説明

多層中空容器

【課題】成形加工性、耐久性、耐衝撃性、剛性に優れ、且つバリア性、透過防止性及び容器内容液への金属溶出量が少ない低溶出性のポリオレフィン系樹脂を用いた多層中空容器の提供。
【解決手段】最外層、バリ回収層、接着層、バリア層及び最内層を含む多層中空容器であって、最外層及び最内層が温度190℃、荷重21.6kgのメルトフローレートが0.01〜100g/10分、密度が0.941g/cm以上0.980g/cm以下、オルゼン曲げ剛性が600MPa以上1300MPa以下の条件を満足するエチレン系重合体からなり、且つ最内層のエチレン系重合体は、鉄及びアルミニウム含有量が各々10重量ppm以下であり、層厚みの構成比が最外層10〜30%、バリ回収層30〜60%、接着層1〜15%、バリア層1〜15%、最内層20〜50%(ただし、全ての層厚み構成比の合計が100%)であることを特徴とする多層中空容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系重合体を用いた多層中空容器に関し、詳しくは、成形加工性、耐久性に優れ、且つ耐衝撃性及び剛性のバランスに優れ、バリア性、透過防止性及び低溶出性に優れた多種多層積層体からなる中空容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型容器分野では軽量化、省エネルギー化といった目的で製品容器のプラスチック化が活発に押し進められている。プラスチック材料としては、価格、強度、耐候性、耐薬品性及び環境問題といった観点からポリオレフィン樹脂が一般に用いられている。
ポリオレフィン樹脂の中でも、特にポリエチレンは、中空成形用樹脂として好適な樹脂であり、一般に比較的分子量分布が広く、溶融張力が大きく、均一延伸性が良好な材料として使用されている。
【0003】
大型容器の用途に最適な材料として、例えば、成形加工性や耐環境応力亀裂性(以下ESCRともいう)に優れた極限粘度が3.1〜5.0、密度が0.940〜0.960g/cmの新規なエチレン・α−オレフィン共重合体であるエチレン共重合体(例えば、特許文献1参照。)などが提案されている。しかしながら、これらの高密度ポリエチレン等を単独で用いた場合、内溶液によっては、バリア性が十分でなく、ガス成分や液成分が透過するといったケースがあり、環境面や安全面で不十分なことがある。
また、特定のエチレン系共重合体を用いた、ESCR、耐衝撃性及び剛性のバランスに優れ、且つバリア性に優れた、最外層、バリア層、接着層及びバリ回収層とからなる中空成形品(例えば、特許文献2参照。)が開示されているが、内溶液への金属等の溶出等があり、更なる改良が求められている。
【特許文献1】特開平2−53811号公報
【特許文献2】特開2004−136522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、成形加工性、耐久性、耐衝撃性、剛性に優れ、且つバリア性、透過防止性及び容器内容液への金属溶出量が少ない低溶出性のポリオレフィン系樹脂を用いた多層中空容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、最内層に金属溶出性の低いエチレン系重合体材料を使用することにより、成形加工性、耐久性、耐衝撃性、剛性に優れ、且つバリア性、透過防止性及び容器内容液への金属溶出量が少ない低溶出性に優れたポリオレフィン系多層中空容器が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、最外層、バリ回収層、接着層、バリア層及び最内層を含む多層中空容器であって、最外層が下記特性(1)〜(3)の条件を満足するエチレン系重合体からなり、最内層が下記特性(1)〜(3)の条件を満足し、且つ鉄及びアルミニウム含有量が各々10重量ppm以下であるエチレン系重合体からなり、層厚みの構成比が最外層10〜30%、バリ回収層30〜60%、接着層1〜15%、バリア層1〜15%、最内層20〜50%(ただし、全ての層厚み構成比の合計が100%)であることを特徴とする多層中空容器が提供される。
特性(1)温度190℃、荷重21.6kgのメルトフローレートが0.01〜100g/10分
特性(2)密度が0.941g/cm以上0.980g/cm以下
特性(3)オルゼン曲げ剛性が600MPa以上1300MPa以下
【0007】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、外側から最外層、バリ回収層、接着層、バリア層、接着層、最内層の順に積層されていることを特徴とする多層中空容器が提供される。
【0008】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、バリア層が、エチレンビニルアルコール樹脂からなることを特徴とする多層中空容器が提供される。
【0009】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、接着層が、高密度ポリエチレンを不飽和カルボン酸又はその誘導体0.01〜5重量%でグラフト変性したものであることを特徴とする多層中空容器が提供される。
【0010】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、最内層が、40℃、1000時間接触後の水への鉄溶出量が水に対して0.5重量ppb以下であるエチレン系重合体で構成されることを特徴とする多層中空容器が提供される。
