説明

変速機のシフト機構

【課題】運転者のシフトフィーリングが良好で、且つ安価な、シングルレール構造を有する変速機のシフト機構を提供すること。
【解決手段】このシフト機構は、シフトレバーのセレクト操作に応じて回動するセレクトシャフトSAと、シフトレバーのシフト操作に応じて軸方向に移動するフォークシャフトSBと、それぞれが別個独立にフォークシャフトSBに軸方向に相対移動可能に配設されたフォークF1〜F3とを備える。フォークF1〜F3のうちシフトレバーのセレクト操作により選択された変速段に対応する1つのフォークは、フォークシャフトSBと一体に連結されて、シフトレバーのシフト操作に応じてフォークシャフトSBと一体で軸方向に移動する。一方、残りのフォークは、フォークシャフトSBとは連結されず、且つ、セレクトシャフトSAと一体に連結されて軸方向に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の変速機のシフト機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前進用に複数の変速段を備えた車両用手動変速機として、種々のものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。図11は、この種の代表的な変速機の一例を示す。この変速機は、エンジンの出力軸との間で動力伝達系統が形成される入力軸と、駆動輪との間で動力伝達系統が形成される出力軸とを備えている。
【0003】
この変速機の入力軸には、複数の変速段の駆動ギヤが同軸的且つ相対回転不能にそれぞれ設けられている。また、この変速機の出力軸には、対応する変速段の駆動ギヤと噛合する複数の変速段の被動ギヤが同軸的且つ相対回転可能にそれぞれ設けられている。以下、軸に相対回転不能に設けられたギヤを「固定ギヤ」と呼び、軸に相対回転可能に設けられたギヤを「遊転ギヤ」と呼ぶ。
【0004】
出力軸における各遊転ギヤに隣接する部位には、対応するハブが固定されていて、対応するハブの外周には、対応するスリーブが軸方向に移動可能にスプライン嵌合されている。各遊転ギヤは、対応するスリーブを軸方向に移動して対応するスリーブとスプライン嵌合することにより、出力軸に相対回転不能に固定される。1つの遊転ギヤが出力軸に相対回転不能に固定されると、その遊転ギヤ、及びその遊転ギヤと噛合する固定ギヤを介してエンジンと駆動輪との間で動力伝達系統が形成される。即ち、変速機内においてその遊転ギヤに対応する変速段が確立されて、その遊転ギヤにエンジンのトルクに基づくトルクが加えられる。
【0005】
一般に、各スリーブには対応する1つのフォークがそれぞれ一体に連結されている。各フォークは、対応する1本のフォークシャフトとそれぞれ一体に連結されている。従って、各スリーブの軸方向の位置はそれぞれ、対応するフォークシャフトの軸方向の位置を別個独立に調整することにより調整される。
【0006】
各フォークシャフトには対応するシフトヘッドがそれぞれ一体に連結されている。車両の運転者によるニュートラル位置におけるシフトレバーのセレクト操作により、シフトインナレバーと係合する1つのシフトヘッドが選択される。この選択されたシフトヘッドが「運転者によるシフトレバーのシフト操作に応じて移動するシフトインナレバー」により押圧されて軸方向に移動することにより、対応するフォークシャフトの軸方向の位置(従って、フォークシャフトと一体のフォーク及びスリーブの軸方向の位置)が調整される。
【0007】
この構成では、フォークの数(即ち、スリーブの数)と同数本のフォークシャフトが必要となる。この結果、部品点数が増大し、且つ、変速機全体が大型化するという問題が発生し得る。この問題に対処するため、近年、図12に示すように、1本のフォークシャフトに複数のフォークが別個独立に軸方向に相対移動可能に配設された構成が開発されてきている。この構成は、シングルレール構造とも呼ばれる。
【0008】
例えば、図12に示すシングルレール構造では、1本のフォークシャフトに3つのフォーク(第1〜第3フォーク)が配設されている。第1フォークについては、上述の構成と同様である。即ち、第1フォークは、フォークシャフトに一体に連結されている。フォークシャフトに一体に連結された第1ヘッドがシフトインナレバーにより押圧されて軸方向に移動することにより、フォークシャフトの軸方向の位置、従って、フォークシャフトと一体の第1フォークの軸方向の位置が調整される。
【0009】
これに対し、第2、第3フォークは、別個独立に軸方向に相対移動可能に1本のフォークシャフトに配設されている。第2、第3フォークにはそれぞれ、第2、第3ヘッドが一体に連結されている。第2(第3)ヘッドがシフトインナレバーにより押圧されて軸方向に移動することにより、第2(第3)フォークがフォークシャフトに対して軸方向に相対移動する。この結果、第2(第3)フォークの軸方向の位置が調整される。
【0010】
なお、この場合、第1ヘッドの軸方向の移動がインターロックプレート(図示せず)により規制されることにより、第1ヘッドと一体のフォークシャフトは軸方向に移動しない。以下、第2、第3ヘッドのように、フォークシャフトに軸方向に相対移動可能に配設され、且つ、シフトヘッドが一体に連結されたフォークを「移動フォーク」とも呼ぶ。
