説明

多軸スクリュー押出機における動的加硫による熱可塑性エラストマーの生成方法

本発明は熱可塑性ポリマー及び交差結合可能なゴムを混合し、熱可塑性エラストマーを生成する方法に関し、熱可塑性ポリマー、交差結合可能なゴムを溶融・混合し、混合中に動的交差結合され又は、続く溶融加工で交差結合剤で動的交差結合させても良い。
熱可塑性加硫物を生成する方法は:
a) 熱可塑性ポリマー及び加硫可能なエラストマーのブレンドを、少なくとも3つのインターメッシュスクリューを持つ複数スクリュー押出機で溶融加工し、スクリューは3−170の混合ゾーンを持ち、前記押出機はL/D比が15-100、一L/D当り3 から17のメッシュを持つスクリューを持ち、
b)a)の溶融加工されたブレンドに少なくとも一つの硬化剤を、押出機の長さの最初の46%の少なくとも1箇所で加え、又は、ブレンドの硬化を開始させるために第二の押出機でa)の溶融加工ブレンドに少なくとも一つの硬化剤を加え、及び
c)少なくとも部分的に前記エラストマーを反応溶融加工により硬化させること
を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性ポリマー及び交差結合可能なゴムを混合して、熱可塑性エラストマーを生成するプロセスに関し、前記プロセスは熱可塑性ポリマー、好ましくはポリオレフィン及び交差結合可能なゴムを溶融し、混合することを含む。混合によって形成されたブレンド中の交差結合可能なゴムは、混合中に動的に交差結合されることもあり、又は、ゴムは続く溶融プロセスで交差結合剤を加えて動的交差結合させても良い。
【背景技術】
【0002】
動的加硫された熱可塑性エラストマー(熱可塑性加硫物)は熱可塑性及び弾性特性の両方の組み合わせた特性を持つ。その様な熱可塑性加硫物は、熱可塑性ポリマー、加硫可能なゴム及び硬化剤を混合し、せん断することにより生成される。加硫可能なゴムは硬化され、熱可塑性ポリマーの連続相内で粒状相として緊密且つ均一に分散される。
【0003】
熱可塑性加硫物は、従来の可塑剤加工機器を用いてプレスされ有用な製品に加圧され造形される。熱可塑加硫物は、耐久性が良く、重量が軽く、魅力的な製品とすることができ、その製品としての使用寿命を終えた後は新しい製品に再加工することができる。そのため、熱可塑性加硫物は工業分野で広く用いられており、例えば、ダッシュボード及びバンパー、フード内のエアーダクト、シール等の様な自動車部品、;機械用のギア及び歯車の歯、車輪及びベルト;電子部品のケース及び絶縁体;カーペット、衣服及び寝具類の様な織物及び枕及びマットレスの充填材;及び建築用の伸縮継ぎ手がある。
【0004】
エラストマーが完全に交差結合していることが望ましい応用分野、例えば、自動車産業で使用されるシール及びフード内部の場合には、オイル及びガソリンが加硫物を膨張させることがあり、従来の加工技術では非常に多量の硬化剤を必要とする。交差結合を確実なものとするために必要な、非常に多量の硬化剤は大気中に放出されることがあり、又は、余分な費用及び非効率なことに加えてその材料を扱う人の健康に有害であり不快感を与える。更に、その異なる応用対象に適した各々と異なる製品とすることが望ましいため、異なる硬化剤を使用することより、最適な製品の製造のために通常、スクリュー要素(element)、入力ポート、温度プロフィール等を変える必要がある。これらの方法において、変更の手数を減らすことのできるものは、何れであれ製造者に大きな利益をもたらす。
【0005】
熱可塑性加硫物は、バンベリーミキサー及び他のタイプのせん断ミキサー中で動的に生成することができる。連続加工によるのが有利であるため、その様な材料はしばしば2軸スクリュー押出機で生成される。スクリュー直径が25mm から約380mmの2軸スクリュー押出機を使用することができる。大型の押出機は産出量を増大させるための絶えざる研究の結果生まれたものである。大きいスクリュー直径を持つ押出機は、直径の小さいスクリューの押出機に比べて、押出機の生産量との関係で表面面積が小さい。大型押出機で混合することは、その押出長さを長くすることができるためその混合量は大きくなるが、押出機長さが長くなるため材料の劣化度が大きくなることがあり得る。したがって、大型押出機による規模の利益は全ての材料で得られるものとはいえない。
【0006】
WO 03/031150 Alは、動的加硫された熱可塑性エラストマーにおいて黒い斑点が発生するのを減らすと言われている2軸スクリュー押出機用いる方法を教示する。この方法では黒い斑点の問題を解消するために700から1100 RPMで押出機を使用する。この公報によると動的加硫された熱可塑性エラストマーは重量でエラストマーを65-95%含む。
【0007】
米国特許第4,594,390号は、動的加硫は2軸スクリュー押出機において100-500 RPMで20から60 秒で起き得ることを教示する。押出物は各要素につき1-30回/秒混練され、加硫が起きる様に200から1800回混練される。熱可塑性ポリマー及びエラストマーは押出機の最初の1/3で混合され、触媒は供給口から押出機の長さの1/3のところで加えられ、動的加硫は押出機の長さの最後の2/3で実施される。せん断速度は少なくとも2000 sec-1 から7500 sec-1であると記載されている。
