説明

変性重合体の製造方法、その方法により得られた変性重合体とそのゴム組成物

【課題】加硫ゴムとしたときに、転がり抵抗が小さく、引張強度等の機械的特性、ウエットスキッド抵抗性及び耐摩耗性に優れた変性重合体の製造方法とそれにより得られた変性重合体、ならびにそれを用いたゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエン系モノマーを単独で、又は他のモノマーと併用し、炭化水素溶媒中でアルカリ金属系開始剤を用いてアニオン重合させることにより得られる、アルカリ金属活性末端を有する共役ジエン系重合体の該活性末端に、アルコキシシラン化合物を反応させる変性反応を行う工程と、周期律表の4A族(Tiを除く。)、2B族、3B族及び5B族のうちの少なくとも一つに属する元素の化合物からなる縮合促進剤の存在下で、縮合反応を行う工程とを備える、変性重合体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性重合体の製造方法、その方法によって得られた変性重合体とそのゴム組成物に関する。さらに詳しくは、低発熱性(低燃費性)および充填剤との補強性を高めると共に、耐摩耗性に優れた変性重合体の製造方法、その方法により得られた変性重合体とそのゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの社会的な要請に関連して、自動車の低燃費化に対する要求はより過酷なものとなりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の更なる減少が求められてきている。タイヤの転がり抵抗を下げる手法としては、タイヤ構造の最適化による手法についても検討されてきたものの、ゴム組成物としてより発熱性の少ない材料を用いることが最も一般的な手法として行われている。
【0003】
このような発熱性の少ないゴム組成物を得るために、これまで、シリカやカーボンブラックを充填剤とするゴム組成物用の変性ゴムの技術開発が数多くなされてきた。その中でも特に、有機リチウム化合物を用いたアニオン重合で得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端を、充填剤と相互作用する官能基を含有するアルコキシシラン誘導体で変性する方法が有効なものとして提案されている。
【0004】
しかし、これらの多くは重合体末端のリビング性が容易に確保できるポリマーへの適用であり、シリカやカーボンブラックを配合したゴム組成物における変性効果は必ずしも十分なものが得られていない。また、従来の変性手法の多くは、主鎖に対する分岐付与を十分に行うことが出来ないため、実用に供する際にコールドフローが大きな障害となり、これに対処するために部分カップリングを行うと、必然的に変性効果は低減するという問題があった。
【0005】
そこで、上記欠点を克服し、より変性効果を向上させようとして、共役ジエン系重合体の重合活性末端をアルコキシシラン化合物で変性するにあたり、反応系に縮合促進剤を添加する方法が提案されているが(特許文献1を参照)、変性重合体のさらなる性能向上が求められている。
【特許文献1】WO 03/048216 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加硫ゴムとしたときに、転がり抵抗が小さく、引張強度等の機械的特性、ウエットスキッド抵抗性及び耐摩耗性に優れた変性重合体の製造方法とそれにより得られた変性重合体、ならびにそれを用いたゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ジエン系モノマーを単独で、又は他のモノマーと併用し、炭化水素溶媒中でアルカリ金属系開始剤を用いてアニオン重合させることにより得られる、アルカリ金属活性末端を有する共役ジエン系重合体の該活性末端に、アルコキシシラン化合物を反応させる変性反応を行う工程と、周期律表の4A族(Tiを除く。)、2B族、3B族及び5B族のうちの少なくとも一つに属する元素の化合物からなる縮合促進剤の存在下で、縮合反応を行う工程とを備える、変性重合体の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の製造方法においては、前記縮合促進剤が、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、又はアルミニウム(Al)の化合物からなるものが好ましく、前記縮合促進剤を構成する化合物が、前記元素のアルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩であることが更に好ましい。
【0009】
また、前記アルコキシシラン化合物が、一般式(I)
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基を示し、aは0〜2の整数であり、ORが複数ある場合、複数のORはたがいに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトンは含まれない。)
で表されるアルコキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物、及び一般式(II)
【化2】

(式中、Aはエポキシ、イソシアネート、イミン、シアノ、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、環状三級アミン、非環状三級アミン、ピリジン、シラザン及ビスルフィドの中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、Rは単結合又は二価の炭化水素基、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基を示し、bは0〜2の整数であり、ORが複数ある場合、複数のORはたがいに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトンは含まれない。)
で表されるアルコキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物、の中から選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0010】
さらに、前記縮合促進剤は、具体的には、下記(a)〜(e)から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
(a);ビスマスのカルボン酸塩
(b);ジルコニウムのアルコキシド
(c);ジルコニウムのカルボン酸塩
(d);アルミニウムのアルコキシド
(e);アルミニウムのカルボン酸塩
【0011】
また、本発明で用いる活性末端を有する共役ジエン系重合体としては、アニオン重合により合成されたもので、かつ他のモノマーが芳香族ビニル化合物であることが好ましく、また、前記ジエン系モノマーとしては、1,3−ブタジエン、イソプレンおよび2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンから選ばれる少なくとも1つの共役ジエン系化合物を挙げることができる。また、芳香族ビニル化合物としてはスチレンが好ましい。
【0012】
また、本発明によれば、上記した製造方法により得られた変性重合体が提供されるとともに、この変性重合体を含むゴム組成物が提供される。このようなゴム組成物としては、前記変性重合体を20質量%以上含むゴム成分100質量部に対し、シリカ及び/又はカーボンブラックを20〜120質量部配合してなるものが好ましい。
【0013】