【0011】
ところで、移動フォークのシフトヘッドがシフトインナレバーにより軸方向における一方向に押圧されると(図12において白矢印を参照)、移動フォークの「スリーブの把持部」は、対応するスリーブから軸方向における反対方向に反力を受ける(図12において黒矢印を参照)。加えて、移動フォークにおけるシフトヘッドと「スリーブの把持部」とは離れている。従って、移動フォークに回転モーメントが発生する。即ち、移動フォークは、この回転モーメントを受けながらフォークシャフトに対して相対移動する(摺動する)。
【0012】
この回転モーメントは、移動フォークとフォークシャフトとの摺動面の面圧を局所的に高める。従って、この回転モーメントに起因して摺動抵抗が増大し得る。この結果、移動フォークがフォークシャフトに対して滑らかに摺動し得ず、運転者のシフトフィーリングが悪化するという問題が発生し得る。
【0013】
加えて、移動フォークでは、シフトヘッドが一体に連結されている。即ち、フォークとシフトヘッドとを連結する構造が必要となる。このことが変速機の製造コストの増大の一要因となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許2543874号
【発明の概要】
【0015】
以上のことを鑑み、本発明の目的は、シングルレール構造(1本のフォークシャフトに複数のフォークが別個独立に軸方向に相対移動可能に配設された構成)が採用される変速機のシフト機構において、運転者のシフトフィーリングが良好で且つ安価なものを提供することにある。
【0016】
本発明による車両用の変速機のシフト機構は、変速機のハウジングに対して軸方向に移動可能且つ軸周りに回動不能に支持されてシフトレバーのニュートラル位置からのシフト操作に応じて軸方向に移動する1本のフォークシャフトと、前記変速機内の軸に相対回転可能に設けられた遊転ギヤを前記軸に対して相対回転不能に固定して対応する変速段を達成するための対応する固定部材とそれぞれ連結された複数のフォークであって、複数のフォークのそれぞれが別個独立に前記フォークシャフトに軸方向に相対移動可能に配設された複数のフォークとを備える。即ち、このシフト機構は、シングルレール構造を有する。
【0017】
このシフト機構の特徴は、以下の連結機構を有することにある。即ち、この連結機構は、前記シフトレバーの前記ニュートラル位置におけるセレクト操作に応じて作動する。この連結機構は、前記複数のフォークのうち前記シフトレバーのセレクト操作により選択された変速段に対応する1つのフォーク(以下、「選択フォーク」と呼ぶ。)を、前記フォークシャフトと一体に連結された状態とする。一方、この連結機構は、前記複数のフォークのうち前記選択された変速段に対応しない残りの1つ又は複数のフォーク(以下、「非選択フォーク」と呼ぶ。)を、前記フォークシャフトに対して軸方向に相対移動可能且つ軸方向に固定された状態とする。
【0018】
これによれば、選択フォークは、シフト操作に応じてフォークシャフトと一体で軸方向に移動する。従って、選択フォークが軸方向に移動する際、選択フォークとフォークシャフトとは摺動しない。また、非選択フォークは、軸方向に固定される。シフト操作に応じてフォークシャフトが軸方向に移動すると、非選択フォークとフォークシャフトとは摺動する。しかしながら、非選択フォークは軸方向に固定されているので、対応するスリーブを押圧しない。即ち、非選択フォークは対応するスリーブから上述のような反力を受けない。
【0019】
以上より、シフト操作に応じてフォークシャフトが軸方向に移動する際、選択フォークについても非選択フォークについても、上述のような回転モーメントによる摺動抵抗の増大の問題が発生し難い。以上より、上述した回転モーメントに起因するシフトフィーリングの悪化の問題が生じ得ない。
【0020】
加えて、フォークシャフトの一部に設けられた切り欠き等を、シフトインナレバーと係合するシフトヘッドとして使用することにより、フォークとシフトヘッドとを一体に連結する構造を採用する必要がない。従って、この点において、シフト機構が安価となり得る。以上、本発明によれば、シングルレール構造を採用しつつ、運転者のシフトフィーリングが良好で且つ安価なシフト機構が提供され得る。
【0021】
本発明に係るシフト機構において、前記連結機構は、具体的には、以下のように構成され得る。即ち、前記連結機構は、前記ハウジングに対して軸周りに回動可能且つ軸方向に移動不能且つ前記フォークシャフトと平行に支持されて前記セレクト操作に応じて回動するセレクトシャフトを備える。
【0022】
前記各フォークの基部には、軸方向に沿う第1貫通孔がそれぞれ形成される。前記各第1貫通孔に前記フォークシャフトが挿入されることにより、前記各フォークが前記フォークシャフトに軸方向に相対移動可能にそれぞれ配設される。また、前記各フォークの基部には、前記セレクトシャフトに向けた径方向に沿う第2貫通孔がそれぞれ形成される。
【0023】
