説明

多板クラッチ装置

【課題】複数枚すつの駆動摩擦板および被動摩擦板を圧接して摩擦係合させるべく軸方向に移動可能であるプレッシャプレートが、駆動摩擦板および被動摩擦板を圧接する側にクラッチスプリングで付勢され、加速側のトルク変動が生じたときに前記プレッシャプレートによる圧接力がアシスト手段で増強される多板クラッチ装置において、唐突なクラッチ接続を回避して適正なクラッチ接続を可能とする。
【解決手段】出力部材11に対する軸方向移動を可能としたクラッチインナ18と、該クラッチインナ18とは別部材であるプレッシャプレート22とが、アシスト手段24によるプレッシャプレート22の圧接力増強時に駆動摩擦板19および被動摩擦板20を圧接する側にプレッシャプレート22を移動させつつクラッチインナ18Aをプレッシャプレート22から離反するように同一方向に相対移動させるようにして、軸方向分離可能かつ相対回転を不能として連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材に連結されるクラッチアウタと、出力部材に連結されるクラッチインナと、前記クラッチアウタに軸方向の移動を可能としつつ相対回転を不能として係合される複数枚の駆動摩擦板と、それらの駆動摩擦板と交互に重ね合わされて前記クラッチインナに軸方向の移動を可能としつつ相対回転を不能として係合される複数枚の被動摩擦板と、前記駆動摩擦板および前記被動摩擦板を圧接して摩擦係合させるべく軸方向に移動可能であるプレッシャプレートと、前記駆動摩擦板および前記被動摩擦板を圧接する側に前記プレッシャプレートを付勢するクラッチスプリングと、加速側のトルク変動が生じたときに前記プレッシャプレートによる圧接力を増強せしめるアシスト手段とを備える多板クラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加速側のトルク変動が生じたときにアシスト手段がクラッチインナを引き込むことで、クラッチインナに作用するクラッチスプリングによる付勢力に加えて引き込み力を加えるようにして駆動摩擦板および被動摩擦板の圧接力を高めるようにした多板クラッチ装置が、特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−38954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが上記特許文献1で開示される多板クラッチ装置では、プレッシャプレートがクラッチインナと一体に形成されており、クラッチインナにアシスト手段から作用する引き込み力がプレッシャプレートにも作用し、駆動摩擦板および被動摩擦板の圧接力が増大する。この際、クラッチスプリングによる付勢力と、アシスト手段からの引き込み力とがほぼ同じタイミングで加算的に作用することになるので、プレッシャプレートの動きが唐突となり得る場合があり、ひいてはクラッチの接続フィーリングが唐突に感じられる場合がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、唐突なクラッチ接続を回避して適正なクラッチ接続を可能とした多板クラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、入力部材に連結されるクラッチアウタと、出力部材に連結されるクラッチインナと、前記クラッチアウタに軸方向の移動を可能としつつ相対回転を不能として係合される複数枚の駆動摩擦板と、それらの駆動摩擦板と交互に重ね合わされて前記クラッチインナに軸方向の移動を可能としつつ相対回転を不能として係合される複数枚の被動摩擦板と、前記駆動摩擦板および前記被動摩擦板を圧接して摩擦係合させるべく軸方向に移動可能であるプレッシャプレートと、前記駆動摩擦板および前記被動摩擦板を圧接する側に前記プレッシャプレートを付勢するクラッチスプリングと、加速側のトルク変動が生じたときに前記プレッシャプレートによる圧接力を増強せしめるアシスト手段とを備える多板クラッチ装置において、前記出力部材に対する軸方向移動を可能とした前記クラッチインナと、該クラッチインナとは別部材である前記プレッシャプレートとが、前記アシスト手段による前記プレッシャプレートの圧接力増強時に前記駆動摩擦板および前記被動摩擦板を圧接する側に前記プレッシャプレートを移動させつつ前記クラッチインナを前記プレッシャプレートから離反するように同一方向に相対移動させるようにして、軸方向分離可能かつ相対回転を不能として連結されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、減速側のトルク変動が生じたときに前記プレッシャプレートによる圧接力を低減するスリッパ手段が、その作動時には、前記クラッチインナを前記プレッシャプレートに密接させて前記駆動摩擦板および前記被動摩擦板の圧接力を弱める側に前記プレッシャプレートを移動させるようにして、前記出力部材および前記クラッチインナ間に設けられることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記アシスト手段が、クラッチスプリングのばね力に対抗する側に前記クラッチインナを付勢するばね力を発揮するスプリングと、加速側のトルク変動が生じたときに前記プレッシャプレートによる圧接力を増強せしめる際に前記スプリングの付勢力に対抗する側に前記クラッチインナを強制移動せしめるカム機構とを備えることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第1〜第3の特徴の構成のいずれかに加えて、前記クラッチインナが、前記被動摩擦板を外周側に係合させる係合円筒部を有し、該係合円筒部内に同軸に挿入される挿入円筒部が前記プレッシャプレートに設けられ、スプライン溝をそれぞれ形成する複数の溝形成突部が前記係合円筒部の内周および前記挿入円筒部の外周の一方に設けられ、前記各スプライン溝に係合する複数のスプライン突部が前記係合円筒部の内周および前記挿入円筒部の外周の他方に設けられることを第4の特徴とする。
【0010】
本発明は、第2の特徴の構成に加えて、前記クラッチインナおよび前記プレッシャプレートの軸線と直交する平面に沿う平坦な当接部が、前記クラッチインナを前記プレッシャプレートに密接させる際に接触するようにして前記クラッチインナおよび前記プレッシャプレートに設けられることを第5の特徴とする。
【0011】
本発明は、第5の特徴の構成に加えて、スプライン溝をそれぞれ形成する複数の溝形成突部が前記クラッチインナおよび前記プレッシャプレートの一方に設けられ、前記各スプライン溝に係合する複数のスプライン突部が前記クラッチインナおよび前記プレッシャプレートの他方に設けられ、前記当接部が、前記溝形成突部および前記スプライン突部に一体に連なって前記溝形成突部および前記スプライン突部から半径方向内方に延びるようにしてそれぞれ設けられることを第6の特徴とする。
【0012】
本発明は、第4の特徴の構成に加えて、前記プレッシャプレートに、前記スプライン溝および前記スプライン突部の係合部にオイルを導く第1オイル通路が、前記挿入円筒部を半径方向に貫通して設けられることを第7の特徴とする。
【0013】
本発明は、第4または第7の特徴の構成に加えて、前記プレッシャプレートに、前記スプライン溝および前記スプライン突部の係合部にオイルを導く第2オイル通路が、該プレッシャプレートを軸方向に貫通して設けられることを第8の特徴とする。
【0014】
本発明は、第5または第6の特徴の構成に加えて、前記クラッチインナおよび前記プレッシャプレートの半径方向に沿う前記両当接部の内端に連なるとともに前記クラッチインナの中心軸線を中心とした円弧状に形成される摺接面が、相互に摺接するようにして前記クラッチインナおよび前記プレッシャプレートにそれぞれ設けられることを第9の特徴とする。
