説明

多層樹脂シート及び高熱伝導樹脂シート

【課題】高い熱伝導率を有し、絶縁性、接着強度が良好で、さらに熱衝撃耐性にも優れた、多層樹脂シート及びそれを用いた高熱伝導樹脂シートを提供する。
【解決手段】メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び分散剤を含む樹脂組成物を用いて得られる樹脂シートの片面又は両面に絶縁接着剤層を形成して成る多層樹脂シート。分散剤が脂肪酸、脂肪酸の誘導体、ポリエステル酸またはそれらの塩の少なくとも一種類以上を含んだものである前記の多層樹脂シート。前記の多層樹脂シートの片面又は両面に基材を貼り合わせてなる高熱伝導樹脂シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気、電子機器に用いる電気絶縁材料であり、かつ優れた接着性を有する、多層樹脂シート及び高熱伝導樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
モーターや発電機ならびに、プリント配線基板やICチップなどの電気、電子機器は、小型化の進行に伴い高密度化された導体からの発熱量は増加傾向にあり、絶縁材料への優れた放熱性及び基材との良好な接着性が要求されている。
【0003】
絶縁材料としては、無機セラミックや有機材料などが広く使用されている。無機セラミックは、高い熱伝導性を有するが高価であり絶縁性能は有機材料よりも劣る。一方、有機材料は極めて絶縁性能は高いが熱伝導性は低い。絶縁性と熱伝導性を両立させるため、有機材料に熱伝導率の高いフィラを充填した複合系材料が期待されている。
【0004】
特許文献1では、一般的なビスフェノールA型エポキシ樹脂と酸化アルミナフィラとの複合系により、熱伝導率として3.8W/mK(キセノンフラッシュ法)を有することが知られている。メソゲン骨格を有する液晶性エポキシ樹脂とアルミナフィラとの複合系により、熱伝導率として9.4W/mK(キセノンフラッシュ法)を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−13759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の有機−無機複合系シート(以下樹脂シートと略する)は、優れた熱伝導率を有するものとして特筆に値するが、実際に使用されるプロセスへの適合性へは難を生じる可能性が高い。つまり、これらの樹脂シートは一般的にアルミニウムや銅などの金属表面や、有機材料表面への高い接着性が求められるが、高い熱伝導率を発揮するために通常無機フィラ成分を高充填化するため、樹脂成分による接着強度の低下が起こり、リフローやヒートサイクルなどの熱衝撃時に剥離が生じるなどの問題が発生する。このような課題があるため、フィラ高充填系の樹脂シートでは実際の製品化までは至っていないのが現状である。
本発明の目的は、高い熱伝導率を有し、絶縁性、接着強度が良好で、さらに熱衝撃耐性にも優れた、多層樹脂シート及びそれを用いた高熱伝導樹脂シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本課題を解決すべく検討を重ねた結果、高熱伝導率を有する樹脂シートの片面若しくは両面に接着性を付与できる層を設けることによって、リフローの熱衝撃試験後にも剥離しない、高い接着信頼性を有する高熱伝導樹脂シートを得るに至った。また、接着層に用いる樹脂に、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂を適用することによって、接着強度とともに、絶縁性と耐熱性の向上も可能になる。さらに樹脂層に分散剤を添加することで微小フィラの2次凝集を抑制し、パッキング性が向上する。これにより樹脂がシート表面に溢れ出し平坦化されるので、接着性の更なる向上が可能となる。
【0008】
本発明は、以下の通りである。
(1)メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び分散剤を含む樹脂組成物を用いて得られる樹脂シートの片面又は両面に絶縁接着剤層を形成して成る多層樹脂シート。
(2)分散剤が脂肪酸、脂肪酸の誘導体、ポリエステル酸またはそれらの塩の少なくとも一種類以上を含んだものである(1)に記載の多層樹脂シート。
(3)分散剤の添加量が、無機充填材100質量部に対し0.03〜1.0質量部である(1)または(2)に記載の多層樹脂シート。
(4)絶縁接着剤層が、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及び変性ポリアミドイミド樹脂のうち少なくとも一種類以上を含んでなる(1)〜(3)のいずれかに記載の多層樹脂シート。
(5)絶縁接着剤層の厚さが3μm以上15μm以下である(1)〜(4)のいずれかに記載の多層樹脂シート。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の多層樹脂シートの片面又は両面に基材を貼り合わせてなる高熱伝導樹脂シート。
(7)基材が、銅箔、アルミ箔、アルミ板、銅板、エンプラ板及びエポキシ板のうちのいずれかである、(6)に記載の高熱伝導樹脂シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多層樹脂シートは、高い熱伝導率を有し、絶縁性、接着強度が良好で、さらに熱衝撃耐性にも優れたものであり、電気、電子機器に用いる電気絶縁材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の多層樹脂シート硬化物表面の電子顕微鏡写真である。
