説明

外力検出装置

【課題】圧電板に加わる外力を高精度にかつ容易に検出することができる外力検出装置を提供すること。
【解決手段】容器1内に片持ちで支持された水晶板2の中央部にて両面に夫々励振電極31、41を形成する。水晶板2の先端部の両面側に、励振電極41に電気的に接続される可動電極51、52を夫々設ける。容器1側に可動電極51、52に夫々対向する固定電極61、62を設ける。上面側の励振電極31を発振回路14の一端側に接続し、固定電極61、62をスイッチ部8により発振回路14の他端側に切り替え接続できるようにする。水晶板2が外力により撓むと、固定電極61、62のいずれに切り替えたときにも発振周波数が変化する。固定電極61側に切り替えたときの発振周波数の変化分と、固定電極62側に切り替えたときの発振周波数の変化分との差分を求めて外力を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電板例えば水晶板を用い、圧電板に作用する外力の大きさを発振周波数に基づいて検出することにより、加速度、圧力、流体の流速、磁力あるいは静電気力などといった外力を検出する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
系に作用する外力として、加速度に基づく物体に作用する力、圧力、流速、磁力、静電気力などがあるが、これらの外力を正確に測定することが必要な場合が多い。例えば自動車を開発する段階で自動車が物体に衝突したときに座席における衝撃力を測定することが行われている。また地震時の振動エネルギーや振幅を調べるためにできるだけ精密に揺れの加速度などを調べる要請がある。
【0003】
更にまた液体や気体の流速を正確に調べてその検出値を制御系に反映させる場合や、磁石の性能を測定する場合なども外力の測定例として挙げることができる。
このような測定を行うにあたって、できるだけ簡素な構造でありかつ高精度に測定することが要求されている。
【0004】
特許文献1には、圧電フィルムを片持ちで支持し、周囲の磁力の変化により圧電フィルムが変形し、圧電フィルムに流れる電流が変化することが記載されている。
また特許文献2には、容量結合型の圧力センサーと、この圧力センサーの配置領域に対して仕切られた空間に配置された水晶振動子とを設け、これら圧力センサーの可変容量と水晶振動子とを並列に接続し、圧力センサーにおける容量が変化することにより水晶振動子の反共振点が変わることで圧力を検出することが記載されている。
これら特許文献1、2は本発明とは原理が全く異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−138852(段落0021、段落0028)
【特許文献2】特開2008−39626(図1及び図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、圧電板に加わる外力を高精度にかつ容易に検出することができる外力検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、圧電板に作用する外力を検出する外力検出装置であって、
容器内に設けられ、一端側が支持された片持ちの圧電板と、
この圧電板を振動させるために、当該圧電板の一面側及び他面側のうちの一方及び他方に夫々設けられた第1の励振電極及び第2の励振電極と、
前記第1の励振電極に電気的に接続された発振回路と、
前記圧電板の他端側にて一面側及び他面側のうちの一方及び他方に夫々設けられ、前記第2の励振電極に電気的に接続された可変容量形成用の第1の可動電極及び第2の可動電極と、
前記容器内に、前記第1の可動電極及び第2の可動電極に夫々対向するように設けられ、圧電板の撓みにより前記第1の可動電極との間の容量が変化する第1の固定電極及び圧電板の撓みにより前記第2の可動電極との間の容量が変化する第2の固定電極と
第1の固定電極及び第2の固定電極を発振回路に切り替え接続するスイッチ部と、
前記発振回路の発振周波数を検出するための周波数検出部と、を備え、
前記スイッチ部が第1の固定電極に切り替えられたときに周波数検出部にて検出された周波数と前記スイッチ部が第2の固定電極に切り替えられたときに周波数検出部にて検出された周波数を検出し、圧電板に外力が加わることによるこれら周波数の各々の変化率の差分に基づいて前記外力を評価するための計測処理部と、