【0015】
さらに本発明は、第9の特徴の構成に加えて、前記スプライン突部と前記係合円筒部の内周および前記挿入円筒部の外周の一方との間、ならびに前記溝形成突部と前記係合円筒部の内周および前記挿入円筒部の外周の他方との間にそれぞれ間隙が形成されることを第10の特徴とする。
【0016】
なお実施の形態のメインシャフト11が本発明の出力部材に対応し、実施の形態の一次被動歯車16が本発明の入力部材に対応する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の特徴によれば、クラッチインナと、該クラッチインナとは別部材であるプレッシャプレートとが、アシスト手段によってプレッシャプレートの圧接力を増強するときに駆動摩擦板および被動摩擦板を圧接する側にプレッシャプレートを移動させるとともに、クラッチインナをプレッシャプレートから離反するように同一方向に相対移動させるようにして、軸方向分離可能かつ相対回転を不能として連結されるので、クラッチスプリングによる付勢力と、アシスト手段からの引き込み力とがほぼ同じタイミングで作用しても、その力がプレッシャプレートに直接作用しないようにして、唐突なクラッチ接続を回避し、適正なクラッチ接続が可能となる。
【0018】
また本発明の第2の特徴によれば、クラッチインナをプレッシャプレートに密接させて駆動摩擦板および被動摩擦板の圧接力を弱める側にプレッシャプレートを移動させ得るスリッパ手段が、出力部材およびクラッチインナ間に設けられるので、減速側のトルク変動が生じたときにスリッパ手段がプレッシャプレートによる圧接力を低減する際には瞬時にバックトルクを遮断することができる。これによってアシスト時には適正なクラッチ接続を可能としつつ従来と同等のバックトルクリミッタ性能を確保することができる。
【0019】
本発明の第3の特徴によれば、アシスト手段が、クラッチスプリングのばね力に対抗する側にクラッチインナを付勢するばね力を発揮するスプリングと、加速側のトルク変動が生じたときにはスプリングの付勢力に対抗する側にクラッチインナを強制移動せしめるカム機構とを備えるものであり、アシスト時にはクラッチスプリングに対向するスプリングのばね荷重を低減することで、クラッチスプリングの実質的なばね荷重を増大させて圧接力を高める構造とし、クラッチスプリングの付勢力を漸次高めることができるので、スムーズなクラッチ接続が可能となる。
【0020】
本発明の第4の特徴によれば、クラッチインナが有する係合円筒部の内周に、係合円筒部内に同軸に挿入されるようにしてプレッシャプレートに設けられる挿入円筒部の外周がスプライン係合する構造とすることで、係合円筒部の外周への被動摩擦板の係合部に影響を与えることなく、クラッチインナの軸方向への大型化を回避してクラッチインナおよびプレッシャプレートをスプライン係合することができる。
【0021】
本発明の第5の特徴によれば、クラッチインナおよびプレッシャプレートの軸線と直交する平面に沿う平坦な当接部が、相互に密接することを可能としてクラッチインナおよびプレッシャプレートに設けられるので、密接時の荷重を平面で受けるようにして当接圧力を小さくし、当接部の剛性を確保することができる。
【0022】
本発明の第6の特徴によれば、クラッチインナおよびプレッシャプレートの一方に設けられた複数の溝形成突部で形成されるスプライン溝に、クラッチインナおよびプレッシャプレートの他方に設けられる複数のスプライン突部が係合するようにし、当接部が、溝形成突部およびスプライン突部から半径方向内方に延びるので、溝形成突部およびスプライン突部の周辺を厚肉化して補強することができる。
【0023】
本発明の第7の特徴によれば、挿入円筒部を半径方向に貫通する第1オイル通路が、スプライン溝およびスプライン突部の係合部にオイルを導くようにしてプレッシャプレートに設けられるので、スプライン係合部の摺動性をオイルの供給によって高めることができる。
【0024】
本発明の第8の特徴によれば、軸方向に延びる第2オイル通路が、スプライン溝およびスプライン突部の係合部にオイルを導くようにしてプレッシャプレートに設けられるので、スプライン溝およびスプライン突部の長手方向に伝わせてオイルを供給するようにしてスプライン係合部の摺動性をオイルの供給によって高めることができる。
【0025】
本発明の第9の特徴によれば、前記クラッチインナおよび前記プレッシャプレートに、その半径方向に沿う前記両当接部の内端に連なる円弧状の摺接面がそれぞれ設けられ、それらの摺接面が相互に摺接するので、クラッチインナおよびプレッシャプレートが軸ずれを起こし難くなり、スプライン係合部での摺動をより円滑化することができる。
【0026】
さらに本発明の第10の特徴によれば、スプライン突部と係合円筒部の内周および挿入円筒部の外周の一方との間、ならびに溝形成突部と係合円筒部の内周および挿入円筒部の外周の他方との間にそれぞれ間隙が形成されるので、摺接面の摺接によってクラッチインナおよびプレッシャプレートの軸ずれを防止しつつ、スプライン係合部での摺動面積の増加を抑制するだけでなく、オイルを流す通路として隙間を活用することでスプライン係合部での摺動性および潤滑性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1の多板クラッチ装置の縦断面図である。
【図2】図1の2矢示部拡大図である。
【図3】センターカムプレートの右側面(A)、縦断面(B)および左側面(C)を示す図である。
【図4】アシストカムプレートの右側面(A)、縦断面(B)および左側面(C)を示す図である。
【図5】スリッパカムプレートの右側面(A)、縦断面(B)および左側面(C)を示す図である。
【図6】実施例2の図2に対応した断面図である。
【図7】実施例3の図2に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0029】
本発明の実施例1について図1〜図5を参照しながら説明すると、先ず図1において、たとえば自動二輪車に搭載されるエンジンのクランクシャフト(図示せず)と、歯車変速機(図示せず)のメインシャフト11との間に、一次減速装置12、ダンパばね13および多板クラッチ装置14Aが介設され、前記一次減速装置12は、クランクシャフトに設けられる一次駆動歯車15と、一次駆動歯車15に噛合する一次被動歯車16とから成り、一次被動歯車16は前記メインシャフト11に相対回転可能に支承される。
【0030】
図2を併せて参照して、前記多板クラッチ装置14Aは、湿式タイプのものであり、入力部材である前記一次被動歯車16にダンパばね13を介して連結されるクラッチアウタ17と、該クラッチアウタ17内に同軸に配置される係合円筒部18aならびに該係合円筒部18aの中間部内面から半径方向内方に張り出す環状支持壁18bとを一体に有するクラッチインナ18Aと、前記クラッチアウタ17に相対回転不能に係合される複数枚の駆動摩擦板19,19…と、それらの駆動摩擦板19,19…と交互に配置されて前記クラッチインナ18Aの前記係合円筒部18aの外周に相対回転不能に係合される複数枚の被動摩擦板20,20…と、相互に重なった前記駆動摩擦板19,19…および前記被動摩擦板20,20…に一端側から対向するようにして出力部材である前記メインシャフト11に固定される挟圧板としての受圧板21と、相互に重なった前記駆動摩擦板19,19…および前記被動摩擦板20,20…を前記受圧板21との間に挟むプレッシャプレート22と、前記受圧板21との間に前記駆動摩擦板19,19…および前記被動摩擦板20,20…を挟圧する側に前記プレッシャプレート22を付勢するクラッチスプリング23と、前記一次被動歯車16から前記メインシャフト11への動力伝達状態での加速側のトルク変動時に前記クラッチスプリング23の付勢力を強めるアシスト手段24と、前記メインシャフト11から前記一次被動歯車16へのバックトルク伝達状態での減速側へのトルク変動時に前記クラッチスプリング23の付勢力を弱めるスリッパ手段25とを備える。