【図2】比較例1の多層樹脂シート硬化物表面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の多層樹脂シートは、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び分散剤を含む樹脂組成物を用いて得られる樹脂シートの片面又は両面に絶縁接着剤層を形成して成ることを特徴とする。また、前記絶縁接着剤層は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及び変性ポリアミドイミド樹脂のうち少なくとも一種類以上を含んでなることが好ましい。
絶縁接着剤層に用いるポリイミド樹脂としては、ユピコートFS−100L(宇部興産株式会社製)、セミコファインSP−300,SP−400,SP−800(東レ株式会社製)、Uイミドシリーズ(ユニチカ株式会社製)などに代表される製品を用いることができ、ポリアミドイミド樹脂や変性ポリアミドイミド樹脂としては、バイロマックスシリーズ(東洋紡績株式会社製)、トーロン(ソルベイアドバンスドポリマーズ社製)などがあるが、高耐熱性、高接着性の観点から、KS6600−7、KS7003(日立化成工業株式会社製)などに代表されるシリコン変性ポリアミドイミド樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂は、樹脂が溶剤に溶解したワニス状態であり、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムや被着体に直接塗布し溶剤乾燥させることによりフィルム化して用いることが出来る。または、あらかじめ溶剤を乾燥させたフィルムを用いることも出来る。
【0012】
ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂は、単品での使用も可能であるが、2種類以上の混合で使用しても構わない。ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂の含有量に特に制限はないが、絶縁接着剤層中に1〜99質量%含まれるのが好ましく、3〜70質量%含まれるのがより好ましく、5〜50質量%含まれることが特に好ましい。絶縁接着剤層中に樹脂成分量が少ないと、熱伝導率は向上するが被着体との接着力が低下し、熱衝撃耐性が低下する傾向にあり、逆に樹脂成分量が多いと接着力が向上し、熱衝撃耐性が向上するが、熱伝導率の低下を招く傾向がある。
【0013】
本発明で用いる絶縁接着剤層には、熱硬化性樹脂を配合し樹脂中の官能基と反応させることで耐熱性、機械強度、接着強度の向上、貼り合わせ時の流動特性等の改良を行うことができる。絶縁接着剤層に用いるポリアミドイミド樹脂骨格中のアミド基と反応し得る官能基を有する熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂が挙げられるが、取り扱い性の観点からエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、市販されているものを通常使用できるが、接着性および柔軟性の観点から、分子内にリン原子を含有するエポキシ樹脂が好ましい。これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
ポリアミドイミド樹脂骨格中のアミド基と反応し得る官能基を有する熱硬化性樹脂の添加量は、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対して5〜100質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましく、20〜65質量部であることが特に好ましい。この配合量が5質量部未満では、硬化機能が低下する傾向があり、100質量部を超えると硬化後の樹脂架橋密度が密となることにより脆弱化し、接着強度が低下する傾向がある。
【0015】
また絶縁接着剤層は硬化剤を含み、硬化剤はエポキシ樹脂と反応するもの、またはポリアミドイミド樹脂と熱硬化性樹脂との硬化反応を促進するものであれば、特に制限されない。具体的には、例えばアミン類、イミダゾール類が挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上組み合わせて使用できる。上記アミン類としては、例えばジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素が挙げられ、これらは単独でまたは2種類以上組み合わせて使用できる。上記イミダゾール類としては、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのアルキル基置換イミダゾール、ベンゾイミダゾールなどが挙げられ、これらは単独でまたは2種類以上組み合わせて使用できる。
【0016】
硬化剤の配合量は、硬化剤がアミン類の場合はアミンの活性水素の当量(アミン当量)とエポキシ樹脂のエポキシ当量が互いにほぼ等しくなるように配合することが好ましい。また、硬化剤がイミダゾールの場合には、エポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜2質量部であることが好ましい。この配合量が0.1質量部未満では硬化性が低下し、硬化後のガラス転移点温度が低くなる傾向があり、2質量部を超えると保存安定性、絶縁性が低下する傾向がある。
【0017】