【0011】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、最内層が、40℃、1000時間接触後の水へのアルミニウム溶出量が水に対して0.5重量ppb以下であるエチレン系重合体で構成されることを特徴とする多層中空容器が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多層中空容器は、最内層に金属溶出性の低いエチレン系重合体材料を使用し、成形加工性、耐久性、耐衝撃性、剛性に優れ、且つバリア性、透過防止性及び容器内容液への金属溶出量が少ないエチレン系重合体多層中空容器である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の多層中空容器は、最外層、バリ回収層、接着層、バリア層及び最内層を含む多層中空容器である。以下各層の構成及び容器の特徴、用途等について詳細に説明する。
【0014】
1.多層中空容器を構成する層
(1)最外層
本発明の多層中空容器の最外層を形成するエチレン系重合体(A)は、エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体で、α−オレフィン含有量が10重量%以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体である。ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンは、炭素数が3〜20、好ましくは3〜15、より好ましくは3〜10のα−オレフィンであり、具体的には、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ペンテン−1、デセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1等が挙げられ、特に、ブテン−1、ヘキセン−1、が好ましい。これらα−オレフィンは1種のみでもよく、また2種以上が併用されていてもよい。更に、ビニルシクロヘキサンあるいはスチレン及びその誘導体などのビニル化合物も使用することができる。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体中におけるα−オレフィンの含有量は、10重量%以下、好ましくは0.1〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%である。α−オレフィンの含有量がこれより多くなると、エチレン・α−オレフィン共重合体の剛性が低下するなどして好ましくない。
【0015】
本発明の最外層を形成するエチレン系重合体(A)は、下記の特性(1)〜(3)を満足する必要がある。
特性(1)メルトフローレート
本発明の最外層を形成するエチレン系重合体の温度190℃、荷重2.16kgのメルトフローレートは、0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜80g/10分、より好ましくは0.01〜50g/10分である。温度190℃、荷重2.16kgのメルトフローレートが0.01g/10分未満であると、押し出し成形時に押し出し量が不足し、成形不安定な状態となり実用的では無い。また、100g/10分を超えると押し出し成形時に中空体を形成するための溶融パリソン形成が溶融粘度不足のため不安定となり実用的では無い。温度190℃、荷重2.16kgのメルトフローレートは、エチレン系重合体の重合触媒の種類や重合時における重合温度や水素濃度の制御などの方法で調整することができる。
ここで、メルトフローレートはJIS−K7210に準拠して測定される値である。
【0016】
特性(2)密度
本発明の最外層を形成するエチレン系重合体の密度は、0.941g/cm以上0.980g/cm以下、好ましくは0.941g/cm以上0.970g/cm以下である。密度が0.941g/cm未満であると、中空成形品の剛性不足が顕在化し、0.980g/cmを超えると衝撃性能が不足する。密度は、エチレン系重合体の重合触媒の種類やα−オレフィンの種類や含有量の制御などの方法で調整することができる。
ここで、密度は、JIS−K7112に準拠し、ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/分の速度で降温し厚み2mmのシートを成形し、このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、密度勾配管に入れ密度を測定される値である。
【0017】
特性(3)オルゼン曲げ剛性
本発明の最外層を形成するエチレン系重合体のオルゼン曲げ剛性は、600MPa以上1300MPa以下、好ましくは700MPa以上1300MPa以下、より好ましくは800MPa以上1300MPa以下である。オルゼン曲げ剛性が600MPa未満であると、中空成形製品の剛性不足が顕在化し、1300MPaを超えると衝撃性能が不足する。オルゼン曲げ剛性は、エチレン系重合体の重合触媒の種類やα−オレフィンの種類や含有量の制御などの方法で調整することができる。
ここで、オルゼン曲げ剛性は、JIS−K7106に準拠し、スパン間30mm、つかみ部30mm、全曲げモーメントが6kgf・cmの条件で60℃/分で片持ち曲げ応力を測定することにより得られる値である。
【0018】