【0008】
EP 0 547 843 Blは、その5ページ、7-10行に、動的加硫熱可塑性エラストマーの加工に、連続単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー混練押出機、又は、3軸以上のスクリューを持つ混練押出機を使用することができることを教示する。2軸スクリュー押出機は、実施例1−4に記載されており、スーパーミキサーが実施例4に開示されている。本文献には押出機のスクリュー軸は共回転、逆回転又はインターメッシュ(intermesh)のいずれであるかの記載はない。
【0009】
米国特許第6,610,286 1B号は、押出時に押出金型の周囲にゴム状外皮を堆積する傾向が殆んどないことについて記載する。この特許は、非常に優れたオイル耐性を持つ商品を押出物から形成することができることを主張しており、その第4欄にはPP(ポリプロピレン)重量が5-70%の広い範囲に亙ることを記載し、そこでは組成物中のPPの量及び加硫油展ゴムの全量がパーセントの算出に用いられる。実施例では、組成物中のPPの最小量は20% (油展オイルを除いた場合25.9%)であり、その様な材料は分離されないが、加工中に形成されることが予定されている中間材料であることは注目すべきである。
【0010】
WO 2004/009327 Alは、内部コアーの回りに配置され、バレルにより囲まれた12のインターメッシュ、共回転スクリューを持つリング押出機について記載する。彼ら(3+Extruder GmbH, Hoher Steg 10, 74348 Lauften、ドイツ)の製品カタログでは、そのリング押出機(Ring Extruder (RE))を2軸スクリュー押出機(twin screw extruders (TS))と比較して、その製品は高生産性を持ち及び経費効率が良く、製品品質が優れていると主張する。スクリュー軸の数が多いと推進力及び容量が増し、製品の劣化を少なくし、容易に且つ滑らかに混合することができ、バレルの配置は効率的通気を提供すると言われる。バレルの長さは、バレルでの使用のために設計されるスクリューの直径に基づいており、供給バレルは(feed barrel)3Dの長さ(Dは直径)を持ち、固定バレル(solid barrel)は4D、組合せバレル(combination barrel)は2Dの長さを持つ。したがって、30mmの直径を持つ混合スクリューを用いるリング押出機では、供給バレルは90mm、固定バレルは120mm、組合せバレルは60mmの長さを持つ。リング押出機は、スクリューの数を増大させ混合容量を増大させることにより、短くすることができ、より小さい直径のスクリューで同じ生産量を得ることができることは、熱移動、混合及び脱気するのに優位である。
【発明の概要】
【0011】
本発明は上記の問題及び他の問題を解決するものであり、熱可塑性加硫物を生成する方法であり、その方法は:
a)熱可塑性ポリマー及び加硫可能なエラストマーのブレンドを、少なくとも3つのインターメッシュスクリューを持つ複数スクリュー 押出機で溶融加工すること、スクリューは3−170の混合ゾーンを持ち、前記押出機はL/D比が15-100、一L/D当り3 から17のメッシュを持つスクリュープロフィールであり、
b)a)の溶融加工されたブレンドに少なくとも一つの硬化剤を、前記押出機の長さの最初の46%の少なくとも1箇所で加え、又は、ブレンドの硬化を開始させるために第二の押出機でa)の溶融加工ブレンドに少なくとも一つの硬化剤を加え、及び
c)少なくとも部分的に前記エラストマーを反応溶融加工により硬化させること
を含む。
【0012】
本方法では、種々の硬化剤が使用することができ、第一の実施の態様においては、硬化剤は水素化ケイ素組成物及びそのためのプラチナ触媒である。他の実施の態様においては、硬化剤はフェノール性樹脂及び有機過酸化物組成物よりなる群から選択され、硬化剤は第一の押出機の長さの最初の25%の範囲で加えられる。
【0013】
本方法では、リング押出機は各スクリューが他の二つのスクリューに隣接しており、好ましくはスクリューはコアーを囲み、バレルはスクリューを囲むのが良い。ある実施の態様においては、リング押出機はリング押出機の一の部分から他の部分に押出材料が超えるのをブロックするための2以上の非回転軸を用いる混合部分に分けることもできる。更に他の異なる実施の態様においては、共回転軸は、押出機のL/Dの一部分の材料が超えるのをブロックする様に適合され、また押出機のL/D部分でのインターメッシュに適合する様適合されている。
【0014】
ある好ましい実施の態様においては、この方法は更にスクリューを100 から1200 RPMで回転させ、材料を押出機に1.91- 22.9 Kg/(時間xcm2 自由断面積)の割合で供給し、好ましくはスクリューを250 から850 RPMで回転させ、及び材料を4.78 - 16.22 Kg/ (時間xcm2 自由断面積)の割合で供給することを含む。好ましくは、押出機のスクリューは500から850 RPMで回転させ、材料は9.54 - 16.22 Kg/ (時間xcm2 自由断面積)の割合で供給し、L/D当り770から2900 インターメッシュ-sec-1で押出機の混合物に供給されるのが良い。
