説明

多機能操作型電子部品

【課題】回転式電子部品と多方向揺動式電子部品とを一体化してもその外形寸法の小型化が図れる多機能操作型電子部品を提供する。
【解決手段】第一回路基板30と、第一回路基板30上に回動自在に設置される回転型物60と、回転型物60を回動することでその電気的出力を変化させる電気的機能部(摺動子81)と、回転型物60の上方に設置され複数の押圧スイッチ123を設けてなる第二回路基板120と、第二回路基板120の上方に設置され揺動中心点(支持部185と揺動受け部153の係合部分)を中心に多方向に揺動するとともに、複数の押圧スイッチ123上に対向する位置にそれぞれ押圧部187を設けてなる揺動つまみ180と、揺動つまみ180の外周を囲むとともに、回転型物60と一体化してなる回転つまみ210とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向揺動式電子部品と回転式電子部品とを一体化してなる多機能操作型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の中には、回転つまみを回転することでその電気的出力を変化する回転式電子部品や、揺動つまみを多方向に揺動することで揺動方向に応じた電気的出力を出力する多方向揺動式電子部品等がある。そして近年、この種の電子部品を設置する電子機器の小型化により、前記各種電子部品を一つの部品として集積化することが望まれている。そこで例えば特許文献1に示すように、回転式電子部品の中央に押釦スイッチを設置すること等が行われている。
【0003】
しかしながら従来、回転式電子部品と多方向揺動式電子部品とを一つの部品として一体化しているものはなかった。また回転式電子部品と多方向揺動式電子部品とを一体化するために特許文献1のように回転式電子部品の中央に多方向揺動式電子部品を設置しようとすると、一枚の回路基板上に多方向押圧式電子部品用の複数の押釦スイッチと、回転式電子部品用の摺接パターンとを設けなければならず、回路基板の外形寸法の小型化、さらにはこの電子部品全体の外形寸法の小型化が図れないという問題点があった。またこの種の電子部品を小型化しようとすると、回転式電子部品と多方向揺動式電子部品のそれぞれの可動部分が干渉する恐れが生じ、それぞれの操作を確実に独立して行うことができなくなる恐れもあった。
【特許文献1】特開2001−184967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、回転式電子部品と多方向揺動式電子部品とを一体化してもその外形寸法の小型化が図れ、また回転式電子部品の操作と多方向揺動型電子部品の操作を何れも独立して確実に行うことができる多機能操作型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の発明は、第一回路基板と、前記第一回路基板上に回動自在に設置される回転型物と、前記回転型物を回動することでその電気的出力を変化させる電気的機能部と、前記回転型物の上方に設置され複数の押圧スイッチを設けてなる第二回路基板と、前記第二回路基板の上方に設置され揺動中心点を中心に多方向に揺動するとともに、前記複数の押圧スイッチ上に対向する位置にそれぞれ押圧部を設けてなる揺動つまみと、揺動つまみの外周を囲むとともに、前記回転型物と一体化してなる回転つまみとを具備することを特徴とする多機能操作型電子部品にある。
【0006】
本願請求項2に記載の発明は、前記回転型物に軸支孔を設けるとともに、前記回転型物に設けた軸支孔に挿入してこの回転型物を回動自在に軸支する基部と、前記回転型物の上面を覆うように設置されるとともに前記第二回路基板を載置する基板載置部とを具備してなる取付部材を有することを特徴とする請求項1に記載の多機能操作型電子部品にある。
【0007】
