説明

多層プリント配線板及び多層プリント配線板の製造方法

【課題】 線間距離を狭めても信頼性が低下しない多層プリント配線板を提供することにある。
【解決手段】 第2導体回路58と第2導体回路58との間(絶縁間隔:スペース)において、第1樹脂絶縁層50と上層樹脂絶縁層150との間に無機絶縁膜48が介在しており、第1樹脂絶縁層50と上層樹脂絶縁層150とが無機膜は表面がフラットなため給電層の除去が容易に可能となり、第2導体回路との間(絶縁間隔:スペース)において、第1樹脂絶縁材−第2樹脂絶縁材間でのエレクトロケミカルマイグレーションが発生することが無い。このため、第2導体回路の絶縁間隔を10μm以下に狭めても、信頼性が低下しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂絶縁層上に導体回路を形成し、更に、該導体回路上に樹脂絶縁層をビルドアップ積層し、樹脂絶縁層の上層の導体回路と下層の導体回路とをビア導体で接続する多層プリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の高密度化に対応するため、樹脂絶縁層と導体回路とを交互にビルドアップ積層するビルドアップ多層プリント配線板が用いられている。このビルドアップ多層プリント配線板では、一般的に導体回路の形成に、樹脂絶縁層上に無電解めっき膜を形成し、導体回路非形成部にめっきレジストを形成し、めっきレジスト非形成部に電解めっき膜を設け、めっきレジストを剥離し、めっきレジスト下の無電解めっき膜を除去することにより形成する特許文献1に示すセミアディティブ法が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−179353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導体回路を形成する導体配線間のスペースの微細化が急速に進みつつあり、配線信頼性の劣化メカニズムの解明と、その対策が求められている。
ここで、上述したセミアディティブ法で配線間スペースを10μm以下にすると、導体配線間の給電層の除去が困難となり、金属残渣が発生する。その結果、こうした金属残渣に起因してマイグレーションが生じ、導体配線間で短絡が発生して絶縁性を維持できないことが明らかになった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、配線間距離を狭めても信頼性が低下しない多層プリント配線板及び該多層プリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、第1樹脂絶縁材と、該第1樹脂絶縁材の表面上に形成されている第1導体回路と、前記第1樹脂絶縁材及び前記第1導体回路上に形成され、前記第1導体回路に達する開口部を有する第2樹脂絶縁材と、該第2樹脂絶縁材の表面上に形成されている絶縁膜と、該絶縁膜上に形成されている第2導体回路と、前記開口部に形成されて前記第1導体回路と前記第2導体回路とを接続するビア導体とを備える多層プリント配線板であって、
前記絶縁膜は、前記開口部の側壁を除く前記第2樹脂絶縁材の表面上の全面に亘って形成されていることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明の多層プリント配線板では、第2樹脂絶縁材上に無機材料から成る絶縁膜が形成され、該絶縁膜上に第2導体回路が形成されている。即ち、第2導体回路と第2導体回路との間(絶縁間隔:スペース)において、第2樹脂材上の無機膜は表面がフラットなため給電層の除去が容易に可能となり、第2導体回路との間(絶縁間隔:スペース)において、第1樹脂絶縁材−第2樹脂絶縁材間でのエレクトロケミカルマイグレーションが発生することが無い。このため、第2導体回路の絶縁間隔を10μm以下に狭めても、信頼性が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施例に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図2】第1実施例のプリント配線板の製造工程図である。
【図3】第1実施例のプリント配線板の製造工程図である。
【図4】本発明の第2実施例に係るプリント配線板の断面図である。
【図5】本発明の第4実施例に係るプリント配線板の製造工程図である。
【図6】第4実施例のプリント配線板の製造工程図である。
【図7】第4実施例のプリント配線板の製造工程図である。
【図8】本発明の第5実施例に係るプリント配線板の断面図である。
【図9】HAST試験を行うサンプルの説明図である。
【図10】HAST試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施例]
