説明

多孔性金属薄膜およびその製造方法

【課題】
表面の孔密度が制御可能な、孔径がナノサイズの多孔性金属薄膜を提供する。
【解決方法】
密閉容器中でめっき液と二酸化炭素液体の混合液中、二酸化炭素の超臨界状態で電解めっきを行い、基材上に多孔性金属薄膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基材上にめっきによって形成される多孔性金属薄膜と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な多孔を形成した金属薄膜の製法として、金属箔の構成材料と異質の材料からなる被覆体を、キャリア箔上に0.001〜1μmの厚さで形成し、その上に前記金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させて多孔性金属箔を製造する方法で、例えば、平均粒径D50が2〜200nmの炭素質材料を含む塗工液を支持体上に0.001〜1μmの厚さで塗布し、その上に前記金属箔の構成材料を電解めっきによって電析させて該金属箔を形成する方法が知られている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
しかし、この方法は、電気めっきで作成するであるが、不活性微粒子を入れた分散めっき法を利用するため、成膜後に不活性微粒子が薄膜の中に入ってきてしまう。
【0004】
又、基板上に、高温で相溶する二種以上の金属または金属化合物を混合分散し、温度変化により相分離するスピノーダル分解で生成した成膜の構成成分の一部を酸などで溶解除去し、基板上に多孔性金属化合物薄膜を製造する、多孔性金属化合物薄膜の成膜方法は知られているが、この方法では、成分の一部を除去するため、成膜の厚みは非常に薄く限定される。(例えば、特許文献2参照)
【0005】
【特許文献1】特開2005−129264公報
【特許文献2】特開2005−039013公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基材上にめっきによって形成された多孔性金属薄膜とその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、特定のめっき条件で金属板にめっきした場合には、金属板表面に円形でミクロンサイズの大きさで、孔の形状が揃った多孔性金属薄膜が形成されることを見出し、めっき条件を調整することで、孔の大きさや密度、深さなどを制御することが可能な多孔性金属薄膜の製造方法を見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の第一の発明は、基材上に形成した多孔性金属薄膜であって、孔の内部に、さらに1段以上の孔が形成されている孔が含まれる、多孔性金属薄膜である。
【0009】
本発明の第二の発明は、多孔性金属薄膜が、超臨界状態での電解めっきによって形成された、多孔性金属薄膜である。
【0010】
前記超臨界状態が、二酸化炭素の超臨界状態である。
【0011】
前記電解めっき金属が、Zn、Cr、Cu、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Sn,Au、およびPdから選ばれる、少なくとも1種類を含む金属である。
【0012】
前記多孔性金属薄膜の平均孔径と気孔率は制御可能である。
【0013】
前記多孔性金属薄膜は不純物を含まない。
【0014】
本発明の第三の発明は、容器内に、基材と電極を設置し、めっき液と二酸化炭素液体との混合溶液に、微量の界面活性剤を加え、不活性ガスで容器内を置換後、容器を密閉し、熱と圧力を加え二酸化炭素の超臨界状態下でめっきを行い、基材面に多孔性金属薄膜を形成する、多孔性金属薄膜の製造方法である。
【0015】
前記電解めっきの、通電時間、めっき液と二酸化炭素液体との体積分率、圧力、温度の条件を制御することにより、所定の平均孔径と気孔率を有する多孔性金属薄膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の多孔性金属薄膜は、触媒担体、リチウムイオン二次電池用の集電体、色素増感型太陽電池の陽極や固体型燃料電池の電極構成材料としての用途に使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明者等は、めっき液と二酸化炭素の液体の密封容器中で、温度と圧力を二酸化炭素の超臨海温度304.1K(30.0℃)と、臨界圧力7.37MPaを超えた、超臨海状態でめっきを行い、形成しためっき表面を注意深く調べたところ、驚くべきことに、真鍮板表面に、ナノサイズでほぼ円形の孔が多数表面に形成された多孔性金属薄膜が形成される事を見出した。
【0018】
実験では、Ni板を陽極に真鍮板を負極に接続し、ステンレス製耐圧容器中に置き、Niめっき液、二酸化炭素の混合液を加え、微量の界面活性剤を添加後、不活性ガスで空気を置換後、容器を密閉し、加温・加圧し二酸化炭素の超臨界状態下において通電した。
【0019】
形成される孔の大きさや、密度は、実験条件を変える事により、制御可能であり、条件により孔の中には、更に段になって孔を形成する複数段の孔を形成する孔もあり、混合液の配合比や、圧力、通電時間により、表面に形成される孔の密度や、孔の深さ、孔の形状を変化させることも見出し、本発明を完成させた。
【実施例1】
【0020】
反応容器ステンレス製耐圧容器50mlに、陽極を純Ni板(2cm×1cm)、負極を真鍮版(2cm×1cm)、極板間距離2cmとし、体積分率でNiめっき液/二酸化炭素 40/10、界面活性剤60μlを加え、窒素ガスで置換後密閉し、圧力10MPa、温度 50℃に設定後、電流値 50mAで、めっきの通電時間を変え、通電時間と真鍮板上に形成された、Niめっき層上に形成された矩形内にある孔の数と平均直径を調べた。
【0021】
図1は、めっき時間の差による、表面に形成した多孔の顕微鏡写真である。この図より、(a)、(b)、(c)とめっき時間の増加と共に、孔の大きさが拡大することがわかる。又、表1は、通電時間の差による、Niめっき面の200μm×150μmの矩形内に形成された、孔の個数及び孔の平均直径を示す。通電時間が長くなると、孔の直径が大きくなる傾向があることが判明した。
【0022】
【表1】

