説明

変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ及びその製造方法、並びにゴム組成物及びタイヤ

【課題】従来よりも安価に製造でき、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性、耐破壊性を大幅に向上させることが可能な変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ及びその製造方法、該マスターバッチを用いたゴム組成物、従来より安価に製造できる変性ジエン系ゴムを用いた、低ロス性、耐摩耗性及び耐破壊性に優れたゴム組成物並びにタイヤを提供することにある。
【解決手段】極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴム分子に付加させてなる変性ジエン系ゴムラテックスと、充填剤を分散させてなるスラリー溶液とを混合してなる変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ及びその製造方法と、該変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチを用いたゴム組成物、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴム分子に付加させてなる変性ジエン系ゴムとゴムウェットマスターバッチとを混合して得られるゴム組成物、並びにこれらのゴム組成物を用いたタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ及びその製造方法、並びにゴム組成物及びタイヤに関し、特に、従来よりも安価に製造でき、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性、耐破壊性を大幅に向上させることが可能な、変性ジエン系ゴムと充填剤とを含む変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ、及び従来より安価に製造でき、低ロス性、耐摩耗性及び耐破壊性に優れた、変性天然ゴムと天然ゴムウェットマスターバッチとを含むゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車の低燃費化に対する要求が強くなりつつあり、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。そのため、タイヤのトレッド等に使用するゴム組成物として、tanδが低く(以下、低ロス性とする)、低発熱性に優れたゴム組成物が求められている。また、トレッド用のゴム組成物においては、低ロス性に加え、耐摩耗性及び破壊特性に優れることが求められる。これに対して、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を改良するには、ゴム組成物中のカーボンブラックやシリカ等の充填剤とゴム成分との親和性を向上させることが有効である。
【0003】
例えば、ゴム組成物中の充填剤とゴム成分との親和性を向上させ、充填剤による補強効果を向上させるために、末端変性により充填剤との親和性を向上させた合成ゴムや、官能基含有単量体を共重合させて充填剤との親和性を向上させた合成ゴム等が開発されている。
【0004】
一方、天然ゴムに関しては、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体を添加し、該極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させ、更に凝固及び乾燥してなる変性天然ゴムをゴム成分として使用することで、ゴム成分と充填剤との親和性を向上させてゴム組成物の補強性を改善し、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を向上させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
上述のように、ゴム成分として特許文献1に開示の変性天然ゴムを用いることで、ゴム成分と充填剤との親和性が向上して、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性等が向上するが、昨今、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を更に向上させることが要求されている。
【0006】
ここで、変性天然ゴム分子の鎖状分子運動を考慮すると、極性基が分子末端に存在する変性天然ゴムの方が、極性基が分子鎖中に存在する変性天然ゴムよりも、充填剤との相互作用を高めることができると期待され、実際に上述した合成ゴムを変性する技術においては、同様の理由により、末端変性した合成ゴムにてより高い変性効果が得られている。特許文献1記載の手法に従って、極性基を天然ゴム分子の主鎖に導入することができるが、この場合、極性基が導入される位置は、分子末端に限られない。これに対して、天然ゴムの分子の主鎖の末端を変性することによって、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を更に向上させる技術として、メタセシス触媒と極性基含有オレフィンを用いて天然ゴムの分子の主鎖の末端に極性基を導入する技術が開示されている(特許文献2参照)。
【0007】
一方で、天然ゴムに対する充填剤の分散性を改良する技術として、天然ゴムラテックスと、充填剤を予め水中に分散させたスラリー溶液とを混合して天然ゴムウェットマスターバッチを作製する方法(例えば特許文献3参照)が知られており、また、天然ゴムウェットマスターバッチを作製する方法において、更にゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を向上させることを目的として、天然ゴムラテックスの代わりに極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させて得られた変性天然ゴムラテックスやメタセシス触媒と極性基含有オレフィンを用いて天然ゴムの分子の主鎖の末端に極性基を導入して得られた変性天然ゴムラテックスを用いて変性天然ゴムウェットマスターバッチを作製する方法が知られている(例えば特許文献4及び5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/106397号パンフレット
【特許文献2】特開2007−204637号公報
【特許文献3】国際公開第2006/082852号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2006/054713号パンフレット
【特許文献5】特開2007−308609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1、4及び5記載の天然ゴムラテックスに極性基含有単量体を添加し、グラフト重合させる技術及び特許文献4及び5記載の極性基含有単量体をグラフト重合させた変性天然ゴムラテックスを用いて変性天然ゴムウェットマスターバッチを作製する技術においては、グラフト重合において、高いグラフト効率を達成するには純度の高いラテックスを用いる必要があるため遠心分離等のラテックスの濃縮操作を別途行う必要があるのに加えて、変性反応工程が必要であり、製造コストが高くなる。
【0010】
また、上述した特許文献2記載のメタセシス触媒と極性基含有オレフィンを用いて天然ゴムの分子の主鎖の末端に極性基を導入する技術及び特許文献5記載のメタセシス触媒と極性基含有オレフィンを用いて天然ゴムの分子の主鎖の末端に極性基を導入した変性天然ゴムラテックスを用いて変性天然ゴムウェットマスターバッチを作製する技術においても、変性天然ゴム又は変性天然ゴムラテックスの製造に用いるメタセシス触媒が高価であることから、製造コストが高くなる。
【0011】
さらに、昨今、天然ゴムのみならず、他のジエン系ゴムを用いたゴム組成物についても、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を更に向上させることが要求されている。
【0012】
そこで、本発明の目的は、従来よりも安価に製造でき、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性、耐破壊性を大幅に向上させることが可能な、変性ジエン系ゴムラテックスと充填剤とを含む変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ及びその製造方法、該マスターバッチを用いたゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、従来より安価に製造できる変性ジエン系ゴムを用いた、低ロス性、耐摩耗性及び耐破壊性に優れたゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、これらのゴム組成物を用いた、転がり抵抗がより低減し、耐摩耗性及び耐破壊性に優れたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物を添加することによって、極性基をジエン系ゴムの分子鎖の末端に簡便かつ安価に導入することができ、更に、このようにして得られた変性ジエン系ゴムラテックスを用いて作製した変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチを用いることによって、又は上記のようにして得られた変性ジエン系ゴムとゴムウェットマスターバッチとを混合することによって、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を大幅に向上させることができることを見出した。また、極性基含有ヒドラジド化合物を用いて天然ゴムラテックス又は安価に入手可能な固形状天然ゴム原材料の変性を行うことによって、極性基を天然ゴム分子に従来より安価かつ簡便に導入することができ、このようにして得られた変性天然ゴムラテックスを用いて作製した変性天然ゴムウェットマスターバッチを用いることによって、又は上記のようにして得られた変性天然ゴムとゴムウェットマスターバッチとを混合することによって、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を大幅に向上できることも見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチは、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴムラテックス中のジエン系ゴム分子に付加させてなる変性ジエン系ゴムラテックスと、充填剤を分散させてなるスラリー溶液とを混合して得られることを特徴とする。
【0015】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの好適例においては、前記極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0016】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの他の好適例においては、前記変性ジエン系ゴムラテックスにおける前記極性基含有ヒドラジド化合物の付加量が、前記変性ジエン系ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.01〜5.0質量%である。
【0017】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの他の好適例においては、前記変性ジエン系ゴムラテックスが、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加させてなる変性ジエン系ゴムラテックスである。ここで、前記ジエン系ゴムラテックスが天然ゴムラテックスであることが好ましい。また、前記変性ジエン系ゴムラテックス中の変性ジエン系ゴムが、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が200,000以上であることが好ましい。さらに、前記ジエン系ゴムラテックスの酸化を、ジエン系ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、空気酸化することによって行うことが好ましく、前記空気酸化をラジカル発生剤の存在下で行うことが好ましく、前記カルボニル化合物が、アルデヒド類及び/又はケトン類であることが好ましく、前記ラジカル発生剤が過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤及びアゾ系ラジカル発生剤からなる群から選ばれることが好ましい。
【0018】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの他の好適例においては、前記変性ジエン系ゴムラテックスが、ジエン系ゴムの分子鎖の末端に、下記一般式(I):
【化1】

