説明

多段型有機物乾燥システム

【課題】
全体の温度コントロールが容易であり、熱利用効率が高く、低温熱源を利用する場合でも過熱蒸気の流速が過多となるのを抑制可能な多段型有機物乾燥システムを提供すること。
【解決手段】
有機物を上段から下段に向けて多段階5に搬送する搬送手段と、該搬送手段を収容する乾燥室1と、該乾燥室内に過熱蒸気aを送風し、該有機物を乾燥する多段型有機物乾燥システムにおいて、過熱蒸気の導入部7と該乾燥室1との間に、過熱蒸気を該乾燥室1に送風するための加圧室2を有し、過熱蒸気の導出部8と該乾燥室1との間に、過熱蒸気を該乾燥室1から排出するための減圧室3とを有し、該加圧室2と該乾燥室1との間、及び該乾燥室1と該減圧室3との間には、過熱蒸気の流量を調節するための蒸気流調節手段(41〜46,5)が設置されていることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段型有機物乾燥システムに関し、特に、汚泥等、水分を多く含む有機物を乾燥するために使用される多段型有機物乾燥システムに関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥等、水分を多く含む有機物を乾燥させるため、有機物を上段から下段に向けて多段階に搬送させると共に、過熱蒸気を送風して有機物を乾燥する多段型有機物乾燥システムが提案されている。
【0003】
特許文献1に示すように、有機物は、各段に配置されて回転する複数のレーキにより順次横方向に搬送され、各段の端部において一つ下の段に落下し、引き続き下段のレーキにより横方向に搬送されるよう構成されている。このように、有機物は上段から下段に向けて多段階に搬送される。そして、有機物の搬送方向と同じ方向に加熱ガスを流し(並流)、有機物を乾燥させるよう構成している。
【0004】
また、特許文献2には、有機物の搬送手段の最終工程(乾燥末期)において、風量の少ない蒸発蒸気を接触させ、乾燥不足を補うと共に、粉塵が蒸気に混入するのを抑制し、集塵装置が大型化するのを抑制することが開示されている。
【0005】
有機物の搬送方向と過熱蒸気の流れ方向との関係は、両者が同方向に移動する「並流方式」だけでなく、両者が互いに逆方向に移動する「交流(向流)方式」がある。並流方式は、温度コントロールが安定するという利点があるが、特許文献1のように、末端における加熱不足の問題がある。交流方式は、熱効率が高く有機物を炭化させることも可能であるが、加熱が局所的となり易く、全体の温度コントロールが難しいという欠点がある。
【0006】
また、並流方式と交流方式の組み合わせとして、搬送経路の中間位置に過熱蒸気を供給し、有機物の搬送方向に対して上流側に交流で過熱蒸気を流し、下流側に並流で過熱蒸気を流す、所謂、「2分流方式」による乾燥方法もある。しかしながら、多段型有機物乾燥システムでは、上段では、高温が必要であり、下段では、低温での乾燥が必要となる。このため、2分流方式では、乾燥機入口の過熱蒸気温度は1つであるため、上流側の条件と下流側の条件とを同時に満足することは難しく、非効率かつ運転制御が困難であるという難点があった。
【0007】
また、並流方式や交流方式のみで通過流路を形成したり、2分流方式のみで通過流路を形成する場合には、通過流路が長くなり、過熱蒸気の温度応答性が悪く、過乾燥又乾燥不足が発生し易いという問題があった。しかも長い流路は内部圧力損失が増大し、循環ファンが大型化するという問題も生じていた。
【0008】
さらに、低温熱源(300℃台の排ガス)による乾燥を行う場合、伝熱面積が大きくなり、過熱蒸気循環型の乾燥機の場合、循環蒸気の流量が発生蒸気流量の12〜15倍程度となるため、乾燥機内部での流速が過多となり易く、ダストの飛散等の問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2−71900号公報