本発明で用いる樹脂シートを構成する樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂としては、市販されているものを通常使用できるが、高熱伝導率化を達成する上では、エポキシ樹脂骨格にメソゲン骨格を有するもので、高次構造を形成するものを用いる。具体的には、例えば特許第4118691号公報に記載されている。
【0018】
メソゲン骨格とは、分子間相互作用の働きにより、液晶性や結晶性を発現しやすくするような官能基のことを指す。具体的にはビフェニル基、フェニルベンゾエート基、アゾベンゼン基、スチルベン基またはその誘導体などが代表として挙げられる。
【0019】
高次構造とは、ミクロな配列をしている構造体のことであり、例えば結晶相や液晶相が相当する。このような高次構造体の存在確認は、偏光顕微鏡による観察によって容易に判断することが可能である。即ち、直行ニコル常態での観察において、偏向解消現象による干渉縞が見られることで判別可能である。
【0020】
この高次構造体は、通常樹脂中に島状に存在し、ドメイン構造を形成したその一つの島のことを指す。この高次構造単位は共有結合を有している。
【0021】
このような高次構造を発現するエポキシ樹脂として、具体的には、1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセンを用いることが、ハンドリング性、高熱伝導率を発揮する上で好ましい。
【0022】
また、高次構造を発現するためには、エポキシ樹脂を硬化するために用いる硬化剤の選定が重要である。具体的には酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤などの重付加型硬化剤や、その他イミダゾールなどの潜在性硬化剤などを用いることができる。耐熱性、密着性の観点から使用される硬化剤として、アミン系やフェノール系硬化剤を用いることが好ましい。さらに、保存安定性の観点から、フェノール硬化系を用いることがより好ましい。
【0023】
アミン系硬化剤としては、市販されているものを通常使用できるが、2官能またはそれ以上の官能基を有することが硬化物性を向上するために好ましい。また、熱伝導率の観点から、剛直な骨格を有する多官能硬化剤が更に好ましい。2官能アミン系硬化剤の一例として、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレンがあるが、先述のエポキシ樹脂、1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセンとの組み合わせにおいて、高い熱伝導率を発揮するアミン系硬化剤として、1,5−ジアミノナフタレンが好適である。しかしアミン系硬化剤は樹脂シートを作製後に逐次重合が室温付近でも進行することから保存安定性が短いという課題がある。
【0024】
フェノール系硬化剤としては、市販の低分子フェノールや、それらをノボラック化したフェノール樹脂を用いることができる。低分子フェノール硬化剤として、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどの1官能系や、カテコール、レゾルシノール、p−ハイドロキノンなどの2官能系、さらには1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンなどの3官能系などが使用可能であり、これら低分子フェノールをメチレン鎖で連結したフェノールノボラック樹脂を硬化剤として用いることもできる。
【0025】
高い熱伝導率を発揮するフェノール系硬化剤として、種々検討した結果、カテコールやレゾルシノールさらにはp−ハイドロキノンといった、2官能硬化剤を使用することが熱伝導率の向上に好ましい。更なる高耐熱化のためには、これら低分子フェノールをメチレン鎖で連結したフェノールノボラック硬化剤を用いることがより好ましい。具体的には、カテコールノボラック樹脂、レゾルシノールノボラック樹脂、p−ハイドロキノンノボラック樹脂など単独フェノールをノボラック化した樹脂や、カテコールレゾルシノールノボラック樹脂、レゾルシノールp−ハイドロキノンノボラック樹脂などといった2種類またはそれ以上のフェノールをノボラック化した樹脂が使用できる。
【0026】
樹脂組成物には無機充填材を含む。無機充填材の種類として、非導電性のものとして、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、または導電性のものとして、金、銀、ニッケル、銅などを用いることができる。またこれらの無機充填材は1種類または2種類以上の混合系で使用することができる。非導電性フィラを使用することによって絶縁性低下のリスクは少ない。しかし導電性フィラを使用することによって熱伝導率は向上するが、絶縁性は低下しやすい傾向がある。
【0027】
無機充填材の含有量は、樹脂組成物の全体質量を100質量%とした時に、通常、1〜99質量%の範囲で含有することができ、好ましくは50〜97質量%、更に好ましくは80〜95質量%を含有する。無機充填材含有量として50質量%を下回ると、高い熱伝導率を得ることが困難になる傾向があり、一方97質量%を超えると、樹脂シートの柔軟性が低下し、絶縁性の低下が顕著になるという問題が起きる。
【0028】