(式中、Rは、置換基としてアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボ二ル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スズ含有基、アルコキシシリル基からなる群から選ばれる極性基を少なくとも1種有する炭素数1〜4のアルキレン基、置換基として該極性基を少なくとも1種有するフェニレン基、又は含窒素複素環基及び含酸素複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基である)
で表される極性基含有官能基を有する変性ジエン系ゴムラテックスである。
【0019】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの他の好適例においては、前記変性ジエン系ゴムラテックスが、天然ゴムラテックスに極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、該極性基含有ヒドラジド化合物を該天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に付加させてなる変性天然ゴムラテックスである。
【0020】
また、本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法は、充填剤を分散させてなるスラリー溶液と、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴム分子に付加させてなる変性ジエン系ゴムラテックスとを混合する工程を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法の好適例においては、前記充填剤が、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で且つ90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、該スラリー溶液から乾燥回収した充填剤の24M4DBP吸油量が、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持している。
【0022】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法の他の好適例においては、前記スラリー溶液の分散媒が水である。
【0023】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法の他の好適例においては、前記スラリー溶液が、カーボンブラック、シリカ及び下記式(II):
nM・xSiOy・zH2O ・・・ (II)
[式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及びこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]で表される無機化合物からなる群より選択される少なくとも1種の充填剤を含む。
【0024】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法の他の好適例においては、前記ゴム液及び/又は前記スラリー溶液が更に界面活性剤を含む。
【0025】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法は、さらに、前記スラリー溶液と前記ゴム液とを混合し、得られた混合液を化学的及び/又は物理的に凝固処理し、生成した凝固物を取り出す工程を含むことが好ましい。
【0026】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法は、さらに、取り出された凝固物を乾燥処理する工程を含むことが好ましい。ここで、前記乾燥処理を、熱風乾燥機、減圧乾燥機又は凍結乾燥機を用いて行うことが好ましく、連続混練機又は連続多軸混練押出機を用いて行うことが好ましい。
【0027】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法は、さらに、老化防止、可塑化、しゃっ解、加工性改良、分散改良、カップリング、架橋速度調整、又は架橋密度調整のうち少なくとも1種の効果を有するゴム用添加剤を添加する工程を含むことが好ましい。
【0028】
また、本発明のゴム組成物の第1の態様は、上記変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチを用いたことを特徴とする。
【0029】
また、本発明のゴム組成物の第2の態様は、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴム分子に付加させてなる変性ジエン系ゴムと、充填剤を分散させてなるスラリー溶液とゴム成分を分散又は溶解させてなるゴム液とを混合して得られるゴムウェットマスターバッチとを含むことを特徴とする。
【0030】
本発明のゴム組成物の第2の態様の好適例において、前記極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0031】
本発明のゴム組成物の第2の態様の他の好適例において、前記変性ジエン系ゴムにおける前記極性基含有ヒドラジド化合物の付加量が、前記変性ジエン系ゴムのゴム成分に対して0.01〜5.0質量%である。
【0032】
本発明のゴム組成物の第2の態様の他の好適例において、前記変性ジエン系ゴムが、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加させてなる変性ジエン系ゴムである。ここで、前記変性ジエン系ゴムが、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が200,000以上であることが好ましい。また、前記ジエン系ゴムラテックスが天然ゴムラテックスであることが好ましい。さらに、前記ジエン系ゴムラテックスの酸化を、ジエン系ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、空気酸化することによって行うことが好ましく、前記空気酸化をラジカル発生剤の存在下で行うことが好ましく、前記カルボニル化合物が、アルデヒド類及び/又はケトン類であることが好ましく、前記ラジカル発生剤が過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤及びアゾ系ラジカル発生剤からなる群から選ばれることが好ましい。
【0033】
本発明のゴム組成物の第2の態様の他の好適例において、前記変性ジエン系ゴムが、ジエン系ゴムの分子鎖の末端に、下記一般式(I):
【化2】

