説明

変速機における変速操作装置

【課題】変速機の変速機ケース内において、後進変速段を得るために設けられたリバースアイドル歯車の周りの空間を、他の構成部品の配置などのために、より広く利用できるようにする。
【解決手段】カウンタ軸9に対しリバース歯車13を軸方向に移動可能となるよう支持させる。長手方向の中途部を中心として往、復回動A可能となるよう変速機ケース2に枢支されると共にシフトレバー20に連結させる連動レバー26を設ける。この連動レバー26の一端部27をリバース歯車13に係合させる一方、他端部28をリバースアイドル歯車15に係合させる。連動レバー26に連動するリバース歯車13とリバースアイドル歯車15とがその軸方向でそれぞれ互いに接近、離反移動して、出力歯車12およびリバース歯車13と、リバースアイドル歯車15とが互いに噛合、噛合解除するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに平行に配置されるメイン軸上の出力歯車およびリバース歯車と、リバースアイドル歯車との互いの歯車により後進変速段が得られるようにした変速機における変速操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変速機には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、上記変速機は、変速機ケース内に設けられ互いに平行に延びて上記変速機ケースに支持されるメイン軸、カウンタ軸、およびリバースアイドル軸と、上記メイン軸に支持される出力歯車と、上記カウンタ軸に支持されるリバース歯車と、上記リバースアイドル軸に軸方向に移動可能となるよう支持されるリバースアイドル歯車とを備えている。
【0003】
そして、上記軸方向の所定位置に固定された上記出力歯車およびリバース歯車に対し、上記リバースアイドル歯車が上記軸方向で接近、離反移動することにより、上記出力歯車およびリバース歯車に対し上記リバースアイドル歯車が噛合、噛合解除可能に噛合して後進変速段が得られるようになっている。
【特許文献1】特開2005−195151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の技術において、上記変速機ケース内で、リバースアイドル歯車の軸方向における近傍域に他の構成部品を配置しようとするなどの理由により、このリバースアイドル歯車の周りの空間を、より広く利用できるようにしたい場合がある。
【0005】
しかし、上記従来の技術では、後進変速段を得るために、上記リバース歯車およびリバース歯車軸をそれぞれその軸方向に固定して、上記リバースアイドル歯車のみを軸方向に移動させるようにしている。このため、このリバースアイドル歯車の移動軌跡を含む占有空間が大きくなって、このリバースアイドル歯車の周りの余剰空間が狭められがちとなる。よって、このリバースアイドル歯車の周りの空間を、より広く利用できるようにする、ということは容易でない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、変速機の変速機ケース内において、後進変速段を得るために設けられたリバースアイドル歯車の周りの空間を、他の構成部品の配置などのために、より広く利用できるようにすることである。
【0007】
請求項1の発明は、互いに平行に延びて変速機ケース2に支持されるメイン軸8、カウンタ軸9、およびリバースアイドル軸10と、上記メイン軸8に支持される出力歯車12と、上記カウンタ軸9に支持されるリバース歯車13と、上記リバースアイドル軸10に軸方向に移動可能となるよう支持されるリバースアイドル歯車15とを備え、上記出力歯車12およびリバース歯車13と、上記リバースアイドル歯車15とが互いに噛合して後進変速段が得られるようにした変速機において、
上記カウンタ軸9に対し上記リバース歯車13を軸方向に移動可能となるよう支持させ、長手方向の中途部を中心として往、復回動A可能となるよう上記変速機ケース2に枢支されると共にシフトレバー20に連結させる連動レバー26を設け、この連動レバー26の一端部27を上記リバース歯車13に係合させる一方、他端部28を上記リバースアイドル歯車15に係合させ、上記連動レバー26に連動する上記リバース歯車13とリバースアイドル歯車15とがその軸方向でそれぞれ互いに接近、離反移動して、上記出力歯車12およびリバース歯車13と、上記リバースアイドル歯車15とが互いに噛合、噛合解除するようにしたことを特徴とする変速機における変速操作装置である。
【0008】
請求項2の発明は、上記リバース歯車13にスリーブ14を一体的に形成し、このスリーブ14を介し上記リバース歯車13に上記連動レバー26の一端部27を係合させ、この連動レバー26に連動させて上記リバース歯車13を上記リバースアイドル歯車15からその軸方向で離反移動させることにより前進変速段が得られるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の変速機における変速操作装置である。
