説明

多層プラスチック基板及びその製造方法

本発明は多層構造プラスチック基板及びその製造方法に係る。本発明のプラスチック基板が含むものは、互いに接合された複数のプラスチックフィルム、そして有機-無機ハイブリッドの第1バッファー層、ガスバリアー層、有機-無機ハイブリッドの第2バッファー層が前記複数のプラスチックフィルムの両面に順次積層され、各層は 前記複数のプラスチックフィルムを中心として対称配置を形成している。
本発明の前記プラスチック基板は小さい熱膨張係数、そして優れたガスバリアー特性を有しているので、表示装置に含まれる壊れ易く重いガラス基板の代替品になり得るためである。また、各種包装や容器材料として優れたガスバリアー特性を要求する用途に使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層構造を有するプラスチック基板及びその製造方法に関し、より詳しくは、小さい熱膨張係数、優れた寸法安定性及び優れたガスバリアー性を同時に満足する多層構造プラスチック基板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置、額縁、工芸、容器などに使用されるガラス基板は、小さい熱膨張係数、優れたガスバリアー性、高い光透過度、表面平坦度、優れた耐熱性と耐薬品性などの複数の長所を持っているが、衝撃に弱くいためよく壊れて、密度が高くて重い短所がある。
【0003】
最近、液晶や有機発光表示装置、電子紙に対する関心が急増しながら、これら表示装置の基板をガラスからプラスチックに代替する研究が活発に進められている。つまり、プラスチック基板でガラス基板を代替すれば、表示装置の全体重量が軽くなり、デザインの柔軟性を付与することができ、衝撃に強くて連続工程で製造する場合にはガラス基板に比べて経済性がある。
【0004】
一方、表示装置のプラスチック基板として使用するためには、トランジスター素子の工程温度、透明電極の蒸着温度に耐えられる高いガラス転移温度、液晶と有機発光材料の老化を防止するための酸素と水蒸気遮断特性、工程温度変化による基板の歪み防止のための小さい熱膨張係数と寸法安定性、従来のガラス基板に使用される工程機器と互換性を有する高い機械的強度、エッチング工程に耐えられる耐薬品性、高い光透過度及び低い複屈折率、表面の耐スクラッチ性などの特性が要求される。
【0005】
しかし、このような条件を全て満足する単一高分子複合フィルム(高分子フィルムまたは高分子-無機物質複合フィルム)は存在しないので、このような条件を満足させようと高分子フィルムに数層の機能性コーティングを行っている。代表的なコーティング層の例としては、高分子表面の欠陥を減らして平坦性を与えた有機平坦化層、酸素と水蒸気などのガス遮断のための無機物からなるガスバリアー層、表面の耐スクラッチ性付与のための有機または有機-無機ハードコーティング層などがある。従来の多くの多層プラスチック基板の場合、高分子基材に無機物ガスバリアー層をコーティングして、ガスバリアー層上にハードコーティング層をコーティングする過程を経るが、このような多層構造に製造する時の問題点は、高分子基材とガスバリアー層の間の大きい熱膨張係数の差による高分子基材の変形と無機薄膜のクラック及び剥離が発生である。したがって、各層の界面における応力を最少化する適切な多層構造の設計とコーティング層間の接着性が非常に重要であると言える。
【0006】
米国のバイテックス(Vitex Systems)社は高分子基材フィルムに単量体薄膜を形成し、ここに紫外線(UV)を照射して重合反応させて高分子化(固体化した有機層)し、その上にスパッタリング法で無機薄膜を成膜する過程を繰り返して複数層の有機-無機層を製造して、優れたガス遮断性を有する柔軟な基板を製造した。しかし、前記方法で優れたガス遮断性を有する製品を得ることはできたが、小さい熱膨張係数が要求されるディスプレイの用途には適さず、これに関する解決策を提示していない。
【0007】
また、特許文献1では酸素と水蒸気に敏感な有機発光機器にプラスチック基板を使用するために、流入される酸素及び水蒸気と反応できるゲッター粒子をプラスチック基板に分散させる方法を提示した。前記ゲッター粒子の大きさは発光する特性波長の大きさより十分に小さくて分散が均等に行われて発光する光が散乱されずに基板を透過すべきである。また、前記方法はプラスチック基板に無機物からなるガスバリアー膜をコーティングすることによって流入される酸素と水蒸気の量を最少化しようとした。しかし、前記方法は100乃至200nm範囲の粒子寸法を有するナノ級粒子を均等に分散させて基板を製造することが難しく、酸素と水蒸気と反応できるゲッター粒子を多量含有させるためにプラスチック基板の厚さが厚くなければならず、プラスチック基板上に無機物ガスバリアー膜が直接コーティングされるため温度変化によってガスバリアー膜にクラックや剥離が起こる可能性が高い。
【0008】
特許文献2では反応圧出して製造した1mm厚さ以内のポリグルタルイミドシートの一面または両面に、場合によってシリカ粒子などを含む架橋が可能な組成物(多官能基アクリレート系モノマーまたはオリゴマー、アルコキシシランなどと、これらの混合物)をコーティングした後、これを光硬化または熱硬化させ架橋コーティング膜を製造し、その上にガスバリアー膜をコーティングした後、場合によって再び架橋コーティング膜をバリアー膜にコーティングして、表示装置用プラスチック基板を製造したことがある。
【0009】
しかし、前記方法はいくつかの特殊な場合にのみ酸素透過率と水蒸気透過率が液晶表示装置に利用できるだけ小さく、ガラス代替用基板として使用するために必須的に要求される小さい熱膨張係数と優れた寸法安定性に対しては依然として改善されていなかった。
【0010】