本願請求項3に記載の発明は、前記第二回路基板の内部に設けた開口にその上面を露出する基台部を設置し、前記基台部上面に設けた揺動受け部と前記揺動つまみ下面に設けた支持部とを揺動自在に係合することで揺動つまみを揺動自在に支持したことを特徴とする請求項1に記載の多機能操作型電子部品にある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、回転式電子部品を構成する回転型物の上部に揺動式電子部品を構成する第二回路基板や揺動つまみ等を設置したので、回転式電子部品と揺動式電子部品とを二層構造に構成でき、全体として無理なくコンパクトに構成できてその外形寸法の小型化が図れるとともに、小型化しても回転式電子部品の操作と多方向揺動型電子部品の操作とを何れも干渉することなく独立して確実に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、回転型物を回動自在に軸支する基部と、回転型物の上面を覆うように設置されて第二回路基板を載置する基板載置部とを具備する取付部材を設置したので、回転型物上への第二回路基板の設置が、容易且つ確実に行なえる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、第二回路基板の内部に設けた開口に基台部上面を露出してこの基台部上面に設けた揺動受け部と揺動つまみ下面に設けた支持部とを揺動自在に係合することで揺動つまみを揺動自在に支持したので、第二回路基板の上方での揺動つまみの揺動自在な設置が容易且つ確実に行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる多機能操作型電子部品1の概略断面図(但し下記するアース板280の図面記載は省略)である。同図に示すようにこの多機能操作型電子部品1は、取付台10上に、基台20と、第一回路基板30と、回転型物60と、取付部材90と、第二回路基板120と、揺動つまみ取付部材150と、揺動つまみ180と、回転つまみ210とを設置して構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0012】
取付台10はこの実施形態では剛性を有する金属板で構成され、その中央近傍の所定位置に、下記する揺動つまみ取付部材150に設けた固定用突起155を挿入する複数の取付孔11と、前記取付孔11の周囲であって下記する取付部材90に設けた係合突起103を挿入する複数の取付孔13と、前記取付孔13のさらに周囲であって下記する基台20に設けた取付突起29を挿入する複数の取付孔15とを設けて構成されている。なおこの金属板製の取付台10はこの多機能操作型電子部品1が機器に組み込まれた際に、機器のアース回路と接続されるものである。
【0013】
図2は基台20を示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は裏面図である。同図及び図1に示すように、基台20はこの実施形態では剛性を有する合成樹脂板で構成され、その外形形状は略円形である。そしてその中央には略円形で上下に貫通する開口21が設けられている。開口21の内周辺の対向する位置からその内側に向かっては一対の舌片状に突出する取付部23,23が設けられ、これら取付部23,23の上下面からはそれぞれ一つずつの小突起状の固定部25,26が突設されている。基台20の下面の開口21の周囲には、下記するアース用基板250を構成する合成樹脂フイルムの厚みと同じ寸法の深さの凹部からなる基板収納部27が設けられている。基台20の下面の前記取付台10の各取付孔15に対向する位置にはこれらに挿入する外径寸法の複数本の取付突起29が設けられている。なお基台20としては合成樹脂以外の材質のもの(例えば金属)を用いても良い。
【0014】
図3は第一回路基板30と第二回路基板120とアース用基板250とを一体に形成してなる回路基板240を示す平面図である。同図に示す回路基板240は、可撓性を有する合成樹脂フイルム(例えばポリエチレンテレフタレートフイルム等)上に所望の回路パターンを形成して構成されるものであり、回路パターンは例えば導電ペーストを印刷(スクリーン印刷等)したり、貼り付けた銅箔をエッチングすること等によって形成されている。回路基板240は、第一回路基板30とアース用基板250と第二回路基板120とを、細い帯状の第一,第二連結部260,265によって連結し、また第一回路基板30の外周辺から外部の回路に接続するための引出部270を引き出すように取り付けて構成されている。以下各構成部分について説明する。
【0015】
