説明

多価アルコールのモノエステルの製造法

本発明は、多価アルコールのモノエステルの製造法に関する。該製造法は、多価アルコールのヒドロキシル基をアセタール化によって保護することから成る第1工程、及びアセタール化多価アルコールを、1種若しくは複数種の固体酸触媒の存在下において脂肪酸を用いてエステル化することを含む第2工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価アルコールをアセタール化する第1工程、及びアセタール化多価アルコールを脂肪酸でエステル化する第2工程を含む方法によって、多価アルコールのモノエステルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸と多価アルコールのエステル、例えば、ソルビトールのエステル(SFAE)は食料品工業や化粧品工業において乳化剤(「スパン」及び「ツイーン」)や安定剤として幅広く使用されている非イオン性界面活性剤である。化学的には、ソルビトールのエステルは、ソルビトールから誘導される種々のポリオールエステルの複雑な混合物である。ソルビトールの他に、2種のポリオール誘導体、即ち、無水物(1,4−ソルビタン)及びジ無水物(1,4−3,6−イソソルビド)が知られている。脂肪酸とソルビトールとの反応生成物は多種多様な方法によって調製することができる。
【0003】
このような方法としては下記の方法が例示される:
a)脂肪酸を用いるソルビトールの直接的エステル化法。この反応は、均一酸性触媒(例えば、p−トルエンスルホン酸等)の存在下において140℃〜180℃の温度でおこなうか(J.ギアコメッチら、React. Kinet. Catal. Lett. 、第59巻(1996年)、第235頁)、塩基性触媒(例えば、KOH及びNaOH等)の存在下において高温(200℃〜240℃)でおこなうか、又は酸と塩基の混合物(特に、NaOHとリン酸との混合物)の存在下でおこなう(WO−9804540号)。酵素を触媒とするエステル化法も知られている。
b)脂肪酸の無水物又は塩化物を用いるソルビトールのアシル化法。
c)脂肪酸のメチルエステル若しくはエチルエステル又はグリセリンエステルを用いるソルビトールのエステル交換法。
【0004】
一般に、脂肪酸とソルビトールとのエステルを調製するための上記方法は、エーテル型の生成物を増量させるための多価アルコールの脱水を促進する方法であり、また、この方法によって得られる生成物はソルビトールの本当のエステルではなく、正確には、ソルビタン及び/又はイソソルビドのエステルである。合成方法に応じて最終的な混合物はヒドロキシル基に関して異なる置換度の生成物を含有すると共に、ソルビトール無水物のエステルを異なる割合で含有する。例えば、エステル化を、脂肪酸の塩化物を用いるソルビトールのアシル化によっておこなう場合には、生成物中にソルビトール無水物のエステルが少量含まれる。一方、直接的エステル化法及びエステル交換法によれば、無水物形態のソルビトールエステルが高い割合でもたらされる。文献には、ソルビトール無水物を供給するためのソルビトールのエステルの製造方法が記載されているが、これらの方法においては、毒性の高い溶剤(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びピリジン等)が使用されている(米国特許第2997492号明細書参照)。従って、これらの方法によって得られるソルビトールのエステル中にはこの種の溶剤や分解生成物が残留し、このため、これらの生成物は食品用には不適当なものとなっている。
【0005】
上記の方法によってもたらされるその他の問題点としては、有機試薬に不都合な効果をもたらす高い反応温度、溶剤の使用、及び反応後に中和されなければならない均一触媒の使用が挙げられる。このような点に関しては、均一触媒を不均一触媒に置き換えることによって、プロセスの設計の点だけでなく、特定のプロセスに対して適当な触媒を選定することによる所望の生成物の収率と選択率の改良という点においても利点がもたらされることが知られている。例えば、前者に関しては、触媒と反応生成物の分離が容易になるために中和過程と抽出過程が不要となり、残留物の発生量も低減し、また、触媒の再利用も可能となる。しかしながら、このようなタイプの反応に不均一触媒を使用した例は文献にはわずかに記載されているにすぎない。