説明

多段プロセスとその制御

多段プロセスを制御する方法を提供する。本プロセスは、原料から中間製品を生成する複数の第1段階プロセスと中間製品から最終製品を生成する複数の別段階プロセスとを含む。第1段階プロセスは複数の中間プロセスを含み、別段階プロセスは最終製品を生成する複数の最終プロセスを含む。中間制御装置は最終製品EPの1つまたは複数の製品特性に応じて第1段階プロセスを制御し、別の制御装置FCは中間製品の製品特性に応じて別段階プロセスを制御する。多段プロセスは、最終プロセスと中間プロセスのそれぞれにプロセス値を割り当てる工程を更に含む。中間制御装置ICは、最終製品を生成するための全体プロセス値を最適化するように中間プロセスの動作を制御する。最終制御装置FCは全体プロセス値を最適化するように中間制御装置ICの動作に応答する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多段プロセスを制御する方法に関する。より具体的には、本発明は多段プロセスを制御するためのリアルタイム方法と制御装置とそのためのプログラム記憶装置とに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
リアルタイム最適化(RTO:real time optimization)装置またはシステムは、プラント工程がその経済最適近くで実行されることを保証するプラント工程のオンラインプロセス制御を提供する。従来、RTOシステムは、最大の経済的便益を提供する条件でプロセスを制御するために、プロセスパラメータの目的関数を最適化するためにリアルタイムでデータを処理する厳密な非線形モデルからなる。通常、これらのRTOシステムは最適化されたプロセス制御パラメータを決定するために数分毎から数時間毎に動作する。
【0003】
RTOシステムは従来、1つ1つのプロセスに適用され独立に動作する。最適化された運転パラメータの計算では、RTOシステムは原料ストリームと最終製品との価格データを時々受信する。中間製品の価格は考慮されないか、或いはこれらが考慮される場合これらの価格はオフラインで推定され、まれに(通常は週1回または月1回)入力される。
【0004】
従って現在のリアルタイム最適化システムはしばしば不正確であり、市場価格構造に急に追随するように十分に適応されていない。その結果、従来のRTO制御式多段プロセスは最適化運転条件で時々だけ動作する。これは非効率的生産と、原材料、中間物およびエネルギーの非効率的利用とをもたらす。これらの非効率性はひいては全体プロセスの経済性に影響を及ぼす。
【0005】
本発明は、上記欠点を回避する或いは少なくとも緩和することおよび/または技術的恩恵を提供することおよび/または概ね改善することと、を目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態によるプロセスの線図を提供する。
【図2】本発明の別の実施形態による別のプロセスの線図を提供する。
【図3】本発明の更に別の実施形態による別のプロセスの線図を提供する。
【発明の概要】
【0007】
本発明によると、添付の特許請求の範囲の任意の項に定義される方法、装置およびプログラム記憶装置が提供される。
【0008】
一実施形態では、原料Fから中間製品IPを生成する1つまたは複数の第1段階プロセスを設ける工程であって、第1段階プロセスは中間製品IPを生成する複数の中間プロセスI1...nを含む、工程と、中間製品IPから最終製品EPを生成する1つまたは複数の別段階プロセスを設ける工程であって、別段階プロセスは最終製品EPを生成する複数の最終プロセスE1...nを含む、工程と、最終製品EPの1つまたは複数の製品特性に応じて第1段階プロセスを制御する中間制御装置ICを設ける工程と、中間製品IPの製品特性に応じて別段階プロセスを制御する別の制御装置FCを設ける工程と、最終プロセスE1...nのそれぞれへプロセス値VE1...nを,中間プロセスI1...nのそれぞれへプロセス値VI1...nを割り当てる工程と、中間制御装置ICにより、最終製品EPを生成するための全体プロセス値VEを最適化するために中間プロセスI(i=1...n)の動作を制御する工程と、を含む多段プロセスを制御する方法が提供される。
【0009】
このように、中間プロセスが最終製品の特性に基づき効果的に制御され、別段階プロセスが中間製品の特性により制御されるので、製品の制御は中間プロセスの性能と別段階プロセスの性能とに依存する。これにより多段プロセス全体を個々の中間プロセスと最終プロセスの性能に基づき最適化できるようになり、全体的により効率的な多段プロセスが得られる。
【0010】
プロセス値は、プロセス実行時間、プロセス運転コストおよび/またはその組み合わせ等のプロセスパラメータから導出されてもよい。プロセス値はまた、原料特性、中間原料特性、最終製品特性、原料コスト、最終または中間製品コスト、潜在価格および/または前述の特性の組み合わせから導出されてもよい。
【0011】
全体プロセス値はプロセス値の和として計算されてもよい。全体プロセス値は、運転される中間および最終プロセスの選択と、選択プロセスの選択運転パラメータ(流速、運転条件等)とに依存する。プロセス値は更に中間および/または最終製品の特性に依存する。これらの特性は、物理的性質(温度、粘度、品質等)と経済性(コスト、価格等を含む経済的価値)とを含んでもよい。
【0012】
全体プロセス値は、全体プロセス値の目的関数を定義しこの関数を最適化することにより最適化されてもよい。プロセス値VE1...nとVI1...nは本出願で概説される適切なモデルにより導出されてもよい。
【0013】
一実施形態では、本発明の方法を実行するようにされたリアルタイム最適化システムが提供される。
【0014】
別の実施形態では、最終製品EPを生成する多段プロセスを制御するための装置が提供される。多段プロセスは、i)原料Fから中間製品IPを生成する1つまたは複数の第1段階プロセスであって、第1段階プロセスは中間製品IPを生成する複数の中間工程I1...nを含む、プロセスと、ii)中間製品IPから最終製品EPを生成する1つまたは複数の別段階プロセスであって、別段階プロセスは最終製品EPを生成する複数の最終プロセスE1...nを含む、プロセス、とを含む。本装置は以下の構成要素、(a)最終製品EPの1つまたは複数の製品特性に応じて第1段階プロセスを制御する中間制御装置ICと、(b)中間製品IPの製品特性に応じて別段階プロセスを制御する別の制御装置FCと、(c)プロセスE1...nのそれぞれにプロセス値VE1...nを、中間プロセスI1...nのそれぞれにプロセス値VI1...n割り当てる手段と、を含む。中間制御装置ICは、最終製品を生成するために、中間製品VI1...nと最終製品EI1...nのプロセス値から導出される全体プロセス値を最適化するために中間プロセスI1...nを制御するようにされる。
