説明

外壁材取付システム

【課題】外壁材取付け作業の作業効率を向上できる外壁材取付システムを提供すること。
【解決手段】外壁材取付システム1は、建築中の建物10に外壁材20を取り付ける。建物10のフロア11Aには、床14が構築され、外壁材20の下側を支持して外壁材20をフロア10A内で運搬可能な下側支持台車30を備える。この下側支持台車30は、外壁材20の下端縁が載置されて床14の上を走行可能な台車本体31と、この台車本体31から後方かつ上方に延びる把持部32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁材取付システムに関する。詳しくは、建築中の建物に外壁材を取り付ける外壁材取付システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カーテンウォールやプレキャストコンクリート版などの外壁材は、以下の手順で取り付けられる。すなわち、現場敷地内の地上面の一部を区画して建方ヤードとし、搬入車両からこの建方ヤードに外壁材を荷下ろして集積しておく。そして、揚重クレーンにて、この建方ヤードから外壁材を揚重して所定位置に取り付けてゆく(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−76932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現場敷地内の一部に建方ヤードを設けると、この建方ヤード部分の工事に着手するのが遅延するうえに、建方ヤードを迂回して搬出入の導線を設ける必要があるため、工程管理が難しくなる、という問題があった。
【0005】
そこで、近年、建物の所定のフロアを建方ヤードとして利用することが提案されている。すなわち、外壁材を搬入して、建方ヤードに集積しておき、この集積した外壁材を床端部まで運搬し、揚重クレーンで吊り上げて、建物に取り付ける。
【0006】
ここで、建方ヤードとなるフロアの階高に対して外壁材の長さが長い場合、外壁材を吊り上げる手順は、以下のようになる。
まず、台車を2台用意し、一方の台車に外壁材の上側を載置するとともに、他方の台車に外壁材の下側を載置して、外壁材を略水平に寝かせた状態とする。ここで、外壁材の上側を支持する台車を上側支持台車とし、外壁材の下側を支持する台車を下側支持台車とする。具体的には、下側支持台車は、外壁材の下側でかつ中心寄りの位置を支持しており、外壁材の下に隠れている。
【0007】
次に、作業員が外壁材を押して床端部まで運搬し、外壁材の上側を床端部側に配置する。
次に、揚重クレーンの吊りフックを建物の外壁面沿いに下ろして、この揚重クレーンで外壁材の上側を支持した後、上側支持台車を取り外す。
【0008】
次に、下側支持台車の後方の床面に端太角材を敷き、外壁材の下端縁がこの端太角材の上に載るように、揚重クレーンを巻上げて外壁材の上側を上方に吊り上げ、外壁材を建て起こす。
その後、さらに揚重クレーンを巻き上げて、外壁材を上方に吊り上げながら外部に向かって引き出す。このとき、外壁材が自重により上側を中心として回転し、この回転力により外壁材の下側が外部に向かって引っ張られる。そこで、外壁材の下端側に介助ロープを連結しておき、作業員がこの介助ロープを内側に引っ張って、外壁材の下端側の移動を調整する。
【0009】
以上の手法では、外壁材を移動する際、下側支持台車が外壁材の下に隠れているため、作業員は、下側支持台車ではなく外壁材を押して移動する。また、外壁材を建て起こす際、作業員が介助ロープの力加減を微調整する必要があった。そのため、外壁材を精度良く制御するのが難しく、外壁材取付け作業の作業効率が低下していた。
【0010】
本発明は、建方ヤードとなるフロアの階高に対して外壁材の長さが長い場合でも、外壁材取付け作業の作業効率を向上できる外壁材取付システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の外壁材取付システムは、建築中の建物に外壁材を取り付ける外壁材取付システムであって、前記建物の所定フロアには、床が構築され、前記外壁材の下側を支持して当該外壁材を前記所定フロア内で運搬可能な台車を備え、当該台車は、前記外壁材の下端縁が載置されて前記床の上を走行可能な台車本体と、当該台車本体から後方かつ上方に延びる把持部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