【0015】
他の実施の態様においては、本方法はエラストマーを動的に硬化させ、2軸スクリュー押出機で同じ材料を加工するために必要な硬化剤の全重量の75%から100%未満の重量の硬化剤を混合物に加えることを含む。
【0016】
本方法では、加硫物の特性は更に自由オイル及びエクステンダーオイルを、オイル/熱可塑性ポリマーの比率で160:1 から1 :20範囲の率で、硬化前、硬化中または硬化後一箇所以上で加えることにより改質しても良い。同様に、特性は供給口で熱可塑性ポリマーを加えることで改質することができる。この方法は、熱可塑性ポリマーの一部が供給口で、及び他の一以上の部分が硬化剤を加えた後に押出機の少なくとも一つの別の箇所で加えることにより実施することも出来る。代替的に、本方法は、硬化剤を添加する前に熱可塑性ポリマーを、押出機の少なくとも一箇所で加えることで実施しても良い。
【0017】
本明細書に記載のプロセスは、全範囲の硬度、例えば、約ショアーA5からショアーD50までを含む熱可塑性加硫物製品を提供することができ、熱可塑性加硫物は2.4% から85%の熱可塑性ポリマーを含み、熱可塑性加硫物に用いられる熱可塑性ポリマーのパーセントは、熱可塑性ポリマーの重量を熱可塑性ポリマーと組成物で用いられる非油展ゴムの全重量で除し、100を掛けたものであり、熱可塑性加硫物はL/D 当り770から2,900 インターメッシュ-sec"1を用いて、500から850 RPM及び9.54から16.22 Kg/(時間 x cm2自由断面積) の供給速度及び2軸スクリュー押出機でその様な組成物を混合するのに必要な硬化剤の75%から100%を用いて生成される。このプロセスで生成される熱可塑性加硫物はオイルを吸収することにより重量が全組成物の重量の6 から200%に増す。
【発明の詳細な説明】
【0018】
熱可塑性エラストマーブレンドの動的加工は技術分野でよく知られており、熱可塑性エンジニアリング樹脂、加硫可能ゴム、硬化剤、促進剤、充填材及び補強材(例えば、黒鉛、強化用繊維及びガラス及び合成球)可塑剤、ゴム加工油、エクステンダーオイル、潤滑剤、抗酸化剤、粘着防止剤、静電防止剤、ワックス、発泡剤、色素、難燃剤、及びゴム及びプラスチック化合技術分野で知られている他の何れの加工助剤も本発明で用いることができる。その様な材料の例には、米国特許第 3,037,954,号、米国特許第 4,311,628号、米国特許第 4,594,390号, 米国特許第4,654,402号, 米国特許第5,397,839号, 米国特許第5,589,544号, 米国特許第5,656,693号, 米国特許第5,672,660号, 米国特許第5,783,631号, 米国特許第5,910,543号及び米国特許第 6,207,752号に記載されたものがある。これらの文献は、好適な熱可塑性剤、ゴム、硬化剤、添加剤、オイル、充填剤等の記載にかんして参照により本明細書に組み入れられる。
【0019】
本発明の混合プロセスは、まず、硬化剤を使用せず、熱可塑性ポリマーの交差結合可能なエラストマー、プラス熱可塑性加硫物組成物として好適であるとして知られている他の成分との緊密な、十分分散したブレンドを生成するため用いることができることは注目すべきである(上記の特許を参照願いたい)。このブレンドは、続いて適当な硬化剤と組み合わせて、例えば、同じ又は他の溶融加工装置を2度目に通すこととにより、更なるプロセスにおいて交差結合させることができる。
【0020】
本発明で用いられる熱可塑性ポリマーは固形プラスチック樹脂材料である。好ましくは樹脂は結晶質、又は半結晶質ポリマー樹脂であり、その中でもより好ましくは、示差走査熱量計により測定した結晶化度が少なくとも10パーセントある樹脂が良い。高いガラス転移温度を持つポリマー、例えば、非結晶質ガラス状エンジニアリングプラスチックはまた熱可塑性樹脂として使用可能である。これらの樹脂の溶融温度は一般にゴムの熱分解温度より低い。したがって、本発明では極性及び非極性エンジニアリング樹脂の何れも使用することができる。上記に纏めた特許の記載を参照願いたい。本明細書で用いる、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性樹脂又はエンジニアリング樹脂は、二以上の異なる熱可塑性樹脂又は、一以上の相溶化剤及び二以上の熱可塑性樹脂を含む。
【0021】
