説明

多結晶シリコン装置およびその製造方法

プリントヘッドは、表面を有する多結晶シリコン基板(22)を有し、この多結晶シリコン基板の一部は、液体チャネル(24)を定形する。ノズル板構造(25)は、多結晶シリコン基板の表面に配置され、ノズル板構造の一部は、ノズル(36)を定形する。ノズルは、液体チャネルと流体連通される。液滴形成機構(38)は、ノズル板構造と対応しており、制御可能に作動し、ノズルを通って流れる連続液体ストリームから、液滴を形成し、あるいはノズル内に存在する液体から、オンデマンド式に液滴を放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に、シリコン基板から構成される装置、およびこれらの装置を加工する際に使用される製造技術に関し、特に、多結晶シリコン基板から構成される装置、および多結晶シリコン基板から構成される装置を加工する際に使用される製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコン基板から形成される、例えば、オンデマンド(on-demand)式のおよび連続的な液滴放出装置のような装置は、良く知られており、このような装置は、しばしば、装置の単結晶シリコン基板部に形成された少なくとも一つのビアを有する。しかしながら、これらの装置に、単結晶シリコン基板を使用することは、寸法、形状、およびコストの点で問題がある。通常、単結晶シリコン基板は、12インチ(約30.5cm)未満の寸法の、円形のものしか利用することができない。このため、当然のことながら、円形基板の形を、装置の意図した形状、例えば四角形または長方形のような形状に直すため、しばしば、追加の加工処理プロセスが必要となる。また、単結晶シリコン基板に関する材料コストは、基板の寸法とともに上昇する。例えば、12インチの直径を有する単結晶シリコン基板の材料コストは、1インチ(2.54cm)の直径を有する単結晶基板の材料コストに比べて、著しく上昇する。従って、単結晶シリコン基板で構成される一般的な装置への要求寸法が大きくなるほど、仮に単結晶シリコンが元来の、より小型の装置に使用されていたとしても、単結晶シリコンのコストのため、しばしば、新たな大型装置への使用が制限され、あるいはこれが不可能となる。
【0003】
一つの解決法は、より大きな寸法が要求される装置の加工の際に、非シリコン系の基板を使用することである。例えば、Anagnostopoulosらにより2003年12月16日に出願された米国特許第6,663,221B1号には、ページワイド(pagewide)型のオンデマンド式連続インクジェットプリントヘッドが示されており、この文献においては、非シリコン系基板上に、ノズル配列、ヒータ、ドライバおよびデータ搬送回路が集積されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,663,221B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単結晶シリコンに関連した1または2以上の問題を含まず、装置寸法の増大の要求を満足する、現在の単結晶シリコンから構成された装置のような装置を形成することに関して、未だ要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様では、プリントヘッドは、表面を有する多結晶シリコン基板であって、一部が液体チャネルを定める多結晶シリコン基板を有する。ノズル板構造が、前記多結晶シリコン基板の前記表面に配置され、ノズル板構造の一部は、ノズルを定める。該ノズルは、前記液体チャネルと流体連通される。液滴形成機構は、ノズル板構造と対応し、制御可能に作動し、前記ノズルを通って流れる連続液体ストリームから、液滴を形成し、または前記ノズルに存在する液体から、オンデマンド式に液滴を放出する。
【0007】
本発明の別の態様では、プリントヘッドを形成する方法は、多結晶シリコン基板を提供するステップと、前記多結晶シリコン基板の表面で、処理プロセスを実施するステップと、前記多結晶シリコン基板の前記表面に、ノズル板構造を提供するステップと、前記ノズル板構造と対応する液滴形成機構を提供するステップと、を有する。
【0008】
本発明の別の態様では、多結晶基板装置は、第1の結晶および第2の結晶を有する基板を有する。前記第1の結晶は、前記第2の結晶の配向とは異なる配向を有する。前記第1の結晶の少なくとも一部には、第1のホールが配置され、前記第2の結晶の少なくとも一部には、第2のホールが配置される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下に示す本発明の好適実施例の詳細な記載において、以下の添付図面が参照される。