外壁材としては、アルミカーテンウォールやプレキャストコンクリート版が挙げられる。
【0013】
この発明によれば、外壁材の下端縁を台車の上に載せて、この台車で外壁材の下端縁を支持し、さらに台車本体から後方かつ上方に延びる把持部を設けた。
よって、台車を前進や停止させる際、作業員が把持部を把持することで、従来のようにかがんだ姿勢で操作する必要がなく、立った姿勢で台車を操作できるので、作業員の負担を軽減して、外壁材の移動を精度良く制御できる。
また、把持部が後方に延びているため、作業員が床の端部から離れることができ、作業の安全性が向上する。
【0014】
また、外壁材を建て起こす際、外壁材の下端縁を台車の上に載せた状態で建て起こす。よって、従来のように外壁材の下端縁を端太角材の上に載せて建て起こす場合に比べて、作業員の踏ん張りが効くから、台車を確実に操作できる。
また、外壁材を建て起こす際に外壁材の自重により台車が床の外側に向かって引っ張られても、作業員は、把持部により台車を直接的に操作できるので、従来のように介助ロープを引っ張って台車を間接的に操作する場合に比べて、外壁材を安全かつ精度良く制御できる。
【0015】
以上より、建方ヤードとなるフロアの階高に対して外壁材の長さが長い場合でも、外壁材取付け作業の作業効率を向上できる。
【0016】
以上の外壁材取付システムは、前記外壁材の上側を支持して当該外壁材を前記所定フロア内で運搬可能な第2の台車をさらに備えることが好ましい。
【0017】
この発明によれば、上述の台車で外壁材の下側を支持するとともに、第2の台車で外壁材の上側を支持して、外壁材を寝かせて略水平状態とする。そして、これら2台の台車を押して床端部まで運搬する。よって、外壁材を略水平状態に維持しながら水平方向に確実に運搬できる。
【0018】
請求項2に記載の外壁材取付システムは、前記所定フロアの床に設けられて当該床の端部から外側に跳ね出した跳ね出し部をさらに備え、前記台車は、当該跳ね出し部の上面を走行可能であることを特徴とする。
【0019】
外壁材を建て起こして上方に吊り上げる際、外壁材の上側は、揚重クレーンに吊り下げられて、建物の外壁面沿いつまり床端部に位置しているが、外壁材の下側は、下側支持台車に支持されているため、建物の外壁面よりも内側つまり床端部よりも内側に位置している。よって、外壁材を上方に吊り上げるタイミングと下側支持台車を床端部に向かって移動するタイミングとを同期させないと、外壁材や揚重クレーンが建物に接触して損傷するおそれがあった。
【0020】
そこで、この発明によれば、床の端部から外側に跳ね出した跳ね出し部を設けた。よって、外壁材を建て起こして上方に吊り上げる際、この跳ね出し部の上面に台車を走行させて、床の外側まで台車を移動することで、外壁材をできる限り床の外側に位置させる。そして、この状態で揚重クレーンを巻上げて、外壁材を上方に吊り上げて建て起こす。よって、外壁材や揚重クレーンが建物に接触して損傷するのを確実に防止できる。また、このとき、把持部が後方に延びているため、作業員が跳ね出し部に接近せずに済み、作業の安全性がさらに向上する。
【0021】
また、揚重クレーンで外壁材の上側を支持する際、跳ね出し部の上面に第2の台車を走行させて、床の外側まで第2の台車を移動することで、外壁材をできる限り床の外側に位置させる。これにより、外壁材や揚重クレーンが建物に接触して損傷するのを確実に防止できる。
【0022】
請求項3に記載の外壁材取付システムは、前記所定フロアには、前記床の端部を含む建方ヤードが区画され、前記外壁材は、当該建方ヤード内で仮置きされて、前記台車により運搬されることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、所定フロアに建方ヤードを区画した。よって、搬入した外壁材を一旦建方ヤードに集積しておき、その後、集積した外壁材を台車により建方ヤード内で運搬して吊り上げる。このように建方ヤード内で外壁材の取り扱いを行うので、外壁材取付け作業の安全性を確保できる。
