説明

多段階抽出方法

【課題】複数種類のポリマーが含まれる混合物を加水分解して、所望の複数種類の分解物を分別して得ることができる多段階抽出方法の提供。
【解決手段】複数種類のポリマーが含まれる混合物を加水分解して複数種類の分解物を得る多段階抽出方法であって、前記混合物と水系溶媒とを接触させ、低温域で加熱処理および加圧処理して、前記複数種類のポリマーのうち、一部の種類のポリマーを加水分解する第一の分解処理を行い、得られた処理物から第一の加水分解物を抽出する第一の工程の後、前記処理物に含まれる別の種類のポリマーと水系溶媒とを接触させ、高温域で加熱処理および加圧処理して、該別の種類のポリマーを加水分解する第二の分解処理を行い、得られた処理物から第二の加水分解物を抽出する第二の工程を行うことを特徴とする多段階抽出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段階抽出方法に関する。より詳しくは、複数種類のポリマーを含む混合物を、多段階で加水分解し抽出することによって、複数種類の加水分解物を分別して得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な社会を構築するために、廃材を回収して再利用する技術が強く求められている。それらの技術の中でも、廃材中に含まれるセルロースを加水分解することによって得られる糖類が特に注目を集めている。糖類は食料として利用可能なだけでなく、エタノールやポリ乳酸等の産生能を有する微生物を培養するためにも重要な栄養源である。
【0003】
セルロースは、通常1000個以上のグルコースがβ−グリコシド結合でつながった多糖類である。例えば衣料品に用いられる綿は、セルロースを高純度で含有するため、廃材となった場合にも利用価値が高い。回収したセルロースを加水分解することにより、単糖であるグルコースのほか、グルコースが2〜6個つながった水溶性のオリゴ糖類(セロオリゴ糖)を得ることができる。これらの水溶性糖類の中でもグルコースは、微生物を用いた発酵法によるエタノールや乳酸の生産に有用であることから、セルロースからグルコースを効率よく製造するための糖化技術が盛んに研究開発されている。
【0004】
セルロースを糖化する従来の方法としては、熱分解法、硫酸等を触媒とする酸触媒法(例えばアルケノール法)、酵素反応によって加水分解する酵素反応法、超臨界または亜臨界状態の水溶液で加水分解する加圧熱水法(例えば、特許文献1)等が知られている。
従来の熱分解法は、熱エネルギーによりセルロース分子鎖を切断する方法であり、セルロースを低分子化することが出来る。しかし、熱反応であるが故に反応の選択性が乏しく、グルコースの収率は低い。
酸触媒法は高濃度の硫酸でセルロースを加水分解処理した後に希硫酸で後処理をしてグルコースを得るものであるが、酸による設備腐食の問題と共に硫酸含有残渣処理・硫酸回収等の工程が必要となる。そのため、現在では実用性が低下している。
【0005】
酵素反応法はセルラーゼと呼ばれるセルロース加水分解酵素により処理する方法であり、穏和な反応条件(室温〜50℃)で処理できることが特徴である。近年、国内外の多くのメーカーが遺伝子操作技術を駆使して新規なセルラーゼ開発に力を入れている。しかし、一般にセルラーゼ自身が高価であることに加え、原料である高分子量のセルロースをグルコースまで完全に加水分解してしまうには数日から1週間程度の長時間が必要であり、生産性に劣る。これは、セルロースが固体状態でありかつ結晶性であるが故にセルラーゼとの反応は固液反応となり反応速度が小さいためと考えられる。これらの理由から、セルロース原料から酵素反応法で得たグルコース溶液を、次いで発酵によりエタノール変換するルートはコスト面で大きな課題を抱えている。
【0006】
これらに対し、超臨界水・亜臨界水の利用は下記の点で優位性がある。すなわち、亜臨界状態にある水はそのイオン積が増大しあたかも酸性水溶液として挙動することが知られている。従って、これを利用すれば酸触媒を添加しなくても効率よくしかも速やかにセルロースを加水分解する事が出来る。例えば上記特許文献1によると、超臨界水又は亜臨界水を用いることでセルロースからグルコースが20%以上の収率で得られる。さらに、温度・圧力条件を制御し微量の酸の添加により収率はある程度は向上する。しかし、加水分解条件をあまり高めすぎると生成したグルコースが熱分解反応し、収率が返って低下する。さらには、エタノール発酵工程の阻害物質であるフルフラール類の生成も増すことが知られている。
【0007】
また、セルロースの加水分解反応を酸化剤共存下で行なう試みが提案されている。
例えば、特許文献2では、セルロースを低分子化するために、まず酸化性物質を含む酸化水で50〜150℃で前処理し、その後に溶液を酸性に調整して100〜200℃の条件下で加水分解を行なう方法が示されている。これは、上記前処理によりセルロースの水酸基を部分的に酸化してセルロース鎖間の凝集力を弱めセルロースを可溶化する点にポイントがあり、この処理を施すことによりその後の希酸での加水分解が促進されるとしている。確かに、酸化剤を用いない系ではセルロースは0.9%しか可溶化されていないが、本法を用いると、最高で66.7%の可溶化率が達成されている。しかし、グルコース収率は最高でも30.3%と低く、実用レベルには至っていない。
【0008】
