説明

多層セラミックス基板の分割方法

【課題】複数のモジュール回路チップが分割予定ラインによって区画され焼結された多層セラミックス基板を、分割予定ラインに沿って正確に分割することができる多層セラミックス基板の分割方法を提供する。
【解決手段】マークを検出して多層セラミックス基板10の表面に分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射し、多層セラミックス基板10の表面に分割起点となる第1のレーザー加工溝110を形成し、多層セラミックス基板10の表裏を反転して表面に形成された第1のレーザー加工溝110を撮像手段によって検出し、第1のレーザー加工溝110と対応する裏面にレーザー光線を照射し、多層セラミックス基板10の裏面に分割起点となる第2のレーザー加工溝120を形成し、多層セラミックス基板10に外力を付与し、第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120に沿って破断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のモジュール回路チップが分割予定ラインによって区画され焼結された多層セラミックス基板を、分割予定ラインに沿って分割する多層セラミックス基板の分割方法に関する。
【0002】
圧電素子やコンデンサー等の多層セラミックス基板は、焼結した後に予め設定された分割予定ラインに沿って分割することにより、個々のデバイスに分割される。しかるに、多層セラミックス基板は焼結によって収縮して歪が生ずるため、焼結前に予め付けておいた分割予定ラインの基準となるマーク(目印)の位置がずれてしまうため、シリコン基板のように1本の分割予定ラインをアライメントしてインデックス送りで切断することが困難である。
【0003】
上記問題を解消するために、多層セラミックス基板に設けられた分割予定ラインの基準となるマーク(目印)をアライメントしてそのアライメント情報を制御手段のメモリに格納し、このアライメント情報に基づいて分割予定ラインに沿って切削する切削方法が下記特許文献1に開示されている。
【0004】
また、近年においては、水晶発信器やICチップ等の素子をビルトアップするビルトアップ基板として多層に配線されたバンドパスフィルタ等を内蔵した多層セラミックス基板がLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)、HTCC(High Temperature Co-fired Ceramics)等のモジュール回路チップとして実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−52227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したLTCCやHTCCは、アルミナ等のセラミックスを積層して0.3〜0.8mmの厚みに形成し、その後に焼結してから分割予定ラインに沿ってモジュール回路チップに分割される。このような多層セラミックス基板も焼結するため、歪が生じ焼結前に予め付けておいた分割予定ラインの基準となるパターン(目印)の位置がずれてしまう。また、アルミナ等のセラミックスを積層した多層セラミックス基板は非常に硬く、切削ブレードによる分割が困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、複数のモジュール回路チップが分割予定ラインによって区画され焼結された多層セラミックス基板を、分割予定ラインに沿って正確に分割することができる多層セラミックス基板の分割方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のモジュール回路チップが分割予定ラインによって区画されるとともに表面に分割予定ラインの位置を示すマークが形成され焼結された多層セラミックス基板を、個々のモジュール回路チップに分割する多層セラミックス基板の分割方法であって、
該マークを検出して多層セラミックス基板の表面に分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射し、多層セラミックス基板の表面に分割起点となる第1のレーザー加工溝を形成する第1のレーザー加工溝形成工程と、
第1のレーザー加工溝形成工程が実施された多層セラミックス基板の表裏を反転して表面に形成された第1のレーザー加工溝を撮像手段によって検出し、第1のレーザー加工溝と対応する裏面にレーザー光線を照射し、多層セラミックス基板の裏面に分割起点となる第2のレーザー加工溝を形成する第2のレーザー加工溝形成工程と、
多層セラミックス基板に外力を付与し、第1のレーザー加工溝および第2のレーザー加工溝に沿って破断する破断工程と、を含む、