【実施例2】
【0023】
実施例1の条件で、めっき液と二酸化炭素液体との体積分率を変化させ、通電時間30分で、真鍮板上に形成された、Niめっき層上に形成された矩形内にある孔の数と平均直径を調べた。表2に、体積分率を変化させた場合のNiめっき面の200μm×150μmの矩形内に形成された孔個数と孔の平均直径を示す。めっき液の体積分率が多い程、孔の数が多くなり、孔が深く、多段の孔が増えることが分かった。図2にめっき液と二酸化炭素の体積分率の違いによって形成された孔の顕微鏡写真である。この結果より、(d)、(e)、(f)とめっき液の体積分率が高いほど、孔の数が多く、深くなる傾向が見られた。
【0024】
【表2】

【実施例3】
【0025】
実施例1の条件で、圧力を、変化させ、通電時間30分で、真鍮板上に形成された、Niめっき層上に形成された矩形内にある孔の数と平均直径を調べた。表3は、Niめっき面の200μm×150μmの矩形内に形成された、孔の直径と個数を示す。孔の数や平均直径は大きな差異は見られないが、図3より見ると、(g),(h),(i)と圧の高いほど、孔が深くなる傾向が見られた。
【0026】
【表3】

【0027】
図4は、実施例1の通電時間30分で形成した多孔性金属薄膜の超深度形状測定顕微鏡写真である。この写真より本発明で形成する孔は円形に近く、また、孔の内部に更に孔が形成され、孔が複数段になっている孔が多数あることが分かり、めっき条件を制御することで、所定の平均孔径と気孔率を有する多孔性金属薄膜を得る事が可能になる。
【0028】
本発明では、めっきする金属としては、めっき可能な金属であればよく、Zn、Cr、Cu、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Sn,Au、およびPdめっき、および、これらの合金めっきなど、通常電解めっきで使用されている金属なら使用することが可能である。
【0029】
また、本発明では、カーボンなどの、固形物微粒子を使用していないので、めっきで形成された金属薄膜には不純物を含むことがない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の、実施例1で、めっきの通電時間を変化させた場合の、と基材上に形成された多孔性金属薄膜の顕微鏡写真である(倍率3000倍)。
【図2】本発明の、実施例2で、めっき液と二酸化炭素の体積分率を変化させた液でめっきした場合の、素材上に形成させた多孔性金属薄膜の顕微顕写真である(倍率3000倍)。
【図3】本発明の、実施例3で、めっき容器内の圧力を変化させた場合の、基材上に形成された、多孔性金族薄膜の顕微鏡写真である(倍率3000倍)。
【図4】本発明の、実施例1の通電時間30分で形成された多孔性金属薄膜の超深度形状測定顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成した多孔性金属薄膜であって、孔の内部に、さらに1段以上の孔が形成されている孔が含まれる、多孔性金属薄膜。
【請求項2】
基材上に形成した多孔性金属薄膜であって、超臨界状態での電解めっきによって形成された、多孔性金属薄膜。
【請求項3】
超臨界状態が二酸化炭素の超臨界状態である、請求項2に記載の多孔性金属薄膜。
【請求項4】
電解めっき金属が、Zn、Cr、Cu、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Sn,Au、およびPdから選ばれる少なくとも1種類を含む金属である、請求項2に記載の多孔性金属薄膜。
【請求項5】
平均孔径と気孔率が制御可能である、請求項2に記載の多孔性金属薄膜。
【請求項6】
多孔性金属薄膜が不純物を含まない、請求項2に記載の多孔性金属薄膜
【請求項7】
容器内に、基材と電極を設置し、めっき液と二酸化炭素液体との混合溶液に、微量の界面活性剤を加え、不活性ガスで容器内を置換後、容器を密閉し、熱と圧力を加え二酸化炭素の超臨界状態下でめっきを行い、基材面に多孔性金属薄膜を形成する、多孔性金属薄膜の製造方法。
【請求項8】
電解めっきの、通電時間、めっき液と二酸化炭素液体の体積分率、圧力、温度の条件を制御することにより、所定の平均孔径と気孔率を有する、請求項7に記載の、多孔性金属薄膜の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−63598(P2007−63598A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249623(P2005−249623)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】