説明

多成分ガス検知装置

【課題】 標準装備された既定ガスセンサと互いに特性の異なる追加のガスセンサを容易に装着することができ、しかも、目的とする検知対象ガスの濃度を選択性良く高い信頼性をもって得ることのできる多成分ガス検知装置を提供すること。
【解決手段】 この多成分ガス検知装置は、少なくとも1つが追加のガスセンサが着脱自在に装着されるガスセンサ追加装着部である、複数のガスセンサ装着部と、当該複数のガスセンサ装着部に装着された、互いに検知対象ガスの種類または検知レベルが異なる複数の既定ガスセンサおよび追加のガスセンサと、ガス供給機構とを備えてなり、追加のガスセンサが、被検ガスの流通方向において、既定ガスセンサおよびガス供給機構の位置との関係において、ガスセンサの特性に応じた位置に配管接続されて、すべてのガスセンサを直列に接続する一のガス流通路が形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知対象ガスの種類が互いに異なる複数のガスセンサが設けられ、複数のガス成分を同時に検知することができるよう構成された多成分ガス検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な分野で、検知対象ガスを選択性良く検出するために、ガス検知装置の多機能化が要請されており、このような要請に対して、通常、検知対象ガスの種類が互いに異なる複数のガスセンサを搭載するなどして対応している。例えば炭化水素ガス検知用のガスセンサ、酸素ガス検知用のガスセンサ、一酸化炭素ガス検知用のガスセンサおよび硫化水素ガス検知用のガスンサの4つのガスセンサが搭載された多成分ガス検知装置などが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
近年においては、上記4つのガス成分以外の他のガス成分を同時に検出することが必要とされる場合も少なくなく、搭載するガスセンサの種類や役割が多様化してきている。
しかしながら、複数のガスセンサを具えた多成分ガス検知装置においては、標準装備された各々のガスセンサからの出力信号を共通の信号処理システムにより処理することにより各々の検知対象ガスの濃度を算出する構成とされており、他のガスセンサを単に追加した場合には、当該ガスセンサに対応する信号処理システムなどを別個に構成することが必要となって管理が複雑になるという、問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−116169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、標準装備された既定ガスセンサと互いに特性の異なる追加のガスセンサを容易に装着することができ、しかも、目的とする検知対象ガスの濃度を選択性良く高い信頼性をもって得ることのできる多成分ガス検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多成分ガス検知装置は、少なくとも1つが追加のガスセンサが着脱自在に装着されるガスセンサ追加装着部である、複数のガスセンサ装着部と、当該複数のガスセンサ装着部に装着された、互いに検知対象ガスの種類または検知レベルが異なる複数の既定ガスセンサおよび追加のガスセンサと、前記既定ガスセンサおよび追加のガスセンサの各々に被検ガスを供給するガス供給機構とを備えてなり、
前記追加のガスセンサが、被検ガスの流通方向において、既定ガスセンサおよびガス供給機構の位置との関係において、ガスセンサの特性に応じた位置に配管接続されて、すべてのガスセンサを直列に接続する一のガス流通路が形成されてなることを特徴とする。
【0007】
本発明の多成分ガス検知装置においては、既定のガスセンサが、各々、被検ガス流通方向におけるガス供給機構より上流側に位置される硫化水素ガス検知用の定電位電解式ガスンサおよびその下流側に位置される炭化水素ガス検知用の接触燃焼式ガスセンサと、各々、被検ガスの流通方向におけるガス供給機構より下流側に位置される一酸化炭素ガス検知用の定電位電解式ガスセンサおよびその下流側に位置される酸素ガス検知用のガルバニ式ガスセンサとよりなり、