特許文献3では、セルロースなどの多糖類を金属塩等の酸化剤の存在下で加圧熱水と接触させることにより加水分解が促進され、速やかにオリゴ糖や単糖に変換出来ることが示されている。本法によると、反応温度250℃で結晶性セルロースからグルコースが30〜40%の収率で生成した。しかし、糖の過分解物であり発酵の阻害物質となる5−HMF(5−ヒドロキシメチルフルフラール)が5〜9%程度の収率で生成するという課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−31000号公報
【特許文献2】特開2006−320261号公報
【特許文献3】特開2007−20555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来のセルロース糖化方法では、セルロースを高純度に含む綿や結晶セルロースを原料としている。しかし、実際に廃品として回収されるセルロース含有物は、セルロース以外のポリマーを含む場合がある。例えば廃品回収された衣料品には、綿およびPETからなる繊維や羊毛およびナイロンからなる繊維が含まれる。これらの繊維の多くは混紡されたものであるため、加水分解処理前に予め分別しておくことが極めて困難である。このような繊維のうち、例えば綿およびPETからなる繊維をリアクター中で同時に加水分解すると、リアクターや配管がPETで目詰まりすることがあり、これを掻き出す作業が必要となる。これはリアクターの連続運転を妨げる原因となる。また、得られた加水分解物中に糖類とPET由来のモノマー(テレフタル酸およびエチレングリコール)とが混在してしまう問題がある。この場合、糖類を得るための精製工程が必要となり、コスト上昇の原因となる。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、複数種類のポリマーが含まれる混合物を加水分解して、複数種類の分解物を分別して得ることができる多段階抽出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載の多段階抽出方法は、複数種類のポリマーが含まれる混合物を加水分解して複数種類の分解物を得る多段階抽出方法であって、前記混合物と水系溶媒とを接触させ、低温域で加熱処理および加圧処理して、前記複数種類のポリマーのうち、一部の種類のポリマーを加水分解する第一の分解処理を行い、得られた処理物から第一の加水分解物を抽出する第一の工程の後、前記処理物に含まれる別の種類のポリマーと水系溶媒とを接触させ、高温域で加熱処理および加圧処理して、該別の種類のポリマーを加水分解する第二の分解処理を行い、得られた処理物から第二の加水分解物を抽出する第二の工程を行うことを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の多段階抽出方法は、請求項1において、前記低温域が、150〜200℃の温度範囲であることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の多段階抽出方法は、請求項1又は2において、前記高温域が、250〜350℃の温度範囲であることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の多段階抽出方法は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記一部の種類のポリマーが、セルロースであることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の多段階抽出方法は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記一部の種類のポリマーが、タンパク質であることを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の多段階抽出方法は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記別の種類のポリマーが、ポリエステルであることを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の多段階抽出方法は、請求項1〜6のいずれか一項において、前記別の種類のポリマーが、ポリアミドであることを特徴とする。
本発明の請求項8に記載の多段階抽出方法は、請求項1〜7のいずれか一項において、前記混合物が、綿若しくは羊毛、およびPET若しくはナイロンを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の多段階抽出法によれば、複数種類のポリマーのうち、低温域で加水分解される一部の種類のポリマーと、高温域で加水分解される別の種類のポリマーとを、個別に加水分解することができるので、それぞれのポリマーを構成するモノマーを分別して得ることができる。また、リアクター内には未分解のポリマーがほとんど残存しないので、メンテナンスの回数を減らすことが可能であり、リアクターの稼働率を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の多段階抽出方法に用いることのできる装置の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の多段階抽出方法は、複数種類のポリマーが含まれる混合物を加水分解して複数種類の分解物を得る方法であり、第一の工程および第二の工程を含むものである。
