説明

多目的発泡体、およびその使用方法

【課題】発泡状態が良好な発泡体が得られるようにし、かつ、発泡によりこの発泡体を所望形状にしようとしたり、発泡後の発泡体を所望位置に設置しようとしたりする場合における自由度を向上させるようにする。
【解決手段】発泡体1は、ゴム材料および樹脂材料のうち少なくともいずれか一方の材料と、発泡剤との混合物2と、この混合物2を全体的に気密状に被覆し、この混合物2の発泡時の膨張に抵抗しながら引き伸ばされる被覆体3と、混合物2を被覆した被覆体3を、目的の対象物4の所望部位に取り付け可能とする取り付け具5とを備える。対象物4は、車体13の一部を構成し、空間14をあけて互いに対面する一対の板金材15,16である。発泡体1を上記空間14に挿入して、両板金材15,16の互いの対向面の所望部位に取り付け具5により取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や産業機械などにおける部品の制振用、荷物を輸送するときなど荷箱内の空間への充填用、もしくは壁、床、建具の建材などの断熱や遮音用などとして使用される多目的発泡体、およびその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記発泡体には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、上記発泡体は自動車の車体における空洞部に設置され、この発泡体により、車体の制振がなされるようになっている。
【0003】
上記発泡体を空洞部へ設置するに際しては、まず、上記空洞部の底部における隙間や孔を閉じるようこの底部に粒状体が敷き詰められる。次に、上記空洞部に発泡体の液状原料が注入され、これが発泡させられることにより、上記発泡体の設置が行われる。
【0004】
【特許文献1】特開平9−267768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の技術では、次のような問題点がある。
【0006】
即ち、第1に、上記車体の空洞部は、その底部の隙間や孔と、上記粒状体間の隙間とを通して車体の外部に連通している。
【0007】
このため、上記発泡体の原料を発泡させたとき、上記空洞部に充満するガスは上記各隙間や孔を通して車体の外部に放出される。よって、上記空洞部内の圧力を高めることはし難いために、発泡状態の良好な発泡体を得ることはできないおそれを生じる。
【0008】
第2に、上記発泡体の原料を発泡させたとき、この原料は膨張しながら上記空洞部の内面形状に合致するよう流動し、これにより、上記発泡体の形状が定められる。
【0009】
このため、上記発泡体を空洞部の内面形状にかかわらず、所望形状に成形しようとすることは極めて困難である。また、上記発泡体を、例えば、上記空洞部の上部にのみ設置しようとすることも極めて困難である。よって、上記発泡体を所望形状に成形しようとしたり、発泡体を所望位置に設置しようとしたりする場合における各自由度が低いという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、発泡状態が良好な発泡体が得られるようにし、かつ、発泡によりこの発泡体を所望形状にしようとしたり、発泡後の発泡体を所望位置に設置しようとしたりする場合における自由度を向上させることである。
【0011】
請求項1の発明は、ゴム材料および樹脂材料のうち少なくともいずれか一方の材料と、発泡剤との混合物2と、この混合物2を全体的に気密状に被覆し、この混合物2の発泡時の膨張に抵抗しながら引き伸ばされる被覆体3とを備えたものである。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明に加えて、上記混合物2を被覆した被覆体3を、目的の対象物4の所望部位に取り付け可能とする取り付け具5を備えたものである。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2の発泡体1を使用する方法であって、
上記対象物4が、車体13の一部を構成し、空間14をあけて互いに対面する一対の板金材15,16であり、上記発泡体1を上記空間14に挿入して、上記両板金材15,16の互いの対向面の所望部位に上記取り付け具5により上記被覆体3を取り付け、上記車体13の塗装工程における加熱により、上記混合物2を発泡させて、その発泡体1を上記両板金材15,16の各対向面にそれぞれ圧接させるようにしたものである。
【0014】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明による効果は、次の如くである。
【0016】
請求項1の発明は、ゴム材料および樹脂材料のうち少なくともいずれか一方の材料と、発泡剤との混合物と、この混合物を全体的に気密状に被覆し、この混合物の発泡時の膨張に抵抗しながら引き伸ばされる被覆体とを備えている。