(式中、Rは、置換基としてアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボ二ル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スズ含有基、アルコキシシリル基からなる群から選ばれる極性基を少なくとも1種有する炭素数1〜4のアルキレン基、置換基として該極性基を少なくとも1種有するフェニレン基、又は含窒素複素環基及び含酸素複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基である)
で表される極性基含有官能基を有する変性ジエン系ゴムである。
【0034】
本発明のゴム組成物の第2の態様の他の好適例において、前記変性ジエン系ゴムが、天然ゴム、天然ゴムラテックス、天然ゴムラテックス凝固物及び天然ゴムカップランプからなる群から選択される少なくとも一種の天然ゴム原材料に極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、該極性基含有ヒドラジド化合物を該天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に付加させてなる変性天然ゴムである。
【0035】
本発明のゴム組成物の第2の態様の他の好適例において、前記ゴム液のゴム成分がジエン系ゴムである。
【0036】
また、本発明のタイヤは、上記ゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、従来より安価に製造可能な特定の変性ジエン系ゴムラテックスを用いることで、変性ジエン系ゴムに対する充填剤の分散性が向上した変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチを提供することができ、該変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチを用いることで、低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性に優れたゴム組成物を低コストで提供することができる。また、従来より安価に製造可能な特定の変性ジエン系ゴムとゴムウェットマスターバッチとを混合することで、変性ジエン系ゴムに対する充填剤の分散性が向上し、低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性に優れたゴム組成物を提供することができる。
【0038】
また、本発明によれば、上記ゴム組成物を用いることで、転がり抵抗がより低減し、耐摩耗性及び耐破壊性に優れたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチは、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴム分子に付加させてなる変性ジエン系ゴムラテックスと、充填剤を予め水中に分散させてなるスラリー溶液とを混合してなることを特徴とする。
【0040】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチにおいては、充填剤がゴム成分(すなわち、変性ジエン系ゴムラテックス中の変性ジエン系ゴム)とマスターバッチ化されているため、充填剤のゴム成分への分散性が改良されている。また、上記極性基含有ヒドラジド化合物の極性基は、充填剤に対する親和性に優れるため、上記変性ジエン系ゴムラテックス中の変性ジエン系ゴムは、未変性のジエン系ゴムに比べて充填剤に対する親和性が高い。そして、本発明の変性天然ゴムウェットマスターバッチにおいては、ゴム成分と充填剤とをマスターバッチ化する効果と、上記変性天然ゴムラテックスを使用する効果との相乗効果により、ゴム成分に対する充填剤の分散性が大幅に向上している。そのため、本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチは、充填剤の補強効果が充分に発揮されて耐摩耗性及び耐破壊性に著しく優れると共に、低発熱性(低ロス性)も大幅に向上している。また、本発明の変性天然ゴムウェットマスターバッチを用いることで、ゴム組成物の耐破壊性、耐摩耗性及び低ロス性を大幅に向上させることができ、さらに、該ゴム組成物をタイヤ、特にタイヤのトレッドに用いることで、転がり抵抗を大幅に低減しつつ、耐破壊性及び耐摩耗性を著しく改善することができる。
【0041】
また更に、従来の変性反応では、加熱等の操作が必要であるため、ラテックスの安定性が損なわれ、それにより、カーボンスラリーと混合する段階で、凝固する速度が著しく速くなり、カーボンブラックが不均一にとり込まれる一方、ヒドラジド変性の場合には、反応条件がマイルドであるため、ラテックスの安定性が保持され、カーボンスラリーとの混合段階においても、充分な混合状態を得ることができる。その結果、ゴム組成物のカーボンブラック分散性を更に向上させることができます。
【0042】
また、本発明のゴム組成物の第1の態様は、上記変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチを用いたことを特徴とし、上述のように上記変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチは、均一性に優れるため、本発明のゴム組成物は、均一性に優れ、低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性に優れる。
【0043】
また、本発明のゴム組成物の第2の態様は、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴム分子に付加させてなる変性ジエン系ゴムと、充填剤を分散させてなるスラリー溶液とゴム成分を分散又は溶解させてなるゴム液とを混合して得られるゴムウェットマスターバッチとを含むことを特徴とする。極性基が導入された変性ジエン系ゴムと充填剤がゴム成分とマスターバッチ化されているゴムウェットマスターバッチとを混合することによって、ミキサー、押出機、混練機等によって変性ジエン系ゴムと充填剤とを混合した場合よりも、変性ジエン系ゴムに導入された極性基と充填剤との接触率が向上して、極性基が充填剤と充分に相互作用することができ、それによって、低ロス性及び耐摩耗性をさらに向上させることができる。
【0044】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチに用いる変性ジエン系ゴムラテックスとしては、例えば、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加させてなる変性ジエン系ゴムラテックスを用いることができる。また、本発明のゴム組成物の第2の態様に用いる変性ジエン系ゴムとしては、例えば、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物を天然ゴムの分子鎖の末端に付加させてなる変性ジエン系ゴムを用いることができる。
【0045】
ここで、一般に、ゴム分子の末端変性は末端の分子鎖の自由度を下げるため、側鎖をグラフト変性するよりもヒステリシスロスを低下させるのに有利であるため、上述した、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加させてなる変性ジエン系ゴムラテックス及び変性ジエン系ゴムにおいては、ジエン系ゴムの分子鎖の末端に極性基が存在するため、例えば上記特許文献1、4、5記載の極性基単量体をグラフト重合して得られた変性天然ゴムラテックス及び変性天然ゴムのような極性基が分子鎖中に存在する変性天然ゴムラテックス及び変性天然ゴムよりも、カーボンブラックやシリカ等の種々の充填剤に対する親和性に優れ、前述した極性基が分子鎖中に存在する変性天然ゴムラテックス及び変性天然ゴムを用いた場合と比べて、ゴム成分に対する充填剤の分散性が高く、充填剤の補強効果が十分に発揮されて、耐摩耗性及び低ロス性(低発熱性)が向上しており、ゴム組成物の耐摩耗性、耐破壊性及び低ロス性の向上効果がより高く、タイヤの転がり抵抗、耐破壊性及び耐摩耗性の向上効果もより高い。
【0046】
また、上述した、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物を添加することによって得られる変性ジエン系ゴムラテックス及び変性ジエン系ゴムにおいて、極性基含有ヒドラジド化合物を添加する酸化ジエン系ゴムラテックスは、ジエン系ゴム分子鎖の末端にカルボニル基を有する。極性基含有ヒドラジド化合物は、高い反応性を有し、そのため、酸化ジエン系ゴムラテックス又は該酸化ジエン系ゴムラテックスを凝固して得られた酸化ジエン系ゴム中のジエン系ゴム分子末端のカルボニル基と容易に反応する。よって、酸化ジエン系ゴムラテックス又は酸化ジエン系ゴムに極性基含有ヒドラジド化合物を添加することで、高価な触媒を用いることなく、ジエン系ゴム分子末端に、簡便かつ安価に極性基を導入することができる。
【0047】
また、上記のジエン系ゴム分子の分子鎖の末端に極性基が導入された変性ジエン系ゴムラテックス及び変性ジエン系ゴムの他にも、本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチに用いる変性ジエン系ゴムラテックスとして、天然ゴムラテックスに極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、該極性基含有ヒドラジド化合物を該天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に付加させてなる変性天然ゴムラテックスを用いることができ、本発明のゴム組成物の第2の態様に用いる変性ジエン系ゴムとして、天然ゴム、天然ゴムラテックス、天然ゴムラテックス凝固物及び天然ゴムカップランプからなる群から選択される少なくとも一種の天然ゴム原材料に極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、該極性基含有ヒドラジド化合物を該天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に付加させてなる変性天然ゴムを用いることができる。
【0048】
上述した、天然ゴムラテックスに極性基含有ヒドラジド化合物を添加して得られた天然ゴムラテックス及び天然ゴム原材料に極性基含有ヒドラジド化合物を添加して得られた変性天然ゴムにおいては、その製造には純度の高い天然ゴムラテックスを用いる必要がないため、比較的安価に変性天然ゴムを製造することができる。また、上記天然ゴム原材料の中でも、カップランプ等は、安価に入手できるため、コストの点でのメリットが大きい。なお、カップランプ等を原材料とした場合、天然ゴムの変性効率が多少落ちることがあるが、コストと変性効率とを総合的に見て、メリットの方が勝る。
【0049】
また、上記極性基含有ヒドラジド化合物は高い反応性を有する。そのため、単に該極性基含有ヒドラジド化合物を上記天然ゴム原材料に添加するだけで、該ヒドラジド化合物が該天然ゴム原材料の天然ゴム中のアルデヒド基と反応し、その結果、極性基を天然ゴム主鎖中に簡便に導入することができる。
【0050】
次に、本発明に用いる変性ジエン系ゴムラテックス及び変性ジエン系ゴムのうち、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物を添加することによって得られる変性ジエン系ゴムラテックス及び変性ジエン系ゴムについて詳細に説明する。酸化反応に用いるジエン系ゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、ポリイソプレンゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックス、ポリブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスが挙げられる。該ジエン系ゴムラテックスは1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、合成ゴムの場合は、重合の過程で分子鎖末端に極性基を導入することが可能であるが、天然物である天然ゴムはメタセシス触媒を用いる手法等を除けば不可能であり、本発明により可能となることを考えると天然ゴムラテックスを用いることが好ましい。
【0051】
酸化反応に用いる天然ゴムラテックスとしては、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱蛋白ラテックス、前記のものを組み合わせたものなど、いずれも使用することができる。副反応を少なくするためには、天然ゴムラテックスの純度を上げて使用するとよい。
【0052】
上記ジエン系ゴムラテックスの酸化は公知の方法で行うことができる。例えば、特開平8−81505号公報に従って、有機溶剤に1〜30質量%の割合で溶解した上記ジエン系ゴムラテックスを金属系酸化触媒の存在下で空気酸化することによって上記ジエン系ゴムラテックスの酸化を行うことができる。ここで、空気酸化を促進するために用いられる金属系酸化触媒の好適な金属種はコバルト、銅、鉄等であり、これらの塩化物や有機化合物との塩や錯体が用いられる。なかでも塩化コバルト、コバルトアセチルアセトナート、ナフテン酸コバルト等のコバルト系触媒が好適である。
【0053】
有機溶媒としては、それ自体がゴムと反応せず、また容易に酸化されることがなく、ゴムを溶解するものであれば良く、種々の炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、有機ハロゲン系溶媒等が好適に用いられる。炭化水素系溶媒としては、例えばヘキサン、ガソリン等が使用可能である。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン等が使用可能である。有機ハロゲン系溶媒としては、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等が使用可能である。中でも芳香族炭化水素系のトルエンを用いるのが好適である。また、それらとアルコール等との混合溶媒を用いることも可能である。
【0054】
また、特開平9−136903号公報に記載されているように、上記ジエン系ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、ジエン系ゴムラテックスを空気酸化することによって、ジエン系ゴムラテックスの酸化を行うことができる。ジエン系ゴムラテックスに添加するカルボニル化合物は、ゴム分に関係なくラテックス容量に対して20容量%(V/V%)以下、好ましくは0.5〜10容量%となるように添加するのが適当である。カルボニル化合物の濃度が上記範囲を超えても問題はないが、反応性を高めないばかりか、経済的に不利となるおそれがある。ここで、カルボニル化合物の好適な例としては、種々のアルデヒド類、ケトン類等があげられる。
【0055】
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、カプロアルデヒド、ヘプタアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、バニリン、ピペロナール、メチルバレルアルデヒド、イソカプロアルデヒド、パラホルムアルデヒド等があげられる。
【0056】
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、ジエチルケトン、イソプロピルメチルケトン、ベンジルメチルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、イソブチルメチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ベンゾフェノン、3−ニトロ−4′−メチルベンゾフェノン等があげられる。
