説明

多官能研磨パッド

【課題】ILD研磨に適した研磨パッドを提供する。
【解決手段】研磨パッドは、銅、絶縁体、バリヤ及びタングステンの少なくとも一つを含むパターン付けされた半導体基材を研磨するのに適している。研磨パッドのポリマーマトリックスは、ポリオールブレンド、ポリアミン又はポリアミン混合物及びトルエンジイソシアネートのポリウレタン反応生成物である。ポリオールブレンドは、合計で15〜77重量%のポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールの混合物で、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールの混合物は、20/1〜1/20のポリプロピレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比を有する。ポリアミン又はポリアミン混合物は8〜50重量%であり、トルエンジイソシアネートは合計で15〜35重量%のモノマー又は部分的に反応したトルエンジイソシアネートモノマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本明細書は、半導体基材を研磨又は平坦化するのに有用な研磨パッドに関する。半導体の製造は一般に、いくつかのケミカルメカニカルポリッシング(CMP)工程を含む。各CMP工程において、研磨パッドが、研磨溶液、たとえば砥粒含有研磨スラリー又は無砥粒反応性液と組み合わさって、後続の層の受け入れに備えて平坦化する、又は平坦さを維持するようなやり方で余剰材料を除去する。これらの層の積み重ねが、集積回路を形成するようなやり方で組み合わさる。これらの半導体素子の製造は、より高い作動速度、より少ない漏れ電流及び低下した電力消費を有する素子に対する要求のために、より複雑化し続けている。素子アーキテクチャの点では、これは、より微細な形体ジオメトリ及び増大したメタライゼーションレベルの数と言い換えることができる。これらのますます厳しくなる素子設計要求が、ますます小さなライン間隔及び対応するパターン密度の増大の採用を強要している。素子のより小さなスケール及び増大した複雑さが、CMP消費材料、たとえば研磨パッド及び研磨溶液に対する、より大きな要求を招くに至った。加えて、集積回路の形体サイズが減少するにつれ、CMP誘発欠陥、たとえばスクラッチがより大きな問題になる。さらに、集積回路の膜厚の減少は、ウェーハ基材に対して許容可能なトポグラフィーを提供すると同時に欠陥率の改善を要求する。これらのトポグラフィー要求は、ますます厳格な平坦性、ラインディッシング及び小形体アレイエロージョン研磨規格を要求する。
【0002】
旧来、キャスト成形ポリウレタン研磨パッドが、集積回路を製造するために使用される大部分の研磨処理のための機械的結着性及び耐薬品性を提供していた。たとえば、ポリウレタン研磨パッドは、引裂きに抵抗するのに十分な引張り強さ及び伸び、研磨中の摩耗問題を回避するための耐摩耗性ならびに強酸性及び強苛性アルカリ性の研磨溶液による攻撃に抵抗するための安定性を有する。Dow Electronic Materialsによって供給されるIC1000(商標)研磨パッドは、アルミニウム、バリヤ材料、絶縁体、銅、ハードマスク、low-k絶縁体、タングステン及び超low-k絶縁体のような多数の基材を研磨するのに適した業界標準ポリウレタン研磨パッドを代表する(IC1000はDow Electronic Materials又はその系列会社の商標である)。
【0003】
M. J. Kulpが、米国特許第7,169,030号で、高い引張り弾性率を有する一連のポリウレタン研磨パッドを開示している。これらの研磨パッドは、研磨パッドと研磨スラリーとのいくつかの組み合わせに関して優れた平坦化及び欠陥率を提供する。たとえば、これらの研磨パッドは、セリア含有研磨スラリーに関して、酸化ケイ素/窒化ケイ素を研磨する用途、たとえば直接的なシャロートレンチ素子分離(STI)研磨用途の場合、優れた研磨性能を提供することができる。本明細書に関して、酸化ケイ素とは、半導体素子において絶縁体を形成するのに有用な酸化ケイ素、酸化ケイ素化合物及びドープされた酸化ケイ素配合物をいい、窒化ケイ素とは、半導体用途に有用な窒化ケイ素、窒化ケイ素化合物及びドープされた窒化ケイ素配合物をいう。残念ながら、これらのパッドは、今日及び将来の半導体ウェーハに含まれる多数の基材層に関してあらゆる研磨スラリーとで研磨性能を改善するだけの汎用性を有しない。さらには、半導体素子のコストが低下するにつれ、研磨性能におけるさらなる増強がなおも要望されている。