第一回路基板30は略円形であり、その中央に上下に貫通する開口部31を設け、開口部31の周囲の上面に内側から同心円状にコモン摺動パターン33、第一オンオフパターン35、第二オンオフパターン39を設けて構成されている。コモン摺動パターン33、第一オンオフパターン35、第二オンオフパターン39からはそれぞれ引出部270に向けて回路パターン40が引き出されている。開口部31は前記基台20の開口21の形状と同一であり、その内周辺の対向する位置からは取付部23,23と同一形状の取付部41,41を突出して設けている。これら取付部41,41にはそれぞれ一つずつ前記基台20の固定部25を挿通する小孔からなる取付固定部43が設けられている。コモン摺動パターン33はリング状であり、また第一オンオフパターン35と第二オンオフパターン39は何れもリング状で複数の矩形状の接点部を所定間隔毎に設けて構成されている。
【0016】
第二回路基板120は略円形であり、その中央に略円形の開口121を設け、また開口121の周囲に等間隔に四つの押圧スイッチ123を設け、また外周近傍の複数位置(五箇所)に貫通する小孔からなる取付部125を設けて構成されている。各押圧スイッチ123はそれぞれ第二回路基板120上に設けた図示しないスイッチ接点パターン上に弾性金属板をドーム状に形成した反転板123aを取り付けて構成されている。各押圧スイッチ123からはそれぞれ図示しない回路パターンが引き出されて回路基板240の上面及び/又は下面を通って前記引出部270に引き出されている。なお回路基板240の下面に回路パターンを形成する場合はスルーホールを利用する。
【0017】
アース用基板250は第一,第二回路基板30,120よりも小さい外径寸法の略円形に形成され、その中央付近に四つの小孔からなる挿通孔251を設け、その外周近傍に四つの小孔からなる取付穴253と、二つの小孔からなる取付孔255とを設けて構成されている。
【0018】
図4は前記回路基板240に貼り付けられるアース板280を示す平面図である。このアース板280は絶縁性の合成樹脂フイルム(この実施形態ではPETフイルム)上面の全面に金属層(この実施形態ではアルミ箔)を積層(この実施形態では接着材による接着)して構成されている。アース板280は略円形の基板覆い部281と略矩形状の接触部285とを連結部283によって連結して構成されている。基板覆い部281の外形形状は前記第二回路基板120の外形形状と同一形状であり、連結部283の外形形状は第二連結部265の外形形状と同一形状である。そして基板覆い部281の前記第二回路基板120に設けた開口121に対向する位置にはこれと同一形状の開口286を設け、また第二回路基板120に設けた四つの押圧スイッチ123にそれぞれ対向する位置にはそれぞれ反転板123aの外径寸法よりも小さい内径寸法の開口289を設け、また第二回路基板120に設けた各取付部125に対応する位置にはそれぞれ貫通孔287を設けている。また接触部285の前記アース用基板250に設けた四つの挿通孔251に対向する位置にはそれぞれ挿通孔251と同一形状の挿通穴291が設けられている。そして上面に金属層が積層されたアース板280は、前記回路基板240の上に、基板覆い部281が第二回路基板120上を覆い、連結部283が第二連結部265上を覆い、接触部285がアース用基板250の中央部分上を覆うように貼り付けられる。このとき第二回路基板120の開口121に対向する位置に開口286が位置し、各押圧スイッチ123の中央に対向する位置に開口289が位置し、取付部125に対向する位置に貫通孔287が位置し、挿通孔251に対向する位置に挿通穴291が位置する。
【0019】
図5は回転型物60を示す図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のA−A断面図である。同図に示すように回転型物60は合成樹脂を略円板状に成形して構成されており、その中央には円形の軸支孔61が設けられ、回転型物60上面の軸支孔61の周囲には複数本(四本)の小突起状の係合部63が設けられ、係合部63の外周側には等間隔に複数個の凹状のクリック部65が設けられ、また回転型物60下面の所定位置には摺動子取付面67が設けられてその面上に四本の小突起状の係止部69が設けられ、さらに外周側面の複数箇所には下記する回転つまみ210を位置決め・固定するための爪状の係合部71が設けられている。なお回転型物60の上面には図1に示すようにクリック板75が載置される。クリック板75は図1に示すように金属板をリング状に形成して構成されており、前記回転型物60の各クリック部65に対応する位置にはこれと同一形状の貫通孔からなるクリック部77が設けられている。なお前記回転型物60に設けた係合部63を、このクリック板75のこれらに対応する位置に設けた図示しない貫通孔に挿入することで位置決めされる。