【図1】本発明の一実施例の概略的な断面図である。
【図2】多結晶シリコン(mc−Si)基板の上面図である。
【図3A】図2に示したmc−Si基板の概略的な斜視図である。
【図3B】図3Aに示したmc−Si基板の一部の概略的な側断面図であって、mc−Si基板に対して、研磨処理プロセスが実施される前の図である。
【図3C】図3Aに示したmc−Si基板の一部の概略的な側断面図であって、mc−Si基板に対して、研磨処理プロセスが実施された後の図である。
【図4A】mc−Si基板の概略的な上面図である。
【図4B】図4Aに示したmc−Si基板の4A−4A線に沿った概略的な断面図であって、mc−Si基板の表面に材料層が設置された図である。
【図5A】mc−Si基板の概略的な上面図である。
【図5B】図5Aに示したmc−Si基板の5A−5A線に沿った概略的な断面図であって、mc−Si基板の表面に複数の材料層が設置された図である。
【図6A】本発明の別の実施例の概略的な上面図である。
【図6B】図6Aに示した本発明の一実施例の概略的な断面図である。
【図6C】図6Aに示した本発明の別の実施例の概略的な断面図である。
【図7A】本発明の別の実施例による概略的な上面図である。
【図7B】図7Aに示した本発明の実施例の概略的な断面図である。
【図7C】図7Aに示した本発明の別の実施例の概略的な断面図である。
【図8A】本発明の別の実施例による概略的な上面図である。
【図8B】図8Aに示した本発明の一実施例の概略的な断面図である。
【図8C】図8Aに示した本発明の別の実施例の概略的な断面図である。
【図9A】本発明の別の実施例による概略的な断面図である。
【図9B】図9Aに示した本発明の別の実施例の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の記載では、特に、本発明とより直接的に関係し、本発明による機器の一部を構成する素子について説明する。特に記載されていない素子も、当業者に良く知られた各種形態を取っても良いことを理解する必要がある。以下の記載では、可能な場合、同一の素子を識別する際に、同一の参照符号が使用されている。
【0011】
図1を参照すると、この図には、プリントヘッド20が示されている。プリントヘッド20は、多結晶シリコン(mc−Si)基板22を有し、この基板には、複数の供給チャネル24が形成される。mc−Si基板22の表面には、ノズル板構造25が配置される。ノズル板構造25は、通常、プリントヘッド形成処理プロセスの一部として、mc−Si基板22上に成膜された層内に形成される。
【0012】
図1に示す実施例では、ノズル板構造25は、導電性材料層26、誘電体材料層30、および不動態/保護材料層34を有する。導電性材料層26は、mc−Si基板22の一つの表面に配置され、導電性材料層26には、複数の供給チャネル28が形成される。誘電体材料層30は、導電性層26の表面に配置され、mc−Si基板22とは接触しない。誘電体材料層30は、該誘電体材料層に形成された、複数の供給チャネル32を有する。不動態/保護材料層34は、誘電体材料層30の表面に配置され、導電性材料層26とは接触しない。不動態/保護材料層34は、該層に形成された、複数の供給チャネル35を有する。供給チャネル24、28、32、35は、相互に液体連通されている。1または2以上の供給チャネル24、28、32、35は、ノズル36を形成する。ノズル36は、図1、6B、6C、7B、7C、8B、8Cに示すような孔の形態、あるいは、図9A、9Bに示すようなチャンバ室の形態であっても良い。
【0013】
プリントヘッド20は、ノズル板構造25と対応する液滴形成機構38を有する。液滴形成機構38は、制御器39により、制御可能に作動されまたは活性化され、一般に連続液滴印刷法と称される方法で、ノズル36を介して流れる連続液体ストリーム流からの液滴を形成し、または一般にオンデマンド式液滴印刷法と称される方法で、ノズル36(または以下に示す場合、40)に存在する液体からオンデマンド式に、液滴を放出する。図1に示す実施例では、液滴形成機構38は、ヒータ74であり、このヒータは、各ノズル36の周囲に配置される。ただし、他の種類の液滴形成機構、例えば、圧電アクチュエータ、音響アクチュエータが本発明に使用されても良い。
【0014】