ことを特徴とする多層セラミックス基板の分割方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明による多層セラミックス基板の分割方法においては、分割予定ラインの位置を示すマークを検出して多層セラミックス基板の表面に分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射し、多層セラミックス基板の表面に分割起点となる第1のレーザー加工溝を形成する第1のレーザー加工溝形成工程を実施した後に、多層セラミックス基板の表裏を反転して表面に形成された第1のレーザー加工溝を撮像手段によって検出し、第1のレーザー加工溝と対応する裏面にレーザー光線を照射し、多層セラミックス基板の裏面に分割起点となる第2のレーザー加工溝を形成する第2のレーザー加工溝形成工程を実施するので、第2のレーザー加工溝を第1のレーザー加工溝と対応した位置に正確に形成することができる。従って、多層セラミックス基板に外力を付与し、第1のレーザー加工溝および第2のレーザー加工溝に沿って破断する破断工程においては、第1のレーザー加工溝および第2のレーザー加工溝が破断起点となって第1のレーザー加工溝と第2のレーザー加工溝とを結ぶ直線領域に亀裂が生成され、多層セラミックス基板は第1のレーザー加工溝および第2のレーザー加工溝から逸れることなく正確に破断される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による多層セラミックス基板の分割方法によって分割される多層セラミックス基板の斜視図。
【図2】図1に示す多層セラミックス基板に本発明による多層セラミックス基板の分割方法における第1のレーザー加工溝形成工程および第2のレーザー加工溝形成工程を実施するためのレーザー加工装置の斜視図。
【図3】図2に示すレーザー加工装置に装備される被加工物保持機構の構成部材を分解して示す斜視図。
【図4】図3に示す被加工物保持機構の要部断面図。
【図5】図2に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
【図6】図1に示す多層セラミックス基板の裏面を環状のフレームに装着されたダイシングテープの上面に貼着した状態を示す斜視図。
【図7】図2に示すレーザー加工装置によって実施する本発明による多層セラミックス基板の分割方法における第1のレーザー加工溝形成工程の説明図。
【図8】本発明による多層セラミックス基板の分割方法における第1のレーザー加工溝形成工程が実施された多層セラミックス基板の斜視図。
【図9】本発明による多層セラミックス基板の分割方法における第1のレーザー加工溝形成工程が実施された多層セラミックス基板の表面を環状のフレームに装着されたダイシングテープの上面に貼着した状態を示す斜視図。
【図10】本発明による多層セラミックス基板の分割方法における第2のアライメント工程の説明図。
【図11】本発明による多層セラミックス基板の分割方法における第2のレーザー加工溝形成工程の説明図。
【図12】本発明による多層セラミックス基板の分割方法における第2のレーザー加工溝形成工程が実施された多層セラミックス基板の斜視図。
【図13】本発明による多層セラミックス基板の分割方法における破断工程の説明図。
【図14】本発明による多層セラミックス基板の分割方法によって分割された多層セラミックス基板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による多層セラミックス基板の分割方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1には本発明による多層セラミックス基板の分割方法によって分割される多層セラミックス基板の斜視図が示されている。
図1に示す多層セラミックス基板10は、複数のモジュール回路チップ101が分割予定ライン102によって区画されるとともに表面10aに分割予定ライン102の位置を示すマーク103a1,103a2,103a3・・・103an、103b1,103b2,103b3・・・103bn、103c1,103c2,103c3・・・103cn、103d1,103d2,103d3・・・103dnが形成されている。このように構成された多層セラミックス基板10は、焼結され厚みが0.3〜0.8mm形成されている。このように焼結された多層セラミックス基板10は、焼結によって歪が生ずるため、上記103a1,103a2,103a3・・・103an、103b1,103b2,103b3・・・103bn、103c1,103c2,103c3・・・103cn、103d1,103d2,103d3・・・103dnの位置が僅かに変化している。
【0013】
以下、上記多層セラミックス基板10を個々のモジュール回路チップ101に分割する方法について説明する。
【0014】
図2には、上記多層セラミックス基板10にストリート102に沿ってレーザー加工溝を形成するためのレーザー加工装置の斜視図が示されている。
図2に示すレーザー加工装置2は、静止基台20と、該静止基台20に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持する被加工物保持機構3と、静止基台20に加工送り方向(X軸方向)と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構5と、該レーザー光線照射ユニット支持機構5に矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット6とを具備している。
【0015】
