説明

多方向入力装置

【課題】高コスト化を回避しつつ、長孔に挿通された操作部材が振動環境下でも騒音の発生源とならないようにした多方向入力装置を提供すること。
【解決手段】連動部材(第1の駆動レバー)4に操作レバー1の駆動軸部1aが挿通される長孔4aが設けられ、操作レバー1が連動部材4の軸線方向と交差する向きに傾動操作されると該連動部材4が駆動軸部1aに回転駆動される多方向入力装置において、連動部材4に板ばね15を取り付け、この板ばね15が駆動軸部1aを長孔4aの内壁の一側面に向けて弾性付勢するようにした。板ばね15には、連動部材4の軸線方向と略平行に延在して駆動軸部1aに弾接する折り曲げ部17aと、長孔4aを完全に露出させる逃げ孔16aとが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動軸部を有する操作部材を傾動操作することにより傾動方向や傾動角度に応じた電気信号が取り出せるようになっている多方向入力装置に係り、特に、連動部材の長孔に挿通された駆動軸部の傾動によって該連動部材が回転駆動される多方向入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の多方向入力装置では、多方向へ傾動可能に支持された操作部材を傾動操作すると、その傾動方向や傾動角度に応じて異なる電気信号が取り出せるため、例えば、エアコンやオーディオあるいはナビゲーション等の複数の車載用制御機器の機能調整を1つの操作部材に集約させて行うようにした入力装置などに好適である。
【0003】
従来より、このような多方向入力装置として、基台に回動可能に軸支された連動部材の長孔に操作部材の駆動軸部を挿通し、操作部材が連動部材の軸線方向と交差する向きに傾動操作されたときに、駆動軸部に回転駆動される連動部材の回転角度に応じた電気信号が可変抵抗器等の検出手段から出力されるように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、特許文献1に開示されている従来例のように、軸線方向を直交させた一対の連動部材の各長孔に操作部材の駆動軸部が挿通されていると、各連動部材に対応する一対の検出手段の出力値によって、任意方向へ傾動操作された操作部材の傾動方向および傾動角度が検出可能となる。また、この従来例では、操作部材の駆動軸部にベアリング等の転動体を取り付け、操作部材の傾動操作に伴って転動体が連動部材の長孔の内壁を転動するようにしてある。この転動体は、傾動操作が繰り返されて操作部材の駆動軸部と長孔の内壁との接触面が摩耗した場合に懸念されるガタの発生を防止するための対策である。
【0004】
また、他の従来例として、連動部材の軸線方向と直交する平面に沿って回動できるように支持された連動保持部材を備え、この連動保持部材が操作部材の駆動軸部を回動可能に軸支して、駆動軸部の軸線方向が連動部材の軸線方向と略平行に設定されているという構成の多方向入力装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。かかる構成においても、連動部材と連動保持部材に対応する一対の検出手段の出力値によって、任意方向へ傾動操作された操作部材の傾動方向および傾動角度が検出可能となる。
【特許文献1】特開平6−12137号公報
【特許文献2】特開2005−332156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されている前者の従来例では、操作部材の駆動軸部にベアリング等の転動体を取り付けて摩耗を防止しているため、傾動操作が繰り返されても操作部材の駆動軸部と連動部材の長孔の内壁との間に摩耗に起因するガタを生じる可能性は低い。しかしながら、駆動軸部に外装された転動体を長孔に挿通させるためには、転動体と長孔の内壁との間に僅かなクリアランスを確保しておかねばならないので、例えば車載用の多方向入力装置の場合、走行中の振動で転動体が長孔の内壁にぶつかってラットルノイズと呼ばれる異音を発生する虞があった。また、この従来例のように操作部材の駆動軸部にベアリング等の転動体を外装させるという複雑な構成を採用すると、部品コストや組立コストが上昇してしまうため、多方向入力装置が高コスト化してしまうという問題もあった。
【0006】