前記シフトレバーが前記ニュートラル位置にあるときの前記各フォークの基部の「前記ハウジングに対する軸方向の位置」をそれぞれ基準フォーク軸方向位置とし、前記シフトレバーが前記ニュートラル位置にあるときの前記フォークシャフトの位置を「基準シャフト位置」とする。
【0024】
前記フォークシャフトが前記基準シャフト位置にあるときの前記フォークシャフトにおけるそれぞれの前記基準フォーク軸方向位置には、前記セレクトシャフトに向けた径方向に沿う第3孔がそれぞれ形成される。前記フォークシャフトが前記基準シャフト位置にあるときにおいて前記各第3孔が対応する前記第2貫通孔と同軸的且つ連続的にそれぞれ繋がる。
【0025】
前記セレクトシャフトにおけるそれぞれの前記基準フォーク軸方向位置には、形状の異なる溝がそれぞれ形成される。前記各第2貫通孔には、ピン部材が径方向に移動可能にそれぞれ挿入される。前記各第3孔には、対応する前記ピン部材を前記セレクトシャフトに向けて押圧する弾性部材がそれぞれ収容される。前記弾性部材はコイルスプリングであることが好適である。
【0026】
前記フォークシャフトが前記基準シャフト位置にあるときにおいて、前記複数のピン部材のうち「選択フォーク」に対応する1つのピン部材について、その径方向外側の先端が対応する前記溝と嵌合せず且つその径方向内側の先端が対応する前記第3孔に進入する。このように、ピン部材が溝と嵌合しないことにより、選択フォークはセレクトシャフトとは連結されない。且つ、ピン部材が第3孔に進入することにより、選択フォークはフォークシャフトと一体に連結される。
【0027】
一方、前記複数のピン部材のうち「非選択フォーク」に対応する1つ又は複数のピン部材について、その径方向外側の先端が対応する前記溝と嵌合し、且つその径方向内側の先端が対応する前記第3孔に進入しない。このように、ピン部材が第3孔に進入しないことにより、非選択フォークはフォークシャフトとは連結されない。且つ、ピン部材が溝と嵌合することにより、非選択フォークはセレクトシャフトと一体に連結される。セレクトシャフトは軸方向に移動不能にハウジングに支持されている。従って、非選択フォークは、フォークシャフトに対して軸方向に相対移動可能、且つ、軸方向に固定された状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係るシフト機構が適用される変速機全体の軸方向の主要断面を表すスケルトン図である。
【図2】シフトレバーの変速パターンの一例を示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係るシフト機構の全体斜視図である。
【図4】図3に示したシフト機構の連結機構を説明するための図である。
【図5】セレクトシャフトに形成された「第1フォークに対応する第1溝」の形状を示す、図4におけるA−A断面図である。
【図6】セレクトシャフトに形成された「第2フォークに対応する第2溝」の形状を示す、図4におけるB−B断面図である。
【図7】セレクトシャフトに形成された「第3フォークに対応する第3溝」の形状を示す、図4におけるC−C断面図である。
【図8】セレクト操作により「1速−2速」が選択された場合における、連結機構の様子を示した図である。
【図9】セレクト操作により「3速−4速」が選択された場合における、連結機構の様子を示した図である。
【図10】セレクト操作により「5速−リバース」が選択された場合における、連結機構の様子を示した図である。
【図11】従来の変速機の軸方向の主要断面を表すスケルトン図である。
【図12】シングルレール構造を有する従来のシフト機構の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係るシフト機構を含む車両用手動変速機について図面を参照しつつ説明する。この手動変速機T/Mは、車両前進用に5つ変速段(1速〜5速)、及び、車両後進用に1つの変速段(リバース)を備えている。
【0030】
(構成)
図1に示すように、変速機T/Mは、入力軸Aiと、出力軸Aoとを備える。入力軸Aiの両端は、一対のベアリングを介して回転可能にハウジング(ケース)Hgに支持されている。出力軸Aoの両端は、一対のベアリングを介して回転可能にハウジングHgに支持されている。出力軸Aoは、入力軸Aiからずれた位置で入力軸Aiと平行に配置されている。入力軸Aiは、クラッチC/Tを介して車両の駆動源であるエンジンE/Gの出力軸と接続されている。出力軸Aoは、車両の駆動輪と動力伝達可能に接続されている。
【0031】
以下、軸に相対回転不能に設けられたギヤを「固定ギヤ」と呼び、軸に相対回転可能に設けられたギヤを「遊転ギヤ」と呼ぶ。固定ギヤは、周知の嵌合手法の1つを利用して、軸に相対回転不能且つ軸方向に相対移動不能に固定されている。遊転ギヤは、例えば、ニードルベアリングを介して軸に相対回転可能に配設されている。また、ハブは、固定ギヤと同様、周知の嵌合手法の1つを利用して、軸に相対回転不能且つ軸方向に相対移動不能に固定されている。ハブの円筒外周面には、(外)スプラインが形成されている。
【0032】