【0004】
パターン付けされたウェーハの場合、銅研磨のような非鉄金属研磨は、依然として、集積回路及びメモリ用途にとって重要な厳しい用途である。半導体の製造においては、多くの場合、銅層がウェーハ全体を覆う。研磨パッドは、優れたバルク銅除去を提供して、銅配線のネットワークを残さなければならない。銅のような非鉄基材の研磨ための改善された研磨性能を有する研磨パッドがなおも要望されている。
【0005】
加えて、研磨パッドの除去速度(removal rate)の増大は、スループットを増して半導体製造プラントの設備設置面積及び出費を減らすことができる。性能増強に対するこの要求のため、増強された性能で基材層を除去するための研磨パッドがなおも要望されている。たとえば、酸化物絶縁体除去速度は、層間絶縁膜(「ILD」)又は金属間絶縁膜(「IMD」)研磨中に絶縁体を除去するのに重要である。使用される絶縁体酸化物の具体的なタイプは、BPSG、テトラエチルオキシシリケートの分解、HDP(「高密度プラズマ」)及びSACVD(「減圧化学蒸着」)から形成されるTEOSを含む。増大した除去速度を許容可能な欠陥率性能及びウェーハ均一さと併せ持つ研磨パッドが今も求められている。特に、加速された酸化物除去速度を許容可能な平坦化及び欠陥率研磨性能と併せ持つ、ILD研磨に適した研磨パッドが要望されている。
【0006】
発明の記述
本発明の局面は、銅、絶縁体、バリヤ及びタングステンの少なくとも一つを含むパターン付けされた半導体基材を研磨するのに適した研磨パッドであって、ポリマーマトリックスを含み、ポリマーマトリックスが、ポリオールブレンド、ポリアミン又はポリアミン混合物及びトルエンジイソシアネートのポリウレタン反応生成物であり、ポリオールブレンドが、合計で15〜77重量%のポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールの混合物であり、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールの混合物が、20/1〜1/20のポリプロピレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比を有し、ポリアミン又はポリアミン混合物が8〜50重量%であり、トルエンジイソシアネートが合計で15〜35重量%のモノマー又は部分的に反応したトルエンジイソシアネートモノマーである研磨パッドを提供する。
【0007】
本発明のもう一つの局面は、銅、絶縁体、バリヤ及びタングステンの少なくとも一つを含むパターン付けされた半導体基材を研磨するのに適した研磨パッドであって、ポリマーマトリックスを含み、ポリマーマトリックスが、ポリオールブレンド、ポリアミン又はポリアミン混合物及びトルエンジイソシアネートのポリウレタン反応生成物であり、ポリオールブレンドが、合計で20〜75重量%のポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールの混合物であり、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールの混合物が、15/1〜1/15のポリプロピレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比を有し、ポリアミン又はポリアミン混合物が10〜45重量%であり、トルエンジイソシアネートが20〜30重量%のモノマー又は全モノマー又は部分的に反応したトルエンジイソシアネートモノマーである研磨パッドを提供する。
【0008】
詳細な説明
本発明は、半導体、光学及び磁性基材の少なくとも一つを平坦化するのに適した、ポリマーマトリックスを含む研磨パッドを提供する。特に、ポリアミンと、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)のブレンドとトルエンジイソシアネートのポリウレタン反応生成物からのポリマーマトリックスが、銅及びILD研磨に有用な多官能パッドを提供するということがわかった。特に、これらの範囲で製造されたパッドは、ILD及び銅の両用途に関して、業界標準IC1000研磨パッドに比較して改善された研磨性能を提供することができる。
【0009】
