説明

外表面状態検出センサを用いた作動弁の診断装置

【課題】電動力又は空気圧により駆動される弁棒を備えた作動弁の診断を、外表面状態検出センサの検出値に基づいて簡便に且つ低コスト化で行い得る外表面状態検出センサを用いる作動弁の診断装置を提供する。
【解決手段】弾性管体の外表面の物理的な状態変化に基づいて内部空気圧を検出する第1の外表面状態検出センサ、又は弁棒の外表面の物理的な状態変化を撮影した画像に基づいて該弁棒の位置又は移動量又は移動速度を検出する第2の外表面状態検出センサの検出値に基づいて作動弁を診断する。第1の外表面状態検出センサによれば、弾性管体から内部空気圧を抽出することなく空気圧検出を簡便に且つ低コストで行え、また第2の外表面状態検出センサによれば、弁棒に対して非接触状態でその位置又は移動量又は移動速度を取得でき、この結果、これらの検出値に基づく診断においては、簡易な診断でありながら高精度で信頼性の高い診断結果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電動力又は空気圧により駆動される弁棒を備えた作動弁の、即ち、電動弁又は空気作動弁の、外表面状態検出センサを用いた診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の冷却水制御系においては、該冷却水の流量調整弁として、ダイヤフラムの内圧制御によって弁開度調整が行われる空気作動弁が多く使用され、また止水弁として電動力によって開閉駆動される電動弁が多く使用されている。
【0003】
例えば、上記空気作動弁は、内圧制御されるダイヤフラムの変位によって弁棒を昇降駆動させて弁開度を制御するもので、その弁開度を制御するために、通常、空気圧系に空気−電気変換器(以下、「I/P変換器」と略称する)とポジショナ及びブースタリレーを備えるとともに、実際の弁開度を検出する弁開度検出機構を備えている。
【0004】
そして、制御装置から目標弁開度(電気信号)がI/P変換器に入力されると、該I/P変換器では、上記電気信号を空気圧信号に変換してこれをポジショナに出力する。ポジショナでは、弁開度検出機構から入力される実際の弁開度と上記I/P変換器から入力される空気圧信号(即ち、目標弁開度)の偏差に基づいて、該偏差に対応する空気圧を発生させ、これをブースタリレーにおいて増幅させて上記ダイヤフラムに入圧させる。ダイヤフラムにおいては、入力空気圧とダイヤフラム受圧面積から決定される作動力を弁棒に作用させる。このダイヤフラムの作動力を受けて、弁棒は、ダイヤフラム作動力と弁バネのバネ力が均衡する位置まで昇降方向へ移動し、これによって弁開度が目標弁開度に合致するように調整されるものである(例えば、特許文献1、特許文献2参照)
【0005】
一方、電動弁は電動力によって弁棒を駆動し、空気作動弁は空気圧によって弁棒を駆動するものであるが、これら何れにおいても、弁棒の位置又は移動量又は移動速度を検出し、この検出値に基づいて作動特性等の診断が行われることもある。
【特許文献1】特開平10−103308号公報
【特許文献2】特開2007−164230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、空気作動弁の作動状態を監視しその適否の診断を行うに際しては、空気圧の検出が必要となるが、係る場合、例えば、空気配管から空気圧を抽出してこれを圧力応動式のセンサによって検出するようにした場合には、空気圧検出作業が煩雑であるとともに、空気作動弁の適正な作動を担保する必要上、空気圧抽出部分のシール構造に極めて高い信頼性が要求され、作業コストが高くつくとともに信頼性の面でリスクがあった。
【0007】
また、弁棒の位置又は移動量又は移動速度に基づいて診断を行うに際しては、該弁棒の位置等を外部から簡便且つ容易に検出できることが望ましく、特に電動弁は弁棒のストロークが大きく、弁棒に直接センサを取付けて検出することが困難であることから、その要望は大きい。
【0008】
