説明

多段式ターボ過給システム

【課題】多段式ターボ過給システムにおいて、適切で効果的なエアアシストを行なう。
【解決手段】内燃機関15の排気通路17上において、上流側から高圧段ターボ過給機12の高圧段タービン12T、低圧段ターボ過給機11の低圧段ターボ過給機11Tを接続する。蓄圧通路26を介して蓄圧タンク25を高圧段タービン12Tの上流側の排気通路17に接続し、蓄圧通路26に第1バルブ27を設ける。蓄圧タンク25と低圧段タービン11Tの入口側を低圧段エアアシスト通路28で接続し、低圧段エアアシスト通路28に第2バルブ29を設ける。第1バルブ27の開閉を制御して、蓄圧タンク25に蓄圧する。運転状態に合わせて第2バルブ29を開いて低圧段タービン11Tに蓄圧ガスを供給し、エアアシストを行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のターボ過給機を直列に接続した多段式ターボ過給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シングルターボ過給システムにおいて、排気マニホルドの圧力エネルギを回収し蓄圧タンクに蓄圧するとともに、ターボ過給機のタービン上流側に蓄圧ガスをエアアシストとして供給し、ターボ過給機の応答性を向上したものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2008−002276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、複数のターボ過給機のタービンを直列多段に接続する多段式のターボ過給システムでは、各タービン入口圧は運転領域により様々な値を取るため、特許文献1のシングルターボ過給システムの構成を単純に適用すると、蓄圧タンクの圧力がアシストを行なおうとするターボ過給機のタービン入口圧に対して十分ではなく、適切なアシストを行なうことができないことがある。
【0004】
本発明は、多段式ターボ過給システムにおいて、より適切で効果的なエアアシストを行なうことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の多段式ターボ過給システムは、高圧段ターボ過給機と、低圧段ターボ過給機と、高圧段ターボ過給機のタービン上流側から圧力エネルギを回収し蓄圧する蓄圧タンクと、蓄圧タンク内の蓄圧ガスを低圧段ターボ過給機のタービン入口側に供給する蓄圧ガス供給手段とを備えることを特徴としている。
【0006】
蓄圧ガス供給手段は、更に高圧段ターボ過給機のタービン入口側に蓄圧ガスを供給可能であり、運転状態に対応して蓄圧ガスを、高圧段ターボ過給機および/または低圧段ターボ過給機のタービン入口側に供給し、過給増大要求時には、蓄圧ガスを高圧段ターボ過給機のタービン入口側へ優先して供給する。これにより、蓄圧ガスの圧力に対応してより適切なエアアシストを行なうことができる。
【0007】
蓄圧ガス供給手段は、蓄圧タンク内の圧力と高圧段ターボ過給機のタービン入口圧の差圧が所定値よりも大きいときに高圧段ターボ過給機のタービン入口側に蓄圧ガスを供給し、差圧が所定値より小さいときには低圧段ターボ過給機のタービン入口側に蓄圧ガスを供給する。
【0008】
高圧段ターボ過給機および低圧段ターボ過給機により過給を行っている状態において、高圧段ターボ過給機による過給を停止する際に、蓄圧ガス供給手段が低圧段ターボ過給機のタービン入口側に蓄圧ガスを供給する。これにより、トルク段差の発生を防止できる。特に、加速時など過給増大要求があるときには、より顕著な効果が得られる。
【0009】
蓄圧は、高圧段ターボ過給機をバイパスする高圧段排気バイパス通路を介して高圧段ターボ過給機へ供給される排気の一部がバイパスされる運転領域において行われる。これにより、過給効率を低下させることなく蓄圧を行なうことができる。
【0010】
またより高い圧力での蓄圧を行なうには、上記運転領域において高圧段排気バイパス通路に設けられた高圧段排気切替弁を閉じて蓄圧が行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、多段式ターボ過給システムにおいて、より適切で効果的なエアアシストを行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態である多段式ターボ過給システムの一例である2段式ターボ過給システムの構成を示すブロック図である。