本発明の研磨パッドは銅研磨に効果的である。特に、パッドは、欠陥率における対応する増大を招くことなく、銅除去速度を増すことができる。あるいはまた、パッドは、除去速度における対応する低下を招くことなく、欠陥率を下げることができる。本明細書に関して、除去速度とは、Å/分で表される除去速度をいう。
【0010】
研磨パッドは、層間絶縁膜(ILD)用途におけるようにILD絶縁材を研磨し、平坦化するのに特に適し、アルミニウム、銅又はタングステンのような非鉄用途に適している。パッドは、現行のパッドを上回る増大した除去速度を提供する(特に研磨の最初の30秒間)。研磨の早期部分におけるパッドの加速された応答が、指定量の材料をウェーハ表面から除去するのに必要な研磨時間を短縮することにより、ウェーハスループットの増大を可能にする。
【0011】
ヒュームドシリカを用いるILD研磨の場合、30秒での除去速度は3750Å/分を超えることができる。さらには、本発明は、同じ研磨試験においてIC1010(商標)ポリウレタン研磨パッドによって30秒で得られる除去速度よりも少なくとも10%高い除去速度を提供することができる(IC1010はDow Electronic Materials又はその系列会社の商標である)。有利には、シリカ含有砥粒を用いてTEOSシートウェーハを研磨する場合の本発明の研磨パッドの30秒での除去速度は、シリカ含有砥粒を用いてTEOSシートウェーハを研磨する場合のIC1000研磨パッドの30秒及び60秒での除去速度以上である。IC1000(商標)は、それらの成分から作られた部品に熱可塑性を付与する傾向にある脂肪族イソシアネートを含むため、TEOS除去速度を研磨時間とともに増大させることができる。IC1000研磨パッドの熱可塑性は、除去速度における何らかの最大値が生じるまで除去速度の増大とともに研磨パッドとウェーハとの接触の増大を促進すると思われる。パッド/ウェーハ接触面積をさらに高いレベルまで増すと、局所的アスペリティ/ウェーハ接触圧が低下するため、除去速度が低下すると思われる。
【0012】
除去速度は砥粒含量の増加とともに増大することができるが、砥粒レベルから独立した、1C1010研磨パッドの除去速度を上回る改善は、研磨性能における重要な進歩を表す。たとえば、これは、低い欠陥率で除去速度を増大することを容易にし、スラリーコストを下げることができる。除去速度に加えて、ウェーハスケールの不均一さが重要な研磨性能で考慮される要素を表す。一般に、良好に研磨されたダイの最大数を得るためには研磨されたウェーハの均一さが重要であるため、ウェーハ内の不均一さは6%未満であるべきである。
【0013】
本明細書に関して、「ポリウレタン」とは、二官能又は多官能イソシアネートから誘導される生成物、たとえばポリエーテルウレア、ポリイソシアヌレート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、それらのコポリマー及びそれらの混合物である。キャスト成形ポリウレタン研磨パッドが、半導体、光学及び磁性基材を平坦化するのに適している。パッドの具体的な研磨性は、一部には、ポリプロピレングリコール(PPG)及びポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)のブレンド、ポリアミン及びトルエンジイソシアネートの反応生成物から生じる。PPG/PTMEG比をポリアミン及びトルエンジイソシアネートと組み合わせて制御すると、改善された研磨性能を有する多官能研磨パッドを製造することができることがわかった。特に、これらのパッドは、銅、ILD及びSTI用途の研磨を改善することができる。
【0014】
ポリマーマトリックスは、合計で15〜77重量%のPPG及びPTMEGを含有する混合物から生じる。本明細書に関して、配合量は、断りない限り、重量%で表される。好ましくは、ポリマーマトリックスは、合計で20〜75重量%のPPG及びPTMEGを含有する混合物から生じる。加えて、混合物は、PPG/PTMEGを20/1〜1/20の比で含有する。好ましくは、混合物は、PPG/PTMEGを15/1〜1/15の比で含有する。銅及びILDの高速研磨の場合、2/1〜1/2のPPG/PTMEG比が特に適切である。加えて、銅及びILDの低欠陥研磨の場合、20/1〜2/1、好ましくは15/1〜2/1のPPG/PTMEG比が特に適切である。同様に、銅及びILDの低欠陥研磨の場合、1/20〜1/2、好ましくは1/15〜1/2のPPG/PTMEG比が特に適切である。
【0015】