一方、特許文献2に開示されている後者の従来例では、ベアリング等の転動体が追加されていないためコスト面で不利になることはないが、操作部材の駆動軸部を連動部材の長孔に挿通させるためには、駆動軸部と長孔の内壁との間にクリアランスが必要であり、このクリアランスは傾動操作が繰り返されると摩耗によって拡大しやすい。そのため、この従来例の場合は、長期間使用すると振動環境下で操作部材がラットルノイズ等の騒音を発生しやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、高コスト化を回避しつつ、長孔に挿通された操作部材が振動環境下でも騒音の発生源とならないようにした多方向入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、駆動軸部を有する操作部材と、この操作部材を多方向へ傾動可能に支持する基台と、前記駆動軸部が挿通される長孔を有すると共に、前記基台に回動可能に軸支されてその軸線方向が前記長孔の長手方向と略平行に設定された連動部材とを備え、前記操作部材を前記連動部材の軸線方向と交差する向きに傾動操作したときに前記連動部材が前記駆動軸部によって回転駆動される多方向入力装置において、前記連動部材と前記駆動軸部の少なくとも一方に、前記駆動軸部を前記長孔の内壁の一側面に向けて弾性付勢する付勢手段を設けた。
【0009】
このように構成された多方向入力装置では、連動部材の長孔に挿通された操作部材の駆動軸部を付勢手段の弾性付勢力によって該長孔の内壁に押し付けておけるため、駆動軸部と長孔の内壁との間のガタをなくすことができる。また、傾動操作が繰り返されて操作部材の駆動軸部と長孔の内壁との接触面が摩耗した場合にも、駆動軸部は付勢手段に弾性付勢されているためガタの発生には至らない。それゆえ、この多方向入力装置は、振動環境下でも操作部材がラットルノイズ等の騒音の発生源とはならず、しかも、付勢手段としてばね部材や弾性片等の安価な部材を使用できるため、高コスト化も容易に回避できる。
【0010】
上記の構成において、付勢手段が連動部材と駆動軸部のいずれか一方に取り付けられたばね部材であれば、安価なばね部材を1つ追加するだけて駆動軸部に所要の弾性付勢力を付与することができて好ましい。この場合において、付勢手段が連動部材に取り付けられた板ばねであって、この板ばねに連動部材の軸線方向と略平行に延在して駆動軸部に弾接する折り曲げ部が形成されていると、駆動軸部が折り曲げ部に対して摺動する傾動操作が行われたときに、操作部材の傾動角度に応じて駆動軸部の異なる部分が折り曲げ部と当接するようになる。そのため、傾動操作が繰り返されても駆動軸部は板ばねとの当接部が摩耗しにくくなり、摩耗の増大に起因する検出誤差を抑制しやすくなる。また、この板ばねが、連動部材のうち長孔を囲繞する枠状部に外嵌される取付部と、この取付部から延出して先端側に前記折り曲げ部が形成された舌状部とを有し、取付部に長孔を完全に露出させる逃げ孔が形成されていると、板ばねを連動部材に簡単に取り付けることができると共に、長孔の周囲に配置される板ばねの取付部が駆動軸部と干渉する虞がなくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多方向入力装置は、連動部材の長孔に挿通された操作部材の駆動軸部を付勢手段の弾性付勢力によって該長孔の内壁に押し付けておくことができるため、駆動軸部と長孔の内壁との間にガタを生じる虞がなく、それゆえ振動環境下でも操作部材がラットルノイズ等の騒音を発生する虞がない。また、この多方向入力装置は、付勢手段としてばね部材等の安価な部材を使用できるため、付勢手段を追加しても高コスト化を容易に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る多方向入力装置の斜視図、図2は該多方向入力装置の平面図、図3は図2のA−A線に沿う断面図、図4は図2のB−B線に沿う断面図、図5は該多方向入力装置に用いられた操作レバーや駆動レバーを示す分解斜視図である。ただし、図2において回転モータは図示省略されている。
【0013】
これらの図に示す多方向入力装置は、電気制御された力覚が操作レバー(操作部材)に付与されるという車載用の力覚付与型入力装置の本体部分である。かかる力覚付与型入力装置は、エアコンやオーディオ、ナビゲーション等の車載用制御機器の機能調整を1つの操作レバーに集約し、この操作レバーの手動操作によって機器の選択や機能調整等を行う際に、操作レバーの操作量や操作方向に応じた抵抗感や推力等の外力を付与することにより、操作フィーリングを良好にして所望の操作が確実に行えるようにしたフォースフィードバック機能付きの入力装置である。
【0014】
本実施形態例に係る多方向入力装置は、上面に透孔を有する図示せぬ筐体の内部に収納されて自動車のセンターコンソール等に設置され、該透孔から上方へ突出する操作レバー1を傾倒させることによって入力操作が行えるようになっている。この多方向入力装置は、回路基板2上に立設された基台(フレーム)3と、基台3に回動可能に軸支されて互いの軸線方向を直交させている第1および第2の駆動レバー4,5と、回路基板2上に搭載されて互いの回転軸6a,7aを直交させている第1および第2の回転モータ6,7と、回路基板2上に実装されたロータリエンコーダ8,9およびフォトインタラプタ10,11と、図示せぬ制御部とを備えて概略構成されている。そして、操作レバー1が任意方向へ傾動操作可能であり、この操作レバー1を介して付与される操作力によって各駆動レバー4,5が回転駆動されるようになっている。