【0015】
別の実施形態では、データ記憶媒体上に実装されたプログラムと、本明細書で先に述べた方法を実行するようにされたコンピュータと、が提供される。
【0016】
最後に、第1段階原料ストリームから第1段階製品を生成する第1段階プロセスと、原料として第1段階製品から別段階製品を生成する別段階プロセスと、別段階製品の製品特性に応じて第1段階プロセスを制御する第1の制御装置を設ける工程と、第1段階製品の製品特性に応じて別段階プロセスを制御する別の制御装置を設ける工程と、を含む多段プロセスを制御する方法が提供される。
【0017】
本発明のこれらおよび他の特徴について以下に更に詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の特定の実施形態について一例として添付図面を参照し説明する。
【0019】
定義
別途明確に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は当業者により通常理解される意味を有する。以下の用語および語句は以下に示すような意味を有する。
【0020】
「アプリケーション」または「アプリケーションプログラム」は、有形のコンピュータ読み取り可能媒体上に格納され、コンピュータ自体と関連しない明示された機能を実行するコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラムの集合を意味する。
【0021】
「モデル」は、単一モデル、或いは複数の構成要素モデルの構築を包含する。
【0022】
「ランプ化(lumping)」は、データをランプ(lump)と呼ばれるグループにグループ化することによりより管理しやすい形式へ適用することによりストリームの分子集団に関するデータが実質的に低減される(ランプ化される)処理である。逆に「逆ランプ化(de−lumping)」は、ランプ化されたデータが、通常は、元のランプ化アルゴリズムにより行われた操作を逆にすることにより再び拡大される(逆ランプ化される)処理である。
【0023】
「目的関数」または「費用関数」は通常、モデル調節および経済最適化問題に対し定義される。モデル調節に関し、「目的関数」または「費用関数」は、一時的なプロセスベースモデルの予測特徴と既知のデータからのモデルの所望特徴との間の一致または不一致の程度を示す数学関数を指す。この関数は通常、完全な一致に対しては零の値を、不一致に対しては正値を得るように定義され、最適化は値を零方向に追いやる。経済最適化に関して、「目的関数」は通常は利益計算からなり、これにより差分は製品実現から原料コストと運転コストを差し引くことにより計算され、最適化は利益を最大化する。
【0024】
「オンライン」は、プロセス制御システムと通信中であることを意味する。例えばオンラインで調節される精製所モデル変数は通常、精製所プロセス制御システムから引き出される精製所データにより自動的に調節される。対照的に、オフラインで調節される精製所モデル変数は通常、他のソース(例えば、プラントデータヒストリアンおよび/または実験室データ)からの入力データにより手動で調節される。
【0025】
「処理装置」は、異なる化学組成を有する製品ストリームを生成するために原料ストリームを処理する原油精製所または化学製造プラント内の任意の装置を意味する。例えば「処理装置」は、常圧蒸留装置、減圧蒸留装置、ナフサ水素処理装置、接触改質装置、留出物水素処理装置、流動接触分解装置、水素添加分解装置、アルキル化装置および異性化装置を包含する。
【0026】
「プロセッサ」は、中央処理装置、単一処理装置、またはデータと連動し所与のアプリケーションを実行する相互通信を行う処理装置の集合を意味する。
【0027】
「リアルタイム」は、瞬間的、または最大4時間、好ましくは最大2時間、より好適には最大1時間、最大30分または最大5分を意味する。
【0028】
「リアルタイム最適化(Real−time optimization)アプリケーション」または「RTOアプリケーション」または「RTO」は、処理装置により行われる処理を模擬するモデルを使用して、ある結果を最大化しある結果を最小化することにより、処理装置の最適化設定点をリアルタイムで決定するアプリケーションを意味する。
【0029】
「プロセス値」はその運転コストに基づいたプロセスの値である。プロセス値は、製品を生成するプロセスの選択とその運転コストとに依存する。これはひいては、選択されたプロセスの選択された運転パラメータ(流速、運転条件等)と製品の特性とに依存する。これらの特性は、物理的性質(温度、粘度、品質等)と経済性(コスト、価格等を含む経済的価値)とを含んでもよい。
【0030】
「経済的価値」は、そのコストまたは収益を発生する能力に基づいた製品またはプロセスの価値である。経済的価値は、価格情報、製品特性、製品の量、製品の品質および/または前述のパラメータの組み合わせから導出されてもよい。
【0031】
「全体の経済的価値」は経済的価値の総和である。
【0032】
固定または制約モデル変数の「潜在価格」は、変数が1単位増加された場合にRTO利益目的関数が変化するであろう量を意味する。
【0033】
「ストリーム」は、処理装置へまたは処理装置から流れる精製所内の任意の流体を意味する。例えば「ストリーム」は、液化石油ガス(LPG:liquefied pertrol gas)、軽質直留ナフサ(LSR:light straight run naphta)、重質直留ナフサ(HSR:heavy straight run naphta)、灯油、ディーゼル油、減圧軽油、およびその真空残留物と前駆体だけでなく原油も含む。「中間ストリーム」は具体的には、1つの処理装置により生成されるストリームであって「最終製品」(規定市場価格での販売に適切であることを意味する)への更なる仕上げを目的として別の処理装置に送られるストリームを指す。
【0034】
「上流」はストリームの流れの反対方向を意味する。逆に「下流」はストリームの流れとしての方向を意味する。多段プロセスでは、「中間段階プロセス」は通常、中間段階の下流である「別段階プロセス」の上流で発生するであろう。
【0035】
「中間製品」は、プロセスの最終段階でない特定のプロセスの上流段階で生成される生産物を意味する。「最終製品」は、中間段階プロセスの後に発生する特定の多段プロセスの別段階プロセスで生成される生産物を意味する。
【0036】
説明