追加のガスセンサとして、特殊毒性ガス検知用の定電位電解式ガスセンサ、揮発性有機化合物検知用の光イオン化式ガスセンサ、または高濃度可燃性ガス検知用の熱伝導式ガスセンサが用いられる場合には、当該追加のガスセンサが被検ガスの流通方向における硫化水素ガス検知用の定電位電解式ガスセンサより上流側に位置されることが好ましい。
また、追加のガスセンサとして、二酸化硫黄ガス検知用の定電位電解式ガスセンサが用いられる場合には、当該追加のガスセンサが被検ガスの流通方向におけるガス供給機構より上流側であって、炭化水素ガス検知用の接触燃焼式ガスセンサより下流側に位置されることが好ましい。
さらにまた、追加のガスセンサとして、二酸化炭素ガス、イソブタンガスまたはメタンガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサが用いられる場合には、当該追加のガスセンサが被検ガスの流通方向におけるガス供給機構の直前または直後に位置されることが好ましい。
【0008】
また、本発明の多成分ガス検知装置においては、前記複数のガスセンサ装着部のうちの2つ以上がガスセンサ追加装着部であり、当該ガスセンサ追加装着部の各々は互いに同一の構成を有しており、追加のガスセンサがアダプタ部材を介してガスセンサ追加装着部に装着される構成とされていることが好ましい。
【0009】
さらにまた、本発明の多成分ガス検知装置においては、ガスセンサ追加装着部を含む複数のガスセンサ装着部の各々がガス流通路形成部材が用いられて配管接続されることによってガス流通路が形成されてなり、
ガスセンサ追加装着部に装着される追加のガスセンサに応じてガス流通路形成部材の配管接続が変更可能に構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多成分ガス検知装置によれば、少なくとも1つの追加のガスセンサが被検ガスの流通方向における、既定ガスセンサおよびガス供給機構の位置との関係において、ガスセンサの特性に応じた適正な位置に配管接続されることにより、他のガスセンサに対して影響を与えることなく、すべてのガスセンサにおいて目的とする検知対象ガスの濃度を選択性良く検知することができるので、得られる検知結果は高い信頼性を有するものとなる。
【0011】
また、複数のガスセンサ追加装着部の各々が互いに同一の構成を有しており、追加のガスセンサがアダプタ部材を介してガスセンサ追加装着部に装着される構成とされていることにより、互いに外形形状が異なる追加のガスセンサを他のものと交換可能に装着することができるので、種々のタイプのガスセンサに対応することができる。
【0012】
さらに、ガスセンサ追加装着部を含む複数のガスセンサ装着部の各々がガス流通路形成部材が用いられて配管接続されることによってガス流通路が形成されてなり、ガスセンサ追加装着部に装着される追加のガスセンサに応じてガス流通路形成部材の配管接続が変更可能に構成されていることにより、所期のガス流通路を確実に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の多成分ガス検知装置は、少なくとも1つが追加のガスセンサが着脱自在に装着されるガスセンサ追加装着部である、複数のガスセンサ装着部と、当該複数のガスセンサ装着部に装着された、互いに検知対象ガスの種類または検知レベルが異なる複数の既定ガスセンサおよび追加のガスセンサと、複数の既定ガスセンサの各々からの出力信号を処理して各々のガスセンサに係る測定データを作成する機能を有する主データ処理機構と、追加のガスセンサの出力信号を処理する測定データ作成機構と、複数のガスセンサの各々に被検ガスを供給する被検ガス供給機構と、表示機構とを具えている。
【0014】
図1は、本発明の多成分ガス検知装置の一例における要部構成の概略を示すブロック図、図2は、本発明の多成分ガス検知装置におけるガスセンサ装着部の構成の概略を示す説明図である。