【0013】
ターボ過給システム10は、相対的に大容量の低圧段ターボ過給機11および相対的に小容量の高圧段ターボ過給機12を備える。エアクリーナ13から導かれた吸気通路14は、低圧段ターボ過給機11の低圧段コンプレッサ11Cを介して、高圧段ターボ過給機12の高圧段コンプレッサ12Cへと接続され、図示しないスロットルやインタークーラを介して内燃機関15の吸気マニホルド16へと接続される。また、排気通路17は、内燃機関14の排気マニホルド18から高圧段ターボ過給機12の高圧段タービン12Tを介して、低圧段ターボ過給機11の低圧段タービン11Tへと接続され、排気触媒(図示せず)等を介して外部へと連通される。
【0014】
吸気通路14において、高圧段コンプレッサ12Cの入口側と出口側とは、吸気バイパス通路19によって連通され、吸気バイパス通路19には吸気切替弁20が設けられる。一方、排気通路17において、高圧段タービン12Tの入口側と出口側は、高圧段排気バイパス通路21により連通され、高圧段排気バイパス通路21には高圧段排気切替弁22が設けられる。また、低圧段タービン11Tの入口側の排気通路17は、低圧段タービン11Tの出口側の排気通路17へと低圧段排気バイパス通路23によって連通され、低圧段排気バイパス通路23には低圧段排気切替弁24が設けられる。
【0015】
更に、本実施形態では、排気通路17の高圧段タービン12Tの上流側と蓄圧タンク25とが蓄圧通路26により連通され、蓄圧通路26には第1バルブ27が設けられる。なお、図1では蓄圧通路26が排気通路17に接続されているが、蓄圧通路26を介することなく排気マニホルド18に直接接続される構成であってもよい。また、蓄圧タンク25は低圧段エアアシスト通路28を介して、排気通路17の低圧段タービン11Tの入口側に連通され、低圧段エアアシスト通路28には第2バルブ29が配置される。
【0016】
なお、吸気切替弁20、高圧段排気切替弁22、低圧段排気切替弁24、第1バルブ27、第2バルブ29の開閉は、ECU30により制御される。また、本実施形態においては、吸気通路14の低圧段コンプレッサ11Cの上流側にエアロフローメータS1が、スロットル弁(図示せず)にスロットル開度センサS2が、吸気マニホルド16内にインマニ圧センサS3が、蓄圧タンク25内に圧力センサS4が設けられ、各々のセンサ信号はECU30に入力される。
【0017】
次ぎに、図2のフローチャートを参照して、第1実施形態における蓄圧タンク25内の蓄圧ガスを利用したエアアシスト制御処理について説明する。なお図2に示されるエアアシスト制御処理は、ECU30において所定のタイミングで繰り返し実行される。なお、蓄圧通路26を介した蓄圧タンク25への蓄圧は、従来周知の方法で別途行われている。
【0018】
ステップS100では、例えばスロットル開度変化等に基づく急加速要求判定など、過給を増大させる要求が発生したか否かが判定される。過給増大要求がないと判定された場合には本処理は終了し、過給増大要求があると判定された場合には、ステップS102において、蓄圧タンク25内の圧力(タンク内圧力)P0と高圧段タービン12Tの入口圧力P1の差圧ΔP1(=P0−P1)が所定値よりも大きいか否かが判定される。
【0019】
ΔP1>所定値のときには、タンク内圧力P0は、高圧段タービン12Tをアシストするのに十分な値を有するので、ステップS104において第1バルブ27が開かれるとともに第2バルブ29は閉じられる(あるいは閉じた状態に維持される)。これにより、蓄圧ガスが蓄圧通路26を介して高圧段タービン12Tの入口側に供給されて高圧段タービン12Tのアシストが行なわれ、このエアアシスト制御処理は終了する。
【0020】
一方ステップS102において、差圧ΔP1>所定値でないと判定されたとき、タンク内圧力P0は、高圧段タービン12Tをアシストするのに十分な値でないので、ステップS106において、蓄圧タンク26内の蓄圧ガスを低圧段タービン11Tのアシストに使用できないかが判定される。すなわち、ステップS106では、タンク内圧力P0と低圧段タービン12Tの入口圧力P2の差圧ΔP2(=P0−P2)が所定値よりも大きいか否かが判定される。
【0021】