そこで本願発明は、電動力又は空気圧により駆動される弁棒を備えた作動弁の診断を、外表面状態検出センサの検出値に基づいて簡便に且つ低コスト化で行い得るようにした作動弁の診断装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として、電動力又は空気圧により駆動される弁棒を備えた作動弁を、少なくとも、弾性管体の外表面の物理的な状態変化に基づいて該弾性管体の内部空気圧を検出する第1の外表面状態検出センサ、又は上記弁棒の外表面の物理的な状態変化を撮影した画像に基づいて該弁棒の位置又は移動量又は移動速度を検出する第2の外表面状態検出センサの検出値に基づいて、診断することを特徴としている。
【0010】
ここで、上記第1の外表面状態検出センサによれば、弾性管体の外側から、その外表面の物理的な変化に基づいて内部の空気圧を検出するものであることから、従来のように弾性管体から内部空気圧を抽出する必要が無く、空気圧検出作業が簡便に且つ低作業コストで行うことができるとともに、空気圧供給系の信頼性を損ねることもない。さらに、空気作動弁の運転中においてもその運転に何等の影響を与えることなく空気圧を検出できることから、特に空気圧を継続的に検出して空気作動弁の状態を監視し、その作動状態を診断するような場合に好適である。
【0011】
一方、上記第2の外表面状態検出センサによれば、上記弁棒の動きを画像として取得し、該画像を用いて上記弁棒の位置又は移動量又は移動速度を検出することから、該弁棒に対して非接触状態でその位置又は移動量又は移動速度を取得することができる。従って、従来手法、例えば、弁棒の表面に接触して回転する検出ローラの回転数から移動距離を取得し、この移動距離に基づいて位置又は移動量又は移動速度を求める接触式検出手法においては、上記弁棒の表面が非平滑面であるような場合には、該弁棒表面と上記検出ローラとの接触状態が変化することから移動距離(延いては位置又は移動量又は移動速度)の検出精度が低下することになるが、係る場合においてもこの発明のような非接触式検出手法を適用すれば、該弁棒の表面状態に左右されることなく、その位置又は移動量又は移動速度を高精度で取得することができ、延いては、この検出された位置又は移動量又は移動速度を診断に用いることで、高精度で信頼性の高い診断結果を得ることができる。
【0012】
また、非接触式の検出手法であることから、空気作動弁の稼働中でも何等支障なく弁棒の位置又は移動量又は移動速度を検出できる。このため、上記弁棒の位置又は移動量又は移動速度を用いて行われる診断項目については、例えば、上記空気作動弁を非稼働状態とした下で行われるプラントの定期検査時に限定されることなく、必要に応じて随時診断を行うことができ、上記空気作動弁の健全性の維持という点において極めて有用である。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本願発明に係る外表面状態検出センサを用いた作動弁の診断装置においては、第1の外表面状態検出センサを用いる場合には弾性管体の外部からその内部の空気圧を容易且つ簡易に検出でき、また第2の表面状態検出センサを用いる場合には弁棒の位置等を画像に基づいて非接触状態で容易且つ簡易に検出できるため、作動弁の作動状態の監視あるいは診断を簡便に行うことができ、作動弁の維持管理の容易化、管理コストの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0015】
図1には、本願発明がその診断対象とする作動弁の一例としての空気作動弁1のシステム図を示している。この空気作動弁1は、周知構造をもつものであって、弁体(図示省略)を収容したバルブケーシング1aの上端にヨーク1bが取付けられ、さらに該ヨーク1bの上端にはダイヤフラム2が取付けられている。また、上記ヨーク1bの中心部には、これを上下方向に貫通して弁棒3が配置されている。
【0016】
上記弁棒3は、その下端に弁体が連結される一方、その上端には上記ダイヤフラム2内の変位板(図示省略)が連結固定されている。また、この弁棒3は、上記ヨーク1bの上部に配置した弁バネ4のバネ力によって、常時、上記変位板と一体的に上方(開弁側)へ付勢されている。
【0017】
上記空気作動弁1は、上記ダイヤフラ2内に導入される空気圧と上記弁バネ4のバネ力との力関係によって上記弁棒3が上昇又は下降することで開弁方向又は閉弁方向に駆動されるとともに、上記空気圧と上記弁バネ4のバネ力とが均衡した位置において停止し所要の弁開度に設定される。
