区間の計算値:A2=α/2−(sin2α)/4
(c)−π/2−αから−π/2区間の計算値:A3=α/2−(sin2α)/4
したがって、
a1=A1+A2+A3=2α
となる。
【0052】
したがって、2αとなるように、第1および第2低域通過フィルタ33,34によって抽出された角変位量を表す、sinθおよびcosθに相当する量をそれぞれ出力すれば、これらの電気信号の基本波成分は、巻線型レゾルバ装置における励磁信号の正弦および余弦にそれぞれ対応した出力信号となる。
【0053】
図7は第1および第2ゲート部35,36の出力信号を生成する信号処理手順を説明するための波形図であり、図7(1)は第1および第2ゲート部35,36の入力信号波形を示し、図7(2)は図7(1)の入力信号に同期した基準パルス信号波形を示し、図7(3)はカットオフ信号波形を示し、図7(4)は切出された出力信号波形を示す。波形成形回路によって図7(2)に示す周期2Tの基準パルス信号が生成される。
【0054】
前記波形成形回路によって生成された基準パルス信号は、カウンタ回路等の論理回路によって実現されるカットオフ信号生成回路に入力され、このカットオフ信号生成回路によって、低域通過フィルタ33,34から第1および第2ゲート部35,36に入力されるcos成分抽出信号およびsin成分抽出信号に基づいて、図7(3)に示すカットオフ信号が生成される。このようなカットオフ信号を用いて、たとえばアナログスイッチの導通・遮断動作を切換えることによって、図7(1)に示す入力信号から図7(4)に示す信号、すなわち第1ゲート部35からはAVsin(ωt)×cosθに相当する波形信号、第2ゲート部36からはAVsin(ωt)×sinθに相当する波形信号を切出して出力することができる。
【0055】
第1および第2ゲート部35,36から出力される電気信号の基本波成分は、元の電気信号、すなわち図6(2)に示す波形の電気信号を低域通過フィルタに通すことによって得られる。従来の技術で用いられる巻線型レゾルバ装置においても、巻線型レゾルバ装置から出力される電気信号を処理する信号処理回路では、この信号処理回路の内部に同期乗算部を持っており、巻線型レゾルバ装置から与えられる電気信号の基本波成分を抽出して信号処理を行うので、変位量検出装置20では、基本波成分を抽出する回路を備える必要がない。すなわち図6(2)に示す波形をそのまま出力することによって、変位量検出装置20は、巻線型レゾルバ装置を模擬することが可能になる。
【0056】
前記信号処理部23には、参照用の電気信号を整流して電力を取得する電力取得部である整流平滑回路37が設けられる。整流平滑回路37は、参照用の交流信号を、直流に変換し、たとえばチョークインプット単相全波整流回路などによって実現される。整流平滑回路37は、信号処理部23の各部、第1および第2乗算部31,32,第1および第2低域通過フィルタ33,34、ならびに第1および第2ゲート部35,36の電源であって、これら各部に直流電圧を与えて電力を供給する。また整流平滑回路37が発振回路22にも電力を供給する構成としてもよい。
【0057】
以上のように変位量検出装置20では、検出対象物21が角変位することによって、検出対象物21と第1および第2検出用コイル25a,25bとの相対距離が変化すると、第1および第2検出用コイル25a,25bのインダクタンスが変化する。発振回路22の発振周波数は、第1および第2検出用コイル25a,25bのインダクタンスに依存するので、第1および第2検出用コイル25a,25bのインダクタンスが変化すると、発振回路22の発振周波数が変化する。各発振回路22の発振周波数に基づいて、参照用の電気信号を検出対象物21の変位量に相当する電気信号に変換して出力するので、従来の技術の巻線型レゾルバ装置1と比較すると、変位する部分にコイルを巻回する必要がなくなり、製造に高度な加工技術が必要としないので、製造が容易となり、また生産コストを低減することができる。
【0058】
また信号処理部23としては、従来の技術の巻線型レゾルバ装置において固定子側の巻線に通電される参照信号と同様の信号を予め定める電気信号として入力し、この予め定める電気信号の一部分を切出す構成とすればよく、このような回路構成は簡単であり、精度が高い処理回路を容易に実現することができ、信頼性の高い変位検出装置を構成することができる。
【0059】
