説明

多層口腔内崩壊錠剤

この発明は、少なくとも2層の分離層を具え、そのうちの1層は少なくとも1種の、アセトアミノフェンなどのオピオイドの酸化を促進する活性剤を含み、その他の層は、少なくともオピオイド及び少なくとも結合剤によりコートされた不活性コアを含む顆粒を含み、また、かかるオピオイドコーティングは、胃液に溶解し得る化合物を含むサブコートによりコートされており、かかるサブコートは、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートユニット及び任意選択的に孔形成剤を含むポリマー又はコポリマーを含む味覚マスキングコーティングによりコートされている、口腔内崩壊錠剤を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多層口腔内崩壊錠剤と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多様な多層口腔内崩壊錠剤が市場にて販売されている。これらの錠剤は、崩壊剤及び薬学的に有効な成分(「有効成分」)を含み、唾液との接触の際に、3分以内、一般的には60秒以内に咀嚼活動することなく崩壊又は溶解し、容易に嚥下し得る小粒子の懸濁液となる。
【0003】
容易に嚥下されると、かかる有効成分を含む粒子は、それを、胃又は胃腸間の上部に放出する。
【0004】
この種の錠剤は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7及び特許文献8に記載されている。
【0005】
顆粒とも呼ばれている小粒子は、有効成分を含んでおり、苦い又は不快な味を有する。この場合、有効成分すなわち顆粒をフィルムコートすることにより、口の中で悪い味となることを防止することができる。かかるコーティングを提供することにより、口の中で有効成分が早期に放出してしまうことを防止したり、胃の中での遅延性の放出を確実なものとしたりできる。
【0006】
口腔内崩壊錠剤は、以下を除外するわけでは無いが、水とともに飲み込む必要が無いことから、活性剤を摂取するに際し、便利な方法である。
【0007】
また、その使用が容易であることから、口腔内崩壊錠剤は、外来治療に完全に適しており、とりわけ、液体と同時に摂取したとしても、錠剤又はゲルカプセルを飲み込むことが困難、更には不可能である、ある種の患者、特には老人又は子供に適している。
【0008】
この点に関しては、かかる困難を人口の50%もが経験していると見積もられており、所定の医薬品が取り込まれず、そのことが、治療の有効性に大きな影響を与える結果となっている(非特許文献1)。
【0009】
これら嚥下困難は、複数の医薬品を取り込まなければならない場合に、その投与の回数分だけ、明らかに増幅する。
【0010】
所定の組合せの活性物質を具える口腔分散性錠剤は、慢性的な病気の場合であって、長期に亘る治療時に、患者の適応性を改善するための選択に対する解決策を提供するものである。
【0011】
例えば、中等度から重度の痛みに対応するために、オキシコドン及びアセトアミノフェンなどのオピオイドを含む口腔内崩壊錠剤を提供することが極めて望ましい。
【0012】
オキシコドンとアセトアミノフェンとの組合せを含む、従来技術の錠剤は、昨今、ENDO PHARMACEUTICALS社から登録商標Percocetとして市場にて販売されている。
【0013】
しかし、特には、高湿又は残余の湿度条件下にて、直接的な相互作用により、アセトアミノフェンがオキシコドンなどのアヘン材の分解を促進することが発見されたことから、オキシコドン及びアセトアミノフェンを含む口腔内崩壊錠剤の調整は困難であることが判明している。
【0014】
また、口腔内崩壊錠剤内にて味覚遮断された顆粒中で、アセトアミノフェン結晶を塩酸オキシコドンによりコートすると、アセトアミノフェンの放出がゆっくりになることが観察された。
【0015】
この発明の目的から、「口腔内崩壊錠剤」という用語は、口の中で、咀嚼することなく、唾液と接触してから60秒以内、好適には40秒以内に崩壊又は溶解し、容易に飲み込むことが出来る懸濁液を形成する錠剤を言うものである。
【0016】
ここでいう崩壊時間は、舌の上に錠剤が置かれてから、錠剤の崩壊又は溶解した懸濁液が飲み込まれるまでの間の時間に対応したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第548356号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第636364号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1003484号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1058538号明細書
【特許文献5】国際公開第98/46215号パンフレット
【特許文献6】国際公開第00/06126号パンフレット
【特許文献7】国際公開第00/27357号パンフレット
【特許文献8】国際公開第00/51568号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2004/110411号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】H. Seager, 1998, J. Pharm. Pharmacol., 50, 375-382
【非特許文献2】Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1985, p.1418.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかるに、実質的な分解を受けることなく、オキシコドンといったペルオキシド感受性活性剤がアセトアミノフェンと共に安定して含まれている、口腔内崩壊錠剤の需要が依然としてある。
【0020】
この発明の発明者は、かかる需要は、オピオイド又は、同一の多層口腔内崩壊錠剤の分離層中のオキシコドンなどのオピオイドの酸化を促進するアセトアミノフェン又はその他の活性剤を調製することにより満たされることを発見した。
【0021】
かかる多層錠剤は、既に特許文献9に開示されている。それは、含有物が不均一となる欠点のない、多様な活性物質の組み合わせを可能とする口腔分散性錠剤により構成されている。この錠剤の設計は、互いに適合しない(オピオイドである)塩酸オキシコドン及び(アセトアミノフェンである)パラセタモールなどの、2種の有効成分の調製を可能としている。
【0022】