例えば、n−オクタン酸を用いるイソソルビドのエステル化においてイオン交換樹脂(「アンベリスト15」)を酸触媒として使用することによって、2,5−ジ−n−オクタノン酸イソソルビドが98%の収率で得られている(WO−0183488参照)。W.M.レインらによる文献には、スルホン酸で官能化したメソ多孔質材料を用いてソルビトールとラウリン酸とのエステル化を112℃でおこなう方法が記載されている(Chem. Commun. 、1998年、第317頁)。このような条件下では、モノエステル(イソソルビドモノラウレート)が主生成物として得られが、反応時間がより長くなると、イソソルビドのジエステルが得られる。また、この文献には、βゼオライトを触媒として使用することも記載されているが、該ゼオライトは高い親水性を有するために、脂肪酸の転化率はゼロであり、観測される唯一の反応はソルビトールの分解反応である。
【0006】
ヒドロキシル基の置換度は、界面活性剤の最終的な用途を決定するが、多かれ少なかれ、反応に使用するソルビトールと脂肪酸のモル比によって調整することができる。ソルビトールのモノエステルを高い割合で得るためには、ソルビトールと脂肪酸は等モル比で使用されるが、ソルビタンのモノエステルとして市販されているソルビトールのモノエステルは、実際には、ソルビタンのモノエステル、ジエステル及びトリエステルの混合物であって、該混合物は比較的高濃度のモノエステルを含有すると共に、180〜200のヒドロキシル価を有する。ヒドロキシル価はソルビトールのエステル化度とエーテル化度に関係する。
【0007】
トラックスラーらによる米国特許第3579547号明細書には、カルボン酸と線状脂肪族多価アルコール(ソルビトール及びマンニトール)とのモノエステルとジエステルの製造方法、即ち、カルボン酸又はカルボン酸の短鎖アルキルエステルにアセタール化されたマンニトール又はソルビトールをアルカリ性触媒の存在下で反応させることによって該エステル類を製造する方法が記載されている。この方法によって得られるカルボン酸とアセタール化アルコールとのエステルは、該エステルを水と混和性のない溶剤に溶解させることによる加水分解処理に付した後、鉱酸の水溶液中での撹拌処理に付すことによって該水溶液中へ分散される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術における上記の問題点を、固体酸の存在下で多価アルコールのアセタールに脂肪酸を反応させることによる多価アルコールのモノエステルの選択的調製法によって解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、脂肪酸と多価アルコールのモノエステルの選択的な製造方法であって、下記の工程(1)及び(2)を含む該製造方法に関する:
(1)多価アルコールのヒドロキシル基をアセタール化によって保護する第1工程、及び(2)アセタール化多価アルコールを、1種若しくは複数種の固体酸触媒の存在下において脂肪酸を用いてエステル化する第2工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
多価アルコールのアセタール化をおこなう第1工程は、多価アルコールのヒドロキシル基を保護することを目的とする。
【0011】
使用する不均一酸触媒は、微孔質モレキュラーシーブ及びヘテロポリ酸の塩から成る群から選択される。
【0012】
ヘテロポリ酸の塩としては、原子価が+1の金属(好ましくはアルカリ金属)の塩類が好ましい。
【0013】
ヘテロポリ酸の塩である不均一触媒は、好ましくは式H3−XPW(式中、Mは原子価が+1の金属原子を示し、Pはリン原子を示し、Wはタングステン原子を示し、xは0.1〜2.9の数を示す)で表される化合物である。
【0014】
より好ましい態様においては、ヘテロポリ酸に基づく不均一触媒は式H3−X40PW12(式中、Mは原子価が+1の金属原子を示し、xは0.1〜2.9の数を示す)で表されるリンタングステン酸塩である。原子価が+1の金属原子としては、Li、Na、K、Rb及びCsから成る群から選択されるアルカリ金属原子が好ましい。
【0015】
微孔質モレキュラーシーブとしては、通常の孔径が6〜14Åのモレキュラーシーブが挙げられる。好ましくは、この種のモレキュラーシーブは酸性ゼオライトである。このような酸性ゼオライトとしては、ホージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)、オメガ(MAZ)、オフレタイト(OFF)、ZSM−4(MFI)、ベータ(BEA)、SSZ−24(AFI)、MCM−22、SSZ−26、離層化ゼオライト及びこれらの任意の混合物が例示される。離層化ゼオライトとしては、ITQ−2、ITQ−6及びこれらの混合物が例示される。