図2を参照すると、この図には、多結晶シリコン(mc−Si)基板22が示されている。多結晶シリコン(mc−Si)基板は、単結晶シリコン基板の場合に比べて、非円形状に、容易に成長させることができ、例えば、14インチ×18インチ、または21インチ×25インチなどの、より大きな寸法の長方形状にすることができる。また、mc−Si基板は、単結晶シリコン基板を製作するよりも安価である。
【0015】
mc−Si基板22は、複数のグレインまたは結晶50(第1の結晶、第2の結晶など)と、粒界または結晶粒界52とを有する。各グレインまたは結晶50は、他のグレインまたは結晶50と比較した場合、異なる配向を有し、一つのグレインまたは結晶50に関するエッチング速度は、別のグレインまたは結晶50に関するエッチング速度とは異なる。
【0016】
図3A乃至3Cを参照すると、多結晶シリコン基板22は、固有の粗い上部表面54を有する。いくつかの適用例の場合、例えば、プリントヘッド22用途の場合、平坦な(例えば表面粗さが10Å以下の)上部表面56が好ましい。これを得るため、表面56に対して、1または2以上の処理が行われ、表面56が研磨される。表面56は、グラインダ処理、および良く知られた化学的機械的平坦化(CMP)処理により研磨される。2つの処理の間の除去速度の比は、所望の平坦化表面56が得られるように最適化される。通常の場合、多結晶シリコン基板22のグレインの化学エッチング速度の依存性のため、CMP処理単独では、平坦表面を得ることはできない。
【0017】
図4Aおよび4Bを参照すると、図には、多結晶シリコン基板22が示されており、この基板は、研磨表面56上に設置された誘電体材料層30を有する。いくつかの用途,例えばプリントヘッド22の用途では、例えば反応性イオンエッチング処理プロセス、または深反応性イオンエッチング(DRIE)処理プロセスのようなエッチング処理プロセスを用いて、多結晶シリコン基板22に、例えば供給チャネル24のような、ビアまたはホール62が形成される。mc−Si基板22の異なるグレインまたは結晶50は、結晶面あるいは配向の違いから、異なるエッチング速度を有するため、最速のエッチング速度を有するグレイン領域58では、他のグレイン領域60の前に、エッチング停止層、すなわちこの例の場合、誘電体材料層30が露出される。停止層である誘電体材料層30に、エッチングイオンが接触すると、ノッチ化が生じる。これにより、ビアまたはホール62の寸法に、変化が生じる。
【0018】
mc−Si基板22においては、同様のもしくは実質的に一致する寸法を有するビアまたはホール62が望ましく、この場合、例えばタンタルシリコン窒化物(TaSiN)層のような導電性材料層26を用いて、ノッチ化を抑制または防止することが可能となる。図5Aおよび5Bを参照すると、mc−Si基板22上に、導電性材料層26が設置される。次に、導電性材料層26の上部に、誘電体材料層30が設置される。導電性材料層26の存在により、ノッチ化の影響を引き起こすおそれのあるエッチングイオンの広がりが抑制され、エッチングイオンの帯電が抑制または防止される。
【0019】
あるいは、mc−Si基板22上には、誘電体層30が設置され、次に、誘電体材料層30の上に、アルミニウム(Al)層のような導電性材料層26が設置されても良い。この状態では、通常、導電性材料層26は、mc−Si基板22のエッチング処理の完了後に除去される。
【0020】
この方法では、mc−Si基板22の隣接するグレインまたは結晶50において、ビアまたはホール62がエッチングされ、これらは、各グレインまたは結晶50内に完全に収容される。あるいは、ビアまたはホール62は、mc−Si基板22の隣接するグレインまたは結晶50においてエッチングされ、ビアまたはホール62は、複数のグレインまたは結晶50、およびグレインまたは結晶の間に配置された粒界52の少なくとも一部を貫通しても良い。
【0021】
図6Aを参照すると、この図には、ハイブリッドプリントヘッド66が示されている。ハイブリッドプリントヘッド66は、プリントヘッド20と、ドライバ電子機器とを有し、後者は、ロジック制御回路68とも称され、プリントヘッド20から物理的に分離されている。プリントヘッド20は、複数のノズル36と、mc−Si基板22上に形成された、対応する液滴形成機構38とを有する。ドライバ電子機器またはロジック制御回路68は、プリントヘッド20に配置された、少なくとも一つの電気接続部70を介して、液滴形成機構38と電気的に接続される。またプリントヘッド20から物理的に分離して、電源72が配置され、この電源は、液滴形成機構38と電気的に接続される。
【0022】