樹脂組成物にはシランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤の種類として、市販のものを通常使用できるが、エポキシ樹脂やフェノール樹脂との相溶性および樹脂層と無機充填材層との界面での熱伝導ロスを低減することを考慮すると、末端にエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、水酸基を有するシランカップリング剤を用いることが好適である。例として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランがあり、またSC−6000KS2に代表されるシランカップリング剤オリゴマ(日立化成コーテットサンド株式会社製)を使用することができる。またこれらシランカップリング剤は単独または2種類以上を併用することもできる。
【0029】
樹脂組成物には分散剤を含む。分散剤の種類として、市販のものを通常使用できる。例として、脂肪酸、脂肪酸の誘導体、ポリエステル酸またはそれらの塩が挙げられる。また、これら分散剤は単独または2種類以上を併用することもできる。
具体的には、ポリエーテルエステル酸のアミン塩、ポリカルボン酸のアミドアミン塩、ポリエステル酸のアミン塩、高級脂肪酸のアルキルアミン塩、リン酸エステルのアミン塩などが挙げられる。これらの中には、界面活性剤に分類されるものがあり、界面活性剤では、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などを挙げることができる。
【0030】
アニオン界面活性剤としては、たとえば、オレイン酸・N−メチルタウリン、オレイン酸カリウム・ジエタノールアミン塩、アルキルエーテルサルフェート・トリエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート・トリエタノールアミン塩、特殊変成ポリエーテルエステル酸のアミン塩、高級脂肪酸誘導体のアミン塩、特殊変成ポリエステル酸のアミン塩、高分子量ポリエーテルエステル酸のアミン塩、特殊変成燐酸エステルのアミン塩、高分子量ポリエステル酸アミドアミン塩、特殊脂肪酸誘導体のアミドアミン塩、高級脂肪酸のアルキルアミン塩、高分子量ポリカルボン酸のアミドアミン塩、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムラウリル硫酸エステルナトリウム塩、セチル硫酸エステルナトリウム塩、ステアリル硫酸エステルナトリウム塩、オレイル硫酸エステルナトリウム塩、ラウリルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、油溶性アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩、高級アルコールリン酸ジエステルジナトリウム塩、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などが挙げられる。
【0031】
上記カチオン界面活性剤としては、たとえば、ベンジルジメチル{2−[2−(P−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェノオキシ)エトキシ]エチル}アンモニウムクロライド、オクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂トリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、1−ヒドロキシエチル−2−牛脂イミダゾリン4級塩、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン塩酸塩、トリエタノールアミンモノステアレートギ酸塩、アルキルピリジウム塩、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリアクリルアミドアミン塩、変成ポリアクリルアミドアミン塩、パーフルオロアルキル第4級アンモニウムヨウ化物などが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、たとえば、ジメチルヤシベタイン、ジメチルラウリルベタイン、ラウリルアミノエチルグリシンナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、アミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、3−[ω−フルオロアルカノイルーN−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタインなどが挙げられる。
【0032】
上記非イオン界面活性剤としては、たとえば、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、牛脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型)、オレイン酸ジエタノールアミド(1:1型)、ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリエチレングリコールラウリルアミン、ポリエチレングリコールヤシアミン、ポリエチレングリコールステアリルアミン、ポリエチレングリコール牛脂アミン、ポリエチレングリコール牛脂プロピレンジアミン、ポリエチレングリコールジオレイルアミン、ジメチルラウリルアミンオキサイド、ジメチルステアリルアミンオキサイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、ポリビニルピロリドン、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビットの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、砂糖の脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0033】