【特許文献2】特開2004−190990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上述の問題を解消し、全体の温度コントロールが容易であり、熱利用効率が高く、低温熱源を利用する場合でも過熱蒸気の流速が過多となるのを抑制可能な多段型有機物乾燥システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の多段型有機物乾燥システムは以下のような技術的特徴を有する。
(1)有機物を上段から下段に向けて多段階に搬送する搬送手段と、該搬送手段を収容する乾燥室と、該乾燥室内に過熱蒸気を送風し、該有機物を乾燥する多段型有機物乾燥システムにおいて、過熱蒸気の導入部と該乾燥室との間に、過熱蒸気を該乾燥室に送風するための加圧室を有し、過熱蒸気の導出部と該乾燥室との間に、過熱蒸気を該乾燥室から排出するための減圧室とを有し、該加圧室と該乾燥室との間、及び該乾燥室と該減圧室との間には、過熱蒸気の流量を調節するための蒸気流調節手段が設置されていることを特徴とする。
【0012】
(2)上記(1)に記載の多段型有機物乾燥システムにおいて、該加圧室と該乾燥室との間に設置された該蒸気流調節手段は、過熱蒸気が流れる方向を、該搬送手段の上段側、下段側、又は上段側と下段側との両方、のいずれかに切り替える、風向調節機能を有することを特徴とする。
【0013】
(3)上記(1)又は(2)に記載の多段型有機物乾燥システムにおいて、該過熱蒸気の導入部は該加圧室の上部に形成され、該過熱蒸気の導出部は該減圧室の下部に形成されていることを特徴とする。
【0014】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の多段型有機物乾燥システムにおいて、該加圧室と該乾燥室との間に設置された該蒸気流調節手段は、含水率が45%以下の有機物を搬送している段には、送風される過熱蒸気の温度が250℃以下になるように調節されていることを特徴とする。
【0015】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の多段型有機物乾燥システムにおいて、該乾燥室と該減圧室との間に設置された該蒸気流調節手段は、該減圧室の過熱蒸気が所定温度になるように、該蒸気流調節手段が調節されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の多段型有機物乾燥システムでは、過熱蒸気の導入部と該乾燥室との間に、過熱蒸気を該乾燥室に送風するための加圧室を有し、過熱蒸気の導出部と該乾燥室との間に、過熱蒸気を該乾燥室から排出するための減圧室とを有し、しかも、該加圧室と該乾燥室との間、及び該乾燥室と該減圧室との間には、過熱蒸気の流量を調節するための蒸気流調節手段が設置されているため、温度コントロールがし易く、過熱蒸気の熱利用効率も高く設定できる。しかも、過熱蒸気の流速が、過剰に増加することも抑制することが可能となる。
【0017】
さらに、加圧室と乾燥室との間に設置された蒸気流調節手段は、過熱蒸気が流れる方向を、搬送手段の上段側、下段側、又は上段側と下段側との両方、のいずれかに切り替える、風向調節機能を有するため、各段毎に交流方式と並流方式の使い分けが可能となり、熱利用効率を高くすることができる。過熱蒸気が流れる方向を搬送手段の上段側に切り替えたときには、該加圧室から送風された過熱蒸気が、搬送手段の搬送方向と逆方向に流れる空気流(交流方式)を形成するため、有機物を効果的に乾燥させることができ、過熱蒸気が流れる方向を搬送手段の下段側に切り替えたときには、該加圧室から送風された過熱蒸気が、搬送手段の搬送方向と同方向に流れる空気流(並流)を形成するため、温度コントロールを行い易くすることが可能となる。
【0018】
