説明

変位量測定装置

【課題】 光源から測定対象に対して光ビームを照射して得られる反射ビームの光路の変化から該測定対象の変位量を測定する変位測定装置において、高い分解能と広い測定レンジを有する変位量測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 前記測定対象を介して得られる反射ビーム4の光路が変化する方向に間隙201A、201B、……、201Nをおいて複数の受光素子200A、200B、………200Nを配し、反射ビーム4のスポットが受光素子と間隙とに峻別されて照射される受光部受光部115と、
反射ビーム4の光路の変位によって受光部200A、200B、……200Nから得られる受光量の変化を検出する検出部検出部116とから構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の変位量を測定する変位量測定装置に関するものであって、特に極めて微小な変位量の測定に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の測定方法としては、例えば被測定物の変位量を対向する電極の静電容量に変換し、この静電容量の変化を計測するものがある。この方法は、いわゆるマイクロマシン等のように微小機構の場合に対向電極の面積が確保できないという欠点があった。そこで、光学的に測定する装置が考えられるが、被測定物に対して光ファイバーを用いて投光し、被測定物からの反射光を受光するようにしているが、光ファイバーの端面にやはりある程度の対向面積を必要とする。
【0003】
そこで、従来においては、下記の特許文献1に示すように、光ビームを絞り込んだレーザ光による光テコを利用した方法が提案されている。これは試料の表面にカンチレバーの先端に形成された短針が対向されている。そして、レーザ光がカンチレバーの背面で反射されてように照射されている。カンチレバーにおいてねじれや撓みが生じると受光面におけるレーザ光の入射位置が変化するので、この変化を光検出器で検出信号として検出するようになっている。また,下記の特許文献2で示すように、反射されたレーザ・ビームの受光位置にはホトダイオードを用いているが、この受光面は2分割もしくは4分割され夫々の面の受光量によってレーザ光の反射角の変化から被測定物の表面の変化を計測したものである。このような構成の変位量測定装置は、分割領域における分割された各素子の出力差を検出することによって被測定物の表面の変化を高い制度で計測できる。
【0004】
上記特許文献1及び特許文献2で示す従来技術によれば、光ビームを用いて微小な変位量を検出することができる。この技術は、表面の粗さ検出装置、半導体デバイスの生産過程における基板の表面の凹凸の計測装置等に適用されている。
【特許文献1】特開2003−42928号公報(段落〔0006〕)
【特許文献2】特開2003−156319号公報(段落〔0006〕、段落〔00109〕、段落〔0016〕〜段落〔0020〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示す従来技術にあっては、カンチレバーが大きくねじれたり撓んだりした場合は、反射されるレーザ光が光検出器の受光面からはずれて測定不可能な状態になってしまう。そのため、広い測定範囲を得ることができなかった。特に、分解能を高める必要性から光路長を大きくすると、ますます測定範囲が狭くなってしまうという問題点があった。
【0006】
一方、上記特許文献2で示す従来技術のように、受光面が分割された光検出装置を用いたものにあっては、分解能を高めるために光スポットを小さくすると分割線における光スポットの移動量の測定範囲が狭くなり測定レンジが小さくなってしまうという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は従来の問題点を除去した、高い分解能と広い測定レンジを有する変位量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本願の請求項1に係る発明の変位量測定装置は、光源から測定対象に対して光ビームを照射して得られる反射ビームの光路の変化から該測定対象の変位量を測定する変位測定装置において、
前記測定対象を介して得られる反射ビームの光路が変化する方向に間隙をおいて複数の受光素子を配し、該反射ビームのスポットが該受光素子と該間隙とに峻別されて照射される受光部(例えば、受光部115)と、
前記反射ビームの光路の変位によって前記受光部から得られる受光量の変化を検出する検出部(例えば、検出部116)とから構成したことを特徴とする。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明の変位量測定装置においては、前記検出部は、前記反射ビームが受光素子と間隙とを照射して得られた受光量の差異を検出することを特徴とする。
【0010】
また、本願の請求項3に係る発明の変位量測定装置においては、前記受光部は、前記反射ビームの変位する方向に位置を変更して設定される位置設定部(例えば、積層型ピエゾ素子203)により装置本体に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のような構成をとることにより以下のような効果を呈する。本願の請求項1の変位測定装置によれば、前記受光部は反射ビームの光路が変化する方向に間隙をおいて複数の受光素子が配されているので反射ビームの光路の変化量を広範囲にわたって検出できる。そのため、前記測定対象の変位量を微小な値から大きな値まで広範囲に測定できる変位量測定装置を提供できる。