樹脂シートは、一般的に、前記の樹脂組成物を、離型フィルム上に塗布乾燥して成る。例えば、PETフィルムなどの離型フィルムに、メチルエチルケトンやシクロヘキサノンなどの溶剤を含んだワニス状の樹脂組成物を、アプリケーターやコンマコーターなどで塗工後、溶剤除去のため乾燥し、樹脂シートを作製することができる。さらにBステージ状態まで、加熱硬化あるいは光硬化してもよい。尚、前記加熱硬化の際、樹脂シート平坦化処理のため、熱プレスを用いることが望ましい。
【0034】
本発明の多層樹脂シートにおいて、樹脂シートの片面又は両面に絶縁接着剤層を形成する方法としては、特に制限はないが、樹脂シートの表面にワニス状の絶縁接着剤を塗布しても良く、あるいは、フィルム状の絶縁接着剤層を作製し、これを樹脂シートの表面に貼り付けても良い。
絶縁接着剤層の膜厚は3μm以上15μm以下であることが好ましい。接着性を重視するのであれば12μm以上15μm以下、熱伝導性を重視するのであれば3μm以上6μm以下の絶縁接着剤層を樹脂シートの片面あるいは両面に貼り付けることがより望ましい。
【0035】
樹脂シートは、高次構造を発現する樹脂としてメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂、分散剤、硬化剤、無機充填材を混合して作製することができる。光または熱により高次構造を発現させる樹脂(メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂)と硬化剤を反応させて、結晶構造部と非結晶構造部からなる高次架橋構造を形成させることができる。尚、樹脂シートを熱処理により硬化物にする条件としては、例えば、加熱温度120〜200℃、加熱時間30分〜10時間などである。そして、前記樹脂シートは表面(片面あるいは両面)に絶縁接着剤層を付与し、本発明の多層樹脂シートとする。
【0036】
樹脂シートにおいて、無機充填材は、2種類以上の粒子径の異なるものを混合して用いることが好ましく、これにより大粒子径の無機充填材の空隙に小粒子径の無機充填材がパッキングされることによって、単一粒子径の無機充填材のみを使用するよりも密に充填されるために、より高熱伝導率を発揮することが可能である。具体的には、酸化アルミニウムを使用した場合、無機充填材中、平均粒子径16〜20μmを60〜80質量%、平均粒子径2〜4μmを10〜20質量%、平均粒子径0.3〜0.5μmを10〜20質量%の範囲の割合で混合することによってより最密充填化が可能となる。
【0037】
樹脂シートにおいて、分散剤は微小フィラの凝集体や2次凝集を抑制するため、添加する。これにより、大粒子径の無機充填材の空隙にこれまで凝集体や2次凝集により埋めることのできなかった小粒子径の無機充填材が十分にパッキングされることによって、密に充填され、より高熱伝導率を発揮することが可能である。同時にこれまで空隙に入っていた樹脂が溢れ出てくるため、凹凸のあったシート表面が平坦化され、接着性の向上が可能である。
分散剤の添加量は、無機充填材100質量部に対し0.03〜1.0質量部の範囲であることが好ましい。無機充填材配合量にもよるが、具体的には、脂肪酸またはその誘導体の塩を使用した場合、0.03〜0.5質量部がより好ましく、0.03〜0.3質量部の範囲が特に好ましい。
【0038】
このようにして作製した樹脂シートの密度は無機充填材配合量にもよるが、通常3.00〜3.40g/cmとなる。樹脂シートの柔軟性と熱伝導率の両立を考慮した場合、3.00〜3.30g/cmが好ましく、3.10〜3.30g/cmの範囲がより好ましい。
【0039】
本発明の高熱伝導樹脂シートは、前記の多層樹脂シートの両面あるいは片面に基材を貼り合わせて作製される。なお、両面に貼り合わせる場合は、基材を互いに対向して貼り合わせることが好ましい。貼り合せ方法としてはプレス法やラミネート法などが挙げられる。基材としては銅板、アルミ板、セラミック板、エンプラ板などが挙げられる。尚、基材の種類による組み合わせに特に制限はない。また、基材の厚みは特に制限は無く、銅箔やアルミ箔などの金属箔を使用してもよい。なお、銅箔やアルミ箔などの金属箔を基材として使用する場合、通常、厚みは5〜70μmである。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の具体的な実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(樹脂シート1の作製方法)
無機充填材として酸化アルミニウム225.41質量部(住友化学株式会社製、α−アルミナ;平均粒子径18μmの酸化アルミニウム(AA−18)166.80質量部、平均粒子径3μmの酸化アルミニウム(AA−3)31.56質量部、平均粒子径0.4μmの酸化アルミニウム(AA−04)27.05質量部)と、シランカップリング剤として3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン0.24質量部(信越化学株式会社製、KBM−573)と、分散剤として特殊脂肪酸誘導体のアミド・アミン塩0.72質量部(楠本化成株式会社製、ED−113)と、硬化剤としてカテコールレゾルシノールノボラック(CRN)樹脂のシクロヘキサノン溶解品11.67質量部(日立化成工業株式会社製、固形分50質量%)と、メチルエチルケトン37.61質量部と、シクロヘキサノン6.70質量部およびアルミナボール300質量部(粒子径3mm)を混合し、均一になったことを確認した後に、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂として1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン18.04質量部(住友化学株式会社製、エポキシ樹脂)と、トリフェニルフォスフィン0.19質量部(和光純薬工業株式会社製)をさらに混合し、40〜60時間ボールミル粉砕を行い、樹脂組成物(樹脂シート塗工液)を得た。