塩酸オキシコドンが苦味を有することから、特許文献9の教示にならうと、一般的には、EUDRAGID(登録商標) E100としてROHM PHARMA POLYMERS(Degussa)から販売されているアクリレート共重合体に基づく味覚マスキングコーティングをそれに対し直接的に適用することが好ましい。
【0023】
しかし、出願人は、予期することなく、EUDRAGID E100を直接にコーティングした塩酸オキシコドンを含む口腔分散性錠剤中のオキシコドン含有量が、時間とともに減少する傾向にあり、このことは、塩酸オキシコドンの分解によるものであり、かかる分解は、如何なる理論にも縛られることを意味することなく、塩酸オキシコドンのアンモニウム官能基の水素原子と、EUDRAGIT ElOOのメタクリル酸ジメチルアミノエチルユニットの第三級アミンの窒素原子との相互作用によるものであるという仮説があることを見つけた。
【0024】
そのことから、その口内での早過ぎる放出を回避しつつも、アセトアミノフェンの存在下にてオキシコドンなどのオピオイドの安定した苦味の無い形態のものを口から胃腸間に届ける手段に対する需要が依然としてある。
【0025】
そのことに伴い、多層急速崩壊錠剤中のオキシコドンの分解を抑制するため、広範な研究が行なわれ、本願発明が見出された。
【課題を解決するための手段】
【0026】
しかるに、この発明は、少なくとも2層の分離層を具え、そのうちの1層は少なくとも1種の、アセトアミノフェンなどのオピオイドの酸化を促進する活性剤を含み、その他の層は、少なくともオピオイド及び少なくとも結合剤によりコートされた不活性コアを含む顆粒を含み、また、かかるオピオイドコーティングは、胃液に溶解し得る化合物を含むサブコートによりコートされており、かかるサブコートは、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートユニット及び任意選択的に孔形成剤を含むポリマー又はコポリマーを含む味覚マスキングコーティングによりコートされている、口腔内崩壊錠剤に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
また、多層口腔内崩壊錠剤の層数は、患者に許容可能な、錠剤の最終的な厚みにより制限されており、一般には3層を超えない。
【0028】
この発明の第一の変異形態では、口腔内崩壊錠剤は、少なくとも1種の活性物質を夫々の層に含む、2層の錠剤である。
【0029】
この発明の第二の変異形態では、口腔内崩壊錠剤は、3層の錠剤である。このとき、夫々の層は、活性物質、又は、1層は賦形剤を含む。
【0030】
また、かかる賦形剤のみを含む層が、(アセトアミノフェンなどの)活性物質及びオピオイドを夫々に含む2層の間に挿入されることが好ましい。
【0031】
オピオイドは、アルフェンタニル、allylprodine、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルヒネ、デキソトロモラミド(dextromoramide)、デゾシン、ジアンプロミド(diampromide)、ジアモルフォン(diamorphone)、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノクサドール(dimenoxadol)、ジメペプタノール(dimepheptanol)、ジメチルチアンブテン、ジオキサペチル酪酸塩、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアブテンエチルモルヒネ、エトニタゼン、フェンタニール、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメサドン、ケトベミドン、レボルファン、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メサドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファン、ノルメタドン、ナロルフィン、ナイブフェン(naibuphene)、ノルモルヒネ、ノルピパノン(norpipanone)、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パパバレタン(papaveretum)、ペンタゾシン、フェナドキソン(phenadoxone)、フェノ・モルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピニトラミド(piritramide)、プロペプタジン(propheptazine)、プロメドール(promedol)、プロペリジン(properidine)、プロポキシフェン、スフェンタニル、チイイジン(tiiidine)、トラマドール、それらの混合物、又は、それらの薬学的に教養可能な塩からなる群より選択することができる。
【0032】
ここでいう「薬学的に許容可能」という用語は、毒性、刺激、アレルギー応答、又はその他の過剰な問題、又は合併症が無く、適当な利益/危険率にある、人間又は動物の組織との接触への使用に適した、一般的に薬学的に許容されていることに従う、化合物、材料、組成物及び/又は剤型を言うものである。
【0033】
ここでいう「薬学的に許容可能な塩」という用語は、塩基性の薬学的に活性を有する化合物が、その塩基性又は酸性塩に変換された、上記化合物の派生物を言うものである。薬学的に活性を有する塩類の例は、アミンなどの塩基性残基の有機酸又は無機酸塩、カルボン酸などのアルカリ性派生物又は酸性残基の有機酸塩、及びその類似物を特には含む。薬学的に許容可能な塩は、例えば、非毒性無機又は有機酸により形成される、標準的な非毒性塩類又は、塩基性化合物の第四級アンモニウム塩からなる。かかる標準的な非毒性塩は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルホン酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、ホウ酸及びその類似物などの無機酸に由来するもの、並びに、アミノ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモイン酸(pamoic acid)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルコン酸、マロン酸、マンデル酸、グルタミン酸、グルタル酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、カンポスルホンサン酸、シュウ酸、イセチオン酸、グリセロリン酸、パントテン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、テレフタル酸及びその類似物などの有機酸から調合された塩を含む。
【0034】