前記発振回路から可動電極、固定電極を経て発振回路に戻る発振ループが形成されることを特徴とする。
【0008】
前記圧電板は、第1の励振電極及び第2の励振電極により挟まれる電極形成部位から一端側または他端側に寄った位置に、当該部位よりも厚さが小さい薄状部位を備え、圧電板に外力が加わったときに電極形成部位よりも当該薄状部位の撓み量が大きくなるように構成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、圧電板に外力が加わって撓むとあるいは撓みの程度が変わると、圧電板側の可動電極とこの可動電極に対向する固定電極との間の距離が変わり、このため両電極間の容量が変わり、この容量変化を圧電板の発振周波数の変化として捉えている。従って圧電板の僅かな変形も発振周波数の変化として検出できる。そして圧電板の両側の可変容量に対応する周波数を時分割で取り込み、圧電板の一方側の可変容量に対応する発振周波数の変化率と圧電板の他方側の可変容量に対応する発振周波数の変化率との差分に基づいて圧電板に加わる外力を評価している。この結果圧電板の周波数に含まれる温度特性の誤差分が抑えられ、圧電板に加わる外力を高精度に測定することができ、しかも装置構成が簡素である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る外力検出装置を加速度検出装置に適用した実施形態を示す縦断側面図である。
【図2】上記のの実施形態における容器内を示す横断平面図である。
【図3】上記の実施形態に用いられる水晶振動子の下面を示す下面図である。
【図4】加速度検出装置の回路構成を示すブロック図である。
【図5】前記加速度検出装置の等価回路を示す回路図である。
【図6】前記加速度検出装置の等価回路を示す回路図である。
【図7】前記加速度検出装置を用いて取得した加速度と周波数差との関係を示す特性図である。
【図8】水晶板が加速度による外力が加わって撓む様子を模式的に示す説明図である。
【図9】第1の可変容量側の発振周波数と第2の可変容量側の発振周波数とを時分割でと込む様子を示すタイムチャートである。
【図10】水晶版の変形例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
本発明を加速度検出装置に適用した実施形態について説明する。図1は加速度検出装置のセンサー部分である外力検出センサーに相当する加速度センサーを示す図であり、図1中、1は直方体形状の密閉型の例えば水晶からなる容器であり、内部に不活性ガス例えば窒素ガスが封入されている。この容器は基台をなす下部分1aとこの下部分1aに周縁部にて接合される上部分1bとから構成されている。なお容器1としては必ずしも密閉型の容器に限定されるものではない。容器1内には、水晶からなる台座11が設けられ、この台座11の上面に導電性接着剤10により圧電板である水晶板2の一端側が固定されている。即ち水晶板2は台座11に片持ち支持されている。水晶板2は、例えばXカットの水晶を短冊状に形成したものであり、厚さが例えば数十μmオーダ、例えば0.03mmに設定されている。従って水晶板2に交差する方向に加速度を加えることにより、先端部が撓む。
【0012】
水晶板2は、図1及び図2に示すように上面の中央部に一方の励振電極31が設けられ、また図1及び図3に示すように下面における、前記励振電極31と対向する部位に他方の励振電極41が設けられている。従って水晶板2及び励振電極31、41により水晶振動子が構成される。上面側の励振電極31には、帯状の引き出し電極32が接続され、この引き出し電極32は、水晶板2の一端側で下面に折り返されて、導電性接着剤10と接触している。台座11の上面には金属層からなる導電路12の一端側が露出し、この導電路12は、容器1を支持している絶縁基板13を介して、絶縁基板13上の発振回路14の一端に接続されている。なお発振回路の一部あるいは全部は例えばパッケージ化されており、図1ではパッケージに符号14を付している。
【0013】
図1及び図3に示すように下面側の励振電極41には、帯状の引き出し電極42が接続され、この引き出し電極42は、水晶板2の他端側(先端側)まで引き出され、可変容量形成用の第1の可動電極51、及び第2の可動電極52に接続されている。より詳しく説明すると、引き出し電極42は励振電極41よりも幅狭に形成されており、この引き出し電極42における水晶板2の他端側に引き出し電極41よりも幅広の第1の可動電極51が形成されている。そしてこの第1の可動電極51は水晶板2の他端側にて水晶板2の上面側に折り返されて、下面側の第1の可動電極51に対して水晶板2を介して対向する部位に電極を形成している。この下面側の電極52が第2の可動電極52に相当する。なお「可動」という用語は、水晶板2が撓んだときに水晶板2と共に動くことから使用している。