上記被加工物保持機構3は、静止基台20上に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール21、21と、該一対の案内レール21、21上にX軸方向に移動可能に配設された移動基台31と、該移動基台31上に配設された支持基台32と、該支持基台32上に配設された被加工物保持手段4とを含んでいる。移動基台31は矩形状に形成され、下面には一対の案内レール21、21に嵌合する一対の被案内溝311、311が設けられており、この被案内溝311、311を案内レール21、21に嵌合することにより、移動基台31は案内レール21、21に沿って移動可能に構成される。このようにして案内レール21、21上に移動可能に配設された移動基台31は、加工送り手段33によって一対の案内レール21に沿って移動せしめられる。加工送り手段33は、一対の案内レール21、21間に配設され案内レール21、21と平行に延びる雄ネジロッド331と、該雄ネジロッド331を回転駆動するサーボモータ332を具備している。雄ネジロッド331は、上記移動基台31に設けられたネジ穴312と螺合して、その先端部が軸受部材333によって回転自在に支持されている。従って、サーボモータ332によって雄ネジロッド331を正転および逆転駆動することにより、移動基台31は案内レール21、21に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0016】
上記移動基台31上に配設された支持基台32は、図3および図4に示すように下板321と上板322および下板321と上板322の一端を連結する連結板323とからなり、他方が開放されている。支持基台32を構成する上板322には、図4に示すように円形の穴322aが設けられている。このように構成された支持基台32は、図2に示すように開放部がレーザー光線照射ユニット6側に向けて下板321が上記移動基台31上に配設される。
【0017】
上述した支持基台32を構成する上板322上に被加工物保持手段4が配設される。被加工物保持手段4は、図3に示すように支持部材41と、該支持部材41に回転可能に支持される回転筒42と、該回転筒42の上端に装着される被加工物保持部材43とを具備している。支持部材41は、図4に示すようにベース部411と、該ベース部411の中心部に上方に突出して形成された円筒状の支持部412とからなっている。ベース部411は、上記支持基台32を構成する上板322に設けられた円形の穴322aと同径の穴を備えた環状に形成されている。このベース部411の上面には環状の嵌合凸部411bが設けられている。この環状の嵌合凸部411bが形成されたベース部411には嵌合凸部411bの上面に開口する通路411cが設けられており、この通路411cが支持基台32を構成する上板322に形成された通路322bを介して図示しない吸引手段に連通されている。
【0018】
上記支持部材41に回転可能に支持される回転筒42は、下面に支持部材41を構成するベース部411に設けられた環状の嵌合凸部411bに嵌合する環状溝421が設けられている。また、回転筒42には、環状溝421に開口するとともに上面に開口する吸引通路422が形成されている。なお、回転筒42の下部外周には、環状の歯車423が設けられている。このように構成された回転筒42は円筒状の支持部412を囲繞して配設され、環状溝421を支持部材41を構成するベース部411に設けられた環状の嵌合凸部411bに嵌合するとともに、支持部材41を構成する支持部412に軸受け44によって回転可能に支持される。このように回転筒42が支持部材41を構成する支持部412に回転可能に支持された状態で、環状の歯車423が支持基台32を構成する上板322に配設されたサーボモータ45の駆動軸に装着された駆動歯車46に噛み合うようになっている。以上のように構成された回転筒42の上端部には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ47が配設されている。
【0019】
上記回転筒42の上端に装着される被加工物保持部材43は、ガラス板等の透明部材によって円板状に形成されており、回転筒42の上面に適宜の接着剤によって装着されている。この被加工物保持部材43の上面には、外周部に環状の吸引溝431が形成されている。また、被加工物保持部材43には、環状の吸引溝431と上記回転筒42に設けられた吸引通路422と連通する通路432が設けられている。従って、図示しない吸引手段を作動すると、上記支持基台32を構成する上板322に設けられた通路322b、支持部材41を構成するベース部411に設けられた通路411c、回転筒42に設けられた環状溝421および吸引通路422、通路432を介して環状の吸引溝431に負圧が作用せしめられる。
【0020】