この発明の薬学的に許容可能な塩は、一般的な手法により、酸性又は塩基性のフラクションを含む塩基性治療化合物から合成することができる。一般に、これらの塩は、水又は有機溶媒、或いは、溝及び有機溶媒の混合物中の、適当な塩基又は酸と、所定量の遊離酸又は遊離塩基系とを、反応させることにより調合される。
【0035】
また、一般的には、非水溶媒体であることが好ましい。適当な塩のリストは、非特許文献2に記載されている。
【0036】
好適なオピオイドはオキシコドンであり、それをそのまま、好ましくはその塩にて、更に好ましくは塩酸オキシコドンにて使用している。この発明の多層錠剤は、1〜20mgの、好ましくは2.5〜10mgの塩酸オキシコドンにより構成されることが好ましい。
【0037】
「オピオイド」は、以下の記載において、塩基性化合物又はその薬学的に許容可能な塩と称して、分け隔てなく使用される。
【0038】
オピオイドの酸化を促進する活性剤は、25℃及び60%相対湿度、又は、40℃及び75%相対湿度の保存条件下において、以下を混合した際、又は、活性剤上にオピオイドをコートした際に、オキシコドンなどの少なくとも1種のオピオイドの酸化を促進するものである。この活性剤は、アセトアミノフェンであることが好ましい。この発明の多層錠剤は、好ましくは100〜750mgの、より好ましくは250〜500mgのアセトアミノフェンから構成されることが好ましい。
【0039】
(アセトアミノフェンなどの)活性剤は、粉末又は微結晶の形態、或いは、乾燥、湿性又は加熱造粒により得られた顆粒の形態、あるいは、流動層コーティング装置による中性コア上へのコーティングにより、又は、押出成形球形化により得られた顆粒の形態にある。造粒の際、かかる活性剤は、中性コアにコーティングするために、乾燥した状態、及び、水又は有機溶媒中にて溶液又は懸濁液の状態にある。
【0040】
オピオイド及び任意選択的な(アセトアミノフェンなどの)活性剤が、それの上に夫々独立して処理される中性コアは、粒子、結晶又はアモルファスの形態中に存在する、例えば、ラクトース、スクロース、加水分解された(マルトデキストリン)澱粉又はセルロース等の糖誘導体といった、化学的に及び薬学的に不活性な賦形剤から独立してなる。スクロース及び澱粉などの混合物、又は、セルロースに基づく混合物を、中性コアの調合に使用することができる。この発明では糖のコアであることが好ましい。中性コアのユニット粒子寸法は、50〜500μm、好ましくは90〜250μmである。
【0041】
オピオイドコーティングは、好適には、流動層コーティング装置中にて、中性コア上に、オピオイドの懸濁液又は溶液を噴霧することにより行なわれる。好適には、オピオイドは、ヒドロアルコール媒体中の懸濁液として使用される。このことは、実際にも、水媒体に代替してヒドロアルコール媒体を使用すると、オピオイドの安定性が向上したことからも明らかである。ヒドロキシルアルコール媒体は、水とエタノールを、例えば、60:40〜92:8の量比にて、好ましくは75:25の量比にて含むことが好ましい。発明者は、溶媒がオピオイドの分解を減少させたことを発見した。
【0042】
また、オピオイド層は、結合する薬剤及び結合剤を更に含む。かかる結合剤は、従来から、コーティングの乾燥重量に対する相対重量として95%まで、より好ましくはオピオイドコーティングの乾燥重量に対する相対重量として95%までの割合にて使用されている。
【0043】
その機能は、材料の損失無く、有効成分を中性コアに結合すること、或いは、オピオイド及びその他の賦形剤の粉末又は微結晶を「結合」させ、中性コア周辺にて均一に分散された薬学的に有効な成分の均質層を提供することにある。
【0044】
結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースを主成分とするポリマー、アクリルポリマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウム、澱粉又はアルファ化した澱粉、スクロース及びその派生物、ガーゴム、ポリエチレングリコールとその混合物並びに、商品名KOLLICOAT(登録商標) IRとしてBASF社から販売されている、ポリビニルアルコール及びポリエチレングリコールのグラフトコポリマーなどの、それのコポリマー、からなる群より選択してなる。
【0045】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCとする)は、この発明の結合剤として好適である。それは、見掛け粘度(2%wt/wtの水溶液、USP法)が、2.4〜18mPa・s、好ましくは2.4〜5Pa・sのものから選択することが好ましい。
【0046】
ヒドロアルコール溶媒に溶解した結合剤は、オピオイドの重量に対する重量比として、90%までの範囲にあることが好ましく、より好ましくは、5〜60%の範囲にあり、更に好ましくは約50%である。
【0047】
また、オピオイド層は、結合剤とは別に、1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含めることができる。
【0048】
任意選択的に提供された薬学的に許容可能な賦形剤は、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、及び、それらの混合物から選択される。
【0049】
オピオイドコーティング中に任意選択的に提供された界面活性剤は、カチオン性、陰イオン性、非イオン性又は両性の薬剤の単体又はそれらの混合物として選択される。
【0050】
界面活性剤は、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、モノオレイン酸剤、モノラウリン酸エステル、モノパルミチン酸塩、モノステアリン酸塩、トリオレアート、トリステアリン、又は、ポリオキシエチレン化したソルビタンのその他のエステルなどの化合物、好適には、Tween(登録商標)20、40、60又は80、飽和又は不飽和で少なくとも8つの炭素原子からなるポリオキシエチレン化された脂肪酸のグリセリド、poloxamer188などのポロキサマー(poloxamers)、Pluronic(登録商標)F68又はF87などのエチレンオキシド/プロピレンオキシド・ブロックコポリマー、レシチン、ステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ポリオキシエチレン化したヒマシ油、Brij(登録商標)製品などの脂肪ポリオキシエチレン化したアルコールエーテルエステル、ポリオキシエチレン化したステアリン酸塩から選択される。
【0051】
界面活性剤は、有利には、コーティングの全乾燥重量に対する比で、20%までの、更に好ましくは0.1〜20%の割合にて提供される。
【0052】