ΔP2>所定値のときには、タンク内圧力P0は、低圧段タービン11Tをアシストするのに十分な値を有するので、ステップS108において第2バルブ29が開かれるとともに第1バルブ27は閉じられる(あるいは閉じた状態に維持される)。これにより、蓄圧ガスが低圧段エアアシスト通路28を介して低圧段タービン11Tの入口側に供給されて低圧段タービン11Tのアシストが行なわれ、このエアアシスト制御処理は終了する。
【0022】
ステップS106においてΔP2>所定値でないと判定されたときには、タンク内圧力P0は、高圧段タービン12T、低圧段タービン11Tの何れのアシストを行なうにも十分な値でないので、ステップS110において第1および第2バルブ27、29が閉じられ(あるいは閉じた状態に維持され)、エアアシスト制御処理は終了する。
【0023】
なお、高圧段タービン12T、および低圧段タービン11Tの入口圧力P1、P2は、図3に示されるように、実験値に基づいて作成されたマップを参照して、例えばエンジン回転数とインマニ圧力とから求められる。すなわち、図3において、曲線群LGは圧力P1、P2の等値線である。
【0024】
次に図4を参照して、第1実施形態におけるエアアシスト制御処理動作の具体例について説明する。図4は、高圧段タービン12Tおよび低圧段タービン11Tの入口圧力P1、P2とタンク内圧力P0の時間的な変化を示すグラフであり、横軸は時間に対応し、縦軸は圧力に対応する。
【0025】
例えばタンク内圧力P0は、エアアシストが実行される前には、それまでの蓄圧処理により高圧段および低圧段タービン12T、11Tの入口圧力P1、P2よりも十分に高い値に維持されている。時点t0において例えば加速が開始されると、図2を参照して説明されたステップS102以下の処理が開始され、エアアシストが実行される。
【0026】
エアアシスト実行開始当初は、タンク内圧力P0が十分に高いので、蓄圧ガスは高圧段タービンT12へと供給される。これにより蓄圧タンク25に蓄圧されていた蓄圧ガスは消費され、タンク内圧力P0は徐々に低下し、両タービンの入口圧力P1、P2は増大する。時点t1(>t0)において、タンク内圧力P0と高圧段タービンT12の入口圧力P1の差圧ΔP1が所定値以下となると、蓄圧ガスの供給は高圧段タービンT12から低圧段タービンT11へと切替えられる。
【0027】
蓄圧ガスが更に消費され、時点t2(>t1)において、タンク内圧力P0と低圧段タービンT11の入口圧力P2の差圧ΔP2が所定値以下となると、蓄圧ガスの供給は停止され、タンク内圧力P0は次の蓄圧が開始されるまで一定値となる。すなわち、図4の区間Aでは、高圧段タービンT12へのエアアシストが実行され、区間Bでは低圧段タービンT11へのエアアシストが実行される。
【0028】
以上のように、第1実施形態によれば、多段式ターボ過給システムにおいて、高圧段タービン上流側から圧力エネルギを回収し蓄圧するため、高い圧力で蓄圧できるとともに、タンク内圧力が高圧段タービンへのアシストに十分でなくなったときには、蓄圧ガスを低圧段タービンへ供給して低圧段タービンのアシストを行なうことができるので、運転状態に合わせて蓄圧エネルギを有効に活用することが可能になる。
【0029】
すなわち、多段式ターボ過給システムでは、同一空気量でのエキマニ圧力が単段式に比べ高いので、高圧段タービンのアシストに使用できる最低タンク内圧力は、単段式の場合に比べ高い。このため単段式ターボ過給システムのエアアシストのように、蓄圧と蓄圧ガスの供給とを同じ位置で行なうと、蓄圧エネルギを有効に活用することができない。しかし、本実施形態では、蓄圧ガスを低圧段タービンへと供給可能であるため、蓄圧エネルギを有効に活用できる。
【0030】
次に図1および図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお第2実施形態の構成は、第1実施形態の構成と略同じであり、第1実施形態との違いは、エアアシスト制御処理動作のみである。したがって、第2実施形態のエアアシスト制御処理動作に係わる構成についてのみ説明する。なお、第2実施形態では、2個のターボ過給機を用いるモード(2個ターボモード)から1個のターボ過給機のみを用いるモード(1個ターボモード)へ切替える際に、低圧段タービン11Tに対してエアアシストを行ない、トルク段差の発生を防止する。
【0031】
図5は第2実施形態のエアアシスト制御処理のフローチャートであり、ECU30において所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0032】
