説明

多方弁

【課題】大容量の流体の流路を切り換えることができて、弁体の駆動動力の低い多方弁を提供する。
【解決手段】入口ポート12a及び複数の出口ポート13a、14aに連通する弁室2aと、弁室と複数の出口ポートの各々との境界に位置する弁座2c、2dとを有する弁本体2と、弁室内を回転する弁体5とを備える多方弁1であって、弁体は、一方の開口端部51cで入口ポートと常に連通すると共に、他方の開口端部51dで複数の出口ポートの少なくとも一つと連通する筒状の主弁体51と、主弁体と副弁体53との間に介装され、副弁体を弁室の内面2b側に付勢する付勢手段52とを備え、副弁体は、主弁体と連通している出口ポート以外の出口ポートと弁室との境界に位置する弁座に当接し、弁座と境界を接する出口ポートを閉じる。主弁体は、L字型で、曲線状の曲折部を有する流路51bを備え、開口端部51dが同一円周上に配置された出口ポートと連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体が回転可能に収容される弁室を有し、水等の流体の流路を切り換える多方弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大容量の水等の流路を切り換える弁として、例えば、特許文献1には、流路を有するボール状の弁体を備え、この弁体が弁室内を回転することで水等の流路を切り換えるボールバルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−308165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に記載のボールバルブは、弁体が回転可能に収容される弁室を有する弁ケースにおいて、弁ケースに装着したパッキンに弁体を押し付けて弁ケースと弁体との間をシールしているため、弁体の回転時の摺動抵抗が大きくなり、弁体を回転させるための動力が大きくなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、大容量の流体の流路を切り換えることができると共に、弁体の摺動抵抗を小さくして弁体の駆動動力を低く抑えることのできる多方弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、入口ポート及び複数の出口ポートに連通する弁室と、該弁室と前記複数の出口ポートの各々との境界に位置する弁座とを有する弁本体と、前記弁室内を回転する弁体とを備える多方弁であって、前記弁体は、一方の開口端部で前記入口ポートと常に連通すると共に、他方の開口端部で前記複数の出口ポートの少なくとも一つと連通する筒状の主弁体と、該主弁体と副弁体との間に介装され、該副弁体を前記弁室の内面側に付勢する付勢手段とを備え、前記副弁体は、前記主弁体と連通している出口ポート以外の出口ポートと前記弁室との境界に位置する弁座に当接し、該弁座と境界を接する出口ポートを閉じることを特徴とする。
【0007】
そして、本発明によれば、主弁体と連通している出口ポート以外の出口ポートのみを副弁体によって閉じ、この出口ポートと弁室との境界に位置する弁座のみを副弁体でシールしているため、弁体回転時の弁室内面に対する弁体の摺動抵抗を小さくすることができ、弁体の駆動動力を低く抑えることが可能となる。
【0008】
上記多方弁において、前記主弁体は、L字型で、曲線状の曲折部を有する流路を備え、前記入口ポートと常に連通する前記開口端部の端面に垂直な軸周りに回転し、前記他の開口端部が同一円周上に配置された出口ポートと連通するように構成することができる。これによって、大容量の流体を流した場合でも弁体内の圧力損失を低く抑えることができる。
【0009】
上記多方弁において、前記副弁体を、前記弁室の内面に摺接する面がフッ素樹脂からなるように構成することができ、弁体の摺動抵抗がさらに低減し、よりスムーズな動作が可能となる。
【0010】
上記多方弁において、前記付勢手段を、一端で前記主弁体に当接し、他端で前記副弁体に当接するコイルばねとすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、弁体の駆動動力を低く抑えながら、大容量の流体の流路を切り換えることのできる多方弁を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる多方弁の一実施の形態を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】図1に示した多方弁の弁体の外観を示す図であって、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は側面図である。
【図3】図2の弁体の分解断面図である。
【図4】図1の多方弁の動作を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明にかかる多方弁の一実施形態を示し、この多方弁1は、弁本体2と、弁本体2の弁室2a内を回転する弁体5と、弁本体2の上方に設置され、弁体5を回転させるモーター3と、弁本体2とモーター3との間をシールするシール材15等を備え、弁本体2には、下部に流入管12と、側部に2つの流出管13、14が接続される。
【0015】
弁体5は、図2及び図3に示すように、筒状に形成されると共に、回転軸51aを備える主弁体51と、主弁体51に付勢部材としてのコイルばね52を介して装着される副弁体53とで構成される。
【0016】
主弁体51は、図1(a)及び図3に示すように、L字型の流路51bを有し、下方に開口する開口端部51cは、流入管12の入口ポート12aと常に連通する。L字型の流路51bの曲折部は、曲線状に形成され、大容量の流体を流した場合でも圧力損失を低く抑えることができる。一方、主弁体51の側方に開口する開口端部51dは、主弁体51全体が回転軸51a周りに回転することで、弁室2aの内面2bを回転摺動し、流出管13、14の出口ポート13a、14aのいずれか一方と連通する。また、主弁体51は、コイルばね52及び副弁体53の円柱状突出部53cを収容するための円筒状突出部51e、51fを備える。
【0017】
副弁体53は、弁室2aと出口ポート13a、14aとの境界に位置する弁座2c、2dに接離して弁室2aと出口ポート13a、14aとの間を開閉する弁部53aと、コイルばね52を装着するための円筒状突出部53b及び円柱状突出部53cとを備える。弁部53aは、円筒状の弁室2aの内面2b上を摺動するため、内面2bに沿って湾曲し、出口ポート13a、14aの開口断面よりやや大きな湾曲板状に形成され、その摺接面には、摺動抵抗を低減するため、フッ素樹脂が被膜される。
