説明

外観検査装置

【課題】生産を停止することなく新たな検査条件に基づいた良否判定のシミュレートを行うことで、生産速度を向上させることが可能な外観検査装置を提供する。
【解決手段】検査対象物10の検査対象面を撮像するカメラ3と、カメラ3に接続され、カメラ3からの映像信号に基づいて検査対象物10の良否判定を行う画像処理装置1と、画像処理装置1に接続されたシミュレート装置2とを備える。画像処理装置1は、画像データを画像処理することで欠陥画素を検出し、欠陥画素数または位置の何れか一方に基づいて設定された第1の検査条件C1によって、検査対象物の良否判定を行う。シミュレート装置2は、画像処理装置1から画像データを受信し、検査条件C1とは異なる検査条件C2に基づいて検査対象物の良否判定をシミュレートする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物を撮像した被検査画像に基づいて、対象物の外観における不良項目を検査する外観検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から検査対象を撮像して得た画像データに画像処理を施すことによって、検査対象物の外観上の欠陥の有無を検出し、検査対象物の良否判定を行う外観検査装置がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の板状金属表面自動検査装置は、検査対象物である板状金属製品に照明光を照射する複数種類の照明手段と、板状金属製品を撮像する複数の撮像手段と、撮像手段により撮像して得られた画像データを用いて、板状金属製品に存在する欠陥箇所を検出して良否判定を行う検査部とを備えている。この検査部には、良否判定を行うための検査条件が予め設定されており、この検査条件と画像データに基づいて、欠陥箇所を検出して良否判定をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−008596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、これらの外観検査装置においては、良否判定を行うための検査条件を適切に設定することが難しく、検査条件を厳しくすれば合格品の品質は高くなるものの、歩留りが悪くなり、検査条件を緩めると歩留りは良くなるが、品質の低下を招いてしまう。そのため、歩留りを良くしつつ高い品質の製品を製造するためには、蓄積された検査画像データや検査結果に基づいて新たな検査条件を選定して、上記検査部の設定を変更する必要がある。
【0006】
しかしながら従来の検査装置においては、外見検査装置に記憶されている過去の検査画像を用いて、新たな検査条件に基づく検査結果と、実際の製品の品質とを見比べて、歩留りを良くしつつ品質を確保できる検査条件を決定していた。そのため、一時的に生産を停止する必要があり、高品質の製品を効率良く生産しようとすると、生産時間が長くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、生産を停止することなく新たな検査条件に基づいた良否判定のシミュレートを行うことで、生産速度を向上させることが可能な外観検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、検査対象物を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により前記検査対象物を撮像して得られた画像データを用いて、前記対象物に存在する欠陥箇所を検出する欠陥箇所検出部と、前記欠陥箇所検出部が検出した欠陥箇所と、欠陥箇所の数または位置の少なくとも何れか一方に関する第1検査条件とをもとに前記検査対象物の良否判定を行う検査部と、前記画像データを用いて検出した欠陥箇所と、欠陥箇所の数または位置の少なくとも何れか一方に関して、第1検査条件とは異なる一乃至複数の第2検査条件とをもとに前記検査対象物の良否判定を、前記検査部による良否判定と同時に行うシミュレート部とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1記載の発明において、前記第1検査条件による良否判定と、前記第2検査条件による良否判定とが異なる結果を示した検査対象物を抽出して、双方の良否判定結果を表示する表示部を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明では、請求項2記載の発明において、前記表示部には前記欠陥箇所検出部が検出した欠陥箇所の数及び位置、又は、前記検査対象物の映像のうち少なくとも何れか一方を表示することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明では、請求項1〜3の何れかの請求項に記載の発明において、前記検査部による