本発明の最外層に用いるエチレン系重合体(A)は、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の公知の各種触媒を用いてエチレンを主として重合することにより得られる。例えば、一般的には、チタン、ジルコニウム等の遷移金属化合物、マグネシウム化合物からなるチーグラー触媒、酸化クロム系触媒を代表とするフィリップス触媒及びジルコニウム、ハフニウム、チタン等の遷移金属化合物に少なくとも1つのシクロペンタジエニル基又は置換シクロペンタジエニル基を有するメタロセン系触媒を重合触媒として重合することにより得られる。
重合に際しては、エチレンを単独で重合するか、又はエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンから選ばれる1種又はそれ以上のコモノマーを所定の密度になるよう共重合することにより得られる。
【0019】
(2)最内層
本発明の多層中空容器の最内層を形成するエチレン系重合体(B)は、エチレン単独重合体、又は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体で、α−オレフィン含有量が10重量%以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体である。ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンは、炭素数が3〜20、好ましくは3〜15、より好ましくは3〜10のα−オレフィンであり、具体的には、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ペンテン−1、デセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1等が挙げられ、特に、ブテン−1、ヘキセン−1、が好ましい。これらα−オレフィンは1種のみでもよく、また2種以上が併用されていてもよい。更に、ビニルシクロヘキサンあるいはスチレン及びその誘導体などのビニル化合物も使用することができる。
エチレン・α−オレフィン共重合体中におけるα−オレフィンの含有量は、10重量%以下、好ましくは0.1〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%である。α−オレフィンの含有量がこれより多くなると、エチレン・α−オレフィン共重合体の剛性が低下するなどして好ましくない。
【0020】
本発明の最外層を形成するエチレン系重合体(B)は、下記の特性(1)〜(4)を満足する必要がある。
特性(1)メルトフローレート
本発明の最内層を形成するエチレン系重合体の温度190℃、荷重2.16kgのメルトフローレートは、0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜80g/10分、より好ましくは0.01〜50g/10分である。温度190℃、荷重2.16kgのメルトフローレートが0.01g/10分未満であると、押し出し成形時に押し出し量が不足し、成形不安定な状態となり実用的では無い。また、100g/10分を超えると押し出し成形時に中空体を形成するための溶融パリソン形成が溶融粘度不足のため不安定となり実用的では無い。温度190℃、荷重2.16kgのメルトフローレートは、エチレン系重合体の重合触媒の種類や重合時における重合温度や水素濃度の制御などの方法で調整することができる。
ここで、メルトフローレートはJIS−K7210に準拠して測定される値である。
【0021】
特性(2)密度
本発明の最内層を形成するエチレン系重合体の密度は、0.941g/cm以上0.980g/cm以下、好ましくは0.941g/cm以上0.970g/cm以下である。密度が0.941g/cm未満であると、中空成形品の剛性不足が顕在化し、0.980g/cmを超えると衝撃性能が不足する。密度は、エチレン系重合体の重合触媒の種類やα−オレフィンの種類や含有量の制御などの方法で調整することができる。
ここで、密度は、JIS−K7112に準拠し、ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/分の速度で降温し厚み2mmのシートを成形し、このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、密度勾配管に入れ密度を測定される値である。
【0022】
特性(3)オルゼン曲げ剛性
本発明の最内層を形成するエチレン系重合体のオルゼン曲げ剛性は、600MPa以上1300MPa以下、好ましくは700MPa以上1300MPa以下、より好ましくは800MPa以上1300MPa以下である。オルゼン曲げ剛性が600MPa未満であると、中空成形製品の剛性不足が顕在化し、1300MPaを超えると衝撃性能が不足する。オルゼン曲げ剛性は、エチレン系重合体の重合触媒の種類やα−オレフィンの種類や含有量の制御などの方法で調整することができる。
ここで、オルゼン曲げ剛性は、JIS−K7106に準拠し、スパン間30mm、つかみ部30mm、全曲げモーメントが6kgf・cmの条件で60℃/分で片持ち曲げ応力を測定することにより得られる値である。
【0023】
特性(4)鉄及びアルミニウム含有量
本発明の最内層を形成するエチレン系重合体は、鉄及びアルミニウム含有量が10重量ppm以下、好ましくは5重量ppm以下のものである。鉄及びアルミニウム含有量が10重量ppmを超えると容器内容物への金属溶出が大きくなり、容器として好ましくない。