【0057】
上述したカルボニル化合物を上記ジエン系ゴムラテックスに添加することによって空気酸化を行うことができるが、特開平9−136903号公報に記載されているように、空気酸化を促進するためにラジカル発生剤の存在下で空気酸化を行うのが好ましい。ラジカル発生剤としては、例えば過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤、アゾ系ラジカル発生剤等が好適に用いられる。過酸化物系ラジカル発生剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルペルオキシカルボナート、ジシクロヘキシルペルオキシカルボナート等が使用できる。
【0058】
レドックス系ラジカル発生剤としては、例えばクメンヒドロキシペルオキシドとFe(II)塩、過酸化水素とFe(II)塩、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウムと亜硫酸ナトリウム、硫酸セリウム(IV)とアルコール、アミン又は澱粉、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物とジメチルアニリン、tert−ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミン等が使用できる。
【0059】
アゾ系ラジカル発生剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸等が使用できる。
【0060】
上述のラジカル発生剤は上記ジエン系ゴムラテックス中に溶解又は分散させて用いられる。ラジカル発生剤の添加量は、ジエン系ゴム固形分に対して0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜1質量%であるのが適当である。ラジカル発生剤の濃度が上記範囲より低いと空気酸化の速度が遅く実用的でない。一方、ラジカル発生剤の濃度が上記範囲を超えると、分子鎖切断が進み、分子量の低下に伴い、ゴム組成物としての低ロス性、耐摩耗性、破壊強度が悪化するおそれがある。
【0061】
空気酸化では、溶液を空気と均一に接触させることが望ましい。空気との接触を均一にする手法は特に限定されないが、例えば振盪フラスコ中で振盪させるほか、攪拌や空気を吹き込むバブリング等により容易に行うことができる。空気酸化を進める温度は、通常、室温〜100℃で行われるが、特に限定されるものではない。反応は、通常1〜5時間程度で終了する。
【0062】
また、特開2001−261707号公報の記載に従って、ジエン系ゴムラテックスにオゾン含有ガスを吹き込み、オゾンの酸化作用でジエン系ゴムラテックスの酸化を行うことができる。この方法では、過酸化水素の添加により、分解反応が促進される。
【0063】
本発明に用いる変性ジエン系ゴムラテックスは、上記の手法によって上記ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、後述するように、極性基含有ヒドラジド化合物を添加することによって得られる。また、本発明に用いる変性ジエン系ゴムは、後述するように、酸化ジエン系ゴムラテックスに極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、得られた変性ジエン系ゴムラテックスを凝固させ、乾燥させることによって得てもよいし、得られた酸化ジエン系ゴムラテックスを凝固して得られた酸化ジエン系ゴムに極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、乾燥することによって得てもよいし、又は酸化ジエン系ゴムラテックスを凝固、乾燥して得られた酸化ジエン系ゴムに極性基含有ヒドラジド化合物を添加することによって得てもよい。
【0064】
上記極性基含有ヒドラジド化合物としては、分子内に少なくとも一つの極性基を有するヒドラジド化合物であれば特に制限されない。具体的には、例えば、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボ二ル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基、アルコキシシリル基などを好適に挙げることができる。これらの極性基含有ヒドラジド化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0065】
上記アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を有するヒドラジド化合物が挙げられる。これらのアミノ基含有ヒドラジド化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
第1級アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、2−アミノアセトヒドラジド、3−アミノプロパンヒドラジド、4−アミノブタンヒドラジド、2−アミノベンゾヒドラジド、4−アミノベンゾヒドラジド等が挙げられる。
【0067】
第2級アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、2−(メチルアミノ)アセトヒドラジド、2−(エチルアミノ)アセトヒドラジド、3−(メチルアミノ)プロパンヒドラジド、3−(エチルアミノ)プロパンヒドラジド、3−(プロピルアミノ)プロパンヒドラジド、3−(イソプロピルアミノ)プロパンヒドラジド、4−(メチルアミノ)ブタンヒドラジド、4−(エチルアミノ)ブタンヒドラジド、4−(プロピルアミノ)ブタンヒドラジド、4−(イソプロピルアミノ)ブタンヒドラジド、2−(メチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(エチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(プロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(イソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(メチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4一(エチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(プロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(イソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド等が挙げられる。
【0068】
第3級アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、N,N−ジ置換アミノアルキルヒドラジド化合物、N,N−ジ置換ベンゾヒドラジド化合物等が挙げられる。これらの化合物としては、例えば、2−(ジメチルアミノ)アセトヒドラジド、2−(ジエチルアミノ)アセトヒドラジド、3−(ジメチルアミノ)プロパンヒドラジド、3−(ジエチルアミノ)プロパンヒドラジト、3−(ジプロピルアミノ)プロパンヒドラジド、3−(ジイソプロピルアミノ)プロパンヒドラジド、4−(ジメチルアミノ)ブタンヒドラジド、4−(ジエチルアミノ)ブタンヒドラジド、4−(ジプロピルアミノ)ブタンヒドラジド、4−(ジイソプロピルアミノ)ブタンヒドラジド、2−(ジメチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(ジエチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(ジプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(ジイソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジメチルアミノ)ベンソヒドラジド、4−(ジエチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジイソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド等が挙げられる。
【0069】
また、アミノ基の代わりに含窒素複素環基であってもよく、その含窒素複素環基としては、例えば、ピロール、ヒスチジン、イミダソール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、含窒素複素環は、他のへテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を有するヒドラジド化合物としては、例えば、イソニコチノヒドラジド、ピコリノヒドラジドが挙げられる。これら含窒素複素環基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0070】
上記ニトリル基を有するヒドラジド化合物としては、2−ニトロアセトヒドラジド、3−ニトロプロパンヒドラジド、4−ニトロブタンヒドラジド、2−ニトロベンゾヒドラジド、4−ニトロベンゾヒドラジド等が挙げられる。これらのニトリル基含有ヒドラジド化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0071】
上記ヒドロキシル基含有ヒドラジド化合物としては、1分子中に少なくとも1個の第1級、第2級又は第3級ヒドロキシル基を含有するヒドラジド化合物が挙げられる。このようなヒドロキシル基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、2−ヒドロキシアセトヒドラジド、3−ヒドロキシプロパンヒドラジド、4−ヒドロキシブタンヒドラジド、2−ヒドロキシベンゾヒドラジド、4−ヒドロキシベンゾヒドラジドが挙げられる。これらのヒドロキシル基含有ヒドラジド化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0072】
上記カルボキシル基を含有するヒドラジド化合物としては、3−カルボキシプロパンヒドラジド、4−カルボキシブタンヒドラジド、2−安息香酸ヒドラジド、4−安息香酸ヒドラジド等が挙げられる。これらカルボキシル基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0073】
上記エポキシ基を有するヒドラジド化合物としては、2−(オキシラン−2−イル)アセトヒドラジド、3−(オキシラン−2−イル)プロパンヒドラジド、3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパンヒドラジド等が挙げられる。これらエポキシ基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0074】
上記スズ含有基を有するヒドラジド化合物としては、3−(トリブチルスズ)プロパンヒドラジド、3−(トリメチルスズ)プロパンヒドラジド、3−(トリフェニルスズ)プロパンヒドラジド、3−(トリオクチルスズ)プロパンヒドラジド、4−(トリブチルスズ)ブタンヒドラジド、4−(トリメチルスズ)ブタンヒドラジド、4−(トリフェニルスズ)ブタンヒドラジド、4−(トリオクチルスズ)ブタンヒドラジド、2−(トリブチルスズ)ベンゾヒドラジド、4−(トリブチルスズ)ベンゾヒドラジド、2−(トリメチルスズ)ベンゾヒドラジド、4−(トリメチルスズ)ベンゾヒドラジド、2−(トリオクチルスズ)ベンゾヒドラジド、4−(トリオクチルスズ)ベンゾヒドラジド等のスズ含有ヒドラジド化合物を挙げることができる。これらスズ含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0075】
上記アルコキシシリル基を含有するヒドラジド化合物としては、2−(トリメトキシシリル)アセトヒドラジド、2−(トリエトキシシリル)アセトヒドラジド、3−(トリメトキシシリル)プロパンヒドラジド、3−(トリエトキシシリル)プロパンヒドラジド、4−(トリメトキシシリル)ブタンヒドラジド、4−(トリエトキシシリル)ブタンヒドラジド、2−(トリメトキシシリル)ベンゾヒドラジド、2−(トリエトキシシリル)ベンゾヒドラジド、4−(トリメトキシシリル)ベンゾヒドラジド、4−(トリエトキシシリル)ベンゾヒドラジド等が挙げられる。これらアルコキシシリル基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0076】
酸化反応したジエン系ゴムラテックスへの極性基含有ヒドラジド化合物の添加は、下記のようにして行うことができる。上記酸化反応したジエン系ゴムラテックス中に、水及び必要に応じて乳化剤を加えたものの中に上記極性基含有ヒドラジド化合物を加え、所定の温度で攪拌して反応させる。上記極性基含有ヒドラジド化合物の酸化ジエン系ゴムラテックスへの添加に際しては、予め酸化ジエン系ゴムラテックス中に乳化剤を加えておくか、あるいは極性基含有ヒドラジド化合物を乳化した後、酸化ジエン系ゴムラテックスに加える。必要に応じて有機過酸化物を添加することもできる。使用し得る乳化剤としては、特に限定されないが、ノニオン系の界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。このようにして極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、反応させることによって、本発明に用いる変性ジエン系ゴムラテックスを得ることができる。また、得られた変性ジエン系ゴムラテックスを凝固、乾燥することによって、本発明に用いる変性ジエン系ゴムを得ることができる。
【0077】
また、本発明に用いる変性ジエン系ゴムは、上述したように、酸化ジエン系ゴムラテックスを凝固して得られた酸化ジエン系ゴムに極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、乾燥することによって得ることができる。具体的には、上記酸化反応したジエン系ゴムラテックスを凝固、粉砕し、クラム化した後、上記極性基含有ヒドラジド化合物を添加する。その後、例えば、ミキサー、押出機、混練機(プリブレーカー)等を用いて混練を行い、乾燥した変性ジエン系ゴムを得ることができる。
【0078】
また、本発明に用いる変性ジエン系ゴムは、上述したように、上記酸化反応したジエン系ゴムラテックスを凝固、粉砕、乾燥した後、上記極性基含有ヒドラジド化合物を添加することによって得ることができる。乾燥後の酸化ジエン系ゴムへの極性基含有ヒドラジド化合物の具体的な添加方法としては、例えば、乾燥後の固形の酸化ジエン系ゴムへの極性基含有ヒドラジド化合物溶液の添加をミキサー、押出機、混練機等により行う工程が挙げられ、好ましくは、分散性向上の点から混練磯で混合することが好ましい。
【0079】
なお、酸化ジエン系ゴムラテックス又は変性ジエン系ゴムラテックスを凝固するのに用いる凝固剤としては、特に限定されるものではないが、ギ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩が挙げられる。また、酸化ジエン系ゴムラテックス又は変性ジエン系ゴムラテックスの乾燥は、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の乾燥機を用いて行うことができる。
【0080】
上記のようにして得られた変性ジエン系ゴムラテックス及び変性ジエン系ゴムは、ジエン系ゴムの分子鎖の末端に、下記一般式(I):
【化3】