従来、リアルタイムオプティマイザ(RTO:real−time optimizer)形式の制御装置はパイプスチル、改質炉、FCCU、エネルギーシステム等の処理装置を制御するために使用される。個々のRTOは、オンラインプロセス制御コンピュータ上で実行され最適化結果を自動的に計算し実施するリアルタイム最適化システムによりしばしば制御される。このシステムは、プラント運転の各段階を経済最適の近くに保つことを目的とする。
【0037】
現在の手法は、製造計画立案者が週一回または月一回更新される中間ストリーム価格のオフライン評価を提供するものである。しばしば、単一の価格評価がストリームの実際の品質とは独立した全体ストリームに対して与えられ、従ってしばしば不正確である。時々、結果の重要品質に従ってストリームの価格を調整するために追加の品質ベース価格修正手段が設けられる。低頻度の価格更新のために、そして品質または分子組成効果に関するそれらの低い経済的情報内容のために、これらの中間ストリーム価格方式は限られた経済的ガイダンスをRTOシステムに提供する。その結果、個々に働くRTOシステムは、すべてのRTOが大局的なプラント全体にわたる最適動作を実現するように一体化された統合的アプローチより、むしろ「その」装置を局所的最適点の方向に押し進める傾向となる。
【0038】
従来のRTOシステムは、全体統合プロセスが、リアルタイム原材料、中間および最終製品価格、それらにリアルタイムで結び付けられたエネルギーと廃物の調達および価格レベル等の経済的要因を考慮して経済最適に動作するように、後続プロセスに対する原料として機能する複数の中間製品を含むとともに1つまたは複数の最終製品を生成する多段プロセスを制御することができない。
【0039】
本発明は、多段プロセス全体の最適化性能を保証するために、選択されたプロセスが選択された運転条件で運転されることを保証することにより、多段プロセスの最適化性能を提供する。多段プロセスは製造コンビナート全体(精製所または化学プラント等)からなってもよい。本発明の方法は、経済最適またはその近くで多段プロセスを動作させるのでリアルタイムで多段プロセスの最適化運転を保証する。より具体的には、本発明の方法は、複数の中間および別の制御装置を一貫したプラント全体にわたる最適運転の方向へ向かわすために最終製品の混合から戻る方向に働くことにより中間ストリーム組成種または品質の現在価格の計算を提供する。
【0040】
一実施形態では、図1に示すように多段プロセスを制御する方法が提供される。本プロセスは、原料Fから1つまたは複数の中間製品IPを生成する第1段階プロセスと中間製品IPから別の製品または最終製品EPを生成する別段階プロセスとを含み、第1段階プロセスは中間製品IPを生成する複数の中間プロセスI1...nを含み、別段階プロセスは最終製品EPを生成する複数の最終プロセスE1...nを含む。本プロセスは更に、最終製品EPの1つまたは複数の製品特性に応じて第1段階プロセスを制御する中間制御装置ICと、中間製品IPの製品特性に応じて別段階プロセスを制御する別の制御装置FCとを含む。
【0041】
中間段階は最終製品の特性を考慮することにより効果的に制御され、最終製品を生成する別段階プロセスは第1段階の中間製品の特性を考慮して制御されるので、多段プロセスをその全体最適近くで制御できるようにする一体化または結合されたプロセスの制御か提供される。対照的に、従来のリアルタイム最適化システムでは、各段階は、一体化された多段プロセスの全体最適を考慮することなく段階毎の最適へと独立に制御される。
【0042】
このようにして、多段プロセスを制御する一体化された方法は、中間制御装置と別の制御装置の両方がそれぞれの中間および別段階プロセスを制御するためにそれぞれの最終製品と中間製品の特性を使用するので、実現される。更に、製品特性に直接依存しなくてもよいが製品特性に関連してもよい追加の制御入力を提供することが可能である。このような情報は、スポット価格または先物価格の形式である価格等の最終製品および中間製品に関する経済情報、可用性、バッチ情報および製品仕様を含んでもよい。
【0043】
別の実施形態では、中間プロセスI1...nのそれぞれは同じ中間製品IPを生成するようにされる。これはまた最終プロセスE1...nのそれぞれに適用されてもよい。従って複数の中間または別のプロセスは中間製品および/または最終製品を生成するために利用可能である。制御装置は、最終製品を生成するための最良の中間および/または最終プロセスを選択することにより最終製品を生成するための最適化経路またはルートを選択する。
【0044】
これは次のやり方で実現される。本プロセスは、プロセスE1...nのそれぞれへプロセス値VE1...nを、中間プロセスI1...nのそれぞれへプロセス値VI1...nを割り当てる工程を含んでもよい。中間制御装置は、最終製品を生成するために中間製品VI1...nと最終製品E1...nのプロセス値から導出される全体プロセス値を最適化するように中間プロセスIを制御する。別の制御装置は、最終製品を生成するために全体プロセス値を最適化するように最終プロセスEを制御する。このようにして多段プロセスは最終製品を生成するように制御される。全体プロセス値は全体プロセス値の目的関数を定義し、この関数を最適化することにより最適化され、制御装置は最適化された目的関数に応じてそれぞれのプロセスE1...nとE1...nを制御する。目的関数は中間製品と最終製品の両方の特性を含んでもよい。特性は、製品組成、量、価格、密度、流速、粘度、温度、濃度等の物理的性質および/またはその組み合わせを含んでもよい。
【0045】
本発明の別の実施形態では、中間制御装置は1つまたは複数の中間プロセスEIを活性化する。最適化された目的関数を満たすために、中間制御装置は多段プロセス全体がその最適条件で動作するようにする1つまたは複数の中間プロセスEIを活性化する。
【0046】
別の制御装置はまた、1つまたは複数の下流プロセスE1...nを活性化してもよい。再び、これは、プロセス全体がその最適条件で動作する最適化された目的関数の計算に応じて行われる。中間製品と最終製品のプロセス値は、製品組成、量、価格、および密度、流速、粘度、温度、濃度等の物理的性質および/またはその組み合わせを含む原料および/または最終製品特性から導出されてもよい。
【0047】
プロセス値VE1...nとVI1...nは、品質配合モデル(quality blending model)、品質バレルモデル(quality barrel model)、成分ランパーモデル(component lumper model)、成分逆ランパーモデル(component delumper model)、組成価格モデル、中間ストリームソースモデル、混合器モデル、解析器モデル、組成配合モデル、全体原料ソースモデルおよび/または前述のモデルの組み合わせを含むモデルにより導出される。これらのモデルについては以下に更に詳細に検討する。
【0048】