前記第一の工程では、前記混合物と水系溶媒とを接触させ、低温域で加熱処理および加圧処理して、前記複数種類のポリマーのうち、一部の種類のポリマーを加水分解する第一の分解処理を行い、得られた処理物から第一の加水分解物を抽出する。
前記第二の工程では、第一の工程を行った後で得られた前記処理物に含まれる別の種類のポリマーと水系溶媒とを接触させ、高温域で加熱処理および加圧処理して、該別の種類のポリマーを加水分解する第二の分解処理を行い、得られた処理物から第二の加水分解物を抽出する。
【0016】
前記第一の工程においては、前記混合物と前記水系溶媒とを接触させる操作(操作A)、加熱処理及び加圧処理(操作B)、加水分解物を抽出して得る操作(操作C)の順に、必ずしも行わなければならないものではない。操作A、操作B、操作Cの順に行ってもよく、操作A、操作B、及び操作Cを同時・連続的に行ってもよい。
同様に、前記第二の工程においては、前記第一の工程を経て得られた処理物と前記水系溶媒とを接触させる操作(操作A’)、加熱処理及び加圧処理(操作B’)、加水分解物を抽出して得る操作(操作C’)の順に、必ずしも行わなければならないものではない。操作A’、操作B’、操作C’の順に行ってもよく、操作A’、操作B’、及び操作C’を同時・連続的に行ってもよい。
【0017】
本発明の多段階抽出方法は、前記第一の工程及び前記第二の工程に含まれる以外の操作又は処理を有するものであってもよい。
【0018】
<第一の工程>
前記混合物は複数種類のポリマーが含まれる固体又は液体である。
前記ポリマーを種類別に例示すると、例えばセルロース、ポリエステル、ポリアミド、タンパク質等が挙げられる。
前記混合物には、前記複数種類のポリマー以外の物質が、含まれていても良いし、含まれていなくても良い。ここで、該複数種類のポリマー以外の物質としては、例えば金属、鉱物、加水分解され難い物質等が挙げられる。
【0019】
前記混合物としては、セルロース含有繊維を含むものが好ましく、綿繊維を含むものがより好ましい。セルロース含有繊維を含むものであると、第一の工程によって得られる第一の加水分解物として、水溶性オリゴ糖及びグルコースを得ることができる。
【0020】
前記セルロース含有繊維としては、セルロースを含有する繊維状の物であれば特に限定されず、例えば、衣料品等の繊維として用いられている綿、麻(苧麻、亜麻、マニラ麻、ザイザル麻、ケナフ麻等)、テンセル、レーヨン、キュプラ等や、コピー紙や包装紙、段ボール等の紙製品等が好適なものとして挙げられる。また、前記衣料品等の繊維として、ポリエステル等の合成繊維やシルク等のセルロースを含有していない繊維と混紡された繊維であってもよい。
前記セルロース含有繊維の形態は特に制限されず、綿状、糸状、綱状、布状、平面・立体状等に加工されたものを用いることができる。
【0021】
前記セルロース含有繊維の長さは、1mm以上1m以下が好ましく、5mm以上50cm以下がより好ましく、1cm以上30cm以下がさらに好ましい。
この範囲の長さであると、セルロース含有繊維の取り扱いが容易となる。
【0022】
また、前記混合物としては、動物繊維を含むものが好ましく、羊毛若しくはシルクを含むものがより好ましい。タンパク質製の動物繊維を含むものであると、第一の工程によって得られる第一の加水分解物として、ペプチド及びアミノ酸を得ることができる。
前記動物繊維は、衣料品等の繊維として、ポリエステル等の合成繊維や綿等の動物繊維を含有していない繊維と混紡された繊維であってもよい。
前記動物繊維の形態は特に制限されず、綿状、糸状、綱状、布状、平面・立体状等に加工されたものを用いることができる。
前記動物繊維の長さは、1mm以上1m以下が好ましく、5mm以上50cm以下がより好ましく、1cm以上30cm以下がさらに好ましい。
この範囲の長さであると、動物繊維の取り扱いが容易となる。
【0023】
また、前記混合物としては、合成繊維を含むものが好ましく、PET等のポリエステル、若しくはナイロン等のポリアミドを含むものがより好ましい。
前記混合物がPET製繊維を含むものであると、該PET製繊維は、第一の工程における低温域の加圧熱処理では加水分解されずに残って、第二の工程における高温域の加圧熱処理で分解されて、加水分解物として、PETのモノマーであるテレフタル酸およびエチレングリコールを得ることができる。PET以外のポリエステルであっても同様に、第二の工程における高温域の加圧熱処理で分解されて、第二の加水分解物として、当該ポリエステルのモノマーが得られる。
【0024】
前記ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等が挙げられる。
【0025】
また、前記ポリアミドとしては、例えばナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66等の所謂ナイロンが挙げられる。
【0026】
前記混合物がナイロン66製繊維を含むものであると、該ナイロン66製繊維は、第一の工程における低温域の加圧熱処理では加水分解されずに残って、第二の工程における高温域の加圧熱処理で分解されて、第二の加水分解物として、ナイロン66のモノマーであるアジピン酸およびヘキサメチレンジアミンが得られる。
【0027】
前記合成繊維は、衣料品等の繊維として、綿等のセルロース含有繊維や羊毛等の動物繊維と混紡された繊維であってもよい。