液状混合物は、トルエンジイソシアネート(TDI)をモノマー又は部分的に反応したモノマーとして15〜35重量%含む。本明細書に関して、TDIモノマー又は部分的に反応したモノマーは、ポリウレタンを硬化させる前の、TDIモノマー又は反応してプレポリマー化したTDIモノマーの重量%を表す。好ましくは、TDIモノマー又は部分的に反応したモノマーは20〜30重量%を表す。場合によっては、芳香族TDIはいくらかの脂肪族イソシアネートを含有することができる。好ましくは、多官能芳香族イソシアネートは、脂肪族イソシアネートを15重量%未満しか含有せず、より好ましくは、脂肪族イソシアネートを12重量%未満しか含有しない。もっとも好ましくは、混合物は脂肪族イソシアネートを不純物レベルでしか含有しない。
【0016】
このTDI範囲内でポリマーを生成することができる適切なPTMEG系プレポリマーの具体例は、Chemtura製のAdiprene(登録商標)プレポリマーLF750Dである。適切なPPG系プレポリマーの例は、Adiprene(登録商標)プレポリマーLFG740D及びLFG963Aを含む。加えて、LF750D、LFG740D及びLFG963Aは、遊離2,4及び2,6TDIモノマーをそれぞれ0.1重量%未満しか有さず、従来のプレポリマーよりも一貫したプレポリマー分子量分布を有する低遊離イソシアネートプレポリマーを代表する。改善されたプレポリマー分子量一貫性及び低遊離イソシアネートモノマーを有する「低遊離」プレポリマーが、より規則的なポリマー構造を促進し、改善された研磨パッド一貫性に貢献する。
【0017】
ポリマーマトリックスは一般に、ポリアミンNH2/ポリオールOHがモル比4/5〜5/4で含まれ、ポリオールOH/イソシアネートNCOがモル比0.9/1.0〜1.1/1.0で含まれる原料を有する。OH基のいくらかは、低分子量ポリオール又は意図的に加えられる水もしくは偶発的な湿分への暴露による水に由来することができる。ポリオール又はポリアミンは、最終的なポリマーマトリックスを生成する前にイソシアネートと部分的に反応してプレポリマーを形成することもできるし、1ステップ工程で一斉にイソシアネートに加えられることもできる。
【0018】
典型的には、反応混合物は、ポリアミン又はポリアミン含有混合物を8〜50重量%含有する。好ましくは、混合物は、ポリアミン又はポリアミン含有混合物を10〜45重量%含有する。たとえば、ポリアミンをアルコールアミン又はモノアミンと混合することが可能である。本明細書に関して、ポリアミンはジアミン及び他の多官能アミンを含む。例示的なポリアミンとしては、芳香族ジアミン又はポリアミン、たとえば4,4′−メチレン−ビス−o−クロロアニリン[MBCA]、4,4′−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)[MCDEA]、ジメチルチオトルエンジアミン、トリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシドジ−p−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシドモノ−p−アミノベンゾエート、ポリプロピレンオキシドジ−p−アミノベンゾエート、ポリプロピレンオキシドモノ−p−アミノベンゾエート、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオ)エタン、4,4′−メチレン−ビス−アニリン、ジエチルトルエンジアミン、5−tert−ブチル−2,4−及び3−tert−ブチル−2,6−トルエンジアミン、5−tert−アミル−2,4−及び3−tert−アミル−2,6−トルエンジアミンならびにクロロトルエンジアミンがある。MBCA添加が好ましいポリアミンを代表する。研磨パッドのためのウレタンポリマーは、単一混合ステップで製造することもできるし、プレポリマーを使用して製造することもできる。
【0019】
研磨パッドを製造するために使用されるポリマーの成分は、好ましくは、得られるパッドモホロジーが安定であり、容易に再現可能であるように選択される。たとえば、4,4′−メチレン−ビス−o−クロロアニリン[MBCA]をトルエンジイソシアネートモノマー又はプレポリマーと混合してポリウレタンポリマーを形成する場合、モノアミン、ジアミン及びトリアミンのレベルを制御することがしばしば有利である。モノ、ジ及びトリアミンの割合の制御は、化学比及び得られるポリマー分子量を一貫した範囲内に維持することに貢献する。加えて、一貫した製造のためには、酸化防止剤のような添加物及び水のような不純物を抑制することがしばしば重要である。たとえば、水はイソシアネートと反応して気体二酸化炭素を形成するため、水濃度を制御すると、ポリマーマトリックス中に気孔を形成する二酸化炭素気泡の濃度に影響を加えることができる。偶発的な水とのイソシアネート反応はまた、ポリアミンとの反応に利用可能なイソシアネートを減らし、したがって、OH又はNH2/NCO基のモル比ならびに架橋のレベル(過剰なイソシアネート基がある場合)及び得られるポリマー分子量を変化させる。