プロセス値は潜在価格から導出され、目的関数は潜在価格から導出されてもよい。潜在価格については以下の章で更に詳しく検討する。プロセス値VI1...nはプロセス値VE1...nから導出される。逆にプロセス値VE1...nはプロセス値VI1...nから導出される。
【0049】
好ましい実施形態では、プロセスはリアルタイムで制御される。これによりプロセスをリアルタイム市場価格またはスポット価格に関連して制御できるようにする。プロセスは更に、予測モデルにより製品特性と特には製品価格を予測する工程を含んでもよい。プロセスは予測モデルに関連して制御されてもよい。或いは製品特性は予測モデルにより予測されてもよい。別の発明によると、上述の方法を実行するようにされたデータ記憶媒体またはコンピュータ上に実装されたプロセスが提供される。
【0050】
本発明のプロセスは、各RTO制御装置がリアルタイムで、原料ストリーム、中間製品ストリームおよび最終製品ストリームの経済的価値を計算し伝達できるようにする既存のリアルタイム最適化(RTO)アプリケーションプログラム部品内に実装されてもよい。最終製品EPの1つまたは複数の製品特性に応じて第1段階プロセスを制御する工程と中間製品IPの製品特性に応じて別段階プロセスを制御する工程は、中間製品と最終製品の経済的価値から導出される全体の経済的価値を最適化する。
【0051】
図2に、既存の独立したRTOアプリケーションの一体化による本発明のプロセスの典型的な実施形態を示す。この例の既存のRTOアプリケーションは、RTO制御装置が本発明に従って機能を行うことができるように追加の支援モジュールを含むように修正される。
【0052】
本プロセスは、多くの製品101、即ち原油から自動車用ガソリン(MOGAS:motor gasoline)、ベンゼン、キシレン、灯油、ディーゼル油、HFO(重油)およびLPG(液化石油ガス)を生成する。本プロセスは、原油蒸留段階90、改質装置段階92および流動接触分解(FCC:fluidized catalytic cracking)段階94を含む。蒸留段階90からの中間製品は改質装置段階92とFCC段階94へ送られる。リアルタイム最適化モジュール102、103の形式の制御装置が様々なプロセスを制御する。
【0053】
これらのモジュール102、103の機能性は変化する。これは、各制御装置により最適化された各段階の処理装置90、92、94が1つまたは複数の中間ストリームを生成するか或いは原料として処理するかと、1つまたは複数の最終配合製品を生成するかと、に依存する。下流処理装置への原料である中間ストリーム毎に、一組のモデルが、その処理装置への各分子または組成種の価値(または潜在価格)をリアルタイムで計算する対応制御モジュール102に追加される。同じ中間ストリームを生成する上流装置に対して、組成価値を、ひいては対応モジュール103の目的関数を定義し最適化するために使用される経済的価値に変換するモデル、が追加される。中間ストリームが最終製品配合物に直接送られる場合、評価と価格付けはまた、組成レベルで行うことができる、或いはストリームが製品配合物に与える経済的品質−バレル影響を計算することにより行うことができる。
【0054】
組成および品質−バレル評価と価格付けを常に正確にするために、現在の運転条件とストリーム組成を製造コンビナート全体にわたって反映しなければならない。中間原料ストリームに対して計算される組成と品質−バレル潜在価格は、下流の制御装置への入力としての各ストリームの組成に基づく。上流制御装置はそれぞれの新しい最適化サイクルを行うので、中間原料ストリーム量と組成は変化し、下流制御装置により評価されるこれらのストリームの潜在価格もまた変化することになる。潜在価格の原料組成へのこの依存性を連続的に追跡するために、上流制御装置は、各最適化サイクル後、下流制御装置へ最新予測ストリーム品質を伝達する。この結果、すべての制御装置のプラント全体にわたる最適条件への最終的収束がもたらされる。
【0055】
図3に、改質炉とFCC装置のための2つのRTO制御装置220、230の一体化を例示する。改質炉制御装置は、ソースモデル222、混合器モデル223、解析器モデル224、全体原料ソースモデル226、組成配合モデル225および品質配合モデル221からなる多くのモデルを含む。これらのモデルについて以下に更に詳細に検討する。これらのモデルは、図内の点線により示すように、原料ストリームと他の中間および製品ストリームの特性に基づき様々な中間および最終ストリームの特性を計算する。
【0056】
好ましくは、すべての既存のRTOアプリケーションは、複数の目的関数(例えば、実際のプラントデータと経済的最適化モードに基づき変数を調整するデータ一致)による複数の解モードの使用を支援するオープン形式の非線形方程式に基づいたモデリングソフトウェアと方法を使用して構築される。市販のソフトウェアと方法の適切な例としては、Aspen Technology,Inc.から入手可能なモデリングプラットホームであるDMOとInvensys SimSci−Esscorから入手可能なモデリングプラットホームであるROMeo(登録商標)(方程式に基づいた最適化による厳密なオンラインモデリング:Rigorous On−line Modeling)が挙げられる。各RTOアプリケーションを含むモデルはROMeoモデルおよび方法を使用して構築されることが好ましい。これらのシステムは既に、適切な基礎方程式に基づくコードを有するか、或いは処理装置(例えば、蒸留塔、混合器/フラッシュ、スプリッタ、弁、コンプレッサ)動作の多くのモデリング用に容易に構成されうる。しかしながら処理装置(例えば反応炉)のより複雑な部品について、モデルは、市販のモデリングシステムで入手可能なモデルの組を補完するように専用構築される。
【0057】
既存のRTOアプリケーションに追加されるモジュールは従来の市販のモデリングプラットホーム上に実装されてもよい。制御装置を組み込むモジュールはまた、一般的な計算ブロックで形成されてもよい。これらのブロックは、以下に述べるように基礎方程式のコーディングが所望の機能性を提供できるようにするモデリングプラットホームにより提供される。これらのモジュールはまた、既存のRTO制御装置内に組み込まれてもよい。
【0058】
製品にプロセス値を割り当てるために使用される様々なモデルについて以下に更に詳細に検討する。
品質配合モデル
【0059】
品質配合モデルは、最終製品プールに流れ込む各配合成分の重み付け品質寄与率の結果である最終配合物の検査特性を計算する。配合モデルにより計算される特性は通常、業界基準または特定の売買契約により必要に応じ、各タイプの最終製品により満たされなければならない重要な品質仕様に対するものである。適用可能な品質「j」毎に、以下の一般化された配合方程式が配合モデルに追加される。
【数1】