(式中、Rは、置換基としてアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボ二ル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スズ含有基、アルコキシシリル基からなる群から選ばれる極性基を少なくとも1種有する炭素数1〜4のアルキレン基、置換基として該極性基を少なくとも1種有するフェニレン基、又は含窒素複素環基及び含酸素複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基である)で表される極性基含有官能基を有する。なお、上記一般式(I)中のRは上述したような極性基含有ヒドラジド化合物のヒドラジド基以外の部分に由来するものである。
【0081】
また、本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチに用いられる変性ジエン系ゴムラテックス中の変性ジエン系ゴム及び本発明のゴム組成物の第2の態様に用いられる変性ジエン系ゴムは、ゴム組成物として、優れた低ロス性、耐摩耗性及び破壊強度を確保するという観点から、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が200,000以上であるのが好ましく、400,000以上であるのがより好ましい。
【0082】
次に、本発明に用いる、天然ゴムラテックスに極性基含有ヒドラジド化合物を添加して得られた変性天然ゴムラテックス及び上記天然ゴム原材料に極性基含有ヒドラジド化合物を添加して得られた変性天然ゴムについて説明する。本発明の変性天然ゴムの原材料としては、各種天然ゴムラテックス、乾燥後の各種固形天然ゴム、各種天然ゴムラテックス凝固物(アンスモークドシートを包含する)又は天然ゴムカップランプを用いることができ、これら天然ゴム原材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。天然ゴムラテックスとしては、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱蛋白ラテックス、前記のものを組み合わせたものなど、いずれも使用することができる。
【0083】
極性基含有ヒドラジド化合物としては、上記のジエン系ゴムの分子鎖の末端に極性基を有する変性ジエン系ゴムラテックス及び変性ジエン系ゴムの製造において用いたものと同様のものを用いることができる。
【0084】
天然ゴムラテックスへの極性基含有ヒドラジド化合物の添加は、天然ゴムラテックス中に、水及び必要に応じて乳化剤を加えたものの中に極性基含有ヒドラジド化合物を加えることによって行うことができ、その後、所定の温度で攪拌して反応させることによって、変性天然ゴムラテックスを得ることができる。極性基含有ヒドラジド化合物の天然ゴムラテックスへの添加に際しては、予め天然ゴムラテックス中に乳化剤を加えておくか、あるいは極性基含有ヒドラジド化合物を乳化した後、天然ゴムラテックスに加える。必要に応じて有機過酸化物を添加することもできる。使用し得る乳化剤としては、特に限定されないが、ノニオン系の界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。このようにして極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、反応させて得られた変性天然ゴムラテックスを凝固、乾燥することによって、本発明に用いる変性天然ゴムを得ることができる。
【0085】
乾燥後の固形天然ゴム原材料への極性基含有ヒドラジド化合物の添加工程としては、例えば、乾燥後の固形天然ゴム原材料への極性基含有ヒドラジド化合物溶液の添加をミキサー、押出機、混練機等により行う工程が挙げられ、好ましくは、分散性向上の点から混練磯で混合することが好ましい。さらに、混練後、ストレーナー処理をしてもよい。これにより、分子量が高く、さらにゴミ分のない変性天然ゴムが得られる。ここでいう「ストレーナー処理」とは、メッシュ状部材を用いて変性天然ゴム中に含まれるゴミ分を除去する処理をいう。
【0086】
上記極性基含有ヒドラジド化合物を添加する工程では、そのまま前記極性基含有ヒドラジド化合物を添加してもよいし、溶媒で希釈した極性基含有ヒドラジド化合物溶液又はエマルジョン溶液として添加してもよい。天然ゴム中への分散性向上の点から、ヒドラジド化合物溶液又はエマルジョン溶液として添加するのが好ましい。
【0087】
極性基含有ヒドラジド化合物溶液は、ヒドラジド化合物を溶媒で希釈したものであり、ヒドラジド化合物の種類により好適な溶媒種が設定される。溶媒種として、水(精製水、イオン交換水、純水等)を用いることができる。また、極性基含有ヒドラジド化合物エマルジョンは、乳化剤と、必要に応じて親和剤を用い、通常の方法で得ることができる。ここで、上記極性基含有ヒドラジド化合物の水溶液の濃度は20〜80質量%であることが好ましく、上記極性基含有ヒドラジド化合物エマルジョンの濃度は3〜50質量%であることが好ましい。上記水溶液又は上記エマルジョンにおける極性基含有ヒドラジド化合物の濃度が低すぎると(上記水溶液の濃度が20質量%又は上記エマルジョンの濃度が3質量%未満であると)、所望量の極性基含有ヒドラジド化合物を添加するのに必要となる水溶液又はエマルジョンの量が多くなりすぎ、また、極性基含有ヒドラジド化合物の濃度が高すぎると(上記水溶液の濃度が80質量%又は上記エマルジョンの濃度が50質量%を越えると)、溶液の安定性が低下し、また、極性基含有ヒドラジド化合物の分散性が低下するなどの不具合を生じることがある。
【0088】
上記極性基含有ヒドラジド化合物水溶液の添加量は、天然ゴム全量に対して0.05〜30質量%の範囲が好ましく、1〜10質量%の範囲が更に好ましく、上記極性基含有ヒドラジド化合物エマルジョンの添加量は、天然ゴム全量に対して0.05〜30質量%の範囲が好ましく、1〜10質量%の範囲が更に好ましい。また、極性基含有ヒドラジド化合物の添加量は、上記天然ゴム原材料中の固形ゴム成分100質量部に対して、0.01〜8.0質量部の範囲が好ましい。
【0089】
また、上記変性ジエン系ゴムラテックスをカーボンブラックやシリカ等の充填剤を分散させたスラリー溶液と混合したとき、又は上記変性ジエン系ゴムを、充填剤を含むゴムウェットマスターバッチと混合したとき、加工性を低下させずに低ロス特性や耐摩耗性を向上させるという目的を考えると、ジエン系ゴムの各分子にまんべんなく少量の極性基が導入されることが重要であるため、上記変性ジエン系ゴムラテックス及び上記変性ジエン系ゴムにおいて、極性基含有ヒドラジド化合物の付加量は、上記変性ジエン系ゴムラテックス及び上記変性ジエン系ゴム中のゴム成分に対し0.01〜5.0質量%が好ましく、0.01〜1.0質量%がより好ましい。
【0090】
次に、本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ又は本発明のゴム組成物の第2の態様に含まれるゴムウェットマスターバッチについて説明する。これらのウェットマスターバッチに用いるスラリー溶液は、充填剤を分散媒に分散させてなる。ここで、スラリー溶液の製造は、公知の方法で行うことができ、例えば、高速せん断ミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル等の混合機を用いることができる。なお、これらの中でも、高速せん断ミキサーを用いるのが好ましく、ここで、高速せん断ミキサーとは、ローターとステーター部からなる高速せん断ミキサーであって、高速で回転するローターと、固定されたステーターが狭いクリアランスで設置され、ローターの回転によって高いせん断速度を生み出すものを指し、ローター・ステータータイプのハイシアーミキサーとも称される。高速せん断とは、せん断速度が、通常2000/s以上、好ましくは4000/s以上であることを意味する。高速せん断ミキサーは、市販品としては、例えば特殊機化工業社製ホモミキサー、独PUC社製コロイドミル、独キャビトロン社製キャビトロン、英シルバーソン社製ハイシアーミキサーなどが挙げられる。
【0091】
また、スラリー溶液の調整は、例えば、コロイドミルに水を入れ、撹拌しながら充填剤をゆっくり滴下し、その後、ホモジナイザーにて界面活性剤と共に、一定圧力、一定温度で循環させることで行うことができる。この場合の圧力は、通常10〜1000kPaの範囲であり、好ましくは200〜800kPaの範囲である。一方で、充填剤と水を一定の割合で混合し、細長い導管の一端からこれらの混合液を導入し、激しい水力撹拌の条件下で、均質な組成を有するスラリーの連続した流れを生成させることもできる。
【0092】
なお、上記スラリー溶液中の充填剤の濃度は、使用するスラリー容量が多くなりすぎないようにし、スラリー溶液の粘度を適切なものとして作業上問題が生じないようにする観点から、スラリー溶液の0.5〜60質量%の範囲が好ましく、1〜30質量%の範囲が更に好ましく、2〜10質量%の範囲が最も好ましい。
【0093】
なお、スラリー溶液の分散媒が水であることが、特に本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチを製造する場合に、又は本発明の第2の態様のゴムウェットマスターバッチの製造における後述のゴム液としてジエン系ゴムラテックスを用いる場合に、混合性の観点から好ましい。
【0094】
上記スラリー溶液において、スラリー溶液中の充填剤は、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で且つ90体積%粒径(D90)が30μm以下であることが好ましく、体積平均粒子径(mv)が20μm以下で且つ90体積%粒径(D90)が25μm以下であることが更に好ましく、スラリー溶液から乾燥回収した充填剤の24M4DBP吸油量は、分散媒に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持していることが好ましく、96%以上保持していることが更に好ましい。ここで、24M4DBP吸油量は、ISO 6894に準拠して測定される値であり、体積平均粒子径及び90体積%粒径は、レーザー回折型粒度分布計を用い、水の屈折率1.33、充填剤の屈折率1.57として測定した値である。スラリー溶液中の充填剤の粒径(体積平均粒子径及び90体積%粒径)が大きすぎると、変性天然ゴムラテックス及びスラリー溶液の混合液中での充填剤の分散性が悪化し、補強性及び耐摩耗性が悪化することがある。また、粒径を小さくするためにスラリー溶液に過度のせん断力をかけると、充填剤のストラクチャーが破壊され、補強性の低下を引き起こすため、スラリー溶液から乾燥回収した充填剤の24M4DBP吸油量が、分散媒に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持していることが好ましく、96%以上保持していることがさらに好ましい。
【0095】
本発明の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチは、上記スラリー溶液と上記変性ジエン系ゴムラテックスを混合することによって得られる。
【0096】
また、本発明のゴム組成物の第2の態様に用いるゴムウェットマスターバッチにおいて、上記スラリー溶液と混合するゴム液は、ゴム成分としてジエン系ゴムを用いることができ、当該ゴム液としては、天然ゴムラテックスを含むジエン系ゴムラテックス、あるいは溶液重合による合成ジエン系ゴムの有機溶媒溶液などを挙げることができる。これらの中でも、得られるウェットマスターバッチの性能や製造しやすさなどの観点から、ジエン系ゴムラテックスが好ましい。
【0097】
ジエン系ゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、ポリイソプレンゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックス、ポリブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスなどが挙げられる。ここで、天然ゴムラテックスとしては、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、酵素処理やケン化処理などによって得られる脱蛋白ラテックス、化学変性ラテックス、前記のものを組み合わせたものなど、いずれも使用することができる。これらのジエン系ゴムラテックスは1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。なお、本発明のゴム組成物の第2の態様において、ゴムウェットマスターバッチにおけるゴム液として用いるジエン系ゴムラテックスは、ゴムウェットマスターバッチと混合する変性ジエン系ゴムのゴム種と同一であっても、異なっていてもよい。
【0098】
上記変性ジエン系ゴムラテックスもしくは上記ゴム液及び/又は上記スラリー溶液は、変性ジエン系ゴムラテックスもしくはゴム液の安定性を向上させる観点から、更に界面活性剤を含むことが好ましい。ここで、界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性界面活性剤が挙げられ、これらの中でも、アニオン系及びノニオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤の添加量は、変性ジエン系ゴムラテックスもしくはゴム液中のゴム成分に対して、通常0.01〜2質量%であり、0.02〜1質量%の範囲が好ましい。
【0099】
上記スラリー溶液に用いる充填剤としては、カーボンブラック及び無機充填剤が挙げられ、ここで、無機充填剤としては、シリカ及び下記式(II):
nM・xSiOy・zH2O ・・・ (II)
[式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及びこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]で表される無機化合物が挙げられる。これら充填剤は、一種単独で用いてもよし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0100】
上記カーボンブラックとしては、GPF、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFグレードのもの等が挙げられ、また、上記シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ及びコロイダルシリカ等が挙げられる。更に、上記式(II)の無機化合物としては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al23);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等を挙げることができる。また、一般式(II)で表される無機充填剤としては、Mがアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及びアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも1種のものが好ましい。
【0101】
上記変性ジエン系ゴムラテックス又は上記ゴム液と上記スラリー溶液との混合方法としては、例えば、ホモミキサーやブレンダーミル中にスラリー溶液を入れ、撹拌しながら、ゴム液を滴下する方法や、逆にゴム液を撹拌しながら、これにスラリー溶液を滴下する方法が挙げられる。また、一定の流量比のゴム液流とスラリー流とを激しい水力撹拌条件下で混合する方法等でもよい。ここで、上記変性ジエン系ゴムラテックス中のゴム成分(すなわち変性ジエン系ゴム)又は上記ゴム液中のゴム成分と上記スラリー溶液中の充填剤との配合割合は、変性ジエン系ゴムラテックス中のゴム成分(すなわち変性ジエン系ゴム)又はゴム液中のゴム成分100質量部に対してスラリー溶液中の充填剤が5〜100質量部の割合になるよう配合されることが好ましく、10〜70質量部の割合になるように配合されることが更に好ましい。充填剤の配合量が5質量部未満では、充分な補強性が得られない場合があり、100質量部を超えると、加工性が悪化する場合がある。
【0102】
上記変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ又はゴムウェットマスターバッチの製造においては、上述のようにして得られたスラリー溶液と上記変性ジエン系ゴムラテックス又は上記ゴム液との混合液を化学的及び/又は物理的に凝固処理し、生成した凝固物を取り出す。化学的凝固処理方法は、従来公知の方法、例えばギ酸、硫酸などの酸や塩化ナトリウムなどの塩を加えることによって行うことができる。但し、凝固剤を添加せずとも、変性ジエン系ゴムラテックス又はゴム液とスラリー溶液とを混合することによって、凝固がなされる場合もある。物理的凝固処理方法としては、スチーム加熱や凍結などの温度を変化させることによって凝固を促進させる方法や、強いせん断力を加えて凝固する方法が挙げられる。これらの化学的、物理的凝固処理方法は、単独又は複数の方法を組み合わせて用いてもよい。凝固処理によって形成された凝固物は、従来公知の固液分離手段を用いて取り出され、充分に洗浄される。洗浄は、通常水洗法を採用して行うことができる。
【0103】
続いて、取り出され、洗浄された凝固物を脱水及び乾燥処理する。脱水の手段としては、遠心脱水、圧搾脱水、単軸又は複軸スクリューを用いたスクイザーなど、また乾燥の手段としては熱風乾燥機、減圧乾燥機、凍結乾燥機など公知の手段を用いることができる。また、充填剤の分散性及び均一性を更に向上させる観点から、機械的せん断力をかけながら脱水乾燥処理する方法も好ましい。この場合、工業的生産性の観点から、連続混練機又は連続多軸混練押出機を用いることが好ましい。より詳細には、スクリュー型連続混練機、同方向回転又は異方向回転の二軸混練押出機を用いることが更に好ましい。上記スクリュー型連続混練機としては、市販品を利用することができ、例えば、神戸製鋼製二軸混練押出機等を用いることができる。なお、乾燥前の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ又はゴムウェットマスターバッチ中の水分は10%以上であることが好ましい。乾燥前のマスターバッチ中の水分が10%未満であると、乾燥工程での充填剤の分散性の改良幅が小さくなることがある。