熱可塑性ポリオレフィン樹脂は、好ましくは重量平均分子量(Mw)が約50,000 から 約 600,000、数平均分子量(Mn)が約50,000 から 約200,000であるのが良い。より好ましくはこれらの樹脂はMwが約 150,000 から 約 500,000及びMnが約65,000 から 約150,000であるのが良い。分子量は、典型的には、測定される熱可塑性物質に適当な標準を用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定することができる。更に、Mnは示差屈折率(Differential Rectractive Index (DRI))を用いて測定することができ、Mwは低角度レーザー光散乱(Low Angle Laser Light Scattering (LALLS))を用いて測定することができる。ASTM D 6474はポリオレフィンの一般的な説明を提供する。合成ゴムへの適合については、またISO 11344 及びT. Sun, 「Macromolecules」、 34巻, 6812ページ (2001)を参照願いたい。
【0022】
代表的な熱可塑性エンジニアリング樹脂には、結晶可能なポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリ(フェニレン エーテル)、ポリカーボネート、スチレンーアクリロニトリル コポリマー、ポリエチレンテレフタル酸、ポリブチレン テレフタル酸、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体、ポリフェニレン 酸化物、ポリオキシメチレン、フッ素含有熱可塑性物質、及びポリウレタンを含む。上記の引用特許文献を参照願いたい。好ましい熱可塑性樹脂は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン及びこれらの混合物の様なアルファーオレフィンを重合させることにより形成される結晶化可能なポリオレフィンである。例えば、エチレンの結晶化度を持つこととが知られたポリエチレン ホモポリマー及びコポリマーが適している。アイソタクチックポリプロピレン及び、アイソタクチックプロピレンの結晶化度を持つプロピレンとエチレン又は、他のC4-C10アルファーオレフィン、又は、ジオレフィンのコポリマーが好ましい。エチレン及びプロピレン、又は、エチレン又はプロピレンと他のアルファーオレフィン、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン及びこれらの混合物とのコポリマーが適当である。これらは、ブロック、ランダム又は混合したポリマー合成に関わらず、反応器ポリプロピレンコポリマー又は衝撃ポリプロピレンコポリマーを含む。これらのホモポリマー及びコポリマーは、フィリップ触媒化反応(Phillips catalyzed reactions)、従来のチーグラー・ナッタタイプ重合、及びこれに限定されるものではないがメタロセンーアルモキサン及びメタロセンーイオン活性剤触媒反応に代表される有機金属、単部位オレフィン重合触媒反応の様な技術分野で知られた重合技術を用いて合成されうるが、これに限定されるものではない。
【0023】
更に、環式オレフィンコポリマーは、高融点を持つ熱可塑性ポリオレフィンエンジニアリング樹脂として用いることができる。例えば、米国特許第5,324,801号及び第5,621,504号を参照願いたい。好ましい環式オレフィンには、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、ノルボルネン、5−メチル−ノルボルネン、3−メチル−ノルボルネン、エチルーノルボルネン、フェニルーノルボルネン、ジメチルーノルボルネン、ジエチルーノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、メチルテトラシクロドデセン等を含む。低炭素数アルファーオレフィン、例えば、C3 - C8は、結晶化度の中断及び融点を低下をさせるためにコモノマーとして用いることができる。エチレンは環式オレフィンコポリマー中で特に好ましいコモノマーである。
【0024】
熱可塑性ポリオレフィンエンジニアリング樹脂は、通常溶融温度又は軟化温度 (Tm))が約40から約 350℃であり、好ましいポリオレフィン樹脂では約50から約170°C, さらに好ましくは約90から約170°Cである。これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は約−25から約 10°C, 好ましくは約−5から 約5℃である。より一般的には半結晶質及びガラス状極性エンジニアリング樹脂を含みより、有用な樹脂は100℃まで及びそれ以上のTgを持ち、さらに150°Cより大きいTgを持つ。これらの特徴的な温度はASTM D-3418の試験方法に従いDSCにより決定することができる。
【0025】
特に好ましい商業的に利用可能な熱可塑性ポリオレフィン樹脂は、高度に結晶質のアイソタクチック又は、シンジオタクチックポリプロピレンである。このポリプロピレンは、通常約 0.85 から 約 0.91 g/ccの密度を持ち、殆んどが約 0.90 から 約 0.91 g/ccの密度を持つアイソタクチック ポリプロピレンである。また、分別メルトフローレートを持つ高分子量及び超高分子量プロピレンも非常に好ましい。これらのプロピレン樹脂は、ASTM D-1238によるメルトフローレートが35 dg分以下、好ましくは5.0 dg/分以下、より好ましくは0.8 dg/分以下である特徴を持つ。メルトフローレートは標準圧力下でポリマーがどの程度容易に流れるかの規準となり、230℃及び2.16 kg負荷でASTM D-1238により測定される。