【0031】
前記クラッチアウタ17は、前記クラッチインナ18Aの係合円筒部18aを同軸に囲繞する円筒部17aと、該円筒部17aの前記一次被動歯車16側端部に連なる端壁部17bとを一体に有して、一次被動歯車16と反対側に開放した椀状に形成されており、複数枚の駆動摩擦板19,19…の外周部が、軸方向の移動を可能とするとともに相対回転を不能として前記円筒部17aの内周に係合される。
【0032】
前記一次減速装置12に対応する部分で前記メインシャフト11の外周には、前記多板クラッチ装置14A側に臨む環状段部11aが形成されており、メインシャフト11の外周に嵌装される円筒状のスリーブ28の前記多板クラッチ装置14Aとは反対側の端部が前記環状段部11aに当接され、このスリーブ28の外周と、前記一次被動歯車16の内周との間にニードルベアリング29が介装される。
【0033】
前記クラッチインナ18Aにおける前記係合円筒部18aの半径方向内方で、該クラッチインナ18Aにおける前記環状支持壁18bよりも前記受圧板21側には、前記アシスト手段24および前記スリッパ手段25に共通であるセンターカムプレート30が配置される。このセンターカムプレート30は、前記メインシャフト11の外周にスプライン係合される円筒状のボス部30aと、該ボス部30aの軸方向中間部から半径方向外方に張り出してメインシャフト11の軸方向に直交する平面内に配置される円盤部30bとを一体に有する。
【0034】
一方、前記受圧板21は円板状に形成されており、この受圧板21の内周部は、前記スリーブ28の多板クラッチ装置14A側の端部に当接するリング板状の押さえ板31と、前記ボス部30aの一端部との間に挟まれるようにしてメインシャフト11の外周にスプライン係合される。しかも前記ボス部30aを前記受圧板21の内周との間に挟むばね受け部材32が前記メインシャフト11にスプライン係合され、メインシャフト11には、前記ボス部30aとの間に前記ばね受け部材32を挟むナット33が螺合されており、このナット33を締め付けることにより、前記環状段部11aおよびナット33間に、スリーブ28、押さえ板31、受圧板21の内周部、センターカムプレート30のボス部30aおよびばね受け部材32が挟持され、スリーブ28、押さえ板31、受圧板21、センターカムプレート30およびばね受け部材32がメインシャフト11に固定される。
【0035】
前記プレッシャプレート22は、前記受圧板21との間に前記駆動摩擦板19,19…および前記被動摩擦板20,20…を挟む環状の押圧部22aと、前記クラッチインナ18Aの係合円筒部18a内に挿入されるようにして前記押圧部22aに連設される挿入円筒部22bとを一体に有するものであり、挿入円筒部22bは、先端に向かうにつれて段階的に小径となるようにして段付きに形成される。
【0036】
また前記クラッチスプリング23は、前記メインシャフト11に固定されるばね受け部材32と、前記プレッシャプレート22との間に設けられる皿ばねであり、このクラッチスプリング23の内周部は、前記ばね受け部材32に前記センターカムプレート30側から当接、係合し、クラッチスプリング23の外周部は、前記プレッシャプレート22の前記挿入筒部22bに設けられて前記センターカムプレート30とは反対側に臨む環状段部34にリング状の摺接板35を介して当接する。而してプレッシャプレート22は、駆動摩擦板19,19…および被動摩擦板20,20…を圧接して摩擦係合させることで多板クラッチ装置14Aを接続状態とする側に、クラッチスプリング23によって付勢されることになる。
【0037】
ところで前記クラッチインナ18Aはメインシャフト11に対する軸方向相対移動を可能とするものであるが、このクラッチインナ18Aと、該クラッチインナ18Aとは別部材である前記プレッシャプレート22とが、アシスト手段24による前記プレッシャプレート22の圧接力増強時に前記駆動摩擦板19,19…および前記被動摩擦板20,20…を圧接する側に前記プレッシャプレート22を移動させつつ、前記クラッチインナ18Aを前記プレッシャプレート22から離反するように同一方向に相対移動させるようにして、軸方向分離可能かつ相対回転を不能として連結されている。
【0038】
而してクラッチインナ18Aが備える係合円筒部18aの前記プレッシャプレート22側の端部内に、前記プレッシャプレート22の挿入円筒部22bが挿入されるのであるが、前記係合円筒部18aの内周および前記挿入円筒部22bの外周の一方、この実施の形態では係合円筒部18aの内周に複数の溝形成突部37…が設けられ、前記係合円筒部18aの内周および前記挿入円筒部22bの外周の他方、この実施の形態では挿入円筒部22bの外周に複数のスプライン突部39…が設けられ、前記各溝形成突部37…には前記スプライン突部39…を係合させるスプライン溝38…が形成される。
【0039】
また前記プレッシャプレート22の挿入円筒部22bには、前記スプライン溝38…および前記スプライン突部39…の係合部にオイルを導く第1オイル通路40が、該挿入円筒部22bを半径方向に貫通するようにして設けられ、またプレッシャプレート22の押圧部22aには、前記スプライン溝38…および前記スプライン突部39…の係合部にオイルを導く第2オイル通路41が、該押圧部22aを軸方向に貫通するようにして設けられる。
【0040】
ところで多板式クラッチ装置14Aは、エンジンが備えるエンジンカバー42で覆われており、該エンジンカバー42に一端部が軸方向移動可能に嵌合される作動軸43の他端部が、前記メインシャフト11に同軸にかつ摺動可能に嵌合される。この作動軸43の中間部には、クラッチベアリング44を介して円盤状のリフタ45の内周部が保持される。このリフタ45の外周は、前記プレッシャプレート22における押圧部22aの内周に装着された止め輪46に、前記クラッチスプリング23側からリング状の摺接板69を介して当接、係合される。
【0041】
前記エンジンカバー42には、多板クラッチ装置14Aの断・接を切り換える操作軸47が回動可能に支承されており、該操作軸47のエンジンカバー42からの突出端部にレバー48が設けられる。而して前記操作軸47の内端部に、該操作軸47の回動に応じて軸方向に移動するようにして前記作動軸43の一端部が係合される。而してプレッシャプレート22の押圧部22aが前記受圧板21から離反する側に前記作動軸43が移動する方向に前記操作軸47を回動操作することで、多板クラッチ装置14Aが動力伝達を遮断する状態となる。
【0042】
前記アシスト手段24は、一次被動歯車16から入力される駆動力の増加に応じて前記プレッシャプレート22を前記受圧板21に近接させる側に移動させるものであり、クラッチスプリング23のばね力に対抗する側に前記クラッチインナ18Aを付勢するばね力を発揮するスプリング48と、加速側のトルク変動が生じたときに前記プレッシャプレート22による圧接力を増強せしめる際に前記スプリング48の付勢力に対抗する側に前記クラッチインナ18Aを強制移動せしめるカム機構49とを備える。
【0043】
前記カム機構49は、前記前記メインシャフト11に固定されるセンターカムプレート30の円盤部30bと、該円盤部30bの一面に対向するようにしてセンターカムプレート30におけるボス部30aに内周部が摺動支持されるアシストカムプレート50との間に設けられ、アシストカムプレート50の外周は、前記クラッチインナ18Aにおける係合円筒部18aの内周にスプライン係合される。