特許文献3は有機-無機ハイブリッドであるORMOCERと酸化シリコン層を一つの高分子基材の上にまたは二つの高分子基材の中央層にコーティングして、酸素透過率がコーティングする前の高分子基材の1/30以下、水蒸気透過率がコーティングする前の高分子基材の1/40以下である多層フィルムを提示した。前記方法は酸素、水蒸気透過率がコーティングする前の高分子基材に比べて非常に減少して包装材の材料として用いることができる可能性を提示したが、熱膨張係数と寸法安定性改善に対する言及はなかった。
【特許文献1】米国特許第6、465、953号
【特許文献2】米国特許第6、322、860号
【特許文献3】米国特許第6、503、634号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、このような従来技術の問題点を解決するための本発明の目的は、小さい熱膨張係数、優れた寸法安定性及び優れたガスバリアー性を同時に満足して、壊れやすくて重い短所を有するガラス基板に代替することができる多層構造を有するプラスチック基板を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、表示装置の基板の他にもガスバリアー性が要求される包装材及び多様な用途の容器材料として用いることができる多層構造のプラスチック基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明が提供する多層構造プラスチック基板は、互いに接合された複数のプラスチックフィルム、そして有機-無機ハイブリッドの第1バッファー層、ガスバリアー層、及び有機-無機ハイブリッドの第2バッファー層を前記プラスチックフィルムの両面に順次に積層して含み、各層は前記プラスチックフィルムを中心に対称構造をなす。
【0014】
また、本発明は、a)プラスチックフィルムの一面にゾル状態のバッファー組成物をコーティング及び硬化して第1有機-無機ハイブリッドバッファー層を形成し、b)前記第1有機-無機ハイブリッド層上に無機物をコーティングして、ガスバリアー層を形成し、c)前記ガスバリアー層上にa)のバッファー組成物をコーティング及び硬化して第2有機-無機ハイブリッドバッファー層を形成して、多層フィルムを製造し、d)前記a)乃至c)段階の過程を繰り返してc)と同一な構造の多層フィルムをさらに1種製造し、e)前記c)とd)の各多層フィルムの層が形成されていないプラスチックフィルムの面どうしに接合して対称構造をなすようにする段階を含む多層構造のプラスチック基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の多層プラスチック基板構造は小さい熱膨張係数、優れたガスバリアー性、寸法安定性の諸特性を同時に満足させるので、表示装置用プラスチック基板としてガラス基板の代わりに使用でき、また、ガスバリアー性が要求される包装材や容器の材質としても非常に有用に活用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は小さい熱膨張係数、優れた寸法安定性とガスバリアー性を同時に確保して、表示装置などで主に使用される壊れやすくて重い短所を有するガラス基板に代替できるプラスチック基板及び、その製造方法を提供する特徴がある。
【0018】
本発明の多層プラスチック基板構造は、プラスチックフィルムとガスバリアー層との間及び前記ガスバリアー層上に有機-無機ハイブリッドバッファー層を位置させて、層間熱膨張係数差を最少化して層間接着力を向上させることができる。
【0019】
本願発明の多層プラスチック基板は対称的に接着された構造に特徴があり、このうち、一層でもなければ、その機能が発揮できないため、前記の各層は必須的に含まれる。
【0020】
また、本発明のプラスチック基板構造は対称構造からなっているので、温度変化によってプラスチック基板が一方向に屈曲することを防止する。
【0021】
前記対称構造のプラスチック基板の製造方法は、プラスチックフィルム間に互いに接着する簡便な工程を利用することによって、生産性を高めることができ、低価の装備でもガスバリアー性と小さい熱膨張係数及び寸法安定性に優れたプラスチック基板を製造することができる。
【0022】
このような本発明の多層プラスチック基板について図面を参照してより詳しく説明する。
【0023】
図1は本発明の多層プラスチック基板の断面構造を示した図面であり、図2は、これを製造するための過程を示している。
【0024】
本発明の多層プラスチック基板は、各々二層のプラスチックフィルム、ガスバリアー層及び四層の有機-無機ハイブリッドバッファー層の組み合わせによって多層構造を有する。
【0025】
より具体的に説明すれば、図1で示されているように、本発明のプラスチック基板100は接合された形態のプラスチックフィルム110a、110bを中心にその両面に各々第1有機-無機ハイブリッドバッファー層115a、115b、ガスバリアー層120a、120b及び第2有機-無機ハイブリッドバッファー層125a、125bを順次に積層して構成される。図1で図面符号100は各多層フィルム100a、100bのプラスチックフィルム面どうしに接着した後、接着層130を基準に対称構造を有するプラスチック基板を意味する。
【0026】
前記第1有機-無機ハイブリッドバッファー層はプラスチックフィルムとガスバリアー層間の大きい熱膨張係数の差を緩和させ、有機物と無機物の組成を適切に調節することによってプラスチックフィルムとガスバリアー層間の接着力を向上させることができる役割を果たす。また、前記第1有機-無機ハイブリッドバッファー層はプラスチックフィルムの表面を平坦化することができるので、ガスバリアー層の蒸着時に形成される欠陥を最少化することもできる。
【0027】
前記ガスバリアー層は小さい熱膨張係数を有する高密度無機物層で、酸素と水蒸気などのガスを遮断することができる。
【0028】
また、前記第2有機-無機ハイブリッドバッファー層はガスバリアー層のクラックを防止する保護層の役割を果たすだけでなく、ガスバリアー層の欠陥を補充してガスバリアー性をさらに向上させる。また、透明伝導性膜の形成時に優れた平坦化機能によって低い電気的抵抗を行う役割も果たす。