前記合成繊維の形態は特に制限されず、綿状、糸状、綱状、布状、平面・立体状等に加工されたものを用いることができる。
前記合成繊維の長さは、1mm以上1m以下が好ましく、5mm以上50cm以下がより好ましく、1cm以上30cm以下がさらに好ましい。
この範囲の長さであると、合成繊維の取り扱いが容易となる。
【0028】
前記混合物に含まれるポリマーの種類の組み合わせとしては、セルロース含有繊維と合成繊維との組み合わせが好ましい。この混合物を使用することによって、第一の工程において第一の加水分解物として、セルロースを構成する水溶性オリゴ糖及びグルコースが得られる。さらに続く第二の工程において第二の加水分解物として、合成繊維を構成するモノマーが得られる。
【0029】
また、前記混合物に含まれるポリマーの種類の組み合わせとしては、動物繊維と合成繊維との組み合わせが好ましい。この混合物を使用することによって、第一の工程において第一の加水分解物として、タンパク質製の動物繊維を構成するペプチド及びアミノ酸が得られる。さらに続く第二の工程において第二の加水分解物として、合成繊維を構成するモノマーが得られる。
【0030】
第一の工程における前記水系溶媒としては、純水又はpH7以下の水溶液が好ましい。前記pH7以下の水溶液としては、オゾン水、及び過酸化水素水や低濃度の硫酸、塩酸、硝酸など、更に炭酸水やクエン酸、リン酸水溶液等の弱酸が例示できる。
前記オゾン水及び過酸化水素水は、最終的には水と酸素に分解されるので、これらの溶液を廃棄する場合にも環境負荷が少ないので好ましい。
【0031】
また、前記水系溶媒として、アルコールを含有する水系溶媒(アルコール水溶液)を用いてもよい。例えば、前述の水溶液に、エタノールやメタノール等のアルコールを含有させることができる。
本発明の第一の工程においては、アルコール水溶液におけるアルコール濃度は0.5〜50%が好ましく、1〜30%がより好ましく、1〜20%がさらに好ましい。
この範囲のアルコール濃度であると、第一の加水分解物を十分に溶解して抽出することができる。
【0032】
また、前記水系溶媒としては、低濃度のアルカリ水溶液であってもよい。
前記アルカリ水溶液の種類は特に制限されず、例えば水酸化ナトリウム、アンモニア水等が挙げられる。
前記酸およびアルカリ水溶液の濃度としては、0.001〜1.0Nが好ましく、0.005〜0.3Nがより好ましく、0.01〜0.1Nがさらに好ましい。
上記範囲内の濃度であると、セルロース又は動物繊維の加水分解を効率よく行うことができる。上記範囲の上限値超であると、セルロース又は動物繊維や生成物であるグルコース又はアミノ酸が過分解する恐れがある。
【0033】
前記オゾン水の濃度としては、1.0ppm〜200ppmが好ましく、5.0〜100ppmがより好ましく、10〜50ppmがさらに好ましい。
上記範囲内の濃度であると、セルロース又は動物繊維の加水分解を効率よく行うことができる。上記範囲の上限値超であると、セルロース又は動物繊維や生成物であるグルコース又はアミノ酸が過分解する恐れがある。
【0034】
前記過酸化水素水の濃度としては、0.1wt%〜30wt%(質量%)が好ましく、0.5wt%〜20wt%がより好ましく、1.0wt%〜10wt%がさらに好ましい。
上記範囲内の濃度であると、セルロース又は動物繊維の加水分解を効率よく行うことができる。上記範囲の上限値超であると、セルロース又は動物繊維や生成物であるグルコース又はアミノ酸が過分解する恐れがある。
【0035】
第一の工程において、前記混合物と前記水系溶媒とを接触させる方法(操作A)は特に制限されない。前記混合物と前記水系溶媒とを攪拌して接触させる方法を採用しても良いし、前記混合物を静置したところに、前記水系溶媒を通液させて接触させても良い。
例えば図1に示す加圧熱処理装置1を用いた場合、反応槽2に混合物8(前記混合物)を適量投入し、貯留槽4に投入した水系溶媒5をポンプ6及び送液管7を介して汲み上げて反応槽2へ送液することによって、反応槽2において混合物8と水系溶媒5とを接触させることができる。
【0036】
第一の工程における低温域での加熱処理及び加圧処理(操作B)において、前記混合物と前記水系溶媒とを加熱処理する方法は特に制限されない。
例えば図1に示す加圧熱処理装置1を用いた場合、反応槽2全体を加熱するように設けられた加熱部10によって反応槽2内の混合物8及び水系溶媒5を所定の温度で加熱処理することができる。
また、送液管7の途中に設けられた予熱部11において、予め所定の温度に加温した水系溶媒5を反応槽2に送液して、混合物8に接触させることによって、混合物8を加熱処理することも可能である。
加熱部10や予熱部11における熱源としては、ヒーター(電熱器)やボイラーを利用した公知のものを用いることができる。
【0037】
第一の工程における低温域の温度範囲としては、100〜250℃が好ましく、150〜200℃がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記混合物に含まれる一部の種類のポリマーを効率よく加水分解することができる。該一部のポリマーとしては、例えばセルロースやタンパク質が挙げられる。