ステップS200では、現在の運転点が2個ターボ領域(2個ターボモード)にあるか否かが判定される。2個ターボ領域にはないと判定されるとこのエアアシスト制御処理は直ちに終了する。一方、運転点が2個ターボ領域にあると判定されるとステップS202において、加速要求などの過給増大要求があり、かつ現在の運転点が2個ターボモードから1個ターボモードへの切替領域にあるか否かが判定される。
【0033】
過給増大要求がない、あるいは現在の運転点が2個ターボモードから1個ターボモードへの切替領域にないときには、このエアアシスト制御処理は終了する。一方、過給増大要求があり、かつ現在の運転点が2個ターボモードから1個ターボモードへの切替領域にある場合には、ステップS204において目標過給圧が算出され、ステップS206において低圧段エアアシスト通路28に設けられた第2バルブ29が開かれ、低圧段タービン11Tへのエアアシストが実行される。
【0034】
ステップS208では、2個ターボモードから1個ターボモードへの切替え制御(ステップS208〜S216)が開始され、高圧段排気切替弁22が全開される。ステップS210では、低圧段コンプレッサ出口圧力が高圧段コンプレッサ出口圧力以上であるか否かが判定され、この判定は低圧段コンプレッサ出口圧力が高圧段コンプレッサ出口圧力以上となるまで繰り返される。
【0035】
低圧段コンプレッサ出口圧力が高圧段コンプレッサ出口圧力以上になると、ステップS212において吸気切替弁20が全開される。ステップS214では、現在の過給圧が目標過給圧以上となったか否かが判定され、過給圧が目標過給圧以上になるまでこの判定は繰り返される。また、ステップS214において、現在の過給圧が目標過給圧以上になったと判定されると、ステップS216において第2バルブ29が閉じられ、このエアアシスト制御処理は終了する。
【0036】
以上のように、第2実施形態では、多段式ターボ過給システムにおいて、高圧段タービン上流側から圧力エネルギを回収、蓄圧するとともに、過給増大要求があるとともに2個ターボモードから1個ターボモードへの切替え時に、低圧段タービンに蓄圧ガスを供給してエアアシストを行なうことにより、2個ターボモードから1個ターボモードへの切替え時のトルク段差の発生を防止し、運転状態に適した効率的なエアアシストを行なう。
【0037】
次に図6〜図8を参照して本発明の第3実施形態について説明する。なお第3実施形態の構成は、第2実施形態の構成と略同じであり、第2実施形態との違いは、蓄圧処理動作のみである。したがって、以下の説明においては、第3実施形態の蓄圧処理動作に係わる構成についてのみ説明する。
【0038】
第3実施形態は、2個ターボモードの特定の領域(排気切替弁微開領域)において蓄圧を行なうものなので、まず図6、図7を参照して2段式ターボ過給システムの一般的な作動モードについて説明する。図6は、低圧段ターボ過給機11および高圧段ターボ過給機12の作動モードを示すマップであり、横軸はエンジン回転数、縦軸は負荷トルクに対応する。
【0039】
2段式ターボ過給システムでは、エンジン回転数が相対的に低く、低圧段、高圧段ターボ過給機11、12が共に作動される2個ターボモードと、エンジン回転数が相対的に高く、高圧段排気切替弁22が全開され低圧段ターボ過給機11のみが作動される1個ターボモードとを備える。
【0040】
2個ターボモードは、更に高圧段排気切替弁22が全閉され、低圧段ターボ過給機11と高圧段ターボ過給機12が共にフル稼動されるフル稼働モードと、高圧段排気切替弁22が部分的に開かれ、低圧段ターボ過給機11はフル稼動されるが、高圧段ターボ過給機12は、排気の一部のみを用いて稼動される排気切替弁微開モードとに分けられる。すなわち、排気切替弁微開モードは、フル稼働モードと1個ターボモードの間を繋ぐ移行区間としてのモードである。なお各モードにおいて、低圧段排気切替弁24は基本的に全閉状態に維持される。
【0041】
図6には、フル稼働モードに対応するフル稼働領域がD1、排気切替弁微開モードに対応する排気切替弁微開領域がD2、1個ターボモードに対応する1個ターボ領域がD3で示される。また、境界線L1は2個ターボモード(フル稼働領域D1および排気切替弁微開領域D2に対応)と1個ターボモード(1個ターボ領域D3に対応)の間の境界線である。また、境界線L2は2個ターボモードにおけるフル稼働領域D1と排気弁微開領域D2の間の境界線である。