【0044】
図3を併せて参照して、前記センターカムプレート30の円盤部30bにおける一面には、複数個たとえば3個の第1凹カム51,51…が周方向に等間隔をあけて設けられており、前記アシストカムプレート50の前記円盤部30b側の面には、図4で示すように、前記第1凹カム51,51…と協働して前記カム機構49を構成する複数個たとえば3個の第1凸カム52,52…が突設される。
【0045】
前記アシストカムプレート50の前記円盤部30bとは反対側の端面外周には、前記クラッチインナ18Aにおける係合円筒部18aの内周に設けられる環状凹部54に装着される止め輪55が当接、係合する。
【0046】
また前記スプリング48は、内周部が前記受圧板21の内周部にリング状の摺接板53を介して当接、支持される皿ばねであり、このスプリング48の外周は、前記アシストカムプレート50の前記センターカムプレート30とは反対側の端面に当接する環状の受け部材56に当接される。しかも受け部材56は、前記止め輪55の内周に隣接して配置されるものであり、受け部材56の外径は、環状凹部54に装着された状態の前記止め輪55の内径に一致するように設定され、受け部材56の軸方向長さL1が、前記環状凹部54の軸方向開口幅L2よりも大きく設定される。
【0047】
前記スリッパ手段25は、減速側のトルク変動時に前記プレッシャプレート22を前記受圧板21から離間させる側に前記クラッチインナ18Aを移動させるものであり、前記センターカムプレート30と、該センターカムプレート30における前記円盤部30bの他面に対向するようにしてセンターカムプレート30におけるボス部30aに内周部が摺動支持されるスリッパカムプレート57との間にカム機構58が設けられて成り、スリッパカムプレート57の外周は、前記クラッチインナ18Aにおける係合円筒部18aの内周にスプライン係合される。
【0048】
図3で示すように、前記センターカムプレート30の円盤部30bにおける他面には、複数個たとえば3個の第2凹カム59,59…が、前記第1凹カム51,51…相互間の中央部に位置するようにして周方向に等間隔をあけて設けられており、前記スリッパカムプレート57の前記円盤部30b側の面には、図5で示すように、前記第2凹カム59,59…と協働して前記カム機構58を構成する複数個たとえば3個の第2凸カム60,60…が突設される。
【0049】
前記スリッパカムプレート57の前記円盤部30bとは反対側の端面外周は、前記クラッチインナ18Aの環状支持壁18bにリング状の摺接板61を介して当接されるものであり、センターカムプレート30の円盤部30bに両側から対向するアシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57は、クラッチインナ18Aに設けられる環状支持壁18bと、クラッチインナ18Aの係合円筒部18aの内周に装着される前記止め輪55との間で挟持されるようにして前記クラッチインナ18Aに固定される。
【0050】
しかもアシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57間に挟まれる環状のガイドリング62が、前記センターカムプレート30における円盤部30bの外周と、前記クラッチインナ18Aの係合円筒部18aの内周との間に配置される。
【0051】
またアシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57のうち前記クラッチインナ18Aに設けられる環状支持壁18b側に配置されるスリッパカムプレート57の前記クラッチインナ18Aへのスプライン係合幅W1が、他方のカムプレートであるアシストカムプレート50の前記クラッチインナ18Aへのスプライン係合幅W2よりも小さく設定される。
【0052】
またクラッチインナ18Aおよびプレッシャプレート22には、クラッチインナ18Aおよびプレッシャプレート22の軸線と直交する平面に沿う平坦な当接部63,64が、相互に接触するようにして設けられるものであり、この実施の形態では、一方の当接部63が、クラッチインナ18Aにおける係合円筒部18aの内周の複数の溝形成突部37…に一体に連なって半径方向内方に延びるようにして形成され、他方の当接部64が、スプライン突部39…に一体に連なって半径方向内方に延びるようにして挿入円筒部22bの途中に設けられる。
【0053】
而して通常の動力伝達状態では、前記スプリング48でプレッシャプレート22側に付勢された前記クラッチインナ18Aの当接部63がプレッシャプレート22の当接部64に当接しており、クラッチスプリング23の付勢力を打ち消す方向でのスプリング48からの逆向きの付勢力が前記プレッシャプレート22に作用している。
【0054】
一次被動歯車16からメインシャフト11へのトルク伝達状態での加速側のトルク変動が生じたときには、第1凸カム52,52…のカム側面が第1凹カム51,51…のカム側面に当接することによって、カム機構49は、センターカムプレート30の円盤部30bから離反する側の力をアシストカムプレート50に作用せしめることになり、アシストカムプレート50が固定されたクラッチインナ18Aはプレッシャプレート22から離反する側に移動し、アシストカムプレート50に当接した前記受け部材56は前記スプリング48のばね力を弱める側に移動することになるので、クラッチスプリング23の付勢力を打ち消す方向でスプリング48から作用していた逆向きの付勢力を弱め、クラッチスプリング23による付勢力を完全に発揮させて駆動摩擦板19,19…および被動摩擦板20,20…の圧接力を高めることになる。
【0055】
またバックトルク伝達状態でのバックトルク増加時には、前記スリッパ手段25のカム機構58は、クラッチインナ18Aに固定されたスリッパカムプレート57をセンターカムプレート30から離反させる側に移動させるものであり、このスリッパカムプレート57の移動によって前記クラッチインナ18Aの当接部63は前記プレッシャプレート22の当接部64に密接し、プレッシャプレート22が駆動摩擦板19,19…および被動摩擦板20,20…の圧接力を弱める側に移動することになる。
【0056】
前記クラッチインナ18Aおよび前記プレッシャプレート22には、クラッチインナ18Aおよびプレッシャプレート22の半径方向に沿う前記両当接部63,64の内端に連なって前記クラッチインナ18Aの中心軸線を中心とした円弧状に形成される摺接面65,66が、相互に摺接するようにしてそれぞれ設けられる。すなわちクラッチインナ18Aに設けられる環状支持壁18bの内周面は、前記プレッシャプレート22の挿入円筒部22bに摺接されるものであり、環状支持壁18bの内周に形成される摺接面65に摺接する摺接面66が挿入円筒部22bの先端外周に形成される。
【0057】
しかもスプライン突部39…と、前記係合円筒部18aの内周との間、ならびに溝形成突部37…と前記挿入円筒部22bの外周との間には、それぞれ間隙67,68が形成される。
【0058】
ところで前記ガイドリング62は、アシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57間に挟まれることで前記クラッチインナ18Aに固定されるのであるが、このガイドリング62の内周は、前記センターカムプレート30における円盤部30aの外周に摺接される。しかも前記クラッチインナ18Aにおける係合円筒部18aには、係合円筒部18aの内、外間を結ぶ複数のオイル孔70,70…が設けられ、前記ガイドリング62の両面には、該ガイドリング62と前記アシストカムプレート50および前記スリッパカムプレート57との間でオイル流通させるためのオイル溝71…がそれぞれ設けられる。