また、鉄及びアルミニウム以外の金属、例えば、ナトリウム、マグネシウム、ケイ素、カルシウム、バナジウム、ニッケル、銅、亜鉛、バリウムについても金属としての合計量が300重量ppm以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の多層容器をクリーン容器として用いる場合は、最内層を形成するエチレン系重合体のアルミニウム含有量は、1重量ppm以下が好ましく、より好ましくは0.5重量ppm以下である。また、鉄含有量は、1重量ppm以下が好ましく、より好ましくは0.5重量ppm以下である。さらに、チタン含有量が1重量ppm以下、マグネシウム含有量が1重量ppm以下、クロム含有量が20重量ppm以下、ケイ素含有量が250重量ppm以下のものがクリーン容器適性が向上しより好ましい。
ここで、鉄及びアルミニウム含有量は、ICP−MS法により測定される。測定はサンプルに硫酸添加、乾式灰化後ICP−MSにより行う。
【0025】
本発明の多層中空容器の最内層に用いるエチレン系重合体は、上記のように鉄及びアルミニウム含有量が少ないので、水への鉄分、アルミニウム分の溶出量が非常に少なくすることができる。特に、40℃、1000時間接触後の水への鉄溶出量が水に対して0.5重量ppb以下であることが好ましく、また、40℃、1000時間接触後の水へのアルミニウム溶出量が水に対して0.5重量ppb以下であることが好ましい。
ここで、水への鉄、アルミニウムの溶出量は、金属が溶出した水を濃縮、酸添加、乾式灰化後ICP−MSにより測定する。具体的には、0.5μm以下の粒子が1mlあたり1個以下の超純水を容器いっぱいに入れ、よく振った後、水を捨て、この操作を5回繰返した後、超純水を容器いっぱい入れて40℃、1000時間放置後、超純水中の金属を測定する。金属測定は、上記超純水の一部を採取し、加熱蒸散させ、硫酸及び硝酸にて加熱分解後、純水で希釈し、ICP−MS法により測定する。以上の操作はクリーンな環境で行なう。
【0026】
本発明の最内層に用いるエチレン系重合体(B)は、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の公知の各種触媒を用いてエチレンを主として重合することにより得られる。例えば、一般的には、チタン、ジルコニウム等の遷移金属化合物、マグネシウム化合物からなるチーグラー触媒、酸化クロム系触媒を代表とするフィリップス触媒及びジルコニウム、ハフニウム、チタン等の遷移金属化合物に少なくとも1つのシクロペンタジエニル基又は置換シクロペンタジエニル基を有するメタロセン系触媒を重合触媒として重合することにより得られる。
重合に際しては、エチレンを単独で重合するか、又はエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンから選ばれる1種又はそれ以上のコモノマーを所定の密度になるよう共重合することにより得られる。
エチレン系重合体(B)中の触媒残渣等の混入量は、0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下に止めるべきである。この混入量が0.2重量%を超えると、金属溶出量が多くなる。
金属含有量の少ないエチレン系重合体(B)は、エチレン系重合体(A)の製造触媒量より少ない量の触媒を使用するか、エチレン重合触媒残渣失活剤以外の添加剤は使用しない若しくはごく少量使用することにより製造することができる。
【0027】
本発明のエチレン系重合体は、エチレン重合触媒残渣失活剤以外の添加剤を含まないことが望ましく、エチレン重合触媒残渣失活剤としては金属石鹸等が挙げられ、特にステアリン酸カルシウム以外の添加剤を含まないものが好ましい。
【0028】
本発明のエチレン系重合体は、エチレン重合触媒残渣失活剤以外の添加剤を含まないことが望ましいが、一種又は二種以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用することができる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤とは、ラジカル捕捉機能を有し立体的に束縛された構造を有するフェノール化合物であり、フェノールの水酸基に対してオルト位置にt−ブチル基のようなバルキーなアルキル基が少なくとも1個置換したアルキルフェノール構造を分子内に有する化合物が好ましい。使用されるヒンダードフェノール系酸化防止剤は、その金属含有量が10重量ppm以下であることが好ましい。金属含有量が10重量ppmを超えると、容器内容物に対して金属の溶出が顕著となり、クリーン容器として不都合である。使用されるヒンダードフェノール系酸化防止剤に含有されうる金属としては、周期表第8、9、10又は13族の金属が例示され、これらの金属含有量が10重量ppm以下であることが好ましい。金属含有量が10重量ppm以下のヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることにより、容器内容物への金属溶出量が減少する。エチレン系重合体に対するヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量は、重量比で0.01〜0.25重量%、好ましくは、0.02〜0.25重量%である。エチレン系重合体に対するヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量が0.01重量%未満では、成形時に発熱及び酸化劣化を起こしやすい。また、その添加量が0.25重量%を超えると金属溶出量が多くなる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の中で特に好ましいのは、テトラキス−[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナメート)]メタン(IRGANOX1010)、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IRGANOX1076)が挙げられる。