入力軸Aiにおける1対のベアリングの間には、図1において左側から順に、リバースの駆動ギヤGRi、5速の駆動ギヤG5i、4速の駆動ギヤG4i、3速の駆動ギヤG3i、2速の駆動ギヤG2i、リバースの駆動ギヤGRi、1速の駆動ギヤG1iが同軸的に備えられている。駆動ギヤGRi,G1i,G2i,G3i,G4i,G5i,GRiは全て固定ギヤである。駆動ギヤGRiは、入力軸Aiと平行に配置されたアイドル軸Adに設けられたアイドルギヤGRdと常時歯合する。
【0033】
出力軸Aoにおける1対のベアリングの間には、図1において左側から順に、リバースの被動ギヤGRo、ハブH3、5速の被動ギヤG5o、4速の被動ギヤG4o、ハブH2、3速の被動ギヤG3o、2速の被動ギヤG2o、ハブH1、1速の被動ギヤG1oが同軸的に備えられている。被動ギヤG1o,G2o,G3o,G4o,G5oは全て遊転ギヤである。
【0034】
被動ギヤG1o,G2o,G3o,G4o,G5oはそれぞれ、駆動ギヤG1i,G2i,G3i,G4i,G5iと常時噛合している。被動ギヤGRoは、アイドルギヤGRdと常時歯合する。即ち、リバースの被動ギヤGRoは、アイドルギヤGRdを介してリバースの駆動ギヤGRiと接続されている。
【0035】
ハブH1の外周には、スリーブS1が、軸方向に移動可能に常時スプライン嵌合している。スリーブS1が図1に示す位置(非接続位置)にある場合、スリーブS1は、被動ギヤG1oと一体回転する1速ピース、及び、被動ギヤG2oと一体回転する2速ピースに対して共にスプライン嵌合しない。スリーブS1が非接続位置より軸方向において右側の位置(1速位置)に移動すると、スリーブS1が1速ピースに対してスプライン嵌合し、軸方向において左側の位置(2速位置)に移動すると、スリーブS1が2速ピースに対してスプライン嵌合する。
【0036】
ハブH2の外周には、スリーブS2が、軸方向に移動可能に常時スプライン嵌合している。スリーブS2が図1に示す位置(非接続位置)にある場合、スリーブS2は、被動ギヤG3oと一体回転する3速ピース、及び、被動ギヤG4oと一体回転する4速ピースに対して共にスプライン嵌合しない。スリーブS2が非接続位置より軸方向において右側の位置(3速位置)に移動すると、スリーブS2が3速ピースに対してスプライン嵌合し、軸方向において左側の位置(4速位置)に移動すると、スリーブS2が4速ピースに対してスプライン嵌合する。
【0037】
ハブH3の外周には、スリーブS3が、軸方向に移動可能に常時スプライン嵌合している。スリーブS3が図1に示す位置(非接続位置)にある場合、スリーブS3は、被動ギヤG5oと一体回転する5速ピース、及び、被動ギヤGRoと一体回転するリバースピースに対してスプライン嵌合しない。スリーブS3が非接続位置より軸方向において右側の位置(5速位置)に移動すると、スリーブS3が5速ピースに対してスプライン嵌合し、軸方向において左側の位置(リバース位置)に移動すると、スリーブS3がリバースピースに対してスプライン嵌合する。
【0038】
図2は、この変速機T/Mが搭載された車両のシフトレバーのシフトパターンの一例を示す。スリーブS1,S2,S3の軸方向の位置はそれぞれ、後述する図3に示す本発明の実施形態に係るシフト機構(1本のフォークシャフトSBに複数のフォークF1〜F3が別個独立に軸方向に相対移動可能に配設された構成を有する)により調整されるようになっている。
【0039】
以上より、変速機T/Mでは、シフトレバーがニュートラル位置(図2を参照)にある場合、スリーブS1,S2,S3が共に非接続位置に調整される。この結果、入力軸Aiと出力軸Aoとの間で動力伝達系統が形成されないニュートラル状態が得られる。ニュートラル状態においてシフトレバーが1速位置にシフト操作されると、スリーブS1が1速位置へ移動する。この結果、1速の減速比を有する動力伝達系統が形成される(1速が確立される)。ニュートラル状態においてシフトレバーが2速位置にシフト操作されると、スリーブS1が2速位置へ移動する。この結果、2速の減速比を有する動力伝達系統が形成される(2速が確立される)。
【0040】
ニュートラル状態においてシフトレバーが3速位置にシフト操作されると、スリーブS2が3速位置へ移動する。この結果、3速の減速比を有する動力伝達系統が形成される(3速が確立される)。ニュートラル状態においてシフトレバーが4速位置にシフト操作されると、スリーブS2が4速位置へ移動する。この結果、4速の減速比を有する動力伝達系統が形成される(4速が確立される)。
【0041】
ニュートラル状態においてシフトレバーが5速位置にシフト操作されると、スリーブS3が5速位置へ移動する。この結果、5速の減速比を有する動力伝達系統が形成される(5速が確立される)。ニュートラル状態においてシフトレバーがリバース位置にシフト操作されると、スリーブS3がリバース位置へ移動する。この結果、リバースの減速比を有する動力伝達系統が形成される(リバースが確立される)。
【0042】
(シフト機構)
以下、図3〜図10を参照しながら、本発明の実施形態に係るシフト機構について説明する。このシフト機構は、1本のセレクトシャフトSAと、1本のフォークシャフトSBと、3つのフォークF1,F2,F3と、を備えている。
【0043】