図6Bを参照すると、プリントヘッド20のmc−Si基板22は、供給チャネル24を有し、この供給チャネルは、例えば、深反応性イオンエッチング(DRIE)処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて形成される。ノズル板構造25は、例えばシリコン酸化物(SiO2)層のような誘電体材料層30を有し、この層は、mc−Si基板22の表面に配置される。例えば、タンタルシリコン窒化物(TaSiN)のような電気抵抗材料で構成された、液滴形成機構38であるヒータ74は、誘電体材料層30上に配置され、例えばアルミニウム(Al)または銅(Cu)層のような導電性材料層78と電気的に接続される。導電性材料層78は、ビア79を介するようにして誘電体材料層30に形成される。ヒータ74の上部には、例えば、窒化物/酸化物(NiH4/SiO2)層のような不動態/保護材料層76が設置される。
【0023】
不動態/保護材料層76および誘電体材料層30に、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて、供給チャネル35、32を形成することにより、ノズル36が形成される。ヒータ74は、ノズル36の周囲に配置され、これは、例えば、リングヒータ、ノッチヒータ、スプリットヒータ、または従来公知な他のタイプのヒータであっても良い。
【0024】
導電性材料層78の一部は、例えばRIE処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて露出される。導電性材料層78の露出部は、ボンドパッド80を形成し、このボンドパッドは、ドライバ電子機器もしくはロジック制御回路68、および/または電源72用の電気的接続部70として機能する。
【0025】
図6Cを参照すると、mc−Si基板22に、同様のまたは実質的に一致する寸法の、個々の供給チャネル24を形成する場合、例えばタンタルシリコン窒化物(TaSiN)層のような導電性材料層26は、導電性材料層26の上部に誘電体材料層30を設置する前に、mc−Si基板22上に設置されることが有意である。不動態/保護材料層76、誘電体材料層30、および導電性材料層26に、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて、供給チャネル35、32、28を形成することにより、ノズル36が形成される。
【0026】
図7Aを参照すると、この図には、モノリシックなプリントヘッド80が示されている。モノリシックなプリントヘッド80は、プリントヘッド20を有し、このプリントヘッド20は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)82を有する、ドライバ電子機器またはロジック制御回路68と統合されている。またプリントヘッド20は、複数のノズル36、およびmc−Si基板22上に形成された、対応する液滴形成機構38を有する。ドライバ電子機器またはロジック制御回路68は、液滴形成機構38と電気的に接続される。電源72が、プリントヘッド20の液滴形成機構38と電気的に接続される。
【0027】
図7Bを参照すると、プリントヘッド20のmc−Si基板22は、例えば、深反応性イオンエッチング(DRIE)処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて形成された、供給チャネル24を有する。ノズル板構造25は、例えばシリコン酸化物(SiO2)のような誘電体材料層30を有し、この層は、mc−Si基板22の表面に配置される。例えばタンタルシリコン窒化物(TaSiN)のような電気抵抗性材料で構成された、液滴形成機構38、ヒータ74は、誘電体材料層30の上部に配置され、例えば、アルミニウム(Al)または銅(Cu)の層のような導電性材料層78と電気的に接続される。導電性材料層は、ビア79を介するようにして誘電体材料層30に形成される。ヒータ74の上部には、例えば窒化物/酸化物(NiH4/SiO2)のような不動態/保護材料層76が設置される。
【0028】
ドライブ電子機器またはロジック制御回路68は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)82を有し、プリントヘッド20と統合される。薄膜トランジスタ(TFT)82は、従来公知の形成プロセスを用いて、誘電体材料層30内に形成される。薄膜トランジスタ(TFT)82は、ビア84を介して、ヒータ74と電気的に接続される。薄膜トランジスタ(TFT)82がmc−Si基板22を有するプリントヘッドに統合されている場合、非シリコン基板に比べて、mc−Si基板22のより高いプロセス限界温度のため、薄膜トランジスタ(TFT)82の特性が向上する。
【0029】