ここで、F(i)は所与のRTOアプリケーションの範囲内である処理装置から最終製品配合物へ送られる1〜Nの番号が付けられる第「i」番目中間ストリームの流速、q(i,j)は第i番目のこのようなストリームの第j番目の品質、F(k)は所与のRTOアプリケーションの範囲外(例えば他のRTOアプリケーションの範囲内)の処理装置から最終製品配合物に送られる、1〜Mの番号が付けられる第k番目の中間ストリームの流速、q(k,j)は第k番目のこのようなストリームの第j番目の品質、
【数2】

は最終製品プールに対し計算された第j番目の品質である。配合される品質に依存して、そして業界で通常使用される配合規則に一致して、流速F(k)とF(i)の測定結果の単位は体積または質量基準(例えば体積/時間または質量/時間)のいずれかになる。同様に、所与のストリームおよび品質に対する配合係数φ(i,j)は、配合規則が質量または体積配合基準だけを要請する場合は単位値を獲得することになり、或いはその値は配合規則が「係数」ベースで行われる場合は適切な相関により決定される。
【0060】
中間ストリーム流速F(i)とその品質q(i,j)は、所与のRTOアプリケーションの最適化範囲内であり、従ってその最適化関数が移動するにつれて変化する。逆に、中間ストリーム流速F(k)とその品質q(k,j)は、所与のRTOアプリケーションの範囲外であり、従って所与のRTOアプリケーションの最適化移動に影響されない。配合モデルでは、これらの後者の変数は固定値を有する独立変数として定義され、RTO一体化メカニズムの一部として、それらの値(例えば流速と品質)は「上流」RTOアプリケーションが最適化サイクルを完了するたびにそれらにより更新されることになる。所与のRTOアプリケーションが計算し、それぞれの「外部」ストリームの最終製品配合物への「品質−バレル」(品質*流れ)影響の限界経済的価値を他の「上流」RTOに伝達できるようにするために、追加の変数A(k,j)が配合方程式に次のように追加される。
【数3】

【0061】
この方程式内の変数Aqb(k,j)は、「外部」中間ストリーム流速F(k)とその品質q(k,j)毎の独立した品質−バレル調整項を表す。製品配合モデル内の各A(k,j)の値は、配合計算の結果に影響を及ぼさないように零に設定される。しかしながら各A(k,j)は独立変数であるので、潜在価格
【数4】

は所与のRTOアプリケーションのすべての経済的最適化サイクル中にA(k,j)毎に生成される。この潜在価格は、配合プールに追加されるそれぞれのストリームの(通貨/時間)/[品質*(体積/時間または質量/時間)]の単位で「品質−バレル」毎の増分貸方または借方を表す。同様に、すべての「外部」ストリームF(k)もまた独立変数であるので、潜在価格ΔPSP(k,j)は(通貨/時間)/(体積/時間または質量/時間)の単位で同様にF(k)毎に生成される。
【0062】
このようにして決定されたすべてのF(k)とA(k,j)の潜在価格は次に、これらの中間ストリームの流速と品質を最適化する中間または上流側制御装置に実装された「上流」RTOアプリケーションに伝達される。従って「上流」RTOの経済的目的関数は経済的な動因としての流速と品質の潜在価格を直接含むように公式化される。同様に、1つまたは複数の最終製品配合モデルを含むすべての「下流」RTOアプリケーションの経済的目的関数もまた、「下流」および「上流」RTO間の潜在価格の系統的かつ一貫した伝達を行うために修正される。以下の修正は「下流」RTOの目的関数に対し行われる。「上流」RTOに必要な修正については次の章(品質−バレルモデル)で説明する。
【0063】
以下は、RTOの経済的最適化サイクル中に最大化される利益目的関数の例である。
【数5】

ここで、「利益」は製品実現から原料コストと運転コスト(通貨/時間)を引いた差分として計算される純益である。F(i)は生成された製品の流速、P(i)はその販売価格(通貨/流速)、F(j)は処理される原料速度(流速/時間)、P(j)はそれらの購買または置換コスト(通貨/流速)、F(j)は関連用役費(流速/時間)、P(j)はそのコスト(通貨/流速)である。「下流」RTOアプリケーションへの1つまたは複数の配合モデルの追加に一致して、利益目的関数は、最終製品配合物に直接送られ「下流」RTOアプリケーションの最適化範囲外である「上流」装置からの中間ストリームの追加原料コスト項を含むことにより修正される。
【数6】

ここで、F(k)は「上流」装置から最終製品配合物に送られる中間ストリームの流速、PRef(k)はプラントの計画立案者/エコノミストにより通常は提供されるそれらの「基準」価格である。これらの価格は、所与の運転計画期間にわたる各中間ストリームの平均値の最良の推定を表し、計画立案者の週一回または月一回のオフライン線形計画モデルから得られる限界評価の使用を含む多くの手段により推定することができる。利益目的関数が上述のように含まれると、中間ストリーム速度、
【数7】

品質−バレル、ΔPSP(k,j)のRTOにより計算される潜在価格は事実上、基準価格の上または下の増分評価を表す。次の章において説明されるように、「上流」RTOの経済的目的関数はまた、計画立案者提供基準価格に対するこの増分の潜在価格評価と一致するように修正される。これはまた価格フォールバックメカニズム(pricing fall−back mechanism)を提供し、これにより「上流」RTOは、「下流」RTOが長時間停電を経験する場合、計画立案者の中間ストリーム基準価格を使用し続けることができ、従って潜在価格を更新しない。しかしながらすべてのRTOがその通常頻度で実行している場合、潜在価格評価は、計画立案者提供中間ストリーム基準価格のリアルタイム増分調整または微同調を表す。
品質−バレルモデル
【0064】
品質−バレルモデルは、それぞれの「下流」RTOアプリケーションにより計算される速度および品質潜在価格の影響を考慮して各中間ストリームの価格を動的に計算する。品質−バレルモデルは入力として、中間ストリーム基準価格PRef(k)(通常は計画立案者により提供され、「下流」RTOで使用されるものと同じもの)、「上流」RTOにより計算される中間ストリーム品質q(k,j)、「下流」RTOによりそれぞれ計算される中間ストリーム流速と品質、ΔPSP(k)および
【数8】