【0026】
本発明の組成物での使用に適しているエラストマーは、通常熱可塑性ポリマーと適合し、反応性硬化部位を持つ。この様に、熱可塑性ポリオレフィンエンジニアリング樹脂は、通常交差結合可能な非極性オレフィン系ゴムとともに用いられる。極性エンジニアリング樹脂又は熱可塑性物質は、通常交差結合可能な、極性ゴム、又は極性及び非極性ゴムの混合物と混合され、しばしば適当な相溶化剤と用いられる(上記の特許文献を参照願いたい)。硬化部位はエラストマー骨格の不可欠な部分であっても良く、又は追加される官能基により組み入れても良い。本明細書で用いられるエラストマーには二以上のエラストマーの混合物を含む。
【0027】
本発明の熱可塑性エラストマーを生成するために有用な不飽和非極性ゴムには、二以上のモノオレフィンの非極性、ゴム状コポリマーを含むモノオレフィンコポリマーゴム(EPR ゴム)を含み、好ましくは少なくとも一つのポリエン、通常はジエンと共重合している(EPDM ゴム)のが良い。
【0028】
EPDMはエチレン、プロピレン及び一以上の非共役ジエンポリマーであり、及びモノマー成分はチーグラー・ナッタ又は、メタロセン触媒反応により重合させても良い。またブルックハルト(Brookhardt)触媒系の様な他の触媒系も用いても良い。条件を十分満たす非共役ジエンには、5-エチリデン-2-ノルボルネン(5-ethylidene-2-norbornene) (ENB)、1,4-ヘキサジエン(1,4-hexadiene) (HD)、5-メチレン-2-ノルボルネン(5-methylene-2-norbornene) (MNB)、1,6-オクタジエン(1,6-octadiene)、5 -メチル- 1,4-ヘキサジエン(5 -methyl- 1,4-hexadiene)、3,7- ジメチル-l,6-オクタジエン(3,7- dimethyl-l,6-octadiene)、1,3-シクロペンタジエン(1,3-cyclopentadiene)、1,4-シクロヘキサジエン(1,4-cyclohexadiene)、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene) (DCPD)、5-ビニル-2-ノルボルネン(5-vinyl-2-norbornene) (VNB)、ジビニルベンゼン(divinyl benzene)等、又は、これらを組合せたものを含む。
【0029】
この様なエラストマーは、結晶質又は半結晶質ポリマーに起因するその物理的特性を維持しつつ、通常、硬化状態が約95%を超える熱可塑性加硫物を生成する能力を持つ(例えば、5重量%未満のゴムが適当な溶媒中で抽出されうる)。
【0030】
好ましいジエンモノマーは5-チリデン-2-ノルボルネン(5-ethylidene-2-norbornene)及び5-ビニル-2-ノルボルネン(5-vinyl-2-norbornene)である。コポリマーがエチレン、アルファーオレフィン、及びジエンモノマーから生成される場合は、コポリマーはターポリマー(terpolymer)又は、複数オレフィン又はジエンが用いられる場合にはテトラポリマー(tetrapolymer)とも呼ばれることもある。
【0031】
エラストマー性コポリマーはエチレンモノマーに由来の約20から約90モルパーセントエチレン単位を含む。好ましくはこれらのコポリマーは約40から約85モルパーセントを含み、更により好ましくは約50から約80 モルパーセントエチレン単位を含むものが良い。更にコポリマーがジエン単位を含む場合、ジエン単位は約0.1から約5モルパーセント、好ましくは約0.2から約4 モルパーセント 更に好ましくは約 1 から 約 2.5 モルパーセントで含むのが良い。コポリマーの残りの部分は通常アルファーオレフィンモノマー由来の単位から成る。したがって、コポリマーは約10から約80 モルパーセント, 好ましくは約15から約50 モルパーセント、より好ましくはアルファーオレフィンモノマーに由来の約20から約40 モルパーセントのアルファーオレフィン単位を含むのが良い。上記のモルパーセントはポリマーの全モルに基づく。
【0032】
ブチルゴムはまた熱可塑性エラストマー組成物において有用である。本明細書及び特許請求の範囲で用いられるブチルゴムの用語は、イソオレフィン及び共役ジオレフィンのコポリマー、共役ジオレフィンを持つ又は持たないイソオレフィン、ジビニル芳香族モノマーのターポリマー、その様なコポリマー及びターポリマーのハロゲン化誘導体を含む。それらのハロゲン化されたものは特に有用であり、特に臭素化ブチルゴムは有用である。本発明のオレフィンゴムの範囲内の他の好適なコポリマーは、C4-7イソモノオレフィン及びパラアルキルスチレンのコポリマー、好ましくはこれらのハロゲン化誘導体であるのが良い。コポリマー中、特にパラアルキルスチレン中では顕著に、ハロゲンの量は0.1から10重量%である。好ましい例としてはイソブチレン及びパラメチルスチレンの臭素化されたコポリマーである。これらのコポリマーは米国特許第5,162,445号により詳しく記載されている。