不動態/保護材料層76および誘電体材料層30に、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて、供給チャネル35、32を形成することにより、ノズル36が形成される。ヒータ74は、ノズル36の周囲に配置され、例えば、リングヒータ、ノッチヒータ、スプリットヒータ、または従来公知の他のタイプのヒータであっても良い。
【0030】
導電性材料層78の一部は、例えばRIE処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて露出される。導電性材料層78の露出部は、ボンドパッド80を形成し、このボンドパッドは、電源72用の電気的接続部70として機能する。
【0031】
図7Cを参照すると、mc−Si基板22に、同様のまたは実質的に一致する寸法を有する個々の供給チャネルを形成する場合、導電性材料層26の上部に導電性材料層30が設置される前に、mc−Si基板22上に、例えばタンタルシリコン窒化物(TaSiN)層のような導電性材料層26が設置されることが有意である。不動態/保護材料層76、誘電体材料層30、および導電性材料層26に、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて、供給チャネル35、32、28を形成することにより、ノズル36が形成される。
【0032】
図8Aを参照すると、この図には、モノリシックなプリントヘッド86の別の実施例が示されている。モノリシックなプリントヘッド86は、プリントヘッド20を有し、このプリントヘッド20は、例えばバルクトランジスタ88を有するドライバ電子機器またはロジック制御回路68と統合される。プリントヘッド20は、複数のノズル36、およびmc−Si基板22上形成された、対応する液滴形成機構38を有する。ドライブ電子機器68は、液滴発生機構38と電気的に接続される。電源72が、プリントヘッド20の液滴形成機構38と電気的に接続される。
【0033】
図8Bを参照すると、プリントヘッド20のmc−Si基板22は、供給チャネル24を有し、この供給チャネルは、例えば深反応性イオンエッチング(DRIE)処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて形成される。ノズル板構造25は、例えばシリコン酸化物(SiO2)層のような誘電体材料層30を有し、この層は、mc−Si基板22の表面に配置される。液滴形成機構38、ヒータ74は、例えばタンタルシリコン窒化物(TaSiN)のような電気抵抗性材料で構成され、誘電体材料層30の上部に設置され、例えばアルミニウム(Al)または銅(Cu)層のような導電性材料層78と、電気的に接続される。導電性材料層78は、ビア79を介するようにして誘電体材料層30に形成される。ヒータ74の上部には、例えば窒化物/酸化物(NiH4/SiO2)層のような不動態/保護材料層76が設置される。
【0034】
例えばバルクトランジスタ88を有するドライブ電子機器またはロジック制御回路68は、プリントヘッド20に統合される。バルクトランジスタ88は、従来公知の形成プロセスを用いて、mc−Si基板22および誘電体材料層30の少なくとも一部に形成される。mc−Si基板22の一部に形成されたバルクトランジスタ88は、既知のドーピング処理プロセスを用いて、mc−Si基板22の一部にドープを行うことにより得られ、少なくともバルクトランジスタ88のソース部分およびドレイン部分が形成される。ドーパントは、例えば、リン、ヒ素、ホウ素、またはこれらの組み合わせを含んでも良い。バルクトランジスタ88が、mc−Si基板22の少なくとも一部に形成される場合、mc−Si基板22は、非シリコン系基板の熱の放出特性に比べて、バルクトランジスタ88によって生じる熱の放出をより助長する。バルクトランジスタ88は、ビア84を介して、ヒータ74と電気的に接続される。
【0035】
不動態/保護材料層76、および誘電体材料層30に、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて、供給チャネル35、32を形成することにより、ノズル36が形成される。ヒータ74は、ノズル36の周囲に配置され、例えば、リングヒータ、ノッチヒータ、スプリットヒータ、または従来公知の他のタイプのヒータであっても良い。
【0036】
導電性材料層78の一部は、例えばRIE処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて露出される。導電性材料層78の露出部は、ボンドパッド80を形成し、このボンドパッドは、電源72用の電気接続部として機能する。