【0016】
酸性形態で使用されるゼオライトは、6〜400(好ましくは10〜200)のSi/TIII 比を有する。この場合、TIII は3価金属原子、例えば、Al、B、Ga及びFeを示す。
【0017】
本発明方法によれば、多価アルコールのアセタール化(第1工程)はカルボニル化合物を用いておこなうことができ、また、該アセタール化は、均一触媒反応を用いておこなうこともできるが、好ましくは、触媒として固体酸を用いる不均一触媒反応によっておこなう。このアセタール工程を不均一触媒反応によっておこなう場合には、本発明方法の2つの工程において同一の触媒を用いておこなうことができ、該方法は、以下の実施例9において説明するように、「ワンポット」方式に従っておこなうことができる。
【0018】
本発明方法によれば、多価アルコールのアセタール化(第1工程)は、常套法に従って、連続的撹拌タンク型反応器、不連続的撹拌タンク型反応器、連続的固定反応器及び触媒を具有する流動層反応器から成る群から選択される反応器内でおこなうことができる。
【0019】
アセタール化による第1工程は、不活性雰囲気中において、大気圧から2〜10気圧の範囲の圧力下でおこなうことができる。好ましくは、該アセタール化は25℃〜60℃(好ましくは25℃〜40℃)の温度でおこなわれる。
【0020】
好ましくは、アセタール化による第1工程は、多価アルコールの質量に対して1〜20%の量の触媒を用いておこなわれる。
【0021】
より好ましい態様においては、アセアール化による保護反応は、大気圧下の不活性雰囲気中(例えば、窒素雰囲気中)において、25℃〜60℃(好ましくは25℃〜40℃)の温度で、多価アルコールの質量に対して1〜20%の不均一触媒の存在下でおこなわれる。
【0022】
該アセタール化工程は、非置換アルデヒド、置換アルデヒド、非置換ケトン及び置換ケトンから成る群から選択されるカルボニル化合物を用いておこなわれる。
【0023】
好ましいケトンは脂肪族の低分子量ケトンである。この種のカルボニル化合物としては、アセトン、ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−ヘキサノン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナール(propanal)及びベンズアルデヒド等が例示されるが、好ましくはアセトンとブタノンである。
【0024】
カルボニル化合物:多価アルコールのモル比は、好ましくは1:1〜30:1である。
【0025】
アセタール化の完了によって得られる粘性のある無色の液体を、脂肪酸を用いるエステル化工程(第2工程)のための出発原料として使用する。
【0026】
本発明方法の第2工程には、多価アルコールのアセタールと脂肪酸との間のエステル化が含まれる。好ましくは、エステル化による第2工程は溶剤の不存在下でおこなわれる。
【0027】
この方法で使用される不均一相中の酸触媒は、多価アルコールのアセタールの一部をゆっくりと加水分解させることによって脱保護されたヒドロキシル基を形成させ、該ヒドロキシル基は脂肪酸と反応することができる。
【0028】
エステル化反応中には水分子が放出され、2種の共役反応(coupled reaction)(即ち、アセタールの加水分解反応及び該加水分解反応によって生成するアルコールと脂肪酸によるエステル化反応)が発生する。
【0029】
この方法の目的は、ジエステル、トリエステル及びテトラエステル等の生成速度を低減させると共に多価アルコール鎖の内部環化(特に、ジ無水物型の二環式エーテルの形成)を防止することによって、遊離のヒドロキシル基の濃度を調整することである(下記の反応スキーム参照)。
【0030】
【化1】

【0031】
エステル化工程(第2工程)は、常套法に従って、連続的撹拌タンク型反応器、不連続的撹拌タンク型反応器、連続的固定反応器及び触媒を具有する流動層反応器から成る群から選択される反応器内でおこなうことができる。
【0032】
このエステル化は、不活性雰囲気中において、大気圧下又は2〜10気圧の範囲の圧力下でおこなうことができる。また、エステル化の好ましい反応温度は100℃〜200℃(より好ましくは100℃〜140℃)である。