図3(C)に本発明の第1実施例に係る多層プリント配線板の要部断面を示す。
第1実施例では、絶縁膜として無機材料を用いた多層プリント配線板を開示する。
多層プリント配線板は、ガラス繊維の芯材に含浸させた樹脂を硬化させて成り、スルーホール用貫通孔32を備えるコア基板30(第1樹脂絶縁材)を有する。コア基板30の表裏には、スルーホールランド36aを有する第1導体回路34が設けられている。また、スルーホール用貫通孔32の内部にはめっきが充填されていて、スルーホール導体36が形成されている。このスルーホール導体36を介して第1導体回路34同士が電気的に接続されている。
【0010】
コア基板30及び第1導体回路34上には、樹脂絶縁層50(第2樹脂絶縁材)が形成されている。樹脂絶縁層50の内部には、第1導体回路34に達するビア用開口51が形成されている。樹脂絶縁層50の表面、詳しくはビア用開口51の側壁を除く表面の全体に亘って、無機材料から成る絶縁膜48が形成されている。この絶縁膜48としては、表面がフラットで透水性の低い材料であることが好ましく、窒化珪素(Si3N4)、二酸化珪素(SiO2)、酸化窒化珪素(SiON)、酸化炭化珪素(SiOC)、酸化フッ化珪素(SiOF)からなる群より選択される少なくとも1種類である。
【0011】
絶縁膜48上には第2導体回路58が形成されている。ビア用開口51の内部には銅めっきが充填されていて、ビア導体60が形成されている。このビア導体60により、第2導体回路58と第1導体回路34とが電気的に接続されている。
第2導体回路58は、絶縁膜48上の無電解銅めっき膜52と、無電解銅めっき膜52上の電解銅めっき膜56とからなる。この第2導体回路58の側面及び上面には、上述した絶縁膜48が形成されている。すなわち、第1実施例では、第2導体回路58の側面を含む全表面と、樹脂絶縁層50の表面とに、窒化珪素からなる絶縁膜48が設けられている。第2導体回路58間に位置する絶縁膜48aの厚みは、第2導体回路58直下の絶縁膜48bの厚みよりも厚い。そして、樹脂絶縁層50及び第1導体回路34上には、樹脂絶縁層150が形成されている。
【0012】
第1実施例の多層プリント配線板では、樹脂絶縁層50上に無機材料から成る絶縁膜48が形成され、該絶縁膜48上に第2導体回路58が形成されている。即ち、第2導体回路58と第2導体回路58との間(樹脂絶縁層50と樹脂絶縁層150との間)において、第2導体回路58直下よりも相対的に厚い絶縁膜が形成されている。無機膜は表面がフラットなため給電層の除去が容易に可能となり、第2導体回路との間(絶縁間隔:スペース)において、第1樹脂絶縁材−第2樹脂絶縁材間でのエレクトロケミカルマイグレーションが発生することがほとんど無いものと推測される。このため、第2導体回路の絶縁間隔を10μm以下に狭めても、信頼性が低下しない。
【0013】
上述したように、第1実施例では、樹脂絶縁層50の表面の全体に亘って絶縁膜48が形成されており、この絶縁膜48は、隣接する第2導体回路58間に存在する。さらに、導体回路58の表面にも絶縁膜48が設けられている。このため、信頼性環境下、電圧印加時に、第2導体回路58表面の絶縁膜の欠陥(金属残渣)が少ないためマイグレーションが抑制され、導体回路間の良好な絶縁性が確保される。
【0014】
引き続き、図3(C)を参照して上述した多層プリント配線板10の製造方法について図1〜図3を参照して説明する。
(1)厚さ0.2〜0.8mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる絶縁性基板30の両面に5〜250μmの銅箔がラミネートされている銅張積層板を出発材料とする。この銅張積層板の両面からそれぞれレーザーを照射し、にスルーホール用貫通孔32を形成する。その後、無電解めっき処理および電解めっき処理を施して貫通孔32内にめっきを充填することでスルーホール導体36を設ける。次いで、銅箔及び該めっき膜をエッチングによりパターニングしてスルーホールランド36aを含む第1導体回路34を形成する(図1(A))。
【0015】
(2)コア基板30の両面上に、層間樹脂絶縁層用の樹脂フィルムを昇温しながら真空圧着ラミネートし、第1樹脂絶縁層50を設ける(図1(B)参照)。層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムは、粒径0.1μm以下の可溶性粒子と無機粒子とを含む。
【0016】
(3)樹脂絶縁層50上に、スプレー塗布により窒化珪素(Si3N4)からなる絶縁膜48を形成する。絶縁膜48の厚みは、100nmから10μmである(図1(C))。絶縁膜48を形成する際、スプレー塗布を用いることで、半導体プロセスを用いる場合とは異なり、樹脂絶縁層50及びコア基板30が高熱に晒されることがない。また、スプレー塗布により絶縁膜を形成したが、この代わりにスパッタ法、真空蒸着法、又はCVD法を用いることも可能である。