上記範囲の上限値以下であると、前記一部のポリマーを構成するモノマーの過分解を抑制できると共に、前記混合物に含まれる別の種類のポリマーの加水分解を抑えることができる。該別の種類のポリマーとしては、例えばPETやナイロン等の合成繊維が挙げられる。これらの合成繊維の加水分解を第一の工程においては行わず、第二の工程において行うことによって、前記一部のポリマーを構成するモノマーを第一の工程で得て、前記別の種類のポリマーを構成するモノマーを第二の工程で得る、というように、各種類のポリマーを構成する各モノマーを含む各種類の分解物を分別して得ることができる。
【0038】
前記一部の種類のポリマーがセルロースである場合、前記好ましい温度範囲の低温域で加水分解することによって、セルロースを構成する糖類の過分解を低減又は抑制することができる。また、原料のセルロースの焦げやタール状物質の生成を低減又は抑制することができるので、反応槽2の洗浄をすることなく、前記混合物を順次添加して加水分解反応を連続的に行うことができる。
【0039】
第一の工程における低温域での加熱処理及び加圧処理(操作B)において、前記混合物と前記水系溶媒とを加圧処理する方法は特に制限されない。
例えば図1に示す加圧熱処理装置1を用いた場合、反応槽2の下流側の送液管12に背圧弁13を備えているので、ポンプ6及び送液管7を介して水系溶媒5を反応槽2に送液することによって、反応槽2内を所定の圧力にまで高めることができる。
また、反応槽2を密封した状態で加熱部10によって加熱処理することによって、反応槽2を水系溶媒5の蒸気圧にまで高める加圧処理を行うこともできる。
【0040】
第一の工程における加圧処理の圧力範囲としては、0.1MPa〜30MPaが好ましく、0.5MPa〜20MPaがより好ましく、1.0MPa〜10MPaがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記混合物に含まれる一部の種類のポリマーを効率よく加水分解することができる。
上記範囲の上限値以下であると、前記一部のポリマーを構成するモノマーの過分解を抑制できると共に、前記混合物に含まれる別の種類のポリマーの加水分解を抑えることができる。
【0041】
第一の工程における低温域での加熱処理及び加圧処理の時間としては、前記混合物と前記水系溶媒との量比、加熱処理の温度、及び加圧処理の圧力の組み合わせによっても変わるが、前記温度範囲及び前記圧力範囲であれば、おおよそ0.5分〜300分で、前記混合物に含まれる前記一部の種類のポリマーを効率よく加水分解できる。
第一の工程は、反応槽2に前記一部の種類のポリマーが残っている限り継続できる。
【0042】
前記一部の種類のポリマーを加水分解する第一の分解処理を行って得られた処理物から第一の加水分解物を抽出する操作(操作C)の方法は特に制限されない。ここで「抽出する」とは、前記別の種類のポリマーを含む処理物から、前記一部の種類のポリマーを加水分解して生成した第一の加水分解物を取り出す操作をいう。
【0043】
例えば、図1に示す加圧熱処理装置1を用いた場合、前記操作A及び前記操作Bによって、反応槽2内には、前記処理物として、未分解の前記別の種類のポリマー及び前記一部の種類のポリマーの加水分解物(第一の加水分解物)が存在する。該第一の加水分解物には、前記一部の種類のポリマーを構成するモノマーが含まれる。また、反応槽2内には、未分解の前記一部の種類のポリマーが残存している場合もある。
この状態にある反応槽2へ、貯留槽4からポンプ6及び送液管7を介して水系溶媒5を送液すると、反応槽2の下流に設けられた背圧弁13により反応槽2内の圧力を所定に維持しつつ、反応槽2内の第一の加水分解物を含む水溶液を前記処理物から分離して、排出口14から回収槽15へ抽出して得ることができる。このとき、前記処理物のうち、未分解の前記一部の種類のポリマー及び未分解の前記別の種類のポリマーは、反応槽2の下流側に設けられたフィルタ16によって排出口14へ流出することが防がれている。同様に反応槽2の上流側にもフィルタ16が設けられており、前記未分解のポリマー等を含む混合物8が逆流することを防いでいる。また、反応槽2の下流側のフィルタ16を介して抽出された、第一の加水分解物を含む水溶液は、冷却部18により冷却される。これにより、第一の加水分解物が不要に高温で保たれて過分解されてしまうことを防ぐことができる。該冷却の方法は特に制限されず、レシプロ圧縮機等を用いる公知の方法を適用できる。
【0044】
図1に示すような加圧熱処理装置1を用いた場合、混合物8と水系溶媒5とが接触して、前記加熱処理及び前記加圧処理が行われている反応槽2に対して、更に水系溶媒5を導入しつつフィルタを介して反応液を流出させることによって、前記第一の加水分解物を含む水溶液17を反応槽2から得ることができる。すなわち、例えば図1に示す加圧熱処理装置1を用いることにより、前記操作A、前記操作B、及び前記操作Cを同時・連続的に行う連続方式で第一の工程を行うことができる。
【0045】
より具体的に説明すると、貯留槽4から水系溶媒5をポンプ6で汲み上げて、予熱部11で加温してから反応槽2に送液して加圧処理を行いつつ、加熱部10による加熱処理を行う。これらと同時に、背圧弁13を制御して反応槽2内の圧力を所定に維持しつつ、反応槽2からフィルター16を介して、前記第一の加水分解物を含む水溶液17を流出させることにより、排出口14から回収することができる。
【0046】