【0014】
一方容器1側には、前記第1の可動電極51及び第2の可動電極52との間で夫々可変容量を形成する第1の固定電極61及び第2の固定電極62が設けられている。容器1の底部にはコンベックス状の水晶からなる突起部7aが設けられている。この突起部7aは平面図で見ると四角形である。第1の固定電極61はこの突起部7aにおいて、第1の可動電極51と概ね対向するように設けられている。また容器1の上部分1bには、その下面が湾曲している突起部7bが設けられ、第2の固定電極62はこの突起部7bにおいて、第2の可動電極52と概ね対向するように設けられている。
【0015】
図1及び図4に示すように第1の固定電極61は、突起部7a及び絶縁基板13を介して配線された導電路15を介してスイッチ部8に接続されている。第2の固定電極61は、突起部7ba及び絶縁基板13を介して配線された導電路16を介してスイッチ部8に接続されている。このスイッチ部8は共通接点側が導電路17を介して発振回路14の他端に接続されており、第1の固定電極61及び第2の固定電極62を発振回路14に切り替え接続する役割を果たす。このスイッチ部8を例えば100msごとに切り替えることにより、発振回路14を第1の固定電極61側に切り替えたときの発振周波数と、発振回路14を第2の固定電極62側に切り替えたときの発振周波数とが交互に得られる。
【0016】
図4に示すように発振回路14の後段には周波数検出部100が設けられ、前記スイッチ部8の切り替え作用により、第1の固定電極61側に切り替えたときの発振周波数f1と第2の固定電極62側に切り替えたときの発振周波数f2とが時分割データとして交互に周波数検出部100に取り込まれることになる。周波数検出部100の後段には計測処理部101が設けられている。計測処理部101は、時分割で取り込まれたこれら周波数f1、f2に基づいて外力である加速度を評価するためのデータ処理を行う。具体的なデータ処理については後述する。なお、一例として周波数検出部100が基板13に搭載され、計測処理部101は基板13には搭載されず、例えばパーソナルコンピュータにより処理される場合を示しているが、本発明はこの構成に限られるものではない。
【0017】
図5は等価回路を示している。水晶板2は、例えば下向きに外力が加わると下側に撓み、このため第1の可動電極51と第1の固定電極61との間の容量Cv1、及び第2の可動電極52と第2の固定電極62との間の容量Cv2が変わることから、これら容量は可変容量ということができる。このため図5では可変容量の記号を用いてCv1、Cv2を表現している。
【0018】
図6は水晶振動子を等価回路で示すと共に、発振回路14を容量成分として取り扱い、可変容量Cv1、Cv2を一般化してCvとして表した等価回路図である。L1は水晶振動子の質量に対応する直列インダクタンス、C1は直列容量、R1は直列抵抗、C0は電極間容量を含む実効並列容量、CLは、水晶振動子から見た発振回路14を含む負荷容量である。
【0019】
水晶板2の先端部には錘を設けて、加速度が加わったときに撓み量が大きくなるようにしてもよい。この場合、可動電極51、52の厚さを大きくして錘を兼用してもよいし、水晶板2の下面側に可動電極51、52とは別個に錘を設けてもよいし、あるいは水晶板2の上面側に錘を設けても良い。
ここで国際規格IEC 60122−1によれば、水晶発振回路の一般式は次の(1)式のように表される。
【0020】
FL=Fr×(1+x)
x=(C1/2)×1/(C0+CL) ……(1)
FLは、水晶振動子に負荷が加わったときの発振周波数であり、Frは水晶振動子そのものの共振周波数である。
【0021】
説明の煩雑化を避けるために、第1の可動電極51と第1の固定電極61との間の可変容量Cv1についてだけ着目する。なお式の説明ではCv1をCvとして取り扱う。本実施形態では、図6に示されるように、水晶板2の負荷容量は、CLにCvが加わったものである。従って(1)式におけるCLの代わりに(2)式で表されるyが代入される。