帯電防止剤は、中性コアの周りに配されたコーティングの全乾燥重量に対する比で、10%までの割合にて提供されることが好ましい。また、帯電防止剤は、コロイドシリカ及び沈殿し理科、ミクロン化又は非ミクロン化したタルク、及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0053】
潤滑剤は、マグネシウム、亜鉛及びステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、タルク、発熱性二酸化ケイ素、ナトリウムステアリンフマル酸エステル、ミクロン化したポリオキシエチレングリコール(ミクロン化したMacrogol 6000)、ロイシン、安息香酸ナトリウム及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0054】
オピオイドを含む層は、オピオイドを含む層及び味覚マスキングポリマー層のコーティング層間にて、(「サブコート」とも呼ばれる)分離層により更にコーティングされ、かかるサブコートは、少なくとも胃液中、すなわち(pHが1〜3の)強酸条件下にて溶解する化合物、好適には、結合ポリマー又は上述のコポリマーから選択されるポリマーを含む。サブコートに使用できるコポリマーは、例えば、BASFから販売されている商品名KOLLICOAT(登録商標)IRなどの、ポリビニルアルコール及びポリエチレングリコールのグラフトコポリマーである。好適なポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。サブコートに含まれるポリマー又はコポリマーは、オピオイド層と味覚マスキングポリマー間の直接的な接触を回避するための分離層として機能し、オピオイド放出を変えることなく早急に溶解する。サブコート層は、リストして上記した帯電防止剤を含み得る。
【0055】
サブコートは、オピオイドコートされたコア重量に対する相対重量として、50%までの、好ましくは5〜30%の割合にて存在することが好ましい。
【0056】
サブコートは、溶液すなわち水溶液媒体、好適には、ヒドロアルコール媒体中に結合剤を分散したものを、オピオイドによりコートされたコア上に噴霧する、流動層コーティング装置などの従来技術の手段により提供することができる。ヒドロアルコール媒体は、好適には、水及びエタノールを含み、例えば、エタノールと水との比が、約60:40〜約92:8の範囲にあり、より好ましくは約85:15である。
【0057】
もちろん、オピオイドコーティング及びサブコートは、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートユニットから構成されるポリマーは含まない。
【0058】
かかるサブコートそのものは、ジメチルアミノエチルメタクリレートユニットなどの、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートユニットから構成されるポリマー又はコポリマーを含む味覚マスキングコーティング層によりコーティングされている。このポリマーは、例えば、商品名EUDRAGIT(登録商標)ElOO及びEPOとしてROHM PHARMA POLYMERS(Degussa)から販売されているコポリマーなどの、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート及びn−ブチルメタクリレートのコポリマーとすることができる。
【0059】
味覚マスキングコーティングは、胃液中にて親水性ポリマー溶解が可能な孔形成剤、又は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの、結合剤として使用されるその他のポリマー、好適にはスクロース、マンニトール、ソルビトール又はラクチトールなどのポリオールの、ラクトース又はデキストロースなどの糖、クエン酸、酒石酸、コハク酸などの有機酸及びその塩、又は、塩化ナトリウムなどの無機塩からなる群より選択してなる可溶剤を更に含むことが好ましい。好適な孔形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0060】
味覚マスキングコーティング中に存在する孔形成剤は、味覚マスキングコーティング成分の総乾燥重量の相対重量として、50%までの、好ましくは5〜30%の割合にて使用することができる。
【0061】
事実、味覚マスキングコーティング中のこの孔形成剤は、味覚マスキングフィルムコーティングの透過率を大きくし、所望されないが、患者が摂取した顆粒が早期に消化され及び/又は圧下におかれることにより、顆粒が直接的に腸管内に送り込まれる際に、オピオイド放出が遅くなっていくことを防止することにより、腸管内などのpH5.5以上のpHにて、顆粒からのオピオイドの放出率を改善することを示している。
【0062】
味覚マスキングコーティング中の孔形成剤の分量、及び、サブコートを有するオピオイド顆粒の総量に対する味覚マスキングコーティングの総量は、pH5.5以上のpHにて確実に溶解し、味覚マスキングの効果を呈するよう選択しなければならない。味覚マスキングコーティングに対する、サブコートを有するオピオイド顆粒を含む成分の比率は、約10:90〜50:50の範囲にあり、より好ましくは約20:80(或いは25%)である。
【0063】
また、味覚マスキング層は、上記に列挙した帯電防止剤を更に具える。
【0064】
この発明によれば、上述のオピオイド顆粒は、口腔内崩壊多層錠剤の分離層中に、(アセトアミノフェンなどの)活性剤と共に含まれている。
【0065】
活性剤は、結晶又は顆粒にて提供され、味覚マスキングコーティングとともにコーティングされる。この味覚マスキングコーティング内に含まれる賦形剤は、上記に列挙したものと同一のものとすることができる。この場合、オピオイド顆粒の味覚マスキングコーティング及び活性剤顆粒の味覚マスキングコーティングは、同一又は異なるものとすることができる。
【0066】
好適な実施形態では、(アセトアミノフェンなどの)活性剤の結晶は、結合剤とともに造粒され、得られた顆粒は味覚マスキングコーティングによりコーティングされる。
【0067】
最も好適な実施形態では、活性剤の結晶は、味覚マスキングコーティングにより直接的にコーティングされる。
【0068】
この発明に従う錠剤の夫々に層は、錠剤化する賦形剤の混合物を一般には含む。かかる混合物は、
少なくとも1種の可溶剤、及び、
少なくとも1種の崩壊剤及び/又は少なくとも1種の膨潤剤を含む。
【0069】
可溶剤は、スクロース、ラクトース、フルクトース、デキストロースなどの糖類、又は、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール又はエリスリトールの単体或いはそれらの混合物などの13個未満の炭素原子を含むポリオールから選択することができる。好適には、ソルビトールは、単独では用いられず、少なくとも1種のその他の可溶剤との混合物として使用される。
