説明

外用医薬組成物

【課題】空気の乾燥や加齢等が原因で発生する各種の皮膚疾患や粘膜疾患を改善又は治療する効果に優れ、要因となる症状を効率よく改善又は治療する外用医薬組成物を提供する。また本発明は、皮膚のバリア回復効果を高め、更に空気の乾燥や加齢等が原因で発生する各種疾患やそれらに付随するかゆみに対する治癒効果を高める方法を提供する。
【解決手段】本発明は、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質及びγ-オリザノールを含むことを特徴とする外用医薬組成物である。
特に、本発明は前記パンテノール類縁物質が、パントテニルエチルエーテル、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アセチルパントテニルエチルエーテルからなる群より選ばれる外用医薬組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気の乾燥や加齢等が原因で発生する各種の皮膚疾患や粘膜疾患を改善又は治療するための外用医薬組成物に関する。詳しくは、乾皮症、さめ肌、角化症、あれ、ひび、あかぎれ、かゆみ、ただれ、皮膚炎、口角炎、口唇炎等の皮膚や粘膜の疾患を改善又は治療する外用医薬組成物に関する。特に、本発明は皮膚や粘膜の健全な状態を取り戻し、前述の種々の皮膚や粘膜の疾患に対して優れた改善効果又は治療効果を発揮する外用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、季節変動等の環境変化、加齢や疾患等に伴う生理機能の変動といった生体機能の低下により、皮膚組織の機能異常が誘発され、乾皮症、さめ肌、角化症等に代表される皮膚疾患が増大している。特に家庭やオフィスにおける空調の普及や密閉化に伴う生活環境の乾燥化、紫外線照射の増大、又は高齢化人口の増大により、その患者数は増大の一途を辿り、最も一般的な皮膚疾患になっている。更にアレルギー疾患や感染症の増加によるびらん、潰瘍、角化等の粘膜症状も増大している。この様な疾患の一因として、皮膚又は粘膜のバリア機能の低下が挙げられる。本来ヒトの皮膚又は粘膜は、外界からの異物の侵入を阻止するバリア機能を持っている。しかしながら上記に挙げた原因によりバリア機能が低下し、外界からの刺激の侵入が容易となることが様々な疾患の発生源となっている。故に低下したバリア機能を回復させることがこれら疾患の治療において大きな役割を果たすと考えられる。
従来から乾皮症、さめ肌、角化症などの乾燥性皮膚疾患には、尿素、グリセリン、ヘパリン類似物質、ヒアルロン酸、水素添加レシチン等の保湿剤やトコフェロール酢酸エステル、ビタミンA油などのビタミン剤が用いられてきている。しかしながら保湿剤は、水分を保持することで高い保湿作用を示すものの直接的な皮膚バリア機能改善効果はなく、またビタミン剤はその作用が緩慢であり、効果の発現には長期の時間が必要である。この為にこれらの成分は、即効的な症状の改善や根本的な治療には十分なものではない。
また皮膚や粘膜組織の修復作用を示す成分として、アラントイン、パンテノール、グアイアズレン等の創傷治癒促進剤が挙げられる。しかしながらこれら成分の効果も緩慢であることから長期的な適用が必要であり、症状の改善には時間を必要としていた。例えば第2720246号公報には、アラントイン又はその誘導体、パンテノールの誘導体であるパントテン酸又はその誘導体を単独或いは同時に配合した皮膚外用剤の皮膚外用剤の効果は満足できるものではないことから、トレハロースを配合することにより相乗的に効果が亢進されることが記載されている。また特開2002-293727には、パンテノールは水溶性のため、皮膚外用剤を調製する際に用いる植物油等の油性成分には不溶のため、安定に分散することが困難であり、その効果が十分に発揮されないことから、グリコール類及び一価アルコールと配合することでその効果が亢進することが報告されている。
γ-オリザノールは皮脂分泌促進作用を有することが知られており(小林敏雄ら、皮膚、21(2)、123-124、1979、小林敏雄ら、皮膚、21(4)、463-470、1979)、皮膚の乾燥や肌荒れを治療する目的で皮膚外用剤に配合されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2720246号公報
【特許文献2】特開2002-293727号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】小林敏雄ら、皮膚、21(2)、123-124、1979、
【非特許文献2】小林敏雄ら、皮膚、21(4)、463-470、1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、空気の乾燥や加齢等が原因で発生する各種の皮膚疾患や粘膜疾患を改善又は治療する効果に優れ、要因となる症状を効率よく改善又は治療する外用医薬組成物を提供する。また本発明は、皮膚や粘膜のバリア回復効果を高め、更に空気の乾燥や加齢等が原因で発生する各種疾患やそれらに付随するかゆみに対する治癒効果を高める方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質及びγ-オリザノールを含むことを特徴とする外用医薬組成物である。