そして、過熱蒸気の導入部は加圧室の上部に形成され、過熱蒸気の導出部は減圧室の下部に形成されているため、加圧室では、搬送手段の上段に高温の蒸気を供給し易くなり、減圧室では、乾燥室から排出された蒸気のうち比較的低温の蒸気から外部に導出することが可能となる。さらに、該導入部と該導出部はそれぞれ有機物乾燥システムの対角線上に位置しているため、該有機物乾燥システム全体の空気の循環を円滑にすることができる。
【0019】
また、加圧室と乾燥室との間に設置された蒸気流調節手段は、含水率が45%以下の有機物を搬送している段には、送風される過熱蒸気の温度が250℃以下になるように調節されているため、有機物の過乾燥を抑止できる。
【0020】
さらに、乾燥室と減圧室との間に設置された蒸気流調節手段は、該減圧室の過熱蒸気が所定温度になるように調節されているため、過熱蒸気の温度を最適化することで、過熱蒸気を循環利用する際に、過熱蒸気が持つ熱の利用効率も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の多段型有機物乾燥システムの概略を示す図である。
【図2】本発明の多段型有機物乾燥システムに使用される搬送手段の一例を示す図である。
【図3】本発明の多段型有機物乾燥システムに使用される蒸気流調節手段の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を以下の好適例により説明するがこれらに限定されるものではない。
本発明の多段型有機物乾燥システムは、汚泥等の水分を含む有機物を上段から下段に向けて多段階に搬送する搬送手段(各段を符号6で示す)と、該搬送手段を収容する乾燥室1と、該乾燥室1内に過熱蒸気aを送風し、該有機物を乾燥する多段型有機物乾燥システムにおいて、過熱蒸気aの導入部7と該乾燥室1の間に、過熱蒸気aを該該乾燥室1に送風するための加圧室2と、過熱蒸気aの導出部8と該乾室1の間に、過熱蒸気aを該乾燥室1から排出するための減圧室3とを有し、該加圧室2と該乾燥室1との間、及び該乾燥室1と該減圧室3との間には、過熱蒸気aの流量を調節するための蒸気流量調節手段(5、41〜46)が設置されていることを特徴とする。
【0023】
本発明の多段型有機物乾燥システムに使用される搬送手段としては、図2に示すように、各段の搬送テーブル5の上にレーキ11を複数配置し、各レーキ11を各段を貫通して配置される回転軸12により回転させることにより構成されている。図2(a)は、各段に配置されるレーキの平面図であり、図2(b)は横方向から見た側面図である。各レーキが回転することにより、有機物は矢印A及びB方向に順次搬送される。搬送手段としては、図2に示すレーキに限らず、無端ベルトによる搬送手段も利用可能であるが、有機物と過熱蒸気との接触面積を増加させるため、レーキのような撹拌機能も付加した搬送手段を用いることが好ましい。
【0024】
図1に示すように、有機物は乾燥室内の上段から下段に順次搬送されながら、乾燥室内に送風された過熱蒸気により乾燥され、最終的には、乾燥汚泥等の乾燥した有機物(乾燥有機物)として排出される。乾燥有機物は、燃焼炉で焼却されたり、セメント製造設備等の燃料として焼却されたりする。
【0025】
本発明の多段型有機物乾燥システムの特徴は、図1に示すように、乾燥室1の過熱蒸気の入口側に加圧室2を設け、乾燥室1の過熱蒸気の出口側に減圧室3を設けることである。そして、乾燥室1と加圧室2との間と、乾燥室1と減圧室3との間に、複数の連通孔を形成し、各連通孔に過熱蒸気の流量を調整する蒸気流調整手段(41〜46,5)を設けている。
【0026】
このような構成を採用することにより、有機物の乾燥状態に応じて、上段から下段に至る各段階の任意の場所から過熱蒸気を必要な流量だけ乾燥室1内に導入することができ、また、過熱蒸気の排出が必要な位置から必要な流量だけ、乾燥室1から過熱蒸気を排出することができる。
【0027】
しかも、図1に示すように、搬送手段の全段階において、過熱蒸気の流路を1つの搬送段階のみの長さに最短化することもでき、乾燥室内部での流速を最も遅くすることも可能となる。
【0028】