【0059】
またメインシャフト11には、オイルを導くための中心孔72が同軸に設けられるとともに、前記センターカムプレート30におけるボス部30aの軸方向中心部に略対応した位置で前記中心孔72に一端を通じさせるオイル通路73…が、メインシャフト11の側壁に設けられる。一方、センターカムプレート30のボス部30aには、アシストカムプレート50の第1凸カム52…ならびにスリッパカムプレート57の第2凸カム60…に向けて、前記オイル通路73…からのオイルを供給するオイル供給路74…が、アシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57の中心軸線に対して傾斜した方向に指向するようにして設けられ、それらのオイル供給路74…には、オリフィス75…が設けられる。
【0060】
ところでセンターカムプレート30における円盤部30bの両面には、複数ずつの第1凹カム51…および第2凹カム59…が設けられるのであるが、第1凹カム51…の外周縁部には、センターカムプレート30の外周およびガイドリング62の内周の摺接部にオイル導くオイル排出路76…が設けられ、第2凹カム59…の外周縁部には、センターカムプレート30の外周およびガイドリング62の内周の摺接部にオイル導くオイル排出路77…(図3参照)が設けられる。しかもそれらのオイル排出路76…,77…は、第1および第2凹カム51…,59…の外周縁部の切欠きによって形成されるものであり、センターカムプレート30の円盤部30bのうち少なくとも第1および第2凹カム51…,59…が配置される部分と、第1および第2凹カム51…,59…の外周縁部の切欠きとは鍛造成形される。
【0061】
またセンターカムプレート30およびアシストカムプレート50間に設けられるカム機構49を構成する第1凹カム51…および第1凸カム52…の接触面、ならびにセンターカムプレート30およびスリッパカムプレート57間に設けられるカム機構58を構成する第2凹カム59…および第2凸カム60…の接触面は、センターカムプレート30に対するアシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57の相対回転時に接触するように形成されるものであり、前記オイル排出路76…,77…は、センターカムプレート30の円盤部30bにおける外周縁部だけに設けられる。
【0062】
またアシストカムプレート50のセンターカムプレート30における円盤部30bに対向する面には、第1凸カム52…が設けられるとともに、第1凸カム52…の両側に配置されるようにして複数個たとば3個の第1凹部80…が形成され、スリッパカムプレート57のセンターカムプレート30における円盤部30bに対向する面には、第2凸カム60…が設けられるとともに、第2凸カム60…の両側に配置されるようにして複数個たとえば3個の第2凹部81…が形成される。
【0063】
ところで、スプリング48、受け部材56、アシストカムプレート50、ガイドリング62、センターカムプレート30、スリッパカムプレート57および摺接板61は、前記受圧板21側からクラッチインナ18Aの係合円筒部18a内に挿入されるものであり、組付け時に、前記スプリング48、受け部材56、アシストカムプレート50、ガイドリング62、センターカムプレート30、スリッパカムプレート57および摺接板61は、組立体84として予め組み立てられ、図2の鎖線で示すように、前記受圧板21に先端小径部85aを嵌合するようにして前記組立体84を貫通する棒状の保持工具85に、前記受圧板21との間に前記組み立て体84を挟持するための環状段部85bが設けられる。而して保持工具85で前記組立体84を受圧板21との間に保持した状態で、クラッチインナ18Aが前記組立体84を覆うように組付けられる。
【0064】
次にこの実施例1の作用について説明すると、メインシャフト11に対する軸方向移動を可能としたクラッチインナ18Aと、該クラッチインナ18Aとは別部材であるプレッシャプレート22とが、アシスト手段24によるプレッシャプレート22の圧接力増強時に駆動摩擦板19…および被動摩擦板20…を圧接する側にプレッシャプレート22を移動させつつ、前記クラッチインナ18Aを前記プレッシャプレート22から離反するように同一方向に相対移動させるようにして、軸方向分離可能かつ相対回転を不能として連結されるので、クラッチスプリング23による付勢力と、アシスト手段24からの引き込み力とがほぼ同じタイミングで作用しても、その力がプレッシャプレート22に直接作用しないようにして、唐突なクラッチ接続を回避し、適正なクラッチ接続が可能となる。
【0065】
またスリッパ手段25が、減速側のトルク変動が生じたときには、クラッチインナ18Aをプレッシャプレート22に密接させて駆動摩擦板19…および被動摩擦板20…の圧接力を弱める側にプレッシャプレート22を移動させることでプレッシャプレート22による圧接力を低減するようにしてクラッチインナ18Aおよびメインシャフト11間に設けられており、減速側のトルク変動が生じたときにスリッパ手段25がプレッシャプレート22による圧接力を低減する際には瞬時にバックトルクを遮断することができる。これによってアシスト時には適正なクラッチ接続を可能としつつ従来と同等のバックトルクリミッタ性能を確保することができる。
【0066】
またアシスト手段24が、クラッチスプリング23のばね力に対抗する側にクラッチインナ18Aを付勢するばね力を発揮するスプリング48と、加速側のトルク変動が生じたときにプレッシャプレート22による圧接力を増強せしめる際にスプリング48の付勢力に対抗する側にクラッチインナ18Aを強制移動せしめるカム機構49とを備えるものであることから、アシスト時にはクラッチスプリング23に対向するスプリング48のばね荷重を低減することで,クラッチスプリング23の実質的なばね荷重を増大させて圧接力を高める構造とし、クラッチスプリング23の付勢力を漸次高めることができるので、スムーズなクラッチ接続が可能となる。
【0067】
またクラッチインナ18Aは、被動摩擦板20…を外周側に係合させる係合円筒部18aを有し、該係合円筒部18a内に同軸に挿入される挿入円筒部22bがプレッシャプレート22に設けられ、スプライン溝38…をそれぞれ形成するようにして係合円筒部18aの内周に複数の溝形成突部37…が設けられ、各スプライン溝38に係合する複数のスプライン突部39…が挿入円筒部22bの外周に設けられるので、係合円筒部18aの外周への被動摩擦板20…の係合部に影響を与えることなく、クラッチインナ18Aの軸方向への大型化を回避してクラッチインナ18Aおよびプレッシャプレート22をスプライン係合することができる。
【0068】
またクラッチインナ18Aおよびプレッシャプレート22の軸線と直交する平面に沿う平坦な当接部63,64が、クラッチインナ18Aをプレッシャプレート22に密接させる際に相互に接触するようにしてクラッチインナ18Aおよびプレッシャプレート22に設けられるので、密接時の荷重を平面で受けるようにして当接圧力を小さくし、当接部63,64の剛性を確保することができる。
【0069】
またスプライン溝38…をそれぞれ形成するようにしてクラッチインナ18Aに複数の溝形成突部37…が設けられ、各スプライン溝38…に係合する複数のスプライン突部39…がプレッシャプレート22に設けられるのであるが、前記当接部63,64が、前記溝形成突部37…および前記スプライン突部39…に一体に連なって前記溝形成突部37…および前記スプライン突部39…から半径方向内方に延びるので、溝形成突部37…およびスプライン突部39…の周辺を厚肉化して補強することができる。