【0104】
上記変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ又はゴムウェットマスターバッチは、後述するゴム組成物の調製に用いられるが、当該ウェットマスターバッチの保管中の劣化などを防止するために、又は加硫ゴムとして好ましい性能を発揮することを目的として、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、プロセス油、亜鉛華、スコーチ防止剤、分散助剤、ステアリン酸、着色剤等の、老化防止、可塑化、しゃっ解、加工性改良、分散改良、カップリング、架橋速度調整、又は架橋密度調整のうち少なくとも1種の効果を有する通常ゴム業界で用いられる各種ゴム用添加剤を含むことができる。これら添加剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0105】
上記変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ又はゴムウェットマスターバッチに前記添加剤を含有させる方法としては、前述したウェットマスターバッチの製造方法において説明したスラリー溶液の調製時、ゴム液の調製時、スラリー溶液とゴム液の混合生成物であるウェットマスターバッチ調製時、脱水乾燥時のいずれであってもよく、また、乾燥後のマスターバッチと添加剤を攪拌機等を用いて混合する方法が好ましい。
【0106】
また、本発明のゴム組成物の第1の態様は、上記変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチを用いたことを特徴とし、上述のように上記変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチは、均一性に優れるため、本発明のゴム組成物は、均一性に優れ、低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性に優れる。
【0107】
また、本発明のゴム組成物の第2の態様は、上記変性ジエン系ゴムと上記ゴムウェットマスターバッチと含むことを特徴とし、上述のように、ミキサー、押出機、混練機等によって変性ジエン系ゴムと充填剤とを混合した場合よりも、ゴム組成物において、変性ジエン系ゴムに導入された極性基と充填剤との接触率が向上して、極性基が充填剤と充分に相互作用することができるので、低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性に優れる。なお、本発明のゴム組成物の第2の態様において、低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性の改良効果を充分に得られるようにするという観点から、ゴム組成物中のゴム成分の全体に対して変性ジエン系ゴムにおけるゴム成分を10質量%以上含むことが好ましい。
【0108】
本発明のゴム組成物の第1の態様及び第2の態様には、それぞれ、第1の態様では上記変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの他に、第2の態様では上記変性ジエン系ゴム及び上記ゴムウェットマスターバッチの他に、更に、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等のゴム工業で通常使用される各種ゴム用添加剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら添加剤としては、市販品を好適に使用することができる。本発明のゴム組成物は、第1の態様においては変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチに、第2の態様においては変性ジエン系ゴム及びゴムウェットマスターバッチに、必要に応じて適宜選択した各種添加剤を混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0109】
また、本発明のタイヤは、上記ゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とする。ここで、本発明のタイヤにおいては、上記ゴム組成物をトレッドゴムに用いることが特に好ましく、上記ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、耐破壊特性及び耐摩耗性が高く、転がり抵抗が低く、低燃費性に優れる。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0110】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0111】
<変性天然ゴムラテックスの製造例1>
(酸化天然ゴムラテックス製造工程)
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、1000gの水を加えた。その後、過硫酸カリウム9.0g、プロピオンアルデヒド3.0gを添加し、60℃、30時間攪拌しながら反応させることで酸化天然ゴムラテックスを得た。
【0112】
(変性工程)
得られた酸化天然ゴムラテックスに、予め10mLの水と90mgの乳化剤[エマルゲン1108,花王株式会社製]をイソニコチノヒドラジド3.0gに加えて乳化したものを添加し、攪拌しながら60℃で12時間反応させることで、変性天然ゴムラテックスA’を得た。
【0113】
<変性天然ゴムラテックスの製造例2〜7>
イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、製造例2では3−(ジメチルアミノ)プロパンヒドラジド3.0g、製造例3では4−(ジメチルアミノ)ベンゾヒドラジド3.9g、製造例4では4−ヒドロキシベンゾヒドラジド3.3g、製造例5では4−安息香酸ヒドラジド3.9g、製造例6では4−(トリブチルスズ)ブタンヒドラジド8.5g、製造例7では4−(トリメトキシシリル)ベンゾヒドラジド5.6gを加え、それ以外は上記製造例1と同様にして変性天然ゴムラテックスB’〜G’を得た。
【0114】
<変性天然ゴムの製造例1〜7>
上記変性天然ゴムラテックスA’〜G’にそれぞれギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して変性天然ゴムA〜Gを得た。また、該変性天然ゴムA〜Gをそれぞれ石油エーテルで抽出し、さらにアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することにより、未反応のヒドラジド化合物の分離を行い、抽出物を分析することによって、各変性天然ゴムにおけるヒドラジド化合物の付加量を測定したところ、それぞれ表1に示す結果を得た。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8020、カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、変性天然ゴムA〜Gのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めて、それぞれ表1に示す結果を得た。
【0115】
<変性天然ゴムの製造例8>
フィールドラテックスにギ酸を加えることでpHを4.7に調整し凝固させた。この固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーを通してクラム化した。この凝固物の乾燥ゴム含有量を求めた後、乾燥ゴム量換算で600gの凝固物とイソニコチノヒドラジド3.0gのエマルジョン溶液を混練機(プレブレーカー)内で室温にて30rpmで2分間練りこみ、均一に分散させ、乾燥した変性天然ゴムHを得た。また、該変性天然ゴムHを石油エーテルで抽出し、さらにアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することにより、未反応のヒドラジド化合物の分離を行ったところ、抽出物の分析から未反応のヒドラジド化合物は検出されず、よって該変性天然ゴムHにおけるイソニコチノヒドラジドの付加量は天然ゴム原材料中の固形ゴム成分に対して0.5質量%であった。
【0116】
<変性天然ゴムの製造例9〜13>
イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、製造例9では3−(ジメチルアミノ)プロパンヒドラジド3.0g、製造例10では4−(ジメチルアミノ)ベンゾヒドラジド3.9g、製造例11では4−ヒドロキシベンゾヒドラジド3.3g、製造例12では4−安息香酸ヒドラジド3.9g、製造例13では4−(トリブチルスズ)ブタンヒドラジド8.5gを加え、それ以外は上記製造例1と同様にして変性天然ゴムI〜Mを得た。また、変性天然ゴムHと同様にして、変性天然ゴムI〜Mにおける極性基含有ヒドラジド化合物の付加量を分析して、表2に示す結果を得た。
【0117】
<変性天然ゴムの製造例15〜21>
変性天然ゴムの製造例8〜13においてフィールドラテックスにギ酸を加えて得た凝固物を使用する代わりに、製造例14〜19ではカップランプ(天然ゴムの木から得られたラテックスが自然凝固することで得られたもの)を用いること以外は製造例8〜13と同様にして、変性天然ゴムN〜Sを得た。また、変性天然ゴムHと同様にして、変性天然ゴムN〜Sにおける極性基含有ヒドラジド化合物の付加量を分析して、表2に示す結果を得た。
【0118】
<酸化天然ゴムラテックスの製造例>
上記変性工程を行わない以外は変性天然ゴムラテックスの製造例1と同様にして、酸化天然ゴムラテックスT’を得た。
【0119】
<酸化天然ゴムの製造例>
上記酸化天然ゴムラテックスT’にギ酸を加えpHを4.7に調整し、酸化天然ゴムラテックスT’を凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して酸化天然ゴムTを得た。また、変性天然ゴムA〜Gと同様にして、酸化天然ゴムTの重量平均分子量(Mw)を求めて、表1に示す結果を得た。
【0120】
<天然ゴムラテックスの製造例1>
上記変性天然ゴムラテックスの製造例1において、上記酸化反応工程及び変性工程を経ず、水で希釈するのみで上記ラテックスとゴム分濃度を等しくして、天然ゴムラテックスU’を得た。
【0121】
<天然ゴムの製造例1>
フィールドラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、フィールドラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して天然ゴムUを得た。また、変性天然ゴムA〜Gと同様にして、天然ゴムUの重量平均分子量(Mw)を求めて、表1に示す結果を得た。
【0122】
<天然ゴムの製造例2>
イソニコチノヒドラジドを添加しなかったこと以外は上記変性天然ゴムの製造例8と同様にして天然ゴムVを得た。
【0123】
<天然ゴムの製造例3>
天然ゴムの製造例2においてフィールドラテックスにギ酸を加えて得た凝固物を使用する代わりに、製造例3ではカップランプ(天然ゴムの木から得られたラテックスが自然凝固することで得られたもの)を用いること以外は製造例2と同様にして、天然ゴムWを得た。
【0124】
<変性天然ゴムウェットマスターバッチの製造例1〜7>
(カーボンブラックスラリー溶液の調整)
ローター径50mmのコロイドミルに脱イオン水1425g及びカーボンブラック(N110)75gを投入し、ローター・ステーター間隙1mm、回転数1500rpmで10分間撹拌し、得られたスラリーに、更にアニオン系界面活性剤[花王デモール N]を0.05%加え、圧力式ホモジナイザーを用いて圧力500kPaの条件下で3回循環させて、カーボンブラックスラリー溶液を調製した。なお、使用したカーボンブラックの24M4DBP吸油量をISO 6894に準拠して測定したところ、分散媒に分散させる前の24M4DBP吸油量が98mL/100gで、スラリー溶液から乾燥回収した後の24M4DBP吸油量が96mL/100g(保持率:98.0%)であった。また、スラリー溶液中のカーボンブラックの粒度分布を、分散後直ちにレーザー回折型粒度分布計[MICROTRAC FRA型]を使用し、水の屈折率1.33、粒子屈折率1.57として測定したところ、体積平均粒子径(mv)が15.1μmで且つ90体積%粒径(D90)が19.5μmであった。
【0125】
(凝固及び乾燥工程)
ホモミキサー中に、上記変性天然ゴムラテックスA’〜G’のそれぞれとカーボンブラック含有スラリー溶液とを、ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックが50質量部になるように添加し、撹拌しながら、ギ酸をpH=4.7になるまで加え、凝固させた。次に、凝固物を回収及び水洗し、水分が約40%になるまで脱水を行い、更に、神戸製鋼製二軸混練押出機[同方向回転スクリュー径=30mm, L/D=35, ベントホール3ヶ所]を用い、バレル温度120℃、回転数100rpmで乾燥し、変性天然ゴムウェットマスターバッチA〜Gを得た。
【0126】
<酸化天然ゴムウェットマスターバッチの製造例>
酸化天然ゴムラテックスV’を用いた以外は、上記変性天然ゴムウェットマスターバッチの製造例と同様にして酸化天然ゴムウェットマスターバッチVを得た。
【0127】
<天然ゴムウェットマスターバッチの製造例1>
天然ゴムラテックスW’を用いた以外は、上記変性天然ゴムウェットマスターバッチの製造例と同様にして天然ゴムウェットマスターバッチWを得た。
【0128】
<天然ゴムウェットマスターバッチの製造例2>
(1)カーボンブラックスラリー溶液の調製
水中に、カーボンブラック(N220)をドライ換算で80質量部投入し、シルバーソン社製ハイシアーミキサーにて、4800rpmの回転速度で30分間スラリー化処理を行い、スラリー濃度約5質量%のカーボンブラック含有スラリー溶液を作製した。なお、カーボンブラックスラリー溶液の調製は、スラリー20kgスケールで実施した。なお、使用したカーボンブラックの24M4DBP吸油量をISO 6894に準拠して測定したところ、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量が100mL/100gで、スラリー溶液から乾燥回収した後の24M4DBP吸油量が94mL/100g(保持率:94.0%)であった。また、スラリー溶液中のカーボンブラックの粒度分布を、分散後直ちにレーザー回折型粒度分布計[MICROTRAC FRA型]を使用し、水の屈折率1.33、粒子屈折率1.57として測定したところ、体積平均粒子径(mv)が4.6μmで且つ90体積%粒径(D90)が6.5μmであった。
【0129】
(2)ウェットマスターバッチの調製
上記(1)で得られたカーボンブラック含有スラリー溶液全量と、10質量%に希釈したアンモニアを含む天然ゴム濃縮ラテックス1000質量部とを攪拌しながら混合したのち、これにギ酸を添加してpH4.7に調整して凝固させた。次いで、この凝固物を不織布でろ過し、脱水したのち、二軸押出機で吐出温度150℃となるように連続的に処理することで、天然ゴムウェットマスターバッチXを製造した。
【0130】
(実施例1〜7及び比較例1、2)
表3に示す配合1にしたがって各成分を配合し、プラストミルで混練してゴム組成物を得た。
【0131】
(比較例3〜14)
ドライ練りにて、表3に示す配合2にしたがって各成分を配合し、プラストミルで混練してゴム組成物を得た。
【0132】
(実施例8〜19及び比較例12、13)
表4に示す配合1にしたがって各成分を配合し、プラストミルで混練してゴム組成物を得た。
【0133】
(比較例13、14)
表4に示す配合2にしたがって各成分を配合し、プラストミルで混練してゴム組成物を得た。
【0134】
(比較例15、16)
ドライ練りにて、表4に示す配合3にしたがって各成分を配合し、プラストミルで混練してゴム組成物を得た。
【0135】
<ゴム組成物の物性評価>
上記のようにして得たゴム組成物に対して、下記の方法でムーニー粘度、引張強さ(Tb)、tanδ及び耐摩耗性を測定・評価した。結果を表5〜9に示す。
【0136】
(1)ムーニー粘度
JIS K6300−1:2001に準拠して、130℃にてゴム組成物のムーニー粘度ML1+4(130℃)を測定した。ムーニー粘度が小さい程、加工性に優れることを示す。
【0137】
(2)引張強さ
上記ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、JIS K6251-2004に準拠して引張試験を行い、引張強さ(Tb)を測定した。引張強さが大きい程、耐破壊性が良好であることを示す。
【0138】
(3)tanδ
上記ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、粘弾性測定装置[レオメトリックス社製]を用い、温度50℃、歪み5%、周波数15Hzで損失正接(tanδ)を測定した。tanδが小さい程、低ロス性に優れることを示す。
【0139】
(4)耐摩耗性
上記ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、ランボーン型摩耗試験機を用い、室温におけるスリップ率60%での摩耗量を測定し、実施例1〜7、比較例1〜11においては比較例11の摩耗量の逆数を100として、実施例8〜13、比較例12、14、16においては比較例12の摩耗量の逆数を100として、実施例14〜19、比較例13,15、16、17においては、比較例13の逆数を100として、指数表示した。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】