の潜在価格、および通常は最終配合物プール内の対応品質の製品仕様である基準品質QRef(k,j)をとる。このとき第k番目中間ストリームの製品価格は以下の方程式により計算される。
【数9】

ここで、φ(k,j)は所与のストリームと品質の配合係数である。この配合係数の値は、所与の品質の配合規則が質量または体積配合基準だけを要求する場合、1単位(1.0)である、或いは配合規則が「係数」基準で行われない場合、その値は適切な相関により決定される。この方程式により計算される調整価格「P(k)」は、既に上に定義されたように「上流」RTOアプリケーションの利益目的関数に入力され、経済的製品実現式内の対応中間ストリーム流速F(k)倍される。
【数10】

中間ストリームの組成の経済的評価
【0065】
最終製品配合ではない、更なる処理(例えば反応炉、蒸留等)のためにプラントの他の部分に送られ3つ以上のRTOアプリケーションの最適化範囲にわたる中間ストリームに対し、潜在価格方法論は品質−バレル効果よりむしろ組成種に適用される。各中間ストリームを特徴付ける組成種の潜在価格の計算と伝達を可能にするために、以下のモジュールが既存のRTOアプリケーションに追加される。
成分「ランパー」および「逆ランパー」モデル
【0066】
成分ランプ化または逆ランプ化の目的は、別のRTOアプリケーションのストリーム成分スレート定義と整合するために、1つのRTOアプリケーション内の所与のストリームの成分スレートまたは組成種の母集団を変換することである。この変換は、ストリーム成分のサブセットまたはスーパーセットをそれぞれ導出するために、同じ全質量を保持する一方で所与のストリーム内の成分の数を縮小または拡大することにより、そしてストリーム中に存在する重要な組成グループ(例えばパラフィン、芳香薬、オレフィン等)の物理的および化学的性質を保持することを目的とするランプ化または逆ランプ化規則を適用することにより、実現される。各「上流」RTOアプリケーション内の中間ストリーム毎に、成分「ランパー」または「逆ランパー」モデルが、成分スレートを対応「下流」RTOアプリケーションの入力として必要とされるものに変換するために追加される。図3では、FCCU RTO230内の「ランパー」232が「FCC」成分スレート(FCCU RTOモデルフローシートで使用される)を「改質装置」成分スレート(改質装置RTOモデル工程図で使用される)に変換する、その結果、その原料内の組成種毎に改質炉RTO220により計算される潜在価格を、FCCU RTOアプリケーションの利益目的関数内に同じ組成種の価格として直接入力することができる。
組成価格モデル
【0067】
「ランパー」または「逆ランパー」モデルの計算出力は、ランプ化または逆ランプ化された組成種毎の質量速度(質量/時間)だけでなく、別のモデルへの接続に好適な種毎の全モル速度(モル/時間)とモル濃度(モルパーセントまたは比)も含む標準ストリームである。組成種のランプ化または逆ランプ化処理における質量保存法則を保証するために、「下流」RTOにより計算された対応組成潜在価格と共に「上流」RTOの利益目的関数で使用されるのはこれらの質量速度である。「上流」RTO230に追加される組成価格モデル233の目的は、組成潜在価格基準で評価される中間ストリーム「k」毎の以下の価格計算を評価することである。
【数11】

ここで、
【数12】

そしてPRef(k)(通貨/質量)はストリーム基準価格(通常は計画立案者より提供され、「下流」RTOにおいて使用されるものと同じ)、m(k,j)は第k番目中間ストリーム内の第j番目の組成種の質量速度(質量/時間)、M(k)はストリーム全質量速度(質量/時間)、ΔPSP(k,j)は以下に述べるように「下流」RTOにより計算される第k番目中間ストリーム内の第j番目の組成種の潜在価格(通貨/質量)である。既に上に定義されたように、この方程式により計算される調整価格P(k)(通貨/質量)は「上流」RTOアプリケーションの利益目的関数に入力され、ここで経済的製品実現式内の対応中間ストリーム流速F(k)(質量/時間)倍される。
中間ストリームソースモデル
【0068】
その流れと組成が「上流」RTO230で可能性として最適化され、次に「下流」RTO231(最終製品配合を除いた)で最適化される処理装置への原料となる2つのRTOアプリケーションの最適化範囲にわたる中間ストリーム233毎に、ソースモデル222が「下流」RTOアプリケーションに追加される。装置において処理される原料ストリームの数によっては1つまたは複数のソースモデルが必要かもしれない。ソースモデルの目的は、成分スレート組成、流速および熱的性質を含む「下流」RTOの一貫した一組の入力条件を定義することである。2つのRTOアプリケーション間の統合メカニズムの一部として、「上流」RTOアプリケーションは、その最適化サイクルを完了する毎に「下流」RTOのソースモデル内のストリーム組成データを更新する。
混合器モデル
【0069】
混合器モデル223の目的は、「下流」RTOアプリケーション220により最適化される処理装置に送られる様々な原料ストリームの配合を模擬することである。装置の原料システムの物理的構成によっては1つまたは複数の混合器モデルが必要かもしれない。混合器モデル入力は、ソースモデルからの1つまたは複数のストリームの重要な熱力学的特性だけでなくモル流量(モル/時間)と組成(モル分率)を含む標準ストリームデータ定義である。混合器モデル出力は配合されたモル流量、モル組成および熱力学的特性である。
解析器モデル
【0070】
解析器モデル224の目的は、配合ストリームモル流量Fmolarと第i番目成分のモル組成xmolar(i)と混合器モデル222からの出力とを全ストリーム質量速度Fmass(質量/時間)と重量分率xmass(i)に変換することである。この変換を実現するために下記式を使用することができる。
【数13】

ここで、fmass(i)は第i番目成分の質量速度である。
組成配合モデル
【0071】
このモデルの目的は、上述の品質−バレル評価手法と同様に調整技術を使用することにより組成種毎の潜在価格を生成することである。「下流」RTOアプリケーションが、その最適化範囲内で処理装置に送られる中間ストリーム内の各組成種の限界経済的価値を計算し次に他の「上流」RTOに伝達できるようにするために、次のように追加の変数「A(i)」が原料質量平衡式に導入される。
【数14】