セレクトシャフトSAは、ハウジングHg(図1を参照)に対して、軸方向に移動不能且つ軸周りに回動可能に、周知のベアリング等により支持されている。セレクトシャフトSAは、セレクトシャフトSAと一体に連結された連結部材と係合するセレクトインナレバーILA、セレクトインナレバーILAと一体に連結された突起部PA、及び、図示しない動力伝達部材(ワイヤ等)を介して、シフトレバーのセレクト操作(図2)に連動するリンク機構と接続されている。この結果、セレクトシャフトSAは、シフトレバーのニュートラル位置(図2を参照)におけるセレクト操作に応じて、ハウジングHgに対して回動(相対回動)する。
【0044】
フォークシャフトSBは、ハウジングHgに対して、軸方向に移動可能且つ軸周りに回動不能に、且つ、セレクトシャフトSAと平行に、周知のベアリング等により支持されている。フォークシャフトSBは、フォークシャフトSBの一部に形成された切り欠き部と係合するシフトインナレバーILB、シフトインナレバーILBと一体に連結された突起部PB、及び、図示しない動力伝達部材(ワイヤ等)を介して、シフトレバーのシフト操作(図2)に連動するリンク機構と接続されている。この結果、フォークシャフトSBは、シフトレバーのニュートラル位置からのシフト操作に応じて、ハウジングHgに対して軸方向に相対移動する。
【0045】
フォークF1,F2,F3の基部F1b,F2b,F3bには、軸方向に沿う第1貫通孔がそれぞれ形成されている。各第1貫通孔にフォークシャフトSBが挿入されることにより、フォークF1,F2,F3がフォークシャフトSBに対して、別個独立に軸方向に相対移動可能にそれぞれ配設されている。このように、このシフト機構は、シングルレール構造を有する。
【0046】
フォークF1,F2,F3の把持部F1a,F2a,F3aには、スリーブS1,S2,S3(図1を参照)がそれぞれ一体に連結される。即ち、フォークF1は、1速と2速の変速段の確立に係り、フォークF2は、3速と4速の変速段の確立に係り、フォークF3は、5速とリバースの変速段の確立に係る。
【0047】
以下、説明の便宜上、3つのフォークF1,F2,F3のうちシフトレバーのセレクト操作により選択された変速段に対応する1つのフォークを「選択フォーク」と呼び、3つのフォークF1,F2,F3のうちシフトレバーのセレクト操作により選択された変速段に対応しない2つのフォークを「非選択フォーク」と呼ぶ。例えば、シフトレバーがニュートラル位置における点N1の位置(図2を参照)にある場合(即ち、1速−2速が選択された場合)、フォークF1が選択フォークとなり、フォークF2,F3が非選択フォークとなる。
【0048】
このシフト機構は、「選択フォークがフォークシャフトSBと一体に連結され、非選択フォークがセレクトシャフトSAと連結されて軸方向に固定される」機構(連結機構)を備える。以下、この連結機構について説明する。
【0049】
図4は、一例として、シフトレバーがニュートラル位置における点N2の位置(図2を参照)にある場合における、シフト機構の状態を示す。以下、説明の便宜上、シフトレバーがニュートラル位置にあるときのフォークF1,F2,F3の基部F1b,F2b,F3bの「ハウジングHgに対する軸方向の位置」をそれぞれ「基準フォーク軸方向位置」と呼ぶ。即ち、図4に示すフォークの基部F1b,F2b,F3bの軸方向の位置(断面A−A,B−B,C−Cの軸方向の位置)がそれぞれ、基準フォーク軸方向位置に対応する。また、シフトレバーがニュートラル位置にあるときのフォークシャフトSBの位置を「基準シャフト位置」と呼ぶ。即ち、図4に示すフォークシャフトSBの位置が基準シャフト位置に対応する。
【0050】
図4に示すように、フォークの基部F1b,F2b,F3bには、それぞれの基準フォーク軸方向位置(即ち、断面A−A,B−B,C−Cの軸方向の位置)において、セレクトシャフトSAに向けた径方向に沿う(図4において上下方向の)同形の第2貫通孔がそれぞれ形成されている。また、フォークシャフトSBが基準シャフト位置にあるときのフォークシャフトSBにおけるそれぞれの基準フォーク軸方向位置(即ち、断面A−A,B−B,C−Cの軸方向の位置)には、セレクトシャフトSAに向けた径方向に沿う(図4において上下方向の)同形の第3孔がそれぞれ形成される。第2貫通孔と第3孔とは同径である。ここで、図4に示すように、フォークシャフトSBが基準シャフト位置にあるとき、それぞれの基準フォーク軸方向位置(即ち、断面A−A,B−B,C−Cの軸方向の位置)において、各第3孔が、対応する第2貫通孔と同軸的且つ連続的に(図4において上下方向に)それぞれ繋がる。
【0051】
第1、第2、第3フォークF1,F2,F3に対応するセレクトシャフトSAにおけるそれぞれの基準フォーク軸方向位置(即ち、断面A−A,B−B,C−Cの軸方向の位置)には、図5〜図7に示すように、形状の異なる溝G1,G2,G3がそれぞれ形成されている。
【0052】
第1、第2、第3フォークF1,F2,F3に対応するそれぞれの第2貫通孔には、同形のピン部材H1,H2,H3が径方向に(図4において上下方向に)移動可能にそれぞれ挿入されている。また、第1、第2、第3フォークF1,F2,F3に対応するそれぞれの第3孔には、ピン部材H1,H2,H3をそれぞれセレクトシャフトSAに向けて(図4において上方向に)押圧するコイルスプリングJ1,J2,J3がそれぞれ収容されている。