また、上記ゴム組成物において、前記ゴム成分としては、前記変性重合体20〜100質量%と、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴムおよびハロゲン化ブチルゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種の他のゴム80〜0質量%〔ただし、変性重合体+他のゴム=100質量%〕からなるものが好ましく用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、得られる変性共役ジエン系重合体にシリカ及び/又はカーボンブラックを配合した場合において、加硫処理を施して加硫ゴムとしたときに、転がり抵抗が小さく、引張強度等の機械的特性、ウエットスキッド抵抗性及び耐摩耗性に優れたゴム組成物を提供できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
本発明の製造方法においては、ジエン系モノマーを単独で、又は他のモノマーとの共重合を、炭化水素溶媒中でアルカリ金属系開始剤を用いてアニオン重合させることにより、通常はビニル含量が10%以上の、アルカリ金属活性末端を有する共役ジエン系重合体を製造し、得られた共役ジエン系重合体のアルカリ金属活性末端に、アルコキシシラン化合物を反応させる変性反応を行う工程と、周期律表の4A族(Tiを除く。)、2B族、3B族及び5B族のうちの少なくとも一つに属する元素の化合物という特定の縮合促進剤の存在下で、縮合反応を行う工程とを備える。
【0016】
なお、縮合促進剤は、通常、共役ジエン系重合体の活性末端にアルコキシシラン化合物を添加し、変性反応させた後、縮合反応前に加えるが、アルコキシシラン化合物の添加前(変性反応前)に加えたのち、アルコキシシラン化合物を添加して変性反応後、縮合反応を行なってもよい。
【0017】
本発明の方法において用いられるアルカリ金属活性末端を有する共役ジエン系重合体は、ジエン系モノマーを単独で、又は他のモノマーと共重合して得られるものであり、その製造方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
また、共役ジエン系重合体の分子中に存在する活性部位の金属はアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる1種であることが好ましく、特にリチウム金属が好ましい。
【0018】
上記溶液重合法においては、例えばリチウム化合物を重合開始剤とし、共役ジエン化合物単独又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物をアニオン重合させることにより、目的の重合体を製造することができる。
さらには、ハロゲン含有モノマーを混在させ、ポリマー中のハロゲン原子を有機金属化合物によって活性化することも有効である。例えば、イソブチレン単位、パラメチルスチレン単位及びパラブロモメチルスチレン単位を含む共重合体の臭素部分をリチオ化して活性部位とすることも有効である。
【0019】
上記共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン;イソプレン;1,3−ペンタジエン;2,3−ジメチルブタジエン;2−フェニル−1,3−ブタジエン;1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
また、これらの共役ジエン化合物との共重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン;α−メチルスチレン;1−ビニルナフタレン;3−ビニルトルエン;エチルビニルベンゼン;ジビニルベンゼン;4−シクロヘキシルスチレン;2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、スチレンが特に好ましい。
【0020】
さらに、単量体として共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、それぞれ1,3−ブタジエン及ビスチレンの使用が、単量体の入手の容易さなどの実用性の面、及びアニオン重合特性がリビング性などの点で優れることなどから、特に好適である。
また、溶液重合法を用いた場合には、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。尚、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、仕込み単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含量は好ましくは3〜50質量%、さらには6〜45質量%の範囲が好ましい。
【0021】
重合開始剤のリチウム化合物としては、特に制限はないが、有機リチウム化合物及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者の有機リチウム化合物を用いる場合には、重合開始末端に炭化水素基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。
【0022】
上記有機リチウム化合物としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有するものが好ましく、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応性生物などが挙げられるが、これらの中で、n−ブチルリチウムおよびsec−ブチルリチウムが挙げられる。
【0023】
一方、リチウムアミド化合物としては、例えばリチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミドなどが挙げられる。これらの中で、カーボンブラックに対する相互作用効果及び重合開始能の点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミドなどの環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジド、リチウムピペリジドが好適である。
【0024】
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、二級アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することが多いが、重合系中(in−situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0,2〜20ミリモルの範囲で選定される。
【0025】
前記リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザ−の存在下にアニオン重合させることにより、目的の共役ジエン系重合体が得られる。
【0026】
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−へキサン、シクロへキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
また、所望により用いられるランダマイザーとは共役ジエン重合体のミクロ構造の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン部分の1,2結合、イソプレン重合体における3,4結合の増加など、あるいは共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物共重合体における単量体単位の組成分布の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ヒステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び三級アミン類などを挙げることができる。これらのランダマイザーは、一種を単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0028】