ここで、変数fmass(i)は解析器モデルからの結果として得られる出力、文字“A”が上付きされた変数は解析器モデルにより出力される当該の「調整された」変数である。この方程式内の変数A(i)は「下流」RTOアプリケーションにより最適化された処理装置の原料ストリーム内の組成種「i」毎の独立した質量比調整を表す。組成配合モデル内の各A(i)の値は質量平衡計算結果に影響を与えないように0に設定される。しかしながら各A(i)は独立変数であるので、潜在価格ΔPSP(i)は「下流」RTOアプリケーションのすべての経済的最適化サイクル中にA(i)毎に生成される。この潜在価格は、各組成種の単位原料ストリームに対する単位質量比を追加するための増分の貸方または借方を(通貨/時間)/(質量/時間)の次元で表す。
【0072】
このようにして決定されたすべてのA(i)の潜在価格は、その後「上流」RTOアプリケーションに伝達される。これらのアプリケーションは中間ストリームの流速と組成を最適化する。これに一致して、「上流」RTOの経済的目的関数は、経済的な動因として、組成種毎の質量流量の潜在価格を直接含むように公式化される。これについては標題「組成価格モデル」で上に述べた。同様に、「下流」RTOアプリケーションの経済的目的関数も「下流」RTOと「上流」RTO間の系統的かつ一貫した潜在価格の伝達を行うために修正される。以下の修正は「下流」RTOの目的関数に対し行われる。RTOの経済的最適化サイクル中に最大化される利益目的関数の例は、表題「品質配合モデル」で上に述べた。この目的関数は中間ストリームの原料コスト項を追加するために修正され、方程式内の最終項により表される。
【数15】