【0029】
この時、前記第1及び第2有機-無機ハイブリッドバッファー層は有機シランと金属アルコキシドを含むバッファー組成物の部分加水分解物から形成されることによって前記の効果を持つ。
【0030】
本発明で使用されるプラスチックフィルムは単一高分子、1種以上の高分子のブレンド及び有機または無機添加物が含まれている高分子複合材料からなる群より選択して使用することができる。好ましい一例として、本発明のプラスチック基板が液晶表示装置の基板として使用される場合、薄膜トランジスターと透明電極を形成する製造工程が200℃以上の高温で行われるので、このような高温に耐えられる高耐熱性を有する高分子が要求される。このような特性を有する高分子としては、ポリノルボルネン、芳香族フラーレンポリエステル、ポルエーテルスルホン、ビスフェノールAポリスルホン、ポリイミドなどがある。また、最近の高温基板工程温度を低温に下げる研究が進行されながら、150℃付近の温度まで使用することができるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレン、ポリアリーレート、ポリカーボネート、環状型オレフィン共重合体などの高分子を使用することができる。
【0031】
また、本発明は高分子にナノ級物質を分散させたプラスチックフィルムを使用することもできる。このような高分子複合材料としては高分子・粘土ナノ級複合体があり、これは粘土の小さい粒子サイズ(<1ミクロン)と大きい縦横比の特性によって既に用いられていたガラス繊維などの複合体に比べて小さい量の粘土で高分子の機械的物性、耐熱性、ガスバリアー性、寸法安定性などの物性を向上させることができる。つまり、前記物性を向上させるためには層状構造の粘土片を剥離して高分子マトリックスによく分散させることが重要であるが、これを満足するのが高分子・粘土ナノ級複合体である。前記高分子・粘土複合体に使用することができる高分子・粘土ナノ級複合体としては、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレン、ポリアリーレート、ポリカーボネート、環状型オレフィン共重合体、ポリノルボルネン、芳香族フラーレンポリエステル、ポルエーテルスルホン、ポリイミド、エポキシレジン、多官能性アクリレートなどがあり、粘土としてはラポナイト、モンモリロナイト、マガダイトなどを使用することができる。
【0032】
本発明の多層プラスチック基板におけるプラスチックフィルムは、厚さが10乃至1000μmのフィルムまたはシート形態であるのが好ましい。
【0033】
前記プラスチックフィルムは溶液キャスティング法やフィルム圧出工程によって製造することができ、製造後、温度による変形を最少化するためにガラス転移温度付近で数秒から数分間短くアニーリングすることがよい。アニーリングの後にはコーティング性及び接着性を向上させるためにプラスチックフィルムの表面にプライマーコーティングを行ったり、コロナ、酸素或いは二酸化炭素を用いたプラズマ処理、紫外線-オゾン処理、反応気体を流入したイオンビーム処理法などで表面処理をすることもできる。
【0034】
本発明の多層プラスチック基板の製造方法は、プラスチックフィルムの一面にゾル状態のバッファー組成物をコーティング及び硬化して第1有機-無機ハイブリッドバッファー層を形成し、その上に無機物を蒸着コーティングしてガスバリアー層を形成し、再びその上に前記バッファー組成物をコーティング及び硬化して第2有機-無機ハイブリッドバッファー層を形成して多層フィルムを製造し、前記と同一な過程を経て多層フィルムをさらに1種製造する。その後、各多層フィルムの層が形成されていないプラスチックフィルム面どうしに接合して対称構造をなして多層構造のプラスチック基板を製造することができる。
【0035】
前記第1有機-無機ハイブリッドバッファー層はバッファー組成物を部分的に加水分解させてゾル状態の溶液に製造した後、これをプラスチックフィルムの上にコーティング及び硬化して得ることができる。前記コーティング法としては、スピンコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの方法を使用することができる。前記ゾル状態の硬化方法は熱硬化、UV硬化、赤外線硬化、高周波熱処理方法などを利用することができる。硬化後、有機-無機ハイブリッドバッファー層の厚さは0.5乃至20μmであり、好ましくは2乃至10μm、さらに好ましくは1〜5μmになる。
【0036】
前記有機-無機ハイブリッドバッファー層を形成するためのバッファー組成物は有機シラン及び金属アルコキシドを含み、場合によって適切な添加剤、溶媒及び重合触媒をさらに含むことができる。
【0037】
前記有機シランは下記の化学式1で示される化合物からなる群より1種以上選択して用いることができ、この時、1種の有機シラン化合物を用いる場合、架橋が可能でなければならない。
[化1]
(R-Si-X(4-m)
上記式で、Xは互いに同一であっても異なってもよく、水素、ハロゲン、炭素数1乃至12のアルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、または-N(R(ここで、RはH、または炭素数1乃至12のアルキル)であり、
は互いに同一であっても異なってもよく、炭素数1乃至12のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニラリル群、ハロゲン、置換されたアミノ、アミド、アルデヒド、ケト、アルキルカルボニル、カルボキシ、メルカプト、シアノ、ヒドロキシ、炭素数1乃至12のアルコキシ、炭素数1乃至12のアルコキシカルボニル、スルホン酸、リン酸、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、エポキシまたはビニル基であり、