【0037】
図8Cを参照すると、mc−Si基板22に、同様のまたは実質的に一致する寸法を有する個々の供給チャネル24を形成する場合、例えばタンタルシリコン窒化物(TaSiN)層のような導電性材料層26は、導電性材料層26の上部に誘電体材料層30が配置される前に、mc−Si基板22上に設置されることが有意である。不動態/保護材料層76、誘電体材料層30、および導電性材料層26に、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて、供給チャネル35、32、28を形成することにより、ノズル36が形成される。
【0038】
図6A乃至8Cには、連続的に、またはオンデマンド式に、液滴を形成することが可能なプリントヘッド20が示されており、液滴形成機構38は、ノズル36の周囲に配置されている。プリントヘッド20の他の実施例は、ノズル36に対して、他の位置に配置された液滴形成機構38を有する。
【0039】
例えば、図9Aを参照すると、この図には、液滴形成機構38が、ノズル36と対応して作動するプリントヘッド20が示されている。この実施例では、ノズル36は、開口92を有するチャンバ室90の形態となっている。液滴形成機構38は、チャンバ室90の開口92とは反対の側に配置される。
【0040】
プリントヘッド20は、複数のノズル36、およびmc−Si基板22に形成された対応する液滴形成機構38を有する。ドライバ電子機器またはロジック制御回路68は、液滴形成機構38と電気的に接続される。前述のように、ドライバ電子機器またはロジック制御回路68は、プリントヘッド20と物理的に分離され、またはプリントヘッド20と統合される。また、プリントヘッド20から物理的に離間して、電源72が配置され、この電源は、液滴形成機構38と電気的に接続される。
【0041】
プリントヘッド20のmc−Si基板22は、供給チャネル24を有し、この供給チャネルは、例えば深反応性イオンエッチング(DRIE)のような乾式エッチング処理プロセスを用いて形成される。ノズル板構造25は、例えばシリコン酸化物(SiO2)層のような誘電体材料層30を有し、この層は、mc−Si基板22の表面に配置される。液滴形成機構38、ヒータ74は、例えばタンタルシリコン窒化物(TaSiN)のような電気抵抗性材料で構成され、誘電体材料層30の上部に配置され、例えばアルミニウム(Al)または銅(Cu)層のような導電性材料層78と電気的に接続される。導電性材料層78は、ビア79を介するようにして、誘電体材料層30に形成される。ヒータ74上には、例えば窒化酸化物(NO2)層のような不動態/保護材料層層76が配置される。不動態/保護材料層76、および誘電体材料層30には、例えば反応性イオンエッチング(RIE)のような乾式エッチング処理プロセスを用いて、供給チャネル35、32が形成される。
【0042】
導電性材料層78の一部は、例えばRIE処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて露出される。導電性材料層78の露出部は、ボンドパッド80を形成し、このボンドパッドは、ドライブ電子機器もしくはロジック制御回路、および/または電源72用の電気的接続部として機能する。
【0043】
従来公知の処理プロセスを用いて、チャンバ室90および開口92が形成される。例えば、不動態/保護材料層76の上部に、チャンバ室90を定形する犠牲材料層(図示されていない)が配置され、別の材料層94が、この犠牲材料の上部に配置される。材料層94に、エッチング処理プロセスを用いて、開口92が形成される。次に、開口92を介して、または供給チャネル35、32を介して、犠牲材料を除去することにより、チャンバ室90が形成される。
【0044】
図9Bを参照すると、mc−Si基板22に、同様のまたは実質的に一致する寸法を有する個々の供給チャネル24を形成する場合、導電性材料層不動態/保護材料層26の上部に誘電体材料層30を配置する前に、例えばタンタルシリコン窒化物(TaSiN)層のような導電性材料層26が、mc−Si基板22の上部に配置されることが有意である。例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理プロセスのような乾式エッチング処理プロセスを用いて、供給チャネル35、32が形成される場合、導電性材料層26に、供給チャネル28が形成される。
【0045】