また、図1では反応槽2は一つだけであるが、予熱部11の下流に反応槽2,2’を並列に2つ設けることにより、片方の反応槽2で第一の工程を行っている間に、他方の反応槽2’をバルブ切り替え等により一時的にラインから外して混合物8を再充填し、再び該反応槽2’をラインにつなぐことにより、反応槽2’に混合物8を充填する際にも加圧熱処理装置1における第一の工程を継続することができる。この連続方式によれば、前記操作A、前記操作B、及び前記操作Cを同時・連続的に行うことができる。
【0047】
上記のような連続方式であると、反応槽2内に加水分解物が長時間(例えば1時間を超える)にわたり滞留することがないので、加水分解物が過分解することを低減又は抑制することができる。一方、連続方式ではなく所謂バッチ式であると、前記操作A、前記操作B、及び前記操作Cをこの順に行うため、前記加熱処理及び加圧処理における昇温昇圧に要する時間が長くなり、加水分解反応の初期の生成物が、必要以上の加熱処理及び加圧処理に晒されて、過分解する割合が高くなることがある。該過分解によって生じる副産物としては、前記一部の種類のポリマーがセルロースである場合、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)が例示できる。
よって、本発明の多段階抽出方法は、生成された加水分解物の過分解を低減又は抑制する観点から、前記連続方式であることが好ましい。
【0048】
第一の工程を行った後、反応槽2には混合物8に含まれていた前記別の種類のポリマーが未分解の状態で残っている。一方、混合物8に含まれていた前記一部の種類のポリマーは加水分解されて抽出されているため、反応槽2には残っていない。仮に前記一部の種類のポリマーが残存している場合には、前述の第一の工程を継続して行い、反応槽2から除けばよい。
【0049】
<第二の工程>
第二の工程では、第一の工程を行った後で得られた前記処理物に含まれる別の種類のポリマーと水系溶媒とを接触させ、高温域で加熱処理および加圧処理して、該別の種類のポリマーを加水分解する第二の分解処理を行い、得られた処理物から第二の加水分解物を抽出する。
前記処理物には、前記別の種類のポリマー以外の物質が、含まれていても良いし、含まれていなくても良い。
【0050】
前記処理物としては、合成繊維を含むものが好ましく、PET製繊維又はナイロン製繊維を含むものがより好ましい。合成繊維を含むものであると、第二の工程によって得られる第二の加水分解物として、合成繊維を構成するモノマーを得ることができる。該合成繊維の好適な例は前述の通りである。
【0051】
第二の工程における前記水系溶媒としては、前述の第一の工程における水系溶媒と同じものが例示できる。第一の工程における水系溶媒と第二の工程における水系溶媒とは、同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0052】
また、前記水系溶媒として、アルコールを含有する水系溶媒(アルコール水溶液)を用いてもよい。例えば、前述の水溶液に、エタノールやメタノール等のアルコールを含有させることができる。
本発明の第二の工程においては、アルコール水溶液におけるアルコール濃度は5〜99%が好ましく、30〜95%がより好ましく、50〜95%がさらに好ましい。
この範囲のアルコール濃度であると、第二の分解処理における加水分解を十分に行い、且つ、第二の加水分解物を十分に溶解して抽出することができる。
【0053】
第二の工程において、前記処理物と前記水系溶媒とを接触させる方法(操作A’)は特に制限されない。例えば、前述の第一の工程における操作Aと同様の方法で行うことができる。この場合、同一の加圧熱処理装置1を用いて、第一の工程と第二の工程とを行うことができるので、反応槽2から前記処理物を取り出す必要がないため、作業の手数を減らすことができる。
【0054】
第二の工程における高温域での加熱処理及び加圧処理(操作B’)において、前記処理物と前記水系溶媒とを加熱処理する方法は特に制限されず、例えば前述の第一の工程の場合と同様の方法で行うことができる。
【0055】
第二の工程における高温域の温度範囲としては、250〜400℃が好ましく、250〜350℃がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記処理物に含まれる別の種類のポリマーを効率よく加水分解することができる。該別のポリマーとしては、例えばポリエステルやポリアミド等が挙げられる。
上記範囲の上限値以下であると、前記別の種類のポリマーを構成するモノマーの過分解を抑制できる。
【0056】
第二の工程における高温域での加熱処理及び加圧処理(操作B’)において、前記処理物と前記水系溶媒とを加圧処理する方法は特に制限されず、例えば前述の第一の工程の場合と同様の方法で行うことができる。
【0057】
第二の工程における加圧処理の圧力範囲としては、0.1MPa〜30MPaが好ましく、0.5MPa〜20MPaがより好ましく、1.0MPa〜10MPaがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記処理物に含まれる別の種類のポリマーを効率よく加水分解することができる。
上記範囲の上限値以下であると、前記別の種類のポリマーを構成するモノマーの過分解を抑制できる。
【0058】
第二の工程における高温域での加熱処理及び加圧処理の時間としては、前記処理物と前記水系溶媒との量比、加熱処理の温度、及び加圧処理の圧力の組み合わせによっても変わるが、前記温度範囲及び前記圧力範囲であれば、おおよそ0.5分〜300分で、前記処理物に含まれる前記別の種類のポリマーを効率よく加水分解できる。