【0020】
また回転型物60の前記摺動子取付面67には、図1に示すように、弾性金属板製の摺動子81が取り付けられる。摺動子81は摺動子取付面67に当接する平板状の基部83を有し、基部83の一辺から突出してU字状に折り曲げられた二本のアーム部の先端にそれぞれ摺接部87を設けて構成されている。そして基部83に設けた貫通孔に前記係止部69を挿入してその先端を熱カシメすれば、摺動子81が摺動子取付面67に固定される。
【0021】
図6は取付部材90を示す図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は右側面図である。同図に示すように取付部材90は、合成樹脂を略円板状に成形してなる基板載置部91と、基板載置部91の下面中央から下方向に向かって突出する円筒状の基部101とを一体に成形して構成されている。基板載置部91はその上面が平面状でその外周近傍の複数箇所(五ヶ所)から小突起状の係止部93を突出し、その中央には上下に貫通する開口部95を設け、さらに開口部95の内周から基板載置部91の外周に向けて帯状で浅い凹部からなる凹状の基板ガイド溝97を設けている。またその下面の外周近傍の複数箇所(二ヶ所)からは小突起状のクリック弾接板取付用係止部99が突出している。各係止部95は基板載置部91上に前記図3に示す第二回路基板120を載置した際の各取付部125に対向する位置に設けられている。基板ガイド溝97は前記回路基板240を構成する合成樹脂フイルムの厚み寸法と略同一深さ寸法であって回路基板240の第二連結部265を収納できる幅寸法に形成されている。一方基部101の下辺からは下方向に向かって複数本(四本)の係合突起103が突出している。これら係合突起103は、前記回路基板240のアース用基板250に設けた各取付穴253及び同時に図1に示す取付台10の各取付孔13に対向する位置に設けられている。また円筒状の基部101の下辺には、180°対向する位置に一対の凹状の切り欠き102(図6では一ヶ所のみ示す)が設けられている。切り欠き102はこの基部101を前記回路基板240の第一基板30に設けた開口部31と基台20の開口21とに挿入した際に、開口部31の取付部41と開口21の取付部23とに基部101が当接するのを避けるためのものである。なお取付部材90の基板載置部91の下面には、図1に示すクリック弾接板110が取り付けられる。クリック弾接板110は、リング状の基部111と、基部111から下方向に突出する弾性を有するアーム部113と、アーム部113の途中に設けられる弾接部115とを具備している。基部111は前記クリック弾接板取付用係止部99によって基板載置部91の下面に固定される。
【0022】
図7は揺動つまみ取付部材150を示す図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)のB−B断面図である。同図に示すように揺動つまみ取付部材150は合成樹脂の成形品であり、略円柱状の基台部151と、基台部151の上部外周から基台部151の中心軸Lに対して垂直な面方向に向けて張り出す弾性変形する複数(四つ)のヒンジ部161とを具備して構成されている。基台部151の上面中央には半球面状に凹む凹状の揺動受け部153が設けられ、また基台部151の下面からは複数本(四本)の固定用突起155が突出している。各固定用突起155は、回路基板240のアース用基板250に設けた各挿通孔251に対向する位置(この位置はアース板280に設けた各挿通穴291の位置及び図1に示す取付台10の各取付孔11の位置と同じ位置である)に設けられている。一方ヒンジ部161は、薄い板状部材を略C字状に形成してその両端を基台部151に接続してなる弾性支持部163と、弾性支持部163の中央部分に設けられるつまみ固定部165とを具備している。つまみ固定部165は弾性支持部163よりも厚みが厚く、その内部に上下に貫通する孔からなる取付部167を設けている。
【0023】