【0015】
操作レバー1は下方へ延びる駆動軸部1aを有し、この駆動軸部1aが第1の駆動レバー4の長孔4aに挿通されている。操作レバー1の幅広中央部1b(図3参照)には回転軸となるレバー軸12が挿通されており、このレバー軸12を介して操作レバー1が第2の駆動レバー5に回動可能に軸支されている。操作レバー1の幅広中央部1bと規制部材36との間には摺動部材13が外装されている。この摺動部材13は、基台3に一体化された規制部材36の球面状の内壁面(受け面)に接しており、操作レバー1の傾動に伴って摺動部材13が該内壁面に対して摺動するようになっている。なお、操作レバー1の上端部には図示せぬ操作ノブが取り付けられる。
【0016】
基台3は、2枚の支持板31,32を連結板33やスペーサ34を介して一体化したものである。一方の支持板31は平面視L字形状の金属板で、他方の支持板32は平面視W字形状の金属板である。これら両支持板31,32は、互いに対向するように配置して両端に連結板33をかしめ固定することにより強固に連結されている。また、両支持板31,32の対向間隔は、ねじ部材35を用いて固定されたスペーサ34によって精度良く規定されている。
【0017】
第1の駆動レバー4には、相対向する一対の軸部41と、長孔4aを有する枠状部42と、枠状部42から起立する一側壁に突設されて先端に歯部4bを有するギヤ部43とが設けられている(図5参照)。また、枠状部42から起立する他側壁にはL字状の検出板44が固着されている。各軸部41は軸受部材45を介して基台3の上端部に回動可能に取り付けられており、これら軸部41を貫通する回転中心線C(第1の駆動レバー4の軸線)は、レバー軸12の軸線や長孔4aの長手方向と平行に設定されている。なお、検出板44は、第1の駆動レバー4が回転駆動されるのに伴いフォトインタラプタ10の凹部10a内を通過するようになっている。この第1の駆動レバー4は、操作レバー1の傾動操作に連動して回動可能な連動部材である。
【0018】
また、第1の駆動レバー4には、操作レバー1の駆動軸部1aを長孔4aの内壁に軽く弾接させるための板ばね15が装着されている(図3,5参照)。この板ばね15は、逃げ孔16aを有して枠状部42に外嵌される取付部16と、取付部16から延出して先端側に折り曲げ部17aが形成された舌状部17とからなる。逃げ孔16aは長孔4aよりも一回り大きな長孔状に開設されており、板ばね15を枠状部42に装着しても長孔4aは逃げ孔16a内に完全に露出するようになっている。舌状部17の折り曲げ部17aは第1の駆動レバー4の軸線方向(長孔4aの長手方向)に沿って直線状に延在しており、この折り曲げ部17aが駆動軸部1aの下端部に弾接するように設定されているため、駆動軸部1aは長孔4aの内壁の一側面に向けて弾性付勢された状態となる。
【0019】
第2の駆動レバー5には、相対向する一対の軸部51と、レバー軸12を挿着させることによって操作レバー1を軸支する保持部52と、保持部52の一側部に突設されて先端に歯部5aを有するギヤ部53とが設けられている(図5参照)。また、保持部52の他側部にはL字状の検出板54が固着されている。各軸部51は軸受部材55を介して基台3の上端部に回動可能に取り付けられており、これら軸部51を貫通する回転中心線(第2の駆動レバー5の軸線)は、第1の駆動レバー4の軸線やレバー軸12の軸線と直交する向きに設定されている。つまり、第1および第2の駆動レバー4,5は互いの軸線方向を直交させた配置で基台3に軸支されており、両駆動レバー4,5が交差する部分を操作レバー1が貫通している。これにより、操作レバー1を多方向へ傾動可能となるように基台3にて支持することができる。なお、検出板54は、第2の駆動レバー5が回転駆動されるのに伴いフォトインタラプタ11の凹部11a内を通過するようになっている。この第2の駆動レバー5は、操作レバー1を保持すると共にその傾動操作に連動して回動可能な連動保持部材である。
【0020】
回転モータ6,7は互いの回転軸6a,7aを直交させた配置で回路基板2上に搭載されている。第1の回転モータ6の回転軸6aは、ロータリエンコーダ8のコード板81の中心部に連結されて、このコード板81と一体的に回転する。また、第1の駆動レバー4を回転させる操作力が付与されると、ギヤ部43を介して回転軸6aが回転駆動されるようになっている。同様に、第2の回転モータ7の回転軸7aは、ロータリエンコーダ9のコード板91の中心部に連結されて、このコード板91と一体的に回転すると共に、第2の駆動レバー5を回転させる操作力が付与されると、ギヤ部53を介して回転軸7aが回転駆動されるようになっている。