【0017】
このため、上記混合物が発泡により膨張させられるとき、この混合物の膨張に伴う内圧の上昇に上記被覆体が抵抗して、この被覆体の内圧が上昇し、このように上昇する圧力下で、上記混合物の発泡が進行させられる。よって、上記混合物の周りの圧力が低いことに比べて、この混合物の発泡状態がより均一になるなど、良好な発泡体を得ることができる。
【0018】
また、上記発泡体の混合物や被覆体の形状を予め定めることにより、発泡後の発泡体の形状を所望形状にすることができる。このため、発泡により上記発泡体を所望形状にさせようとする場合における自由度が向上する。
【0019】
請求項2の発明は、上記混合物を被覆した被覆体を、目的の対象物の所望部位に取り付け可能とする取り付け具を備えている。
【0020】
このため、上記取り付け具により、対象物の所望部位に上記発泡体を取り付けて発泡させれば、その発泡後の発泡体を所望位置に設置させることができる。つまり、発泡体を対象物の所望部位に設置しようとする場合における自由度が向上する。
【0021】
請求項3の発明は、請求項2の発泡体を使用する方法であって、
上記対象物が、車体の一部を構成し、空間をあけて互いに対面する一対の板金材であり、上記発泡体を上記空間に挿入して、上記両板金材の互いの対向面の所望部位に上記取り付け具により上記被覆体を取り付け、上記車体の塗装工程における加熱により、上記混合物を発泡させて、その発泡体を上記両板金材の各対向面にそれぞれ圧接させるようにしている。
【0022】
このため、上記両板金材は上記発泡後の発泡体、つまり、緩衝機能を有する発泡体によって互いに支え合うこととなる。よって、車体における各板金材の制振は、上記発泡体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の多目的発泡体、およびその使用方法に関し、発泡状態が良好な発泡体が得られるようにし、かつ、発泡によりこの発泡体を所望形状にしようとしたり、発泡後の発泡体を所望位置に設置しようとしたりする場合における自由度を向上させるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0024】
即ち、発泡体は、ゴム材料および樹脂材料のうち少なくともいずれか一方の材料と、発泡剤との混合物と、この混合物を全体的に気密状に被覆し、この混合物の発泡時の膨張に抵抗しながら引き伸ばされる被覆体とを備えている。
【実施例】
【0025】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0026】
図において、符号1は発泡以前の多目的発泡体である。この発泡体1は、ゴム材料および樹脂材料のうち少なくともいずれか一方の材料と、発泡剤と、架橋剤との混合物2と、この混合物2を全体的に気密状に被覆し、この混合物2の発泡時の膨張に抵抗しながら引き伸ばされる被覆体3と、上記混合物2を被覆した被覆体3を目的の対象物4の所望部位に取り付け可能とする取り付け具5とを備えている。
【0027】
上記ゴム材料は、例えば、SBR天然ゴム、EPDMなどである。
【0028】
上記樹脂材料は、例えば、ポリスチレン(スチロール樹脂)、ポリエチレン、EVA樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン、塩化ビニル樹脂などである。
【0029】
また、上記発泡剤は、揮発性発泡剤として炭酸ガスなどの気体や、エチルエーテルなどの揮発性液体であり、また、分解性発泡剤として、炭酸アンモニウムや重炭酸ナトリウムなどの無機化合物である。
【0030】
また、上記架橋剤は、上記混合物2がゴムを有する場合には硫黄やパオキサイド(有機過酸化物)などであり、上記樹脂材料を有する場合にはパオキサイド(有機過酸化物)などである。
【0031】
そして、上記混合物2は粘土状の可塑物質であって、所望形状に容易に成形可能とされている。なお、この混合物2を熱可塑性の固形材とし、その可塑状態で所望形状に成形したものでもよい。
【0032】
また、上記被覆体3は、予め所望体積、所望形状にした混合物2に、エバール(登録商標)のような長尺の樹脂フィルムを巻き付けることにより成形される。この樹脂フィルムは、内、外層8,9と、これら内、外層8,9の間に介設される中間層10とを一体的に備える多重層構造とされている。上記内層8はポリエチレン製、外層9はポリエステル製、中間層10はポリビニルアルコール製とされている。上記被覆体3は、その内圧の他、加熱によっても引き伸ばしが可能とされている。
【0033】
なお、上記被覆体3は、ゴム製で弾性を有していてもよい。また、上記被覆体3は、予め袋形状に成形されていてもよく、この場合には、上記混合物2は液状であってもよい。また、上記被覆体3を予め所望形状にし、もしくは、引き伸ばしされたときに所望形状となるようにして、発泡後の発泡体1が所望形状となるようにしてもよい。