【0029】
本発明のエチレン系重合体は、エチレン重合触媒残渣失活剤以外の添加剤を含まないことが望ましいが、一種又は二種以上のヒンダードアミン系光安定剤を使用することができる。ヒンダードアミン系光安定剤(以下、HALSと称することがある)とは、立体的に束縛された構造を有するアミン化合物であり、特開平7−286052号公報などに示される化合物であり、特に分子量が250以上で4位に置換基を有する2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン誘導体が挙げられ、中でもピペリジンの2位および6位の炭素上のすべての水素がメチル基で置換された構造を有する化合物が好ましい。使用されるヒンダードアミン系光安定剤は、その金属含有量が10重量ppm以下であることが好ましい。金属含有量が10重量ppmを超えると、容器内容物に対して金属の溶出が顕著となり、クリーン容器として不都合である。使用されるヒンダードアミン系光安定剤に含有されうる金属としては、周期表第8、9、10または13族の金属が例示され、これらの金属含有量が10重量ppm以下であることが好ましい。金属含有量が10重量ppm以下のヒンダードアミン系酸化防止剤を用いることにより、容器内容物への金属溶出量が減少する。使用されるヒンダードアミン系光安定剤は、その平均分子量が250以上、好ましくは1800以上、更に好ましくは2000以上のものを使用することが適当である。ヒンダードアミン系光安定剤の平均分子量が250未満のものでは、金属溶出量が多くなる。エチレン系重合体に対するヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、それら重量比で、0.15〜0.25重量%、好ましくは0.17〜0.23重量%、さらに好ましくは0.18〜0.22重量%である。エチレン系重合体に対するヒンダードアミン系光安定剤の添加量が0.15重量%未満では、耐候性が悪く容器としての性能が低下する傾向がある。また、その添加量が0.25重量%を超える時には、金属溶出量が多くなる。
ヒンダードアミン系光安定剤の中で特に好ましいのは、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]重縮合物(CHIMASSORB944LD)が挙げられる。
【0030】
(3)バリア層
本発明の多層中空容器のバリア層を形成する樹脂(C)は、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等から選ばれるものであるが、特に、エチレンビニルアルコール樹脂からなることが好ましい。エチレンビニルアルコール樹脂は、ケン化度が93%以上、望ましくは96%以上でエチレン含量が25〜50モル%(樹脂の特徴、組成比、分子量などを記載)であることがより好ましい。
【0031】
(4)接着層
本発明の多層中空容器の接着層を形成する樹脂(D)は、不飽和カルボン酸又はその誘導体によりグラフト変性した高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン等から選ばれるものであるが、特に不飽和カルボン酸又はその誘導体によりグラフト変性した高密度ポリエチレンからなることが好ましい。
不飽和カルボン酸又はその誘導体の含有量は0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%、さらに好ましくは、0.01〜1重量%である。グラフト変性量が、0.01重量%未満であると十分な接着性能が発現せず、5重量%を超えると接着性に寄与しない不飽和カルボン酸が接着性に悪影響を与える。
【0032】
(5)バリ回収層
本発明の多層中空容器のバリ回収層の樹脂は、前記最外層を形成するエチレン系重合体(A)、最内層を形成するエチレン系重合体(B)、バリア層を構成する樹脂(C)及び接着層を構成する樹脂(D)を含む組成物である。各成分の配合量は(A)成分10〜30重量%、(B)成分30〜50重量%、(C)成分1〜15重量%、(D)成分1〜15重量%であるのが望ましい。
(A)〜(D)の各成分は新品を使用することもできるし、(A)〜(D)成分からなる各層を含む多層積層体のスクラップ、バリ等の不要部分を回収、再利用して、このようなリサイクル品を各成分の成分原料とすることもできる。リサイクル品を使用する場合、(A)〜(D)のすべての成分を全量リサイクル品から供給することもできるし、新品と混合して使用することもできる。
多層積層体を作製する際に発生した成形バリや未使用パリソンをリサイクル材として使用する場合、各種成分の相溶性が低下することがあるので、相溶化剤や本発明の接着層を構成する樹脂を更に混合してもよい。
【0033】
(6)各層の厚み比
本発明の多層中空容器の各層の厚み構成は、厚み比で、最外層が10〜30%、最内層20〜50%、バリア層1〜15%、接着層1〜15%、及びバリ回収層30〜60%(ただし全ての層厚み構成比の合計が100%)である。さらに詳細説明する。
【0034】