【0022】
y=1/(1/Cv+1/CL) ……(2)
従って水晶板2の撓み量が状態1から状態2に変わり、これにより可変容量がCvからCv´に変わったとすると、周波数の変化dFLは、(3)式で表される。なお、可変容量を一般化してCvと表現しているが、記号の多用化による式の煩雑さを避けるために、状態変化の前後の記号を夫々Cv及びCv´として表すことにする。
【0023】
dFL=FL´−FL=A×CL×(Cv´−Cv)/(B×C)…(3)
ここで、
A=C1×Fr/2
B=C0×CL+(C0+CL)×Cv
C=C0×CL+(C0+CL)×Cv´
である。
【0024】
また水晶板2に加速度が加わっていないときのいわば基準状態にあるときにおける可動電極51及び固定電極61の間の離間距離をdとし、水晶板2に加速度が加わったときの前記離間距離をd´とすると、(4)式が成り立つ。
【0025】
Cv=S×ε/d
Cv´=S×ε/d´ ……(4)
ただしSは可動電極51及び固定電極61の対向領域の面積、εは比誘電率である。
【0026】
dは既知であることから、dFLとd´とが対応関係にあることが分かる。
【0027】
このような実施形態のセンサー部分である加速度センサーは、加速度に応じた外力が加わらない状態においても水晶板2が若干撓んだ状態にある。なお水晶板2が撓んだ状態にあるか水平姿勢が保たれているかは、水晶板2の厚さなどに応じて決まってくる。
そしてこのような構成の加速度センサーを例えば横揺れ検出用の加速度センサーと縦揺れ検出用の加速度センサーとを用い、前者は水晶板2が垂直になるように設置され、後者は水晶板2が水平になるように設置される。
【0028】
そして地震が発生してあるいは模擬的な振動が加わると、水晶板2は先端が例えば下がるように撓む。なおこの様子は後述の図8に模式的に示してある。振動が加わらない状態において周波数検出部100により検出した周波数をFL、振動(加速度)が加わった場合の周波数をFL´とすると、周波数の差分FL´−FLは(3)式で表される。本発明者は(FL´−FL)/FLと、加速度との関係を調べて、図7に示す関係を実際に得ている。従って前記周波数の変化分を測定することにより加速度が求まることが裏付けられている。
【0029】
ところで水晶の発振周波数は雰囲気温度により変わるため、つまり温度特性を持っているため、(FL´−FL)/FLの値は温度によって変わる。そこで本発明では、水晶板2の両側に可変容量を形成し、第1の可変容量Cv1の変化に起因する発振周波数の変化率(FL1´−FL1)/FL1と第2の可変容量Cv2に起因する発振周波数の変化率(FL2´−FL2)/FL2との差分により、加速度を評価するようにしている。FL1、FL2は水晶板2に外力が加わらない場合、あるいは基準となる外力が加わっている場合の発振周波数である。そしてFL1´及びFL2´は測定対象となる外力が加わったときの発振周波数である。
【0030】
より具体的に説明すると、図8に示すように水晶板2が第1の固定電極61側に撓んで第1の可変容量(可変電極51及び固定電極61間の容量)がCv1からCv1´に変化し、第2の可変容量(可変電極52及び固定電極62間の容量)がCv2からCv2´に変化した場合、FL1´はFL1よりも大きくなり、FL2´はFL2よりも小さくなる。なお、Cv1、Cv2は水晶板2の上側、下側の可変容量の区別のための符号であるが、記号の多用による煩雑化を避けるために基準位置における容量値も表しているものとする。FL1の変化率[(FL1´−FL1)/FL1]を(Δf1/f1)、FL2の変化率[(FL2´−FL2)/FL2]を(Δf2/f2)と定義すると、(Δf1/f1)は正の値になり、(Δf2/f2)は負の値になる。また水晶板2が図8に示す方向とは逆向きである第2の固定電極62側に撓んだ場合には、前記変化率の符号は逆になる。
【0031】
そこでこの実施形態では、可変容量Cv1の変化に起因する周波数の変化率(Δf1/f1)の絶対値と可変容量Cv2の変化に起因する周波数の変化率(Δf2/f2)の絶対値との差分を外力の評価値として使用する。説明の便宜上極めて模式的な数値を使用すれば、例えば水晶板2が下向きに撓んで、変化率(Δf1/f1)が10%となり、この値に温度変化分の変化率が1%含まれていると、可変容量CV1の変化に基づく変化率は実際には9%となる。一方変化率(Δf2/f2)が−12%になったとし、この値に温度変化分の変化率が同様に1%含まれているとすると、可変容量CV2の変化に基づく変化率は実際には−11%となる。しかし変化率(Δf1/f1)の絶対値と変化率(Δf2/f2)の絶対値との差分を取り出すと、−2%となり、温度変化分の変化率がキャンセルされる。