【0020】
ポリウレタンポリマー材料は、好ましくは、トルエンジイソシアネートと、ポリテトラメチレンエーテルグリコール/ポリプロピレングリコールブレンドと、ポリアミンとのプレポリマー反応生成物から形成される。好ましくは、ポリアミンは芳香族トルエンジイソシアネートである。もっとも好ましくは、芳香族ジアミンは4,4′−メチレン−ビス−o−クロロアニリン又は4,4′−メチレン−ビス−(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)である。
【0021】
研磨パッドは、多孔性構造及び非孔性又は無充填構造の両方で有用である。完成品研磨パッドは、好ましくは、0.4〜1.3g/cm3の密度を有する。多孔性パッドの場合、完成品ポリウレタン研磨パッドは一般に、0.5〜1g/cm3の密度を有する。ガス溶解、発泡剤、機械的泡立て及び中空の微小球の導入によって気孔を加えることが可能である。気孔率及び組成に依存して、研磨パッドは一般に、20〜70のショアD硬さを有する。本明細書に関して、ショアD試験は、試験前にパッド試料を50%の相対湿度に25℃で5日間配置することによってコンディショニングし、ASTM D2240に概説された方法を使用して、硬さ試験の繰返し精度を改善することを含む。
【0022】
気孔は一般に、2〜50μmの平均直径を有する。もっとも好ましくは、気孔は、球形を有する中空ポリマー粒子から生じる。好ましくは、中空ポリマー粒子は2〜40μmの重量平均直径を有する。本明細書に関して、重量平均直径とは、キャスト成形前の中空ポリマー粒子の直径を表し、粒子は球形又は非球形であることができる。もっとも好ましくは、中空ポリマー粒子は10〜30μmの重量平均直径を有する。
【0023】
膨張した中空ポリマー粒子の重量平均直径の公称範囲は15〜90μmである。さらには、高い気孔率と小さな孔径との組み合わせが、欠陥率を下げる際に他ならぬ利点を有することができる。しかし、気孔率が高くなりすぎるならば、研磨パッドは機械的結着性及び強度を失う。たとえば、研磨層の30〜60容量%を構成する重量平均直径2〜50μmの中空ポリマー粒子を加えることは、欠陥率の低下を促進する。さらには、気孔率を35〜55容量%、具体的には35〜50容量%に維持すると、除去速度の増大を促進することができる。本明細書に関して、容量%気孔率は、1)気孔なしのポリマーの公称密度から配合物の計測密度を引いて、配合物1cm3から「消えた」ポリマーの質量を決定し、次いで、2)「消えた」ポリマーの質量を気孔なしのポリマーの公称密度で割って、配合物1cm3から消えたポリマーの体積を決定し、それに100を掛けて気孔容量%値に変換することによって決定される気孔の容量%を表す。あるいはまた、配合物中の気孔の容量%又は容量%気孔率は、1)配合物100g中の中空ポリマー粒子の質量を100gから引いて、配合物100g中のポリマーマトリックスの質量を決定し、2)ポリマーマトリックスの質量をポリマーの公称密度で割って、配合物100g中のポリマーの体積を決定し、3)配合物100g中の中空ポリマー粒子の質量を公称中空ポリマー粒子密度で割って、配合物1cm3中の中空ポリマー粒子の体積を決定し、4)配合物100g中のポリマーの体積を配合物100g中の中空粒子又は気孔の体積に足して、配合物100gの体積を決定し、次いで、5)配合物100g中の中空粒子又は気孔の体積を配合物100gの全体積で割り、それに100を掛けて配合物中の気孔の容量%又は気孔率を出すことによって決定することもできる。これら二つの方法は、容量%気孔率又は気孔に関して類似した値を出すが、第二の方法は、処理中のパラメータ、たとえば反応の発熱が中空ポリマー粒子又は微小球をその公称「膨張体積」を超えるまで膨張させるおそれがある第一の方法よりも低い容量%気孔又は気孔率の値を示す。ある特定の気孔又は気孔率の場合、孔径の減少は研磨速度を高める傾向にあるため、キャスト成形中の発熱を抑制して、すでに膨張した中空ポリマー粒子又は微小球のさらなる膨張を防ぐことが重要である。たとえば、室温の型への流込み、ケーク高さの制限、プレポリマー温度の低下、ポリアミン又はポリオール温度の低下、NCOの減少及び遊離TDIモノマーの制限すべてが、反応するイソシアネートによって生じる発熱を減らすことに貢献する。