【0024】
請求項4に記載の外壁材取付システムは、前記台車の車輪は、進行方向に沿って2列に配置され、前記跳ね出し部は、前記所定フロアの床に設けられて互いに略平行に延びる一対の平版状の延出部と、当該延出部の側端に立設された壁部と、を備え、前記一対の延出部のそれぞれの上面には、前記台車の各列の車輪が走行可能であり、前記壁部は、前記台車の各列の車輪を案内することを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、台車の車輪を2列とし、この2列の車輪に合わせて延出部を一対設けたので、台車の製作コストを低減できる。
壁部を設けて台車の車輪を案内させたので、台車が跳ね出し部から脱落するのを確実に防止できる。
【0026】
以上の外壁材取付システムは、前記台車に設けられて当該台車の幅方向を回転軸として回転可能に吊り下げ支持されたストッパをさらに備えることが好ましい。
【0027】
この発明によれば、ストッパの下端を前方に振り上げた状態で、作業員が把持部を押して台車を前進させる。そして、外壁材の建て起こし作業を行う際には、ストッパを回転させて床面に立てておく。これにより、台車が移動するのを規制できるから、外壁材の建て起こし作業の安全性をより向上できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、外壁材の下端縁を台車の上に載せて、この台車で外壁材の下端縁を支持し、さらに台車本体から後方かつ上方に延びる把持部を設けた。
よって、台車を前進や停止させる際、作業員が把持部を把持することで、従来のようにかがんだ姿勢で操作する必要がなく、立った姿勢で台車を操作できるので、作業員の負担を軽減して、外壁材の移動を精度良く制御できる。また、把持部が後方に延びているため、作業員が床の端部から離れることができ、作業の安全性が向上する。また、外壁材を建て起こす際、外壁材の下端縁を台車の上に載せた状態で建て起こす。よって、従来のように外壁材の下端縁を端太角材の上に載せて建て起こす場合に比べて、作業員の踏ん張りが効くから、台車を確実に操作できる。
また、外壁材を建て起こす際に外壁材の自重により台車が床の外側に向かって引っ張られても、作業員は、把持部により台車を直接的に操作できるので、従来のように介助ロープを引っ張って台車を間接的に操作する場合に比べて、外壁材を安全かつ精度良く制御できる。以上より、建方ヤードとなるフロアの階高に対して外壁材の長さが長い場合でも、外壁材取付け作業の作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る外壁材取付システムが適用された建築中の建物の一部の断面図である。
【図2】前記実施形態に係る建物の建方ヤードの拡大斜視図である。
【図3】前記実施形態に係る建物に外壁材を取り付ける手順を説明するための断面図(その1)である。
【図4】前記実施形態に係る建物に外壁材を取り付ける手順を説明するための断面図(その2)である。
【図5】本発明の変形例に係る下側支持台車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る外壁材取付システム1が適用された建築中の建物10の一部の断面図である。
建築中の建物10は、複数のフロアを有する鉄骨造の建物である。この建物10の各フロアのうち図1に示す3つのフロア11A、11Bは、柱12や梁13などの構造体が構築された後、床コンクリートが打設されて床14が構築されているが、まだ外壁材20が取り付けられていない状態である。
【0031】
各フロア11A、11Bのうち図1中の中央のものを所定のフロアとしてのフロア11Aとし、このフロア11Aの上下のフロアをフロア11Bとする。
フロア11Aでは、床端部を含む建方ヤード15が垂直ネット16で区画されている。具体的には、垂直ネット16は、天井の小梁から床面まで延びており、立入禁止措置がとられている。
この建方ヤード15の床端部の近傍では、天井の小梁から床面まで延びる垂直ネット17が張られている。