最外層の層構成比は、10〜30%、好ましくは10〜25%、より好ましくは10〜20%である。最外層の層構成比が10%未満であると、衝撃性能が不足し、30%を超えると、中空成形製品の成形安定性が損なわれる。
最内層の層構成比は、20〜50%、好ましくは35〜50%、より好ましくは40〜50%である。最内層の層構成比が20%未満であると、中空成形製品の剛性不足が顕在化し、50%を超えると、中空成形製品の成形安定性が損なわれる。
バリア層の層構成比は、1〜15%、好ましくは1〜10%、より好ましくは1〜5%である。バリア層の層構成比が1%未満であると、バリア性能が不満足であり、15%を超えると、衝撃性能が不足する。
接着層の層構成比は、1〜15%、好ましくは1〜10%、より好ましくは1〜5%である。接着層の層構成比が1%未満であると、接着性能に不安が生じ、15%を超えると、中空成形製品の剛性不足が顕在化する。
バリ回収層の層構成比は、30〜60%、好ましくは35〜50%、より好ましくは35〜45%である。バリ回収層の層構成比が30%未満であると、中空成形製品の成形安定性が損なわれ、60%を超えると、衝撃性能が不足する。
【0035】
2.多層中空容器
本発明の多層中空容器は、外側から最外層、バリ回収層、接着層、バリア層、接着層、最内層の順に積層されていることが好ましい。バリア層を接着層で挟むことにより、高度なバリア性が発揮される。最外層と接着層の間にバリ回収層を有することにより、コストダウンという効果が発揮される。
【0036】
また、本発明の多層中空容器は、40℃、1000時間接触後の水への鉄溶出量が水に対して0.5重量ppb以下にすることができる。鉄溶出量が0.5重量ppbを超えるものは、クリーン性を低下させる傾向にある。また、40℃、1000時間接触後の水へのアルミニウム溶出量が水に対して0.5重量ppb以下にすることができる。アルミニウム溶出量が0.5重量ppbを超えるものは、クリーン性を低下させる傾向にある。
【0037】
さらに、本発明の多層中空容器には、所望により酸化防止剤、中和剤、耐候剤等の各種添加剤を添加できる。しかし、これらの添加剤はそれぞれ0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下に止めるべきである。これら添加剤が0.2重量%を超えると、金属溶出量が多くなる。
【0038】
本発明の多層中空容器は、ブロー成形法によりブロー成形品、特に大型ブロー成形品とすることができ、得られたブロー成形品は表面性、剛性、耐衝撃性等の機械強度及びクリーン性及び耐候性に優れ、コンテナ容器、クリーン容器として好適に用いることができる。また、本発明の容器は、ドラムのほか、パレットコンテナ、燃料タンクにも適している。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた測定法、樹脂は以下の通りである。
【0040】
1.各種測定方法
(1)温度190℃、荷重21.6kgのメルトフローレート:JIS−K7210に準拠し、温度190℃、荷重21.6kgの条件で測定した。
(2)密度:JIS−K7112に準拠し、ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/分の速度で降温し厚み2mmのシートを成形し、このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、密度勾配管に入れ密度を測定した。
(3)オルゼン曲げ剛性:JIS−K7106に準拠し、東洋精機(株)製のスティフネスメーターにて、スパン間30mm、つかみ部30mm、全曲げモーメントが6kgf・cmの条件で60℃/分で片持ち曲げ応力を測定した。
なお、試験片は、ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/分の速度で降温し厚み2mmのシート成形した。このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、長さ85mm、幅15mmになるようにダンベル刃型で打ち抜いて試験片とした。
(4)混合溶媒透過性:容器に2,2,4−トリメチルペンタン45容量部、トルエン45容量部及びエチルアルコール10容量部の混合溶媒を入れ、試験温度40℃で、1週間状態調整実施した。その後、2,2,4−トリメチルペンタン45容量部、トルエン45容量部及びエチルアルコール10容量部の混合溶媒を入れ替え、重量の経時的変化を測定した。
(5)落下衝撃性:内容積が20L以上の容器については、容器に不凍液を満注し、その容器をマイナス18℃に冷却し、所定の高さからコンクリート面に落下させ、割れ発生の高さを測定評価した。内容積が20L未満の容器については、容器に不凍液を満注し、その容器をマイナス18℃に冷却し、2mの高さからコンクリート面に10回落下させ、異常の有無をチェックした。異常がないものを○、割れ等の異常が発生したものを×とした。
(6)座屈強度:円筒状(柱状)の容器を垂直に立て、圧縮試験機にて50mm/分の速度で容器の上部から下部に向けて垂直方向に圧縮し、最大圧縮強度を測定した。
(7)酸素バリア性:小型多層中空成形機にて100mlボトルを作製した。酸素透過率測定装置(MOCON社製OX−TRAN 10/50)を使用し、JIS−K7126に準じて測定した。
(8)窒素バリア性:小型多層中空成形機にて100mlボトルを作製した。混合ガス透過度テスター(LYSSY社製GPM−500)を使用し測定した。