【0042】
図7は、図6に示される矢印Mに沿って運転状態がフル稼働モードから1個ターボモードへと変化するときの高圧段排気切替弁22の開度の変化を示すグラフであり、横軸はエンジン回転数、縦軸は高圧段排気切替弁22の開度に対応する。
【0043】
矢印Mは、運転点がフル稼働領域D1から、排気切替弁微開領域D2を通って、1個ターボ領域D3へと遷移することを示している。フル稼動領域D1では、高圧段排気切替弁22の開度は全開状態にされる。エンジン回転数が増大され回転数Ne1に達すると、運転点は境界線L2を横切って排気弁微開領域D2に入り、1個ターボ領域D3に向けて更に移動する。このとき、高圧段排気切替弁22は徐々に閉められその開度は小さくなる。
【0044】
エンジン回転数がNe2に達して運転点が境界線L1を越えると、運転点は1個ターボ領域D3に入るので、作動モードは1個ターボモードに切替えられ、高圧段排気切替弁22は全開状態とされる。なお、境界線L1近傍には境界線に沿って、2個ターボモードから1個ターボモードへの切替動作を行なう切替領域が設定されている。
【0045】
次ぎに図8のフローチャートを参照して第2実施形態の蓄圧処理動作について説明する。この蓄圧処理は、ECU30において所定のタイミングで繰り返し実行される。なお、第3実施形態の蓄圧処理動作は、排気切替弁微開領域において実行されるが、これは、高圧段排気切替弁22が全閉されたフル稼働時に蓄圧を行なうには、タービンの可変ベーンを閉じる必要があり過給効率を低下させるためである。
【0046】
ステップS300では、現在の運転点が排気切替弁微開領域D2にあるか否かが判定される。排気切替弁微開領域D2にないと判定されたときにはこの処理は直ちに終了し、排気切替弁微開領域D2にあると判定されたときには、ステップS301において、タンク内圧力P0が所定値よりも高いか否かが判定される。
【0047】
ステップS301において、蓄圧タンク25のタンク内圧力P0が所定値よりも高い場合には、本蓄圧処理は終了し、タンク内圧力P0が所定値以下の場合には、ステップS302において、高圧段排気切替弁22が閉じられる。ステップS304では、現在の運転点が2個ターボモードから1個ターボモードへと切替える切替領域にあるか否かが判定される。すなわち、図6における境界線L1の近傍に設定された所定の切替領域内に運転点があるか否かが判定される。
【0048】
切替領域であると判定されると、1個ターボモードへの切替えを行なう必要があるので、ステップS306において、蓄圧通路26に設けられた第1バルブ27(図1参照)が閉じているか否かが判定され、閉じていればそのまま蓄圧処理を終了し、従来周知のように1個ターボモードへの切替処理が実行される。また閉じていないと判定された場合には、ステップS308において第1バルブ27を閉じて蓄圧処理は終了する。
【0049】
一方、ステップS304において現在の運転点が2個ターボモードから1個ターボモードへと切替える切替領域にないと判定された場合には、ステップS310において、エキマニ圧力が増大しているか否かが判定される。エキマニ圧力が増大していればステップS312において、第1バルブ27が開かれ蓄圧タンク25への蓄圧が行なわれ、処理はステップS304に戻り、以下同様の処理が繰り返される。また、エキマニ圧力が増大していないときには、ステップS314において第1バルブ27が閉じられ、ステップS304に戻る。すなわち、ステップS304、S310〜S314は、切替領域に入るまで繰り返され、エキマニ圧力が増大したときにのみ第1バルブ27を開き、より高い圧力を蓄圧する。なお、エキマニ圧力は、例えば図3に示された高圧段タービン12Tの入口圧P1と同様の方法により、エンジン回転数およびインマニ圧力から求められる。
【0050】
以上のように、本発明の第3実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を得られるとともに、蓄圧処理動作が、排気切替弁微開領域において実行されるため、過給効率を低下させることなく高い圧力を蓄圧することが可能となる。
【0051】