【0070】
またプレッシャプレート22には、スプライン溝38…およびスプライン突部39…の係合部にオイルを導く第1オイル通路40が、挿入円筒部22bを半径方向に貫通して設けられるので、スプライン係合部の摺動性をオイルの供給によって高めることができる。さらにプレッシャプレート22には、スプライン溝38…およびスプライン突部39…の係合部にオイルを導く第2オイル通路41が、プレッシャプレート22の押圧部22aを軸方向に貫通して設けられるので、スプライン溝38…およびスプライン突部39…の長手方向に伝わせてオイルを供給するようにしてスプライン係合部の摺動性をオイルの供給によってより高めることができる。
【0071】
またクラッチインナ18Aおよびプレッシャプレート22の半径方向に沿う前記両当接部63,64の内端に連なるとともにクラッチインナ18Aの中心軸線を中心とした円弧状に形成される摺接面65,66が、相互に摺接するようにしてクラッチインナ18Aおよびプレッシャプレート22にそれぞれ設けられるので、それらの摺接面65,66を相互に摺接させることで、クラッチインナ18Aおよびプレッシャプレート22が軸ずれを起こし難くなり、スプライン係合部での摺動をより円滑化することができる。
【0072】
さらにスプライン突部39…と係合円筒部18aの内周との間、ならびに前記溝形成突部37…と前記挿入円筒部22bの外周間にそれぞれ間隙67,68が形成されるので、摺接面65,66の摺接によってクラッチインナ18Aおよびプレッシャプレート22の軸ずれを防止しつつ、スプライン係合部での摺動面積の増加を抑制するだけでなく、オイルを流す通路として隙間67,68を活用することでスプライン係合部での摺動性および潤滑性を高めることができる。
【0073】
アシスト手段24は、軸方向で相互に対向するセンターカムカムプレート30およびアシストカムプレート50を有しており、クラッチインナ18Aにアシストカムプレート50が挿入されるとともに相対回転を不能として係合され、センターカムカムプレート30から離反する側への前記アシストカムプレート50の前記クラッチインナ18Aに対する軸方向相対移動を阻止するようにして前記前記アシストカムプレート50に係合する止め輪55がクラッチインナ18Aにおける係合円筒部18aの内周に装着されるので、アシストカムプレート50のクラッチインナ18Aへの固定を止め輪55で行うようにすることで、従来のボルトを用いた固定構造に比べると、部品点数の低減、重量およびコストの低減を図りつつ、クラッチインナ18Aへの取付けに周方向で偏りが生じることがないようにしてアシストカムプレート50をクラッチインナ18Aに固定することができる。
【0074】
またアシスト手段24が備えるスプリング48は、アシストカムプレート50を介してクラッチインナ18Aを軸方向に付勢するものであり、そのスプリング48のクラッチインナ18A側の端部を受ける環状の受け部材56が、止め輪55の内周に隣接して配置されるので、受け部材56を利用して止め輪55の脱落を防止することができ、止め輪脱落防止のための専用部材を不要として部品点数の低減に寄与することができる。
【0075】
しかもクラッチインナ18Aにおける係合円筒部18aの内周に、止め輪55を装着するための環状凹部54が設けられ、受け部材56が、環状凹部54に装着された状態の止め輪55の内径に一致する外径を有するように形成されるので、受け部材56が止め輪55に嵌合することになり、止め輪55の脱落を確実に防止することができる。
【0076】
また受け部材56の軸方向長さL1が、環状凹部54の軸方向開口幅L2よりも大きく設定されるので、止め輪55が装着される環状凹部54を受け部材56で覆うようにして止め輪55を受け部材56で保護することができる。
【0077】
また多板クラッチ装置14Aは、アシスト手段24およびスリッパ手段25の両方を備え、アシスト手段24およびスリッパ手段25に共通にしてメインシャフト11に固定されるセンターカムプレート30の円盤部30bに両側から対向するアシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57が、クラッチインナ18Aに設けられる環状支持壁18bと、前記止め輪55との間で挟持されるようにして前記クラッチインナ18Aに固定されるので、単一の止め輪55によってアシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57をクラッチインナ18Aに固定することができ、部品点数の低減を図ることができる。
【0078】
前記アシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57間には環状のガイドリング62が挟まれており、このガイドリング62が、センターカムプレート30の外周およびクラッチインナ18Aの内周間に配置されるので、センターカムプレート30でクラッチインナ18Aを保持せしめる環状のガイドリング62をアシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57間に挟むようにして、単一の止め輪55によってアシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57をクラッチインナ18Aに固定する構造に必要な部品の増加を抑えることができる。
【0079】
またアシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57の外周が前記クラッチインナ18Aにおける係合円筒部18aの内周にスプライン係合され、アシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57のうち前記環状支持壁18b側に配置されるスリッパカムプレート57のクラッチインナ18Aへのスプライン係合幅W1が、アシストカムプレート50のクラッチインナ18Aへのスプライン係合幅W2よりも小さく設定されるので、スプリング48で付勢される側のアシストカムプレート50のクラッチインナ18Aへのスプライン係合幅W2を大きくし、スプリング48で付勢されることによって軸ずれが発生し易いアシストカムプレート50の軸ずれを防止することができる。
【0080】
しかもクラッチインナ18Aに設けられる環状支持壁18bの内周面が、プレッシャプレート22に摺接されるので、プレッシャプレート22でクラッチインナ18Aを支持するようにしてクラッチインナ18Aおよびプレッシャプレート22の軸ずれ発生を防止することができる。
【0081】
ところでアシスト手段24は、軸方向で相互に対向するセンターカムプレート30およびアシストカムプレート50を有し、スリッパ手段25は、アシスト手段24と共通であるセンターカムプレート30ならびに該センターカムプレート30に軸方向で対向するスリッパカムプレート57を有しており、相互に対をなすカムプレート30,50;30,57のうち一方のカムプレートであるセンターカムプレート30の外周面に内周面を摺接させるガイドリング62がクラッチインナ18Aの係合円筒部18aに固定される。しかもセンターカムプレート30における円盤部30bの両面に設けられる第1および第2凹カム51…,59…の外周縁部には、センターカムプレート30およびガイドリング62の摺接部にオイルを導くオイル排出路76…,77…が設けられる。
【0082】
したがってクラッチインナ18Aに固定されるガイドリング62すなわちクラッチインナ18Aおよびセンターカムプレート30の心出しが行われることになり、そのような心出し構造において、センターカムプレート30に設けられる第1および第2凹カム51…,59…に溜まったオイルをガイドリング62およびセンターカムプレート30の摺接部に充分に供給することができ、潤滑性の向上を図ることができる。