【0033】
エラストマー性コポリマーは約200,000より大きい、より好ましくは約 300,000から約1,000,000より大きい、更に好ましくは約400,000から約700,000より大きい重量平均分子量を持つのが良い。これらのコポリマーは、約70,000より大きい、より好ましくは約100,000 から約350,000、より好ましくは約120,000 から約300,000、及び更に好ましくは約130,000から約250,000の数平均分子量を持つのが良い。エラストマー、特に分子量範囲の高い上限のものは製造プロセス中しばしば油展され、本発明のプロセスにしたがって直接加工することができる。
【0034】
有用なエラストマー性コポリマーは、好ましくはムーニー粘度(ML(1+4@125 ℃))が約20から約450、より好ましくは約50から約400、更により好ましくは約200から約 400であるのが良く、ここにムーニー粘度は非油展ポリマーの粘度である。ある実施の態様においては、エラストマー性コポリマーの、230°C、2.16kg負荷でASTM D-1238に従い決定されたメルトフローレートは無視できる程度であり、より具体的には0.1 g/l0分未満、より好ましくは0.05 g/10分未満のMFRであるのが良い。
【0035】
加硫可能なエラストマーはまた、天然ゴム又は、スチレンの様な芳香族モノマー、又はアクリロニトリル又は3から8の炭素原子を持つアルキル置換アクリロニトリルモノマーの様な極性モノマーを持つ少なくとも一つの共役ジエンとの合成ホモポリマー、又はコポリマーであっても良い。これらのゴムはEPDMゴム又はブチルゴムより不飽和度が高い。これらのゴムは、熱及び酸化安定性を増すため、任意選択的に部分的に水素化されても良い。望ましくは、これらのゴムは、4から8炭素原子を持つ少なくとも一つの共役ジエンモノマーからの繰り返し単位を少なくとも50重量%含むのが良い。望ましくは他のコモノマーは不飽和カルボン酸、不飽和ジカルボン酸、ジカルボン酸の不飽和無水物を持つモノマーからの繰り返し単位を含み、ジビニルベンゼン、アルキルアクリレート及び3から20の炭素原子を持つ他のモノマーを含むのが良い。
【0036】
合成ゴムはコモノマーによって、非極性又は極性でありうる。合成ゴムの例には、合成ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブタジエンーアクリルニトリル ゴム等を含む。アミン官能基を持つ、カルボシキ官能基を持つ、又はエポキシ官能基を持つ合成ゴムを使用することができ、これらの例にはマレイン酸エステル化されたEPDM及びエポキシ官能基を持つ天然ゴムを含む。これらの材料は市場で購入可能である。非極性ゴムが好ましい。極性ゴムは用いることができるが、当業者に知られている様に一以上の相溶化剤が必要となることもある。
【0037】
熱可塑性加硫物の反応プロセスでは、供給口での物理的な混合を向上させるために、熱可塑性成分が、典型的にはペレットの形で溶融プロセス装置に加えられ又は供給され、他方交差結合可能なゴムは、小片、粉砕粒子、又は(しばしば充填剤又は半結晶質ポリマー粉末で覆われた)ペレットの形で加えられる。代替的に、熱可塑性物質及びゴムのいずれも溶融した形で一緒に、又は別々に直接供給しても良い。
【0038】
エラストマーを交差結合又は加硫に使用することのできる本発明の硬化物質、又は硬化剤(硬化物質プラス補助剤)は、水素化ケイ素、フェニル樹脂、過酸化物、遊離基開始剤、硫黄、金属亜鉛化合物等を含み、加硫可能なゴム、より具体的には熱可塑性加硫物を加工する技術分野の当業者に知られているどの様なものであっても良い。上記の硬化物質は、ゴムの全体の硬化状態を改善するために、しばしば開始剤、触媒等として作用する一以上の補助剤とともに用いられる。硬化物質は溶融混合押出機の供給ホッパーを含み、一以上の箇所で加えても良い。更に詳しい情報については、S. Abdou-Sabet, R. C. Puydak, 及び C. P. Rader, "Dynamically Vulcanized Thermoplastic Elastomers", Rubber Chemistry and Technology, 69巻, 3号, July- August 1996及びその中での引用文献を参照願いたい。米国特許第5,656,693号、第6,147,160号、第6,207,752号、第6,251,998号及び第6,291,587号の硬化物質系は好適である。
【0039】