【0017】
(4)次に、CO2ガスレーザにて、絶縁膜48及び樹脂絶縁層50を貫通するビア用開口51を設ける(図1(D)参照)。引き続き、クロム酸、過マンガン酸塩などの酸化剤等に浸漬させることによって、樹脂絶縁層50のビア用開口51表面に露出している可溶性粒子を溶解し粗化する。その際、樹脂絶縁層50の表面は絶縁膜48で保護されているため、粗化が抑制される。その結果、ビア用開口51の内壁の表面粗度は、樹脂絶縁層50の表面の表面粗度よりも大きくなる。
【0018】
(5)予め樹脂絶縁層50の表層にパラジウムなどの触媒を付与させて、無電解めっき液に5〜60分間浸漬させることにより、0.1〜5μmの範囲で無電解めっき膜52を設ける(図2(A))。
【0019】
(6)基板30に、市販の感光性ドライフィルムを貼り付け、フォトマスクフィルムを載置して露光した後、炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ約15μmのめっきレジスト54を設ける(図2(B))。
【0020】
(7)電解めっきを施して電解めっき膜56を形成する(図2(C))。
【0021】
(8)モノエタノールアミンを含む溶液でめっきレジスト54を剥離除去する(図2(D))。
【0022】
(9)剥離しためっきレジスト下の無電解めっき膜52をエッチングにて溶解除去し、無電解めっき膜52と電解めっき膜56からなる第2導体回路58及びビア導体60を形成する(図3(A))。
【0023】
(10)その後、(3)と同様に、スプレー塗布により第2導体回路58の側面及び上面に絶縁膜68を形成する(図3(B))。
【0024】
(11)上記(2)と同様にして樹脂絶縁層150を設ける(図3(C))。
【0025】
その後、(3)と同様に絶縁膜を形成し、(4)と同様にビア用開口を設け、(5)〜(10)と同様にして導体回路、ビア導体を形成する。最表層にソルダーレジスト層を設け、ソルダーレジスト層の開口から露出する半田パッドに半田バンプを形成する。
【0026】
第1実施例では、樹脂絶縁層50の表面は粗化されない。粗化されない略平坦な樹脂絶縁層50上にセミアディティブ法によって第2導体回路を形成するので、無電解めっき膜52をエッチングする際は、粗化面(アンカー)にめっき膜が追従することがなく、短時間でエッチングすることが可能となる。ひいては、電解めっき膜56の過剰なエッチングを抑制することが可能となる。
【0027】
[第2実施例]
図4に本発明の第2実施例に係る多層プリント配線板の要部断面を示す。
第2実施例の多層プリント配線板では、第1実施例と比較して、第2導体回路58の表面上の絶縁膜が省略されている。他の構成は第1実施例と同様である。
【0028】
第2実施例の多層プリント配線板では、樹脂絶縁層50の表面の全体に亘って絶縁膜48が形成されている。すなわち、隣接する第2導体回路58間に絶縁膜48が設けられている。
この場合、信頼性環境下、電圧印加時に樹脂絶縁層50中に存在する水に起因して、正電極として作用する導体回路ではCuイオンが生じる。通常、このようなCuイオンは、上下の樹脂絶縁層の界面に存在する欠陥(微細な隙間)を介して、正電極側から負電極側へ銅イオンが移動し、リーク電流が発生する。しかしながら、本実施例では、そうしたCuイオンの移動経路に、所定の無機材料からなる絶縁膜が存在し、欠陥(微細な隙間)がほとんど存在しない。その結果、Cuイオンのマイグレーションが抑制されてリーク電流が低減し、線間絶縁性が向上するものと推測される。
【0029】
[第3実施例]
第3実施例では、第1実施例に対し、絶縁膜48を有機材料から形成する多層プリント配線板を開示する。この種の有機材料としては、透水性の低いものが好ましく、例えばポリ尿素が挙げられる。こうした有機材料からなる絶縁膜は真空蒸着法により形成される。本第3実施例においても、樹脂絶縁層50中に存在する水に起因してCuイオンが生じる可能性が低く、第1実施例と同様の効果が得られる。
【0030】
[第4実施例]
第4実施例に記載の多層プリント配線板10は、第1実施例又は第2実施例と比較して導体回路の構造が異なる。すなわち、図7(C)に示すように、第4実施例の導体回路58は、絶縁膜48上に形成されているスパッタ膜46と、スパッタ膜46上の無電解めっき膜52と、無電解めっき膜52上の電解めっき膜56とからなる。図5(A)に示すように、スパッタ膜46は、絶縁膜48から順に、第1スパッタ膜47、第2スパッタ膜(図示せず)及び第3スパッタ膜49からなる。第1スパッタ膜47は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Taの窒化物又は炭化物のうちの少なくとも1種からなる。その中でも、Cuイオンのバリア性に優れるTiNが好ましい。第2スパッタ膜(図示せず)は、例えばTiからなる。第3スパッタ膜49は、例えばCuからなる。この場合、TiN膜とCu膜との間にTi膜を設けることで、TiN膜とCu膜との間の密着性を高めることができる。