本発明で使用される開始剤の反応性を向上させようとする場合、あるいは重合体中に導入される芳香族ビニル化合物をランダムに配列するかまたは芳香族ビニル化合物の単連鎖を付与させようとする場合に、重合開始剤とともにカリウム化合物を添加してもよい。重合開始剤とともに添加されるカリウム化合物としては、例えばカリウムイソプロポキシド、カリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−アミロキシド、カリウム−n−ヘプタオキシド、カリウムベンジルオキシド、カリウムフェノキシドに代表されるカリウムアルコキシド、カリウムフェノキシド;イソバレリアン酸、カプリル酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレイン酸、安息香酸、フタル酸、2−エチルヘキサン酸などのカリウム塩;ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸のカリウム塩;亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジラウリルなどの、有機亜リン酸部分エステルのカリウム塩などが用いられる。
これらのカリウム化合物は、開始剤のアルカリ金属1グラム原子当量あたり、0.005〜0.5モルの量で添加できる。0.005モル未満では、カリウム化合物の添加効果(開始剤の反応性向上、芳香族ビニル化合物のランダム化または単連鎖付与)が現れず、一方0.5モルを超えると、重合活性が低下し、生産性を大幅に低下させることになるとともに、重合体末端を官能基で変性する反応を行なう際の変性効率が低下する。
【0029】
この重合反応における温度は、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜120℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つに十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合媒体及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0030】
この重合においては、重合開始剤、溶媒、単量体など、重合に関与する全ての原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物などの反応阻害物質を除去したものを用いることが望ましい。
尚、エラストマーとして重合体を得る場合は、得られる重合体又は共重合体の、示差熱分析法により求めたガラス転移点(Tg)が−90℃〜0℃であることが好ましい。ガラス転移点が−90℃未満の重合体を得るのは困難であり、また0℃を超える場合には室温領域で粘度が高くなりすぎ、取り扱いが困難となる場合がある。
【0031】
本発明においては、まず、上記のように得られた、例えばビニル含量が10%以上の共役ジエン系重合体に対して、その活性末端にアルコキシシラン化合物を反応させる変性反応を行う。変性反応に用いるアルコキシシラン化合物(以下「変性剤」ともいう)としては、特にその種類を限定するものではないが、例えば、一般式(I)
【化3】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基を示し、aは0〜2の整数であり、ORが複数ある場合、複数のORはたがいに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトンは含まれない。)
で表されるアルコキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物、及び一般式(II)
【化4】

(式中、Aはエポキシ、イソシアネート、イミン、シアノ、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、環状三級アミン、非環状三級アミン、ピリジン、シラザン及ビスルフィドの中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、Rは単結合又は二価の炭化水素基、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基を示し、bは0〜2の整数であり、ORが複数ある場合、複数のORはたがいに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトンは含まれない。)
で表されるアルコキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物、の中から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0032】
ここで、部分縮合物とは、アルコキシシラン化合物のSiOR基の一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。
上記の変性反応においては、使用する重合体は、少なくとも20%のポリマー鎖がリビング性を有するものが好ましい。
【0033】
重合体の活性部位との反応に用いられる前記一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラーtert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトリジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン等が挙げることができるが、これらの中で、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン及びジメチルジエトキシシランが好適である。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせても用いてもよい。
【0034】
重合体の活性部位との反応に用いられる前記一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物の具体例としては、例えば、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物としては、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2−グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランを好ましく挙げることができるが、これらの中で、特に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好適である。
【0035】
イソシアネート基含有アルコキシシラン化合物としては、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられ、これらのうち、特に好ましいのは3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランである。
【0036】