図2に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射ユニット支持機構5は、静止基台20上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール51、51と、該一対の案内レール51、51上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台52を具備している。この可動支持基台52は、一対の案内レール51、51上に移動可能に配設された移動支持部521と、該移動支持部521に取り付けられた装着部522とからなっている。移動支持部521の下面には上記一対の案内レール51、51と嵌合する一対の被案内溝521a、521aが形成されており、この一対の被案内溝521a、521aを一対の案内レール51、51に嵌合することにより、可動支持基台52は一対の案内レール51、51に沿って移動可能に構成される。また、装着部522は、一側面に被加工物保持手段4を構成する被加工物保持部材43の上面(保持面)に対して垂直な矢印Zで示す集光点調整方向(Z軸方向)に延びる一対の案内レール522a、522aが平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構5は、可動支持基台52を一対の案内レール51、51に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための割り出し送り手段53を具備している。割り出し送り手段53は、上記一対の案内レール51、51の間に平行に配設された雄ネジロッド531と、該雄ネジロッド531を回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド531は、その一端が上記静止基台20に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ532の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド531は、可動支持基台52を構成する移動支持部521の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ532によって雄ネジロッド531を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台52は案内レール51、51に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0021】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット6は、ユニットホルダ61と、該ユニットホルダ61に取り付けられたレーザー光線照射手段62を具備している。ユニットホルダ61は、上記装着部522に設けられた一対の案内レール522a、522aに摺動可能に嵌合する一対の被案内溝611、611が設けられており、この被案内溝611、611を上記案内レール522a、522aに嵌合することにより、矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に支持される。
【0022】
図示のレーザー光線照射ユニット6は、上記ユニットホルダ61とレーザー光線照射手段62を含んでいる。レーザー光線照射手段62はユニットホルダ61に固定され実質上水平に延出する円筒形状のケーシング621と、該ケーシング621内に配設されたYAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器等のレーザー光線発振手段(図示せず)と、ケーシング621の先端に配設されレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光して上記被加工物保持手段4の被加工物保持部材43上に保持された被加工物に照射する集光器622を具備している。
【0023】
上記レーザー光線照射手段62を構成するケーシング621の前端部には、上記レーザー光線照射手段62によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段7が配設されている。この撮像手段7は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。なお、第1の撮像手段7は、レーザー光線照射手段62の集光器622と加工送り方向(X軸方向)に対して同一軸線上に配設されている。
【0024】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット6は、ユニットホルダ61を一対の案内レール522a、522aに沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動させるための集光点位置調整手段63を具備している。集光点位置調整手段63は、一対の案内レール522a、522aの間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ632等の駆動源を含んでおり、パルスモータ632によって図示しない雄ネジロッドを正転または逆転駆動することにより、ユニットホルダ61およびレーザー光線照射手段62を一対の522a、522aに沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動せしめる。
【0025】
図2を参照して説明を続けると、上記レーザー光線照射ユニット支持機構5の可動支持基台52を構成する移動支持部521の上面には、後述するレーザー加工溝を検出するための第2の撮像手段8が配設されている。この第2の撮像手段8は、支持手段81に支持されている。このように支持手段81によって支持された第2の撮像手段8は、レーザー光線照射手段62の集光器622の直下に位置付けられている。
【0026】