使用されうる有機過酸化物の例には、di-tert- ブチル過酸化物(di-tert-butyl peroxide)、ジクミル過酸化物(dicumyl peroxide)t-ブチルクミル過酸化物(t-butylcumyl peroxide)、アルファーアルファ-bis(tert-ブチルペロキシ)ジイソプロピルベンゼン(alpha-alpha-bis(tert- butylperoxy)diisopropyl benzene)、2,5 ジンメチル 2,5-di(t-ブチルペロキシ)ヘキサン(2,5 dimethyl 2,5-di(t-butylperoxy)hexane)、1,1- di(t-ブチルペロキシ)-3(1,1- di(t-butylperoxy)-3)、3,5-トリメチルシクロヘキサン(3,5-trimethyl cyclohexane)、n-ブチル-4(n-butyl-4), 4-bis(tert-ブチルペロキシ)吉草酸塩,4-bis(tert-butylperoxy) valerate)、ベンゾイル過酸化物(benzoyl peroxide)、ラウロイル過酸化物(lauroyl peroxide)、ジラウロイル過酸化物(dilauroyl peroxide)、2,5-ジメチル-2(2,5-dimethyl-2), 5-di(tert-ブチルペロキシ)ヘキセン-3), 5-di(tert-butylperoxy) hexene-3)及び一般的に、ジアリ−ル過酸化物(diaryl peroxide)、ケトン過酸化物(ketone peroxide)、ペロキシカーボネ−ト(peroxydicarbonate)、ペロキシエステル(peroxyester)、ジアルキル過酸化物(dialkyl peroxide)、ヒドロペルオキシド(hydroperoxide)、ペロキシケタール(peroxyketal)及びこれらの組み合わせがある。Luazo(登録商標)AP(Azo Chemicalより入手可能)の様なAzo開始剤を遊離基開始剤として用いても良い。
【0040】
過酸化物に加えて、他の硬化補助物質又は補助剤(coagent)も使用することができる。その例には、トリアリルシアヌール酸塩(triallyl cyanurate)、トリアリルイソシアヌール酸塩(triallyl isocyanurate)、トリアリルリン酸塩(triallyl phosphate)、硫黄(sulfur)、N- フェニル bis-マレアミド(N- phenyl bis-maleamide)、亜鉛ジアクリレート(zinc diacrylate)、亜鉛ジメチルアクリレート(zinc dimethacrylate)、ジビニルベンゼン(divinyl benzene)、1,2ポリブタジエン(1,2 polybutadiene)、トリメチロール プロパン トリメタアクリレート(trimethylol propane trimethacrylate)、テトラメチレン グリコール ジアクリレート(tetramethylene glycol diacrylate)、三官能価アクリル酸エステル(trifunctional acrylic ester)、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート(dipentaerythritolpentacrylate)、ポリ官能価アクリレート(polyfunctional acrylate)、ポリ官能価メタアクリレート(polyfunctional methacrylates)、アクリレート(acrylate)及びメタアクリレート金属塩(methacrylate metal salts)及びオキシマー(oximer)、例えば、キノンジオキシム(quinone dioxime)がある。
【0041】
ヒドロシリル化はまた、熱可塑性加硫物の交差結合方法として開示されており、本発明のプロセスに好適である。この方法では、分子内に少なくとも2つのSiH基を持つ水素化ケイ素が、熱可塑性樹脂及びヒドロシリル化触媒の存在下で、熱可塑性エラストマーの不飽和(すなわち、少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を含む)ゴム成分の炭化−炭素多重結合と反応する。本発明のプロセスで有用な水素化シリコンには、メチル水素 ポリシロキサン(methylhydrogen polysiloxane)、メチル水素 ジメチルーシロキサンコポリマー(methylhydrogen dimethyl-siloxane copolymer)、アルキル メチル ポリシロキサン(alkyl methyl polysiloxanes)、bis(ジメチルシリル)アルカン(bis(dimethylsilyl)alkane)及び bis (ジメチルシリル)ベンゼン(bis(dimethylsilyl)benzene)を含む。更に詳しくは米国特許第5,672,660号及び第6,150,464号を参照願いたい。
【0042】
本発明のプロセスの改良された硬化を実施するために、水素化ケイ素化合物に有用なプラチナ含有触媒については、例えば、米国特許第 4,578,497号、 米国特許第 3,220,972号、及び米国特許第 2,823,218号に記載がある。これらの触媒には、塩化白金酸(chloroplatinic acid)、塩化白金酸六水和物(chloroplatinic acid hexahydrate)、塩化白金酸とsym-ジビニルテトラメチルジシロキサン(sym-divinyltetramethyldisiloxane)の複合物、ジクロローbis(トリフェニルホスフィン)プラチナ(II)(dichloro- bis(triphenylphosphine) platinum (II))、cis-ジクロロ-bis(アセトニトリル)プラチナ(II)(cis-dichloro-bis(acetonitrile) platinum (II))、ジカルボニルジクロロプラチナ(II)(dicarbonyldichloroplatinum (II))、塩化白金(platinum chloride)及び酸化白金(platinum oxide)を含む。米国特許第 3,775,452号、 米国特許第 3,814,730号、及び米国特許第 4,288,345号に記載されている様にカールシュテット(Karstedt)触媒の様なゼロ価プラチナ金属複合体は特に好ましい。