イミン基含有アルコキシシラン化合物としては、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)―1−プロパンアミン、N−(1,3−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)―1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)―1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)―1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)―1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)―1−プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が好ましく挙げることができるが、これらの中で特に、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)―1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)―1−プロパンアミンが好適である。また、イミン(アミジン)基含有化合物としては、1−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕−4,5−ジヒドロイミダゾール、3−〔10−(トリエトキシシリル)デシル〕−4−オキサゾリン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−イソプロポキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールなどを好ましく挙げられ、その中でも、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−イソプロポキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールが好ましい。
【0037】
カルボン酸エステル含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、3−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリイソプロポイキシシラン等が挙げられ、その中で、3−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0038】
カルボン酸無水物含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられ、その中でも、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物が好ましい。
【0039】
シアノ基含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、2−シアノエチルプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
環状三級アミン含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピルトリメトキシシラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチルトリエトキシシラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチルトリメトキシシラン、2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチルトリエトキシシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチルトリメトキシシラン、3−(1−ピロリジニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(1−ピロリジニル)プロピルトリエトキシシラン、3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピルジエトキシメチルシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピルジエトキシエチルシラン、3−[10−(トリエトキシシリル)デシル]−4−オキサゾリン等が挙げることができるが、これらの中で、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピルトリエトキシシラン及び(1−ヘキサメチレンイミノ)メチルトリエトキシシランを好ましく挙げることができる。
【0041】
非環状三級アミン含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、
3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−ジブチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの中で、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン及び3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランが好適である。
ピリジン含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、2−トリメトキシシリルエチルピリジン等が挙げられる。
【0042】
シラザン含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシランおよびN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシランなどを挙げることができ、好ましくは、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランまたは1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
【0043】
スルフィド含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及びビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0044】
これらのアルコキシシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記したアルコキシシラン化合物の部分縮合物も用いることができる。
尚、この変性反応において、重合体の活性部位との反応に用いられるアルコキシシラン化合物として、前記一般式(I)及び(II)で表されるアルコキシシラン化合物を任意に混合して用いることもできる。
【0045】
上記変性剤による変性反応において、上記アルコキシシラン化合物の使用量は、アニオン重合により得られた重合体の活性部位に対し、0.1モル等量以上加えることが好ましく、更に好ましくは、0.3モル等量以上である。0.1モル等量未満では、変性反応の進行が十分でなく、充填剤の分散性が充分に改良されず、加硫後の機械特性、耐摩耗性、低発熱性に劣る。
なお、上記変性剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法などが挙げられるが、一括して添加する方法が好ましい。
【0046】
本発明における変性反応は、溶液反応(重合時に使用した未反応モノマーを含んだ溶液でもよい)で行うことが好ましい。