【0012】
また、請求項2に係る発明の変位量億邸装置においては、前記反射ビームを絞り込むと共に前記間隙と前記受光素子との間を接近させた状態において、前記検出部が受光量の差異を検出し該検出出力により前記測定対象の変化量を算出できるので、極めて微小な変化量からの測定を可能とする変位量測定装置を提供できる。
【0013】
前記位置設定部が前記受光部を反射ビームの変位する方向で位置の調整を行うようにしたので初期設定を容易に正確にできる変位量測定装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態としては、以下に説明する実施例である。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1を図1〜図4によって説明する。図1は本発明の実施例1における変位量測定装置を示す側面図、図2は本発明の実施例1における変位量測定装置を示す底面図、図3は本発明の実施例1における要部を概略的に示す説明図、図4は本発明の実施例1における更に要部を概略的に示す説明図、図5は本発明の実施例1における検出出力の状態を示す特性図である。
【0016】
図1、図2において示すように、変位量測定装置1は、基台10と、基台10に対して上下方向に可動可能に取り付けられた測定部11と、測定部11を上下に可動して位置を設定する位置設定用操作部12と、基台10の底面の3箇所に設けられた鋼球13とから構成されている。そして、変位量測定装置1は鋼球13によって表面の粗さが測定される測定対象の被測定面2上に三点支持で設置されるようになっている。
【0017】
測定部11は、一端が支持部110に固定され他端が遊端とされた板ばね111と、遊端に被測定面2に向かって取り付けられた触針112と、レーザ光を発光するレーザダイオード113と、レーザ光を絞り込んで光ビームとして板ばね111の遊端の背面を照射するためのレンズ114と、背面から反射した光ビームを受光するための受光部115と、受光部115で得られた受光量の変化を電気的に検出出力として得る検出部116、支持部110と測定部本体117との間に設けられたX軸用移動部118と、同じく支持部110と測定部本体117との間に設けられたY軸用移動部119とから構成されている。X軸用移動部118とY軸用移動部119とは積層型ピエゾ素子から形成されており、触針112を被測定面2上でX軸とY軸方向に微小の距離を選択的に移動できるようになっている。
【0018】
レーザダイオード114の電源、検出部116で得られた測定データ、X軸用移動部118及びY軸用移動部119の制御用電源等はケーブル120によって外部機器(図示せず)に接続されている。
【0019】
受光部115は図3で示すように複数の受光素子200A、200B、……、200Nが設けられている。これら受光素子200A、200B、……、200Nは間隙201A、201B、……、201Nを挟んで等間隔に配置され、光ビームの変化する方向に直線上に並んで一体に形成されて設けられている。この一体化された受光素子200A、200B、……、200Nは測定部本体115に位置設定部202でもって取り付けられている。この位置設定部202は受光素子200A、200B、……、200Nを積層型ピエゾ素子でもって測定部本体115に取り付け、受光素子200A、200B、……、200Nを全体的に光ビームが変位する方向に微小な距離で位置を変更できるようになっている。
【0020】
レーザダイオード113からの光ビームはレンズ114で絞り込まれ入射ビーム3として板ばね111に照射される。そして、板ばね111で反射され反射ビーム4として受光部115に至る配置関係になっている。光ビームと受光素子200A、200B、……、200Nと間隙201A、201B、……、201Nとの関係は図4で詳しく示されている。反射ビーム4はそのスポットが受光素子200A、200B、……、200Nと間隙201A、201B、……、201Nとを峻別して照射する大きさにレンズ114によって絞り込まれている。
【0021】
検出部116は、例えば、受光素子200Bと間隙201Bとに反射ビーム4が別々に照射したときに得られる受光量の差異を検出できる。この検出出力は板ばね11の最も微小な変位を測定するために、絞り込まれた反射ビーム4のスポットの大きさと受光素子200Bの受光面の大きさと間隙201Bの寸法とが限りなく小さく設定されている。例えば、数ミクロンのピッチで配置することができる
【0022】
次に、上述した本発明の実施例1の構成による動作を説明する。まず、使用者は変位量測定装置1を被測定面2の上に載置する。そして、位置設定用走査部12でもって測定部11の上下の位置を設定する。この設定は触針112が被測定面2に適度の圧力で接する状態にすることである。また、使用者はX軸用移動部117とY軸用移動部118とにより反射ビーム4が受光部115に至るように調整する。そして、位置設定部202に適度の電圧を印加して反射ビーム4が受光素子200A、200B、……、200Nの適当な所に至るように設定する。更に、レンズ113により反射ビーム4が適正なスポットとなるように調整する。
【0023】
この初期設定が完了した後は、使用者はX軸用移動部117又はY軸用移動部118に外部より所定の電圧を印加して触針112を所定の方向に移動させる。この移動により板ばね112が被測定面2の粗さによって撓みに変化を生じる。この移動量は微小な距離であり粗さも微小なものである。
【0024】
