説明

多段階均圧ホースを使用する深海底の遠隔探査装置

【課題】黒潮による発電能力は流速の3乗に比例するので、できる限り急流域に発電設備を設置しなければならないが、これを利用する発電設備は巨大で水深1000m以上の急流域に固定係留しなければならない。かかる深海底に固定する係留設備を低コストで建設する方法としてロケット杭を海底に撃ち込む方法があるが、この撃ち込みにはあらかじめ海底の状況を確認することが必要である。
【解決手段】水深10mごとに水圧が1気圧増加するので、耐水性蛇腹ホースを例えば50mごとに小型空気圧縮機をはさんでホース接続を繰り返し、空気圧縮機ごとに外周の水圧に合わせて増圧するとホース内外の圧力はどの水深でもほぼ均等になり深海までホースが到達できる。このホースの先端に海底観察、海底土採取などの耐圧機器を装備し、海上からビデオカメラで観察しながら遠隔操作すれば、必要な深海探査を簡便に実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
目視による海底の遠隔探査技術
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】 この発明が解決しようとする課題に取り組み、または特許請求の範囲と重複する従来技術の特許文献は見付からなかった。
【非特許文献1】 この発明が解決しようとする課題に取り組み、または特許請求の範囲と重複する従来技術の非特許文献は見付からなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
黒潮の内包する巨大な運動エネルギーを発電に利用可能にすることは、今後のエネルギー枯渇と地球温暖化に対処する手段として極めて重要だが、水力発電の発電能力は水の流速の3乗に比例し、その急流域の流速はせいぜい毎秒1m〜2.5m程度でエネルギー密度が低いので、水力発電の実用プラントは極めて巨大なサイズにならざるを得ない。
しかも、黒潮などの海流の急流域は概して水深が千mないし数千mと深いから、かかる水力発電の実用プラントをその海域で係留するためには巨大な把駐力をもつ係留設備を低コストで建設する方法の発明が不可欠である。本発明の特許出願人が別途出願した「ロケット杭」(整理番号SK−01)はこのため考案した方法だが、「ロケット杭」の撃ち込みが成功するためには海底の状態、地質を知ることが必要である。
【課題を解決するための手段】
水圧は水深10mごとに1気圧高まるから、水深1000mの海底の水圧は101気圧になり太陽光も電波も届かない。この環境下で海上から遠隔操作で海底を目視観測し、海底の土石を採取して地質を確認する低コストの方法として、次の装置を考案した。
耐水性の蛇腹ホースを50m前後に区切り、その区切りごとに小型空気圧縮機を挟み、区切りごとの水圧に応じてホース内の空気を順次加圧すれば1000m以上の水深でもホース内外の圧力はほぼ等しく維持できる。
この長大なホースの先端に照明装置、ビデオ撮影装置、採土器、その他目的に応じた観測設備とその遠隔制御、電力供給、画像情報などの返送、海底で比較的近距離を移動する能力などを必要に応じて装備する。
そして、これら全装備の荷重に耐える鎖かロープをホースの内外に取り付ければ深海探査船などに比べ著しく低コストで、簡便、かつ速やかな探査が可能になる。
【発明の効果】
この発明の実用によって「ロケット杭」を成功させる確度が高まり、地球の自転によって起きる黒潮のような地衡流の巨大な運動エネルギーを利用する海流発電を実現できる途が開ける。
【発明を実施するための最良の形態】
海底の地質はマリーンフレークが大量に蓄積した沼の底のような状態から海底山脈の尾根の硬い岩盤がむき出しの状態まで、様々な状態が予想される。従って、本発明の装置を用いて海底の状況やその地質を確認し、必要があればロケット杭の仕様や撃ち込み場所を変えて撃ち込むことにより、その成功の確度を高めることができる。
【実施例】
均圧ホースを利用する深海底の遠隔探査装置の実施例はない。
【産業上の利用可能性】
この発明の装置はロボットなど、いろいろな装置をオプションとして取り付けることにより次のような目的にも利用が可能である。
▲1▼ ロケット杭とこれに連なる係留設備の(犠牲電極の取替えなど)メンテナンス作業
▲2▼ 沈没した航空機、船舶などの所在確認、沈没原因の探索、その写真やビデオ撮影、それに乗り組んだ人々の遺骸や部品・装備の搜査、収容
▲3▼ 海底の地質・資源の探査、海底岩石や鉱脈の爆破作業、サンプル採取などの海洋開発作業
▲4▼ 海底に各種観測設備の据付、メンテナンス、観測データの回収など海洋科学の発展に役立つ
▲5▼ オプション機器を組み合わせることによりその他さまざまな海底作業の遠隔監視、操作などが可能。