変性反応の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いて行ってもよく、多段連続式反応器やインラインミキサなどの装置を用いて連続式で行ってもよい。また、該変性反応は、重合反応終了後、脱溶媒処理、水処理、熱処理、重合体単離に必要な諸操作などを行う前に実施することが肝要である。
【0047】
変性反応の温度は、共役ジエン系重合体の重合温度をそのまま用いることができる。具体的には0℃〜120℃が好ましい範囲として挙げられる。さらに好ましくは、20〜100℃である。温度が低くなると重合体の粘度が上昇する傾向があり、温度が高くなると重合活性末端が失活し易くなるので好ましくない。
また、変性反応時間は、通常、1分〜5時間、好ましくは2分〜1時間である。
本発明においては、この変性反応時に、所望により、公知の老化防止剤や反応停止剤を、重合体の活性末端にアルコキシシラン化合物残基を導入した後の工程において、添加することができる。
【0048】
本発明で用いる縮合促進剤は、周期律表の4A族(Tiを除く。)、2B族、3B族及び5B族のうちの少なくとも一つに属する元素の化合物からなるものである。具体的にいうと、前記縮合促進剤は、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、又はアルミニウム(Al)の化合物からなるものであり、この化合物としては、前記元素のアルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩であることが好ましく、その中でも、下記(a)〜(e)から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
(a);ビスマスのカルボン酸塩
(b);ジルコニウムのアルコキシド
(c);ジルコニウムのカルボン酸塩
(d);アルミニウムのアルコキシド
(e);アルミニウムのカルボン酸塩
【0049】
具体的な縮合促進剤としては、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス、テトラエトキシジルコニウム、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトラi−プロポキシジルコニウム、テトラn−ブトキシジルコニウム、テトラsec−ブトキシジルコニウム、テトラtert−ブトキシジルコニウム、テトラ(2−エチルヘキシル)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム、トリエトキシアルミニウム、トリn−プロポキシアルミニウム、トリi−プロポキシアルミニウム、トリn−ブトキシアルミニウム、トリsec−ブトキシアルミニウム、トリtert−ブトキシアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウムなどを挙げることができるが、これらの中で、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトラn−ブトキシジルコニウム、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、トリi−プロポキシアルミニウム、トリsec−ブトキシアルミニウム、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)が好適である。
【0050】
この縮合促進剤の使用量としては、上記化合物のモル数が、反応系内に存在するアルコキシシリル基総量に対するモル比として、0.1〜10となることが好ましく、0.5〜5が特に好ましい。0.1未満では、縮合反応が十分に進行せず、一方、10を超えて使用しても、縮合促進剤としての効果は飽和しており、経済上好ましくない。
【0051】
本発明における縮合反応は、水の存在下で行うことが好ましい。水としては、単体やアルコール等の溶液、炭化水素溶媒中の分散ミセル等の形態にして使用してもよい。直接、変性重合体又はその溶液を水に接触させてもよい。また、固体表面の吸着水や水和物の水和水等の、反応系中で水を放出し得る化合物が潜在的に含んだ水分も有効に用いることができる。従って、吸着水を持つ固体や、水和物など、容易に水を放出することができる化合物を上記有機金属化合物と併用することもできる。
【0052】
縮合反応時の温度は20〜1180℃が好ましく、さらに好ましくは30〜160℃、特に好ましくは50〜150℃である。
縮合反応時の温度が20℃未満の場合は、縮合反応の進行が遅く、縮合反応を完結することができなくなるおそれがあるため、得られる変性共役ジエン系重合体に経時変化が発生し、品質上問題となる場合がある。一方、180℃を超えると、ポリマーの老化反応が進行し物性を低下させる場合があるので好ましくない。
【0053】
なお、縮合反応時間は、通常、5分〜10時間、好ましくは15分〜5時間程度である。5分未満では、縮合反応が完結せず、一方、10時間を超えても縮合反応が飽和している為好ましくない。
なお、縮合反応時の反応系の圧力は、通常、0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜10MPaである。
縮合反応の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いても、多段連続式反応器などの装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この縮合反応と脱溶媒を同時に行っても良い。
上記の如く縮合処理したのち、従来公知の後処理を行い、目的の変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0054】
本発明において得られる変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは15〜130である。ムーニー粘度が低くなると破壊特性を始めとするゴム物性が低下する傾向にあり、一方高くなると作業性が悪く配合剤とともに混練りすることが困難である。
【0055】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、上記変性共役ジエン系重合体を少なくとも20質量%含むことが好ましい。この量が20質量%未満では、所望の物性を有するゴム組成物が得られにくく、本発明の目的が達せられない場合がある。ゴム成分中の該変性共役ジエン系重合体のより好ましい含有量は30質量%以上であり、特に40質量%以上が好適である。
【0056】
この変性共役ジエン系重合体は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、この変性共役ジエン系重合体と併用される他のゴム成分としては、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴムおよびこれらの混合物などが挙げられる。また、その一部が多官能型、例えば四塩化スズ、四塩化珪素のような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているものでもよい。
【0057】
本発明のゴム組成物は、充填剤としてシリカ及び/又はカーボンブラックを含有することが好ましい。
シリカとしては特に制限はなく、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられ、これらの中でも耐破壊特性の改良効果、ウェットグリップ性および低転がり抵抗性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。
【0058】