図8は揺動つまみ180を示す図であり、図8(a)は平面図、図8(b)は図8(a)のC−C断面図である。同図に示すように揺動つまみ180は、合成樹脂を略円板状に成形して構成されている。揺動つまみ180の上面全体は押圧面181となっていて押圧面181の外周側面からはリング状につば部183が突出している。揺動つまみ180の下面中央には半球状に突出する支持部185が設けられ、またその周囲にはリング状に等間隔に略円柱状の押圧部187が複数(四つ)設けられ、さらに各押圧部187の間の位置にはそれぞれ小突起状の固定部189が設けられている。
【0024】
回転つまみ210は図1に示すように、合成樹脂を略円板状であって、その外周から下方向に向かって側壁部211を垂下し、さらにその中央に前記揺動つまみ180の押圧面181を露出する円形の開口213を設けて構成されている。側壁部211の下部には前記回転型物60の各係合部71に係合して両者間を位置決め・固定する孔又は溝からなる係合固定部215が設けられている。
【0025】
図9は取付部材90の基板載置部91上に設置される補強板130の平面図である。補強板130は合成樹脂フイルム(この実施形態では回路基板240よりも剛性を有するPETフイルム)を略円形(小判型)に形成して構成されており、その中央には円形の開口131が設けられ、また開口131の周囲であって前記基板載置部91上に設けた各係止部93に対向する位置にはそれぞれ孔又は溝からなる挿入部133が設けられている。
【0026】
次に多機能操作型電子部品1の組み立て方法の一例を説明する。まず予め前述のように回転型物60の下面に摺動子81を取り付け、回転型物60の上面にクリック板75を取り付け、また取付部材90の基板載置部91の下面にクリック弾接板110を取り付けておく。一方揺動つまみ取付部材150のヒンジ部161の上面側に揺動つまみ180を載置し、その際揺動つまみ180の支持部185を揺動つまみ取付部材150の揺動受け部153に係合し、同時に揺動つまみ180の各固定部189を揺動つまみ取付部材150の取付部167に挿入してその先端を熱カシメすることで一体化しておく。また図3に示す回路基板240の第二回路基板120の上面と第二連結部265の上面とアース用基板250の中央部分上面とを覆うように、図4に示すアース板280を貼り付けておく。
【0027】
そして図10に示すように、基台20の上面に回路基板240の内の第一回路基板30を載置し(図10では第一回路基板30上面に設けている各種回路パターンの記載、及び第二回路基板120上面等に貼り付けられているアース板280の記載、及び第一回路基板30と第二回路基板120の間に以下の組み立て工程で設置される回転型物60及び取付部材90の記載を省略している)、その際基台20の一対の固定部25(図2(a)参照)に第一回路基板30の一対の取付固定部43を挿入してその先端を熱カシメして両者を一体化する。次に回路基板240の内の第二回路基板120とアース用基板250の部分全体を、第一連結部260の部分を基台20の外周部分で基台20の下面側に折り返し、これによってアース用基板250の部分を基台20下面の中央に位置させ、さらに第二回路基板120の部分を基台20に設けた開口21と第一回路基板30に設けた開口部31を通して第一回路基板30の上面側に引き出す。そして基台20の下面中央に位置するアース用基板250の一対の取付孔255(図3参照)に基台20下面に設けた一対の固定部26(図2参照)を挿入してその先端を熱カシメすることで両者を一体化する。このときアース用基板250に設けている挿通孔251と取付穴253は、全て基台20の開口21と第一回路基板30の開口部31内に露出している。また図10ではその記載を省略しているが、第二回路基板120の上面はその全体がアース板280の基板覆い部281によって覆われており、またアース用基板250の下面にはアース板280の接触部285が貼り付けられている。
【0028】