【0053】
セレクトシャフトSAの回転方向の位置によって、即ち、ニュートラル位置においてシフトレバーが点N1,N2,N3のうちのどの位置にあるかによって、ピン部材H1,H2,H3の径方向外側の先端(図4において上側の先端)と溝G1,G2,G3との係合状態、並びに、ピン部材H1,H2,H3の径方向内側の先端(図4において下側の先端)の対応する第3孔への進入状態が変化する。以下、このことについて図8〜図10を参照しながら説明する。
【0054】
先ず、図8に示すように、シフトレバーがニュートラル位置における点N1の位置にある場合(即ち、1速−2速が選択された場合)について述べる。この場合、選択フォークであるフォークF1に対応するピン部材H1の径方向外側の先端が溝G1と向き合わない。従って、ピン部材H1の径方向外側の先端は溝G1と嵌合しない。この結果、ピン部材H1が比較的径方向内側に位置することになり、ピン部材H1の径方向内側の先端が対応する第3孔に進入する。
【0055】
このように、ピン部材H1が溝G1と嵌合しないことにより、フォークF1(=選択フォーク)はセレクトシャフトSAとは連結されない。且つ、ピン部材H1が対応する第3孔に進入することにより、フォークF1(=選択フォーク)はフォークシャフトSBと一体に連結される。
【0056】
一方、非選択フォークであるフォークF2,F3に対応するピン部材H2,H3の径方向外側の先端は溝G2,G3とそれぞれ向き合う。従って、コイルスプリングJ2,J3にそれぞれ押圧されるピン部材H2,H3の径方向外側の先端は溝G2,G3とそれぞれ嵌合する。この結果、ピン部材H2,H3が比較的径方向外側に位置することになり、ピン部材H2,H3の径方向内側の先端が対応する第3孔にそれぞれ進入しない。
【0057】
このように、ピン部材H2,H3が対応する第3孔にそれぞれ進入しないことにより、フォークF2,F3(=非選択フォーク)はフォークシャフトSBとは連結されない。且つ、ピン部材H2,H3が溝G2,G3とそれぞれ嵌合することにより、フォークF2,F3(=非選択フォーク)はセレクトシャフトSAと一体に連結される。セレクトシャフトSAは軸方向に移動不能にハウジングHgに支持されている。従って、フォークF2,F3(=非選択フォーク)は、フォークシャフトSBに対して軸方向に相対移動可能、且つ、軸方向に固定される。
【0058】
次に、図9に示すように、シフトレバーがニュートラル位置における点N2の位置にある場合(即ち、3速−4速が選択された場合)について述べる。この場合、選択フォークであるフォークF2に対応するピン部材H2の径方向外側の先端が溝G2と向き合わない一方で、非選択フォークであるフォークF1,F3に対応するピン部材H1,H3の径方向外側の先端は溝G1,G3とそれぞれ向き合う。
【0059】
従って、ピン部材H2が溝G2と嵌合しないことにより、フォークF2(=選択フォーク)はセレクトシャフトSAとは連結されない。且つ、ピン部材H2が対応する第3孔に進入することにより、フォークF2(=選択フォーク)はフォークシャフトSBと一体に連結される。また、ピン部材H1,H3が対応する第3孔にそれぞれ進入しないことにより、フォークF1,F3(=非選択フォーク)はフォークシャフトSBとは連結されない。且つ、ピン部材H1,H3が溝G1,G3とそれぞれ嵌合することにより、フォークF1,F3(=非選択フォーク)はセレクトシャフトSAと一体に連結される。従って、フォークF1,F3(=非選択フォーク)は、フォークシャフトSBに対して軸方向に相対移動可能、且つ、軸方向に固定される。
【0060】
次に、図10に示すように、シフトレバーがニュートラル位置における点N3の位置にある場合(即ち、5速−リバースが選択された場合)について述べる。この場合、選択フォークであるフォークF3に対応するピン部材H3の径方向外側の先端が溝G3と向き合わない一方で、非選択フォークであるフォークF1,F2に対応するピン部材H1,H2の径方向外側の先端は溝G1,G2とそれぞれ向き合う。
【0061】
従って、ピン部材H3が溝G3と嵌合しないことにより、フォークF3(=選択フォーク)はセレクトシャフトSAとは連結されない。且つ、ピン部材H3が対応する第3孔に進入することにより、フォークF3(=選択フォーク)はフォークシャフトSBと一体に連結される。また、ピン部材H1,H2が対応する第3孔にそれぞれ進入しないことにより、フォークF1,F2(=非選択フォーク)はフォークシャフトSBとは連結されない。且つ、ピン部材H1,H2が溝G1,G2とそれぞれ嵌合することにより、フォークF1,F2(=非選択フォーク)はセレクトシャフトSAと一体に連結される。従って、フォークF1,F2(=非選択フォーク)は、フォークシャフトSBに対して軸方向に相対移動可能、且つ、軸方向に固定される。
【0062】
以上のように、ニュートラル位置においてシフトレバーが点N1,N2,N3のうちのどの位置にあっても、選択フォークは、セレクトシャフトSAとは連結されず、且つ、フォークシャフトSBと一体に連結される。加えて、非選択フォークは、フォークシャフトSBとは連結されず、且つ、セレクトシャフトSAと一体に連結される。