【0009】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明による効果は、次の如くである。
【0011】
請求項1の発明は、互いに平行に延びて変速機ケースに支持されるメイン軸、カウンタ軸、およびリバースアイドル軸と、上記メイン軸に支持される出力歯車と、上記カウンタ軸に支持されるリバース歯車と、上記リバースアイドル軸に軸方向に移動可能となるよう支持されるリバースアイドル歯車とを備え、上記出力歯車およびリバース歯車と、上記リバースアイドル歯車とが互いに噛合して後進変速段が得られるようにした変速機において、
上記カウンタ軸に対し上記リバース歯車を軸方向に移動可能となるよう支持させ、長手方向の中途部を中心として往、復回動可能となるよう上記変速機ケースに枢支されると共にシフトレバーに連結させる連動レバーを設け、この連動レバーの一端部を上記リバース歯車に係合させる一方、他端部を上記リバースアイドル歯車に係合させ、上記連動レバーに連動する上記リバース歯車とリバースアイドル歯車とがその軸方向でそれぞれ互いに接近、離反移動して、上記出力歯車およびリバース歯車と、上記リバースアイドル歯車とが互いに噛合、噛合解除するようにしている。
【0012】
即ち、上記リバース歯車とリバースアイドル歯車とがその軸方向でそれぞれ互いに接近移動して噛合することにより後進変速段が得られるため、上記出力歯車およびリバース歯車に対しリバースアイドル歯車のみが移動して後進変速段が得られるとされていた従来の技術に比べて、上記リバースアイドル歯車の移動軌跡を含む占有空間が小さくなる。よって、このリバースアイドル歯車の周りの空間を他の構成部品の配置などのために、より広く利用することができる。
【0013】
請求項2の発明は、上記リバース歯車にスリーブを一体的に形成し、このスリーブを介し上記リバース歯車に上記連動レバーの一端部を係合させ、この連動レバーに連動させて上記リバース歯車を上記リバースアイドル歯車からその軸方向で離反移動させることにより前進変速段が得られるようにしている。
【0014】
このため、上記リバース歯車とスリーブとを個別に設けることに比べて、これらの占有空間を小さくできる。しかも、上記したように、リバース歯車は後進変速段に加え前進変速段も得られるように兼用されている。よって、このリバース歯車の移動軌跡を含む占有空間も小さくできて、その分、上記リバースアイドル歯車の周りの空間を更に広く利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の変速機における変速操作装置に関し、変速機の変速機ケース内において、後進変速段を得るために設けられたリバースアイドル歯車の周りの空間を、他の構成部品の配置などのために、より広く利用できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0016】
即ち、変速機は、変速機ケース内に設けられ各軸心が互いに平行に延びて上記変速機ケースに支持されるメイン軸、カウンタ軸、およびリバースアイドル軸と、上記メイン軸に支持される出力歯車と、上記カウンタ軸に支持されるリバース歯車と、上記リバースアイドル軸に軸方向に移動可能となるよう支持されるリバースアイドル歯車とを備えている。上記出力歯車およびリバース歯車と、上記リバースアイドル歯車とが互いに噛合、噛合解除可能に噛合して後進変速段が得られることとされている。
【0017】
上記カウンタ軸に対し上記リバース歯車が軸方向に移動可能となるよう支持される。長手方向の中途部を中心として往、復回動可能となるよう上記変速機ケースに枢支されると共にシフトレバーに連結させる連動レバーが設けられる。この連動レバーの一端部が上記リバース歯車に係合される一方、他端部が上記リバースアイドル歯車に係合される。上記連動レバーに連動する上記リバース歯車とリバースアイドル歯車とがその軸方向でそれぞれ互いに接近、離反移動して、上記出力歯車およびリバース歯車と、上記リバースアイドル歯車とが互いに噛合、噛合解除される。
【実施例】
【0018】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0019】
図1において、符号1は車両に搭載される変速機であり、これはエンジンの駆動力を変速して、駆動車輪に伝達可能とする。
【0020】
上記変速機1は、その外殻を構成して車体に支持される変速機ケース2と、この変速機ケース2内に設けられ、5段の前進変速段と、後進変速段とを得ることができる変速機本体3とを備えている。
【0021】