この時、酸素または-NR(ここで、R2はH、または炭素数1乃至12のアルキル)がラジカルRとSiとの間に挿入されて-(R-O-Si-X(4-m)或いは(R-NR-Si-X(4-m)になってもよく、
mは1乃至3の整数である。
【0038】
前記有機シランの例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p-アミノフェニルシラン、アリルトリメトキシシラン、n-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミンプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジイソプロフィルエトキシシラン、3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、n-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及び、これらの混合物からなる群より選択して使用することができる。
【0039】
前記金属アルコキシドは下記の化学式2で示される化合物からなる群より1種以上選択して使用することができる。
[化2]
M−(R
上記式で、Mはアルミニウム、ジルコニウム及びチタンからなる群より選択される金属を示し、R3は互いに同一であっても異なってもよく、ハロゲン、炭素数1乃至12のアルキル、アルコキシ、アシルオキシ、またはヒドロキシ基であり、Zは3または4の整数である。
【0040】
前記充填剤は金属、ガラス粉末、ダイヤモンド粉末、酸化シリコン(SiO、ここでxは2-4の整数)、粘土などの物質の中で1種以上選択して使用することができる。前記充填剤の例としては、金属、ガラス粉末、ダイヤモンド粉末、酸化シリコン、粘土(ベントナイト、スメクタイト、カオリンなど)、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、フッ化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化バリウム、ケイ酸アルミニウム、これらの混合物がある。
【0041】
前記溶媒は通常の部分加水分解反応に使用される溶媒を用いることができ、好ましくは蒸溜水を使用することができる。また、触媒もやはり特に限定されないが、好ましくはアルミニウムブトキシド及びジルコニウムプロポキシドを使用することができる。
【0042】
前記充填剤、溶媒及び触媒の使用量は必要に応じて添加されるもので、特に限定されない。
【0043】
前記バッファー組成物で有機シルラの含量は20乃至99.99重量%が好ましく、より好ましくは50乃至99重量%、さらに好ましくは70乃至99重量%が良い。また、前記金属アルコクシドの含量は0.01乃至80重量%がよく、より好ましくは70重量%より少なく使用するのがよく、最も好ましくは20重量%より少ないのがよい。
【0044】
本発明で第1有機-無機ハイブリッドバッファー層の表面の平坦度Ra(平均粗さ)は非常に重要であるが、前記バッファー層が平坦でなければ、バリアー層が蒸着される時に欠陥が発生し、結局バリアー性が出ない結果を招く。したがって、平坦度値が低ければ低いほど、バリアー性が増加する結果を示す。本発明では前記第1有機-無機ハイブリッドバッファー層の表面平坦度は1nm内外が好ましく、より好ましくは1nm以内の平坦度が良い。具体的に、平坦度は0.1〜1.2のRa値を有することができる。
【0045】
このように製造されたバッファー層上に無機物であるガスバリアー層120a、120bを積層すれば、無機物層と有機-無機ハイブリッドバッファー層の間の接着力が優れていて、無機物層によってガスバリアー特性が向上し、無機物層自体の係数が高くて熱膨張係数が小さいために、全基板の機械的特性もまた向上させることができる。
【0046】
前記プラスチックフィルムは酸素や水蒸気の透過度が数十から数千であるために、ガスバリアー層を形成する方法は、密度の高い透明無機物や厚さ数ナノメートルと薄い金属膜を高分子フィルムの上に物理的または化学的方法でコーティングして、酸素や水蒸気を遮断することができる。この時、透明無機酸化膜を使うと、ピンホールやクラックが存在すれば、酸素や水蒸気を効果的に遮断することが難しい。また、厚さ数ナノメートルの均一な薄膜を得ることが難しいだけでなく、80%を超える可視光透過度が得難い。 前記のように形成されたガスバリアー層の厚さは、5乃至1000nm、具合が良いと20乃至500ナノメートル、特に具合が良いと50乃至200ナノメートルである。
【0047】
前記無機物としてはSiO(ここで、xは1乃至4の整数)、SiO(ここで、x及びyは各々1乃至3の整数)、Al及びITOからなる群より1種以上選択される酸化金属や窒化金属を使用することができる。前記蒸着コーティング法としてはスパッタリング法、化学蒸着法、イオンプレイティング法、プラズマ化学蒸着法、ゾル-ゲル法などを使用することができる。
【0048】
前記ガスバリアー層上に形成される第2有機-無機ハイブリッドバッファー層125a、125bはバリアー層にクラックが発生する可能性を最少化し、表面に使用されて耐薬品性と耐スクラッチ性を付与する。また、本発明では無機物層に存在し得るピンホール、クラックなどの欠陥の部分で無機物層のヒドロキシ基とバッファー層のヒドロキシ基間に水和反応が起こって、無機物層の欠陥を治癒してガスバリアー性をさらに向上させることができる。前記ガスバリアー層(無機物層)の上に積層される第2有機-無機ハイブリッドバッファー層の組成物は前記プラスチックフィルムの上にコーティングされる第1有機-無機ハイブリッドバッファー層の組成物と同一であるが、有機シランと金属アルコキシド、充填剤の比率とコーティングされる厚さは場合により異なることもある。
【0049】