【0034】
上記対象物4は、自動車の車体13の一部であるドアである。この対象物4は、縦長で平坦に延びる空間14をあけて互いに対面する一対の板金材15,16を備えている。また、上記取り付け具5は、両面テープである。なお、この取り付け具5は面ファスナー、接着剤、掛止フックなどであってもよい。
【0035】
上記発泡体1は、上記車体13の外部から上記空間14の上部に挿入され、上記両板金材15,16の互いの対向面のうちのいずれかの所望部位に取り付けられている。
【0036】
そして、上記車体13の塗装工程において、塗料の加熱硬化や水切り乾燥を行う加熱炉での加熱により、上記発泡体1の混合物2が発泡させられる。この際、混合物2は膨張するが、この混合物2の膨張に伴う内圧の上昇に上記被覆体3が抵抗して、この被覆体3の内圧が上昇し、このように上昇する圧力下で、上記混合物2の発泡が進行させられる。よって、上記混合物2の周りの圧力が低いことに比べて、この混合物2の発泡状態がより均一になるなど、良好な発泡体1を得ることができる。
【0037】
また、上記発泡体1の混合物2や被覆体3の形状を予め定めることにより、発泡後の発泡体1の形状を所望形状にすることができる。このため、発泡により上記発泡体1を所望形状にさせようとする場合における自由度が向上する。
【0038】
また、前記したように、混合物2を被覆した被覆体3を、目的の対象物4の所望部位に取り付け可能とする取り付け具5を備えている。
【0039】
このため、上記取り付け具5により、対象物4の所望部位に上記発泡体1を取り付けて発泡させれば、その発泡後の発泡体1を所望位置に設置させることができる。つまり、発泡体1を対象物4の所望部位に設置しようとする場合における自由度が向上する。
【0040】
また、上記混合物2の発泡に伴う膨張により上記被覆体3も引き伸ばされるため、発泡体1は全体的に膨張する。そして、この発泡体1は上記両板金材15,16の各対向面にそれぞれ圧接させられる(図1中、二点鎖線)。
【0041】
このため、上記両板金材15,16は上記発泡後の発泡体1、つまり、緩衝機能を有する発泡体1によって互いに支え合うこととなる。よって、車体13における各板金材15,16の制振は、上記発泡体1によって達成される。
【0042】
なお、以上は図示の例によるが、上記被覆体3は、混合物2が発泡して膨張した場合、最終的に破断したり、破裂したり、熱で消失したりするものであってもよい。また、上記対象物4は車体13のピラーであってもよく、建材であってもよい。
【0043】
また、上記発泡体1は、これを対象物4に取り付けることなく、単に加熱して単独で発泡させ、これを何らかの充填用として使用してもよい。例えば、荷物を輸送するときなど荷箱内の空間に上記発泡後の発泡体1を充填して、荷物に与える衝撃力を緩和させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】発泡体と、これを使用した対象物の縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 発泡体
2 混合物
3 被覆体
4 対象物
5 取り付け具
13 車体
14 空間
15 板金材
16 板金材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材料および樹脂材料のうち少なくともいずれか一方の材料と、発泡剤との混合物と、この混合物を全体的に気密状に被覆し、この混合物の発泡時の膨張に抵抗しながら引き伸ばされる被覆体とを備えたことを特徴とする多目的発泡体。
【請求項2】
上記混合物を被覆した被覆体を、目的の対象物の所望部位に取り付け可能とする取り付け具を備えたことを特徴とする請求項1に記載の多目的発泡体。
【請求項3】
請求項2の発泡体を使用する方法であって、
上記対象物が、車体の一部を構成し、空間をあけて互いに対面する一対の板金材であり、上記発泡体を上記空間に挿入して、上記両板金材の互いの対向面の所望部位に上記取り付け具により上記被覆体を取り付け、上記車体の塗装工程における加熱により、上記混合物を発泡させて、その発泡体を上記両板金材の各対向面にそれぞれ圧接させるようにしたことを特徴とする多目的発泡体の使用方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−98728(P2007−98728A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290419(P2005−290419)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(505370671)ノモト通商株式会社 (1)
【Fターム(参考)】