さらに、後述するように、乾燥室1の入口側に配置された蒸気流調整手段(41〜46)には、搬送手段の上段側、下段側、又は上段側と下段側との両方、のいずれかに切り替える、風向調節機能も付加でき、これにより、各段毎に交流方式と並流方式の使い分けが可能となる。
【0029】
また、乾燥室1の出口側に配置された蒸気流調整手段5を操作して乾燥室から排出される過熱蒸気の温度を調整することもでき、過熱蒸気の持つ熱を効率的に利用することも可能となる。
【0030】
次に、図1に示す多段型有機物乾燥システムにおける過熱蒸気の流れについて説明する。まず所定の温度に加熱された過熱蒸気aが、加圧室2の入口となる導入部7に導入される。加圧室2は、チャンバーの役割を果たし、蒸気流調整手段(41〜46)を選択的に動作させることにより、加圧室内に蓄積された過熱蒸気を安定的に乾燥室1内に供給することができる。
【0031】
過熱蒸気は、蒸気流調節手段(41〜46)によって、その流量と乾燥室1内に送風される際の風向とが調節されながら乾燥室1内に送風され、乾燥室内を搬送される有機物を乾燥させる。また、乾燥室1と減圧室3との間に設置された蒸気流調節手段5を動作させることにより、減圧室3内に排出される過熱蒸気の流量を調整することができる。そして、どの位置の蒸気流調整手段5を操作するかによって、排出される過熱蒸気の温度が異なるため、蒸気流調整手段5の操作により減圧室3内に排出された過熱蒸気の温度を調整することも可能となる。
【0032】
減圧室3は、乾燥室1内の過熱蒸気を吸い出す、吸引チャンバーの役割を果たす。減圧室3の減圧状態は、送風ファン10によって実現される。減圧室3から導出部8を経て、過熱蒸気(循環蒸気。符号b)が排出され、送風ファン10へと送られる。送風ファン10を通過した蒸気は、熱交換器9に送られ、所定の温度まで上昇させた後に、過熱蒸気aとして再利用されることとなる。
【0033】
本発明の多段型有機物乾燥システムでは、上述したように、過熱蒸気を循環して使用するのが好ましい。これは、汚泥等の有機物を乾燥した際に発生する臭いを外部に放出することを抑制でき、しかも、過熱蒸気が保持する熱量を有効利用するためである。
【0034】
有機物を乾燥すると、蒸気が発生し過熱蒸気に混入することとなる。このため、過熱蒸気の圧力が高まるため、不要な蒸気は、余剰蒸気(有機物から蒸発した蒸気)として、外部に排出される。この際、余剰蒸気を焼却炉又はセメント製造設備に供給する空気の一部に使用することで、余剰蒸気を高温で処理することができ、蒸気に含まれる臭いも分解除去される。
【0035】
熱交換器9には、燃焼炉やセメント製造設備で排出される燃焼ガス等の高温の排出ガスが導入される。本発明の多段型有機物乾燥システムでは、熱交換器に導入される燃焼ガス等の加熱用ガスの温度は、約300℃程度の低温熱源を利用する場合でも、乾燥室内の過熱蒸気の流路が極端に短くできるため、乾燥室内部での過熱蒸気の流速が過多となることが無い。つまり、低温熱源を利用する場合に、過熱蒸気(循環蒸気)量が有機物から蒸発する蒸発蒸気量の12〜15倍となるが、各過熱蒸気が通過する流路が短くなることで蒸気通過面積を抑制できるため、過熱蒸気の流速は過多とならない。
【0036】
本発明の多段型有機物乾燥システムでは、乾燥室に送風される過熱蒸気の流量及び流れる方向を調節する蒸気流調節手段(41〜46)と、乾燥室から排出される過熱蒸気の流量を調節する蒸気流調節手段5と適宜組み合わせて動作させることで、多様な流路を形成することができる。
【0037】
さらに、乾燥室に送風する過熱蒸気の流量を乾燥室から排出する過熱蒸気の流量よりも大きくした場合には、過熱蒸気が乾燥室内に滞留し易くなり、過熱蒸気の圧力を高め、過熱蒸気の熱容量を増加させた乾燥を行うことが可能となる。また、乾燥室から排出する過熱蒸気の流量を乾燥室に送風する過熱蒸気の流量よりも大きくした場合には、過熱蒸気の流れを円滑化することが可能となり、過熱蒸気の循環を効率的に行うことが可能となる。