特に、本発明は、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質及びγ-オリザノールを含み、前記パンテノール類縁物質が、パントテニルエチルエーテル、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アセチルパントテニルエチルエーテルからなる群より選ばれる外用医薬組成物である。
さらに本発明は、抗ヒスタミン剤を更に含むことを特徴とする上記外用医薬組成物である。
本発明は、特に抗ヒスタミン剤がジフェンヒドラミン及び/又はその塩類、クロルフェニラミン及び/又はその塩類、イソチペンジル及び/又はその塩類、ジフェニルピラリン及び/又はその塩類並びにジフェニルイミダゾール及び/又はその塩類からなる群より選ばれる上記外用医薬組成物でもある。
さらに、本発明は、γ-オリザノールをパンテノール及び/又はパンテノール類縁物質と共存させることを含む、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質の創傷治癒促進効果を増強する方法でもある。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、創傷治癒効果を持つパンテノール及び/又はパンテノール類縁物質に皮脂分泌促進作用も持つγ-オリザノールを配合すると、皮膚バリアの回復が促進されることを見いだしたことに基づく。本発明者等は、更に乾燥が原因となるかゆみに対して、治療効果を示すことも新たに見いだした。さらに本発明者等は、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質にγ-オリザノールを配合した外用医薬組成物に抗ヒスタミン剤をさらに配合すると、一層優れた効果を有する外用医薬組成物が得られることを見いだした。
従って、本発明のパンテノール及び/又はパンテノール類縁物質とγ-オリザノールを含有する外用医薬組成物は、患部の状態を改善又は治療する効果が増強されている。またパンテノール及び/又はパンテノール類縁物質とγ-オリザノールを組み合わせて配合することを含む、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質の創傷治癒促進効果を増強する方法も本発明に含まれる。
本発明において、パンテノール及びパンテノール類縁物質は、パンテノールのエステルやパントテン酸の塩類が含まれ、より具体的には、パンテノール類縁物質には、パントテニルエチルエーテル、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アセチルパントテニルエチルエーテルが含まれる。
さらに、本発明において使用するために適した抗ヒスタミン剤は一般に抗ヒスタミン作用を有する成分であればよく、たとえば、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩類、クロルフェニラミン及び/又はその塩類、イソチペンジル及び/又はその塩類、ジフェニルイミダゾール及び/又はその塩類が含まれる。
【0008】
本発明の外用医薬組成物中、上述のパンテノール及び/又はパンテノール類縁物質は、全体の0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%とすることができる。γ-オリザノールは、全体の0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%とすることができる。抗ヒスタミン剤は、用いる抗ヒスタミン剤にもよるが、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%用いることができる。
本発明の外用医薬組成物において、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質、γ-オリザノール及び抗ヒスタミン剤は、それぞれ2種以上を配合することもできるが、その場合はそれぞれについての総量が上述した範囲となるように配合するのが好ましい。
本発明の外用医薬組成物の損傷や欠損への効果を判定する方法として、当業者に知られた適切な実験モデルを用いた皮膚バリア機能回復試験を利用することができる。皮膚バリア機能とは、皮膚の中でも特に角質層による体内の水分保持および外的物質等の侵入阻止などを意味する。当該機能は、経表皮水分蒸散量(TEWL)を測定することにより評価することができる。