【0033】
特定の好ましい態様においては、エステル化反応は、大気圧下の不活性雰囲気中(例えば、窒素雰囲気中)において、100℃〜200℃(好ましくは100℃〜140℃)の温度でおこなわれる。
【0034】
このエステル化反応におけるアセタール化多価アルコールと脂肪酸とのモル比は、好ましくは1:1〜4:1であり、より好ましくは1:1である。
【0035】
このエステル化反応における触媒の使用量は、アセタール化多価アルコールの全質量に対して、好ましくは1〜30%である。
【0036】
本発明において使用される触媒は、アセタール化多価アルコールのアセタール基をゆっくりと加水分解させることによって、脱保護されたヒドロキシル基を生成させ、該ヒドロキシル基は脂肪酸と反応すると共に高分子量エステルの生成を防止する。エステル化反応中に放出される水は、アセタールの完全な加水分解をもとらし、これによって、多価アルコールのモノエステルを主成分とする反応混合物が得られる。多価アルコールがソルビトールである場合、この反応混合物はソルビトールのモノエステルとソルビタンのモノエステルを主として含有する。
【0037】
本発明方法によれば、好ましい多価アルコールは、6個の炭素原子を有する直鎖状の脂肪族飽和アルコールである。この種のアルコールとしては、ソルビトール、マンニトール、イジチオール、ダルシトール、キシリトール及びタリトールが例示される。特定の好ましい態様においては、多価アルコールはソルビトールである。
【0038】
本発明において使用する好ましい脂肪酸は、6〜30個(特に8〜22個)の炭素原子を有する脂肪酸である。これらの脂肪酸の混合物を使用することも可能である。この種の脂肪酸としては、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキン酸)、ヘキサデセン酸(パアルミトレイン酸)及びオクタデセン酸(オレイン酸)が例示される。
【0039】
アセタール化多価アルコールと脂肪酸との好ましいモル比は1:1〜4:1であり、より好ましくは1:1である。
【0040】
本発明による多価アルコールのモノエステルの選択的製造法は「ワンポット」反応によっておこなうことができる。本発明方法には、アセタール化をおこなう工程、カルボニル化合物を蒸留によって除去する工程、及び反応混合物中へ脂肪酸を添加する工程が含まれる。この態様によれば、アセタール化と脂肪酸を用いるエステル化を、同一の触媒を用いておこなうことができる。
【実施例】
【0041】
実施例1:ゼオライトITQ−2の調製
ゼオライトITQ−2は、A.コルマらの文献[A.コルマ、C.コレル、F.ロピス、A.マルチネス、及びJ.ペレス−パリエンテ、Appl. Catal. A、 General、第115巻、第121頁(1994年)]に記載された方法に従って、該ゼオライトの層状前駆体MCM−22(Si/Al=15〜50)を出発原料として使用し、A.コルマらの文献[A.コルマ、V.フォルネス、S.B.ペルゲル、Th.L.M.メセン、及びJ.G.ブグラス、Nature、第376巻、第353頁(1998年)]に記載された方法に従って該前駆体を離層させることによって合成した。
【0042】
積層前駆体は、アルミン酸ナトリウム(56%Al、37%NaO;カルロ・エルバ社製)0.23g及び水酸化ナトリウム(98%;プロラボ社製)0.8gを蒸留水103.45gに溶解させた溶液との混合物を出発原料として調製した。この混合物中へ、ヘキサメチレンイミン(HMI)6.35g及びシリカ(「アエロシル200」;デグッサ社製)7.86gを連続的に添加した。得られた混合物を室温で30分間激しく撹拌した後、スチール製オートクレーブ(PTFEで内張したステンレススチール製オートクレーブ)内へ導入し、408Kで自生圧力下において11日間にわたって加熱撹拌処理をおこなった。得られた結晶性生成物を濾取し、これを蒸留水で洗浄した。洗浄は、洗浄液のpHが9未満になるまでおこなった。洗浄後に得られた固体状マスを適量の水と混合することによって、固形分が20重量%の懸濁液(スラリー)を調製した。
【0043】