【0024】
大部分の従来の多孔性研磨パッドと同様に、研磨パッドコンディショニング、たとえばダイアモンドディスクコンディショニングが、除去速度を高め、ウェーハスケール不均一さを改善するように働く。コンディショニングは、周期的に、たとえば各ウェーハののち30秒間又は連続的に働くことができるが、連続的なコンディショニングが、除去速度制御の改善のための定常状態研磨条件を確立する利点を提供する。コンディショニングは一般に、研磨パッドの除去速度を高め、一般に研磨パッド表面の摩耗に伴う除去速度の低下を防ぐ。特に、砥粒コンディショニングは、研磨中にヒュームドシリカ粒子を閉じ込めることができる粗面を形成する。コンディショニングに加えて、溝及び穿孔が、スラリーの分散、研磨均一さ、研磨くず除去及び基材除去速度にさらなる恩恵を提供することができる。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例として、ウレタンプレポリマーとしての様々な量のイソシアネートを、4,4′−メチレン−ビス−o−クロロアニリン[MBCA]と、プレポリマーの場合には49℃で、MBCAの場合には115℃で混合することにより、ポリマーパッド材料を調製した(比較例は、プレポリマーの場合には43〜63℃を含むものであった)。特に、PTMEG及びPPGに基づくトルエンジイソシアネートプレポリマーの混合物が、改善された研磨性を研磨パッドに提供した。このウレタン/多官能アミン混合物を、プレポリマーを連鎖延長剤と混合する前又は後で、中空のポリマー微小球(Akzo Nobel製のEXPANCEL(登録商標)551DE20d60又は551DE40d42)と混合した。多官能アミンを加える前に中空のポリマー微小球を60rpmでプレポリマーと混合したのち、混合物を4500rpmで混合したか、中空のポリマー微小球を混合ヘッド中3600rpmでウレタン/多官能アミン混合物に添加した。微小球は、15〜50μmの重量平均直径を5〜200μmの範囲で有するものであった。最終混合物を型に移し、約15分間ゲル化させた。
【0026】
次いで、型を硬化オーブンに入れ、以下のサイクルで硬化させた。30分かけて周囲温度から104℃の設定温度まで勾配させ、104℃で15時間30分間保持し、設定温度を21℃に下げた状態で2時間。次いで、室温で成形品を薄いシートに「スカイビング」し、マクロチャネル又は溝を表面に機械加工した。より高温でのスカイビングが表面粗さ及びシート厚さ均一さを改善することができる。表に示すように、試料1〜42が本発明の研磨パッドを表し、試料A〜Mが比較例を表す。
【0027】
【表1】



【0028】
【表2】



【0029】
異なる中空微小球タイプ及びサイズが同じ気孔容積に関して異なる密度を有するため、気孔容積のより一貫した理解を提供するために、表2では、気孔レベルを公称重量%として示している。すべての気孔レベルはExpancel 551 DE40d42重量%に換算して表されている。
【0030】
銅研磨試験の場合、実施例研磨パッドは、厚さ80ミル(2.0mm)であり、ピッチ120ミル(3.0mm)、幅20ミル(0.51mm)、深さ30ミル(0.76mm)の円形の溝を、580ミル(14.7mm)のピッチを有する上にかぶせたx−y軸溝パターンとともに有し、SP2310サブパッドに積み重ねたものであった。これらのパッドを、Applied Materials社のMirra(登録商標)研磨機で試験した。Diagrid(登録商標)AD3BG150830コンディショニングディスクを9ポンドのダウンフォースで60分間使用して初期パッドならしを実施したのち、93rpmのプラテン回転速度、87rpmのウェーハキャリヤヘッド回転速度及び3psi(20.7kPa)のダウンフォースを使用して20個の銅ダミーウェーハをそれぞれ60秒間研磨した。研磨スラリーはEPL2361であり、200ml/minの速度で研磨パッド表面に供給し、初期パッドならし及びすべてのウェーハ研磨の両方に使用した。ウェーハとウェーハとの合間にパッドクリーナEPL8105を使用して、銅残渣をパッド表面から除去した。
【0031】