カーボンブラックとしても特に制限はなく、例えばSRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが用いられ、ヨウ素吸着量(IA)が60mg/g以上、かつジブチルフタレート吸油量(DBP)が80ml/100g以上のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックを用いることにより、グリップ性能および耐破壊特性の改良効果は大きくなるが、耐摩耗性に優れるHAF、ISAF、SAFは特に好ましい。
シリカ及び/又はカーボンブラックは、1種用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
シリカ及び/又はカーボンブラックは、ゴム成分100質量部に対して、20〜120質量部配合されることが好ましく、補強性とそれによる諸物性の改良効果の観点から25〜100質量部がさらに好ましい。この量が少ないと耐破壊特性などの向上効果が十分でなく、多いとゴム組成物の加工性が劣る傾向がある。
本発明のゴム組成物としては、上記方法により得られた変性共役ジエン系重合体を含むものであり、通常、変性共役ジエン系重合体を少なくとも20質量%を含むゴム成分と、その100質量部当たり、シリカ及び/又はカーボンブラック20〜120質量部を含む組成物が好ましく用いられ、さらに好ましくは25〜100質量部を含む組成物が用いられる。
【0060】
本発明のゴム組成物においては、補強用充填剤としてシリカを用いる場合、その補強性をさらに向上させる目的で、シランカップリッグ剤を配合することができる。このシランカップリング剤としては、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N、N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N、N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N、N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N、N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどが挙げられるが、これらの中で補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドおよび3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドが好適である。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0061】
本発明のゴム組成物においては、ゴム成分として、分子末端にシリカとの親和性の高い官能基が導入された変性重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量は、通常の場合より低減することができる。好ましいシランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の種類などにより異なるが、シリカに対して、通常、1〜20質量%の範囲で選定される。この量が少ないとカップリング剤としての効果が充分に発揮されにくく、また、多いとゴム成分のゲル化を引き起こすおそれがある。カップリング剤としての効果およびゲル化防止などの点から、このシランカップリング剤の好ましい配合量は、3〜15質量%の範囲である。
【0062】
本発明のゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常、ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを含有させることができる。
また、本発明のゴム組成物は、ロールなどの開放式混練機、バンバリーミキサーなどの密閉式混練機などの混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後に加硫を行ない、各種ゴム製品に適用可能である。例えば、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ用途を始め、防振ゴム、防舷材,ベルト、ホースその他の工業品などの用途に用いることができるが、特にタイヤトレッド用ゴムとして好適に使用される。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。
なお、実施例中、部および%は特に断らないかぎり質量基準である。
また、実施例中の各種の測定は下記の方法に拠った。
(1)共役ジオレフィン部分のビニル含量
270MHzH−NMRによって求めた。
(2)結合スチレン含量
270MHzH−NMRによって求めた。
(3)ガラス転移温度(℃)
ASTM D3418に従って求めた。
【0064】
(4)ムーニー粘度(ML1+4,100℃)
JIS K6300に従って、Lローター、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃で求めた。
【0065】
(5)加硫ゴムの物性評価
共重合体を用い、表3に示す配合処方に従って、250ccラボプラストミルで混練りしたのち、145℃で所定時間、加硫を行った加硫ゴムを用いて下記(イ)〜(ハ)の各種測定を行った。
(イ)引張強度(300%モジュラス):JIS K6301に従って測定した。指数で表示し、数値が大きいほど、ウエットスキッド抵抗性指数で表示し、数値が大きいほど、引張強度が大きく、良好である。
(ロ)tanδ(50℃)、tanδ(0℃):tanδ(50℃)は、米国レオメトリックス社製の動的スペクトロメーターを使用し、引張動歪1%、周波数10Hz、50℃の条件で測定した。指数で表示し、数値が大きいほど、転がり抵抗が小さく、良好である。また、tanδ(0℃)は、同機器を使用し、引張動歪0.1%、周波数10Hz、0℃で測定した。指数で表示し、数値が大きいほど、ウエットスキッド抵抗性が大きく良好である。
(ハ)耐摩耗性(ランボーン摩耗指数):ランボーン型摩耗試験機を用い、スリップ率が25%の摩耗量で表し、また、測定温度は室温とした。指数が大きいほど、耐摩耗性は良好である。
【0066】
実施例1(共重合体Aの合成):
窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2,750g、テトラヒドロフラン41.3g、スチレン125g、1,3−ブタジエン375gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム215mgを添加して重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達した時点で、ブタジエン10gを追加し、更に5分間重合させた。リアクター中のポリマー溶液を、メタノール1gを添加したシクロヘキサン溶液30g中に少量サンプリングした後、変性剤としてメチルトリエトキシシラン600mgを加えて、変性反応を15分間行った。この後、縮合促進剤としてビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウム3.97gを加え、更に15分間攪拌した。最後に反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールによりゴムを乾燥し、生ゴム共重合体を得た。得られた共重合体の組成および物性を表1及び表2に示す。
【0067】
実施例2(共重合体Bの合成):