次に図1に示すように、基台20の下面に取付台10を設置し、その際基台20下面に設けた各取付突起29をそれぞれ取付台10の各取付孔15に挿入し、その先端を熱カシメすることで一体化する。次に取付部材90の基部101を回転型物60の軸支孔61に回動自在に挿入したものを、第一回路基板30の中央に設置する。このとき基部101の下端部は第一回路基板30の開口部31と基台20の開口21内に挿入され、基部101に設けた各係合突起103をアース用基板250の各取付穴253と取付台10の各取付孔13とに挿入し、図1に示すように、その先端を熱カシメすることによって固定する。取付部材90を第一回路基板30の中央に設置する際、同時に図1に示すように、第二回路基板120を筒状の基部101の内部と取付部材90の開口部95を通して基板載置部91上に載置する。その際、基板載置部91と第二回路基板120の間に補強板130を挟み込み、これによって第二連結部265が第二回路基板120との接続部において確実に360°折り返されるようにする。そして基板載置部91上に設けた各係止部93(図6参照)を、補強板130の挿入部133と第二回路基板120の取付部125に挿入し、その先端を熱カシメすれば、補強板130と第二回路基板120が基板載置部91上に固定される。次に揺動つまみ180を取り付けた揺動つまみ取付部材150の基台部151を第二回路基板120の上からその開口121及び補強板130の開口131を通して取付部材90の開口部95に挿入してその下端をアース用基板250上に載置する。このとき基台部151の下端から突出する固定用突起155を、アース用基板250の挿通孔251と取付台10の取付孔11に挿入し、その先端を熱カシメして固定する。そして揺動つまみ180の外周を覆うように揺動つまみ180の上から回転つまみ210を被せ、回転つまみ210の係合固定部215に回転型物60の係合部71を係合することで回転つまみ210と回転型物60とを一体化する。
【0029】
以上のようにして完成した多機能操作型電子部品1は、図1に示すように、回転型物60に取り付けた摺動子80の摺接部87が、第一回路基板30上のコモン摺動パターン33と第一,第二オンオフパターン35,39とに弾接し、一方回転型物60の上面上を覆うように回転型物60の上部に設置された第二回路基板120の各押圧スイッチ123上に揺動つまみ180の各押圧部187を配置している。なおこの実施形態では摺動子81が電気的機能部となっている。また揺動つまみ180はその支持部185が揺動つまみ取付部材150の揺動受け部153に係合することでこの係合部分を揺動中心点にして多方向に揺動する。また第二回路基板120上面はアース板280(図1ではその記載を省略)の基板覆い部281によって覆われ、一方アース板280の接触部285は、図1に示すアース用基板250の下面側に位置し、さらに揺動つまみ取付部材150の基台部151の下端面と取付台10間にアース用基板250が挟持され、これによって接触部285は取付台10の上面に圧接されている。
【0030】
更に詳細に言えば、多機能操作型電子部品1は、第一回路基板30と、第一回路基板30上に回動自在に設置される回転型物60と、回転型物60を回動することで第一回路基板30上に設けた回路パターン(第一,第二オンオフパターン35,39等)の電気的出力を変化させる電気的機能部(摺動子80)と、回転型物60の上方に設置され複数の押圧スイッチ123を設けてなる第二回路基板120と、第二回路基板120の上方に設置され揺動中心点(支持部185と揺動受け部153の係合部分)を中心に多方向に揺動するとともに、複数の押圧スイッチ123上に対向する位置にそれぞれ押圧部187を設けてなる揺動つまみ180と、揺動つまみ180の外周を囲むとともに、回転型物60と一体化してなる回転つまみ210とを具備して構成されている。また多機能操作型電子部品1は、回転型物60に軸支孔61を設けるとともに、回転型物60に設けた軸支孔61に挿入してこの回転型物60を回動自在に軸支する基部101と、この基部101の上部の回転型物60の上面を覆う位置に設置されるとともにその上面側に第二回路基板120を載置する基板載置部91とを具備してなる取付部材90を設置している。さらにこの多機能操作型電子部品1は、第二回路基板120の内部に設けた開口121からその上面を露出する基台部151を設置し、基台部151上面に設けた揺動受け部153と揺動つまみ180下面に設けた支持部185とを揺動自在に係合することで揺動つまみ180を揺動自在に支持している。
【0031】