上記変速機本体3は、上記変速機ケース2内に設けられ、各軸心5−7が互いに水平かつ平行に延びて上記変速機ケース2に支持されるメイン軸8、カウンタ軸9、およびリバースアイドル軸10とを備えている。上記エンジン側にメイン軸8が連結され、上記カウンタ軸9に上記駆動車輪側が連結される。
【0022】
上記メイン軸8に固着されて、このメイン軸8と共にその軸心5回りに回転可能とされる出力歯車12が設けられている。上記カウンタ軸9には、このカウンタ軸9の軸方向にのみ移動可能となるようスプライン嵌合し、かつ、このカウンタ軸9と共に軸心6回りで回転可能とされるリバース歯車13が支持されている。このリバース歯車13の軸方向の一側面には、このリバース歯車13と同じ軸心6上に位置するスリーブ14が一体的に形成されている。
【0023】
上記リバースアイドル軸10には、このリバースアイドル軸10の軸方向に移動可能となるようこのリバースアイドル軸10に支持され、かつ、その軸心7回りに遊転可能とされるリバースアイドル歯車15が設けられている。このリバースアイドル歯車15の軸方向の一側面には、このリバースアイドル歯車15と同じ軸心7上に位置するスリーブ16が一体的に形成されている。
【0024】
運転者の手動による変速操作により、上記変速機本体3の各変速段のうち、所望の変速段が得られるようにする変速操作装置19が設けられている。以下、この変速操作装置19につき説明する。
【0025】
上記変速操作装置19は、運転者が把持して変速操作するシフトレバー20を備えている。このシフトレバー20は、変速パターン21に従って変速操作可能となるよう上記変速機ケース2側に枢支されている。即ち、上記シフトレバー20は、上記変速パターン21のセレクト方向SEに移動可能とされている。また、このセレクト方向SEにおける各端部と中央部とから上記セレクト方向SEに直交する各シフト方向SHに向かって往復移動可能とされている。
【0026】
そして、上記シフトレバー20の移動により、上記変速パターン21の図示表示「1st−R」に相当する前進変速段の第1−第5変速段と後進変速段との各シフト位置のうち、所望のシフト位置にシフトレバー20を位置させれば、これに相応する所望の変速段が得られるようになっている。
【0027】
長手方向の中途部を中心として往、復回動A可能となるよう上記変速機ケース2に、直接、もしくは間接に枢支軸24により枢支されると共に、上記シフトレバー20に連動機構25を介し連結される連動レバー26が設けられている。この連動レバー26の一端部27が上記リバース歯車13のスリーブ14に係合させられる一方、他端部28が上記リバースアイドル歯車15のスリーブ16に係合させられている。
【0028】
上記シフトレバー20がセレクト方向SEで移動する場合には、このシフトレバー20に連動機構25を介し上記連動レバー26は連動しないこととされ、かつ、上記各歯車12,13,15は互いに噛合しない「中立状態」とされる(図1中実線)。
【0029】
上記「中立状態」から、上記シフトレバー20を操作して上記変速パターン21の「5th」に移動させると、上記シフトレバー20に連動機構25を介し連動レバー26が連動する。そして、この連動レバー26に連動するリバース歯車13が上記リバースアイドル歯車15からその軸方向で離反移動するよう一方向Bに移動して(図1中二点鎖線)、不図示の他の変速構成部品と係合し、前進変速段である第5変速段が得られるようになっている。なお、この場合、上記連動レバー26に連動するリバースアイドル歯車15は、上記一方向Bとは反対の他方向Cに移動する(図1中二点鎖線)。
【0030】
また、上記シフトレバー20を、上記「5th」からセレクト方向SE側に戻せば、上記とは逆の動作により、上記「中立状態」に戻る。
【0031】
一方、上記「中立状態」から、上記シフトレバー20を操作して上記変速パターン21の「R」に移動させると、上記シフトレバー20に連動機構25を介し連動レバー26が連動する。そして、この連動レバー26に連動するリバース歯車13が上記他方向Cに移動し(図1中一点鎖線)、その一方、上記連動レバー26に連動するリバースアイドル歯車15が上記一方向Bに移動する(図1中一点鎖線)。つまり、これらリバース歯車13とリバースアイドル歯車15とはその軸方向でそれぞれ互いに接近移動して互いに噛合し、また、この際、上記リバースアイドル歯車15は上記出力歯車12に噛合する。これにより、上記メイン軸8の駆動力が上記出力歯車12、リバースアイドル歯車15、およびリバース歯車13を順次介して上記カウンタ軸9に伝達され、後進変速段が得られることとされる。
【0032】