不良品の判定数と、前記シミュレート部による不良品の判定数とを比較する比較手段と、比較手段による比較結果に基づいて不良品の判定数が所定数となるような第2検査条件を第1検査条件として、検査部に設定することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明では、請求項1〜3の何れかの請求項に記載の発明において、前記検査部による不良品の判定数と、前記シミュレート部による不良品の判定数とを比較する比較手段を備え、前記比較手段による比較結果に基づいて、不良品の判定数が最も多い、あるいは、最も少ない第2検査条件を、第1検査条件として検査部に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、製品の外観検査を行うと同時に、同じ製品について異なる検査条件を用いてシミュレートすることが可能であり、製品の生産ラインを停止させることなく、新たな検査条件を選定することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、検査条件の違いによって検査結果が異なった製品を表示することができるので、検査条件を選定する際の参考として利用でき、適切な検査条件を新たに選定することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、検査結果として欠陥画素数や製品画像を表示することができるので、検査条件を選定する際の参考として利用でき、より適当な検査条件を新たに選定することができる。
【0016】
請求項4、5の発明によれば、検査条件が人の手によらずに変更されることで、欠陥判定が少なく、且つ、品質の高い製品を安定して生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態にかかる外観検査装置を示す、概略ブロック図である。
【図2】同外観検査装置の良否判定動作を示す概略フロチャート図である。
【図3】(a)は検査対象物の基準画像であり、(b)〜(f)は同外観検査装置における検査結果の例を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明にかかる外観検査装置は、検査対象物10を撮像するカメラ3と、カメラ3に接続され、カメラ3からの映像信号に基づいて検査対象物10の良否判定を行う画像処理装置1と、画像処理装置1に接続されたシミュレート装置2とを備える。この外観検査装置は、他の装置と共に検査対象物10の生産ラインを構成しており、外観検査装置が検査対象物10の欠陥を検出して良否判定を行い、検査対象物10を仕分けする設備制御装置に良否判定を出力することで、検査対象物10は良品と不良品とに仕分けされる。
【0020】
カメラ3は、例えばCCDカメラなどであり、検査対象物10の検査面に対して光軸が垂直となるように設置され、検査面を真上方向から撮像している。カメラ3が撮像した検査対象物10の検査面を含む映像信号は、接続ケーブル6を介して画像処理装置1に出力されている。
【0021】
またカメラ3の近傍には、検査対象物10の検査面に斜め上方向から照明用の光を照射するライト4が設置されており、検査面に存在するチリ、キズなどの欠陥がカメラ3によって撮像されやすいように設定されている。
【0022】
画像処理装置1は、例えば液晶ディスプレイからなるモニタ12と、検査対象物10の製造ラインを制御する設備制御装置(図示せず)に接続された装置本体11とを備える。また画像処理装置1は、例えば商用電源(図示せず)に接続され、商用電源からの供給電力を動作電力として動作している。
【0023】
装置本体11は、カメラで撮像された映像信号を画像データに変換するキャプチャボード、画像データを演算することで良否判定を行うCPU(Central Processing Unit)並びにRAM(Random Access Memory)、画像データ及び良否判定結果を記憶するHDD(Hard Disk Drive)、シミュレート装置2との間で通信を行うためのLANケーブル5を接続するイーサネット(登録商標)カード、及び、商用電源に接続され動作電力を供給する電源ユニットなどにより構成されている。
【0024】
また装置本体11は、検査対象物10の検査面に欠陥が存在しない状態の基準画像(図3(a)を参照)と、欠陥画素数及び欠陥画素の位置に応じて良否を判定するための検査条件C1とが予め設定されており、検査対象物10の良否判定を行う。
【0025】