【0018】
このような上記空気作動弁1の開閉駆動及び弁開度の調整を行なうために、以下のような構成が採用されている。なお、ここでは空気圧供給用の弾性管体として、エアホースを採用している。
【0019】
上記ダイヤフラム2には、エアホース13が接続されている。また、上記ヨーク1bの前面側には、ポジショナ7が取付けられている。このポジショナ7の入力ポート7aには入力側エアホース11が、出力ポート7bには出力側エアホース12が、それぞれ接続されている。
【0020】
上記入力側エアホース11の上流側にはI/P変換器(空気−電気変換器)10が接続されている。このI/P変換器10には、制御装置14から目標弁開度に対応する制御信号Sa(制御装置14の出力指示計15の指示開度)が入力されるとともに、空気源9からサプライエアが供給される。
【0021】
また、上記出力側エアホース12の下流端は、ブースタリレー8の入力ポート8aに接続されている。また、このブースタリレー8の出力ポート8bは、上記エアホース13を介して上記ダイヤフラム2に接続されている。さらに、上記ブースタリレー8には、空気源9からサプライエアが供給される。
【0022】
一方、上記空気作動弁1の弁棒3には、弁棒位置から弁開度を検出するLVDT(差動変圧器)式の弁開度センサ5が取付けられるとともに、歪ゲージで構成される弁軸力センサ6が貼付されている。ここで、上記弁開度センサ5で検出される弁棒位置は、弁開度信号E1として診断装置20に入力され、上記空気作動弁1の診断に用いられるが、この場合、弁棒3がその移動方向の二位置間を移動する時間を同時に計測すれば、二位置間の距離と移動時間とに基づいて上記弁棒3の移動速度を取得でき、この移動速度を上記診断装置20での診断に用いることもできる。
【0023】
このように構成された空気作動弁1においては、制御装置14から目標弁開度に対応する制御信号SaがI/P変換器10に入力されると、該I/P変換器10では、この制御信号Saを受けて、これを空気圧信号Paに変換して上記ポジショナ7へ出力する。ポジショナ7では、上記弁棒3との間に配置された弁開度検出機構(図示省略)から入力される実際の弁開度と、上記I/P変換器10から入力される空気圧信号Pa(即ち、目標弁開度)の偏差に基づいて、実際の弁開度を目標弁開度に合致させるべく制御空気圧Pbを発生させ、これを上記ブースタリレー8に入力させる。上記ブースタリレー8では、上記制御空気圧Pbを増幅して入力空気圧Pcとしてこれを上記ダイヤフラム2に入圧させる。
【0024】
上記ダイヤフラム2においては、上記入力空気圧Pcとダイヤフラム受圧面積から決定される作動力を発生しこれを上記弁棒3に作用させる。この結果、上記弁棒3は、上記ダイヤフラム作動力と上記弁バネ4のバネ力が均衡する位置まで昇降移動し、これによって空気作動弁1の弁開度が目標弁開度に合致するように調整される
【0025】
ところで、このような空気作動弁1の作動状態を継続的に監視し、所要の診断を行う場合には、空気圧の検出が不可欠となる。しかし、この空気圧の検出は、例えば、従来のように空気配管から内部空気圧を抽出し、これを圧力応動式のセンサで直接検出する手法を採用したのでは、シール構造等において空気圧系に悪影響を及ぼすことが考えられ、また空気圧検出作業が煩雑化する等のことが考えられることは既述の通りである。従って、空気圧を、空気配管に何等の影響も与えることなく且つ簡便に空気圧を検出できることが望ましい。
【0026】
そこで、この実施形態では本願発明を適用して、以下のような簡便な空気圧検出手法を採用している。
【0027】
この実施形態では、エアホースは弾性材であってその弾性範囲内においては一定の弾性特性をもつことから、該エアホースの表面の歪変形の大きさは該エアホースの内部空気圧に略比例することになる。このため、上記エアホースの表面の歪変形を検出することで、該エアホース内部の空気圧の大きさあるいはその変化状態を高い精度で且つ容易に検出することができるという点に着目し、上記各エアホース11〜13のそれぞれの表面に歪ゲージ21〜23を貼付固定し、該各歪ゲージ21〜23によって、上記各エアホース11〜13の表面の歪変形を検出し、この検出値に基づいて空気圧を取得するようにしている。即ち、この実施形態では、上記各歪ゲージ21〜23をそれぞれ空気圧センサとして用いたものであり、これら各空気圧センサが特許請求の範囲中の「第1の外表面状態検出センサ」に該当する。