【0032】
フロア11Bでは、床端部の近傍に腰の高さに被覆ワイヤ18が張られて、被覆ワイヤ18から床面まで延びる小幅ネット19が張られている。
また、フロア11Bでは、フロア11Aと同様に、床端部の近傍でかつ被覆ワイヤ18の内側に、天井の小梁から床面まで延びる垂直ネット17が張られている。
【0033】
フロア11Aの建方ヤード15には、外壁材取付システム1が設けられている。この外壁材取付システム1は、建築中の建物10に外壁材20を取り付けるものであり、下側支持台車30と、第2の台車としての上側支持台車40と、跳ね出し部50と、を備える。
【0034】
図2は、外壁材取付システム1の拡大斜視図である。
外壁材20は、矩形平版状のアルミカーテンウォールであり、矩形平版状である。この外壁材20は、側面視で、上側および下側に段差が形成された形状である。この外壁材20の長さは、建方ヤード15となるフロア11Aの階高よりも長くなっている。
【0035】
下側支持台車30は、外壁材20の下側を支持してこの外壁材20をフロア11Aの建方ヤード15内で運搬可能である。
この下側支持台車30は、外壁材20の下端縁が載置されて床14の上を走行可能な台車本体31と、この台車本体31から後方かつ上方に延びる把持部32と、を備える。
【0036】
台車本体31は、平面視矩形状でありかつ上面に段差が形成された基部311と、この基部311の下面の四隅に設けられた4つの自在車の車輪312と、基部311の2つの上面のそれぞれに設けられたゴム製で平版状の支持部313と、を備える。
台車本体31の4つの車輪312は、基部311の下面の四隅に設けられているため、進行方向に沿って2列に配置されている。
基部311および支持部313の段差は、外壁材20の下側の段差に合わせて形成されており、外壁材20を運搬する際、下側支持台車30の支持部313の上には、外壁材20の下側が載置される。
【0037】
把持部32は、台車本体31の基部311の後端から後方かつ上方に斜めに略平行に延びる一対のフレーム321と、これらフレーム321同士を連結して基部311の幅方向に略水平に延びる棒状の把持フレーム322と、を備える。
【0038】
上側支持台車40は、外壁材20の上側を支持してこの外壁材20をフロア11Aの建方ヤード15内で運搬可能である。
この上側支持台車40は、矩形平版状の基部41と、この基部41の下面の四隅に設けられた4つの自在車の車輪42と、基部41の上に設けられたゴム製で平版状の支持部43と、を備える。
外壁材20を運搬する際、上側支持台車40の支持部43の上には、外壁材20の上側が載置される。
【0039】
また、建方ヤード15の床14には、床14の端部から外側に跳ね出した跳ね出し部50が設けられており、下側支持台車30は、この跳ね出し部50の上面を走行可能である。
跳ね出し部50は、フロア11Aの床14に設けられて互いに略平行に延びる一対の平版状の延出部51と、これら一対の延出部51の側端および前端に立設された壁部52と、一対の延出部51同士を連結する連結部53と、を備える。
一対の延出部51は、それぞれ、床14にアンカーで固定されている。一対の延出部51のそれぞれの上面には、下側支持台車30の各列の車輪312が走行可能となっている。
壁部52は、下側支持台車30の各列の車輪312を案内する。
【0040】
以下、建方ヤード15において、外壁材20を床端部まで運搬して揚重クレーン60で吊り上げる手順について説明する。
【0041】
まず、図1および図2に示すように、上側支持台車40に外壁材20の上側を支持させ、下側支持台車30に外壁材20の下側を支持させて、外壁材20を略水平に寝かせた状態とする。
次に、上側支持台車40に作業員71を割り当て、下側支持台車30に作業員70を割り当てて、これら2名の作業員70、71で台車30、40を押して跳ね出し部50の設けられた床端部まで外壁材20を運搬して、上側支持台車40を床端部に配置する。このとき、下側支持台車30の作業員70は、把持部32の把持フレーム322を把持して下側支持台車30を押す。
【0042】
次に、延長安全帯61を用いて上側支持台車40および下側支持台車30を操作する作業員70、71の安全を確保し、床端部近傍の垂直ネット17を捲り上げる。