【0142】
【表3】

【0143】
*1 ウェットマスターバッチに用いた(変性)天然ゴムラテックスの種類を表5に示す.
*2 使用した(変性)天然ゴムの種類を表6に示す.
*3 N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン.
*4 N,N'-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド.
【0144】
【表4】

【0145】
*1 使用した(変性)天然ゴムの種類を表7〜9に示す.
*2 天然ゴムウェットマスターバッチの製造例2で得られた天然ゴムウェットマスターバッチX.
*3 天然ゴム50質量部とカーボンブラック(N220)50質量部をドライ練りして得られたドライマスターバッチ.
*4 N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン.
*5 N,N'-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド.
【0146】
【表5】

【0147】
【表6】

【0148】
【表7】

【0149】
【表8】

【0150】
【表9】

【0151】
表5の実施例1〜7と比較例2の比較から、天然ゴムウェットマスターバッチに代えて変性天然ゴムウェットマスターバッチを用いることで、ゴム組成物の破壊特性、低ロス性及び耐摩耗性を大幅に改善できることが分かる。また、表5の実施例1〜7と表6の比較例3〜9の比較から、ドライ練りで変性天然ゴムとカーボンブラックとを混合するよりも、変性天然ゴムウェットマスターバッチを用いた方が、ゴム組成物の加工性、破壊特性、低ロス性及び耐摩耗性を大幅に改善できることが分かる。
【0152】
また、表7の実施例8〜13と表9の比較例12、表8の実施例14〜19と表9の比較例13の比較から、天然ゴムに代えて変性天然ゴムを天然ゴムウェットマスターバッチと混合することで、ゴム組成物の破壊特性、低ロス性及び耐摩耗性を大幅に改善できることが分かる。また、表7の実施例8と表9の比較例14及び16、表8の実施例14と比較例15及び17の比較から、変性天然ゴムと天然ゴムドライマスターバッチとを混合したもの、又は変性天然ゴムと天然ゴムとカーボンブラックとを他の成分とともにドライ練りで混合したものよりも、変性天然ゴムと天然ゴムウェットマスターバッチとを混合したものの方が、ゴム組成物の加工性、破壊特性、低ロス性及び耐摩耗性を改善できることが分かる。
【0153】
<変性天然ゴムラテックスの製造例A>
次に、フィールドラテックスに、予め10mLの水と90mgの乳化剤[エマルゲン1108,花王株式会社製]をイソニコチノヒドラジド3.0gに加えて乳化したものを添加し、攪拌しながら60℃で12時間反応させることで、変性天然ゴムラテックスAAを得た。また、イソニコチノヒドラジドに代えて、表10に示すヒドラジド化合物を用い、変性天然ゴムラテックスAB〜AFを得た。
【0154】
【表10】