【0063】
従って、選択フォークは、シフトレバーのニュートラル位置からのシフト操作に応じて、フォークシャフトSBと一体で、対応する基準フォーク軸方向位置から軸方向に移動する。このとき、非選択フォークがフォークシャフトSBと摺動することにより(非選択フォークとフォークシャフトSBとが軸方向に相対移動することにより)、非選択フォークの軸方向の位置は、対応する基準フォーク軸方向位置に維持される。
【0064】
具体的には、シフトレバーがニュートラル位置における点N1の位置から1速位置(2速位置)にシフト操作されると、非選択フォークであるフォークF2,F3は対応する基準フォーク軸方向位置(図4に示す位置)にそれぞれ維持される一方で、選択フォークであるフォークF1は対応する基準フォーク軸方向位置(図4に示す位置)から右方向(左方向)に移動する。この結果、フォークF1と連結されたスリーブS1(図1を参照)が軸方向に移動して1速(2速)が確立される。
【0065】
シフトレバーがニュートラル位置における点N2の位置から3速位置(4速位置)にシフト操作されると、非選択フォークであるフォークF1,F3は対応する基準フォーク軸方向位置(図4に示す位置)にそれぞれ維持される一方で、選択フォークであるフォークF2は対応する基準フォーク軸方向位置(図4に示す位置)から右方向(左方向)に移動する。この結果、フォークF2と連結されたスリーブS2(図1を参照)が軸方向に移動して3速(4速)が確立される。
【0066】
シフトレバーがニュートラル位置における点N3の位置から5速位置(リバース位置)にシフト操作されると、非選択フォークであるフォークF1,F2は対応する基準フォーク軸方向位置(図4に示す位置)にそれぞれ維持される一方で、選択フォークであるフォークF3は対応する基準フォーク軸方向位置(図4に示す位置)から右方向(左方向)に移動する。この結果、フォークF3と連結されたスリーブS3(図1を参照)が軸方向に移動して5速(リバース)が確立される。
【0067】
(作用・効果)
次に、上記のように構成された本発明の実施形態に係る変速機のシフト機構の作用・効果について説明する。
【0068】
上述のように、選択フォークは、シフト操作に応じてフォークシャフトSBと一体で軸方向に移動する。このことは、選択フォークが軸方向に移動する際、選択フォークとフォークシャフトSBとが摺動しないことを意味する。また、選択フォークが軸方向に移動する際、非選択フォークはフォークシャフトSBと摺動する。しかしながら、非選択フォークは、セレクトシャフトSAと一体に連結されて軸方向に固定されているので、対応するスリーブを押圧しない。即ち、非選択フォークは、対応するスリーブから背景技術の欄で述べたような「反力」を受けない。
【0069】
以上より、シフト操作に応じてフォークシャフトSBが軸方向に移動する際、選択フォークについても非選択フォークについても、背景技術の欄で述べたような回転モーメントによる摺動抵抗の増大の問題が発生し難い。以上より、背景技術の欄で述べたような回転モーメントに起因するシフトフィーリングの悪化の問題が生じ得ない。
【0070】
また、フォークシャフトSBの一部に設けられた切り欠きが、シフトインナレバーILBと係合するシフトヘッドとして使用されている。従って、図12に示すように、フォークとシフトヘッドとを一体に連結する構造を採用する必要がない。従って、この点において、シフト機構が安価となり得る。
【0071】
また、シフトレバーのシフト操作がなされた場合において、「1つのみのフォーク(選択フォーク)が軸方向に移動するとともに残りのフォーク(非選択フォーク)が軸方向に固定される」ことが保証され得る。換言すれば、シフトレバーのシフト操作がなされた場合において、2つ以上のフォークが軸方向に同時に移動する現象の発生を抑制する機能(所謂インターロック機能)が発揮され得る。従って、インターロック機能を達成するためのインターロックプレートを設ける必要がなくなる。以上、本実施形態によれば、シングルレール構造を採用しつつ、運転者のシフトフィーリングが良好で且つ安価なシフト機構が提供され得る。
【0072】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、ニュートラル位置においてシフトレバーが点N1,N2,N3のうちのどの位置にあるかによって、軸周りに回転可能に支持されたセレクトシャフトSAの回転方向の位置が変化する。そして、セレクトシャフトSAの回転方向の位置によって、ピン部材H1,H2,H3と溝G1,G2,G3との係合状態、並びに、ピン部材H1,H2,H3の第3孔への進入状態が変化するように、溝G1,G2,G3のそれぞれの形状が設計されている。
【0073】
これに対し、ニュートラル位置においてシフトレバーが点N1,N2,N3のうちのどの位置にあるかによって、軸方向に移動可能に支持されたセレクトシャフトSAの軸方向の位置が変化するように構成されてもよい。この場合、セレクトシャフトSAの軸方向の位置によって、ピン部材H1,H2,H3と溝G1,G2,G3との係合状態、並びに、ピン部材H1,H2,H3の第3孔への進入状態が変化するように、溝G1,G2,G3のそれぞれの形状が設計される。