【0070】
可溶剤は、錠剤の夫々の層の重量に対し、20〜90%の重量の割合にて、好適には30〜60%の重量の割合にて、一般に使用される。
【0071】
1種の可溶剤のみが使用される場合、それは直接に圧縮された形態であり、平均粒径は、100μm〜500μmである。2種の可溶剤の混合物が使用される場合には、少なくとも1種は、直接に圧縮された製品形態であり、その他のものは、平均粒径が100μm未満の粉末である。
【0072】
錠剤の夫々の層は、単一の可溶剤又は少なくとも2種の可溶剤の混合物を具える。
【0073】
かかる錠剤は、夫々の層にて、同一の可溶剤又は可溶剤の混合物を具えるが、夫々の組成は層間で異なり、可溶剤の性質及びその顆粒寸法のみならず、混合物の場合には、夫々のフラクションにおける比率も異なる。
【0074】
この発明の錠剤の第一の有利な実施形態では、錠剤の夫々の層は、直接に圧縮した形態にて使用されている単一の可溶剤を含む。
【0075】
この発明の錠剤の第二の有利な実施形態では、錠剤の夫々の層は、直接に圧縮された形態の可溶剤を含む混合物と、粉末状の同一の可溶剤を含み、直接圧縮形態と粉末とは、99/1〜20/80の範囲の割合にあり、好適には、80/20〜20/80の範囲の割合にあり、かかる可溶剤はソルビトールではない。
【0076】
この点に関しては、可溶剤は、平均粒径が100μm未満の粉末の形態のマンニトールの、好適にはマンニトール60であり、更に好ましくは、マンニトール300などの平均粒径が100〜500μ mの直接に圧縮されたマンニトールの混合物であることが好ましい。
【0077】
この発明の錠剤の第三の有利な実施形態では、錠剤は、それを構成する夫々の層において、同一の可溶剤又は同一の可溶剤の混合物を含む。
【0078】
崩壊剤は、とりわけ、従来技術においてクロスカルメロース(croscarmellose)と呼ばれる橋かけナトリウムカルボキシメチルセルロース、従来技術にておいてクロスポビドン(crospovidone)と呼ばれる橋かけポリビニルピロリドン、及びそれらの混合物からなる群より選択することが好ましい。
【0079】
崩壊剤は、錠剤の夫々の層の重量に対し、1〜20%の重量の割合にて、好適には5〜15%の重量の割合にて使用され、それが混合物の場合には、夫々の崩壊剤は0.5〜15%の重量の割合にあり、好適には5〜10%の重量の割合にある。
【0080】
クロスポビドンは、この発明にて使用されることが好ましい。事実、クロスポビドンには、口内崩壊錠剤が、アルミニウム/アルミニウムブリスターポケット(blister pocket)中にて60〜80℃の乾燥高温などといった、乾燥及び高温の大気条件下にて保存されている場合に、塩酸オキシコドンなどのオピオイドの分解に対し安定化効果がある。これらの条件下においては、クロスポビドンは、顆粒中の残余の水を捕まえ、集める。しかし、これら保存条件は、一般的ではない。この発明に従う錠剤は、ICHガイドラインに従う大気又は従来の温度/湿度条件下にて保存される、ブリスターなどの封止された容器内にて一般的にパッケージされる。実際、40℃/75%HRの湿度条件下では、クロスポビドンは水により膨張し、錠剤中に水が取り込まれることを促し、マトリックス中の残余ペルオキシドの拡散を促進する。かかる欠点を回避するため、錠剤は抗酸化剤を含み、湿潤条件下にてクロスポビドンの分解により発生するオピオイドの分解を防止することが好ましい。
【0081】
前記抗酸化剤は、オピオイド層のみに存在することが好ましい。
【0082】
適当な抗酸化剤は、例えば、アスコルビン酸ナトリウム及びアスコルビルパルミテートなどの、アスコルビン酸並びにその塩及びエステル、酢酸トコフェロールなどのトコフェロール並びにその塩及びエステルを含む。
【0083】
一般的には、抗酸化剤は、オピオイドを含む層の総重量の0.2〜1.0wt%存在する。それは、使用されるクロスポビドンとの比として表すこともできる。この点において、抗酸化剤は、オピオイドを含む層中にて使用されたクロスポビドンの重量の1〜5%であることが好ましい。
【0084】
特に、アスコルビルパルミテートが、湿潤条件下でクロスポビドンの分解を効果的に抑制し、そのとこにより、オピオイドの酸化が防止されることがわかった。この発明に従う錠剤中に含ませ得るアスコルビルパルミテートの量は、オピオイドを含む層の全重量に対し、0.2〜1.0wt%の範囲にある。それは、使用されたクロスポビトンとの比として表すこともできる。この点において、アスコルビンパルミテートが、オピオイドを含む層中に使用されたクロスポビドンの重量に対し、1〜5%存在することが好ましい。
【0085】
膨潤剤は、微結晶性セルロース、澱粉、カルボキシメチル澱粉又はグリコール酸ナトリウム澱粉などの化工デンプン、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウム、或いは、それらの混合物からなる群より選択することができる。
【0086】
膨潤剤は、一般的に、錠剤の夫々の層の重量に対して1〜15%の重量の比率にて使用される。
【0087】
上述の賦形剤以外に、この発明の口腔内崩壊錠剤の夫々の層は、潤滑剤、透過剤、帯電防止剤、水不溶性希釈剤、バインダ、甘味料、風味料、着色料及びアジュバントを任意選択的に含む。
【0088】
潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ナトリウムステアリルフマル酸塩、ポリオキシエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、薬学的に許容可能な油、好ましくはジメチコーン又は流動パラフィン、及び、それらの混合物からなる群より選択することができる。
【0089】
潤滑剤は、錠剤の夫々の層の重量に対し、2%までの重量にて、好ましくは0.02〜2%の重量にて、より好ましくは、0.5〜1.5%の重量にて、一般的に使用される。
【0090】
第一の異なる実施形態では、全ての潤滑剤は、錠剤化する混合物に入れられる。第二の異なる実施形態では、かかる潤滑剤のフラクションが金型の壁部上に噴霧され、圧縮の際にパンチされ、前記潤滑剤のフラクションは粉末状又は液体状となる。内層及び/又は外層に、任意選択的に使用される潤滑剤の量は、超過して、層の凝集に悪影響を与えてしまうことを防止するよう、注意深く調整される。
【0091】
透過剤は、特に、銘柄名Syloid(登録商標)として一般に知られている、沈殿シリカなどの、水性溶媒に対し強い親和性を有するシリカ、マルトデキストリン及びβ-シクロデキストリン及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0092】