また検出対象物21の厚み方向の一表面21aを第1および第2検出用コイル25a,25bに臨んで設け、前記一表面21aに対して傾斜して交わる軸線Lまわりに角変位させ、第1および第2検出用コイル25a,25bは、前記軸線Lまわりに予め定める間隔をあけて配置されることによって、第1および第2検出用コイル25a,25bのうちの一方のコイル25に接続される発振回路22から出力される電気信号と、他方のコイル25に接続される発振回路22から出力される電気信号の位相を異ならせることができる。これらの位相が異なる2つの電気信号に基づいて、信号処理部23が予め定める電気信号を検出対象物21の変位量に相当する電気信号に変換することによって、信号処理部23からは、巻線型レゾルバ装置の2つの出力信号と同等の回転角度を表す電気信号を出力することができ、これによって、巻線型レゾルバ装置と同様の機能を有する装置を実現することができる。したがって、特殊な製造技術を必要とせずに、現行の巻線型レゾルバをそのまま置換することができる低コストの変位量検出装置20を実現することができる。
【0060】
また第1および第2乗算部31,32によって参照用発振回路22rで発振した電気信号を第1および第2発振回路22a,22bで発振した電気信号に乗算することによって、信号処理部によって、乗算部で得られた電気信号から正弦波および余弦波をそれぞれ抽出し、抽出した正弦波および余弦波にそれぞれ基づいて予め定める電気信号の一部を通過させて出力するので、周囲温度などの環境の変化による発振周波数への影響を受けにくくすることができる。また第1および第2検出用コイル25a,25bのうちの一方のコイル25は、他方のコイル25を前記軸線Lまわりに90度の角変位させた位置に設けられており、これによって信号処理部23は、乗算部31,32によって得られる電気信号から余弦波および正弦波をそれぞれ容易に抽出することができる。信号処理部23が、抽出した正弦波および余弦波のそれぞれに基づいて、予め定める電気信号の一部を通過して出力することによって、巻線型レゾルバの2つの出力信号と同等の回転角度を表す電気信号が出力される。
【0061】
また信号処理部23が動作するための電力は、参照用の電気信号を整流して生成されるので、電源を別体で設ける必要がなく、装置をより簡素化することができ、低コスト化を図ることができる。また電源が必要ではないので、従来からの巻線型レゾルバ装置に換えてそのまま用いることができる。
【0062】
図8は、本発明の実施の他の形態の変位量検出装置50の構成を示す図である。図8では、理解の容易のために検出対象物51についても図示している。変位量検出装置50は、差動変圧装置と同様な機能を有し、検出対象物51の予め定める方向における変位量を検出する。変位量検出装置50は、前述した変位量検出装置20とは、各コイル25と検出対象物51との配置関係が異なるのみであり、その他の構成は同様であるので、本実施の形態で、前述の構成と同様の部分には、同様の参照符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0063】
変位量検出装置50は、複数の発振回路22と、信号処理部23とを含んで構成される。検出対象物51は、金属などの磁性を有する材料によって形成される。
【0064】
各発振回路22は、たとえば板状のプリント配線基板に設けられる。コイル25は、略円柱状のボビンに電線が巻回されて形成される。コイル25は、磁気軸がプリント配線基板の厚み方向の一表面に垂直となるように、プリント配線基板の一表面上において、前記予め定める方向に一列に等間隔をあけてそれぞれ配列される。各コイル25は、インダクタンスなどの電気的特性が互いに等しくなるように形成される。以下、コイル25が配列される方向を配列方向Yという。第1検出用コイル25aは、各コイル25のうちの配列方向Yの一方Y1の端に配置され、第2検出用コイル25bは、各コイル25のうちの配列方向Yの他方Y2の端に配置され、参照用コイル25rは、各コイル25のうちの配列方向Yの中央に配置される。
【0065】
