説明

多層配線板の製造方法

【課題】 不良が発生した内層材のみを廃却処分とし、従来廃却処分としていた正常な内層材を再利用することでコストを抑え生産性を向上させるとともに、内層材間の位置合わせ精度を低下させることのない多層配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】 位置決め穴形成のためのマーク2を内層材1の両側端部の対向する位置にそれぞれ設けた後、この内層材1の前記マーク2位置に一対の位置決め穴を穴開け加工により一括して形成し、次いで内層材1間の位置合わせを行って多層配線板を形成する多層配線板の製造方法であって、位置決め穴形成のためのマーク2を内層材1の両側端部に少なくとも2対以上設け、これによって複数回の穴開け加工を可能とし、穴開け加工したマーク2位置とは別のマーク2位置に一対の位置決め穴を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、多層配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、導体回路が形成された複数枚の内層材をプリプレグを介して重ね、さらにこの上下にプリプレグを介して銅箔等の金属箔を重ねて、これを加熱加圧して積層成形して多層配線板を製造している。このとき、複数枚の内層材が相互に位置ずれして各内層材の導体回路間でずれが生じることを防止するために、各内層材間を位置合わせした状態で積層成形をおこなうようにしている。このような内層材間の位置ずれを防止する方法としては、複数枚の内層材に位置決め穴を設け、この位置決め穴に位置決めピンを挿通させて各内層材間を位置合わせした後仮止めすることが知られている(たとえば、特許文献1,2参照)。その一例を図3を参照して説明する。図3によれば、内層材1に導体回路(図示なし)を形成するとともに内層材1の両側端部の対向する位置に一対の位置決め穴5形成のためのマーク(図示なし)をパターン形成し、この内層材1を複数枚積み重ねて穴開け加工により一対の位置決め穴5を一括して各内層材1の前記マーク位置に形成している。次いでこれらの内層材1を重ねて、各位置決め穴5に位置決めピン6を挿通させて各内層材1間を位置合わせしている。
【0003】
ところで、多層配線板の製造方法においては、内層材の導体回路検査は、一般的には、穴開け穴加工後におこなっている。導体回路検査後に穴開け穴加工をおこなうと加工時に内層材の銅表面にキズがはいる場合があり、外観不良品が流出してしまうという問題があるからである。また、多層配線板を構成する各内層材は、通常、互いに同一の製造ロットのものを組合わせて用いている。
【特許文献1】実開平5−41185号公報
【特許文献2】特開平5−218648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法によれば、検査時に内層材の不良が見つかった場合、この内層材と同じ多層配線板を構成する正常な内層材と、製造ロットの異なる内層材とを組合わせて多層配線板を製造しようとしても位置合わせができないことから、同じ多層配線板を構成する正常な内層材も全て廃却処分せざるをえなかった。
【0005】
そこで、本願発明は、以上の通りの背景から、不良が発生した内層材のみを廃却処分とし、従来廃却処分としていた正常な内層材を再利用することでコストを抑え生産性を向上させるとともに、内層材間の位置合わせ精度を低下させることのない多層配線板の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、前記の課題を解決するものとして、位置決め穴形成のためのマークを内層材の両側端部の対向する位置にそれぞれ設けた後、この内層材の前記マーク位置に一対の位置決め穴を穴開け加工により形成し、次いで内層材間の位置合わせを行って多層配線板を形成する多層配線板の製造方法であって、位置決め穴形成のためのマークを内層材の両側端部に少なくとも2対以上設け、これによって複数回の穴開け加工を可能とし、穴開け加工したマーク位置とは別のマーク位置に一対の位置決め穴を形成するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前記のとおりの上記発明によれば、位置決め穴形成のためのマークを内層材の両側端部に少なくとも2対以上設けるようにすることで複数回の穴開け加工が可能となるため、従来廃却処分としていた正常な内層材を再利用することができる。すなわち、正常な内層材、と製造ロットの異なる、たとえば穴開け加工未実施の内層材とを用いて、穴開け加工未実施のマーク位置に再度一対の位置決め穴を一括して形成し、各内層材間で位置合わせした後、積層成形することができるのである。これによって、コストを抑え生産性を向上させるとともに内層材間の位置合わせ精度を低下させることなく多層配線板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本願発明は前記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。図1は実施の形態を説明するための平面図であり、図2は多層配線板の一例を示した断面図である。
【0009】
図1に示すように、内層材1に対して位置決め穴形成のためのマーク2と導体回路3を設けており、マーク2は内層材1の両側端部の対向する位置に少なくとも2対以上設けている。マーク2の形成方法については、特に制限されるものではなく、たとえば、エッチングによって形成するようにしてもよい。
【0010】
このマーク2は位置決め穴形成のための目印であればよく、その形状については特に制限されるものではない。そして、マーク2位置への穴開け加工は、内層材1を一枚ずつもしくは所定枚数重ねておこなってもよく、製造設備等によって適宜に設定される。