透過剤は、一般に、錠剤の夫々の層の重量に対し算出される、5%までの重量にて使用される。
【0093】
帯電防止剤は、ミクロン化した又はミクロン化していないタルク、コロイドシリカ(Aerosil(登録商標) 200)は、加工シリカ(Aerosil R972)、沈殿シリカ(Syioid(登録商標) FP244)及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0094】
帯電防止剤は、一般に、錠剤の夫々の層の重量に対し、5%までの重量にて使用される。
【0095】
水不溶性希釈剤は、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム及び微結晶性セルロースから選択することができる。
【0096】
その機能は、錠剤内の不溶性荷(insoluble charge)を大きくすることにより、崩壊剤の作用を向上することにある。それは、錠剤の夫々の層の重量に対し、20%の重量の割合、好適には10%未満の重量の割合にて使用される。
【0097】
結合剤は、一般的には、乾燥した形態にて使用され、それは、澱粉、糖、ポリビニルピロリドン又はカルボキシメチルセルロースの単体、又はそれらの混合物とすることができる。
【0098】
甘味料は、特にアスパルテーム、カリウムアセサルフェーム、ナトリウムサッカリン酸塩、ネオヘスピリジンジヒドロカルコン、スクラロース及びモノアンモニウムグリチルリチン酸塩及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0099】
風味料及び着色料は、一般的に、錠剤の製剤のために薬局にて使用されるものである。
【0100】
1つの特に好ましい実施形態では、夫々の層は、それに接触する層に対し異なる配色となっており、それにより、錠剤の層構造が直ちに可視可能となる。
【0101】
アジュバンドをかかる混合物に、更に添加することができ、それは、例えば、アミノ酸やタンパク質などの崩壊促進剤、pH調整、起沸発生システム、特にはpH調整に使用される型式の二酸化炭素発生装置、又は、界面活性剤からなる群より選択することができる。
【0102】
薬学的に活性を有する物質を含む層は、コートされた又はコートされていない活性物質に対する賦形剤の混合物の割合は、一般に、0.4〜10重量部であり、好適には1〜5重量部である。
【0103】
この発明の錠剤の好適な一実施形態において、錠剤の夫々の層は、同一の賦形剤を含んでおり、この発明の錠剤の崩壊は、単層の口腔内崩壊錠剤の口当たりと同一の口当たりをもたらすことから、患者は、錠剤が構成される多様な層について崩壊率の違いを何ら認識しないこととなる。
【0104】
夫々の層の定量的な組成は、夫々の活性物質の含有量を考慮して調整される。
【0105】
最も厚い層と最も薄い層との間で許容される最大質量比は、10/1である。
【0106】
最も重く投与される活性物質と、最も軽く投与される活性物質との用量比が10以上の場合には、希釈剤の量は、層間の重量比が10の値に戻るよう調整される。この場合、希釈剤は可溶剤であることが好ましく、より好ましくは、可溶剤は、直接に圧縮可能な形態である。
【0107】
錠剤は、6mm〜18mmの直径を有し得る。
【0108】
それらは、円、楕円、長楕円の形状とすることができ、また、平面状、凹状、凸状の表面とすることができ、あるいは、それらは、任意選択的に掘り込むことができる。両凸の形状又はくぼみ形状のパンチが、有利には使用される。
【0109】
錠剤は、一般に、0.1〜2.0グラムの重量を有する。
【0110】
また、この発明は、上述の多層錠剤の製造方法に関するものである。
【0111】
この発明に従う製造方法は、以下に示すステップを含み、
ステップ1.アセトアミノフェンなどのオピオイドの分解を促進する任意選択的にコートされた活性剤の粒子を準備し、
ステップ2.中性コア上に適用されたオピオイドコーティングを含む顆粒を準備し、かかるオピオイドコーティングは、オピオイド及び少なくとも結合剤を含み、胃液中にて溶解可能な化合物を含むサブコートによりコートされており、かかるサブコートは、それ自体が、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートユニット及び任意選択に孔形成剤を含む、ポリマー又はコポリマーを含む味覚マスキングコーティングによりコートされており、
ステップ3.錠剤化する賦形剤を夫々に含む、少なくとも2種の乾燥混合物を準備し、その一方が前記活性剤粒子を含み、他方が上記顆粒を含み、
ステップ4.少なくとも1種の上記したように得られた粉末混合物を予圧し、
ステップ5.上述の混合物に、その他の混合物を適用し、
ステップ6.任意選択的に予圧し、
ステップ7.上述したように得られた予備成形された層を圧縮し、
そして、錠剤の層数に応じて、ステップ5及び6は、可能であれば、少なくとも1回繰り返す。
【0112】
2層の錠剤の場合には、この発明に従う製造方法は、以下の4〜7のステップを含み、
−上述の混合物の1種を予圧し、錠剤の下層を予備成形し、
−予備成形されたそうに第2の混合物を適用し、
−任意選択的に、第2の混合物を予圧し、錠剤の上層を予備成形し、
−最終的に圧縮するものである。
【0113】
如何なる場合においても、ステップ2は、実施形態がオピオイドに対するより大きな安定性を付与できることから、ヒドロアルコール媒体中のオピオイドの懸濁液を中性コアに噴霧することにより、オピオイドコーティングを適用することを含むことが好ましい。
【0114】
また、好適な一実施形態では、夫々の混合物の準備そのものが、2つのステップを含むものであり、第1のステップでは、コートされた又はコートされていない活性物質を、潤滑剤以外の全ての錠剤化する賦形剤と混合し、それに次ぐ、第2のステップでは、第1の混合物に一部又は全ての潤滑油の添加し、任意選択的に、残った部分をパンチ又は金型の内面に噴霧する。
【0115】
全ての潤滑油がパンチ上及び/又は金型の内面に噴霧されると、第二の混合ステップは明らかに省略される。
【0116】
予圧及び圧縮のステップは、異なる回転打錠機にて実施される。
【0117】
予圧は、一方では、粉末の土台を金型内に充填することにより、層を予備整形し、第2には、粒子を再編成し、前記粉末の土台からガスを除去することにより、最終的な圧縮の際に、接着力の不足により層間にて発生する、或いは、層そのものに、亀裂が生じることが回避される。
【0118】
相対論的質量及び/又は厚さ幅を有さない層を具える錠剤は、第一の予備成形される層は、大きな質量又は厚さを有するものである。
【0119】
予圧時に発生する応力は、0.5〜15kNの範囲にあり、一般的には、最終的な圧縮の際に発生する応力に比べ、5〜10倍低いものである。