(9)金属溶出量:0.5μm以下の粒子が1mlあたり1個以下の超純水を容器いっぱいに入れ、よく振った後、水を捨てた。この操作を5回繰返した後、超純水を容器いっぱい入れて40℃、1000時間放置後、超純水中の金属を測定した。金属測定は、上記超純水の一部を採取し、加熱蒸散させ、硫酸及び硝酸にて加熱分解後、純水で希釈し、ICP−MS法により測定した。以上の操作はクリーンな環境で行なった。
(10)ボトルESCR法:450ml容量の口部付円筒状の中空容器(重量300g、外径80mm、高さ100mmの円筒本体に、外形30mm、高さ15mmの口部が丸み付きで結合した構造の瓶型容器、厚さ1mm)10本の各々にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(GFA社製 イゲパール)10重量%水溶液200mlを充填、密栓し、65℃のオーブンに入れ、容器内部に0.35kgf/cmの圧力をかけた状態で、容器5本にクラックが発生するまでの時間を測定した。
(11)大型容器耐久性:容器にポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(GFA社製 イゲパール)10重量%水溶液100L入れ密封し、40℃で1年放置し、異常の有無をチェックした。異常がないものを○、クラック又は変色等の異常が発生したものを×とした。
(12)成形加工性:成形中の押し出し機トラブルの発生有無をチェックした。異常がないものを○、圧力上昇等の異常が発生したものを×とした。
(13)金属含有量:サンプルに硫酸添加、乾式灰化後ICP−MS法により測定した。
【0041】
2.使用樹脂
(1)エチレン系重合体(PE−1)
温度190℃、荷重21.6kgのメルトフローレートが3.0g/10分、密度が0.954g/cm、オルゼン曲げ剛性が1200MPa、鉄含有量が15重量ppm、アルミニウム含有量が15重量ppmである高密度ポリエチレンを使用した。
(2)エチレン系重合体(PE−2)
温度190℃、荷重21.6kgのメルトフローレートが3.0g/10分、密度が0.954g/cm、オルゼン曲げ剛性が1200MPa、鉄含有量が0.1重量ppm、アルミニウム含有量が0.2重量ppmである高密度ポリエチレンを使用した。
(3)エチレン系重合体(PE−3)
温度190℃、荷重21.6kgのメルトフローレートが5.0g/10分、密度が0.957g/cm、オルゼン曲げ剛性が1350MPa、鉄含有量が0.1重量ppm、アルミニウム含有量が0.2重量ppmである高密度ポリエチレンを使用した。
(4)接着性樹脂(MAPE)
無水マレイン酸が0.1重量%グラフトされた日本ポリエチレン社製無水マレイン酸変性ポリエチレンを使用した。
(5)バリア性樹脂(EVOH)
クラレ社製エチレンビニルアルコール樹脂エバールを使用した。
【0042】
(実施例1)
以下の内容で200Lドラムを成形し、性能を評価した。結果を表1に示す。
(1)使用成形機
5種6層の大型多層ブロー成形機(日本製鋼所社製NB150)を用い、押し出し機スクリューと層構成は以下の条件で成形した。
最外層(外側から1層目)系90mmφ、L/D22
第2層(外側から2層目)系120mmφ、L/D28
第3層(外側から3層目)系50mmφ、L/D22
第4層(外側から4層目)系50mmφ、L/D28
第5層(外側から5層目)系50mmφ、L/D22
最内層(外側から6層目)系120mmφ、L/D241
(2)成形条件
成形温度210℃、ブロー金型冷却温度20℃、冷却時間180秒の条件にてドラム重量10kg、容量200Lの5種6層多層ドラムを成形した。ドラムの形状は、胴体外径580mm、総高さ970mm、胴体肉厚3.6mmの標準的なクローズドタイプのものを成形した。
なお、層比率は容器の厚み比率を観察しながら押し出し機のスクリュー回転数を調整し最外層が10%、第2層が40%、第3層が3%、第4層が1%、第5層が3%、最内層が43%となるようにした。
(3)使用樹脂
各層に使用した樹脂は以下の通りである。
最外層:エチレン系重合体(PE−1)
第2層:エチレン系重合体(PE−1)10重量部、接着性樹脂(MAPE)6重量部、バリア性樹脂(EVOH)1重量部、エチレン系重合体(PE−2)41重量部の樹脂組成物
第3層:接着性樹脂(MAPE)
第4層:バリア性樹脂(EVOH)
第5層:接着性樹脂(MAPE)
最内層:エチレン系重合体(PE−2)
上記の結果、成形加工性、座屈強度(剛性)、落下衝撃性(耐衝撃性)、溶媒透過防止性、低溶出性、ガスバリア性、耐久性に優れた多層中空容器が得られた。
【0043】
(実施例2)
最外層が10%、第2層が40%、第3層が3%、第4層が3%、第5層が3%、最内層が41%となるようにした以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1に示す。
成形加工性、座屈強度(剛性)、落下衝撃性(耐衝撃性)、溶媒透過防止性、低溶出性、ガスバリア性、耐久性に優れた多層中空容器が得られた。
【0044】
(実施例3)
最外層が10%、第2層が40%、第3層が3%、第4層が5%、第5層が3%、最内層が39%となるようにした以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1に示す。
成形加工性、座屈強度(剛性)、落下衝撃性(耐衝撃性)、溶媒透過防止性、低溶出性、ガスバリア性、耐久性に優れた多層中空容器が得られた。
【0045】
(比較例1)