mc−Si基板を用いて、いかなる寸法のプリントヘッドが形成されても良いが、mc−Si基板の使用は、特に、ページワイド型プリントヘッドを製作する際に有意である。ページワイド型プリントヘッドでは、プリントヘッドの全長は、少なくとも受入器の幅と等しく、印刷処理の間、「走査」されないことが好ましい。ページワイド型プリントヘッドの全長は、予想される特定の用途に応じて調節することができ、例えば、1インチ未満から20インチを超える全長まで変化させることができる。本発明では、ページワイド型プリントヘッドの全長は、4インチ以上であることが好ましく、9インチ以上であることがより好ましい。これらの全長領域では、単結晶シリコンのコスト、形状、および寸法の問題が明確に現れるからである。
【0046】
本願では、プリントヘッドという用語が使用されているが、今日では、プリントヘッドは、インク以外の他のタイプの流体を放出する際にも使用されていることを把握する必要がある。今日では、プリントヘッドを使用して、例えば、医薬、顔料、色素、導電性および半導電性有機物、金属粒子、ならびに他の材料などの各種流体を放出することができる。従って、プリントヘッドという用語は、インクを放出する装置にのみ限定されることを意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する多結晶シリコン基板であって、一部が液体チャネルを定める多結晶シリコン基板と、
該多結晶シリコン基板の前記表面に配置されたノズル板構造であって、一部がノズルを定め、該ノズルは、前記液体チャネルと流体連通される、ノズル板構造と、
該ノズル板構造と対応する液滴形成機構であって、制御可能に作動し、前記ノズルを通って流れる連続液体ストリームから、液滴を形成し、または前記ノズルに存在する液体から、オンデマンド式に液滴を放出する液滴形成機構と、
を有するプリントヘッド。
【請求項2】
前記液滴形成機構は、前記ノズル板構造内に配置されたヒータであることを特徴とする請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項3】
さらに、
前記液滴形成機構と電気的に接続された制御回路を有し、
該制御回路は、前記多結晶シリコン基板に対して、離して配置されることを特徴とする請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項4】
前記ノズル板構造は、前記多結晶シリコン基板の前記表面に配置された誘電体材料層と、前記誘電体材料層の少なくとも一部に配置された導電性材料層とを有し、
前記液滴形成機構は、前記誘電体材料層上に配置された抵抗性材料層を有し、
該抵抗性材料層は、前記導電性材料層と電気的に接続され、
前記導電性材料層は、前記制御回路と電気的に接続されることを特徴とする請求項3に記載のプリントヘッド。
【請求項5】
さらに、
前記ヒータと電気的に接続された制御回路を有し、
前記制御回路は、前記多結晶シリコン基板に近接して配置されることを特徴とする請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項6】
前記制御回路は、前記ノズル板に配置された薄膜トランジスタを有することを特徴とする請求項5に記載のプリントヘッド。
【請求項7】
前記ノズル板構造は、前記多結晶シリコン基板の前記表面に配置された誘電体材料層を有し、
前記薄膜トランジスタは、前記誘電体材料層に集積され、
前記液滴形成機構は、前記誘電体材料層上に配置された抵抗性材料層を有し、
該抵抗性材料層は、前記薄膜トランジスタと電気的に接続されることを特徴とする請求項6に記載のプリントヘッド。
【請求項8】
前記制御回路は、前記多結晶シリコン基板の少なくとも一部に配置されたトランジスタを有することを特徴とする請求項5に記載のプリントヘッド。
【請求項9】
前記ノズル板構造は、前記多結晶シリコン基板の前記表面上に配置された誘電体材料層を有し、
前記トランジスタは、前記多結晶シリコン基板の少なくとも一部に集積され、
前記液滴形成機構は、前記誘電体材料層上に配置された抵抗性材料層を有し、
該抵抗性材料層は、前記トランジスタと電気的に接続されることを特徴とする請求項8に記載のプリントヘッド。
【請求項10】
さらに、
前記ノズル板と前記多結晶シリコン基板の間に配置された導電性材料層を有することを特徴とする請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項11】
当該プリントヘッドは、ページワイド型プリントヘッドであることを特徴とする請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項12】