【0120】
圧縮のステップの際に発生する応力は、5〜50kNの範囲にあり、好適には5〜15kNの範囲にある。
【0121】
粉末の土台に負荷される予圧力は、2つの可能性のあるモードに従い調整され、第一のモードは、金型内の粉末の土台の高さに監視、機械で測定される変差の関数として圧縮力を調製するものであり、第二のモードは、パンチによる発生する測定圧力の関数として、充填量にて調整するものである。
【0122】
これら錠剤の硬度は、European Pharmacopoeia(2.9.8)の方法に基づき測定した場合に、好ましくは10〜100Nであり、より好ましくは10〜60Nである。
【0123】
多層錠剤の硬度は、European Pharmacopoeiaの方法に基づき測定した際に、2%未満にて、好適には1%未満にて、破砕性を確保するよう適用されることから、唾液の処置下にある口の中における錠剤の崩壊時間を60秒以下、好適には40秒以下とすることが可能となる。
【0124】
この発明の錠剤が、コートされた形態にて、オピオイド、及び、可能性として(アセトアミノフェンなどの)その他の活性剤を含むことから、圧縮は、コートされた活性物質粒子の圧縮前後にて、同一の溶解プロファイルを維持するよう実施され、ここでいう「同一」という用語は、同じin vitroの溶解条件下でのサンプリング時間毎に放出される活性物質の割合に対する絶対値として、15%以下である。
【0125】
この発明に従う多層崩壊錠剤は、口腔内投与により、オピオイド治療に耐性がある患者に対する、中程度から重度の痛みを軽減し、突出痛、特には癌による突出痛を管理するために使用することができる。突出痛は、特には制御された痛みをバックグラウンドに発生する、中程度から重度の強さの痛みの一過的な突発を意味するものである。オピオイド耐性を有すると考えられる患者は、一日当り少なくとも60mgのモルヒネを、一日当り少なくとも25μgの経費性フェンタニールを、一日当り少なくとも30mgのオキシコドンを、一日当り少なくとも8mgの口腔ヒドロモルヒネを、又は、一週間以上のその他のオピオイドの等鎮痛薬用量を摂取しているものをいう。
【0126】
この発明は、このように、上述の錠剤を、特には、突出痛を小さくするための、口腔内投与用の鎮静性の薬物の製造に使用することを含むものである。また、上述したような錠剤の口腔内投与により痛みを少なくする方法を含むものである。
【0127】
この発明は、以下に限定されるものではないが、単にこの発明の有利な実施形態を例示するために挙げられている、以下の実施例を参照することにより、より明確に理解される。
【実施例】
【0128】
(実施例1)オキシコドンが混入した顆粒の準備
中性コアは、流動層処理装置に送り込まれ、水及びエタノールの溶媒中の結合剤として、塩酸オキシコドン及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の懸濁液が中性コア上に噴霧される。オキシコドンペレットの組成は表1に記載されている。ペレット中に混入したオキシコドン量は、9.78%(97.8mg/g)である。次いで、オキシコドンペレットにサブコートが適用される。サブコートは、表2に示すように、水/エタノール溶媒中のHPMC及び(帯電防止剤としての)二酸化シリコンを含む。そして、乾燥後、顆粒は再度、流体層処理装置内に送り込まれ、表3に示すような、水/エタノール溶媒中のEugradid E100アクリルポリマー、HPMC及び二酸化シリコンの味覚マスキングコーティングによりコートされる。最後のステップでは、味覚マスクされたオキシコドン顆粒の送出前に、エタノール中にある二酸化シリコンからなる帯電防止剤溶液を、流動層処理装置内に噴霧する。その組成は、表4に示す、最終的な顆粒中に混入されたオキシコドン量は、6.5%(65.0mg/g)である。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
(実施例2)口腔内崩壊多層錠剤の準備
この実施例は、オキシコドン及びアセトアミノフェンの2層の錠剤の調合を記載したものである。オキシコドンの味覚マスクされた顆粒は、実施例1に従い調合される(オキシコドン含有量:65.0mg/g)。6%の味覚マスキングコーティングによりコートされたアセトアミノフェンの結晶は、表5の製法に従い、流体層コーティング機内にて調合される(APAP含有量:940.00mg/g)。
【0134】
【表5】

【0135】
次いで、表6に示す組成を有する、2層の錠剤が製造される。
【0136】
【表6】

【0137】
オキシコドン混合物は、以下に示すように調合される。クロスポビドン、Avicel PH102、アスパルテーム、二酸化シリコン、アスコルビルパルミテート、風味及び着色料が、三次元ブレンダ(cubic blender)を用いて20分間、10rpmにて混合される。かかる混合物に、オキシコドンによりコートされた顆粒、マンニトール60及びマンニトール300が添加され、同一の三次元ブレンダにより5分間、10rpmにて混合される。そして、ステアリン酸マグネシウムが添加され、最終的な混合は、2分間、10rpmで行なった。
【0138】
着色料は、マンニトールに代替えして、オピオイド層とその他の層とを区別しないようにすることができる。
【0139】
アセトアミノフェン混合物は、以下に示すように調合される。クロスポビドン、Avicel PH102、アスパルテーム、二酸化シリコン及び香料は、三次元ブレンダ内にて20分間、10rpmにて混合される。この混合物に、アセトアミノフェン結晶、マンニトール60及びマンニトール300が、同一の三次元ブレンダ内で、5分間、10rpmにて混合される。ステアリン酸マグネシウムが添加され、最終的な混合は、2分間、10rpmにて行なった。
【0140】
圧縮ステップ:
打錠機:FETTS 3090 double layer
錠剤寸法及び形状:15mm、平面状
アセトアミノフェン混合物は、圧縮マトリクスに最初に充填されるものである。(予圧力:0.5kN)予圧が行なわれ、圧縮体積は、約700.0mgのアセトアミノフェン混合層を有するよう選択される。オキシコドンの着色された混合物は、次いで、圧縮マトリクスに注入され、オキシコドン混合物の質量が、強度5mgにて176.0mgとなる。錠剤の強度が50〜60Nとなるよう、圧縮力が負荷される。同一のオキシコドン混合物を使用し、オキシコドンを含む層の重さを単に変更することにより(表7)、この発明に従う、味覚マスクされた2層の口腔内崩壊錠剤を得ることが可能となる。
【0141】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内崩壊錠剤であって、該錠剤は、