【0028】
具体的には、上記エアホース13側を例にとって説明すると、図2に示すように、エアホース13の外表面に歪ゲージ23を接着剤にて貼着固定する。このように上記エアホース13の外表面に歪ゲージ23を貼着固定すると、上記エアホース13がその内部の空気圧を受けてその周方向(図2の矢印方向)へ伸縮変位した場合(即ち、歪を生じた場合)、この外表面の歪変形が上記歪ゲージ23によって検出され、内部空気圧に対応する歪信号E5として診断装置20に入力される。なお、上記エアホース11,12の外表面にもそれぞれ歪ゲージ21,22が貼着固定され、該各歪ゲージ21,22によってそれぞれ検出される歪は、上記各エアホース11,12の内部空気圧に対応する歪信号E3、E4として診断装置20に入力される。
【0029】
このように、上記各エアホース11〜13のそれぞれの外表面に上記各歪ゲージ21〜23を取り付け、該各歪ゲージ21〜23によって上記各エアホース11〜13の外側からその内部の空気圧を検出するようにすることで、例えば、従来のように空気配管内の空気圧を外部へ抽出して検出する構成の場合に比して、空気圧の検出作業が格段に簡便化され、しかも上記空気作動弁1に運転中においてもその作動に何等の影響を与えることなく容易に検出することができる。
【0030】
従って、上記空気作動弁1の作動特性の監視とか、作動上の各種診断をより簡便に行うことが可能となり、特に、原子力発電プラントのように、空気作動弁1が多数設置されている場合においては、監視及び診断作業の簡易且つ迅速化が促進されることから、その効果はより顕著なものとなる。
【0031】
また、上記弁棒3に取付けた弁開度センサ5の検出値は、実際の弁開度信号E1として上記診断装置20に入力される。また、上記弁棒3に貼付した歪ゲージ6の検出値は、実際の弁駆動力信号として上記診断装置20に入力される。
【0032】
なお、図1において、符号25は上記ダイヤフラム2の入力側に設けた入力圧力計、符号26は上記I/P変換器10の出力側に設けた出力圧力計、符号27は上記ポジショナ7の出力側に設けた出力圧力計である。
【0033】
一方、上記制御装置14から上記I/P変換器10に入力される制御信号Saは、電気信号であって、この電気信号は磁場センサ24によって検出される。ここで、この磁場センサ24は、図3に示すように、上記制御信号Saの伝達経路となる信号線51が収納された電線管50の外周面に、その周方向に所定の間隔をもって固定された三個の磁場センサ24a〜24cで構成され、この信号線51を通して制御信号Sa(電気信号)が出力された場合、該信号線51から発生する磁場を上記各磁場センサ24a〜24cによって検出する。そして、これら各磁場センサ24a〜24cの検出信号は、例えば、これらを合算した値が磁場センサ24からの制御磁気信号E6として上記診断装置20に入力される。
【0034】
ここで、上記診断装置20における、上記各空気圧センサ21〜23、磁場センサ24を用いた上記空気作動弁1の簡便な診断例を簡単に説明する。
【0035】
A:特定の空気圧センサのみによる診断
上記ダイヤフラム2への上記空気圧センサ23の検出信号E5を継続的に監視することで、例えば、検出信号E5が、以前の適正状態における検出信号E5と殆ど変わりがない場合には、空気作動弁1の適正な作動が維持されていると診断でき、係る場合には、定期点検の時期を先送りするとか、点検作業を簡素化することもできる。
【0036】
逆に、検出信号E5が、以前の適正状態における検出信号E5に比して許容範囲以上に変化している場合には、上記空気作動弁1の適正な作動が損なわれていると診断でき、係る場合には、例えば、早期に点検を実施するなどの対応をとることになる。
【0037】
B:複数の空気圧センサを使用しての診断
例えば、上記ポジショナ7の出力空気圧を検出する空気圧センサ22の検出信号E4と、上記空気圧センサ23の検出信号E5を対比することで、上記ブースタリレー8の作動状態の適否を簡便に診断することができる。