また、上記シフトレバー20を、上記「R」からセレクト方向SE側に戻せば、このシフトレバー20に連動機構25を介し連動レバー26が連動する。そして、この連動レバー26に連動するリバース歯車13が上記一方向Bに移動し(図1中実線)、その一方、上記連動レバー26に連動するリバースアイドル歯車15が上記他方向Cに移動する(図1中実線)。つまり、これらリバース歯車13とリバースアイドル歯車15とはその軸方向でそれぞれ互いに離反移動して互いに噛合解除され、また、この際、上記出力歯車12に対しリバースアイドル歯車15も噛合解除されて、上記「中立状態」に戻る。
【0033】
上記構成によれば、リバース歯車13とリバースアイドル歯車15とがその軸方向でそれぞれ互いに接近移動して噛合することにより後進変速段が得られるため、上記出力歯車12およびリバース歯車13に対しリバースアイドル歯車15のみが移動して後進変速段が得られるとされていた従来の技術に比べて、上記リバースアイドル歯車15の移動軌跡を含む占有空間が小さくなる。よって、このリバースアイドル歯車15の周りの空間を他の構成部品の配置などのために、より広く利用することができる。
【0034】
また、前記したように、上記リバース歯車13にスリーブ14を一体的に形成し、このスリーブ14を介し上記リバース歯車13に上記連動レバー26の一端部27を係合させ、この連動レバー26に連動させて上記リバース歯車13を上記リバースアイドル歯車15からその軸方向で離反移動させることにより前進変速段が得られるようにしている。
【0035】
このため、上記リバース歯車13とスリーブ14とを個別に設けることに比べて、これらの占有空間を小さくできる。しかも、上記したように、リバース歯車13は後進変速段に加え前進変速段も得られるように兼用されている。よって、このリバース歯車13の移動軌跡を含む占有空間も小さくできて、その分、上記リバースアイドル歯車15の周りの空間を更に広く利用することができる。
【0036】
なお、以上は図示の例によるが、前進変速段につき、第5変速段を設けずに、第1−第4変速段のみを設けてもよい。また、上記前進変速段に第6変速段「6th´」を追加し、図1中一点鎖線で示すように、セレクト方向SEを延長して、その延長端からシフト方向SHの一方に延びる後進変速段「R´」を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】変速機の部分簡略図である。
【符号の説明】
【0038】
1 変速機
2 変速機ケース
3 変速機本体
5 軸心
6 軸心
7 軸心
8 メイン軸
9 カウンタ軸
10 リバースアイドル軸
12 出力歯車
13 リバース歯車
14 スリーブ
15 リバースアイドル歯車
16 スリーブ
19 変速操作装置
20 シフトレバー
21 変速パターン
24 枢支軸
26 連動レバー
27 一端部
28 他端部
A 往、復回動
B 一方向
C 他方向
SE セレクト方向
SH シフト方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に延びて変速機ケースに支持されるメイン軸、カウンタ軸、およびリバースアイドル軸と、上記メイン軸に支持される出力歯車と、上記カウンタ軸に支持されるリバース歯車と、上記リバースアイドル軸に軸方向に移動可能となるよう支持されるリバースアイドル歯車とを備え、上記出力歯車およびリバース歯車と、上記リバースアイドル歯車とが互いに噛合して後進変速段が得られるようにした変速機において、
上記カウンタ軸に対し上記リバース歯車を軸方向に移動可能となるよう支持させ、長手方向の中途部を中心として往、復回動可能となるよう上記変速機ケースに枢支されると共にシフトレバーに連結させる連動レバーを設け、この連動レバーの一端部を上記リバース歯車に係合させる一方、他端部を上記リバースアイドル歯車に係合させ、上記連動レバーに連動する上記リバース歯車とリバースアイドル歯車とがその軸方向でそれぞれ互いに接近、離反移動して、上記出力歯車およびリバース歯車と、上記リバースアイドル歯車とが互いに噛合、噛合解除するようにしたことを特徴とする変速機における変速操作装置。
【請求項2】
上記リバース歯車にスリーブを一体的に形成し、このスリーブを介し上記リバース歯車に上記連動レバーの一端部を係合させ、この連動レバーに連動させて上記リバース歯車を上記リバースアイドル歯車からその軸方向で離反移動させることにより前進変速段が得られるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の変速機における変速操作装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−232264(P2008−232264A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72583(P2007−72583)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】