【0074】
また、車両前進用の変速段の数は、5つに限定されない(例えば、4つ、或いは、6つであってもよい)。この変速段の数に応じて、1本のフォークシャフトSBに別個独立に軸方向に相対移動可能にそれぞれ配設されるフォークの数が変化する。
【符号の説明】
【0075】
T/M…変速機、E/G…エンジン、Ai…入力軸、Ao…出力軸、G1i,G2i,G3i,G4i,G5i,GRi…駆動ギヤ、G1o,G2o,G3o,G4o,G5o,GRo…被動ギヤ、H1〜H3…ハブ、S1〜S3…スリーブ、F1〜F3…フォーク、F1a〜F3a…フォークの把持部、F1b〜F3b…フォークの基部、SA…セレクトシャフト、SB…フォークシャフト、ILA…セレクトインナレバー、ILB…シフトインナレバー、H1〜H3…ピン部材、J1〜J3…コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機のハウジングに対して軸方向に移動可能且つ軸周りに回動不能に支持されてシフトレバーのニュートラル位置からのシフト操作に応じて軸方向に移動する1本のフォークシャフトと、
前記変速機内の軸に相対回転可能に設けられた遊転ギヤを前記軸に対して相対回転不能に固定して対応する変速段を達成するための対応する固定部材とそれぞれ連結された複数のフォークであって、複数のフォークのそれぞれが別個独立に前記フォークシャフトに軸方向に相対移動可能に配設された複数のフォークと、
前記シフトレバーの前記ニュートラル位置におけるセレクト操作に応じて作動する連結機構であって、前記複数のフォークのうち前記シフトレバーのセレクト操作により選択された変速段に対応する1つのフォークを、前記フォークシャフトと一体に連結された状態とし、前記複数のフォークのうち前記選択された変速段に対応しない残りの1つ又は複数のフォークを、前記フォークシャフトに対して軸方向に相対移動可能且つ軸方向に固定された状態とする連結機構と、
を備えた、変速機のシフト機構。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機のシフト機構において、
前記連結機構は、
前記ハウジングに対して軸周りに回動可能且つ軸方向に移動不能且つ前記フォークシャフトと平行に支持されて前記セレクト操作に応じて回動するセレクトシャフトを備え、
前記各フォークの基部には、軸方向に沿う第1貫通孔がそれぞれ形成され、前記各第1貫通孔に前記フォークシャフトが挿入されることにより前記各フォークが前記フォークシャフトに軸方向に相対移動可能にそれぞれ配設されていて、
前記各フォークの基部には、前記セレクトシャフトに向けた径方向に沿う第2貫通孔がそれぞれ形成され、
前記シフトレバーが前記ニュートラル位置にあるときの前記各フォークの基部の前記ハウジングに対する軸方向の位置をそれぞれ基準フォーク軸方向位置とし、前記シフトレバーが前記ニュートラル位置にあるときの前記フォークシャフトの位置を基準シャフト位置としたとき、
前記フォークシャフトが前記基準シャフト位置にあるときの前記フォークシャフトにおけるそれぞれの前記基準フォーク軸方向位置には、前記セレクトシャフトに向けた径方向に沿う第3孔がそれぞれ形成され、前記フォークシャフトが前記基準シャフト位置にあるときにおいて前記各第3孔が対応する前記第2貫通孔と同軸的且つ連続的にそれぞれ繋がり、
前記セレクトシャフトにおけるそれぞれの前記基準フォーク軸方向位置には、形状の異なる溝がそれぞれ形成されていて、
前記各第2貫通孔にはピン部材が径方向に移動可能にそれぞれ挿入され、前記各第3孔には、対応する前記ピン部材を前記セレクトシャフトに向けて押圧する弾性部材がそれぞれ収容されていて、
前記フォークシャフトが前記基準シャフト位置にあるときにおいて、前記複数のピン部材のうち前記シフトレバーのセレクト操作により選択された変速段に対応する1つのフォークに対応する1つのピン部材について、その径方向外側の先端が対応する前記溝と嵌合せず且つその径方向内側の先端が対応する前記第3孔に進入し、前記複数のピン部材のうち前記シフトレバーのセレクト操作により選択された変速段に対応しない残りの1つ又は複数のフォークに対応する1つ又は複数のピン部材について、その径方向外側の先端が対応する前記溝と嵌合し、且つその径方向内側の先端が対応する前記第3孔に進入しないように、前記各溝の形状がそれぞれ設計された、変速機のシフト機構。
【請求項3】
請求項2に記載の変速機のシフト機構において、
前記弾性部材はコイルスプリングである、変速機のシフト機構。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−7677(P2012−7677A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144461(P2010−144461)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】