前記ページワイド型プリントヘッドは、9インチまたはそれ以上の全長を有することを特徴とする請求項11に記載のプリントヘッド。
【請求項13】
プリントヘッドを形成する方法であって、
多結晶シリコン基板を提供するステップと、
前記多結晶シリコン基板の表面で、処理プロセスを実施するステップと、
前記多結晶シリコン基板の前記表面に、ノズル板構造を提供するステップと、
前記ノズル板構造と対応する液滴形成機構を提供するステップと、
を有する方法。
【請求項14】
前記多結晶シリコン基板の前記表面で、処理プロセスを実施するステップは、前記多結晶シリコン基板を研磨するステップを有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記多結晶シリコン基板を研磨するステップは、前記多結晶シリコン基板の前記表面をグラインダ処理するステップを有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記多結晶シリコン基板を研磨するステップは、前記多結晶シリコン基板の前記表面に、化学機械的研磨処理プロセスを適用するステップを有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記多結晶シリコン基板の前記表面で、処理プロセスを実施するステップは、前記多結晶シリコン基板の前記表面に、導電層を成膜するステップを有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記多結晶シリコン基板上に、前記導電層を成膜するステップは、
最初に、前記多結晶シリコン基板上に、誘電体層を成膜するステップと、
次に、前記誘電体材料層上に、前記導電層を成膜するステップと、
を有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
さらに、
エッチング処理プロセスを用いて、前記多結晶シリコン基板に、供給チャネルを形成するステップと、
前記エッチング処理プロセスの完了後、前記導電層を除去するステップと、
を有し、
前記誘電体層は、前記ノズル板構造の少なくとも一部に形成されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記基板上に前記導電層を成膜するステップは、
最初に、前記基板上に前記導電層を成膜するステップと、
次に、前記導電層上に誘電体層を成膜するステップと、
を有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
さらに、
エッチング処理プロセスを用いて、前記多結晶シリコン基板に、供給チャネルを形成するステップを有し、
前記誘電体層により、前記ノズル板構造の少なくとも一部が形成されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記多結晶シリコン基板の前記表面に、前記ノズル板構造を提供するステップは、ドライバ電子機器を形成するステップを有し、
前記ドライバ電子機器は、前記ノズル板構造内の前記液滴形成機構を制御するように動作することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記多結晶シリコン基板の前記表面に、前記ノズル板構造を提供するステップは、ドライバ電子機器を形成するステップを有し、
前記ドライバ電子機器は、前記多結晶シリコン基板の少なくとも一部に配置された前記液滴形成機構を制御するように動作することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項24】
多結晶基板装置であって、
第1の結晶および第2の結晶を有する基板であって、前記第1の結晶は、前記第2の結晶の配向とは異なる配向を有する、基板と、
前記第1の結晶の少なくとも一部に配置された第1のホールと、
前記第2の結晶の少なくとも一部に配置された第2のホールと、
を有する多結晶基板装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2009−544489(P2009−544489A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520792(P2009−520792)
【出願日】平成19年7月16日(2007.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/016126
【国際公開番号】WO2008/013691
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】