図示の実施形態におけるレーザー加工機は、図5に示す制御手段9を具備している。制御手段9はマイクロコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)91と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)92と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)93と、入力インターフェース94および出力インターフェース95とを備えている。このように構成された制御手段9の入力インターフェース94には、上記第1の撮像手段7、第2の撮像手段8等からの検出信号が入力される。また、出力インターフェース95からは、上記パルスモータ332、パルスモータ532、パルスモータ632、レーザー光線照射手段62等に制御信号を出力するとともに、表示手段96に表示信号を出力する。
【0027】
次に、上述したレーザー加工装置2を用いて上記多層セラミックス基板10に分割予定ライン102に沿ってレーザー加工溝を形成する方法について説明する。
上述した多層セラミックス基板10の分割予定ライン102に沿ってレーザー加工溝を形成するには、先ず図6に示すように環状のフレームF1に装着されたダイシングテープT1の表面に多層セラミックス基板10の裏面10bを貼着する。このようにした環状のフレームF1に装着されたダイシングテープT1の表面に貼着された多層セラミックス基板10を、図2に示すレーザー加工装置2の被加工物保持手段4を構成する被加工物保持部材43の上面(保持面)に載置する。そして、環状のフレームF1をクランプ47によって固定する。次に、図示しない吸引手段を作動することにより、上述したように被加工物保持部材43に形成された環状の吸引溝431に負圧を作用せしめ、被加工物保持部材43の保持面(上面)上に載置されダイシングテープT1を介して多層セラミックス基板10を吸引保持する(多層セラミックス基板保持工程)。
【0028】
上述したように多層セラミックス基板保持工程を実施したならば、加工送り手段33を作動して多層セラミックス基板10を吸引保持した被加工物保持手段4を第1の撮像手段7の直下に位置付ける。被加工物保持手段4が第1の撮像手段7の直下に位置付けられると、第1の撮像手段7および制御手段9によって多層セラミックス基板10の表面10aに形成されたマーク103a1と103b1を撮像し、マーク103a1と103b1を結ぶ分割予定ライン102が加工送り方向(X軸方向)と平行であるか否か確認する。もし、マーク103a1と103b1を結ぶ分割予定ライン102が加工送り方向(X軸方向)と平行でない場合には、被加工物保持部材43を回動してマーク103a1と103b1を結ぶ分割予定ライン102が加工送り方向(X軸方向)と平行となるように調整する(第1のアライメント工程)。
【0029】
上述した第1のアライメント工程を実施したならば、被加工物保持手段4を移動して図7の(a)で示すようにマーク103a1と103b1を結ぶ分割予定ライン102の一端(図において左端)を集光器622の直下に位置付ける。そして、制御手段9はレーザー光線照射手段62に制御信号を出力し、集光器622から多層セラミックス基板10に対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつ被加工物保持手段4を矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図7の(b)で示すように集光器622の照射位置がマーク103a1と103b1を結ぶ分割予定ライン102の他端(図7の(b)において右端)に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止する(第1のレーザー加工溝形成工程)。この第1のレーザー加工溝形成工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pを図7の(a)に示すように多層セラミックス基板10の表面10a(上面)付近に合わせる。この結果、図7の(b)および図7の(c)に示すように多層セラミックス基板10にはマーク103a1と103b1を結ぶ分割予定ライン102に沿って破断起点となる第1のレーザー加工溝110が形成される。
【0030】
上記第1のレーザー加工溝形成工程の加工条件は、次の通りに設定されている。
光源 :YAGレーザーまたはYVO4レーザー
波長 :355nm(紫外光)
出力 :5W
繰り返し周波数:30kHz
集光スポット径:φ20μm
加工送り速度 :150mm/秒
【0031】
上記加工条件によって第1のレーザー加工溝形成工程を実施することにより、多層セラミックス基板10の表面10aにはマーク103a1と103b1を結ぶ分割予定ライン102に沿って幅が20μmで深さが50μmの第1のレーザー加工溝110が形成される。
【0032】
上述したように多層セラミックス基板10の表面10aにマーク103a1と103b1を結ぶ分割予定ライン102に沿って第1のレーザー加工溝110を形成したならば、マーク103a2と103b2を結ぶ分割予定ライン102に対して上記第1のアライメント工程および第1のレーザー加工溝形成工程を実施し、多層セラミックス基板10にマーク103a2と103b2を結ぶ分割予定ライン102に沿って第1のレーザー加工溝110を形成する。以後、マーク103a3と103b3を結ぶ分割予定ライン102からマーク103anと103bnを結ぶ分割予定ライン102まで順次上記第1のアライメント工程および第1のレーザー加工溝形成工程を実施する。この結果、多層セラミックス基板10の表面10aには、所定方向に形成された全ての分割予定ライン102に沿って第1のレーザー加工溝110が形成される。