前記第2有機-無機ハイブリッドバッファー層125a、125bの形成方法は、前記第1有機-無機ハイブリッドバッファー層の形成方法と同様な方法でゾル状態の溶液をスピンコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの方法で高分子フィルムにコーティングし、熱硬化、UV硬化、赤外線硬化、高周波熱処理方法で硬化して製造することができ、硬化後の厚さは0.5乃至20μm、好ましくは2乃至10μm、さらに良く1乃至5μmとなる。
【0050】
また、本発明において、前記第2の有機-無機ハイブリッドバッファー層の平坦度もやはり非常に重要であるが、LCD工程或いはOLED工程で使用されるITOのような素子が第2の有機-無機ハイブリッドバッファー層に直接蒸着されるので、このような素子は平坦度が高ければ電流が集中する現象で機能を果たすことができない。
【0051】
現在の傾向はLCDよりは次世代ディスプレイであるOLEDでさらに優れた平坦度が要求される。したがって、本発明はこのような条件が満足できるように、前記第2有機-無機ハイブリッドバッファー層の表面平坦度もまた1nm内外が好ましく、より好ましくは1nm以内の平坦度が良い。具体的に、平坦度は0.1〜1.2のRa値を有することができる。
【0052】
前記多層フィルムのプラスチックフィルム間の接合方法は通常接着剤として使用されるアクリル系接着剤または熱接合方法によって行うことができ、これに必ず制限されるわけではない。この時、接着剤を用いる場合、その含有量は特に限定されないが、形成された接着層の厚さは0.1乃至10μmであるのが好ましい。
【0053】
以上のような本発明の多層構造のプラスチック基板は、熱膨張係数が小さく(最大6.5ppm/K)で非常に小さく、酸素透過率が0.05(cc/m/day/atm)未満であり、水蒸気透過率が0.005(g/m/day)未満で優れたガスバリアー性を有しており、寸法安定性も優れている。したがって、本発明の多層プラスチック基板は従来表示装置などで主に使用されてきた壊れやすくて重いガラス基板に代替することができ、その他に優れたガスバリアー性が要求される材質でも使用することができる。
【0054】
以下、本発明を実施例を通じてさらに詳しく説明する。しかし、下記の実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるわけではない。
【0055】
[実施例]
実施例1
二軸延伸圧出工程で両面アクリルプライマーコーティングして製造された100μm厚さのPET(Polyethyleneterephthalate、商品名SH38、韓国SK社)フィルムを150℃対流オーブンで1分間熱処理して残留応力を除去した後、プラスチックフイルムとして使用した。
【0056】
第1有機-無機ハイブリッドバッファー層を形成するため、テトラエトキシシラン32.5重量部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン64.0重量部、アミノプロピルトリメトキシシラン0.5重量部、アルミニウムブトキシド2.0重量部及びジルコニウムプロポキシド1.0重量部を含む混合物に蒸溜水80.0重量部を添加した。部分加水分解は、ゾル状態のバッファー組成物を製造するため、25℃で24時間実施した。
【0057】
前記バッファー組成物をPETフィルムの一面にバーコーティングした。50℃で3分間溶媒を除去した後、125℃の対流オーブンで1時間ゲル反応を進めた。
【0058】
ゲル反応後、アルファステッパーで測定した有機-無機ハイブリッドバッファー層の厚さは3ミクロンであった。ゲル反応が終わったバッファー層上にエィテックシステム社のDC/RFマグネトロンスパッター機を使用して、Arガスを50sccm注入し、5mtorrの圧力下で1000WattのRF(13.56MHz)powerを10分間印加し、酸化シリコン(SiO、x=1-4の整数)薄膜を蒸着した。SEMで観察した酸化シリコン膜の厚さは100nmであった。酸化シリコン薄膜の上に再び前記組成のバッファー組成物をバーコーティングした後、50℃の対流オーブンで3分間溶媒を除去して125℃の対流オーブンで1時間の間にゲル反応を進めて、第2有機-無機ハイブリッドバッファー層を形成して多層フィルムを製造した(図1、2の100b)。ゲル反応が終わった後、アルファステッパーで測定したバッファー層の厚さは3ミクロンであった。
【0059】
第2有機-無機ハイブリッドバッファー層の表面粗度は、AFMの室温タッピングモード(tapping mode)で測定して、50ミクロン×50ミクロンの範囲で0.4nm以下であった。
【0060】
残りの多層フィルム(図1、2の100a)は、前記と同じ方法で再度製造した。
【0061】
最後に、多官能基を有するアクリレートオリゴマーが主成分である接着剤組成物を前記の過程で製造された多層フィルム100bのコーティングされていないPET面にバーコーティングした後、前記と同様な方式で製造された多層フィルム100bとプラスチック面を互いに接着して、紫外線照射器(DYMAX2000-EC)で6分間照射して接着剤組成物の硬化反応を誘導し、図1の100のような構造のプラスチック基板を作った。
【0062】
実施例1のプラスチック基板に対して表示装置用基板としての主要要求物性である光透過度、ヘーズ、酸素透過率、水蒸気透過率、熱膨張係数、鉛筆引き掻き硬度を測定して、その結果を表1に示した。前記各物性測定方法はの下記の通りであり、以下のすべての実施例と比較例に同様に適用した。
1)光透過度:ASTM D1003に基づいて、各々Varian社のUV-分光計を使って可視域である380から780nmの範囲で測定した。
2)ヘーズ:Tokyo Denshoku社のHazemeter TC-H3DPKでASTM D1003の方法で測定した。
3)酸素透過率:MOCON社のOX-TRAN2/20を使ってASTM D3985の方法で、常温で0%の相対湿度で測定した。