第二の工程は、反応槽2に前記別の種類のポリマーが残っている限り継続できる。
【0059】
前記別の種類のポリマーを加水分解する第二の分解処理を行って得られた処理物から第二の加水分解物を抽出して得る操作(操作C’)の方法は特に制限されず、例えば前述の第一の工程の場合と同様の方法で行うことができる。ここで「抽出する」とは、前記別の種類のポリマー及び/又は前記ポリマー以外の物質を含む前記処理物から、該別の種類のポリマーを加水分解して生成した第二の加水分解物を取り出す操作をいう。
【0060】
例えば、図1に示す加圧熱処理装置1を用いた場合、前記操作A’及び前記操作B’ によって、反応槽2内には、前記処理物として、未分解の前記別の種類のポリマー、及び/又は該別の種類のポリマーの加水分解物(第二の加水分解物)が存在する。該第二の加水分解物には、前記別の種類のポリマーを構成するモノマーが含まれる。また、反応槽2内には、前記別の種類のポリマー以外の物質が存在している場合もある。
この状態にある反応槽2へ、貯留槽4からポンプ6及び送液管7を介して水系溶媒5を反応槽2に送液すると、反応槽2の下流に設けられた背圧弁13により反応槽2内の圧力を所定に維持しつつ、反応槽2内の第二の加水分解物を含む水溶液を未分解の前記別の種類のポリマー等から分離して、排出口14から回収槽15へ抽出して得ることができる。このとき、未分解の前記別の種類のポリマー等は、反応槽2の下流側に設けられたフィルタ16によって排出口14へ流出することが防がれている。同様に反応槽2の上流側にもフィルタ16が設けられており、未分解物や前記処理物が逆流することを防いでいる。また、反応槽2の下流側のフィルタ16を介して抽出された、第二の加水分解物を含む水溶液は、冷却部18により冷却される。これにより、第二の加水分解物が不要に高温で保たれて過分解されてしまうことを防ぐことができる。該冷却の方法は特に制限されず、レシプロ圧縮機等を用いる公知の方法を適用できる。
【0061】
図1に示すような加圧熱処理装置1を用いた場合、前記処理物と水系溶媒5とが接触して、前記加熱処理及び前記加圧処理が行われている反応槽2に対して、更に水系溶媒5を導入しつつフィルタを介して反応液を流出させることによって、第二の加水分解物を含む水溶液17を反応槽2から得ることができる。すなわち、例えば図1に示す加圧熱処理装置1を用いることにより、前記操作A’、前記操作B’、及び前記操作C’を同時・連続的に行う連続方式で第二の工程を行うことができる。
【0062】
上記のような連続方式であると、反応槽2内に加水分解物が長時間にわたり滞留することがないので、加水分解物が過分解することを低減又は抑制することができる。
よって、本発明の多段階抽出方法は、生成された加水分解物の過分解を低減又は抑制する観点から、前記連続方式であることが好ましい。
【実施例】
【0063】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
図1に示す加圧熱処理装置1を用いて、成分抽出を連続に行った。
<第一の工程>
まず、反応槽2に、混合物として綿/PET=40/60(混用率%)の混紡繊維を10.0g投入し、貯留槽4に準備した0.1Nの炭酸水溶液を装置経路内及び反応槽2に充填した後、送液管7を介して当該水溶液を、ポンプ6によって20ml/分で、反応槽2に送液し、背圧弁13を制御して反応槽2内の圧力を5MPaとした。その後、反応槽2内が200℃になるように加熱器10及び予熱部11を制御し加熱を開始した。
設定温度(200℃)に到達後、背圧弁13を調整して反応槽2の圧力を保ったまま、ポンプ6によって1ml/分で反応槽2に純水を送液しつつ、排出口14から第一の加水分解物を含む水溶液を200分間抽出して回収した。
<第二の工程>
その後、貯留槽4の水溶液をエタノール水溶液に変更し、ポンプ6によって20ml/分で、装置経路内及び反応槽2の溶媒置換を行った後、ポンプ6によって1ml/分に変更し、反応槽2内が300℃になるように加熱器10及び予熱部11を制御し加熱を開始した。
設定温度(300℃)に到達後、背圧弁13を調整して反応槽2の圧力を保ったまま、ポンプ6によって1ml/分で反応槽2にエタノール水溶液を送液しつつ、排出口14から第二の加水分解物を含む水溶液を200分間抽出して回収した。この際、系の閉塞を防ぐため、水冷は行わないようにした。
【0065】
実験の結果、第一の工程および第二の工程の後の反応槽2内の残留物は0.1gであった。
【0066】
第一の工程で得た水溶液に含まれる第一の加水分解物(糖類)の収率を、HPLC分析で求めた。ここで、収率とは、原料である綿と、その加水分解物である糖類との重量比%を意味する。表1に、その結果を示す。また、当該水溶液中の、糖類の過分解物であるアルデヒド類、フラン類、及び有機酸の収率(原料である綿と各過分解物との重量比%)を表1に併記する。
【0067】
【表1】

【0068】
第二の工程で得たエタノール溶液に含まれる第二の加水分解物の収率は、エチレングリコールの収率が24%、テレフタル酸ジメチルの収率が74%であった。ここで、収率とは、原料であるPETと、その加水分解物である各モノマーとの重量比%を意味する。なお、各収率は、GC/MSで求めた。
【0069】
[実施例2]