【0043】
次に、揚重クレーン60の吊りフック62を跳ね出し部50の直上に位置させ、建物10の外壁面沿い下ろす。
そして、外壁材20の上側を支持している上側支持台車40を床端部の跳ね出し部50に向かって前進させる。そして、上側支持台車40を跳ね出し部50の上面に走行させて、床端部の外側まで上側支持台車40を移動して、外壁材20をできる限り床14の外側に位置させる。
その後、図3に示すように、揚重クレーン60の吊りフック62を、ワイヤ63を介して外壁材20の上側に連結し、揚重クレーン60で外壁材20を支持した後、外壁材20の上側を支持していた上側支持台車40を取り外す。
【0044】
次に、図4に示すように、揚重クレーン60を巻き上げて、外壁材20を上方に吊り上げるとともに、外壁材20の下側を支持している下側支持台車30を床端部の跳ね出し部50に向かって前進させる。そして、下側支持台車30を跳ね出し部50の上面に走行させて、床端部の外側まで下側支持台車30を移動して、外壁材20をできる限り床14の外側に位置させる。
その後、さらに揚重クレーン60を巻上げて、外壁材20を上方に吊り上げるとともに下側支持台車30を取り外して、外壁材20を鉛直状態とする。
【0045】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)外壁材20の下端縁を下側支持台車30の上に載せて、この下側支持台車30で外壁材20の下端縁を支持し、さらに台車本体31から後方かつ上方に延びる把持部32を設けた。
よって、下側支持台車30を前進や停止させる際、作業員が把持部32を把持することで、従来のようにかがんだ姿勢で操作する必要がなく、立った姿勢で下側支持台車30を操作できるので、作業員70の負担を軽減して、外壁材20の移動を精度良く制御できる。
また、把持部32が後方に延びているため、作業員が床14の端部から離れることができ、作業の安全性が向上する。
【0046】
また、外壁材20を建て起こす際、外壁材20の下端縁を下側支持台車30の上に載せた状態で建て起こす。よって、従来のように外壁材の下端縁を端太角材の上に載せて建て起こす場合に比べて、作業員70の踏ん張りが効くから、下側支持台車30を確実に操作できる。
また、外壁材20を建て起こす際に外壁材20の自重により下側支持台車30が床14の外側に向かって引っ張られても、作業員70は、把持部32により下側支持台車30を直接的に操作できるので、従来のように介助ロープを引っ張って台車を間接的に操作する場合に比べて、外壁材20の建て起こしを安全かつ精度良く制御できる。
【0047】
以上より、建方ヤード15となるフロア11Aの階高に対して外壁材20の長さが長い場合でも、外壁材取付け作業の作業効率を向上できる。
【0048】
(2)下側支持台車30で外壁材20の下側を支持するとともに、上側支持台車40で外壁材20の上側を支持して、外壁材20を寝かせて略水平状態とする。そして、これら2台の台車30、40を押して床14の端部まで運搬する。よって、外壁材20を略水平状態に維持しながら水平方向に確実に運搬できる。
【0049】
(3)床14の端部から外側に跳ね出した跳ね出し部50を設けた。よって、外壁材20を建て起こして上方に吊り上げる際、この跳ね出し部50の上面に下側支持台車30を走行させて、床14の外側まで下側支持台車30を移動することで、外壁材20をできる限り床14の外側に位置させる。そして、この状態で揚重クレーン60を巻上げて、外壁材20を上方に吊り上げて建て起こす。よって、外壁材20や揚重クレーン60が建物10に接触して損傷するのを確実に防止できる。また、このとき、把持部32が後方に延びているため、作業員70が跳ね出し部50に接近せずに済み、作業の安全性がさらに向上する。
【0050】
また、揚重クレーン60で外壁材20の上側を支持する際、跳ね出し部50の上面に上側支持台車40を走行させて、床の外側まで上側支持台車40を移動することで、外壁材20をできる限り床14の外側に位置させる。これにより、外壁材20や揚重クレーン60が建物10に接触して損傷するのを確実に防止できる。