【0021】
ロータリエンコーダ8は、上記のコード板81と、回路基板2上に実装されたフォトインタラプタ82とで構成され、コード板81の一部がフォトインタラプタ82の凹部82a内に配置されている。フォトインタラプタ82には凹部82aを介して対向する図示せぬLED(発光素子)とフォトトランジスタ(受光素子)が備えられており、このフォトインタラプタ82によってコード板81の回転情報を検知できるようになっている。同様に、ロータリエンコーダ9は、上記のコード板91と、回路基板2上に実装されたフォトインタラプタ92とで構成され、コード板91の一部がフォトインタラプタ92の凹部92a内に配置されているため、このフォトインタラプタ92によってコード板91の回転情報を検知できるようになっている。
【0022】
フォトインタラプタ10には凹部10aを介して対向する図示せぬLEDとフォトトランジスタが備えられている。このフォトインタラプタ10は、第1の駆動レバー4の検出板44が凹部10a内から外れた位置にあるときにはオン信号を出力するが、第1の駆動レバー4の傾動に伴い検出板44が凹部10a内へ入り込むと、LEDの光が遮蔽されるためオフ信号を出力する。同様に、フォトインタラプタ11は、第2の駆動レバー5の検出板54が凹部11a内から外れた位置にあるときにはオン信号を出力し、検出板54が凹部11a内へ入り込むとオフ信号を出力する。各フォトインタラプタ10,11から出力された信号は図示せぬ制御部に取り込まれて、駆動レバー4,5の基準位置が演算されるようになっている。さらに、この制御部にはロータリエンコーダ8,9のフォトインタラプタ82,92で検知された信号が取り込まれて、駆動レバー4,5の基準位置からの回転方向と回転量が演算されるようになっている。
【0023】
上記の制御部はメモリに記憶されたデータやプログラムに基づいて決定した制御信号を回転モータ6,7に出力する。この制御信号は操作レバー1に付与される操作フィーリングに対応する信号であり、信号の種類としては振動の発生や作動力(抵抗力または推力)の変更等がある。なお、この制御部の回路構成部品は回路基板2の底面や図示せぬ他の回路基板に実装されている。
【0024】
次に、このように構成された多方向入力装置の動作について説明する。まず、この多方向入力装置のシステムを起動(電源オン)させると、前記制御部がフォトインタラプタ10,11の検知信号を取り込んで回転モータ6,7に制御信号を出力し、これら回転モータ6,7は駆動レバー4,5を回転駆動して操作レバー1を中立位置に自動復帰させる。この場合、回転モータ6,7はフォトインタラプタ10,11の出力がオフからオンに切り替わるように駆動レバー4,5を回転駆動すればよく、操作レバー1は両フォトインタラプタ10,11の出力が共にオフからオンに切り替わった時点で中立位置となる。
【0025】
こうして操作レバー1を中立位置に自動復帰させた状態で、操作者が操作レバー1を任意方向へ傾動操作すると、その傾動方向に応じて第1の駆動レバー4や第2の駆動レバー5が操作レバー1の駆動軸部1aに駆動されて回転する。そして、軸部41を中心に回転する第1の駆動レバー4に連動してコード板81が回転し、軸部51を中心に回転する第2の駆動レバー5に連動してコード板91が回転するため、ロータリエンコーダ8,9のフォトインタラプタ82,92によってコード板81,91の回転情報が検知され、その信号が前記制御部に取り込まれる。
【0026】
この制御部は、フォトインタラプタ10,11の検知信号やフォトインタラプタ82,92の検知信号に基づいて、駆動レバー4,5の回転方向と回転量を演算すると共に、回転モータ6,7に所定の制御信号を出力する。一例を挙げると、操作レバー1が所定方向に所定量だけ傾動操作されたとき、上記の制御信号に基づく回転駆動力が回転モータ6,7から駆動レバー4,5に伝達されて、これら駆動レバー4,5を介して操作レバー1に傾動操作に抗する作動力が付与されると、この作動力が操作レバー1を手動操作する操作者にクリック感として認識されるようになっている。
【0027】