少なくとも2層の分離層を具え、そのうちの1層は少なくとも1種のオピオイドの酸化を促進する活性剤、好適にはアセトアミノフェンを含み、その他の層は、少なくともオピオイド及び少なくとも結合剤によりコートされた不活性コアを含む顆粒を含み、また、前記オピオイドコーティングは、胃液に溶解し得る化合物を含むサブコートによりコートされており、前記サブコートは、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートユニット及び任意選択的に孔形成剤を含むポリマー又はコポリマーを含む味覚マスキングコーティングによりコートされていることを特徴とする口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項2】
前記多層錠剤は2層又は3層であることを特徴とする、請求項1に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項3】
前記多層錠剤は3層からなり、賦形剤のみを含む層は、アセトアミノフェン及びオピオイドを夫々に含む2層の間に挿入されてなることを特徴とする、請求項2に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項4】
前記オピオイドは、オキシコドン又はその薬学的に許容可能な塩類であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項5】
前記オピオイドは、塩酸オキシコドンであることを特徴とする、請求項4に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項6】
1〜20mgの塩酸オキシコドンを含むことを特徴とする、請求項5に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項7】
100〜750mgのアセトアミノフェンを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項8】
前記中性コアは、糖のコアであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項9】
前記結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースを主成分とするポリマー、アクリルポリマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウム、澱粉又はアルファ化した澱粉、スクロース及びその派生物、ガーゴム、ポリエチレングリコールとその混合物並びにそのコポリマー、からなる群より選択してなることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項10】
前記結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする、請求項9に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項11】
前記胃液に溶解し得る化合物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項12】
前記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートユニットを含むポリマー又はコポリマーは、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート及びn−ブチルメタクリレートのコポリマーであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項13】
前記多層錠剤の夫々に層は、
少なくとも1種の可溶剤、及び、
少なくとも1種の崩壊剤及び/又は少なくとも1種の膨潤剤を含む、
錠剤化する賦形剤の混合物を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項14】
前記崩壊剤は、クロスポビドンであることを特徴とする、請求項13に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項15】
前記オピオイド層中の賦形剤は、抗酸化剤を更に含むことを特徴とする、請求項13又は14に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項16】
前記抗酸化剤は、アスコルビルパルミテートであることを特徴とする、請求項15に記載の口腔内崩壊多層錠剤。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の錠剤を製造する方法は、以下のステップを含み、
ステップ1.アセトアミノフェンなどのオピオイドの分解を促進する任意選択的にコートされた活性剤の粒子を準備し、
ステップ2.中性コア上に適用されたオピオイドコーティングを含む顆粒を準備し、かかるオピオイドコーティングは、オピオイド及び少なくとも結合剤を含み、胃液中にて溶解可能な化合物を含むサブコートによりコートされており、前記サブコートは、それ自体が、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートユニット及び任意選択に孔形成剤を含む、ポリマー又はコポリマーを含む味覚マスキングコーティングによりコートされており、
ステップ3.錠剤化する賦形剤を夫々に含む、少なくとも2種の乾燥混合物を準備し、その一方が前記活性剤粒子を含み、他方が上記顆粒を含み、
ステップ4.少なくとも1種の上記したようにして得られた粉末混合物を予圧し、
ステップ5.上述の混合物に、その他の混合物を適用し、
ステップ6.任意選択的に予圧し、
ステップ7.上述したように得られた予備成形された層を圧縮し、
そして、錠剤の層数に応じて、ステップ5及び6は、少なくとも1回繰り返すことができることを特徴とする、錠剤の製造方法。
【請求項18】
ステップ2は、ヒドロアルコール媒体中のオピオイドの懸濁液を中性コアに噴霧することにより、オピオイドコーティングを適用することを特徴とする、請求項17に記載の錠剤の製造方法。

【公表番号】特表2009−545561(P2009−545561A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522248(P2009−522248)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057913
【国際公開番号】WO2008/015221
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(509034650)
【Fターム(参考)】