バリア機能回復促進効果は、例えば、ヒト、ラット、マウスなどの皮膚にテープストリッピング、界面活性剤による脱脂(例えばドデシル硫酸ナトリウムなど)、有機溶剤による脱脂(例えばアセトンなど)などを施すことにより破壊された皮膚バリア機能が元の状態へ回復していく過程をTEWLを指標として調べることにより評価することができる。本外用医薬品組成物のバリア回復促進効果を評価するためには、いずれの実験動物および皮膚バリア破壊方法も使用できるが、動物の体毛処理(除毛・剃毛)の必要がなく角質層の構造が保持され動物の負担が少ない、ヘアレスマウス(HR-1、星野試験動物飼育所)を用いたアセトン脱脂法が好ましい。具体的には、本外用医薬品組成物のバリア回復促進効果は例えば以下のように評価することができる。
【0009】
1)TEWL測定装置Tewameter TM210(Courage+Khazaka社製,Koln-Germany)によりヘアレスマウス頸背部のTEWL値を測定する。その際の値をTEWL値100%とする。
2)頸背部皮膚のTEWL値が50〜70g/m2/hrに達するまで、アセトンを含浸した脱脂綿で当該試験部位をパッティングし、皮膚バリア破壊処理を行う。皮膚バリア破壊処理直後のTEWL値から処理前のTEWL値を差し引いた値をTEWL回復率0%とする。
3)当該外用医薬品組成物などの検体20mgを前記皮膚バリア破壊直後に開放適用する。
4)皮膚バリア破壊処理の時間を規準とし、処理直後に当該試験部位のTEWL値を測定する。下記の式に従いそれぞれのTEWL回復率を計算することができる。
TEWL回復率(%)=(皮膚バリア破壊処理直後のTEWL値−皮膚バリア破壊処理2時間後のTEWL値)/(皮膚バリア破壊直後のTEWL値−皮膚バリア破壊処理前のTEWL値)×100
5)各検体の皮膚バリア回復促進効果は、各検体についてのTEWL回復率と無塗布対照のTEWL回復率とを比較することにより評価することができる。
【0010】
またかゆみ止め効果は、起痒物質(例えば、ヒスタミン、マスト細胞脱顆粒剤など)を動物の皮膚内投与する方法、アレルギー物質で感作した動物に対してアレルギー反応を惹起する方法、有機溶剤などで動物の皮膚を繰り返し脱脂する方法などによって起る動物の掻き動作回数を指標とすることにより評価することができる。
本外用医薬品組成物の鎮痒効果を評価するには、持続的掻痒症状に伴う自発的な掻き動作が起る有機溶剤などによる脱脂を行う方法が好ましい。例えば、MiyamotoらはICR系マウスの皮膚に対してのアセトン・エーテル(1:1)混液処理に続けて蒸留水による処理を繰り返すことにより起るマウスの掻き動作回数を指標に鎮痒剤の薬効効果を行っている(Jpn. J. Pharmacol. ,88; 285, 2002)。例えば、Miyamotoらの方法を応用し、本発明の外用医薬組成物のかゆみ止め効果を以下の通り評価することができる。
【0011】
1)マウスの頸背部を除毛・剃毛する。除毛・剃毛を施した皮膚に対してアセトン・エーテル混液を含浸した脱脂綿によるパッチング処理15秒、続いて、蒸留水を含浸した脱脂綿によるパッチング処理30秒行う。この脱脂処理を1日2回、7時間以上の間隔で、5日間繰り返す。
2)最終脱脂処理の翌日、当該外用医薬品組成物などの検体20mgを当該試験部位に開放適用する。検体適用後30分間は円筒形金網内にマウスを拘束し検体の経口摂取を防ぐ。
3)検体適用1時間後から3時間後までの2時間のマウスの掻き動作回数を測定する。
4)各検体の鎮痒効果は、検体の代わりに蒸留水20μLを塗布する掻き動作回数を対照として比較することにより評価することができる。
【0012】
本発明の外用医薬組成物は、上述の、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質、γ-オリザノール及び抗ヒスタミン剤を常法に従って各種基剤と共に配合することにより調製することが出来る。一般に基剤として使用する原料のいずれも本発明の外用医薬組成物の調製のために用いることが出来る。
そのような基剤の例としては、ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、スクワラン、セレシン、ゲル化炭化水素及びマイクロクリスタリンワックス等の炭化水素;ステアリン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸等及びベヘン酸等の高級脂肪酸;セタノール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等の高級脂肪アルコール;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロプル及びアジピン酸ジイソプロピル等の脂肪酸エステル油;トリイソオクタン酸グリセリン及びトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等の多価アルコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン 酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、テトラステアリン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット、ポリオキシエチレン(60)ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール(4EO)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10EO)、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル等の非イオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム及びセチル硫酸ナトリウム等のイオン性界面活性剤;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール及びポリエチレングリコール等の多価アルコール;カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル化デンプン300及びポリビニルピロリドン等の高分子化合物;ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びリン酸水素ナトリウム等のpH調整剤;エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン及び酢酸エチル等の有機溶剤;塩化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びエデト酸ナトリウム等の安定化剤;メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウム等の防腐剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
本発明の外用医薬組成物を調製する場合には、上記成分及び水等の媒体を混合して調製するが、その配合割合に制限はなく、例えば、水0〜80質量%、炭化水素0〜99質量%、高級脂肪酸0〜25質量%、高級脂肪アルコール0〜25質量%、脂肪酸エステル油0〜50質量%、多価アルコール脂肪酸エステル 0〜30質量%、界面活性剤0〜10質量%、多価アルコール0〜90質量%、高分子化合物0〜10質量%、pH調整剤0〜10質量%、有機溶剤0〜99質量%、安定化剤0〜10質量%、防腐剤0〜5質量%である。
本名発明の外用医薬組成物には、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質、γ-オリザノール及び抗ヒスタミン剤の他に外用医薬組成物として許容される他の薬物を配合することが出来る。そのような薬物には以下が含まれるがこれらに限定されない。ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、デキサメタゾン、デキサメタゾン酢酸エステル、プレドニゾロン、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル等のステロイド剤、ブフェキサマク、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェン、ピロキシカム、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及びその塩類、トウキエキス及びシコンエキス等の抗炎症剤、レチノール酢酸エステル、レチノールパルミチン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、トコフェロール酢酸エステル、エルゴカルシフェロール、タカシトール等の脂溶性ビタミン剤、アスコルビン酸、ピリドキシン塩酸塩、ニコチン酸アミド等の水溶性ビタミン剤、イソプロピルメチルフェノール、クロルヘキシジン塩酸塩、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、セトリミド等の殺菌剤、リドカイン及びその塩類、ジブカイン及びその塩類、プロカイン及びその塩類、テトラカイン及びその塩類、アミノ安息香酸エチル等の局所麻酔剤、l-メントール、dl-カンフル、ハッカ油及びボルネオール等の清涼化剤、ナファゾリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩及びメチルエフェドリン塩酸塩等の血管収縮剤、ニコチン酸ベンジル、ノニル酸ワニリルアミド及びトウガラシチンキ等の引赤剤等を配合することができる。
【0014】
以下の実施例において、本発明の外用医薬組成物の製造方法及びその治療効果に関してより詳細に説明する。本発明の外用医薬組成物は、通常の軟膏剤、クリーム剤、乳剤、ゲル剤、外用液剤、ラッカー剤、貼付剤、パップ剤、坐剤、注入剤の製造方法に従って製造することができる。
【実施例1】
【0015】
γ-オリザノール、ジフェンヒドラミン、ポリオキシエチレンモノステアレート、トリイソオクタン酸グリセリン及びジイソプロパノールアミンを加熱溶解して均一にする。別に、パンテノール、グリセリン及び1,3-ブチレングリコールを精製水の一部に加え攪拌する。次にこれらを精製水の一部にカルボキシビニルポリマーを分散した液に加え、攪拌して乳化させ以下の組成のクリームを得た。