【0155】
<変性天然ゴムウェットマスターバッチの製造例A>
得られた変性天然ゴムAA〜AFについて、上記変性天然ゴムウェットマスターバッチの製造例と同様にして、変性天然ゴムウェットマスターバッチAA〜AFを得た。
【0156】
(実施例A-1〜A-6)
表3に示す配合1に従って各成分を配合し、プラストミルで混練してゴム組成物を得た。なお、使用した変性天然ゴムの種類を表11に示す。
次に、得られたゴム組成物について、上記の方法で、ムーニー粘度、引張強さ(Tb)、tanδ及び耐摩耗性を測定・評価した。結果を表11に示す。なお、耐摩耗性については、比較例11の摩耗量の逆数を100として指数表示した。
【0157】
【表11】

【0158】
実施例A-1〜A-6のゴム組成物は、実施例8〜13のゴム組成物に比べて、ヒドラジド化合物の付加量が低いものの、変性天然ゴムウェットマスターバッチを用いているため、ゴム物性の向上効果が大きいと思われる。但し、実施例A-1〜A-6のゴム組成物によって得られる効果は、末端変性ではないため、実施例1〜6のゴム組成物による向上効果より低いものと考えられる。
【0159】
(実施例B-1〜B-7)
上記変性天然ゴムA〜G及び天然ゴムウェットマスターバッチWを用い、表4に示す配合1に従って各成分を配合し、プラストミルで混練してゴム組成物を得た。なお、表4の配合1中、ウェットマスターバッチXに代えて、ウェットマスターバッチWを用いた。また、使用した変性天然ゴムの種類を表12に示す。
次に、得られたゴム組成物について、上記の方法で、ムーニー粘度、引張強さ(Tb)、tanδ及び耐摩耗性を測定・評価した。結果を表12に示す。なお、耐摩耗性については、比較例12の摩耗量の逆数を100として指数表示した。
【0160】
【表12】

【0161】
実施例B-1〜B-7のゴム組成物は、変性天然ゴムウェットマスターバッチでないため、実施例1〜6のゴム組成物に比べて、ゴム物性の向上効果が低いものの、末端変性であるため、実施例8〜13のゴム組成物に比べて、ゴム物性の向上効果が高いものであると思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴムラテックス中のジエン系ゴム分子に付加させてなる変性ジエン系ゴムラテックスと、充填剤を分散させてなるスラリー溶液とを混合してなる変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ。
【請求項2】
前記極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ。
【請求項3】
前記変性ジエン系ゴムラテックスにおける前記極性基含有ヒドラジド化合物の付加量が、前記変性ジエン系ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.01〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ。
【請求項4】
前記変性ジエン系ゴムラテックスが、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加させてなる変性ジエン系ゴムラテックスであることを特徴とする請求項1記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ。
【請求項5】
前記ジエン系ゴムラテックスが天然ゴムラテックスであることを特徴とする請求項4記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ。
【請求項6】
前記変性ジエン系ゴムラテックス中の変性ジエン系ゴムが、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が200,000以上であることを特徴とする請求項4記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ。
【請求項7】
前記ジエン系ゴムラテックスの酸化を、ジエン系ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、空気酸化することによって行うことを特徴とする請求項4記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ。
【請求項8】
前記空気酸化をラジカル発生剤の存在下で行うことを特徴とする請求項7記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ。
【請求項9】
前記カルボニル化合物が、アルデヒド類及び/又はケトン類であることを特徴とする請求項7記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ。
【請求項10】
前記ラジカル発生剤が過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤及びアゾ系ラジカル発生剤からなる群から選ばれることを特徴とする請求項8記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ。
【請求項11】
前記変性ジエン系ゴムラテックスが、ジエン系ゴムの分子鎖の末端に、下記一般式(I):
【化1】

(式中、Rは、置換基としてアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボ二ル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スズ含有基、アルコキシシリル基からなる群から選ばれる極性基を少なくとも1種有する炭素数1〜4のアルキレン基、置換基として該極性基を少なくとも1種有するフェニレン基、又は含窒素複素環基及び含酸素複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基である)
で表される極性基含有官能基を有する変性ジエン系ゴムラテックスである請求項1記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ。
【請求項12】
前記変性ジエン系ゴムラテックスが、天然ゴムラテックスに極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、該極性基含有ヒドラジド化合物を該天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子に付加させてなる変性天然ゴムラテックスであることを特徴とする請求項1記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチ。
【請求項13】
充填剤を分散させてなるスラリー溶液と、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴム分子に付加させてなる変性ジエン系ゴムラテックスとを混合する工程を含むことを特徴とする変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法。
【請求項14】
前記充填剤が、体積平均粒子径(mv)が25μm以下で且つ90体積%粒径(D90)が30μm以下であり、該スラリー溶液から乾燥回収した充填剤の24M4DBP吸油量が、水中に分散させる前の24M4DBP吸油量の93%以上を保持していることを特徴とする請求項13記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法。
【請求項15】
前記スラリー溶液の分散媒が水であることを特徴とする請求項13記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法。
【請求項16】
前記スラリー溶液が、カーボンブラック、シリカ及び下記式(II):
nM・xSiOy・zH2O ・・・ (II)
[式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及びこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]で表される無機化合物からなる群より選択される少なくとも1種の充填剤を含むことを特徴とする請求項13記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法。
【請求項17】
前記ゴム液及び/又は前記スラリー溶液が更に界面活性剤を含むことを特徴とする請求項13記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法。
【請求項18】
さらに、前記スラリー溶液と前記変性ジエン系ゴムラテックスとを混合し、得られた混合液を化学的及び/又は物理的に凝固処理し、生成した凝固物を取り出す工程を含むことを特徴とする請求項13記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法。
【請求項19】
さらに、取り出された凝固物を乾燥処理する工程を含むことを特徴とする請求項13記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法。
【請求項20】
乾燥処理を、熱風乾燥機、減圧乾燥機又は凍結乾燥機を用いて行う請求項19記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法。
【請求項21】
乾燥処理を、連続混練機又は連続多軸混練押出機を用いて行う請求項19記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法。
【請求項22】
さらに、老化防止、可塑化、しゃっ解、加工性改良、分散改良、カップリング、架橋速度調整、又は架橋密度調整のうち少なくとも1種の効果を有するゴム用添加剤を添加する工程を含むことを特徴とする請求項13記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチの製造方法。
【請求項23】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の変性ジエン系ゴムウェットマスターバッチを用いたゴム組成物。
【請求項24】
極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴム分子に付加させてなる変性ジエン系ゴムと、充填剤を分散させてなるスラリー溶液とゴム成分を分散又は溶解させてなるゴム液とを混合して得られるゴムウェットマスターバッチとを含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項25】
前記極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項24記載のゴム組成物。
【請求項26】
前記変性ジエン系ゴムにおける前記極性基含有ヒドラジド化合物の付加量が、前記変性ジエン系ゴムのゴム成分に対して0.01〜5.0質量%であることを特徴とする請求項24記載のゴム組成物。
【請求項27】
前記変性ジエン系ゴムが、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加させてなる変性ジエン系ゴムであることを特徴とする請求項24記載のゴム組成物。
【請求項28】
前記ジエン系ゴムラテックスが、天然ゴムラテックスであることを特徴とする請求項27記載のゴム組成物。
【請求項29】
前記変性ジエン系ゴムが、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が200,000以上であることを特徴とする請求項27記載のゴム組成物。
【請求項30】
前記ジエン系ゴムラテックスの酸化を、ジエン系ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、空気酸化することによって行うことを特徴とする請求項27記載のゴム組成物。
【請求項31】
前記空気酸化をラジカル発生剤の存在下で行うことを特徴とする請求項30記載のゴム組成物。
【請求項32】
前記カルボニル化合物が、アルデヒド類及び/又はケトン類であることを特徴とする請求項30記載のゴム組成物。
【請求項33】
前記ラジカル発生剤が過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤及びアゾ系ラジカル発生剤からなる群から選ばれることを特徴とする請求項31記載のゴム組成物。
【請求項34】
前記変性ジエン系ゴムが、ジエン系ゴムの分子鎖の末端に、下記一般式(I):
【化2】

(式中、Rは、置換基としてアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボ二ル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スズ含有基、アルコキシシリル基からなる群から選ばれる極性基を少なくとも1種有する炭素数1〜4のアルキレン基、置換基として該極性基を少なくとも1種有するフェニレン基、又は含窒素複素環基及び含酸素複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基である)
で表される極性基含有官能基を有する変性ジエン系ゴムであることを特徴とする請求項24記載のゴム組成物。
【請求項35】
前記変性ジエン系ゴムが、天然ゴム、天然ゴムラテックス、天然ゴムラテックス凝固物及び天然ゴムカップランプからなる群から選択される少なくとも一種の天然ゴム原材料に極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、該極性基含有ヒドラジド化合物を該天然ゴム原材料中の天然ゴム分子に付加させてなる変性天然ゴムであることを特徴とする請求項24記載のゴム組成物。
【請求項36】
前記ゴム液のゴム成分がジエン系ゴムであることを特徴とする請求項24記載のゴム組成物。
【請求項37】
請求項23〜36のいずれか1項に記載のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とするタイヤ。

【公開番号】特開2010−261002(P2010−261002A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114993(P2009−114993)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】