アプリケーターで前記塗工液をポリエチレンテレフタレートフィルム(藤森工業株式会社製、75E−0010CTR−4、以下PETフィルムと略)の離型面上に厚みが約300μmになるように塗布し、常態で10〜15分放置した後に100℃のボックス型オーブンで30分乾燥させた後に、空気に触れていた上面をPETフィルムで覆い、熱プレス(熱板130℃、圧力1MPa、処理時間25秒)により平坦化処理を行い、200μmの厚みを有する高熱伝導のBステージの樹脂シート1を得た。
なお、樹脂組成物において、分散剤の添加量は、無機充填材100質量部に対し0.32質量部であった。
【0041】
(樹脂シート2の作製方法)
無機充填材として酸化アルミニウム225.41質量部(住友化学株式会社製、α−アルミナ;平均粒子径18μmの酸化アルミニウム(AA−18)166.80質量部、平均粒子径3μmの酸化アルミニウム(AA−3)31.56質量部、平均粒子径0.4μmの酸化アルミニウム(AA−04)27.05質量部)と、シランカップリング剤として3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン0.24質量部(信越化学株式会社製、KBM−573)と、分散剤として特殊変性ポリエステル酸のアミン塩0.72質量部(楠本化成株式会社製、ED−118)と、硬化剤としてカテコールレゾルシノールノボラック(CRN)樹脂のシクロヘキサノン溶解品11.67質量部(日立化成工業株式会社製、固形分50質量%)と、メチルエチルケトン37.61質量部と、シクロヘキサノン6.70質量部およびアルミナボール300質量部(粒子径3mm)を混合し、均一になったことを確認した後に、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂として1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン18.04質量部(住友化学株式会社製、エポキシ樹脂)とトリフェニルフォスフィン0.19質量部(和光純薬工業株式会社製)をさらに混合し、40〜60時間ボールミル粉砕を行い、樹脂組成物(樹脂シート塗工液)を得た。アプリケーターで前記塗工液をポリエチレンテレフタレートフィルム(藤森工業株式会社製、75E−0010CTR−4、以下PETフィルムと略)の離型面上に厚みが約300μmになるように塗布し、常態で10〜15分放置した後に100℃のボックス型オーブンで30分乾燥させた後に、空気に触れていた上面をPETフィルムで覆い、熱プレス(熱板130℃、圧力1MPa、処理時間25秒)により平坦化処理を行い、200μmの厚みを有する高熱伝導のBステージの樹脂シート2を得た。
なお、樹脂組成物において、分散剤の添加量は、無機充填材100質量部に対し0.32質量部であった。
【0042】
(樹脂シート3の作製方法)
無機充填材として酸化アルミニウム225.41質量部(住友化学株式会社製、α−アルミナ;平均粒子径18μmの酸化アルミニウム(AA−18)166.80質量部、平均粒子径3μmの酸化アルミニウム(AA−3)31.56質量部、平均粒子径0.4μmの酸化アルミニウム(AA−04)27.05質量部)と、シランカップリング剤として3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン0.24質量部(信越化学株式会社製、KBM−573)と、分散剤として高級脂肪酸エステル0.72質量部(味の素ファインテクノ株式会社製、PN411)と、硬化剤としてカテコールレゾルシノールノボラック(CRN)樹脂のシクロヘキサノン溶解品11.67質量部(日立化成工業株式会社製、固形分50質量%)と、メチルエチルケトン37.61質量部と、シクロヘキサノン6.70質量部およびアルミナボール300質量部(粒子径3mm)を混合し、均一になったことを確認した後に、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂として1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン18.04質量部(住友化学株式会社製、エポキシ樹脂)と、トリフェニルフォスフィン0.19質量部(和光純薬工業株式会社製)をさらに混合し、40〜60時間ボールミル粉砕を行い、樹脂組成物(樹脂シート塗工液)を得た。アプリケーターで前記塗工液をポリエチレンテレフタレートフィルム(藤森工業株式会社製、75E−0010CTR−4、以下PETフィルムと略)の離型面上に厚みが約300μmになるように塗布し、常態で10〜15分放置した後に100℃のボックス型オーブンで30分乾燥させた後に、空気に触れていた上面をPETフィルムで覆い、熱プレス(熱板130℃、圧力1MPa、処理時間25秒)により平坦化処理を行い、200μmの厚みを有する高熱伝導のBステージの樹脂シート3を得た。
なお、樹脂組成物において、分散剤の添加量は、無機充填材100質量部に対し0.32質量部であった。
【0043】
(比較樹脂シートの作製方法)