なお、本実施例では、第1スパッタ膜47(TiN膜)は省略されてもよい。
【0031】
第4実施例の多層プリント配線板10の製造方法を以下に示す。
(1)図5(A)に示すように、樹脂部50と、樹脂部50上の絶縁膜48と、絶縁膜48上のスパッタ膜46とを有するフィルムFを準備する。さらに、スルーホール導体36及び第1導体回路を形成したコア基板30を用意する。
【0032】
(2)コア基板30上にフィルムFをラミネートし、樹脂絶縁層50を設ける(図5(B)参照)。
【0033】
(3)CO2ガスレーザにて、絶縁膜48、スパッタ膜46及び樹脂絶縁層50を貫通するビア用開口51を設ける(図5(C)参照)。引き続き、樹脂絶縁層50のビア用開口51表面に露出している可溶性粒子を溶解し粗化する。
【0034】
(4)第1樹脂絶縁層50の表層に無電解めっき膜52を設ける(図6(A))。
【0035】
(5)コア基板30に厚さ約15μmのめっきレジスト54を設ける(図6(B))。
【0036】
(6)電解めっきを施して電解めっき膜56を形成する(図6(C))。
【0037】
(7)モノエタノールアミンを含む溶液でめっきレジスト54を剥離除去する(図7(A))。
【0038】
(8)剥離しためっきレジスト下の無電解めっき膜52をエッチングにて溶解除去し、無電解めっき膜52と電解めっき膜56からなる第2導体回路58及びビア導体60を形成する(図7(B))。
【0039】
(9)第1実施例の(2)と同様にして樹脂絶縁層150を設ける(図7(C))。
本実施例においては、上記第2実施例の効果に加えて、樹脂絶縁層50に対する第2導体回路の密着性も高められる。
【0040】
[第5実施例]
第5実施例に記載の多層プリント配線板10は、導体回路の表面にSnを含む金属層69を有する(図8参照)。この金属層69は、導体回路上にSnをめっきすることで形成され、詳しくはSn及びCuからなる合金層である。金属層69上にはシランカップリング剤(図示せず)が塗布されている。そして、シランカップリング剤を介して導体回路と樹脂絶縁層との密着性が確保されている。このように、Sn及びCuからなる合金層を導体回路の表面に有する第5実施例においても、上述した第1実施例と同様、導体回路からのCuイオンの発生が抑制されるものと推測される。
【0041】
第1実施例、第2実施例、比較例の多層プリント配線板の線間のリーク電流を比較した実験結果について説明する。
図9(A)は比較例の構成を示す。基板30上に、第1実施例と同様にセミアディティブ法で3μm幅の導体回路58P、58Mを3μmの絶縁間隔を設けて配置した(L/S=3/3μm)。なお、導体回路58P、58Mは銅から形成されている。そして、フェノール系樹脂からなる樹脂絶縁層50を形成した。
【0042】
図9(B)は、第2実施例に対応する構成を示す。基板30上に、窒化珪素から成る絶縁膜48を形成した後、セミアディティブ法で3μm幅の導体回路58P、58Mを3μmの絶縁間隔を設けて配置した(L/S=3/3μm)。そして、フェノール系樹脂からなる樹脂絶縁層50を形成した。
【0043】
図9(C)は、第1実施例に対応する構成を示す。基板30上に、窒化珪素から成る絶縁膜48を形成した後、セミアディティブ法で3μm幅の導体回路58P、58Mを3μmの絶縁間隔を設けて配置した(L/S=3/3μm)。そして、導体回路58P、58Mの側面を含む表面にも窒化珪素から絶縁膜68を設ける。その後、フェノール系樹脂からなる樹脂絶縁層50を形成した。
【0044】
図9(A)、図9(B)、図9(C)の試験体(サンプル)を作製し、正電位を印加した導体回路58Pと、負電位を印加した導体回路58Mとの間のリーク電流を比較した。より詳しくは、各試験体に対してHAST試験(Highly Accelerated Temperature & Humidity Stress Test;温度130℃、85%加湿雰囲気、印加電圧5v)を行った後、リーク電流を測定した。各試験体とも、試験開始後25、50、75、100、150、200時間におけるリーク電流を測定し、その測定値を図10中の図表に示す。
【0045】
図10(A)は図9(A)に示す比較例を、図10(B)は図9(B)に示す第2実施例を、図10(C)は図9(C)に示す第1実施例の結果を表している。図10(A)の比較例に示すように、窒化珪素から成る絶縁膜48を形成せずに基板上に直接導体回路を形成した構成では、初期の状態から短時間の内に大きな配線間のリーク電流が流れ、また、バラツキも大きいことが分かる。一方、図9(B)の第2実施例に示すように絶縁膜48上に導体回路を形成した構成や、図9(C)に示すように絶縁膜48上に形成した導体回路の表面を更に絶縁膜で被覆した構成では、200時間を経過した後もリーク電流は増加せず、バラツキも小さいことも判明した。