実施例1において、ビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウム3.97gをトリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス6.45gに変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合体Bを得た。得られた共重合体Bの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0068】
実施例3(共重合体Cの合成):
実施例1において、ビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウム3.97gをトリ−sec−ブトキシアルミニウム2.49gに変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合体Cを得た。得られた共重合体Cの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0069】
比較例1〜3(共重合体D〜Fの合成):
実施例1において、添加剤を表1に示すものに変更したこと(比較例1においては添加剤なし)以外は、実施例1と同様にして、共重合体DおよびE、Fを得た。得られた共重合体の組成および物性を表1及び表2に示す。
【0070】
実施例4(共重合体Gの合成):
実施例1において、変性剤を3−グリシジドオキシプロピルトリメトキシシラン803mgに変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合体Gを得た。得られた共重合体Gの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0071】
実施例5(共重合体Hの合成):
実施例4において、ビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウム3.97gをトリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス6.45gに変更した以外は、実施例4と同様にして、共重合体Hを得た。得られた共重合体Hの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0072】
比較例4(共重合体Iの合成):
実施例4において、ビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウムを添加しない以外は、実施例4と同様にして、共重合体Iを得た。得られた共重合体Iの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0073】
実施例6(共重合体Jの合成):
実施例1において、変性剤を3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン832mgに変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合体Jを得た。得られた共重合体Jの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0074】
実施例7(共重合体Kの合成):
実施例6において、ビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウム3.97gをトリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス6.45gに変更した以外は、実施例6と同様にして、共重合体Kを得た。得られた共重合体Kの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0075】
比較例5(共重合体Lの合成):
実施例6において、ビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウムを添加しない以外は、実施例6と同様にして、共重合体Lを得た。得られた共重合体Lの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0076】
実施例8(共重合体Mの合成):
実施例1において、変性剤をN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン1231mgに変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合体Mを得た。得られた共重合体Mの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0077】
実施例9(共重合体Nの合成):
実施例8において、ビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウム3.97gをトリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス6.45gに変更した以外は、実施例8と同様にして、共重合体Nを得た。得られた共重合体Nの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0078】
実施例10(共重合体Oの合成):
実施例8において、ビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウム3.97gをトリ−sec−ブトキシアルミニウム2.49gに変更した以外は、実施例8と同様にして、共重合体Oを得た。得られた共重合体Oの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0079】
比較例6〜8(共重合体P〜Rの合成):
実施例8において、添加剤を表1に示すものに変更したこと(比較例6は添加剤なし)以外は、実施例8と同様にして、共重合体PおよびQ、Rを得た。得られた共重合体の組成および物性を表1及び表2に示す。
【0080】
実施例11(共重合体Sの合成):
実施例1において、変性剤をN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−2−プロパンアミン1019mgに変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合体Sを得た。得られた共重合体Sの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0081】
実施例12(共重合体Tの合成):
実施例11において、ビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウム3.97gをトリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス6.45gに変更した以外は、実施例11と同様にして、共重合体Tを得た。得られた共重合体Tの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0082】
比較例9(共重合体Uの合成):
実施例11において、ビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウムを添加しない以外は、実施例11と同様にして、共重合体Uを得た。得られた共重合体Uの組成および物性を表1及び表2に示す。
【0083】
実施例13〜24および比較例10〜18:
実施例1〜5および比較例1〜4の重合体A〜Iを用いて、表3によりシリカ及びカーボンブラック配合ゴム組成物を調製した。なお、表4において、比較例19の重合体V(*1)はJSR社製の市販のSBR(JSR SL563)である。
これらの未加硫ゴム組成物について加硫し、得られた加硫ゴムの物性評価を行った。その結果を表4に示す。なお、表4においては、比較例19を100とし、数値の大なるほど良好であることを示している。