このように本実施形態例に係る多方向入力装置は、第1の駆動レバー4に操作レバー1の駆動軸部1aが挿通される長孔4aが設けられ、操作レバー1が第1の駆動レバー4の軸線方向と交差する向きに傾動操作されると、第1の駆動レバー4が駆動軸部1aに回転駆動されるという構成のものであるが、第1の駆動レバー4に板ばね15が取り付けてあるため、長孔4a内で駆動軸部1aがガタを生じないようになっている。すなわち、この多方向入力装置では、図3に示すように、板ばね15の舌状部17(折り曲げ部17a)を駆動軸部1aの下端部に弾接させることによって、駆動軸部1aが長孔4aの内壁の一側面に軽く押し付けられているため、駆動軸部1aと長孔4aの内壁との間のガタをなくすことができる。また、傾動操作が繰り返されて駆動軸部1aと長孔4aの内壁との接触面が摩耗した場合にも、駆動軸部1aは板ばね15の舌状部17に弾性付勢されているためガタの発生には至らない。それゆえ、この多方向入力装置は、振動環境下でも操作レバー1がラットルノイズ等の騒音の発生源とはならない。また、かかる騒音対策が安価な板ばね15を1つ追加するだけで実現でき、かつ長孔4aを囲繞する枠状部42に取付部16を外嵌させるだけで板ばね15を簡単に第1の駆動レバー4に取り付けることができるため、装置が高コスト化することもない。
【0028】
また、本実施形態例では、板ばね15のうち第1の駆動レバー4の軸線方向と略平行に延在する折り曲げ部17aを駆動軸部1aに弾接させているため、駆動軸部1aが折り曲げ部17aに対して摺動する傾動操作が行われたときに、操作レバー1の傾動角度に応じて駆動軸部1aの異なる部分が折り曲げ部17aと当接するようになっている。したがって、傾動操作が繰り返されても駆動軸部1aは板ばね15との当接部が摩耗しにくく、それゆえ摩耗の増大に起因する検出誤差を抑制しやすくなっている。さらに、この板ばね15の取付部16には長孔4aを完全に露出させる逃げ孔16aが形成されているため、長孔4aの周囲に配置される取付部16が駆動軸部1aと干渉する虞もない。
【0029】
なお、上記実施形態例では、長孔4aを有する駆動レバー4に操作レバー1の駆動軸部1aを弾性付勢する板ばね15を取り付けた場合について説明したが、駆動レバー4に板ばね以外のばね部材や弾性片を設けてもよい。また、ばね部材や弾性片からなる付勢手段を駆動軸部1aに設け、この付勢手段を駆動レバー4の適宜箇所(例えば枠状部42)に弾接させてもほぼ同様の効果が期待できる。さらに、力覚付与型入力装置以外の多方向入力装置における同様の騒音対策に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態例に係る多方向入力装置の斜視図である。
【図2】該多方向入力装置の平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】該多方向入力装置に用いられた操作レバーや駆動レバーを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 操作レバー(操作部材)
1a 駆動軸部
2 回路基板
3 基台
4 第1の駆動レバー(連動部材)
4a 長孔
5 第2の駆動レバー
8,9 ロータリエンコーダ
15 板ばね(付勢手段)
16 取付部
16a 逃げ孔
17 舌状部
17a 折り曲げ部
41,51 軸部
42 枠状部
45,55 軸受部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸部を有する操作部材と、この操作部材を多方向へ傾動可能に支持する基台と、前記駆動軸部が挿通される長孔を有すると共に、前記基台に回動可能に軸支されてその軸線方向が前記長孔の長手方向と略平行に設定された連動部材とを備え、前記操作部材を前記連動部材の軸線方向と交差する向きに傾動操作したときに前記連動部材が前記駆動軸部によって回転駆動される多方向入力装置であって、
前記連動部材と前記駆動軸部の少なくとも一方に、前記駆動軸部を前記長孔の内壁の一側面に向けて弾性付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記付勢手段が前記連動部材と前記駆動軸部のいずれか一方に取り付けられたばね部材であることを特徴とする多方向入力装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記ばね部材が前記連動部材に取り付けられた板ばねであって、この板ばねに前記軸線方向と略平行に延在して前記駆動軸部に弾接する折り曲げ部が形成されていることを特徴とする多方向入力装置。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記板ばねが、前記連動部材のうち前記長孔を囲繞する枠状部に外嵌される取付部と、この取付部から延出して先端側に前記折り曲げ部が形成された舌状部とを有し、前記取付部に前記長孔を完全に露出させる逃げ孔が形成されていることを特徴とする多方向入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−258904(P2009−258904A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105879(P2008−105879)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】