無機充填材として酸化アルミニウム225.41質量部(住友化学株式会社製、α−アルミナ;平均粒子径18μmの酸化アルミニウム(AA−18)166.80質量部、平均粒子径3μmの酸化アルミニウム(AA−3)31.56質量部、平均粒子径0.4μmの酸化アルミニウム(AA−04)27.05質量部)と、シランカップリング剤として3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン0.24質量部(信越化学株式会社製、KBM−573)と、硬化剤としてカテコールレゾルシノールノボラック(CRN)樹脂のシクロヘキサノン溶解品11.67質量部(日立化成工業株式会社製、固形分50質量%)と、メチルエチルケトン37.61質量部と、シクロヘキサノン6.70質量部およびアルミナボール300質量部(粒子径3mm)を混合し、均一になったことを確認した後に、メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂として1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン18.04質量部(住友化学株式会社製、エポキシ樹脂)と、トリフェニルフォスフィン0.19質量部(和光純薬工業株式会社製)をさらに混合し、40〜60時間ボールミル粉砕を行い、樹脂組成物(樹脂シート塗工液)を得た。アプリケーターで前記塗工液をポリエチレンテレフタレートフィルム(藤森工業株式会社製、75E−0010CTR−4、以下PETフィルムと略)の離型面上に厚みが約300μmになるように塗布し、常態で10〜15分放置した後に100℃のボックス型オーブンで30分乾燥させた後に、空気に触れていた上面をPETフィルムで覆い、熱プレス(熱板130℃、圧力1MPa、処理時間25秒)により平坦化処理を行い、200μmの厚みを有するBステージの比較樹脂シートを得た。
なお、樹脂組成物において、分散剤の添加量は、無機充填材100質量部に対し0質量部であった。
【0044】
(絶縁接着剤層の作製方法)
シリコン変性ポリアミドイミド樹脂100質量部と、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂50質量部と、硬化剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール1.0質量部と、溶剤としてN−メチルピロリドンを混合し、ワニス状の絶縁接着剤を得た。前記絶縁接着剤を、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに、塗布し、120℃10分の条件で、溶剤を乾燥させ、厚み12μmのフィルム状の絶縁接着剤層を作製した。
【0045】
(多層樹脂シート1の作製)
作製した高熱伝導のBステージの樹脂シート1に対して、真空ラミネータ(株式会社名機製作所製)を用いて、温度100℃、圧力0.8MPa、真空度≦1kPa、時間25秒間の条件で両面に前記のフィルム状の絶縁接着剤層を貼り付けた。また、表面平坦性として、SEM(走査型電子顕微鏡)でシート表面の観察を行なったところ、図1に示した通り、凹凸や空隙は見られなかった。
【0046】
(多層樹脂シート2の作製)
作製した高熱伝導のBステージの樹脂シート2に対して、真空ラミネータ(株式会社名機製作所製)を用いて、温度100℃、圧力0.8MPa、真空度≦1kPa、時間25秒間の条件で両面に前記のフィルム状の絶縁接着剤層を貼り付けた。
【0047】
(多層樹脂シート3の作製)
作製した高熱伝導のBステージの樹脂シート3に対して、真空ラミネータ(株式会社名機製作所製)を用いて、温度100℃、圧力0.8MPa、真空度≦1kPa、時間25秒間の条件で両面に前記のフィルム状の絶縁接着剤層を貼り付けた。
【0048】
(多層樹脂シート4の作製)
作製したBステージの比較樹脂シートに対して、真空ラミネータ(株式会社名機製作所製)を用いて、温度100℃、圧力0.8MPa、真空度≦1kPa、時間25秒間の条件で両面に前記のフィルム状の絶縁接着剤層を貼り付けた。
【0049】
(多層樹脂シートと基材(アルミ板)との貼り付け)
厚み2mmのアルミ板の間に作製した多層樹脂シート1を挿入し、真空ラミネータ(株式会社名機製作所製)を用いて、温度130℃、圧力2.0MPa、真空度≦1kPa、時間10分間の条件で圧着させ、モジュール(アルミ)を作製した。
【0050】
(実施例1)
得られたモジュール(アルミ)1をボックス型オーブンを用い、140℃で2時間、165℃で2時間、190℃で2時間のステップキュアにより多層樹脂シート硬化物を得た。
また多層樹脂シート1の両面を35μm厚の銅箔(古河電気工業株式会社製、GTS箔)で挟み、真空熱プレス(熱板温度130℃、真空度≦1kPa、圧力4MPa、処理時間10分)を行い、モジュール(銅)を作製した。
得られたモジュール(銅)の硬化物から、銅のみを過硫酸ナトリウム溶液を用いてエッチング除去し、多層樹脂シート硬化物1のみを得た。
作製した多層樹脂シート硬化物1の熱伝導率をXe−flashアナライザー(キセノンフラッシュ法)により測定した結果、4.2W/mKであった。
作製した高熱伝導樹脂シート1の接着性を、ピール強度試験及びリフロー試験を行い評価した。ピール試験はテストスピード10mm/secで実施した。評価の結果、1.5kN/mm以上と接着性は良好であった。また、リフロー試験は窒素雰囲気下、300℃/5minで行った。その結果、剥離は見られず、接着性は良好であった。
作製した高熱伝導樹脂シート1の絶縁性を、耐電圧試験(JIS C2110)を行い評価した。耐電圧は5kV以上であり、良好であった。結果を表1に示した。
【0051】
(実施例2)