検査対象物10の良否判定方法は、まず、装置本体11のキャプチャボードなどによって、カメラ3から入力された映像信号をカメラ3の解像度に基づいて複数の画素に分割された画像データに変換する。次に、例えばこの画像データを微分処理をほどこして微分画像を作成し、この微分画像の微分値が大きな画素を中心として非線形演算行いエッジ検出を行う。その後、検出したエッジ情報に基づいて基準画像との位置及び映像の方向を合わせるとともに、画像データから基準画像を減算し、減算後の画素が所定の範囲内に収まっていない場合には、欠陥画素として検出する。その後、検出した欠陥画素数及び、欠陥画素の位置を検査条件C1と比較することによって、良品・不良品の何れであるかを判定する。なお、良否判定に使用した画像データ、欠陥画素数、欠陥画素の位置、及び、良否判定の判定結果は、それぞれ関連性を持たせた状態で装置本体11のHDDに記憶している。また装置本体11は、良否判定結果を設備制御装置に出力し、設備制御装置がこの良否判定結果に基づいて良品と不良品を仕分けする。
【0026】
モニタ12には、検査対象物10の撮像画像、良否判定結果、及び、設備制御装置の動作状況などが必要に応じて表示されている。
【0027】
シミュレート装置2は、いわゆるノートパソコンなどからなり、LANケーブル5を介して画像処理装置1と通信を行っている。画像処理装置1との通信には、例えばTCP/IPなどのプロトコルが使用され、画像処理装置1からシミュレート装置2へは検査対象物10の画像データ及び良否判定結果が随時送信されている。また、シミュレート装置2から画像処理装置1へは検査条件が必要に応じて送信される。
【0028】
シミュレート装置2は、検査対象物10の検査面に欠陥が存在しない状態の基準画像と、欠陥画素数及び欠陥画素の位置に応じて良否を判定するための検査条件C2とが予め設定されており、装置本体11での良否判定方法と同様の方法を用いて、検査対象物10の良否判定を行っている。ここで、検査条件C2は検査条件C1とは異なる条件に設定されており、例えば検査条件C1よりも厳しい条件で良品と判定するように設定されている。また、シミュレート装置2は、良否判定を行った検査対象物10の総数を記憶し、この総数と良否判定結果に応じて、画像処理装置1に検査条件C2を送信する。なお、以下の説明では、検査条件C2が1つである場合を説明するが、複数の異なる条件が設定されている場合でも良い。
【0029】
また、シミュレート装置2は液晶ディスプレイなどからなるモニタ21を備えており、上述の良否判定結果を表示している。また、シミュレート装置2を操作することで、画像処理装置1での良否判定結果と、シミュレート装置2での良否判定結果とをそれぞれ比較して生成した情報を表示することができる。具体的には、画像処理装置1では良品と判定され、シミュレート装置2では不良品として判定された検査対象物10の検査面の映像と、欠陥画素数と、欠陥画素の位置情報とが並べて表示される。これにより、映像に基づいて検査対象物10の実際の品質と、検査条件C1及び検査条件C2の妥当性を視覚的に確認して、検査条件の変更などを行うことができる。ここで、図3(b)〜(f)は、欠陥画素が検出された検査対象物10の検査面の例を示しており、欠陥画素数及び欠陥画素の位置情報とともにモニタ21に検査面の映像として表示される。なお、図3(b)は、傷(傷21)がある場合の検査面を示す例であり、図3(c)は、吸着パッドの跡(吸着パッド跡22)が残っている場合の検査面を示す例であり、図3(d)は、ほこり(ほこり23)が付着している場合の検査面を示す例である。また、図3(e)は、吸着パッドの跡とほこり、図3(f)は、傷とほこりがそれぞれ組み合わさった場合の検査面を示す例である。
【0030】
次に、図2を用いて外観検査装置全体の動作について説明を行う。なお、ここで検査条件C1、C2は、欠陥画素数のみを条件としており、検査条件C1は欠陥画素数が30画素未満であることを良品の条件とし、検査条件C2は欠陥画素数が20画素未満であることを良品の条件としている。これらの検査条件C1、C2は、以下の説明を行うための例であり、欠陥画素数、欠陥画素の位置などの条件を複数組み合わせた条件を用いても良い。
【0031】
まず、カメラ3が検査対象物10を撮像し(処理S11)、画像処理装置1が映像信号を画像データに変換してシミュレート装置2に送信する(処理S12)。画像処理装置1は、予め設定されている検査条件C1を用いて良否判定を行い(処理S13)、例えば欠陥画素数が30画素未満であれば良品と判定し(処理S13のYes)、欠陥画素数が30画素以上であれば不良品と判定する(処理S13のNo)。画像処理装置1は、この判定結果をシミュレート装置2に送信するとともに(処理S14)、設備制御装置に出力する(処理S15)。
【0032】