この多成分ガス検知装置におけるガスセンサ装着部は、例えば4つの既定ガスセンサS1,S2,S3,S4が装着されるガスセンサ装着部20A,20B,20C,20Dを有する、一の構造体として構成された標準チャンバ20と、各々、追加のガスセンサが装着されるガスセンサ追加装着部301を有する例えば3つの増設用チャンバ(オプションチャンバ)30A,30B,30Cとを有しており、最大で3つの追加のガスセンサが増設可能とされて合計7つのガスセンサによる7種のガス成分が同時に検出可能に構成されている。なお、図2においては、便宜上、標準チャンバ20と増設用チャンバ30A,30B,30Cとは互いに分離した状態で示されているが、標準チャンバ20と増設用チャンバ30A,30B,30Cとが一体的に構成されていてもよい。
【0015】
標準チャンバ20における各々のガスセンサ装着部20A〜20Dには、被検ガス導入用ニップル21および被検ガス排出用ニップル22が設けられている。
また、増設用チャンバ30A〜30Cの各々は、互いに同一の構成を有し、例えば円柱状の内部空間を形成する凹所により構成されたガスセンサ追加装着部301を有すると共に、被検ガス導入用ニップル21および被検ガス排出用ニップル22が設けられている。
【0016】
この多成分ガス検知装置においては、既定ガスセンサとして、例えば、炭化水素ガス検知用の接触燃焼式ガスセンサS1、酸素ガス検知用のガルバニ式ガスセンサS2、一酸化炭素ガス検知用の定電位電解式ガスセンサS3および硫化水素ガス検知用の定電位電解式ガスンサS4が標準装備されており、各々の既定ガスセンサS1〜S4は、被検ガスの流通方向において、被検ガス供給機構である例えば吸引ポンプPに対してガスセンサの特性に応じた適正な位置(順序)に配管接続される。既定ガスセンサS1〜S4の配管接続方法については後述する。
【0017】
主データ処理機構は、各々の既定ガスセンサS1〜S4からの出力信号を処理して測定データを得るための測定データ作成機構としての機能を備えた共通の信号処理システムと、各々の既定ガスセンサS1〜S4についての固有の情報が記録されると共に測定データが記録される(データロガ機能)メモリ15と、例えば赤外線通信を利用した外部出力端子16と、計時部(RTC)17とを有するメイン基板10により構成されており、信号処理システムは、例えばアンプ12、A/D変換器13およびマイコン(CPU)11を具えてなる。ここに、既定ガスセンサS1〜S4に固有の情報としては、例えばセンサ型式,ガス名,校正前濃度,校正後濃度,校正日時,フルスケール,オプションガス名,少数点位置,デジット,警報点,校正濃度,ゼロサプレス値,ゼロ追尾設定,Wレンジデータ,切り替え濃度などを例示することができる。
【0018】
上述したように、上記多成分ガス検知装置においては、既定ガスセンサS1〜S4の各々と検知対象ガスの種類または検知レベルが異なる、例えば3つの追加のガスセンサ31A,31B,31Cが増設可能に構成されており、増設される各々の追加のガスセンサ31A〜31Cに対応する測定データ作成機構が設けられている。
【0019】
この多成分ガス検知装置において増設可能な追加のガスセンサとしては、例えば揮発性有機化合物(VOC)検知用の光イオン化式ガスセンサ、アンモニアガスまたは塩素ガスなどの特殊毒性ガス検知用の定電位電解式ガスセンサ、高濃度可燃性ガス検知用の熱伝導式ガスセンサ、二酸化硫黄ガス検知用の定電位電解式ガスセンサ、二酸化炭素ガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサ、メタンガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサ、イソブタンガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサなどを例示することができる。
【0020】
追加のガスセンサ31A,31B,31Cは、通常、互いに外形形状が異なるものであるが、各々の増設用チャンバ30A〜30Cにおけるガスセンサ追加装着部301に対して、アダプタ部材が必要に応じて適宜に用いられて着脱自在に装着される。
アダプタ部材50は、図3に示すように、ガスセンサ追加装着部301の形状に適合する円筒状の基体51と、この基体51の内部に配置されるセンサ受け基板52とにより構成されており、追加のガスセンサ31A〜31Cが基体51の内部に受容されて装着される。