第2層、第3層、第4層、第5層及び最内層に、最外層と同じ樹脂(PE−1)を使用した以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1に示す。容器の溶媒透過防止性が低かった。
【0046】
(比較例2)
最内層の樹脂として、エチレン系重合体(PE−3)を使用した以外は実施例2と同様に行なった。結果を表1に示す。容器の大型容器耐久性が低かった。
【0047】
【表1】

【0048】
(実施例4)
以下の内容で450mlボトルを成形し、性能を評価した。結果を表2に示す。
(1)使用成形機
5種6層の小型多層ブロー成形機(ベクム社製)を用い、押し出し機スクリューと層構成は以下の条件で成形した。
最外層(外側から1層目)系40mmφ、L/D22
第2層(外側から2層目)系40mmφ、L/D22
第3層(外側から3層目)系20mmφ、L/D20
第4層(外側から4層目)系20mmφ、L/D20
第5層(外側から5層目)系20mmφ、L/D20
最内層(外側から6層目)系40mmφ、L/D22
(2)成形条件
成形温度210℃、ブロー金型冷却温度20℃、冷却時間30秒の条件にてボトル重量30g、容量450ccの多層ボトルを成形した。なお、層比率は容器の厚み比率を観察しながら押し出し機のスクリュー回転数を調整し最外層が10%、第2層が30%、第3層が10%、第4層が10%、第5層が10%、最内層が30%となるようにした。
(3)使用樹脂
各層に使用した樹脂は以下の通りである。
最外層:エチレン系重合体(PE−1)
第2層:エチレン系重合体(PE−1)10重量部、接着性樹脂(MAPE)6重量部、バリア性樹脂(EVOH)1重量部、エチレン系重合体(PE−2)41重量部の樹脂組成物
第3層:接着性樹脂(MAPE)
第4層:バリア性樹脂(EVOH)
第5層:接着性樹脂(MAPE)
最内層:エチレン系重合体(PE−2)
上記の結果、成形加工性、座屈強度(剛性)、落下衝撃性(耐衝撃性)、溶媒透過防止性、低溶出性、ガスバリア性、耐久性に優れた多層中空容器が得られた。
【0049】
(実施例5)
最外層が10%、第2層が25%、第3層が10%、第4層が20%、第5層が10%、最内層が25%となるようにした以外は実施例4と同様に行なった。結果を表2に示す。成形加工性、座屈強度(剛性)、落下衝撃性(耐衝撃性)、溶媒透過防止性、低溶出性、ガスバリア性、耐久性に優れた多層中空容器が得られた。
【0050】
(比較例3)
第2層、第3層、第4層、第5層及び最内層に、最外層と同じ樹脂(PE−1)を使用した以外は実施例4と同様に行なった。結果を表2に示す。容器の溶媒透過防止性、ガスバリア性が低かった。
【0051】
(比較例4)
最内層の樹脂として、エチレン系重合体(PE−3)を使用した以外は実施例5と同様に行なった。結果を表2に示す。容器のボトルESCR(耐久性)が低かった。
【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の多層中空容器を用いることにより、成形加工性、剛性、耐衝撃性等の機械強度、透過防止性、クリーン性及び耐久性に優れるコンテナ容器、特に大型ブロー成形クリーン容器を好適に得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層、バリ回収層、接着層、バリア層及び最内層を含む多層中空容器であって、最外層が下記特性(1)〜(3)の条件を満足するエチレン系重合体からなり、最内層が下記特性(1)〜(3)の条件を満足し、且つ鉄及びアルミニウム含有量が各々10重量ppm以下であるエチレン系重合体からなり、層厚みの構成比が最外層10〜30%、バリ回収層30〜60%、接着層1〜15%、バリア層1〜15%、最内層20〜50%(ただし、全ての層厚み構成比の合計が100%)であることを特徴とする多層中空容器。
特性(1)温度190℃、荷重21.6kgのメルトフローレートが0.01〜100g/10分
特性(2)密度が0.941g/cm以上0.980g/cm以下
特性(3)オルゼン曲げ剛性が600MPa以上1300MPa以下
【請求項2】
外側から最外層、バリ回収層、接着層、バリア層、接着層、最内層の順に積層されていることを特徴とする請求項1記載の多層中空容器。
【請求項3】
バリア層が、エチレンビニルアルコール樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層中空容器。
【請求項4】
接着層が、高密度ポリエチレンを不飽和カルボン酸又はその誘導体0.01〜5重量%でグラフト変性したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層中空容器。
【請求項5】
最内層が、40℃、1000時間接触後の水への鉄溶出量が水に対して0.5重量ppb以下であるエチレン系重合体で構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層中空容器。
【請求項6】
最内層が、40℃、1000時間接触後の水へのアルミニウム溶出量が水に対して0.5重量ppb以下であるエチレン系重合体で構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層中空容器。

【公開番号】特開2007−152712(P2007−152712A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350412(P2005−350412)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】