【符号の説明】
【0046】
10 多層プリント配線板
30 基板
32 貫通孔
36 スルーホール
48 絶縁膜
50 樹脂絶縁層
58 導体回路
60 ビア導体
150 樹脂絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂絶縁材と、該第1樹脂絶縁材の表面上に形成されている第1導体回路と、前記第1樹脂絶縁材及び前記第1導体回路上に形成され、前記第1導体回路に達する開口部を有する第2樹脂絶縁材と、該第2樹脂絶縁材の表面上に形成されている絶縁膜と、該絶縁膜上に形成されている第2導体回路と、前記開口部の内部に形成されて前記第1導体回路と前記第2導体回路とを接続するビア導体とを備える多層プリント配線板であって:
前記絶縁膜は、前記開口部の側壁を除く前記第2樹脂絶縁材の表面上の全面に亘って形成されている多層プリント配線板。
【請求項2】
前記ビア導体と前記第1導体回路とは同種の材料からなる請求項1の多層プリント配線板。
【請求項3】
前記第2導体回路相互の絶縁間隔は10μm以下である請求項1の多層プリント配線板。
【請求項4】
前記絶縁膜は、窒化珪素、二酸化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化珪素、酸化フッ化珪素のすくなくとも1種類からなる無機材料の少なくとも1種類からなる請求項1の多層プリント配線板。
【請求項5】
前記第2導体回路は、前記第2樹脂絶縁材上に形成された第1導体膜と、該第1導体膜上に形成されている第2導体膜とからなる請求項1の多層プリント配線板。
【請求項6】
前記第1導体膜は無電解銅めっき膜であり、前記第2導体膜は電解銅めっき膜である請求項5の多層プリント配線板。
【請求項7】
前記第1導体膜はTi、Zr、Hf、V、Nb、Taの窒化物又は炭化物のうちの少なくとも1種を含む請求項5の多層プリント配線板。
【請求項8】
前記第2導体回路はセミアディティブ法により形成されている請求項4の多層プリント配線板。
【請求項9】
前記開口部の内壁の表面粗度は、前記第2樹脂絶縁材の上面側の表面粗度よりも大きい請求項1の多層プリント配線板。
【請求項10】
前記第2樹脂絶縁材の表面側は粗化されていない請求項1の多層プリント配線板。
【請求項11】
前記第2樹脂絶縁材の開口部の内部には、前記絶縁膜は形成されていない請求項1の多層プリント配線板。
【請求項12】
前記第2樹脂絶縁材は、平均粒径1.0μm以下の無機粒子を含む請求項1の多層プリント配線板。
【請求項13】
前記第2導体回路の側面を含む表面の少なくとも一部には、前記絶縁膜が形成されている請求項1の多層プリント配線板。
【請求項14】
前記第2導体回路の側面を含む表面の少なくとも一部には、Snからなる層が形成されている請求項1の多層プリント配線板。
【請求項15】
第1樹脂絶縁材上に第1導体回路を形成することと;
前記第1樹脂絶縁材及び前記第1導体回路上に第2樹脂絶縁材を形成することと;
前記第2樹脂絶縁材の表面上に絶縁膜を形成することと;
前記絶縁膜及び前記第2樹脂絶縁材を貫通し、前記第1導体回路に達する開口部を形成することと;
該絶縁膜上に第2導体回路を形成すると共に、前記開口部に前記第1導体回路と前記第2導体回路とを接続するビア導体を形成することと、
を備える多層プリント配線板の製造方法。
【請求項16】
前記第2導体回路は、セミアディティブ法により形成される請求項15の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項17】
前記絶縁膜をスプレー塗布により形成する請求項15の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項18】
前記ビア導体を前記第1導体回路と同種の材料より形成する請求項15の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項19】
前記第2導体回路の側面を含む表面上に、前記絶縁膜を設ける請求項15の多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−84655(P2012−84655A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228651(P2010−228651)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】