【0021】
各々の測定データ作成機構は、追加のガスセンサ31A〜31Cからの出力信号を処理して、ガス濃度データおよびガスセンサの故障状態および測定単位などのステータスデータを含む測定データを作成する機能を有し、例えば、マイコン(CPU)32A,32B,32Cを含む、追加のガスセンサ31A〜31Cからの出力信号を処理してメイン基板10において得られる既定ガスセンサS1〜S4の各々に係る測定データと統一された規格、具体的には、同一のデータ通信の規格による測定データを得る信号処理システムを具えた機能拡張用サブ基板35A,35B,35Cよりなり、メイン基板10に電気的に接続されている。
各々の機能拡張用サブ基板35A〜35Cは、互いに同一のインターフェースを有し、例えば同一サイズで作成されている。
【0022】
各々の機能拡張用サブ基板35A〜35Cは、メイン基板10との間でデータの相互通信を行う機能を有する。
メイン基板10と各々の機能拡張用サブ基板35A〜35Cとのデータ通信は、例えばI2 Cバスなどの2線式シリアル通信接続、SPIバスなどの3線式シリアル通信接続による信号伝送路、例えば図4(A)、(B)に示すように、すべての追加のガスセンサに対応する機能拡張用サブ基板35A〜35Cに共通の信号伝送路を介して行われる。
【0023】
また、各々の機能拡張用サブ基板35A〜35Cは、増設可能な追加のガスセンサ31A〜31Cに固有の情報が記録されると共に測定データが記録される(データロガ機能)メモリ33A〜33Cを備えている。ここに、追加のガスセンサ31A〜31Cに固有の情報としては、例えばセンサ型式,ガス名,校正前濃度,校正後濃度,校正日時,フルスケール,オプションガス名,少数点位置,デジット,警報点,校正濃度,ゼロサプレス値,ゼロ追尾設定,Wレンジデータ,切り替え濃度などを例示することができる。
また、追加のガスセンサの特性に応じて、ガスセンサに固有の特性を補償するためのデータ、例えば、定電位電解式ガスセンサに対応する機能拡張用サブ基板のメモリにはD/A調整値、赤外線吸収式ガスセンサに対応する機能拡張用サブ基板のメモリには、光波 (正弦波)の面積値、POT調整値、熱伝導式センサに対応する機能拡張用サブ基板のメモリには、センサ電圧、D/A調整値などが固有の情報として記録されている。
【0024】
以上において、例えば、二酸化硫黄ガス検知用の定電位電解式ガスセンサ31A、二酸化炭素ガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサ31BおよびVOC検知用の光イオン化式ガスセンサ31Cの3つの追加のガスセンサが増設される場合における合計7つのガスセンサの配管接続について説明すると、先ず、4つの既定ガスセンサS1〜S4は、図2および図5に示すように、硫化水素ガス検知用の定電位電解式ガスンサS4および炭化水素ガス検知用の接触燃焼式ガスセンサS1が被検ガスの流通方向における吸引ポンプPの上流側にこの順で位置されると共に、一酸化炭素ガス検知用の定電位電解式ガスセンサS3および酸素ガス検知用のガルバニ式ガスセンサS2が被検ガスの流通方向における吸引ポンプPの下流側にこの順で位置されるよう、例えばチューブなどの適宜のガス流路形成部材が各々のガスセンサ装着部20A〜20Dについての被検ガス導入用ニップル21および被検ガス排出用ニップル22に配管接続される。このような配置とする理由は次に示す通りである。
【0025】
(イ)酸素ガス検知用のガルバニ式ガスセンサS2が被検ガスの流通方向における最も下流側に位置される理由は、被検ガスの流通方向における酸素ガス検知用のガルバニ式ガスセンサS2の下流側の位置に別のガスセンサを取り付けると負荷による影響があるためである。
(ロ)一酸化炭素ガス検知用の定電位電解式ガスセンサS3が、被検ガスの流通方向における、酸素ガス検知用のガルバニ式ガスセンサS2以外の他のガスセンサよりも下流側に位置される理由は、被検ガスの流通方向における直前の位置に活性炭のラインフィルタFを取り付ける必要があるためである。