以上のように構成されている多機能操作型電子部品1において、回転つまみ210を回転すればこれと一体に回転型物60が回転し、摺動子81が第一回路基板30上の回路パターン(第一,第二オンオフパターン35,39等)上を摺動してその電気的出力を変化する。このとき同時に取付部材90に取り付けたクリック弾接板110の弾接部115が回転型物60に取り付けたクリック板75のクリック部77に係合してクリック感覚を生じる。一方揺動つまみ180の押圧面181の何れかの場所を押圧してこれを揺動中心点を中心に揺動すると、下降した部分の下面側に設けた押圧部187がこれに対向する押圧スイッチ123の反転板123aを押圧して反転し、クリック感覚を生じながら押圧スイッチ123がオンする。揺動つまみ180への押圧を解除すると、揺動つまみ180は反転した反転板123aとヒンジ部161の弾性復帰力によって元の水平位置に自動復帰し、同時にオンした押圧スイッチはオフする。
【0032】
上記多機能操作型電子部品1によれば、回転式電子部品を構成する回転型物60の上部に揺動式電子部品を構成する第二回路基板120や揺動つまみ180等を設置したので、回転式電子部品と揺動式電子部品とを二層構造に構成でき、全体としてコンパクトでその外形寸法の小型化が図れる。
【0033】
また上記多機能操作型電子部品1によれば、回転型物60を回動自在に軸支する基部101と、回転型物60の上面を覆う位置に設置されて第二回路基板120を載置する基板載置部91とを具備する取付部材90を設置したので、回転型物60上への第二回路基板120の設置が、容易且つ確実に行なえる。
【0034】
さらに上記多機能操作型電子部品1によれば、第二回路基板120の内部に設けた開口121から基台部151上面を露出してこの基台部151上面に設けた揺動受け部153と揺動つまみ180下面に設けた支持部185とを揺動自在に係合することで揺動つまみ180を揺動自在に支持したので、第二回路基板120の上方での揺動つまみ180の揺動自在な設置が容易且つ確実に行なえる。
【0035】
ところで上記多機能操作型電子部品1において、揺動つまみ180や回転つまみ210を操作するためにこれらの部品に指等を接近した際、指等に帯電している静電気が、揺動つまみ180の外周と回転つまみ210の開口213の間の隙間から侵入する場合があるが、侵入した静電気は第二回路基板120上を覆うように取り付けたアース板280の基板覆い部281に入射する。そしてこの静電気はアース板280の接触部285から、この接触部285に面接触している金属板製の取付台10(取付台10はアースされている)にアースされる。従って前記静電気が多機能操作型電子部品1の各種回路パターンに入力する恐れはない。
【0036】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態では取付部材90の基部101の内部を貫通するように揺動つまみ取付部材150の基台部151を立設させたが、前記基部101を省略して取付部材90の基板載置部91を直接基台部151に取り付け(基台部151と基板載置部91とは一体成形で取り付けても良いし、両者間を固定することで取り付けても良い)、この基台部151の外周に直接回転型物60の軸支孔61を挿入して回動自在に軸支させても良い。このように構成すれば、さらに多機能操作型電子部品1の外形寸法の小型化が図れる。また揺動つまみ取付部材150のヒンジ部161は必ずしも必要なく、他の各種手段によって揺動つまみ180を基台部151上に揺動自在に設置しても良い。また上記実施形態では凸状の支持部185と凹状の揺動受け部153とによって揺動つまみ180を揺動自在に軸支したが、逆に揺動つまみ180に設ける支持部185を凹状(例えば半球凹状)に形成し、基台部151上面に設ける揺動受け部153を凸状(例えば半球凸状)に形成して両者を揺動自在に係合させても良い。前者の場合は凸状の支持部185内に揺動中心点が位置し、後者の場合は凸状の揺動受け部153内に揺動中心点が位置する。
【0037】