【実施例2】
【0016】
パンテノール、γ-オリザノール、ジフェンヒドラミン、グリセリンをエタノールに加え溶解し均一にする。次ぎに、クエン酸を精製水に加えて溶解した液を加え、攪拌して以下の組成の外用液剤を得た。

【実施例3】
【0017】
パンテノール、γ-オリザノール、ジフェンヒドラミン、1,3-ブチレングリコール及びポリエチレングリコール400を加熱混合し均一にし、これをさらに冷却攪拌して以下の組成の液剤を得た。

【実施例4】
【0018】
パントテニルエチルエーテル、γ-オリザノール、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ポリエチレングリコール400をエタノールに加え溶解し均一にする。次ぎに、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースを加え攪拌し、最後にクエン酸を精製水に加えて溶解した液を加え、攪拌して以下の組成のゲル剤を得た。

【実施例5】
【0019】
パンテノール、γ-オリザノール、ジフェンヒドラミン及びグリセリンをエタノールの一部に攪拌溶解する。次ぎにエタノールの一部にヒプロメロースを均一に分散させた溶液に、カルボキシビニルポリマーを精製水に分散した溶液を加え、攪拌した後、ジイソプロパノールアミンを加えゲル基剤を調製した。これに前述のエタノール溶液を加え、均一に攪拌して以下の組成のゲル剤を得た。

【実施例6】
【0020】
アセチルパントテニルエチルエーテル、γ-オリザノール、クロルフェニラミン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス及び白色ワセリンを加熱混合し、これをさらに冷却攪拌して以下の組成の軟膏剤を得た。

【実施例7】
【0021】
アセチルパントテニルエチルエーテル、γ-オリザノール、ジフェンヒドラミン及びプラスチベースを加熱混合し、これをさらに冷却攪拌して以下の組成の軟膏剤を得た。