(ハ)硫化水素ガス検知用の定電位電解式ガスンサS4が被検ガスの流通方向における炭化水素ガス検知用の接触燃焼式ガスセンサS1より上流側に位置される理由は、炭化水素ガス検知用の接触燃焼式ガスセンサS1には、干渉ガスである硫化水素ガス除去フィルタが設けられているためである。
【0026】
次いで、上記3つの追加のガスセンサは、被検ガスの流通方向において、吸引ポンプPおよび既定ガスセンサS1〜S4に対して当該追加のガスセンサの特性に応じた適正な位置にそれぞれ配管接続される。
すなわち、図2および図5に示すように、VOC検知用の光イオン化式ガスセンサ31Cが硫化水素ガス検知用の定電位電解式ガスンサS4よりガス流通方向における上流側に位置され、二酸化硫黄ガス検知用の定電位電解式ガスセンサ31Aが炭化水素ガス検知用の接触燃焼式ガスセンサS1よりガス流通方向における下流側であって吸引ポンプPより上流側に位置され、二酸化炭素ガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサ31Bが、ガス流通方向における吸引ポンプPの直前または直後(図示の例においては直前)に位置されるよう、適宜のガス流路形成部材がガスセンサ追加装着部301における被検ガス導入用ニップル21および被検ガス排出用ニップル22に配管接続され、これにより、7つのガスセンサが例えば直列に接続された一のガス流路(図2において二点鎖線で示す)が形成される。追加のガスセンサ31A〜31Cが上記のような位置される理由は次に示す通りである。
【0027】
(ニ)VOC検知用の光イオン化式センサ31Cが先頭に位置される理由は、VOC検知用の光イオン化式センサ31Cがその検知対象ガスの吸着による影響が大きいものであるためである。
(ホ)二酸化硫黄ガス検知用の定電位電解式ガスセンサ31Aが、被検ガスの流通方向における炭化水素ガス検知用の接触燃焼式ガスセンサS1より下流側に位置される理由は、硫化水素ガスによる影響を抑えるためである。
(ヘ)二酸化炭素ガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサ31Bが吸引ポンプPの直前または直後に位置される理由は、二酸化炭素ガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサ31Bが流量に対する負荷が大きいものであるためである。
【0028】
また、上記において例示したその他の追加のガスセンサが増設される場合には、例えば上記ガスセンサの配管接続例において、例えばVOC検知用の光イオン化式ガスセンサ31Cが装着される増設用チャンバ30Cには、塩素ガス検知用の定電位電解式ガスセンサ、アンモニアガス検知用の定電位電解式ガスセンサ、または高濃度可燃性ガス検知用の熱伝導式ガスセンサが他の追加のガスセンサと交換可能に装着される。
また、例えば二酸化炭素ガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサ31Bが装着される増設用チャンバ30Bには、イソブタンガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサ、メタンガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサなどが他の追加のガスセンサと交換可能に装着される。
【0029】
以下、上記多成分ガス検知装置の動作について説明する。
図6に示すように、メイン基板10より追加のガスセンサ31A〜31Cの各々に対応する機能拡張用サブ基板35A〜35Cに対して初期データ読み出し指令信号が出力され、当該機能拡張用サブ基板35A〜35Cのメモリ33A〜33Cに記録された初期データを取得する起動処理が行われ、機能拡張用サブ基板35A〜35Cからの初期データが受信されたことが確認されることにより、吸引ポンプPによって被検ガスがフィルタ38を介して既定ガスセンサS1〜S4および追加のガスセンサ31A〜31Cの各々に順次に供給されて目的とする検知対象ガスについてその濃度検知(ガス測定)が開始される。ここに、標準用チャンバ20における各々のガスセンサ装着部20A〜20Dおよび増設用チャンバ30A〜30Cにおけるガスセンサ追加装着部301においては、被検ガス導入用ニップル21より供給される被検ガスは、その一部が拡散してガスセンサに供給される状態とされており、当該ガスセンサの検知に供されていない他の全部が被検ガス排出用ニップル22より排出されて後続のガスセンサに供給される。