得られた固体の離層は、上記の懸濁液(スラリー)27gを、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド29重量%水溶液105g及びテトラプロピルアンモニウムヒドロキシドの40%水溶液33gを用いて、353Kにおいて16時間にわたって処理することによっておこなった。剥離の完結はX線回折によって確認することができる。即ち、X線回折によれば、薄層(lamina)間の距離が2.7nmから4.5nmへ増加することが示される。懸濁液(スラリー)を超音波浴(50W、40kHz)中で25分間及び1時間処理して薄層を強制的に変位させることによって、ITQ−2−A及びITQ−2−Bをそれぞれ得た。この固体に塩酸水溶液を数滴添加してpHを2よりも低くした後、固形分を遠心分離によって集めた。集めた固体を813Kでの焙焼処理に付して有機物を除去することによってゼオライトITQ−2を得た。
【0044】
実施例2:触媒H0.5Cs2.5PW1240の調製
CsCO(0.630g)をHO(15.6ml)に溶解させて調製した溶液を、H40PW12(5.15g;フルカ社製)を水(19.5ml)に溶解させて調製した水溶液中へ電磁撹拌下でゆっくりと添加した(添加速度:1ml/分)。添加終了後、水分を40℃で蒸発させることによって、乾燥固体を得た。
【0045】
実施例3:アセトンを用いるソルビトールのアセタール化
反応を開始する前に、触媒(630mg;ソルビトールに対して7重量%)を、約1mmHgの圧力下において200℃で2時間加熱することによって、活性化させた。次いで、反応用の系を室温まで冷却させた後、アセトン(50ml)及びソルビトール(9g;0.05モル)を添加した。得られた懸濁液を50℃で24時間にわたって撹拌した。反応の終了後、アセトンを真空蒸留によって懸濁液から除去した。無色で粘性のある外観を呈した残留物を、オレイン酸のエステル化用出発原料として使用した。
【0046】
実施例4:ソルビトールのアセタールとオレイン酸との間のエステル化反応
アセトンでアセタール化されたソルビトールとオレイン酸との等モル混合物(アセタール:オレイン酸のモル比=1)を、予め活性化した触媒(反応試薬の全量に対して15重量%)へ添加し、得られた懸濁液を135℃での電磁撹拌処理に付した。反応終了後、触媒を濾去し、反応生成物をジクロロメタンで洗浄し、次いでメタノールで洗浄した。有機相を一緒にした後、真空下での濃縮処理に付して得られた残渣を秤量した。有機残渣中の生成物の分布を分析した。分析は、内部基準としてステアリン酸を添加したジメチルホルムアミドに溶解させた既知量の試料に基づいておこなった。以下の表1には、ゼオライト触媒としてベータ、モルデナイト、ITQ−2及びH0.5Cs2.5PW1240を用いて得られた結果を示す。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例5:キシリトールのアセタールとオレイン酸との間のエステル化反応(酸触媒:モルデナイト)
アセトンでアセタール化されたキシリトールとオレイン酸との混合物(アセタール:オレイン酸のモル比=2)を、予め活性化した触媒(反応試薬の全量に対して15重量%)へ添加し、得られた懸濁液を135℃での電磁撹拌処理に48時間付した。反応終了後、反応生成物を実施例4に記載された処理に付した。得られた結果を以下の表2にまとめて示す。
【0049】
【表2】

【0050】
実施例6:マンニトールのアセタールとオレイン酸との間のエステル化反応
アセトンでアセタール化されたマンニトールとオレイン酸との間のエステル化反応を、実施例4に記載された手順に準拠して、酸触媒としてのゼオライト(モルデナイト及びベータ)の存在下において(15重量%)、135℃でおこなった。反応を48時間おこなった後で得られた結果を以下の表3にまとめて示す。
【0051】
【表3】

【0052】
実施例7:ソルビトールのアセタールとパルミチン酸との間のエステル化反応(触媒:H0.5Cs2.5PW1240
予め活性化した触媒H0.5Cs2.5PW1240(反応試薬の全量に対して15重量%)を、ソルビトールのアセタールとパルミチン酸との混合物(ソルビトール/パルミチン酸のモル比:1)へ添加した。得られた懸濁液を電磁撹拌下において、135℃で9時間加熱した。反応終了後、反応混合物を実施例4に記載の手順に準拠して処理した。反応混合物中のエステルの収率とモル分布を以下の表4に示す。
【0053】
【表4】

【0054】
実施例8:ソルビトールのアセタールとラウリン酸とのエステル化反応(酸触媒:モルデナイト