参照用コイル25rは、使用状態において、検出対象物51が変位しても検出対象物51との距離が一定となる位置に設けられる。第1検出用コイル25aは、検出対象物51が基準位置から配列方向Yの一方Y1に移動したときに、検出対象物51との磁気的結合度が強まり、検出対象物51が基準位置から配列方向Yの他方Y2に移動したときに、検出対象物51との磁気的結合度が弱まる位置に設けられる。また第2検出用コイル25bは、検出対象物51が基準位置から配列方向Yの一方Y1に移動したときに、検出対象物51との磁気的結合度が弱まり、検出対象物51が基準位置から配列方向Yの他方Y2に移動したときに、検出対象物51との磁気的結合度が強まる位置に設けられる。すなわち、検出対象物51が変位することによって、第1および第2検出用コイル25a,25bのうち、一方のコイル25と検出対象物51との磁気的結合度が強まると、他方のコイル25と検出対象物51との磁気的結合度が弱まる。
【0066】
検出対象物51は、たとえば棒状の略四角柱形状を有する。検出対象物51の各コイル25に一側面51aを臨ませて、前記一側面51aが前記配列方向Yに平行となるように設けられる。検出対象物51は、検出対象物51の延びる方向が前述した配列方向Yに一致し、一側面51aがプリント配線基板の厚み方向の一表面に対向するように配置される。以下、参照用コイル25rの磁気軸が延びる位置に中央部57が位置するときの検出対象物51の位置を基準位置とする。変位量検出装置50は、検出対象物51の基準位置からの配列方向Yへの変位量を検出する。
【0067】
検出対象物51が基準位置から配列方向Yの一方Y1に移動すると、第1検出用コイル25aのインダクタンスが基準位置のときよりも大きくなるように変化し、第2検出用コイル25bのインダクタンスが基準位置のときよりも小さくなるように変化するので、その結果、第1発振回路22aの発振周波数が基準位置のときよりも低くなり、第2発振回路22bの発振周波数が基準位置のときよりも高くなる。また検出対象物51が基準位置から配列方向Yの他方Y2に移動すると、第1検出用コイル25aのインダクタンスが基準位置のときよりも小さくなるように変化し、第2検出用コイル25bのインダクタンスが基準位置のときよりも大きくなるように変化するので、その結果、第1発振回路22aの発振周波数が基準位置のときよりも高くなり、第2発振回路22bの発振周波数が基準位置のときよりも低くなる。
【0068】
信号処理部23は、各発振回路22から出力される正弦波に基づいて、検出対象物51の変位量に相当する電気信号を出力する。第1乗算部31は、第1発振回路22aから出力される正弦波と、参照用発振回路22rから出力される正弦波とを乗算し、乗算した電気信号を第1低域通過フィルタ33に与える。第2乗算部32は、第2発振回路22bから出力される正弦波と、参照用発振回路22rから出力される正弦波とを乗算し、乗算した電気信号を第2低域通過フィルタ34に与える。
【0069】
第1および第2低域通過フィルタ33,34では、第1および第2乗算部31,32のそれぞれから与えられる電気信号の低周波成分をそれぞれ抽出して、第1および第2ゲート部35,36にそれぞれ与える。
【0070】
第1ゲート部35は、第1低域通過フィルタ33から与えられる電気信号に基づいて、前述の図7のようにして、αがY方向への変位量に対応する電気信号を出力する。したがって、参照用の電気信号としてVsinωtを入力すると、第1ゲート部35からは、変位量に応じたVsinωtを表す電気信号が出力される。
【0071】
第2ゲート部36は、第2低域通過フィルタ34から与えられる電気信号に基づいて、前述の図7のようにして、αがY方向への変位量に対応する電気信号を出力する。したがって、参照用の電気信号としてVsinωtを入力すると、第2ゲート部36からは、変位量に応じたVsinωtを表す電気信号が出力される。
【0072】
以上説明した変位量検出装置50では、参照用の電気信号Vsinωtを入力すると、信号処理部23からは、2つの電気信号Vsinωt、Vsinωtを表す電気信号が出力されるので、インタフェースが、従来の技術の差動変圧装置と等しく、これによって従来の技術の差動変圧装置を、そそまま本実施の形態の変位量検出装置50に置き換えて、変位量を検出することができる。したがって、変位量検出装置50から出力される電気信号を用いて、変位量を測定する測定機器については、なんら変更することなく、そのまま使用することができる。
【0073】
本発明の実施のさらに他の形態の変位量検出装置では、前述した各実施の形態の変位量検出装置20,50において、それぞれが検出対象物21,51を含んで構成されてもよい。
【0074】