【0030】
そして、各々の既定ガスセンサS1〜S4において得られる出力信号については、上述したように、メイン基板10における共通の信号処理システムにより処理され、これにより、目的とする各々の検知対象ガスについてのガス濃度データが算出されると共に、当該ガス濃度データおよびステータスデータを含む、統一されたデータ通信の規格による各々の検知対象ガスについての測定データが作成される。
一方、追加ガスセンサ31A〜31Cにおいて得られる出力信号(例えば定電位電解式センサは微弱電流信号、赤外線吸収式センサは光波(正弦波) の面積値、光イオン化式センサは微弱電流信号、熱伝導式センサは電流信号である。)は、それぞれ、メイン基板10における信号処理システムと同一または異なる、各々の機能拡張用サブ基板35A〜35Cにおける信号処理システムによって処理され、これにより、検知対象ガスについてのガス濃度データが算出され、さらに、当該ガス濃度データおよびステータスデータを含む、統一されたデータ通信の規格による各々の検知対象ガスについての測定データが作成されると共に、メモリ33A〜33Cに記録される。
【0031】
ガス測定動作中においては、メイン基板10より所定時間間隔例えば125msec毎に、追加のガスセンサ31A〜31Cに対応する機能拡張用サブ基板35A〜35Cに対して測定データ読み出し指令信号が出力され、当該機能拡張用サブ基板35A〜35Cのメモリ33A〜33Cに記録された測定データが取得される。
【0032】
以上のようにして得られた各々の既定ガスセンサS1〜S4に係る測定用データの一部および各々の追加のガスセンサ31A〜31Cに係る測定用データの一部がメイン基板10におけるマイコン11によって表示用データとして表示機構40に伝送され、表示機構40により、例えばすべての検知対象ガスについての検知結果が同一画面上に表示される。ここに、表示用データは、現在のガス濃度値(例えば小数点を含む5桁の数字で表現)や濃度単位に加えて、ガス名、フルスケール、1デジット値、警報点、校正濃度、ゼロサプレス値、ゼロ追尾設定値などを含むものである。
また、表示機構40における表示は、例えば1つのガス成分の表示のみを切り替え可能に表示させることができる。
【0033】
而して、上記多成分ガス検知装置によれば、基本的には、少なくとも1つ以上、例えば3つの追加のガスセンサ31A〜31Cが増設可能に構成されており、当該追加のガスセンサ31A〜31Cに対応する機能拡張用サブ基板35A〜35Cが、既定ガスセンサS1〜S4に係る測定データと同一のデータ通信の規格による測定データを作成する機能を有すると共にメイン基板10との間でデータの相互通信を行う機能を有することにより、メイン基板10においてすべてのガスセンサに係る測定データを処理することができるので、目的に応じて選択される追加のガスセンサ31A〜31Cを容易に装着することでき、ガス検知装置を例えば互いに異なる7つのガス成分を選択性良く同時に検知することができるといった多機能化が図られたものとして構成することができる。
しかも、追加のガスセンサ31A〜31Cが被検ガスの流通方向における、既定ガスセンサS1〜S4およびポンプPの位置との関係において、ガスセンサの特性に応じた適正な位置に配管接続されることにより、他のガスセンサに対して影響を与えることなく、すべてのガスセンサにおいて目的とする検知対象ガスの濃度を選択性良く検知することができるので、得られる検知結果は高い信頼性を有するものとなる。
【0034】
また、複数のガスセンサ追加装着部301の各々が互いに同一の構成を有しており、追加のガスセンサ31A〜31Cがアダプタ部材50を介してガスセンサ追加装着部301に装着される構成とされていることにより、互いに外形形状が異なる追加のガスセンサ31A〜31Cを他のものと交換可能に装着することができるので、種々のタイプのガスセンサに対応することができる。