【0038】
また、加圧室2と乾燥室1との間に設置された蒸気流調節手段(41〜46)は、過熱蒸気が流れる方向を、搬送手段の上段側、下段側、又は上段側と下段側との両方に切り替える、風向調節機能を有しているため、有機物の搬送路の途中で、並流方式や交流方式の部分を適宜設定できる。このため、温度コントロールがし易く、過熱蒸気の熱利用効率も高く設定できる。
【0039】
過熱蒸気が流れる方向を搬送手段の上段側に切り替えたときには、該加圧室から送風された過熱蒸気が、搬送手段の搬送方向と逆方向に流れる空気流(交流方式)を形成するため、有機物を効果的に乾燥させることができる。また、過熱蒸気が流れる方向を搬送手段の下段側に切り替えたときには、該加圧室から送風された過熱蒸気が、搬送手段の搬送方向と同方向に流れる空気流(並流)を形成するため、温度コントロールを行い易くすることが可能となる。
【0040】
各蒸気流調節手段としては、図1に示すような1枚のフィンからなるダンパーで構成することも可能であるが、これに限らず図3のようなダンパーを使用することも可能である。図3(a)には、本発明に使用する蒸気流調節手段の一例として、二枚のフィンを備えたダンパー13を示す。ダンパー13の二枚のフィンは、それぞれ独立して開閉可能であり、搬送テーブルの上段側及び下段側に送風される過熱蒸気の流量及び風向を多様に設定することができる。
【0041】
ダンパー13を用いると、図3(b)のように上段側を閉じ、下段側を開くことで過熱蒸気を下段のみに送風することができる。また、図3(c)のようにダンパー13を搬送テーブルと水平にすることで、上段側と下段側の蒸気を混合させずに、上段側には交流の蒸気流を、下段側には並流の蒸気流を形成することができる。そして、図3(d)のように、ダンパーを完全に閉じた場合には、加圧室からの蒸気流の流入を防ぎ、過乾燥等を防止できる。
【0042】
図3に示すダンパーは、加圧室と乾燥室の間の蒸気流調節手段として使用する例を示したが、当然、乾燥室と減圧室との間の蒸気流調節手段5としても利用可能である。減圧室側の蒸気流調節手段5を適切に調節することで、乾燥室から排出される蒸気流の流量を調節できると共に、乾燥有機物から発生する粉塵が減圧室に排出するのを抑制できる。
【0043】
また、乾燥室内に導入される過熱蒸気の温度は、上段から下段まで同じ温度になる。最下段(もっとも乾燥が進んだ場所)の温度が250℃より高い場合、かつ、過熱蒸気で処理される有機物の含水率が45%以下の場合には、有機物に含まれる揮発成分まで蒸発させる乾溜が生じ、蒸気中にタールが発生する等、過乾燥状態となる。このため、過熱蒸気の温度は250℃以下とすることが好ましい。
【0044】
本発明の多段型有機物乾燥システムでは、図1に示すように、過熱蒸気の導入部7は加圧室2の上部に形成し、過熱蒸気の導出部8は減圧室3の下部に形成している。これは、加圧室2では、搬送手段の上段に高温の蒸気を供給し易くなり、減圧室3では、乾燥室1から排出された蒸気のうち比較的低温の蒸気から外部に導出することを可能とし、さらに、該導入部と該導出部をそれぞれ有機物乾燥システムの対角線上に配置することにより、有機物乾燥システム全体の空気の循環を円滑にするためである。
【0045】
また、乾燥室1と減圧室3との間に設置された蒸気流調節手段5は、減圧室3の過熱蒸気の温度が所定温度になるように調節されているため、過熱蒸気の熱利用効率を高め、これらを循環蒸気として再利用し、新たな過熱蒸気aとして供給することができる。なお、この減圧室内の過熱蒸気の温度としては、140℃以上又は140℃前後の温度が好ましい。
【0046】
本発明の多段型有機物乾燥システムでは、工業的に利用価値の低い300℃以下の低温熱源を利用する場合でも、図1に示すように、複数の過熱蒸気の流路が確保され、流路が短く、流量の増加も抑制できるため、乾燥機本体や熱交換機を小型化することが可能となる。
【0047】