4)水蒸気透過率:PERMATRAN-W-3/33を使ってASTMF1249の方法で100%の相対湿度及び常温で48時間測定した。
5)熱膨張係数:ASTM D696に基づいて、熱機械分析器(TMA;Thermomechanical Analysis)で5gfの応力下で10℃で昇温しながら測定した。
6)鉛筆引き掻き硬度は200gの荷重下でASTM D3363の方法で測定した。
【0063】
全ての物性値は、少なくとも5回以上測定し、平均を出した。
【0064】
参考として、実施例1に使用されたPETフィルム自体の酸素、水蒸気透過率は各々25cc/m/day/atm、4.5g/m/dayであり、熱膨張係数は22.4ppm/Kであった。
【表1】

【0065】
前記表1で、
a)機器測定限界:0.05cc/m/day/atm
b)機器測定限界:0.005g/m/day
実施例1によって製造された多層プラスチック基板は、平らなフロアに置いた時、屈曲がなく、表1に示したように、製造されたプラスチック基板は優れたガスバリアー性と小さい熱膨張係数、寸法安定性の物性を同時に満足したことが分かる。
【0066】
実施例2
厚さ50ミクロンのデュポン社Kaptonポリイミドフィルムにコロナ表面処理((株)A-Sung)を行った後、実施例1と同様な組成のゾル状態のバッファー組成物をバーコーティングして、対流オーブンで50℃、3分間残留溶媒を除去して,200℃の対流オーブンで30分間のゲル反応を進めた。アルファステッパーで測定した前記バッファーコーティング層の厚さは2ミクロンであった。その後、前記実施例1と同一な蒸着条件で酸化シリコン薄膜を前記バッファーコーティング層に蒸着した後、その上に同じ組成のバッファー組成物を再びバーコーティングした後、50℃で3分間対流オーブンで残留溶媒を除去して、200℃で30分間の対流オーブンでゲル反応を進めて第2バッファーコーティング層を製造した。アルファステッパーで測定した第2バッファーコーティング層の厚さは2ミクロンであった。実施例1と同じ方法で製造された多層フィルムと、別の多層フィルムを接着して、図1の100のような構造のプラスチック基板を作った。
【0067】
前記実施例1と同様な方法でプラスチック基板の物性を測定し、その結果を表2に示した。
【表2】

【0068】
実施例3
実施例1と同じ方法でプラスチックフィルム(PET)の上に第1有機-無機ハイブリッドバッファー層を形成するため、前記物質はテトラエトキシシラン40.0重量部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン56.5重量部、アミノプロピルトリメトキシシラン0.5重量部、アルミニウムブトキシド2.0重量部及びジルコニウムプロポキシド1.0重量部を使用しており、ここに蒸溜水60.0重量部を添加して、25℃・24時間の部分加水分解を行った。実施例1に用いたと同じゾル状態のバッファー組成物をPETフィルムの一面にバーコーティングした。50℃で3分間、溶媒除去のために乾燥した後、125℃の対流オーブンで1時間ゲル反応を進めた。ゲル化の後、アルファステッパーで測定した前記バッファーコーティング層の厚さは2ミクロンであった。実施例1と同じ条件で酸化シリコン薄膜を前記バッファーコーティング層に蒸着した。前記バッファー組成物を酸化シリコン薄膜の上にバーコーティングし、50℃で3分間溶媒を除去乾燥して、125℃で1時間の対流オーブンでゲル反応を進めて第2バッファーコーティング層を形成した。アルファステッパーで測定した第2バッファーコーティング層の厚さは2ミクロンであった。得られた多層フィルムは、実施例1と同じ条件で製造された別の多層フィルムと接着して、図1の100のような構造のプラスチック基板を作った。
【0069】
前記実施例1と同様な方法でプラスチック基板の物性を測定し、その結果を表2に示した。
【表3】

【0070】
比較例1
実施例1と同じ方法で製造された、2枚の多層フィルムを接着して、図3に示されたプラスチック基板を製造したが、PETフィルムと酸化シリコンガスバリアー層の間に有機-無機ハイブリッドバッファー層をコーティングせず、ガスバリアー層の上にのみ前記有機-無機ハイブリッドバッファー層をコーティングしたことは別である。
【0071】
前記酸化シリコンガスバリアー層の上にコーティングされたバッファー層は、実施例1と同じ方法で製造された。結果を下の表4に示す。
【表4】

【0072】
表4から、比較例1によって製造したプラスチック基板は酸素と水蒸気透過率が機器測定範囲外の値を示したが、一つのバッファー層のみを含んで熱膨張係数はPETフィルム自体の熱膨張係数である22.4と同様に高いことが分かる。
【0073】
比較例2
実施例1でプラスチックフィルムPETに第1有機-無機ハイブリッドバッファー層をコーティングし、その上にガスバリアー層である酸化シリコン薄膜を蒸着して多層フィルムを製造しており、第2有機-無機ハイブリッドバッファー層コーティングはしなかった。同様な方式で製造された多層フィルムとプラスチックフィルム面を互いに接着して、図4のような構造のプラスチック基板を製造した。
【0074】
前記プラスチックフィルムの上にコーティングしたバッファー層は実施例1と同様な方法でコーティングして製造した。このように製造されたプラスチック基板に対する物性測定結果を表5に示した。
【表5】

【0075】
表5から、比較例2によって製造したプラスチック基板は酸素と水蒸気透過率が機器測定範囲外の値を示したが、これもまた一つのバッファー層のみを含んで熱膨張係数はPETフィルムシート自体の熱膨張係数である22.4と同様に高いことが分かる。
【0076】
比較例3
実施例1でプラスチックフィルムPETの上にガスバリアー層の酸化シリコン薄膜を蒸着して多層フィルムを製造し、第1及び第2有機-無機ハイブリッドバッファー層は全てコーティングしなかった。同様な方式で製造された多層フィルムのプラスチックフィルムシート面を互いに接着して、図5のプラスチック基板を製造した。