【図面の簡単な説明】
【図1】 多段階均圧ホースによる深海底の遠隔探査装置の使用状況の概念図およびコネクターユニットの外観図と断面図
【符号の説明】
1.観測作業船
2.耐水蛇腹ホース
3.コネクターユニット
4.スクリュー
5.探査装置、採土サンプリング装置の移動用スクリューと舵の起動装置
6.舵
7.海底土砂サンプリング筒
8.投光器とビデオカメラを収容する真球状透明耐圧容器
9.三脚
10.三脚の開脚調節竿の取付を兼ねた三脚伸縮スライダー
11.三脚の開脚調節器
12.三脚の開脚調節竿
13.採土の際サンプリング筒の浮き上がりを抑止するアンカー
14.耐水蛇腹ホース2の下端に取り付けるコネクターユニット・オス端
15.耐水蛇腹ホース2の上端に取り付けるコネクターユニット・メス端
16.海流の流向センサー、流速センサー、遡航スクリューとその駆動システムを含み、 コネクターユニットの外周を自由回転する付属装置。本探査システムが海流に押し 流される姿勢を補正する。
17.本システムの各部分への送電ケーブル
18.本システムの荷重を支持する鎖
19.各構成部分の操作コマンドを送り、ビデオカメラの画像情報を作業船に送る通信ケ ーブル
20.上部の蛇腹ホースから下部の蛇腹ホースへ空気送気孔
21.蛇腹ホースの内圧が周囲の水圧より高いとき空気を逃がす減圧バルブ。おもに本装 置を引き上げる際に作動。
22.空気圧縮機。水圧センサーを起動スイッチとし、海面から海底へ順次空気を加圧送 気して、蛇腹ホース2の各段階ごとに内圧を外部の水圧に均衡させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中、海底を観測、探査するため、小型空気圧縮機22を内蔵するコネクターユニット3と耐水ホース2を交互に多数つないで、小型空気圧縮機22によりそれぞれの深度の水圧に応じたホース内圧力を維持しながら観測、探査する設備である。
【請求項2】
本装置の最下部に観測目的に応じて次の各機器その他オプション設備を装備し、探査、観測に使用する。
▲1▼ 三脚9
▲2▼ 投光器8
▲3▼ ビデオ撮影装置8
▲4▼ 底土サンプリング装置7
▲5▼ 観測地点を変えるための移動装置5(舵6および推進器4)
【請求項3】
請求項2の各装置を操作するため、耐水ホース2及びコネクターユニット3内部に電力ケーブル17と制御信号・ビデオカメラ画像ケーブル19を通して海上の観測船1から海底の諸機器までつなぎ、観測船上からビデオ画像を見てこれらの装置を操作する。
【請求項4】
装置全体の重量を保持するため耐水ホース内に鎖18を通し、ホース上下端のコネクターユニット14,15にこの鎖18をつなぐ。また装置全体の荷重に耐えるため必要に応じて補助鎖または補助ロープをホースに沿って取り付ける。
【請求項5】
請求項2の▲1▼の三脚9は定位置で海底を観測、撮影し、底土サンプリング装置7を安定して作動させるため、海上からビデオカメラで観察しながら遠隔操作で各脚を開脚または閉脚9、それぞれ適度の長さに伸縮10させる。
【請求項6】
投光器およびビデオカメラは深海の大水圧で破壊されないよう透明度の高い真球8の内部に取り付け、投光器およびビデオカメラの耐圧限度内で真球8の内圧を外部水圧との中間に加圧して保つ。
【請求項7】
採土サンプリング筒7の内筒、外筒の接触面は螺旋状の溝を咬み合わせ、内筒の下端に数枚の切削刃を取り付けて内筒を高速回転させることにより海底を削り、切削された土砂を内筒の中へ押し込むことにより採土する。
この際海底の地層が硬いと切削刃がスムーズに海底に切り込めず外筒が浮き上がるので、予め付近にアンカー13を立て、そのアンカーロープをサンプリング筒の下部滑車13aを経て上部滑車13bに懸けた後、中間のアンカーロープ巻上器13cに戻してロープを引き締める。この引き締め圧力によってサンプリング外筒の浮き上がりを抑止する。
【請求項8】
本装置を急流域で使う場合、海上から海底付近に届く間の海流によって耐水ホース2とコネクターユニット3の連鎖が圧し流されるので、各コネクターユニット3に海流の流向センサー、流速センサーを付けてその流向・流速を検知し、これを修正する遡航スクリュー16を作動して本観測装置をほぼ垂直に近い姿勢に補正する。

【図1】
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【公開番号】特開2011−34035(P2011−34035A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193646(P2009−193646)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(509224549)
【Fターム(参考)】