なお、第1実施形態では、蓄圧通路を高圧段タービンへ蓄圧ガスを供給するエアアシスト通路としても利用したが、蓄圧通路と高圧段タービンへのエアアシスト通路とを別個に設ける構成としてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、2段式のターボ過給システムを例に説明を行なったが、本発明は2段以上の構成にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態である2段式ターボ過給システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態のエアアシスト制御処理のフローチャートである。
【図3】エンジン回転数、インマニ圧力に対する高圧段タービンおよび低圧段タービンの入口圧力P1、P2の等値線図である。
【図4】高圧段タービンおよび低圧段タービンの入口圧力P1、P2とタンク内圧力P0の時間的な変化を示すグラフである。
【図5】第2実施形態のエアアシスト制御処理のフローチャートである。
【図6】エンジン回転数、負荷トルクに対する低圧段ターボ過給機および高圧段ターボ過給機の作動モードを示すマップである。
【図7】図6に示される矢印Mに沿って運転状態が変化したときの高圧段排気切替弁の開度状態を示すグラフである。
【図8】第3実施形態における蓄圧処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
10 2段式ターボ過給システム
11 低圧段ターボ過給機
12 高圧段ターボ過給機
11C 低圧段コンプレッサ
11T 低圧段タービン
12C 高圧段コンプレッサ
12T 高圧段タービン
17 排気通路
21 高圧段排気バイパス通路
22 高圧段排気切替弁
25 蓄圧タンク
26 蓄圧通路
27 第1バルブ
28 低圧段エアアシスト通路
29 第2バルブ
30 ECU
S4 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧段ターボ過給機と、低圧段ターボ過給機と、前記高圧段ターボ過給機のタービン上流側から圧力エネルギを回収し蓄圧する蓄圧タンクと、前記蓄圧タンク内の蓄圧ガスを前記低圧段ターボ過給機のタービン入口側に供給する蓄圧ガス供給手段とを備えることを特徴とする多段式ターボ過給システム。
【請求項2】
前記蓄圧ガス供給手段が、更に前記高圧段ターボ過給機のタービン入口側に前記蓄圧ガスを供給可能であり、運転状態に対応して前記蓄圧ガスを、前記高圧段ターボ過給機および/または前記低圧段ターボ過給機のタービン入口側に供給することを特徴とする請求項1に記載の多段式ターボ過給システム。
【請求項3】
過給増大要求時、前記蓄圧ガス供給手段が前記蓄圧ガスを前記高圧段ターボ過給機のタービン入口側へ優先して供給することを特徴とする請求項2に記載の多段式ターボ過給システム。
【請求項4】
前記蓄圧ガス供給手段が、前記蓄圧タンク内の圧力と前記高圧段ターボ過給機のタービン入口圧の差圧が所定値よりも大きいときに前記高圧段ターボ過給機のタービン入口側に前記蓄圧ガスを供給し、前記差圧が所定値より小さいときには低圧段ターボ過給機のタービン入口側に前記蓄圧ガスを供給することを特徴とする請求項3に記載の多段式ターボ過給システム。
【請求項5】
前記高圧段ターボ過給機および前記低圧段ターボ過給機により過給を行っている状態において、前記高圧段ターボ過給機による過給を停止する際に、前記蓄圧ガス供給手段が前記低圧段ターボ過給機のタービン入口側に前記蓄圧ガスを供給することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の多段式ターボ過給システム。
【請求項6】
前記蓄圧が、前記高圧段ターボ過給機をバイパスする高圧段排気バイパス通路を介して前記高圧段ターボ過給機へ供給される排気の一部がバイパスされる運転領域において行われることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の多段式ターボ過給システム。
【請求項7】
前記蓄圧が、前記運転領域において前記高圧段排気バイパス通路に設けられた高圧段排気切替弁を閉じて行われることを特徴とする請求項6に記載の多段式ターボ過給システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−270475(P2009−270475A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120961(P2008−120961)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】