光ビームと受光部115との状態は図3、図4で詳しく示す。板ばね111の反射面に相当する部分が距離Zだけ撓むと、反射ビーム4は実線で示す経路から鎖線で示す経路に変わる。この変化によって反射ビーム4は受光素子200A、200B、……、200Nを順に横断する。この状態は図5で示すように横軸に反射ビーム4のスポットの移動距離とし縦軸を受光素子200A、200B、……、200Nの検出出力とすると、横断した個数に対応して検出出力のピーク数が得られる。
【0025】
最大の分解能としては、検出出力の最大値Pmaxと最小値Pminから得られた板ばね111の微小変位量ΔXが相当する。現在の技術の一例としては、反射ビーム4の光路の角度変化が0.01arcsecまで達している。これは長さが10mm程度の板ばね115においてサブナノメートルの撓みに相当する。
【0026】
一方、検出出力のピークの個数を計数することにより板ばね115の撓み量を求めることができる。測定レンジとしては、受光素子200A、200B、……、200Nの個数分だけ得ることができるので、この受光素子200A、200B、……、200Nの個数を増加することによって測定レンジを大きくすることができる。
【0027】
従って、上述した実施例の変位量測定装置1によれば、受光部115は反射ビーム4の光路が変化する方向に間隙201A、201B、……、201Nをおいて複数の受光素子200A、200B、……、200Nが配されているので反射ビーム4の光路の変化量を広範囲にわたって検出できる。一方、反射ビーム4を絞り込むと共に間隙201A、201B、……、201Nと受光素子200A、200B、……、200Nとの間を接近させた状態において、検出部116が受光量の差異を検出できる。そのため、該検出出力により触針112の上下の変化量を極めて微小な値から大きな値まで算出できるので、被測定面2の粗さを極めて微小な値から大きな値まで広範囲に測定できる。また、位置設定部202が受光部115を反射ビーム4の変位する方向で位置の調整を行うようにしたので初期設定を容易に正確にできる。
【実施例2】
次に、本発明の実施例2を図6によって説明する。この実施例2は測定対象である被測定物5が平行ばね6によって変位するものである。このような変位量を測定する測定装置は被測定物5自体が傾くものでないため、被測定物5の変位によって傾きを生じる平行ばね6の中央部分に光ビームを照射する構成とする。そして、反射ビーム4の傾きを受光部115で得て検出部116により被測定物5の変位量として得るようにしたものである。
【0028】
尚、上述した本発明の実施例1及び2においては、受光素子200A、200B、……、200Nを一列に配置しただけである。しかし、本発明はこれに限定されることなく、受光素子を平面状に配置して二次元的に反射ビーム4の変化を検出するようにしてもよい。この場合には、受光素子全体を2つの位置調整部で二次元的に位置の調整を可能にして、初期設定の際に反射ビーム4が平面状の受光素子の略中央に至るように調整できるようにすればよい。
【0029】
尚、また、上述した本発明の実施例1及び2においては、測定対象として表面粗さ、位置の変位を測定する装置について説明したが、これ以外に、ダイヤフラムが圧力により変化する変形状態を利用した圧力測定のための装置、ばねを用いた重量を測定する装置、ばねと付加質量を用いた重力・加速度を測定する装置等の各種の装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】 図1は本発明の実施例1における変位量測定装置を示す側面図である。
【図2】 図2は本発明の実施例1における変位量測定装置を示す底面図である。
【図3】 図3は本発明の実施例1における要部を概略的に示す説明図である。
【図4】 図4は本発明の実施例1における更に要部を概略的に示す説明図である。
【図5】 図5は本発明の実施例1における検出出力の状態を示す特性図である。
【図6】 図6は本発明の実施例2における要部の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 変位量測定装置
2 被測定面
3 入射ビーム
4 反射ビーム
10 基台
11 測定部
12 位置設定用調整部
13 鋼球
110 支持部
111 板ばね
112 触針
113 レーザダイオード
114 レンズ
115 受光部
116 検出部
117 測定部本体
118 X軸用移動部
119 Y軸用移動部
200A、200B、……、200N
受光素子
201A、201B、……、201N
間隙
202 位置設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から測定対象に対して光ビームを照射して得られる反射ビームの光路の変化から該測定対象の変位量を測定する変位測定装置において、
前記測定対象を介して得られる反射ビームの光路が変化する方向に間隙をおいて複数の受光素子を配し、該反射ビームのスポットが該受光素子と該間隙とに峻別されて照射される受光部と、
前記反射ビームの光路の変位によって前記受光部から得られる受光量の変化を検出する検出部とから構成したことを特徴とする変位測定装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記反射ビームが前記受光素子と前記間隙とを照射して得られた受光量の差異を検出することを特徴とする請求項1に記載の変位量測定装置。
【請求項3】
前記受光部は、前記反射ビームの変位する方向に位置を変更して設定される位置設定部により装置本体に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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