【0051】
(4)フロア11Aに建方ヤード15を区画した。よって、搬入した外壁材20を一旦建方ヤード15に集積しておき、その後、集積した外壁材20を台車30、40により建方ヤード15内の跳ね出し部50まで運搬して取り付ける。このように建方ヤード15内で外壁材20の取り扱いを行うので、外壁材取付け作業の安全性を確保できる。
【0052】
(5)下側支持台車30の車輪312を2列とし、この2列の車輪312に合わせて延出部51を一対設けたので、下側支持台車30の製作コストを低減できる。
壁部52を設けて下側支持台車30の車輪312を案内させたので、下側支持台車30が跳ね出し部50から脱落するのを確実に防止できる。
【0053】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、図5(a)に示すように、さらにストッパ33を設けて下側支持台車30Aとしてもよい。具体的には、ストッパ33は、把持フレーム322に回転可能に吊り下げ支持されており、これにより、ストッパ33は下側支持台車30Aの幅方向を回転軸として回転可能である。
【0054】
このようにすれば、ストッパ33の下端を前方に振り上げた状態で、作業員が把持部32を押して下側支持台車30Aを前進させる。そして、外壁材20の建て起こし作業を行う際には、図5(b)に示すように、ストッパ33を回転させて床面に立てて、下側支持台車30Aの後輪を浮かせておく。これにより、下側支持台車30Aが移動するのを規制できるから、外壁材20の建て起こし作業の安全性をより向上できる。
【符号の説明】
【0055】
1…外壁材取付システム
10…建物
11A…フロア(所定のフロア)
11B…フロア
12…柱
13…梁
14…床
15…建方ヤード
16、17…垂直ネット
18…被覆ワイヤ
19…小幅ネット
20…外壁材
30、30A…下側支持台車(台車)
31…台車本体
32…把持部
33…ストッパ
40…上側支持台車(第2の台車)
41…基部
42…車輪
43…支持部
50…跳ね出し部
51…延出部
52…案内部
53…連結部
60…揚重クレーン
61…延長安全帯
62…吊りフック
63…ワイヤ
70、71…作業員
311…基部
312…車輪
313…支持部
321…フレーム
322…把持フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築中の建物に外壁材を取り付ける外壁材取付システムであって、
前記建物の所定フロアには、床が構築され、
前記外壁材の下側を支持して当該外壁材を前記所定フロア内で運搬可能な台車を備え、
当該台車は、前記外壁材の下端縁が載置されて前記床の上を走行可能な台車本体と、当該台車本体から後方かつ上方に延びる把持部と、を備えることを特徴とする外壁材取付システム。
【請求項2】
前記所定フロアの床に設けられて当該床の端部から外側に跳ね出した跳ね出し部をさらに備え、
前記台車は、当該跳ね出し部の上面を走行可能であることを特徴とする請求項1に記載の外壁材取付システム。
【請求項3】
前記所定フロアには、前記床の端部を含む建方ヤードが区画され、
前記外壁材は、当該建方ヤード内で仮置きされて、前記台車により運搬されることを特徴とする請求項1または2に記載の外壁材取付システム。
【請求項4】
前記台車の車輪は、進行方向に沿って2列に配置され、
前記跳ね出し部は、前記所定フロアの床に設けられて互いに略平行に延びる一対の平版状の延出部と、当該延出部の側端に立設された壁部と、を備え、
前記一対の延出部のそれぞれの上面には、前記台車の各列の車輪が走行可能であり、
前記壁部は、前記台車の各列の車輪を案内することを特徴とする請求項2に記載の外壁材取付システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87502(P2013−87502A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229435(P2011−229435)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】