【0035】
さらに、次のような付随的な効果を得ることができる。
追加のガスセンサ31A〜31Cが増設された場合であっても、メイン基板10は、追加のガスセンサ31A〜31Cにおいて得られる出力信号に対する信号処理を行わないため、メイン基板10におけるプログラム(記録された情報)のアップデートをする必要がなく、この点においても、目的に応じて選択される追加のガスセンサ31A〜31Cを容易に装着することできる。
また、機能拡張用サブ基板35A〜35C毎に特殊コマンドを設けておくことにより、それぞれの必要な処理、例えばガスセンサのゼロ校正、スパン校正処理などをメイン基板10からの動作指令信号に基づいて実行することができる。
さらに、赤外線通信を利用して、追加のガスセンサ31A〜31Cの情報をアップデートすること、例えばメイン基板(ガス検知装置本体側)10から警報点など設定情報を追加のガスセンサに対応する機能拡張用サブ基板35A〜35Cのメモリ33A〜33Cに記録させることができ、これにより、追加のガスセンサ31A〜31Cおよび機能拡張用サブ基板35A〜35Cよりなる追加のガスセセンサユニットを異なるガス検知装置本体に増設する場合であっても、変更した設定情報を異なるガス検知装置本体において有効に使用することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、複数の追加のガスセンサが増設される場合において、追加のガスセンサの組み合わせは、目的に応じて適宜に変更することができ、この場合には、追加のガスセンサのガス流通路形成部材の配管接続を被検ガスが所定の順序で各々のガスセンサに供給されるよう用いられる追加のガスセンサに応じて変更すればよい。例えば、上記配管接続例において、ガス流通方向における最上流側の位置に接続される追加のガスセンサとして例示したものの中から2つまたは3つのものを選択して増設することができる。
また、追加のガスセンサに対応する機能拡張用サブ基板は、ガス検知装置本体側に単独で設けられていても、一のガスセンサユニットとして、追加のガスセンサと共にガス検知装置本体に増設されてもいずれであってもよい。
また、警報報知機構を備えた構成とすることができ、この場合には、いずれかの検知対象ガスの濃度がメイン基板によって基準値を越えたことが検出されたときに、目的とする検知対象ガスの各々についての警報が発せられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の多成分ガス検知装置の一例における要部構成の概略を示すブロック図である。
【図2】本発明の多成分ガス検知装置におけるガスセンサ装着部の構成の概略を示す説明図である。
【図3】追加のガスセンサを装着するために用いられるアダプタ部材の一例における構成の概略を示す説明図であって、(A)分解斜視図、(B)軸方向に沿った断面図である。
【図4】メイン基板と機能拡張用サブ基板との間のデータ通信接続状態を示す説明図であって、(A)2線式シリアル通信接続、(B)3線式シリアル通信接続による信号伝送路である。
【図5】本発明の多成分ガス検知装置における7つのガスセンサの配管接続を概略的に示す説明図である。
【図6】本発明の多成分ガス検知装置における動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0038】
10 メイン基板
11 マイコン(CPU)
12 アンプ
13 A/D変換器
15 メモリ
16 外部出力端子
17 計時部(RTC)
20 標準チャンバ
20A〜20D ガスセンサ装着部
21 被検ガス導入用ニップル
22 被検ガス排出用ニップル
30A〜30C 増設用チャンバ(オプションチャンバ)
301 ガスセンサ追加装着部
31A 追加のガスセンサ(二酸化硫黄ガス検知用の定電位電解式ガスセンサ)
31B 追加のガスセンサ(二酸化炭素ガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサ)
31C 追加のガスセンサ(VOC検知用の光イオン化式ガスセンサ)
32A〜32C マイコン(CPU)