【0032】
図3に戻って、101は例えばパーソナルコンピュータからなるデータ処理部であり、このデータ処理部101は、周波数検出部100から得られた時分割データである、可変容量CV1側(第1の固定接点61側)に切り替えたときの周波数f1と、可変容量CV2側(第2の固定接点62側)に切り替えたときの周波数f2と、に基づいて、既述の変化率(Δf1/f1)の絶対値と変化率(Δf2/f2)の絶対値との差分を求める機能を備えている。データ処理部101に含まれるメモリには、水晶板2に外力が加わらない場合、あるいは基準となる外力が加わっている場合のいわば基準状態にあるときの周波数FL1、FL2の値が記憶されている。
【0033】
またデータ処理部101に含まれるメモリには、変化率(Δf1/f1)の絶対値と変化率(Δf2/f2)の絶対値との差分と、水晶板2に加わる外力との関係を規定したデータが記憶されており、前記差分を演算して求めた後、この差分に対応する外力(この例では加速度)が前記データから求められる。
【0034】
また水晶板2が下向きの状態における前記差分の値と、水晶板2が上向きの状態における前記差分の値との一部が同じ値である場合には、水晶板2の撓みの向きが下向きか上向きかを判別し、その判別結果により、使用するデータを選択すればよい。この判別は例えば変化率(Δf1/f1)の符号を調べることにより行なうことができる。
【0035】
上述の実施の形態の作用について説明する。例えば図1に示すセンサー部分について鉛直方向に作用する外力を測定する場合には、例えば絶縁基板13を水平面に沿って設置する。スイッチ部8の切り替え動作により、図9に示すようにP1発振とP2発振とが交互に行なわれ、そのときの発振回路14の発振周波数が周波数検出部100に送られる。なおP1発振とは、スイッチ部8が固定電極61側に切り替えられたときの発振状態であり、P2発振とは、とは、スイッチ部8が固定電極62側に切り替えられたときの発振状態である。切り替えは例えば概ね100msごとに行なわれるが、切り替え初期の所定のタイミングであるガードタイム(GT)は、発振が不安定であることから、周波数検出部100ではこのGTが経過してからの周波数を測定値として取り扱う。
【0036】
そしてセンサー部分に加速度により例えば下向きの外力が加わって図8に示すように水晶板2が撓むと、既に詳述したように下側の可変容量Cv1が変化することにより、周波数がFL1からFL1´に変わり、また上側の可変容量Cv2が変化することにより、周波数がFL2からFL2´に変わる。データ処理部101では、FL1の変化率[(FL1´−FL1)/FL1]である(Δf1/f1)と、FL2の変化率[(FL2´−FL2)/FL2]である(Δf2/f2)とを求め、これら変化率の絶対値の差分を求める。そしてメモリ内のデータを参照してこの差分値に対応する外力の大きさを求め、例えば図示しない表示部に外力の大きさである加速度を表示する。
【0037】
上述実施の形態によれば次の効果がある。水晶板2に外力が加わって撓むとあるいは撓みの程度が変わると、水晶板2側の可動電極51(52)とこの可動電極51(52)に対向する固定電極61(62)との間の距離が変わり、このため可動電極51と固定電極61との間の容量、及び可動電極52と固定電極62との間の容量が変わり、この容量変化を水晶板2の発振周波数の変化として捉えている。従って水晶板2の僅かな変形も発振周波数の変化として検出できる。そして水晶板2の両側の可変容量に対応する周波数を時分割で取り込み、水晶板2の一方側の可変容量Cv1に対応する発振周波数の変化率と水晶板2の他方側の可変容量Cv2に対応する発振周波数の変化率との差分に基づいて水晶板2に加わる外力を評価している。この結果水晶板2の周波数に含まれる温度特性の誤差分が抑えられ、水晶板2に加わる外力、この例では加速度を高精度に測定することができ、しかも装置構成が簡素である。
【0038】