【0018】
コイルばね52は、その弾性力により、副弁体53を弁室2aの内面2b及び弁座2c、2d側に付勢する。
【0019】
図1に示すように、弁本体2は、上記弁体5が収容される弁室2aに、入口ポート12a及び出口ポート13a、14aが連通し、弁室2aと出口ポート13a、14aとの境界には、弁座2c、2dが形成される。主弁体51の回転軸51aの回転により、副弁体53の弁部53aが弁室2aの内面2bを摺動する。すなわち、副弁体53の円柱状突出部53cが主弁体51の円筒状突出部51f内に挿入されてその回転方向に係合しているため、主弁体51の回転と共に副弁体53も回転する。
【0020】
次に、上記構成を有する多方弁1の動作について、図4を参照しながら説明する。
【0021】
図4(a)は、副弁体53によって出口ポート13aを閉じ、出口ポート14aを開いている状態であり、入口ポート12a(紙面に垂直な軸上であって、手前から紙面裏側に向かう方向に存在する)から流入した流体は、主弁体51の開口端部51cに流入し、矢印で示すように、流路51bを経由し、開口端部51dから出口ポート14aに流出する。この状態では、開口端部51dと弁室2aの内面2bとの間に隙間があるため、流入した流体が弁室2aにも流れ込み、弁室2a内が流体で充満するが、副弁体53の弁部53aがコイルばね52によって弁座2cに押圧されて出口ポート13aを完全に塞ぐため、出口ポート13aへの流体の漏れが生じない。
【0022】
図4(a)の状態からモーター3によって回転軸51aが右回りに回転し、図4(b)に示すように、副弁体53の弁部53aが弁室2aの内面2bの略中央に位置する状態になると、出口ポート13a、14aの両方が開かれた状態となり、開口端部51dと弁室2aの内面2bとの間に隙間があるため、流入した流体が弁室2aにも流れ込み、入口ポート12aから流入した流体が、弁室2aを経由して、出口ポート13a、14aに流出する。
【0023】
図4(b)の状態からモーター3によって回転軸51aが右回りに回転し、図4(c)に示す状態となると、副弁体53によって出口ポート14aが閉じられ、出口ポート13aが開かれ、入口ポート12aから流入した流体は、主弁体51の開口端部51cに流入し、矢印で示すように、流路51bを経由し、開口端部51dから出口ポート13aに流出する。この状態でも、開口端部51dと弁室2aの内面2bとの間に隙間があるため、流入した流体が弁室2aにも流れ込み、弁室2a内が流体で充満するが、副弁体53の弁部53aがコイルばね52によって弁座2dに押圧されて出口ポート14aを完全に塞ぐため、出口ポート14aへの流体の漏れが生じない。
【0024】
以上のように、上記多方弁1によれば、流体流路を切り換えるにあたって、主弁体51と連通している出口ポート13a又は14aとは異なる出口ポートのみ、すなわち閉塞すべき出口ポートのみを副弁体53によって閉じ、この出口ポート13a又は14aと弁本体2の弁室2aとの境界に位置する弁座2c又は2dのみを副弁体53の弁部53aでシールしているため、弁体5の回転時において弁室2aの内面2bに対する弁体5の摺動抵抗を小さくすることができ、弁体5の駆動動力を低く抑えることが可能となる。
【0025】
尚、上記実施の形態においては、副弁体53を弁室2aの内面2b及び弁座2c、2d側に付勢するにあたってコイルばね52を用いたが、その他の付勢部材を用いることもできる。
【0026】
また、上記実施の形態においては、三方弁を例示したが、二方弁、あるいは3つ以上の出口ポートを備えた四方弁等についても、同様に本発明を適用することができ、その際にも、流体流路を切り換えるにあたって、主弁体と連通している出口ポート以外の出口ポートのみを副弁体によって閉じることで、弁体の駆動動力を低く抑えた多方弁を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 多方弁
2 弁本体
2a 弁室
2b (弁室の)内面
2c、2d 弁座
3 モーター
5 弁体
51 主弁体
51a 回転軸
51b 流路
51c、51d 開口端部
51e、51f 円筒状突出部
52 コイルばね
53 副弁体
53a 弁部
53b 円筒状突出部
53c 円柱状突出部
12 流入管
12a 入口ポート
13、14 流出管
13a、14a 出口ポート
15 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口ポート及び複数の出口ポートに連通する弁室と、該弁室と前記複数の出口ポートの各々との境界に位置する弁座とを有する弁本体と、前記弁室内を回転する弁体とを備える多方弁であって、
前記弁体は、
一方の開口端部で前記入口ポートと常に連通すると共に、他方の開口端部で前記複数の出口ポートの少なくとも一つと連通する筒状の主弁体と、
該主弁体と副弁体との間に介装され、該副弁体を前記弁室の内面側に付勢する付勢手段とを備え、
前記副弁体は、前記主弁体と連通している出口ポート以外の出口ポートと前記弁室との境界に位置する弁座に当接し、該弁座と境界を接する出口ポートを閉じることを特徴とする多方弁。
【請求項2】
前記主弁体は、L字型で、曲線状の曲折部を有する流路を備え、前記入口ポートと常に連通する前記開口端部の端面に垂直な軸周りに回転し、前記他の開口端部が同一円周上に配置された出口ポートと連通することを特徴とする請求項1に記載の多方弁。
【請求項3】
前記副弁体は、前記弁室の内面に摺接する面がフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の多方弁。
【請求項4】
前記付勢手段は、一端で前記主弁体に当接し、他端で前記副弁体に当接するコイルばねであることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の多方弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36483(P2013−36483A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170617(P2011−170617)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】