シミュレート装置2は、画像処理装置1からの画像データの受信を待機する待機状態であり、画像データを受信すると(処理S21)、検査条件C2を用いて良否判定を行い(処理S22)、例えば欠陥画素数が20画素未満であれば良品と判定し(処理S22のYes)、欠陥画素数が20画素以上であれば不良品と判定する(処理S22のNo)。その後、シミュレート装置2は、画像処理装置1での良否判定結果を受信し(処理S23)、良否判定の比較結果をモニタ21に表示する。またシミュレート装置2は、例えば、検査対象物10の総数が所定の数(例えば10000個)を超えており、且つ、歩留(総数における良品の割合)が98%を超えるとの条件を満たす場合には(処理S24のYes)、検査条件C2を画像処理装置1に送信する(処理S25)。また、この条件を満たさない場合には、再び画像データの受信を待機する待機状態に移行する(処理S24のNo)。
【0033】
画像処理装置1は、検査条件C2を受信すると(処理S16)、検査条件を書き換えて動作を続け、次の検査対象物10の良否判定(処理S13)では、検査条件C2を用いて判定を行う。また、検査条件C2を受信しない場合には、検査条件C1を用いて次の検査対象物10の検査を続行する。
【0034】
このようにして、生産を停止することなく、実際の検査に用いる検査条件C1とは異なる検査条件C2に基づいた良否判定のシミュレートをシミュレート装置2で行い、その結果が良ければ検査条件C1を置き換えているので、生産速度を落すことなく、高品質で歩留りの良い条件の設定が行える。
【0035】
なお、本実施の形態においては、所定の条件を満たすと自動的に検査条件C2を画像処理装置1に送信しているが、使用者がシミュレート装置2のモニタ21に表示される情報に基づいて操作することで、画像処理装置1に検査条件C2を送信するようにしても良い。
【0036】
また、それぞれの検査条件を異ならせたシミュレート装置2を複数台接続したり、シミュレート装置2に複数の検査条件を設定して、複数の検査条件によって良否判定を同時に行えるようにしても良い。
【0037】
なお、上述の良否判定に使用した基準値などは、その数や方法を限定するものではなく、検査対象物や生産目標値などに応じて適宜設定されることは言うまでもない。例えば、欠陥判定が一番少ない検査条件C2に設定を変更したり、その逆に、欠陥判定が一番多い検査条件C2に設定を変更したりといった、その時の事情に応じた検査条件に変更することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 画像処理装置(検出部、検査部)
2 シミュレート装置(シミュレート部)
3 カメラ(撮像手段)
4 ランプ
5 LANケーブル
6 接続用ケーブル
10 検査対象物
C1 第1検査条件
C2 第2検査条件

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により前記検査対象物を撮像して得られた画像データを用いて、前記対象物に存在する欠陥箇所を検出する欠陥箇所検出部と、
前記欠陥箇所検出部が検出した欠陥箇所と、欠陥箇所の数または位置の少なくとも何れか一方に関する第1検査条件とをもとに前記検査対象物の良否判定を行う検査部と、
前記画像データを用いて検出した欠陥箇所と、欠陥箇所の数または位置の少なくとも何れか一方に関して、第1検査条件とは異なる一乃至複数の第2検査条件とをもとに、前記検査対象物の良否判定を、前記検査部による良否判定と同時に行うシミュレート部とを有することを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記第1検査条件による良否判定と、前記第2検査条件による良否判定とが異なる結果を示した検査対象物を抽出して、双方の良否判定結果を表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記表示部には、前記欠陥箇所検出部が検出した欠陥箇所の数及び位置、又は、前記検査対象物の映像のうち少なくとも何れか一方を表示することを特徴とする請求項2に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記検査部による不良品の判定数と、前記シミュレート部による不良品の判定数とを比較する比較手段を備え、前記比較手段による比較結果に基づいて、不良品の判定数が所定数となるような第2検査条件を、第1検査条件として検査部に設定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記検査部による不良品の判定数と、前記シミュレート部による不良品の判定数とを比較する比較手段を備え、前記比較手段による比較結果に基づいて、不良品の判定数が最も多い、あるいは、最も少ない第2検査条件を、第1検査条件として検査部に設定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−47698(P2011−47698A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194496(P2009−194496)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】