【0033】
以上のようにして多層セラミックス基板10の表面10aに所定方向に形成された全ての分割予定ライン102に沿って第1のレーザー加工溝110が形成したならば、被加工物保持手段4、を90度回動せしめる。そして、上記所定方向と直交する方向に形成されたマーク103c1と103d1を結ぶ分割予定ライン102、マーク103c2と103d2を結ぶ分割予定ライン102、マーク103c3と103d3を結ぶ分割予定ライン102、・・・103dnと・・・103dnを結ぶ分割予定ライン102に対して上記第1のアライメント工程および第1のレーザー加工溝形成工程を実施する。この結果、図8に示すように多層セラミックス基板10の表面10aには、全ての分割予定ライン102に沿って破断起点となる第1のレーザー加工溝110が形成される。
【0034】
次に、上述した第1のレーザー加工溝形成工程が実施された多層セラミックス基板10を環状のフレームF1に装着されたダイシングテープT1から剥離する。そして、図9に示すように環状のフレームF2に装着されたダイシングテープT2の表面に多層セラミックス基板10の裏面10bを貼着する。なお、ダイシングテープT2は、半透明性を有する合成樹脂シートからなっている。このようにした環状のフレームF2に装着されたダイシングテープT2の表面に貼着された多層セラミックス基板10を、図2に示すレーザー加工装置2の被加工物保持手段4を構成する被加工物保持部材43の上面(保持面)に載置する。そして、環状のフレームF2をクランプ47によって固定する。次に、図示しない吸引手段を作動することにより、上述したように被加工物保持部材43に形成された環状の吸引溝431に負圧を作用せしめ、被加工物保持部材43の保持面(上面)上に載置されダイシングテープT2を介して多層セラミックス基板10を吸引保持する。(多層セラミックス基板保持工程)。
【0035】
上述したように多層セラミックス基板保持工程を実施したならば、加工送り手段33を作動して図10に示すように多層セラミックス基板10を吸引保持した被加工物保持手段4を第2の撮像手段8の直上、即ち集光器622と第2の撮像手段8との間に移動し、多層セラミックス基板10の表面10aに所定方向に形成された図において最左端の第1のレーザー加工溝110(例えば、上記第1のレーザー加工溝形成工程においてマーク103a1と103b1を結ぶ分割予定ライン102に沿って形成された第1のレーザー加工溝110)を第2の撮像手段8の直上に位置付ける。そして、第2の撮像手段8および制御手段9によって多層セラミックス基板10の表面10aに形成された第1のレーザー加工溝110を撮像し、第1のレーザー加工溝110が加工送り方向(X軸方向)と平行であるか否か確認する。このとき、多層セラミックス基板10の表面10aはダイシングテープT2に貼着されているが、ダイシングテープT2が半透明性を有する合成樹脂シートからなっているので、第2の撮像手段8はダイシングテープT2を通して多層セラミックス基板10の表面10aに形成された第1のレーザー加工溝110を撮像することができる。このようにして第2の撮像手段8によって撮像された第1のレーザー加工溝110が加工送り方向(X軸方向)と平行ない場合には、被加工物保持部材43を回動して第1のレーザー加工溝110が加工送り方向(X軸方向)と平行となるように調整する(第2のアライメント工程)。
【0036】
上述した第2のアライメント工程を実施したならば、被加工物保持手段4を移動して図11の(a)で示すように第2のアライメント工程を実施した第1のレーザー加工溝110の一端(図において左端)を第2の撮像手段8の直上、即ち集光器622の直下に位置付ける。そして、制御手段9はレーザー光線照射手段62に制御信号を出力し、集光器622から多層セラミックス基板10に対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつ被加工物保持手段4を矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図11の(b)で示すように集光器622の照射位置が分割予定ライン102の他端(図11の(b)において右端)に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止する(第1のレーザー加工溝形成工程)。この第1のレーザー加工溝形成工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pを図11の(a)に示すように多層セラミックス基板10の裏面10b(上面)付近に合わせる。この結果、図11の(b)および図11の(c)に示すように多層セラミックス基板10の裏面10bには、表面10aに形成された第1のレーザー加工溝110に沿って破断起点となる第2のレーザー加工溝120が形成される。
【0037】
上述した第2のレーザー加工溝形成工程の加工条件は、上記第1のレーザー加工溝形成工程の加工条件と同一でよい。従って、多層セラミックス基板10の裏面10bには、表面10aに形成された第1のレーザー加工溝110に沿って幅が20μmで深さが50μmの第2のレーザー加工溝120が形成される。