しかも、例えば、図1のように13段の多段型乾燥機(上段の1段目は、過熱蒸気を通さないため、有効段数は12段となる)では、加圧室側及び減圧室側それぞれに最大6か所ずつ蒸気流調節手段を設置することにより、12蒸気流路となり、各段共に交流・並流の使い分けが可能となる。また、1流路方法式に比べると、内部流速が1/12となり、流速の2乗に比例して増大する内部圧力損失を大幅に低減することができる。このため、循環ファンの設置をする必要がなくなり、装置の小型化、省電力化を図ることができる。
【0048】
そして本発明では、有機物の搬送経路を複数に分けて過熱蒸気と接触させる、所謂、分流処理を行うため、過熱蒸気の乾燥室への送風口又排出口での温度制御が容易になり、安定した乾燥が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明により、全体の温度コントロールが容易であり、熱利用効率が高く、低温熱源を利用する場合でも過熱蒸気の流速が過多となるのを抑制可能な多段型有機物乾燥システムを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 乾燥室
2 加圧室
3 減圧室
5、13、41〜46 蒸気流調節手段
6 搬送テーブル
7 過熱蒸気導入部
8 過熱蒸気導出部
9 熱交換器
10 送風ファン
11 レーキ
12 回転軸
a、b 過熱蒸気の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を上段から下段に向けて多段階に搬送する搬送手段と、該搬送手段を収容する乾燥室と、該乾燥室内に過熱蒸気を送風し、該有機物を乾燥する多段型有機物乾燥システムにおいて、
過熱蒸気の導入部と該乾燥室との間に、過熱蒸気を該乾燥室に送風するための加圧室を有し、
過熱蒸気の導出部と該乾燥室との間に、過熱蒸気を該乾燥室から排出するための減圧室とを有し、
該加圧室と該乾燥室との間、及び該乾燥室と該減圧室との間には、過熱蒸気の流量を調節するための蒸気流調節手段が設置されていることを特徴とする多段型有機物乾燥システム。
【請求項2】
請求項1に記載の多段型有機物乾燥システムにおいて、該加圧室と該乾燥室との間に設置された該蒸気流調節手段は、過熱蒸気が流れる方向を、該搬送手段の上段側、下段側、又は上段側と下段側との両方、のいずれかに切り替える、風向調節機能を有することを特徴とする多段型有機物乾燥システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多段型有機物乾燥システムにおいて、該過熱蒸気の導入部は該加圧室の上部に形成され、該過熱蒸気の導出部は該減圧室の下部に形成されていることを特徴とする多段型有機物乾燥システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の多段型有機物乾燥システムにおいて、該加圧室と該乾燥室との間に設置された該蒸気流調節手段は、含水率が45%以下の有機物を搬送している段には、送風される過熱蒸気の温度が250℃以下になるように調節されていることを特徴とする多段型有機物乾燥システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の多段型有機物乾燥システムにおいて、該乾燥室と該減圧室との間に設置された該蒸気流調節手段は、該減圧室の過熱蒸気が所定温度になるように、該蒸気流調節手段が調節されていることを特徴とする多段型有機物乾燥システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−207871(P2012−207871A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74517(P2011−74517)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】