【0011】
本願発明は、前述のとおり、位置決め穴形成のためのマーク2を2対以上設けることで、複数回の穴開け加工を可能とするものである。すなわち、最初に穴開け加工したマーク2位置とは別のマーク2位置に、新たな一対の位置決め穴の形成を可能とするものである。なお、本願発明でいう「一対の位置決め穴」とは、多層配線板の製造工程において各内層材1,1’間の位置合わせに必要な複数個の位置決め穴のことを意味しており、多層配線板の種類や製造設備によって適宜に決定される。たとえば、内層材1,1’の両側端部の対向する位置に位置決め穴をそれぞれ1個ずつ設けて(一枚の内層材に合計2個の位置決め穴)、合計2本の位置決めピンを各位置決め穴に挿通させて各内層材1,1’間の位置合わせをする場合、あるいは内層材1,1’の両側端部の対向する位置に位置決め穴をそれぞれ2個ずつ設けて(一枚の内層材に合計4個の位置決め穴)、合計4本の位置決めピンを各位置決め穴に挿通させて各内層材1,1’間の位置合わせをする場合等いずれの場合も、内層材1,1’に設けた位置決め穴は、一対の位置決め穴である。よって、2対の位置決め穴形成のためのマーク2を内層材1,1’に設けるときは、前述の例でいうと、前者は内層材1,1’の両側端部の対向する位置にそれぞれ2個ずつマーク2を設けるようにし(一枚の内層材に合計4個のマーク)、後者は内層材1,1’の両側端部の対向する位置にそれぞれ4個ずつマーク2を設けるようにする(一枚の内層材に合計8個のマーク)。3対以上のマークを設けるときも同様である。
【0012】
2対以上のマーク2を設けることによって、たとえば、内層材1,1’の導体回路検査後において従来廃却処分としていた正常な内層材1と、この内層材1と同じ多層配線板を構成する、たとえば、製造ロットが異なる穴開け加工未実施の内層材1’とを組合わせることで多層配線板を製造することができる。具体的には、従来廃却処分としていた正常な内層材1と穴開け加工未実施の内層材1’との穴開け加工未実施のマーク2位置に新たな一対の位置決め穴を形成する。次いで、導体回路検査を実施し、正常であればこれら各内層材1,1’間で位置合わせをして多層配線板を製造する。たとえば、内層材1’が不良品であればその内層材1’を廃却処分とし、正常な内層材1と新たな穴開け加工未実施の内層材1’とを用いて、再び一対の位置決め穴を形成して、各内層材1,1’間で位置合わせをして多層配線板を製造するようにする。このとき、一対の位置決め穴を形成する工程は予め設けたマーク2がなくなるまで繰り返し実施することができる。
【0013】
本願発明における内層材1としては、たとえば、銅張りガラス基材エポキシ樹脂積層板や銅張りガラス基材ポリイミド樹脂積層板などに導体回路3を形成したものを用いることができる。そして、この内層材1をプリプレグ4を介して重ね合わせ、たとえば、さらにその外層に銅箔等の金属箔を重ね合わせるようにして多層配線板を製造するようにしてもよい。
【0014】
以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって本願発明が限定されることはない。
【実施例】
【0015】
内層材(512×423×0.2mm)にドライフィルムをラミネート後、フィルムを用いて導体回路パターンを露光した後、現像、エッチング、剥離をおこない、導体回路パターンおよび2対のマークを形成した。次いで、位置決め穴の穴開け加工をおこなった。多層配線板は図2で示した構造の6層シールド板とした。L2−L3層の内層材100枚、L4−L5層の内層材100枚を1ロットとし、それぞれ5ロット分について、導体回路、2対のマークの形成および穴開け加工をおこない、導体回路検査を実施した後、良品と不良の発生個数を調べた。
【0016】
表1に導体回路検査結果を示す。
【0017】
【表1】

表2は、導体回路検査後に製造した多層配線板のセット個数である。
【0018】
【表2】

表2の結果より、マークを2対設けることによって、正常な内層材を廃却処分することなく、この正常な内層材と、異なるロットの内層材とを組合わせて再利用することで多層配線板をより多く製造することができることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明の実施の形態を説明する平面図である。
【図2】本願発明における多層配線板の一例を示した断面図である。
【図3】従来の多層配線板の製造方法を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1,1’ 内層材
2 マーク
3 導体回路
4 プリプレグ
5 位置決め穴
6 位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め穴形成のためのマークを内層材の両側端部の対向する位置にそれぞれ設けた後、この内層材の前記マーク位置に一対の位置決め穴を穴開け加工により形成し、次いで内層材間の位置合わせを行って多層配線板を形成する多層配線板の製造方法であって、位置決め穴形成のためのマークを内層材の両側端部に少なくとも2対以上設け、これによって複数回の穴開け加工を可能とし、穴開け加工したマーク位置とは別のマーク位置に一対の位置決め穴を形成するようにしたことを特徴とする多層配線板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−59849(P2007−59849A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246844(P2005−246844)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】