【0077】
このように製造されたプラスチック基板に対する物性測定結果を表6に示した。
【表6】

【0078】
表6から、比較例3によって製造したプラスチック基板は酸素透過率が1.1で、水蒸気透過率が2.0であり、これはPETフィルムの値よりは非常に減少しているが、依然として高い値を示している。また、熱膨張係数はPETフィルム自体の熱膨張係数である22.4と同様に高いことが分かる。したがって、表示装置の基板として使用するのには適しないことが分かる。
【0079】
比較例4
実施例1で高分子フィルムPETの上にガスバリアー層の酸化シリコン薄膜のみを蒸着したフィルムを製造しており(図6)、プラスチック基板に対する物性測定結果を表7に示した。図6は両面接合でなく、一面にのみガスバリアー層が蒸着された基板である。
【表7】

【0080】
表7kara、比較例4によって製造したプラスチック基板は酸素透過率が3.1で,水蒸気透過率が3.0であり、これはPETフィルムの値よりは減少しているが、依然として高い値を示している。また、熱膨張係数はPETフィルム自体の熱膨張係数の22.4と同様に高いことが分かる。したがって表示装置の基板として使用するのには適しないことが分かる。
【0081】
比較例5
実施例1に使用されたPETフィルムの一面に実施例1のバッファー組成物溶液を2.5ミクロンの厚さでバーコーティングして、実施例1と同様に架橋反応を進めた後、実施例1と同じ条件で約100nmの酸化シリコン薄膜を蒸着しガスバリアー層を形成した。これに前記の過程と同一にバッファー層のコーティング及び架橋反応、酸化シリコン薄膜の蒸着をさらに2回繰り返した後、最外郭の酸化シリコン薄膜に約3ミクロンの厚さで前記バッファー層をコーティングして、50℃で3分間残留溶媒を除去し、125℃で1時間架橋反応を進めて、対称構造でない一面にのみ積層したプラスチック基板を製造した(図7)。作られた基板の縦横長さは全て12cmであり、コーティングされていない面を平らなフロアに置いた時、中間部分が3cmフロアから落ちる屈曲した模様を示した。物性測定結果を表8に示しており、酸素、水蒸気透過率は優れているように現れたが、熱膨張係数の改善が行われてはいない。したがって、表示装置の基板として使用するのには適しないことが分かる。
【表8】

【0082】
比較例6
実施例1で用いたPETフィルムを多官能性メタクリレート組成物に光開始剤を0.3重量部添加した溶液に浸漬した後,分当り10cmの速度で引き上げてディップコーティング及びUV硬化して、両面に有機架橋コーティング層140a、140bを形成した。UV硬化後、架橋コーティング層の厚さはアルファステッパーで測定した結果3ミクロンであった。有機架橋コーティングした前記PETフィルムの両面に実施例1と同様な方法で100nm厚さの酸化シリコン薄膜を蒸着した後、再び前記有機架橋コーティング層142a、142bを前記と同様な方法で酸化シリコン薄膜上に3ミクロンの厚さでコーティングして、図8のプラスチック基板を製造した。作られた基板に対する物性測定結果を表9に示した。
【表9】

【0083】
表9から、比較例6の場合、酸素と水蒸気透過率はPETフィルムに比べて非常に減少しているが、熱膨張係数の減少は現れておらず、表示装置の基板として使用するのには適しないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施例1に応じた多層構造のプラスチック基板の断面構造を簡略に示した図面である。
【図2】本発明の多層プラースピック基板の製造工程を簡略に示した図面である。
【図3】比較例1乃至6によるプラスチック基板の断面構造である。
【図4】比較例1乃至6によるプラスチック基板の断面構造である。
【図5】比較例1乃至6によるプラスチック基板の断面構造である。
【図6】比較例1乃至6によるプラスチック基板の断面構造である。
【図7】比較例1乃至6によるプラスチック基板の断面構造である。
【図8】比較例1乃至6によるプラスチック基板の断面構造である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合されたプラスチックフィルムと;
前記接合されたプラスチックフィルムの両面に第1有機-無機ハイブリッドバッファー層、ガスバリアー層及び第2有機-無機ハイブリッドバッファー層が順次に積層されて、プラスチックフィルムを中心に対称構造をなす多層構造のプラスチック基板。
【請求項2】
前記プラスチックフィルムは単一高分子、1種以上の高分子ブレンド及び有機または無機添加物が含まれている高分子複合材料からなる群より1種以上選択される、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項3】
無機添加物を含む前記高分子複合物質は、種々のナノ級物質が高分子マトリックスに分散された高分子・粘土ナノ級複合体である、請求項2に記載のプラスチック基板。
【請求項4】
前記ガスバリアー層は、SiO(ここで、xは1乃至4の整数)、SiO(ここで、x及びyは各々1乃至3の整数)、Al及びITOからなる群より1種以上選択される無機物から形成されたものである、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項5】
前記ガスバリアー層の厚さが5乃至1000nmである、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項6】
前記第1有機-無機ハイブリッドバッファー層と第2有機-無機ハイブリッドバッファー層各々は、下記の化学式1で示される化合物からなる群より選択される1種以上の有機シラン20乃至99.99重量%及び、下記の化学式2で示される化合物からなる群より選択される1種以上の金属アルコキシド0.01乃至80重量%を含むバッファー組成物の部分加水分解により作られたものである、請求項1に記載のプラスチック基板。