【0038】
また、上記ポジショナ7の入力空気圧を検出する空気圧センサ21の検出信号E3と、上記ポジショナ7の出力空気圧を検出する空気圧センサ22の検出信号E4を対比することで、上記ポジショナ7の作動状態の適否を簡便に診断することができる。
【0039】
C:上記空気作動弁1の動特性の診断
上記空気圧センサ23の検出信号E5と上記弁開度センサ5の検出信号E1を対比することで、例えば、ダイヤフラム空気圧に対して弁開度が過小である場合には、弁棒摺動抵抗の変化等の可能性があると診断することができる。
【0040】
D:空気圧系の診断
上記磁場センサ24の検出信号E6と、上記空気圧センサ23の検出信号E5を対比することで、制御装置14からの制御信号に対応する適正な空気圧が上記ダイヤフラム2に入圧されているかどうか、等の空気圧系の作動状態の適否を診断することができる。
【0041】
続いて、上記空気圧センサ21〜23と磁場センサ24の校正について説明する。
【0042】
a:空気圧センサの校正
例えば、上記空気圧センサ23の校正は、上記弁軸力センサ6との間で行う場合(第1の校正手法)と、上記圧力計25との間で行う場合(第2の校正手法)が考えられる。
【0043】
第1の校正手法
第1の校正手法は、上記空気圧センサ23を弁軸力センサとして機能させる場合における校正手法である。即ち、弁軸力は、上記ダイヤフラム2の受圧面積と該ダイヤフラム2に掛かる空気圧の積として得られるところ、この受圧面積は既知であることから、上記空気圧センサ23の検出値(空気圧)を弁軸力として把握することができる。従って、例えば、上記I/P変換器10からの出力空気圧を0%出力としたときと、50%出力としたときの双方において、上記空気圧センサ23の検出値と上記弁軸力センサ6の検出値をそれぞれ求め、この2点を基準に空気圧センサ23の検出値と上記弁軸力センサ6の検出値の相関データベースを取得し、上記空気圧センサ23による測定に際し、上記相関データベースと対比して、上記空気圧センサ23の検出値に対する上記弁軸力センサ6の検出値を求めるものである。
【0044】
第2の校正手法
第2の校正手法は、上記空気圧センサ23を、それ本来の機能として用いる場合における該空気圧センサ23の校正手法である。この場合は、例えば、上記I/P変換器10からの出力空気圧を0%出力としたときと、50%出力としたときの双方において、上記空気圧センサ23の検出値と上記圧力計25の指示値をそれぞれ求め、この2点を基準に空気圧センサ23の検出値と上記圧力計25の指示値の相関データベースを取得する。そして、上記空気圧センサ23による測定に際し、上記相関データベースと対比して、上記空気圧センサ23の検出値に対する上記圧力計25の指示値を求めるものである。
【0045】
上記空気圧センサ21,22の校正も、上記空気圧センサ23の校正と同様の手法にて行われる。
【0046】
b:磁場センサ24の校正
この場合は、例えば、上記制御装置14からの制御信号を0%出力(通常、4mmA)としたときと、50%出力(12mmA)としたときの双方において、上記磁場センサ24の検出値を求め、この2点を基準に上記制御信号と上記磁場センサ24の検出値の相関データベースを取得する。そして、上記磁場センサ24による測定に際し、上記相関データベースと対比して、該磁場センサ24の検出値に対する上記制御信号を求めるものである。
【0047】
E:弁棒の移動速度等の簡易な検出手法
ここで、上記実施形態のように上記弁開度センサ5を用いることなく、上記弁棒3の移動速度を簡易に検出する手法を説明する。
【0048】
E−1:空気作動弁への適用例
図4には、CCDカメラ31によって空気作動弁1の弁棒3の移動速度を簡易に取得する手法を示している。即ち、上記空気作動弁1のヨーク1b部分には、該弁棒3の軸方向(即ち、移動方向)に向けてスケール33を貼設している。
【0049】
一方、上記ヨーク1bの近傍には、上記弁棒3の適所に設けた計測点Mと上記スケール33を同一画面内に撮像し得るようにして、上記CCDカメラ31が設置される。そして、上記CCDカメラ31によって撮像された画像(図5及び図6参照)は、演算手段32において演算処理される。