予め活性化した触媒(反応試薬の全量に対して15重量%)を、アセトンでアセタール化したソルビトールとラウリン酸との混合物(アセタールソルビトール/ラウリン酸のモル比:1.2)へ添加した。得られた懸濁液を135℃で48時間加熱した。反応終了後、反応混合物を実施例4に記載の手順に準拠して処理した。得られた結果を以下の表5にまとめて示す。
【0055】
【表5】

【0056】
実施例9:「ワンポット」方式によるソルビトールのアセタール化反応とオレイン酸を用いるエステル化反応
予め活性化した触媒(反応試薬の全量に対して15%)を、ソルビトール(0.84g;4.6nmol)とアセトン(25ml)との混合物へ添加した。この混合物を60℃において、電磁撹拌下で均質物が得られるまで加熱した。アセトンを真空下で留去させ、得られた残渣へオレイン酸(1.3g;4.6nmol)を添加し、得られた混合物を135℃で加熱した。反応終了後、ジクロロメタンを添加し、次いで触媒を濾去して得られた反応生成物をジクロロメタンで洗浄した後、メタノールで洗浄した。有機相を一緒にした後、真空下での濃縮処理に付して得られた有機残渣を秤量した。有機残渣中の生成物の分布を分析した。分析は、内部基準としてステアリン酸を添加したジメチルホルムアミドに溶解させた既知量の試料に基づいておこなった。触媒としてモルデナイトを用いて得られた結果を以下の表6に示す。
【0057】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸と多価アルコールとのモノエステルの選択的な製造方法であって、下記の工程(1)及び(2)を含む該製造方法:
(1)多価アルコールのヒドロキシル基をアセタール化によって保護する第1工程、及び(2)アセタール化多価アルコールを、1種若しくは複数種の固体酸触媒の存在下において脂肪酸を用いてエステル化する第2工程。
【請求項2】
固体酸触媒が、微孔質モレキュラーシーブ及びヘテロポリ酸の塩から成る群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヘテロポリ酸の塩がアリカリ金属塩である請求項2記載の方法。
【請求項4】
ヘテロポリ酸塩が式H3−XPW(式中、Mは原子価が+1の金属原子を示し、Pはリン原子を示し、Wはタングステン原子を示し、xは0.1〜2.9の数を示す)で表される化合物である請求項2記載の方法。
【請求項5】
固体酸触媒が式H3−X40PW12(式中、Mは原子価が+1の金属原子を示し、xは0.1〜2.9の数を示す)で表されるリンタングステン酸塩である請求項2記載の方法。
【請求項6】
原子価が+1の金属原子がLi、Na、K、Rb及びCsから成る群から選択されるアルカリ金属原子である請求項5記載の方法。
【請求項7】
微孔質モレキュラーシーブが酸性ゼオライトである請求項2記載の方法。
【請求項8】
酸性ゼオライトが6〜400のSi/TIII 比(TIII は3価金属原子を示す)を有する酸性ゼオライトである請求項7記載の方法。
【請求項9】
微孔質モレキュラーシーブが下記の群から成るゼオライト又はこれらの任意の混合物である請求項7記載の方法:ホージャサイト(FAU)、モルデナイト(MOR)、オメガ(MAZ)、オフレタイト(OFF)、ZSM−4(MFI)、ベータ(BEA)、SSZ−24(AFI)、MCM−22、SSZ−26及び離層化ゼオライト。
【請求項10】
離層化ゼオライトがITQ−2,ITQ−6及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項9記載の方法。
【請求項11】
多価アルコールのヒドロキシル基をアセタール化によって保護する第1工程を、均一触媒反応又は触媒として固体酸触媒を用いる不均一触媒反応によっておこなう請求項1記載の方法。
【請求項12】
アセタール化による第1工程を、連続的撹拌タンク型反応器、不連続的撹拌タンク型反応器、連続的固定反応器及び触媒を具有する流動層反応器から成る群から選択される反応器内でおこなう請求項1記載の方法。
【請求項13】
アセタール化による第1工程を、不活性雰囲気中において、大気圧から2〜10気圧の範囲の圧力下でおこなう請求項1記載の方法。
【請求項14】
アセタール化による第1工程を、25℃〜60℃の温度でおこなう請求項1記載の方法。
【請求項15】
アセタール化による第1工程を、多価アルコールの質量に対して1〜20%の量の触媒を用いておこなう請求項1記載の方法。
【請求項16】
アセアール化による第1工程を、大気圧下の不活性窒素雰囲気中において、25℃〜40℃の温度で、多価アルコールの質量に対して1〜20%の不均一触媒の存在下でおこなう請求項1記載の方法。