【0083】
しかもオイル排出路76…,77…が、第1および第2凹カム51…,59…の外周縁部の切欠きによって形成されるので、オイル排出路76…,77…を簡単な構造で形成し、その簡単な構造で摺動部の潤滑性を高めることができる。
【0084】
またセンターカムプレート30の少なくとも第1および第2凹カム51…,59…が配置される部分が鍛造成形されるので、第1および第2凹カム51…,59…の外周縁部に切欠きを設けることで窪みの深さを浅くすることにより、成形時の部品変形量を抑制し、成形不良品の発生を抑制して精度の向上を図ることができる。
【0085】
ところでセンターカムプレート30およびアシストカムプレート50間に設けられるカム機構49を構成する第1凹カム51…および第1凸カム52…の接触面、ならびにセンターカムプレート30およびスリッパカムプレート57間に設けられるカム機構58を構成する第2凹カム59…および第2凸カム60…の接触面は、センターカムプレート30に対するアシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57の相対回転時に接触するように形成されるものであり、前記オイル排出路76…,77…は、センターカムプレート30の円盤部30bにおける外周縁部だけに設けられる。したがって第1および第2凹カム51…,59…と、第1および第2凸カム52…,60…との接触面にオイル排出路を設けないようにして、カム接触強度の低下を回避し、摺動部の潤滑性を確保することができる。
【0086】
またアシストカムプレート50には、第1凸カム52…の両側に位置する第1凹部890…が形成され、スリッパカムプレート57には、第2凸カム62…のリザーバョg鰐位置する第2凹部81…が形成されるので、第1および第2凸カム52…,60…に供給されるオイルを両側の第1および第2凹部80…,81…で捕獲、滞留せしめ、第1および第2凸カム52…,60…に行き渡るオイルを確保することで第1および第2凹カム51…,59…と、第1および第2凸カム52…,60…との間の潤滑性を高めることができる。
【0087】
また第1および第2凹部80…,81…の外周縁部が、センターカムプレート30および街路リング62の摺接部側に向かって彎曲して形成されるので、第1および第2凹カム51…,59…に溜まったオイルを前記摺接部側に積極的に供給して潤滑性を高めることができる。
【0088】
またセンターカムプレート30のボス部30aに、アシストカムプレート50の第1凸カム52…ならびにスリッパカムプレート57の第2凸カム60…に向けてオイルを供給するオイル供給路74…が、アシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57の中心軸線に対して傾斜した方向に指向するようにして設けられるので、潤滑性が特に必要とされる第1および第2凹カム51…,59…と、第1および第2凸カム52…,60…との間にオイルを噴射するようにしてオイル切れによる潤滑不足が生じることを防止することができる。
【0089】
さらにオイル供給路74…オリフィス75…が設けられるので、オイルを第1および第2凸カム52…,60…に向かって高圧噴射し、オイルを霧化、拡散することで第1および第2凹カム51…,59…と、第1および第2凸カム52…,60…との間の全体の潤滑性を高めることができる。
【実施例2】
【0090】
本発明の実施例2について図6を参照しながら説明するが、実施例1に対応する部分には同一の参照符号付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0091】
この多板クラッチ装置14Bが備えるアシスト手段24およびスリッパ手段25に共通であるセンターカムプレート30の円盤部30bの一面に設けられる第1凹カム51…の外周縁部には、ガイドリング62の内周と、センターカムプレート30における円盤部30bの外周との摺接部にオイルを排出するオイル排出路86…が、第1凹カム51…の内面および外面間を結ぶ貫通孔として形成される。また前記円盤部30bの他面に設けられる第2凹カム59…(実施例1参照)の外周縁部に同様のオイル排出路(図示せず)が設けられる。
【0092】
この実施例2によれば、第1および第2凹カム51…,59…の外周縁部の内面および外面間を結ぶ貫通孔を設けてオイル排出路86…を形成するので、第1および第2凹カム51…,59…の周縁部の高さにかかわらず第1および第2凹カム51…,59…内部のオイルをガイドリング62の内周と、センターカムプレート30における円盤部30bの外周との摺接部にオイルを確実に供給することができる。
【実施例3】
【0093】
本発明の実施例3について図7を参照しながら説明するが、実施例1および実施例2に対応する部分には同一の参照符号付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0094】
この多板クラッチ装置14Cが備えるクラッチインナ18Bは、被動摩擦板20,20…を外周に係合させる係合円筒部80aと、該係合円筒部80aの中間部内面から半径方向内方に突出する環状中間壁18cとを一体に有し、アシスト手段24およびスリッパ手段25に共通であるセンターカムプレート30の外周に前記環状中間壁18cの内周が摺接される。
【0095】
またクラッチインナ18Bの環状中間壁18cを両側から挟むアシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57の両方に、前記環状中間壁18cとは反対側から係合する止め輪55,87がそれぞれ装着され、前記両止め輪55,87のうち前記スプリング48を受ける前記受け部材56が内周に隣接して配置される前記止め輪55が横断面形状を円形として形成されるのに対して、残余の止め輪87は横断面形状を四角形状として形成される。
【0096】
さらにセンターカムプレート30における円盤部30bの両面には、実施例1と同様にして第1および第2凹カム51…,59…が設けられ、それらの凹カム51…,59…の外周縁部には、実施例1と同様にして、センターカムプレート30およびクラッチインナ18Bの摺接部にオイルを導くオイル排出路76…,77…が設けられる。
【0097】
この実施例3によれば、センターカムプレート30に両側から対向するアシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57でクラッチインナ18Bに設けられる環状中間壁18cを両側から挟み、アシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57に環状中間壁18cとは反対側から係合する止め輪55,87がクラッチインナ18Bにそれぞれ装着され、受け部材56が内周に隣接して配置される側の止め輪55は受け部材56で保持されることで変形が抑えられるので横断面形状を円形として形成され、残余の止め輪87が変形による脱落を防止するために横断面形状を四角形状として剛性を高めるようにして、アシストカムプレート50およびスリッパカムプレート57の固定構造を、止め輪55,87を用いて小型化しつつ、低コストで実現することができる。
【0098】
しかもセンターカムプレート30の外周が、クラッチインナ18Bの環状中間壁18cの内周に摺接されるので、クラッチインナ18Bおよびセンターカムプレート30の軸ずれを防止することができる。
【0099】