【0038】
上述したように多層セラミックス基板10の裏面10bに第1のレーザー加工溝110に沿って第2のレーザー加工溝120を形成したならば、割り出し送り手段53を作動して隣接する第1のレーザー加工溝110を第2の撮像手段8の直上に位置付け、上記第2のアライメント工程を実施する。そして、第2のアライメント工程が実施された第1のレーザー加工溝110に沿って上記第2のレーザー加工溝形成工程を実施することにより、多層セラミックス基板10の裏面10bに第1のレーザー加工溝110に沿って第2のレーザー加工溝120を形成する。以後、順次隣接する第1のレーザー加工溝110に沿って上記第2のアライメント工程および第2のレーザー加工溝形成工程を実施する。この結果、多層セラミックス基板10の裏面10bには、表面10aに所定方向に形成された全ての第1のレーザー加工溝110に沿って第2のレーザー加工溝120が形成される。
【0039】
以上のように、第2のレーザー加工溝形成工程は、第1のレーザー加工溝形成工程において多層セラミックス基板10の表面10aに形成された第1のレーザー加工溝110を第2の撮像手段8によって検出し、検出された第1のレーザー加工溝110に沿って多層セラミックス基板10の裏面10bに第2のレーザー加工溝120を形成するので、第2のレーザー加工溝120を第1のレーザー加工溝110と対応した位置に正確に形成することができる。
【0040】
以上のようにして多層セラミックス基板10の裏面10bに所定方向に形成された第1のレーザー加工溝110に沿って第2のレーザー加工溝120が形成したならば、被加工物保持手段4を90度回動せしめる。そして、上記所定方向と直交する方向に形成された第1のレーザー加工溝110に沿って上記第2のアライメント工程および第2のレーザー加工溝形成工程を実施する。この結果、図12に示すように多層セラミックス基板10の裏面10bには、表面10aに形成された全ての第1のレーザー加工溝110に沿って破断起点となる第2のレーザー加工溝120が形成される。
【0041】
上述した第1のレーザー加工溝形成工程および第2のレーザー加工溝形成工程を実施したならば、多層セラミックス基板10に外力を付与し、第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120に沿って破断する破断工程を実施する。この破断工程は図13に示す破断装置を用いて実施する。図13に示す破断装置15は、上記環状のフレームF2を保持するフレーム保持手段150と、該フレーム保持手段150に保持された環状のフレームF2に装着されたダイシングテープT2に貼着されている多層セラミックス基板10(第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120が形成されている)をダイシングテープT2を介して支持する支持台160と、ダイシングテープT2に貼着されている第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120に沿って押圧する押圧部材170を具備している。
【0042】
上記フレーム保持手段150は、環状のフレーム保持部材151と、該フレーム保持部材151の外周に配設された固定手段としての複数のクランプ152とからなっている。フレーム保持部材151の上面は環状のフレームF2を載置する載置面151aを形成しており、この載置面151a上に環状のフレームF2が載置される。そして、載置面151a上に載置された環状のフレームF2は、クランプ152によってフレーム保持部材151に固定される。上記支持台160は、図13において紙面に垂直な方向に多層セラミックス基板10の幅より長い長方形状の板状物からなり、上面に長手方向(紙面に垂直な方向)に沿って形成された溝161を備えている。上記押圧部材170は、図13において紙面に垂直な方向に多層セラミックス基板10の幅より長い長方形状の板状物からなり、下端部が鋭角に先細りした押圧部171に形成されている。このように構成された押圧部材170は、支持台160の上方に対向して配設され、図13において上下方向に移動可能に構成されている。以上のように構成された破断装置15は、フレーム保持手段150が回動可能で且つ支持台160および押圧部材170に対して図13において左右方向に移動可能に構成されている。
【0043】
図示の実施形態における破断装置15は以上のように構成されており、上述した第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120が形成された多層セラミックス基板10を第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120に沿って破断するには、多層セラミックス基板10をダイシングテープT2を介して支持した環状のフレームF2を、図13に示すようにフレーム保持手段150を構成するフレーム保持部材151の載置面151a上に載置し、クランプ152によってフレーム保持部材151に固定する。
【0044】