【0050】
即ち、演算手段32においては、例えば、図5の画像に示される状態(計測点Mがスケール33の寸法12mmに対応している状態)から、図6の画像に示される状態(計測点Mがスケール33の寸法20mmに対応している状態)へ移行するまでの距離L(=20mm−12mm=8mm)と、計時手段34で計測される移動時間「t」とに基づいて、その間の上記弁棒3の移動速度「v」が求められる(v=L/t)。ここで求められた弁棒3の移動速度は、上記診断装置20に入力され、上記空気作動弁1の診断に用いられる。例えば、弁棒3の移動速度が設計値に対して適切であるかどうかが診断される。
【0051】
また、画像データより、上記空気作動弁1の弁開度や移動量を得ることができ、この弁開度や移動量を上記診断装置20に入力して上記空気作動弁1の診断に利用することもできる。
【0052】
なお、この例では、上記CCDカメラ31と上記演算手段32で「移動速度算出手段30」が構成されるが、この移動速度算出手段30が特許請求の範囲中の「第2の外表面状態検出センサ」に該当する。
【0053】
E−2:電動弁への適用例
上記CCDカメラ31を用いた弁棒移動速度検出手法は、空気作動弁1のみならず、電動弁にも適用できる。
【0054】
図7には、CCDカメラ31によって電動弁51の弁棒53の移動速度を簡易に取得する手法を示している。即ち、上記電動弁51のヨーク51b部分には、該弁棒53の軸方向(即ち、移動方向)に向けてスケール54を貼設している。
【0055】
一方、上記ヨーク51bの近傍には、上記弁棒53の適所に設けた計測点Mと上記スケール54を同一画面内に撮像し得るようにして、上記CCDカメラ31が設置される。そして、上記CCDカメラ31によって撮像された画像(図8及び図9参照)は、上記演算手段32において演算処理される。
【0056】
即ち、演算手段32においては、例えば、図8の画像に示される状態(計測点Mがスケール33の寸法12mmに対応している状態)から、図9の画像に示される状態(計測点Mがスケール33の寸法20mmに対応している状態)へ移行するまでの距離L(=20mm−12mm=8mm)と、計時手段34で計測される移動時間「t」とに基づいて、その間の上記弁棒53の移動速度「v」が求められる(v=L/t)。ここで求められた弁棒53の移動速度は、上記診断装置20に入力され、上記電動弁51の診断に用いられる。例えば、弁棒53の移動速度が設計値に対して適切であるかどうかが診断される。
【0057】
また、画像データより、上記電動弁51の弁開度や移動量を得ることができ、この弁開度や移動量を上記診断装置20に入力して上記電動弁51の診断に利用することもできる。
【0058】
なお、この例では、上記CCDカメラ31と上記演算手段32で「移動速度算出手段30」が構成されるが、この移動速度算出手段30が特許請求の範囲中の「第2の外表面状態検出センサ」に該当する。
【0059】
E−3:上記E−1及びE−2の構成とした場合の利点等
上述の各適用例のように、CCDカメラ31で撮影された画像に基づいて弁棒3,53の移動速度を算出する手法によれば、該弁棒3,53に対して非接触状態でその移動速度を取得することができる。このため、例えば、弁棒の表面に接触して回転する検出ローラの回転数から移動距離を取得し、この移動距離に基づいて移動速度を求める従来の接触式検出手法においては、上記弁棒の表面が非平滑面であるような場合には、該弁棒表面と上記検出ローラとの接触状態が変化することから移動距離(延いては移動速度)の検出精度が低下することになるが、係る場合においてもこの非接触式検出手法を適用すれば、上記弁棒3,53の表面状態に左右されることなく、その移動速度を高精度で取得することができ、延いては、この検出された移動速度を診断に用いることで、高精度で信頼性の高い診断結果を得ることができる。
【0060】
また、非接触式の検出手法であることから、空気作動弁1あるいは電動弁51の稼働中でも何等支障なく弁棒3、53の移動速度を検出できるため、上記弁棒3,53の移動速度を用いて行われる診断項目については、例えば、上記空気作動弁1、あるいは電動弁51を非稼働状態とした下で行われるプラントの定期検査時に限定されることなく、必要に応じて随時診断を行うことができ、上記空気作動弁1あるいは電動弁51の健全性の維持という点において極めて有用である。