得られた多層樹脂シート2をボックス型オーブンを用い、140℃で2時間、165℃で2時間、190℃で2時間のステップキュアにより多層樹脂シート硬化物を得た。表面平坦性として、SEMでシート表面の観察を行なったところ凹凸や空隙は見られなかった。
また多層樹脂シート2の両面を35μm厚の銅箔(古河電気工業株式会社製、GTS箔)で挟み、真空熱プレス(熱板温度130℃、真空度≦1kPa、圧力4MPa、処理時間10分)を行い、高熱伝導樹脂シート2を作製した。
得られた高熱伝導樹脂シート2の硬化物から、銅のみを過硫酸ナトリウム溶液を用いてエッチング除去し、多層樹脂シート硬化物2のみを得た。
作製した多層樹脂シート硬化物2の熱伝導率をXe−flashアナライザー(キセノンフラッシュ法)により測定した結果、3.5W/mKであった。
作製した高熱伝導樹脂シート2の接着性及び絶縁性を、実施例1と同様に行い、評価した。結果を表1に示した。
【0052】
(実施例3)
得られた多層樹脂シート3をボックス型オーブンを用い、140℃で2時間、165℃で2時間、190℃で2時間のステップキュアにより多層樹脂シート硬化物を得た。表面平坦性として、SEMでシート表面の観察を行なったところ凹凸や空隙は見られなかった。
また多層樹脂シート3の両面を35μm厚の銅箔(古河電気工業株式会社製、GTS箔)で挟み、真空熱プレス(熱板温度130℃、真空度≦1kPa、圧力4MPa、処理時間10分)を行い、高熱伝導樹脂シート3を作製した。
得られた高熱伝導樹脂シート3の硬化物から、銅のみを過硫酸ナトリウム溶液を用いてエッチング除去し、多層樹脂シート硬化物3のみを得た。
作製した多層樹脂シート硬化物3の熱伝導率をXe−flashアナライザー(キセノンフラッシュ法)により測定した結果、3.4W/mKであった。
作製した高熱伝導樹脂シート3の接着性及び絶縁性を、実施例1と同様に行い、評価した。結果を表1に示した。
【0053】
(比較例1)
得られた多層樹脂シート4をボックス型オーブンを用い、140℃で2時間、165℃で2時間、190℃で2時間のステップキュアにより多層樹脂シート硬化物を得た。表面平坦性として、SEMでシート表面の観察を行なったところ、図2に示した通り、凹凸や空隙が多数見られた。
また多層樹脂シート4の両面を35μm厚の銅箔(古河電気工業株式会社製、GTS箔)で挟み、真空熱プレス(熱板温度130℃、真空度≦1kPa、圧力4MPa、処理時間10分)を行い、高熱伝導樹脂シート4を作製した。
得られた高熱伝導樹脂シート4の硬化物から、銅のみを過硫酸ナトリウム溶液を用いてエッチング除去し、多層樹脂シート硬化物4のみを得た。
作製した多層樹脂シート硬化物4の熱伝導率をXe−flashアナライザー(キセノンフラッシュ法)により測定した結果、4.3W/mKであった。
作製した高熱伝導樹脂シート4の接着性及び絶縁性を、実施例1と同様に行い、評価した。結果を表1に示した。ピール強度を測定したところ1kN/mm未満と接着性は低く、絶縁性もなかった。
【0054】
【表1】

【0055】
分散剤を含む実施例1〜3の多層樹脂シートは表面平坦性、絶縁性及び銅箔との接着性は良好であった。一方、分散剤を含まない比較例1の多層樹脂シートは表面平坦性、絶縁性はなく、銅箔との接着性も実施例1〜3に比べて弱かった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、高い熱伝導率を有するとともに、実装時などの過酷な熱衝撃にも耐え得る多層樹脂シート及び高熱伝導樹脂シートを提供するものであり、今後加速的な需要増が見込まれるハイブリッド自動車インバータ用放熱材や、産業機器インバータ用放熱材料、またはLED用放熱材料へ適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソゲン骨格を有するエポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び分散剤を含む樹脂組成物を用いて得られる樹脂シートの片面又は両面に絶縁接着剤層を形成して成る多層樹脂シート。
【請求項2】
分散剤が、脂肪酸、脂肪酸の誘導体、ポリエステル酸またはそれらの塩の少なくとも一種類以上を含んだものである請求項1に記載の多層樹脂シート。
【請求項3】
分散剤の添加量が、無機充填材100質量部に対し0.03〜1.0質量部である請求項1または2に記載の多層樹脂シート。
【請求項4】
絶縁接着剤層が、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及び変性ポリアミドイミド樹脂のうち少なくとも一種類以上を含んでなる請求項1〜3のいずれかに記載の多層樹脂シート。
【請求項5】
絶縁接着剤層の厚さが、3μm以上15μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の多層樹脂シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の多層樹脂シートの片面又は両面に基材を貼り合わせてなる高熱伝導樹脂シート。
【請求項7】
基材が、銅箔、アルミ箔、アルミ板、銅板、エンプラ板及びエポキシ板のうちのいずれかである、請求項6に記載の高熱伝導樹脂シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−251491(P2011−251491A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127805(P2010−127805)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】