【実施例8】
【0022】
パンテノール及びγ-オリザノールの相乗効果
パンテノール及びγ-オリザノールを含む外用医薬組成物とそれぞれを含まない外用医薬組成物の皮膚バリア回復効果及び鎮痒効果を比較した。
1)試験組成物及び比較組成物の調製
以下の組成物を調製した。各組成物の配合は表1に示した。表中の各成分に対する数値は組成物全体に対する各成分の質量%である。
試験組成物1:パンテノール、γ-オリザノール及びジフェンヒドラミンを含む本発明の外用医薬組成物(試験組成物1)を調製した。
調製方法は、γ-オリザノール、ジフェンヒドラミン、トコフェロール酢酸エステル、ステアリルアルコール、ベヘン酸、パルミチン酸セチル、マイクロクリスタリンワックス、トリイソオクタン酸グリセリン、α-オレフィンオリゴマー、白色ワセリン、モノステアリン酸ソルビタン、グリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンセチルエーテルを加熱し均一に溶解する。次ぎに精製水にパンテノール、アラントイン、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、クエン酸及びエデト酸ナトリウムを加熱し均一に溶解し、先の油相に攪拌しながら加え乳化物を調製した。これを更に40℃以下になるまで冷却し、乳剤性外用医薬組成物を得た。
【0023】
比較組成物1:γ-オリザノールを含まないこと以外は、試験組成物1の調製と同様の操作を行い、乳剤性外用医薬組成物を得た。
比較組成物2:パンテノールを含まないこと以外は、試験組成物1の調製と同様の操作を行い、乳剤性外用医薬組成物を得た。
比較組成物3:パンテノール及びジフェンヒドラミンを含まないこと以外は、試験組成物1の調製と同様の操作を行い、乳剤性外用医薬組成物を得た。
各試験組成物および比較組成物の配合量及びその他の基剤成分は表1に示す。
【0024】
2)各組成物のバリア回復及び鎮痒効果の測定
次に、調製した各試験組成物の治癒効果を測定した。
バリア回復試験試験は、以下の方法により行った。
1)TEWL測定装置Tewameter TM210(Courage+Khazaka社製,Koln-Germany)によりヘアレスマウス(n=8)頸背部のTEWL値を測定した。その際の値をTEWL値の100%とする。
2)頸背部皮膚のTEWL値が50〜70g/m2/hrに達するまで、アセトンを含浸した脱脂綿で当該試験部位をパッティングし、皮膚バリア破壊処理を行った。皮膚バリア破壊処理直後のTEWL値から処理前のTEWL値を差し引いた値をTEWL回復率0%とした。
3)本発明の外用医薬品組成物(試験組成物1)および比較組成物の検体各20mgを前記皮膚バリア破壊直後に開放適用した。
4)皮膚バリア破壊処理の時間を規準とし、処理2時間後に当該試験部位のTEWL値を測定し、下記の式に従いそれぞれのTEWL回復率を計算した。
TEWL回復率(%)=
(皮膚バリア破壊処理直後のTEWL値−皮膚バリア破壊2時間後のTEWL値)/(皮膚バリア破壊直後のTEWL値−皮膚バリア破壊処理前のTEWL値)×100
5)各検体の皮膚バリア回復促進効果は、本発明の外用医薬品組成物を塗布したマウスにおけるTEWL回復率と無塗布対照のTEWL回復率とを比較することにより評価した。
【0025】
また乾燥モデルによる鎮痒効果の確認は、以下のように行った。
1)マウス(n=12)の頸背部を除毛および剃毛した。除毛および剃毛を施した皮膚に対してアセトン・エーテル混液を含浸した脱脂綿によるパッチング処理15秒、続いて、蒸留水を含浸した脱脂綿によるパッチング処理30秒行った。この脱脂処理を1日2回、7時間以上の間隔で、5日間繰り返した。
2)最終脱脂処理の翌日、本発明の外用医薬品組成物(試験組成物1)および比較組成物の検体20mgを当該試験部位に開放適用した。検体適用後30分間は円筒形金網内にマウスを拘束し検体の経口摂取を防いだ。
3)検体適用1時間後から3時間後までの2時間のマウスの掻き動作回数を測定した。
4)各検体の鎮痒効果は、検体を塗布したマウスにおける掻き動作回数と検体の代わりに蒸留水20μLを塗布する対照の掻き動作回数とを比較することにより評価した。
【0026】
表1.マウス皮膚アセトン脱脂バリア回復試験及びマウス皮膚乾燥モデルにおける鎮痒効果確認試験

【0027】
パンテノールを含まない組成物では、算出されたバリア回復率から「バリア回復効果なし」と判断できる。またパンテノールおよびγ-オリザノールとを配合した組成物は、パンテノールを単独で配合した組成物に比較して、優れたバリア回復率が得られることが分かった。またその効果は、各組成物の回復率から考慮すると相乗的な効果の増強であると確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質及びγ-オリザノールを含むことを特徴とする外用医薬組成物。
【請求項2】
パンテノール類縁物質が、パントテニルエチルエーテル、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アセチルパントテニルエチルエーテルからなる群より選ばれる請求項1項記載の外用医薬組成物。
【請求項3】
さらに抗ヒスタミン剤を含むことを特徴とする請求項1または2記載の外用医薬組成物。
【請求項4】
抗ヒスタミン剤がジフェンヒドラミン及び/又はその塩類、クロルフェニラミン及び/又はその塩類、イソチペンジル及び/又はその塩類、ジフェニルピラリン及び/又はその塩類並びにジフェニルイミダゾール及び/又はその塩類からなる群より選ばれる請求項1〜3のいずれか1項記載の外用医薬組成物。
【請求項5】
γ-オリザノールをパンテノール及び/又はパンテノール類縁物質と共存させることを含む、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質の創傷治癒効果を増強する方法。
【請求項6】
パンテノール類縁物質が、パントテニルエチルエーテル、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アセチルパントテニルエチルエーテルからなる群より選ばれる請求項5記載の方法。

【公開番号】特開2010−184903(P2010−184903A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30941(P2009−30941)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000150028)株式会社池田模範堂 (8)
【Fターム(参考)】