速度及び欠陥率に関して銅シートウェーハを研磨する研磨工程は、上記のダミーウェーハに関して記載したものと同じ方法で実施した。実施例パッドを用いた各試験はまた、CUP4410パッド、実施例パッドに使用した同じ溝及びサブパッドを有するIC1000ベースのパッドで研磨したウェーハをベースラインとして含むものであった。すべての表で実施された正規化は、共通原因による変異を考慮するため、その試験においてIC1000タイプパッドによって研磨されたウェーハの研磨データを正規化のための基礎として使用した。上記に指定したDiagridコンディショナを使用して、研磨試験中、7ポンド(48.3kPa)のダウンフォースを用いる全インサイチューコンディショニング工程を使用して研磨パッドをダイアモンドコンディショニングした。
【0032】
除去速度は、CDE社のResMap RS200ツールを使用して研磨前ウェーハ計測値を研磨後ウェーハ膜厚さ計測値と比較することによって計測した。表3に示すパッドの場合、欠陥率は、Applied Materials Orbot(商標)WF-720ツールをスクラッチレシピとともに使用して計測した。そして、Leica顕微鏡を使用して、識別された欠陥を観測し、スクラッチ、穴及びチャターマークを数えた。マイクロスクラッチ及びチャターマークは<10μmのものと定義し、スクラッチ及びチャターマークは≧10μmのものと定義する。
【0033】
【表3】

【0034】
実施例パッド2〜4は、CUP4410パッドに類似した速度を示したが、スクラッチ及びチャターマークの数が1/3未満であった。実施例22〜28は、CUP4410よりも増大した除去速度を示し、実施例22〜27はさらに欠陥率を有意に低下させた。
【0035】
表4に示すパッドの場合、研磨は、表3に示すパッドの場合と同様に実施したが、欠陥率は、KLA-Tencor SP1TBIツールを使用して計測し、欠陥の観測は、先と同じくLeica顕微鏡を使用して実施した。また、パターン付けされたウェーハを試験し、本発明の研磨パッドは、CUP4410パッドに比較して同等又は改善された平坦化、ディッシング及びエロージョンを提供することができる。
【0036】
【表4】

【0037】
実施例パッド10〜15、23、24、27、40及び41は、除去速度を増大させるとともに欠陥率を有意に低下させた。実施例パッド16〜21は、CUP4410に類似した除去速度を提供したが、欠陥が80〜95%少なかった。実施例29は、増大した除去速度を、CUP4410よりも80%少ない欠陥とともに提供した。
【0038】
表5の実施例研磨パッドを、Applied Materials社のMirra(登録商標)研磨機上、93rpmのプラテン回転速度、87rpmのウェーハキャリヤヘッド回転速度及び5psi(34.5kPa)のダウンフォースを使用して試験して、TEOSシートウェーハを研磨した。研磨スラリーは、脱イオン水との1:1混合物として使用されるILD3225であり、150ml/minの速度で研磨パッド表面に供給した。Diagrid(登録商標)AD3BG150855コンディショニングディスクを使用して、インサイチューコンディショニング工程によって研磨パッドをダイアモンドコンディショニングした。TEOSシートウェーハを30秒間又は60秒間研磨し、実施例パッドを用いた各試験はまた、IC1010パッドで研磨されたウェーハをベースラインとして含むものであった。研磨時間を減らすことに対しては30秒研磨速度が標準的研磨パッドを上回る最大の効果を及ぼすため、IC1010に関しては、30秒研磨速度を最大に重視した。以下、研磨結果を表5に示す。
【0039】
【表5】

【0040】
実施例パッド22及び23は、IC1010パッドに対し、30秒での除去速度における15%の増大を提供し、60秒での除去速度における10%の増大を提供しながらも、約50%少ない欠陥を提供した。実施例パッド27及び30〜33は、IC1010に類似した速度を提供したが、欠陥はより少なかった。
【0041】
本発明の多官能ポリウレタン研磨パッドは、有り余るほどの研磨用途における研磨を促進する。たとえば、特定のPPG/PTMEG−ポリアミン−TDI研磨パッドは、高速銅、低欠陥率銅、パターン付けウェーハ、TEOS、高速TEOS、低欠陥率TEOS及びSTI研磨用途に有効である。特に、研磨パッドは、銅及びTEOS用途の場合に、単一ポリオールIC1000研磨パッドに対して同等又は改善された欠陥率で除去速度を増大させることができる。