また前述の各実施の形態の変位量検出装置20,50における参照用コイル25rは、検出対象物21,51との相対距離が不変となるように配置されるけれども、検出対象物21,51が変位したときに、相対距離が変化する位置に配置されてもよい。各検出用コイル25a,25bがこのように配置されたとしても、前述の各実施の形態の変位量検出装置と同様に、検出対象物21の軸線Lまわりの角変位量θ、または検出対象物51の配列方向Yへの変位量に相当する電気信号を出力することができる。
【0075】
さらに、第1検出用コイル25aと、第2検出用コイル25bとは、参照用コイル25rの磁気軸を中心とし、半径をRとする同心円上に90°の間隔をあけてそれぞれ配置されるとしたけれども、180°以外の角度であれば、どのように配置されてもよい。各検出用コイル25a,25bがこのように配置されたとしても、前述の各実施の形態の変位量検出装置20と同様に、検出対象物21の軸線Lまわりの角変位量θに相当する電気信号を得ることができる。
【符号の説明】
【0076】
20,50 変位量検出装置
21,51 検出対象物
22 発振回路
23 信号処理部
25a 第1検出用コイル
25b 第2検出用コイル
25r 参照用コイル
31 第1乗算部
32 第2乗算部
33 第1低域通過フィルタ
34 第2低域通過フィルタ
35 第1ゲート部
36 第2ゲート部
37 整流平滑回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物との相対距離の変化に応じてインダクタンスが変化する検出用コイルをそれぞれ備え、発振周波数が前記検出用コイルのインダクタンスに依存する複数の発振回路と、
交流の予め定める電気信号が与えられ、各発振回路の発振周波数に基づいて、前記予め定める電気信号を検出対象物の変位量に相当する電気信号に変換して出力する信号処理部とを含むことを特徴とする変位量検出装置。
【請求項2】
前記検出対象物は、厚み方向の一表面が前記各検出用コイルに臨んで設けられ、前記一表面に対して傾斜して交わる軸線まわりに角変位し、
少なくとも2つの前記検出用コイルは、前記軸線まわりに予め定める間隔をあけて設けられることを特徴とする請求項1に記載の変位量検出装置。
【請求項3】
前記検出対象物が変位してもインダクタンスが一定となる位置に設けられる参照用コイルを備え、発振周波数が参照用コイルのインダクタンスに依存する第2発振回路を含み、
2つの前記検出用コイルのうちの一方の検出用コイルは、他方の検出用コイルを前記軸線まわりに予め定める角度だけ角変位させた位置に設けられ、
前記信号処理部は、
前記各発振回路で発振した各電気信号に、第2発振回路で発振した電気信号をそれぞれ乗算する乗算部と、
乗算部によって得られる電気信号から、検出対象物の角変位の正弦波および余弦波をそれぞれ抽出し、抽出した正弦波および余弦波にそれぞれ基づいて、前記予め定める電気信号の一部を通過して出力する信号処理部とを含むことを特徴とする請求項2に記載の変位量検出装置。
【請求項4】
少なくとも2つの前記コイルは、予め定める方向に配列され、前記検出対象物の予め定める方向への変位に伴って、一方のコイルを備える発振回路の発振周波数が増加するとき、他方のコイルを備える発振回路の発振周波数が減少するように設けられることを特徴とする請求項1に記載の変位量検出装置。
【請求項5】
前記検出対象物が変位してもインダクタンスが一定となる位置に設けられる参照用コイルを備え、発振周波数が参照用コイルのインダクタンスに依存する第2発振回路を含み、
前記信号処理部は、
前記発振回路で発振した電気信号に、第2発振回路で発振した電気信号をそれぞれ乗算する乗算部と、
前記乗算部によって得られる電気信号から、前記各発振回路における発振周波数の増加および減少に応じた電圧を抽出し、抽出した電圧に基づいて、前記予め定める電気信号の一部を通過して出力する信号処理部とを含むことを特徴とする請求項4に記載の変位量検出装置。
【請求項6】
前記信号処理部は、予め定める電気信号を整流して電力を取得する電力取得部を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の変位量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−185732(P2011−185732A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51170(P2010−51170)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】