【0061】
また、上記CCDカメラが用いられるが、このCCDカメラは、光に対する感度が非常に高く、従って、上記弁棒の細かな動きも的確に撮影することができ、それだけ画像上における弁棒の動作情報を正確に読み取ることができ、延いては画像に基づいて取得される弁棒の移動速度の高精度化が促進される。
【0062】
E−4:他の適用例
上記E−1,E−2の適用例では、上記ヨーク1b、51bにそれぞれスケール33、54を貼付する手法を採用していたが、このようにヨーク側にスケールを設けるのに代えて、例えば、図10に示すように、上記CCDカメラ31の撮像画面55内に予めスケール54を設定することもできる。
【0063】
この場合、上記CCDカメラ31は、その撮像領域の大きさが既知であること、即ち、上記弁棒53からCCDカメラ31までの距離が一定値に設定され、かつ上記スケール54の目盛の大きさが被写体である上記弁棒53側の実際の寸法に対応したものとされていることが必要である。係る条件の下では、撮像画面55に映された画像における上記計測点Mの移動距離を上記スケール54によって直接読み取ることができることから、上記電動弁51側に専用のスケールを設置する必要がなく、上記弁棒53の移動速度をより簡易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本願発明の実施の形態に係る外表面状態検出センサ(空気圧センサ)を備えた空気作動弁のシステム構成図である。
【図2】外表面状態検出センサ(空気圧センサ)の取付け状態説明図である。
【図3】磁場センサの取付け状態説明図である。
【図4】空気作動弁における弁棒の移動速度算出手法の説明図である。
【図5】図4のV部拡大図である。
【図6】図5の状態変化図である。
【図7】電動弁における弁棒の移動速度算出手法の説明図である。
【図8】図7のVIII部拡大図である。
【図9】図8の状態変化図である。
【図10】撮像画面側にスケールを設けた例の説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 ・・空気作動弁
2 ・・ダイヤフラム
3 ・・弁棒
4 ・・弁バネ
5 ・・弁開度センサ
6 ・・歪ゲージ
7 ・・ポジショナ
8 ・・ブースタリレー
9 ・・空気源
10 ・・空気−電気変換器(I/P変換器)
11 ・・エアホース
12 ・・エアホース
13 ・・エアホース
14 ・・制御装置
21 ・・歪ゲージ(空気圧センサ及び第1外表面状態検出センサ)
22 ・・歪ゲージ(空気圧センサ及び第1外表面状態検出センサ)
23 ・・歪ゲージ(空気圧センサ及び第1外表面状態検出センサ)
24 ・・磁場センサ
15 ・・出力指示計
25 ・・圧力計
26 ・・圧力計
27 ・・圧力計
30 ・・移動速度算出手段(第2の外表面状態検出センサ)
31 ・・撮像手段(CCDカメラ)
32 ・・演算手段
33 ・・スケール
M ・・計測点
51 ・・電動弁
52 ・・弁駆動部
53 ・・弁棒
54 ・・スケール
55 ・・モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動力又は空気圧により駆動される弁棒を備えた作動弁を、少なくとも、弾性管体の外表面の物理的な状態変化に基づいて該弾性管体の内部空気圧を検出する第1の外表面状態検出センサ、又は上記弁棒の外表面の物理的な状態変化を撮影した画像に基づいて該弁棒の位置又は移動量又は移動速度を検出する第2の外表面状態検出センサの検出値に基づいて、診断することを特徴とする外表面状態検出センサを用いた作動弁の診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−210042(P2009−210042A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54442(P2008−54442)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】