同様に、研磨パッドは、銅及びTEOS用途の場合に、単一ポリオールIC1000研磨パッドに対して同等又は改善された除去速度で欠陥率を低下させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、絶縁体、バリヤ及びタングステンの少なくとも一つを含むパターン付けされた半導体基材を研磨するのに適した研磨パッドであって、ポリマーマトリックスを含み、前記ポリマーマトリックスが、ポリオールブレンド、ポリアミン又はポリアミン混合物及びトルエンジイソシアネートのポリウレタン反応生成物であり、前記ポリオールブレンドが、合計で15〜77重量%のポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールの混合物であり、前記ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールの混合物が、20/1〜1/20のポリプロピレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比を有し、前記ポリアミン又はポリアミン混合物が8〜50重量%であり、前記トルエンジイソシアネートが合計で15〜35重量%のモノマー又は部分的に反応したトルエンジイソシアネートモノマーである研磨パッド。
【請求項2】
ポリプロピレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比が2/1〜1/2である、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
ポリプロピレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比が20/1〜2/1である、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項4】
ポリプロピレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比が1/20〜1/2である、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項5】
20〜70のショアD硬さを有する、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項6】
銅、絶縁体、バリヤ及びタングステンの少なくとも一つを含むパターン付けされた半導体基材を研磨するのに適した研磨パッドであって、ポリマーマトリックスを含み、前記ポリマーマトリックスが、ポリオールブレンド、ポリアミン又はポリアミン混合物及びトルエンジイソシアネートのポリウレタン反応生成物であり、前記ポリオールブレンドが、合計で20〜75重量%のポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールの混合物であり、前記ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールの混合物が、15/1〜1/15のポリプロピレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比を有し、前記ポリアミン又はポリアミン混合物が10〜45重量%であり、前記トルエンジイソシアネートが20〜30重量%のモノマー又は全モノマー又は部分的に反応したトルエンジイソシアネートモノマーである研磨パッド。
【請求項7】
ポリプロピレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比が15/1〜2/1である、請求項6記載の研磨パッド。
【請求項8】
ポリプロピレングリコール/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比が1/15〜1/2である、請求項6記載の研磨パッド。
【請求項9】
20〜70のショアD硬さを有する、請求項6記載の研磨パッド。
【請求項10】
前記ポリマーブレンドがプレポリマーブレンドからのポリマーブレンドであり、前記プレポリマーブレンドが前記トルエンジイソシアネートを含む、請求項6記載の研磨パッド。

【公開番号】特開2011−40737(P2011−40737A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−165580(P2010−165580)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(504089426)ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】