ここで、F(k)は更なる処理のために「上流」装置から「下流」装置に送られる中間ストリームの流速、PRef(k)はプラントの計画立案者/エコノミストにより通常は提供されるそれらの「基準」価格である。既に上に述べたように、これらの基準価格は、所与の運転計画期間にわたる各中間ストリームの平均値の最良の推定を表し、計画立案者の週一回または月一回のオフライン線形計画モデルから得られる限界評価(marginal valuation)の使用を含む多くの手段により推定することができる。中間ストリームの基準価格は上式に示したように利益目的関数に含まれるので、組成種ΔPSP(k,j)毎に「下流」RTOにより計算される潜在価格は基準価格の上または下の増分評価を実質的に表す。
全体の原料ソースモデル
【0073】
全体の原料ソースモデル226の目的は、全質量速度と成分重量分率を、モル速度、モル分率組成および一貫した熱力学的特性の標準ストリームデータ形式に変換することであるので、原料ストリームを残りのRTOモデルに接続することができる。
RTO間の潜在価格とストリームデータの転送
【0074】
制御装置および/またはRTOアプリケーション間で中間ストリーム潜在価格に関連するデータと組成データを転送するために、任意の数の既に入手可能な手段を採用することができる。データは、制御装置によりアクセスされるデータベース内に格納されてもよい。
検証およびフォールバックメカニズム
【0075】
「下流」RTOアプリケーションにより計算される潜在価格は、潜在価格値を最大下限と上限と比較しそれらがこれらの有効性限度を越える場合にそれらをクリップすることにより、「上流」RTOに送られる前に検証される。中間ストリームの「基準価格」の導入はまた、価格フォールバック機構を提供し、これにより「上流」RTOは、「下流」RTOが長時間停電を経験する場合、計画立案者の中間ストリーム基準価格を使用し続けることができ、従って潜在価格を更新しない。しかしながらすべてのRTOがその通常頻度で実行している場合、潜在価格評価は計画立案者提供中間ストリーム基準価格のリアルタイム増分調整または微同調を表す。
【0076】
本発明の別の実施形態によると、上述のような最終製品を生成する多段プロセスを制御するために定義され上に説明されたような方法工程を行うためのコンピュータプログラムが提供される。
【0077】
上記モデルの任意のものを単独または組み合わせのいずれかで、中間および/または別のプロセスに値を割り当てるために使用してもよい。モデルはまた、中間および別のプロセスおよび/または製品と関連付けられる特性を定義または計算するために単独または組み合わせのいずれかで使用されてもよい。
【0078】
本発明は、最終製品EPの1つまたは複数の製品特性に応じて第1段階プロセスを制御する中間制御装置ICと、中間製品IPの製品特性に応じて別段階プロセスを制御する別の制御装置FCと、を含むリアルタイム最適化装置であって、プロセスE1...nのそれぞれとプロセスI1...nのそれぞれが割り当てられたプロセス値VE1...nとVI1...nを有し、中間制御装置は最終製品を生成するために中間製品VI1...nと最終製品VE1...nのプロセス値から導出される全体プロセス値を最適化するように中間プロセスI1...nを制御する、ことを特徴とするリアルタイム最適化装置として実施されてもよい。
【0079】
別の実施形態では、本発明は計算装置等の機械上で実施される。本明細書で先に述べた方法が実装されたプログラムまたはソフトウェアは、限定するものではないが記録用テープ、磁気ディスク、コンパクトディスクおよびDVDを含む任意の記憶媒体により計算装置上に格納されてもよい。本明細書の詳細説明のいくつかの部分は最終的に、メモリまたはコンピュータシステムまたはコンピュータ装置内のデータビット上の動作のシンボル表現を含むソフトウェア実施プロセス(software implemented process)という意味で提供される。これらの説明と表現は、当業者にこれらの作業の実体を効果的に伝達するために当業者により使用される手段である。処理と運用は物理量の物理的操作を必要とする。必ずしもではないが通常、これらの量は、格納され、転送され、組み合わせられ、比較され、そうでなければ操作され得る電気的、磁気的、または光学的信号の形式をとる。これらの信号をビット、値、要素、シンボル、キャラクタ、ターム、数字等と呼ぶことは、主として一般的な用法という理由から時には便利であることがわかっている。
【0080】
しかしこれらの用語のすべてが適切な物理量に関連付けされており、かつこれらの量に付けられる好都合なラベルに過ぎないことに留意されたい。特に明記しない限り、或いはそうでなければ明白であるかもしれない場合、本開示を通して、これらの説明は、いくつかの電子装置記憶内の物理的(電子的または磁気的または光学的)量として表されたデータを操作し、記憶装置内のまたは表示装置の送信中の物理量として同様に表された他のデータへ変換する電子装置の動作と処理を指す。本明細書中の用語の例示としては、限定しないが、処理、演算、計算、判断および表示という用語が挙げられる。
【0081】
本発明のソフトウェア実施態様は通常、ある形式のプログラム記憶装置媒体上で符号化される、或いはあるタイプの送信媒体を介し実施される。プログラム記憶装置媒体は、磁気的(例えば、フロッピーディスクまたは固定磁気ディスク装置)また光学的(CD−ROMまたはDVD)であってもよく、読み取り専用またはランダムアクセスであってもよい。同様に、送信媒体はツイストケーブル、光ファイバまたは当該技術領域で知られた他のいくつか適切な送信媒体であってもよい。本発明は、ある実施形態のこれらの態様に限定されない。
【0082】
こうして多段プロセスを制御する方法と多段プロセスを制御する装置が提供された。本発明は、リアルタイムで外部の経済的データを考慮して多段プロセスのリアルタイム制御を可能にするという重要な利点を有する。これにより、多段プロセスが原料ストリーム、最終製品および中間製品のリアルタイムの市況および原料ストリームに応じて動作できるようにする。
【0083】
本明細書に開示された概念と特定の実施形態が本発明の同じ目的を実行するための他の構造を修正または設計するための基本として容易に利用され得ることを当業者は理解すべきである。このような均等な構築が添付の特許請求範囲に記載される本発明の精神と範囲から逸脱しないということも当業者は理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段プロセスを制御する方法であって、
a)原料Fから中間製品IPを生成する1つまたは複数の第1段階プロセスを設ける工程であって、前記第1段階プロセスは、前記中間製品IPを生成する複数の中間プロセスI1...nを含む工程;
b)前記中間製品IPから最終製品EPを生成する1つまたは複数の別段階プロセスを設ける工程であって、前記別段階プロセスは、前記最終製品EPを生成する複数の最終プロセスE1...nを含む工程;
e)前記最終製品EPの1つまたは複数の製品特性に応じて、前記第1段階プロセスを制御する中間制御装置ICを設ける工程;
f)前記中間製品IPの製品特性に応じて、前記別段階プロセスを制御する別の制御装置FCを設ける工程;
g)前記最終プロセスE1...nのそれぞれにプロセス値VE1...nを、前記中間プロセスI1...nのそれぞれにプロセス値VI1...nを割り当てる工程;および
h)前記中間制御装置ICにより、前記最終製品EPを生成するための全体プロセス値VEを最適化するために前記中間プロセスI(i=1...n)の動作を制御する工程
を含む多段プロセスを制御する方法。
【請求項2】
前記別の制御装置FCは、前記中間製品IPを生成するための全体プロセス値VIを最適化するように、前記複最終プロセスE、i=l...nの動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御装置は、前記最終製品EPを生成するための前記全体プロセス値VEを最適化するための活性化のために、プロセスIまたはE、i=1...nを選択することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記全体プロセス値VIは、前記全体プロセス値VIの目的関数を定義し前記関数を最適化することにより最適化され、前記別の制御装置FCはそれに応じて前記最終プロセスEを制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記全体プロセス値VEは、前記全体プロセス値VEの目的関数を定義し前記関数を最適化することにより最適化され、前記中間制御装置ICはそれに応じて前記中間プロセスIを制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記中間制御装置は、前記中間プロセスIに関連したデータを前記別の制御装置FCへ転送し、前記別の制御装置は、前記別のプロセスEに関連したデータを前記中間制御装置ICへ転送することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記製品特性は、前記製品の物理的性質と経済的価値を含み、前記それぞれの制御装置はそれに応じて前記中間プロセスIPと前記最終プロセスEPを制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記プロセス値は、プロセス運転パラメータおよび/または組成、量、価格および物理的性質等の製品特性から導出されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記プロセス値VE1...nとVI1...nは、品質配合モデル、品質バレルモデル、成分ランパーモデル、成分逆ランパーモデル、組成価格モデル、中間ストリームソースモデル、混合器モデル、解析器モデル、組成配合モデル、全体原料ソースモデルおよび/または前述のモデルの組み合わせを含むモデルにより導出されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記プロセス値VI1...nとVE1...nは、前記それぞれのプロセス値VE1...nとVI1...nから導出されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記プロセスは、リアルタイムで制御されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法を実行するようにされたリアルタイム最適化システム(RTO)。
【請求項13】
最終製品EPを生成する多段プロセスを制御する装置であって、
前記多段プロセスは、
i)原料Fから中間製品IPを生成する1つまたは複数の第1段階プロセスであって、前期第1段階プロセスは、前記中間製品IPを生成する複数の中間工程I1...nを含むプロセス、および
ii)前記中間製品IPから最終製品EPを生成する1つまたは複数の別段階プロセスであって、前記別段階プロセスは、前記最終製品EPを生成する複数の最終プロセスE1...nを含むプロセス
を含み、
前記装置は、以下の構成要素(a)〜(c):
(a)前記最終製品EPの1つまたは複数の製品特性に応じて前記第1段階プロセスを制御する中間制御装置IC、
(b)前記中間製品IPの製品特性に応じて前記複別段階プロセスを制御する別の制御装置FC、および
(c)前記プロセスE1...nのそれぞれにプロセス値VE1...nを、前記中間プロセスI1...nのそれぞれにプロセス値VI1...nを割り当てる手段
を含み、
前記中間制御装置ICが前記中間プロセスI1...nを制御して、前記中間製品VI1...nと前記最終製品EI1...nのプロセス値から導出される前記全体プロセス値を最適化し、前記最終製品を生成するようになっている
ことを特徴とする装置。
【請求項14】
前記装置は、コンピュータベースの中間制御装置およびコンピュータベースの別の制御装置を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記装置は、目的関数を最適化するコンピュータベースのオプティマイザを含み、
前記目的関数は、中間プロセスI、最終プロセスE、中間製品IPおよび最終製品EPに対応する制御パラメータを含み、
前記オプティマイザは、前記最適化された目的関数を計算し、
前記制御装置は、前記最適化された目的関数に対応する前記制御パラメータに応じて前記それぞれのプロセスIとEを制御する
ことを特徴とする請求項14または13に記載の装置。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法の工程を実行する機械により実行可能な命令のプログラムを具現する前記機械により読み出し可能なプログラム記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−508881(P2013−508881A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536913(P2012−536913)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/053888
【国際公開番号】WO2011/053538
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】