混合物として綿/ナイロン=80/20(混用率%)の混紡繊維を使用し、炭酸水溶液を硝酸水溶液0.01Nに変更した以外は、実施例1と同じ実験を行った。
実験の結果、第一の工程および第二の工程の後の反応槽2内の残留物は0.2gであった。
【0070】
第一の工程で得た水溶液に含まれる第一の加水分解物(糖類)の収率を、HPLC分析で求めた。ここで、収率とは、原料である綿と、その加水分解物である糖類との重量比%を意味する。表2に、その結果を示す。また、当該水溶液中の、糖類の過分解物であるアルデヒド類、フラン類、及び有機酸の収率(原料である綿と各過分解物との重量比%)を表2に併記する。
【0071】
【表2】

【0072】
第二の工程で得たエタノール溶液に含まれる第二の加水分解物の収率は、ヘキサメチレンジアミンの収率が39%、アジピン酸ジメチルの収率が59%であった。ここで、収率とは、原料であるナイロンと、その加水分解物である各モノマーとの重量比%を意味する。なお、各収率は、GC/MSで求めた。
【0073】
[実施例3]
混合物として羊毛/PET=10/90(混用率%)の混紡繊維を使用し、炭酸水溶液を純水に変更した以外は、実施例1と同じ実験を行った。
実験の結果、第一の工程および第二の工程の後の反応槽2内の残留物は0.3gであった。
第一の工程で得た水溶液に含まれる第一の加水分解物(アミノ酸およびペプチド)の収率を、HPLC分析で求めた。その結果、アミノ酸およびペプチドの収率は、90%であった。ここで、収率とは、原料である羊毛と、その加水分解物であるアミノ酸およびペプチドとの重量比%を意味する。
【0074】
第二の工程で得たエタノール溶液に含まれる第二の加水分解物の収率は、エチレングリコールの収率が23%、テレフタル酸ジメチルの収率が73%であった。ここで、収率とは、原料であるPETと、その加水分解物である各モノマーとの重量比%を意味する。なお、各収率は、GC/MSで求めた。
【0075】
[比較例1]
炭酸水溶液を純水に変更し、加熱処理の設定温度を300℃に変更して、実施例1における第一の工程だけを行った。
第一の工程後の反応槽2内の残留物は1.0gであった。この工程で得られた水溶液には、熱処理で発生した焦げが含まれており、糖類の収率についての分析が不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の多段階抽出方法は、セルロース及び合成繊維を含む混紡繊維から糖類を製造するために広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…セルロース糖化装置、2…反応槽、4…貯留槽、5…水溶液、6…ポンプ、7…送液管、8…混合物、10…加熱部、11…予熱部、12…送液管、13…背圧弁、14…排出口、15…回収槽、16…フィルタ、17…生成物を含む水溶液、18…冷却部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のポリマーが含まれる混合物を加水分解して複数種類の分解物を得る多段階抽出方法であって、
前記混合物と水系溶媒とを接触させ、低温域で加熱処理および加圧処理して、前記複数種類のポリマーのうち、一部の種類のポリマーを加水分解する第一の分解処理を行い、得られた処理物から第一の加水分解物を抽出する第一の工程の後、
前記処理物に含まれる別の種類のポリマーと水系溶媒とを接触させ、高温域で加熱処理および加圧処理して、該別の種類のポリマーを加水分解する第二の分解処理を行い、得られた処理物から第二の加水分解物を抽出する第二の工程を行うことを特徴とする多段階抽出方法。
【請求項2】
前記低温域が、150〜200℃の温度範囲であることを特徴とする請求項1に記載の多段階抽出方法。
【請求項3】
前記高温域が、250〜350℃の温度範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多段階抽出方法。
【請求項4】
前記一部の種類のポリマーが、セルロースであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多段階抽出方法。
【請求項5】
前記一部の種類のポリマーが、タンパク質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多段階抽出方法。
【請求項6】
前記別の種類のポリマーが、ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の多段階抽出方法。
【請求項7】
前記別の種類のポリマーが、ポリアミドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の多段階抽出方法。
【請求項8】
前記混合物が、綿若しくは羊毛、およびPET若しくはナイロンを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の多段階抽出方法。



【図1】
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【公開番号】特開2012−50921(P2012−50921A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194836(P2010−194836)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】