上述したように、多層セラミックス基板10をダイシングテープT2を介して支持した環状のフレームF2を、フレーム保持手段150を構成するフレーム保持部材151に固定したならば、フレーム保持手段150を作動して、多層セラミックス基板10に形成された最左端の第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120を支持台160の上面に形成された溝161の直上に位置付ける。次に、押圧部材170を図13において実線で示す待機位置から破線で示す位置まで下方に移動して、押圧部171の先端を第2のレーザー加工溝120に沿って押圧する。この結果、多層セラミックス基板10は、押圧部材170の押圧部171によって押圧された第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120が破断起点となって第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120に沿って破断される(破断工程)。この破断工程においては第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120が破断起点となって第1のレーザー加工溝110と第2のレーザー加工溝120とを結ぶ直線領域に亀裂が生成され、多層セラミックス基板10は第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120から逸れることなく破断される。
【0045】
上述したように多層セラミックス基板10に形成された図13において最左端の第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120に沿って破断工程を実施したならば、フレーム保持手段150を作動して隣接する第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120を支持台160の上面に形成された溝161の直上に位置付け、押圧部材170を作動して上記破断工程を実施する。以後、順次隣接する第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120に沿って上記破断工程を実施する。この結果、多層セラミックス基板10は、所定方向に形成された全ての第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120に沿って破断される。
【0046】
以上のようにして多層セラミックス基板10を所定方向に形成された全ての第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120に沿って破断したならば、フレーム保持手段150を90度回動せしめる。そして、上記所定方向と直交する方向に形成された第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120に沿って破断工程を実施する。この結果、多層セラミックス基板10は、図14に示すように第1のレーザー加工溝110および第2のレーザー加工溝120に沿って破断され、個々のモジュール回路チップ101に分割される。
【符号の説明】
【0047】
2:レーザー加工装置
20:静止基台
3:被加工物保持機構
31:移動基台
32:支持基台
33:加工送り手段
4:被加工物保持手段
41:支持部材
42:回転筒
43:被加工物保持部材
5:レーザー光線照射ユニット支持機構
52:可動支持基台
53:割り出し送り手段
6:レーザー光線照射ユニット
62:レーザー光線照射手段
622:集光器
7:第1の撮像手段
8:第2の撮像手段
10:多層セラミックス基板
15:破断装置
150:フレーム保持手段
160:支持台
170:押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモジュール回路チップが分割予定ラインによって区画されるとともに表面に分割予定ラインの位置を示すマークが形成され焼結された多層セラミックス基板を、個々のモジュール回路チップに分割する多層セラミックス基板の分割方法であって、
該マークを検出して多層セラミックス基板の表面に分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射し、多層セラミックス基板の表面に分割起点となる第1のレーザー加工溝を形成する第1のレーザー加工溝形成工程と、
第1のレーザー加工溝形成工程が実施された多層セラミックス基板の表裏を反転して表面に形成された第1のレーザー加工溝を撮像手段によって検出し、第1のレーザー加工溝と対応する裏面にレーザー光線を照射し、多層セラミックス基板の裏面に分割起点となる第2のレーザー加工溝を形成する第2のレーザー加工溝形成工程と、
多層セラミックス基板に外力を付与し、第1のレーザー加工溝および第2のレーザー加工溝に沿って破断する破断工程と、を含む、
ことを特徴とする多層セラミックス基板の分割方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−84746(P2012−84746A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230878(P2010−230878)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】