【0084】
実施例13〜24と比較例10〜18の結果より、縮合促進剤としてビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ビスマス、トリ−sec−ブトキシアルミニウムを添加することにより、引張強度に優れるとともに、転がり抵抗が小さく、ウエットスキッド抵抗性及び耐摩耗性が大きく改良していることが分かる。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
実施例25〜29および比較例20〜24:
実施例8〜12及び比較例6〜9の重合体J〜Uを用いて、表5に記載の配合によりカーボンブラック配合ゴム組成物を調製した。なお、表5において比較例24の重合体V(*1)はJSR社製の市販のSBR(JSR SL563)である。
これらの未加硫ゴム組成物について加硫し、得られた加硫ゴムの物性評価を行った。その結果を表6に示す。なお、表6においては、比較例24を100とし、数値の大なるほど良好であることを示している。
【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
実施例25〜29と比較例20〜24の結果より、縮合促進剤としてビス(2−エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ビスマス、トリ−sec−ブトキシアルミニウムを添加することにより、カーボンブラック配合ゴム組成物においても引張強度が優れるとともに、転がり抵抗が小さく、ウエットスキッド抵抗性及び耐摩耗性が大きく改良されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、得られる変性共役ジエン系重合体にシリカ及び/又はカーボンブラックを配合した場合において、加硫処理を施して加硫ゴムとしたときに、転がり抵抗が小さく、引張強度、ウエットスキッド抵抗性及び耐摩耗性に優れたゴム組成物が得られる。
したがって、本発明で得られる変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物は、例えば、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ用途を始め、防振ゴム、防舷材、ベルト、ホースその他の工業品などの用途に用いることができるが、特にタイヤトレッド用ゴムとして好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系モノマーを単独で、又は他のモノマーと併用し、炭化水素溶媒中でアルカリ金属系開始剤を用いてアニオン重合させることにより得られる、アルカリ金属活性末端を有する共役ジエン系重合体の該活性末端に、アルコキシシラン化合物を反応させる変性反応を行う工程と、周期律表の4A族(Tiを除く。)、2B族、3B族及び5B族のうちの少なくとも一つに属する元素の化合物からなる縮合促進剤の存在下で、縮合反応を行う工程とを備える、変性重合体の製造方法。
【請求項2】
前記縮合促進剤が、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、又はアルミニウム(Al)の化合物からなる請求項1記載の変性重合体の製造方法。
【請求項3】
前記縮合促進剤を構成する化合物が、前記元素のアルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩である請求項1又は2に記載の変性重合体の製造方法。
【請求項4】
前記アルコキシシラン化合物が、一般式(I)
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基を示し、aは0〜2の整数であり、ORが複数ある場合、複数のORはたがいに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトンは含まれない。)
で表されるアルコキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物、及び一般式(II)
【化2】

(式中、Aはエポキシ、イソシアネート、イミン、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、環状三級アミン、非環状三級アミン、ピリジン、シラザン及ビスルフィドの中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、Rは単結合又は二価の炭化水素基、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基を示し、bは0〜2の整数であり、ORが複数ある場合、複数のORはたがいに同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトンは含まれない。)
で表されるアルコキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物、の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性重合体の製造方法。
【請求項5】
前記縮合促進剤が、下記(a)〜(e)から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の変性重合体の製造方法。
(a);ビスマスのカルボン酸塩
(b);ジルコニウムのアルコキシド
(c);ジルコニウムのカルボン酸塩
(d);アルミニウムのアルコキシド
(e);アルミニウムのカルボン酸塩
【請求項6】
前記重合体がアニオン重合により合成されたものであり、かつ前記他のモノマーが芳香族ビニル化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性重合体の製造方法。
【請求項7】
前記ジエン系モノマーが、1,3−ブタジエン、イソプレンおよび2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンから選ばれる少なくとも1つの共役ジエン系化合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の変性重合体の製造方法。
【請求項8】
前記芳香族ビニル化合物がスチレンである請求項6又は7に記載の変性重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法により得られた変性重合体。
【請求項10】
請求項9記載の変性重合体を含むゴム組成物。
【請求項11】
請求項9記載の変性重合体を20質量%以上含むゴム成分100質量部に対し、シリカ及び/又はカーボンブラックを20〜120質量部配合してなるゴム組成物。
【請求項12】
前記ゴム成分が、前記変性重合体20〜100質量%と、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴムおよびハロゲン化ブチルゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種の他のゴム80〜0質量%〔ただし、変性重合体+他のゴム=100質量%〕からなる請求項10又は11記載のゴム組成物。

【公開番号】特開2008−106118(P2008−106118A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289456(P2006−289456)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】