【請求項17】
アセタール化による第1工程を、非置換アルデヒド、置換アルデヒド、非置換ケトン及び置換ケトンから成る群から選択されるカルボニル化合物を用いておこなう請求項1記載の方法。
【請求項18】
ケトンが脂肪族の低分子量ケトンである請求項17記載の方法。
【請求項19】
カルボニル化合物が、アセトン、ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−ヘキサノン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナール及びベンズアルデヒドから成る群から選択される化合物である請求項17記載の方法。
【請求項20】
アセタール化による第1工程を、カルボニル化合物:多価アルコールのモル比が1:1〜30:1になる条件下でおこなう請求項1記載の方法。
【請求項21】
エステル化による第2工程を、溶剤の不存在下でおこなう請求項1記載の方法。
【請求項22】
エステル化による第2工程を、連続的撹拌タンク型反応器、不連続的撹拌タンク型反応器、連続的固定反応器及び触媒を具有する流動層反応器から成る群から選択される反応器内でおこなう請求項1記載の方法。
【請求項23】
エステル化による第2工程を、不活性雰囲気中において、大気圧から2〜10気圧の範囲の圧力下でおこなう請求項1記載の方法。
【請求項24】
エステル化による第2工程を、100℃〜200℃の温度でおこなう請求項1記載の方法。
【請求項25】
エステル化による第2工程において、アセタール化多価アルコール:脂肪酸のモル比が1:1〜4:1になるように両者を存在させる請求項1記載の方法。
【請求項26】
エステル化による第2工程を、アセタール化多価アルコールの全質量に対して1〜30%の量の触媒を用いておこなう請求項1記載の方法。
【請求項27】
脂肪酸が、6〜30個の炭素原子を有する脂肪酸である請求項1記載の方法。
【請求項28】
脂肪酸が下記の群から選択される脂肪酸又はこれらの任意の混合物である請求項1記載の方法:ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ヘキサデセン酸及びオクタデセン酸。
【請求項29】
多価アルコールが直鎖状脂肪族飽和アルコールである請求項1記載の方法。
【請求項30】
多価アルコールがマンニトール、イジチオール、ダルシトール、キシリトール及びタリトールから成る群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項31】
多価アルコールがソルビトールである請求項1記載の方法。
【請求項32】
アセタール化による第1工程とエステル化による第2工程を、中間生成物を単離することなくおこなう「ワンポット」反応によっておこない、該アセタール化による第1工程から得られる混合物へ脂肪酸を添加し、アセタール化と脂肪酸を用いるエステル化において同一の触媒を作用させる請求項1記載の方法。
【請求項33】
アセタール化から得られる混合物へ1種若しくは複数種の脂肪酸を添加する前に、アセタール化に用いたカルボニル化合物を蒸留によって除去する請求項31記載の方法。

【公表番号】特表2007−534665(P2007−534665A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550200(P2006−550200)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【国際出願番号】PCT/ES2005/070003
【国際公開番号】WO2005/070865
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(593005895)コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス (67)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
【出願人】(500104934)ウニベルシダッド・ポリテクニカ・デ・バレンシア (16)
【出願人】(506250619)ウニベルシティ・マラヤ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITI MALAYA
【Fターム(参考)】