また例えば静電気対策を施さない場合又は別の静電気対策を施す場合は、アース板280は不用であり、この場合は取付台10やアース用基板250も不用となる。上記実施形態では第一回路基板30と第二回路基板120とを一枚の回路基板240によって構成してその部品点数を削減するようにしたが、両基板は別々の部品として構成しても良い。その場合、両回路基板30,120は合成樹脂フイルムを用いて構成する必要はなく、硬質基板を用いて構成しても良い。また上記実施形態では電気的機能部として摺動子81を用いたが、他の各種形状・構造の電気的機能部を用いても良い。また第一回路基板30上に形成する回路パターンはオンオフパターンに限られず、抵抗体パターンであっても良い。さらには単に第一回路基板30上に設けた接点パターンに弾性金属板製の接点が当接、離間するような構造の電気的機能部(例えば特開2002−184265号公報参照)でも良い。要は電気的機能部は、回転型物60を回転することでその電気的出力を変化する構造のものであれば、どのような構造のものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態にかかる多機能操作型電子部品1の概略断面図である。
【図2】基台20を示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は裏面図である。
【図3】第一回路基板30と第二回路基板120とを一体に形成してなる回路基板240を示す平面図である。
【図4】アース板280を示す平面図である。
【図5】回転型物60を示す図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のA−A断面図である。
【図6】取付部材90を示す図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は右側面図である。
【図7】揺動つまみ取付部材150を示す図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)のB−B断面図である。
【図8】揺動つまみ180を示す図であり、図8(a)は平面図、図8(b)は図8(a)のC−C断面図である。
【図9】補強板130を示す平面図である。
【図10】回路基板240の組み立て状態を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 多機能操作型電子部品
30 第一回路基板
33 コモン摺動パターン(回路パターン)
35 第一オンオフパターン(回路パターン)
39 第二オンオフパターン(回路パターン)
60 回転型物
61 軸支孔
80 摺動子(電気的機能部)
90 取付部材
91 基板載置部
101 基部
120 第二回路基板
121 開口
123 押圧スイッチ
150 揺動つまみ取付部材
151 基台部
153 揺動受け部
161 ヒンジ部
180 揺動つまみ
185 支持部
187 押圧部
210 回転つまみ
213 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一回路基板と、
前記第一回路基板上に回動自在に設置される回転型物と、
前記回転型物を回動することでその電気的出力を変化させる電気的機能部と、
前記回転型物の上方に設置され複数の押圧スイッチを設けてなる第二回路基板と、
前記第二回路基板の上方に設置され揺動中心点を中心に多方向に揺動するとともに、前記複数の押圧スイッチ上に対向する位置にそれぞれ押圧部を設けてなる揺動つまみと、
揺動つまみの外周を囲むとともに、前記回転型物と一体化してなる回転つまみとを具備することを特徴とする多機能操作型電子部品。
【請求項2】
前記回転型物に軸支孔を設けるとともに、
前記回転型物に設けた軸支孔に挿入してこの回転型物を回動自在に軸支する基部と、前記回転型物の上面を覆うように設置されるとともに前記第二回路基板を載置する基板載置部とを具備してなる取付部材を有することを特徴とする請求項1に記載の多機能操作型電子部品。
【請求項3】
前記第二回路基板の内部に設けた開口にその上面を露出する基台部を設置し、
前記基台部上面に設けた揺動受け部と前記揺動つまみ下面に設けた支持部とを揺動自在に係合することで揺動つまみを揺動自在に支持したことを特徴とする請求項1に記載の多機能操作型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−140046(P2006−140046A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329079(P2004−329079)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】