図10は水晶板2の変形例を示している。この水晶板2は、励振電極31、41により挟まれる電極形成部位から先端側に寄った位置に、当該部位よりも厚さが小さい薄状部位200を備え、水晶板2に外力が加わったときに電極形成部位よりも当該薄状部位200の撓み量が大きくなるように構成されている。また薄状部位200の先端側には電極形成部位よりも厚さが大きい拡大部位201が形成され、この拡大部位201に可動電極51、52が形成されている。なお、薄状部位200は、電極形成部位よりも水晶板2の先端側とは反対側に形成されていてもよい。
【0039】
このような水晶板2によれば、励振電極31、41により挟まれる電極形成部位よりも、励振電極31、41が配置されていない薄状部位200の撓みが大きくなることから、撓みによる周波数の変化量を抑えることができる。また拡大部位201を設けていることから、外力に対する感度(撓み量)を高めることができる。
【0040】
以上において本発明は、加速度を測定することに限らず、磁力の測定、被測定物の傾斜の度合いの測定、流体の流量の測定、風速の測定などにも適用することができる。
磁力を測定する場合の構成例について述べる。例えば水晶板2における可動電極51と励振電極41との間の部位に磁性体の膜を形成し、磁場に当該磁性体が位置すると水晶板2が撓むように構成する。磁性体は膜に限られるものではなく、また取り付け部位についても、磁力により水晶板2が撓む位置であれば上述の例に限定されるものではない。
また被測定物の傾斜の度合いの測定については、水晶板2を支持している基台を予め種々の角度に傾け、各傾斜角度ごとに周波数情報を得ておき、当該基台を被測定面に設置したときの周波数情報から傾斜角度を検出することができる。
更にまた気体や液体などの流体中に水晶板2を晒し、水晶板の撓み量に応じて周波数情報を介して流速を検出することができる。この場合、水晶板2の厚さは流速の測定範囲などにより決定される。更にまた本発明は重力を測定する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 容器
11 台座
12、15〜17 導電路
2 水晶板
31、41 励振電極
14 発振回路
51、52 可動電極
61、62 固定電極
8 スイッチ部
Cv1、Cv2 可変容量
100 周波数検出部
101 データ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電板に作用する外力を検出する外力検出装置であって、
容器内に設けられ、一端側が支持された片持ちの圧電板と、
この圧電板を振動させるために、当該圧電板の一面側及び他面側のうちの一方及び他方に夫々設けられた第1の励振電極及び第2の励振電極と、
前記第1の励振電極に電気的に接続された発振回路と、
前記圧電板の他端側にて一面側及び他面側のうちの一方及び他方に夫々設けられ、前記第2の励振電極に電気的に接続された可変容量形成用の第1の可動電極及び第2の可動電極と、
前記容器内に、前記第1の可動電極及び第2の可動電極に夫々対向するように設けられ、圧電板の撓みにより前記第1の可動電極との間の容量が変化する第1の固定電極及び圧電板の撓みにより前記第2の可動電極との間の容量が変化する第2の固定電極と
第1の固定電極及び第2の固定電極を発振回路に切り替え接続するスイッチ部と、
前記発振回路の発振周波数を検出するための周波数検出部と、を備え、
前記スイッチ部が第1の固定電極に切り替えられたときに周波数検出部にて検出された周波数と前記スイッチ部が第2の固定電極に切り替えられたときに周波数検出部にて検出された周波数を検出し、圧電板に外力が加わることによるこれら周波数の各々の変化率の差分に基づいて前記外力を評価するための計測処理部と、
前記発振回路から可動電極、固定電極を経て発振回路に戻る発振ループが形成されることを特徴とする外力検出装置である。
【請求項2】
前記圧電板は、第1の励振電極及び第2の励振電極により挟まれる電極形成部位から一端側または他端側に寄った位置に、当該部位よりも厚さが小さい薄状部位を備え、圧電板に外力が加わったときに電極形成部位よりも当該薄状部位の撓み量が大きくなるように構成されていることを特徴とする外力検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−11532(P2013−11532A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144889(P2011−144889)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】