またセンターカムプレート30でクラッチインナ18Bの内周面を摺接、支持するようにした心出し構造において、センターカムプレート30における円盤部30bの両面に設けられる第1および第2凹カム51…,59…の外周縁部に設けられるオイル排出路76…,77…からセンターカムプレート30およびクラッチインナ18Bの摺接部にオイルを導くようにして、第1および第2凹カム51…,59…に溜まったオイルをセンターカムプレート30およびクラッチインナ18Bの摺接部に充分に供給することができ、潤滑性の向上を図ることができる。
【0100】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0101】
11・・・出力部材であるメインシャフト
16・・・入力部材である一次被動歯車
17・・・クラッチアウタ
18A,18B・・・クラッチインナ
18a・・・係合円筒部
19・・・駆動摩擦板
20・・・被動摩擦板
22・・・プレッシャプレート
22b・・・挿入円筒部
23・・・クラッチスプリング
24・・・アシスト手段
25・・・スリッパ手段
37・・・溝形成突部
38・・・スプライン溝
39・・・スプライン突部
40・・・第1オイル通路
41・・・第2オイル通路
48・・・スプリング
49・・・カム機構
63,64・・・当接部
65,66・・・摺接面
67,68・・・間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材(16)に連結されるクラッチアウタ(17)と、出力部材(11)に連結されるクラッチインナ(18A,18B)と、前記クラッチアウタ(17)に軸方向の移動を可能としつつ相対回転を不能として係合される複数枚の駆動摩擦板(19)と、それらの駆動摩擦板(19)と交互に重ね合わされて前記クラッチインナ(18)に軸方向の移動を可能としつつ相対回転を不能として係合される複数枚の被動摩擦板(20)と、前記駆動摩擦板(19)および前記被動摩擦板(20)を圧接して摩擦係合させるべく軸方向に移動可能であるプレッシャプレート(22)と、前記駆動摩擦板(19)および前記被動摩擦板を圧接する側に前記プレッシャプレート(22)を付勢するクラッチスプリング(23)と、加速側のトルク変動が生じたときに前記プレッシャプレート(22)による圧接力を増強せしめるアシスト手段(24)とを備える多板クラッチ装置において、前記出力部材(11)に対する軸方向移動を可能とした前記クラッチインナ(18)と、該クラッチインナ(18A,18B)とは別部材である前記プレッシャプレート(22)とが、前記アシスト手段(24)による前記プレッシャプレート(22)の圧接力増強時に前記駆動摩擦板(19)および前記被動摩擦板(20)を圧接する側に前記プレッシャプレート(22)を移動させつつ前記クラッチインナ(18A,18B)を前記プレッシャプレート(22)から離反するように同一方向に相対移動させるようにして、軸方向分離可能かつ相対回転を不能として連結されることを特徴とする多板クラッチ装置。
【請求項2】
減速側のトルク変動が生じたときに前記プレッシャプレート(22)による圧接力を低減するスリッパ手段(25)が、その作動時には、前記クラッチインナ(18)を前記プレッシャプレート(22)に密接させて前記駆動摩擦板(19)および前記被動摩擦板(20)の圧接力を弱める側に前記プレッシャプレート(22)を移動させるようにして、前記出力部材(11)および前記クラッチインナ(18A,18B)間に設けられることを特徴とする請求項1記載の多板クラッチ装置。
【請求項3】
前記アシスト手段(24)が、クラッチスプリング(23)のばね力に対抗する側に前記クラッチインナ(18A,18B)を付勢するばね力を発揮するスプリング(48)と、加速側のトルク変動が生じたときに前記プレッシャプレート(22)による圧接力を増強せしめる際に前記スプリング(48)の付勢力に対抗する側に前記クラッチインナ(18A,18B)を強制移動せしめるカム機構(49)とを備えることを特徴とする請求項1または2記載の多板クラッチ装置。
【請求項4】
前記クラッチインナ(18A,18B)が、前記被動摩擦板(20)を外周側に係合させる係合円筒部(18a)を有し、該係合円筒部(18a)内に同軸に挿入される挿入円筒部(22b)が前記プレッシャプレート(22)に設けられ、スプライン溝(38)をそれぞれ形成する複数の溝形成突部(37)が前記係合円筒部(18a)の内周および前記挿入円筒部(22b)の外周の一方に設けられ、前記各スプライン溝(38)に係合する複数のスプライン突部(39)が前記係合円筒部(18a)の内周および前記挿入円筒部(22b)の外周の他方に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多板クラッチ装置。
【請求項5】
前記クラッチインナ(18A,18B)および前記プレッシャプレート(22)の軸線と直交する平面に沿う平坦な当接部(63,64)が、前記クラッチインナ(18A,18B)を前記プレッシャプレート(22)に密接させる際に相互に接触するようにして前記クラッチインナ(18A,18B)および前記プレッシャプレート(22)に設けられることを特徴とする請求項2記載の多板クラッチ装置。
【請求項6】
スプライン溝(38)をそれぞれ形成する複数の溝形成突部(37)が前記クラッチインナ(18A,18B)および前記プレッシャプレート(22)の一方に設けられ、前記各スプライン溝(38)に係合する複数のスプライン突部(39)が前記クラッチインナ(18A,18B)および前記プレッシャプレート(22)の他方に設けられ、前記当接部(63,64)が、前記溝形成突部(37)および前記スプライン突部(39)に一体に連なって前記溝形成突部(37)および前記スプライン突部(39)から半径方向内方に延びるようにしてそれぞれ設けられることを特徴とする請求項5記載の多板クラッチ装置。
【請求項7】
前記プレッシャプレート(22)に、前記スプライン溝(38)および前記スプライン突部(39)の係合部にオイルを導く第1オイル通路(40)が、前記挿入円筒部(22b)を半径方向に貫通して設けられることを特徴とする請求項4記載の多板クラッチ装置。
【請求項8】
前記プレッシャプレート(22)に、前記スプライン溝(38)および前記スプライン突部(39)の係合部にオイルを導く第2オイル通路(41)が、該プレッシャプレート(22)を軸方向に貫通して設けられることを特徴とする請求項4または7記載の多板クラッチ装置。
【請求項9】
前記クラッチインナ(18A,18B)および前記プレッシャプレート(22)の半径方向に沿う前記両当接部(63,64)の内端に連なるとともに前記クラッチインナ(18)の中心軸線を中心とした円弧状に形成される摺接面(65,66)が、相互に摺接するようにして前記クラッチインナ(18)および前記プレッシャプレート(22)にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項5または6記載の多板クラッチ装置。
【請求項10】
前記スプライン突部(39)と前記係合円筒部(18a)の内周および前記挿入円筒部(22b)の外周の一方との間に、ならびに前記溝形成突部(37)と前記係合円筒部(18a)の内周および前記挿入円筒部(22b)の外周の他方との間にそれぞれ間隙(67,68)が形成されることを特徴とする請求項9記載の多板クラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−75035(P2011−75035A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227683(P2009−227683)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】