33A〜33C メモリ
35A〜35C 機能拡張用サブ基板
38 フィルタ
40 表示機構
50 アダプタ部材
51 基体
52 センサ受け基板
S1 既定ガスセンサ(炭化水素ガス検知用の接触燃焼式ガスセンサ)
S2 既定ガスセンサ(酸素ガス検知用のガルバニ式ガスセンサ)
S3 既定ガスセンサ(一酸化炭素ガス検知用の定電位電解式ガスセンサ)
S4 既定ガスセンサ(硫化水素ガス検知用の定電位電解式ガスンサ)
P 吸引ポンプ
F ラインフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つが追加のガスセンサが着脱自在に装着されるガスセンサ追加装着部である、複数のガスセンサ装着部と、当該複数のガスセンサ装着部に装着された、互いに検知対象ガスの種類または検知レベルが異なる複数の既定ガスセンサおよび追加のガスセンサと、前記既定ガスセンサおよび追加のガスセンサの各々に被検ガスを供給するガス供給機構とを備えてなり、
前記追加のガスセンサが、被検ガスの流通方向において、既定ガスセンサおよびガス供給機構の位置との関係において、ガスセンサの特性に応じた位置に配管接続されて、すべてのガスセンサを直列に接続する一のガス流通路が形成されてなることを特徴とする多成分ガス検知装置。
【請求項2】
既定のガスセンサが、各々、被検ガスの流通方向におけるガス供給機構より上流側に位置される硫化水素ガス検知用の定電位電解式ガスンサおよびその下流側に位置される炭化水素ガス検知用の接触燃焼式ガスセンサと、各々、被検ガスの流通方向におけるガス供給機構より下流側に位置される一酸化炭素ガス検知用の定電位電解式ガスセンサおよびその下流側に位置される酸素ガス検知用のガルバニ式ガスセンサとよりなり、
追加のガスセンサとして、特殊毒性ガス検知用の定電位電解式ガスセンサ、揮発性有機化合物検知用の光イオン化式ガスセンサ、または高濃度可燃性ガス検知用の熱伝導式ガスセンサが用いられる場合には、当該追加のガスセンサが被検ガスの流通方向における硫化水素ガス検知用の定電位電解式ガスセンサより上流側に位置されることを特徴とする請求項1に記載の多成分ガス検知装置。
【請求項3】
追加のガスセンサとして、二酸化硫黄ガス検知用の定電位電解式ガスセンサが用いられる場合には、当該追加のガスセンサが被検ガスの流通方向におけるガス供給機構より上流側であって、炭化水素ガス検知用の接触燃焼式ガスセンサより下流側に位置されることを特徴とする請求項2に記載の多成分ガス検知装置。
【請求項4】
追加のガスセンサとして、二酸化炭素ガス、イソブタンガスまたはメタンガス検知用の赤外線吸収式ガスセンサが用いられる場合には、当該追加のガスセンサが被検ガスの流通方向におけるガス供給機構の直前または直後に位置されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の多成分ガス検知装置。
【請求項5】
前記複数のガスセンサ装着部のうちの2つ以上がガスセンサ追加装着部であり、当該ガスセンサ追加装着部の各々は互いに同一の構成を有しており、追加のガスセンサがアダプタ部材を介してガスセンサ追加装着部に装着されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の多成分ガス検知装置。
【請求項6】
ガスセンサ追加装着部を含む複数のガスセンサ装着部の各々がガス流通路形成部材が用いられて配管接続されることによってガス流通路が形成されてなり、
ガスセンサ追加装着部に装着される追加のガスセンサに応じてガス流通路形成部材の配管接続が変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の多成分ガス検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−244075(P2009−244075A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90549(P2008−90549)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】