[化1]
(R-Si-X(4-m)
上記式で、Xは互いに同一であっても異なってもよく、水素、ハロゲン、炭素数1乃至12のアルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、または-N(R(ここで、RはHまたは炭素数1乃至12のアルキル)であり、
は互いに同一であっても異なってもよく、炭素数1乃至12のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール、ハロゲン、置換されたアミノ、アミド、アルデヒド、ケト、アルキルカルボニル、カルボキシ、メルカプト、シアノ、ヒドロキシ、炭素数1乃至12のアルコキシ、炭素数1乃至12のアルコキシカルボニル、スルホン酸、リン酸、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、エポキシまたはビニル基であり、
酸素または-NR(ここで、RはHまたは炭素数1乃至12のアルキル)がRとSiの間に挿入されて-(R-O-Si-X(4-m)或いは(R-NR-Si-X(4-m)になってもよく、mは1乃至3の整数である。
[化2]
M−(R
上記式で、Mはアルミニウム、ジルコニウム及びチタンからなる群より選択される金属であり、Rは互いに同一であっても異なってもよく、ハロゲン、炭素数1乃至12のアルキル、アルコキシ、アシルオキシまたはヒドロキシ基であり、Zは3または4の整数である。
【請求項7】
前記バッファー組成物は、金属、ガラス粉末、ダイヤモンド粉末、酸化シリコン、粘土、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、フッ化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化バリウム及びケイ酸アルミニウムからなる群より選択される1種以上の充填剤;溶媒;及び重合触媒、を更に含むものである、請求項5に記載のプラスチック基板。
【請求項8】
前記第1有機-無機ハイブリッドバッファー層と第2有機-無機ハイブリッドバッファー層の各々は厚さが0.5乃至20ミクロン(μm)である、請求項1に記載のプラスチック基板。
【請求項9】
a)プラスチックフィルムの一面にゾル状態のバッファー組成物をコーティング及び硬化して第1有機-無機ハイブリッドバッファー層を形成し、
b)前記第1有機-無機ハイブリッド層上に、無機物をコーティングしてガスバリアー層を形成し、
c)前記ガスバリアー層上に、a)段階のバッファー組成物をコーティングして第2有機-無機ハイブリッドバッファー層を形成及び硬化して多層フィルムを製造し、
d)前記c)段階で得たものと同じ構造の多層フィルムをさらに1組製造し、
e)前記c)段階とd)段階の前記プラスチックフィルムを接合して、何れの面にも互いに接触する多層フィルムがない
多層構造のプラスチック基板の製造方法。
【請求項10】
前記e)段階の接合は、アクリル系接着剤または熱によって行われる、請求項9に記載のプラスチック基板の製造方法。
【請求項11】
前記第1有機-無機ハイブリッドバッファー層と第2有機-無機ハイブリッドバッファー層は、下記の化学式1で示される各種化合物からなる群より選択される1種以上の有機シラン20乃至99.99重量%及び、下記の化学式2で示される各種化合物からなる群より選択される1種以上の金属アルコキシド0.01乃至80重量%を含むバッファー組成物の部分加水分解物により作られたものである、請求項9に記載のプラスチック基板。
[化1]
(R-Si-X(4-m)
上記式で、Xは互いに同一であっても異なってもよく、水素、ハロゲン、炭素数1乃至12のアルコキシ、アシルオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたは-N(R(ここで、RはH、または炭素数1乃至12のアルキル)であり、
は互いに同一であっても異なってもよく、炭素数1乃至12のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アリールアルケニル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール、ハロゲン、置換されたアミノ、アミド、アルデヒド、ケト、アルキルカルボニル、カルボキシ、メルカプト、シアノ、ヒドロキシ、炭素数1乃至12のアルコキシ、炭素数1乃至12のアルコキシカルボニル、スルホン酸、リン酸、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、エポキシまたはビニル基であり、
酸素または-NR(ここで、RはHまたは炭素数1乃至12のアルキル)がラジカルRとSiの間に挿入されて-(R-O-Si-X(4-m)或いは(R-NR-Si-X(4-m)になってもよく、mは1乃至3の整数である。
[化2]
M−(R
上記式で、Mはアルミニウム、ジルコニウム及びチタンからなる群より選択される金属であり、Rは互いに同一であっても異なってもよく、ハロゲン、炭素数1乃至12のアルキル、アルコキシ、アシルオキシまたはヒドロキシ基であり、Zは3または4の整数である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−523769(P2007−523769A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552054(P2006−552054)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000352
【国際公開番号】WO2005/074398
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】