【0043】
EPDMゴムを十分に硬化させるフェノール系硬化物質は何れも本発明を実施する上で好適である。熱可塑性エラストマーにおいてEPDMを交差結合させる従来のフェノール系樹脂硬化物質の使用については、米国特許第4,311,628号に記載されている。又、米国特許第4,952,425号のジベンジルエーテルにより改質されたフェノール樹脂も参照願いたい。フェノール系硬化物質系の詳細については、更に「加硫及び加硫剤」(Vulcanization and Vulcanizing Agents)、 W. Hoffman、Palmerton Publishing Companyを参照願いたい。好適なフェノール系硬化樹脂及び臭素化フェノール硬化樹脂は、SP-1045、HRJ14247A、CPJ-352、SP-1055 及びSP-1056の商標名でSchenectady Chemicals、Inc.から市場で購入可能である。同様に機能的に同等なフェノール系硬化樹脂は他の製造者から入手しても良い。ある実施の態様においては、フェノール系硬化物質は、どの様な補助財、ポリマー供給成分及び任意選択的に充填剤、プロセスオイル等の全て又は一部と共に第一の供給口に加えられる。他の実施の態様においては、補助剤は供給口で加えられ、フェノール樹脂が供給口の下流で加えられるが、多軸スクリュー押出機の長さの46%より後でないのが好ましい。
【0044】
ゴムはその様な硬化物質を用いて部分的に、または十分に硬化させ、又は交差結合されることもある。ある実施の態様においては、ゴムは完全に又は十分硬化させるのが有利である。硬化の程度は、シクロヘキサンキサン又は沸騰したキシレン溶媒を抽出剤として用いて、熱可塑性加硫物から抽出可能なゴムの量を決定することにより測定することができる。この方法は米国特許第4,311,628号に開示されている。部分的に硬化したゴムは、溶媒中で抽出可能重量が50重量%もあることもあり、通常抽出可能重量は約15重量%より大きい。好ましい実施の態様においては、ゴムの硬化のレベルは、米国特許第5,100,947号及び米国特許第号 5,157,081号に記載の様に、23℃でシクロヘキサンにより抽出可能な重量が15重量%を超えず、他の実施の態様においては10重量%を超えず、他の実施の態様においては5重量%を超えず、他の実施の態様においては3重量%を超えない。
【0045】
組成物のエンジニアリング樹脂及び加硫可能はエラストマー、又は加硫されたエラストマーブレンドは、これらの成分の相溶化剤と組み合わされても良い。相溶化剤は、加硫されたエラストマーとエンジニアリング樹脂の間の接触面を接着させる。相溶化剤を用いない従来の加工法では、エンジニアリング樹脂と加硫されたエラストマーのブレンドは機械的伸長特性が劣り、成分間の接合が弱く、成分が薄い層に裂けることがある。相溶化剤は、一つの成分と相溶する一つのブロック、及び主要成分の内の少なくとも一つの他の成分と相溶する少なくとも一つの他のブロックを含むブロックコポリマーを含む。他の例では、主要成分の一つと相溶する骨格ポリマー、及び他の主要成分中の少なくとも一つと相溶し、又は反応するグラフト部分含む機能性ポリマーを含む。
【0046】
相溶化剤形成材料もまた使用しても良い。相溶化剤は主要成分、すなわち、エンジニアリング樹脂及び加硫可能な又は加硫されたエラストマー中に存在する官能基を含む部分の直接の相互作用により形成された、又は他のバイ(bi−)又は、マルチ(multi-)機能化合物との相互作用により形成することができる。その様な相溶化剤は技術分野で知られており、例えば、米国特許第4,455,545号及びMacro Molecular Science Chemistry、A26(8)、1211 (1989)に記載されている。エンジニアリング樹脂がポリアミドである場合、好ましい相溶化剤には、ナイロンと官能基を持つポリプロピレンの反応製品を含み、ナイロン(6)を0.1-2.0重量%のマレイン酸でグラフトされたポリプロピレンと溶融混合することで生成し、ナイロン:マレイン酸塩ポリプロピレンの比は95:5から50:50である(Appl. Polym. Sci、(18)、963 (1974) 及び Eur. Polym. J.、(26)、131 (1990)を参照願いたい)。例えば、マレイン酸オレフィンは、オレフィン系の加硫可能な、又は加硫されたエラストマーとの相溶性及びポリアミドエンジニアリング樹脂との反応性によって選択しても良い。ポリプロピレン分子にグラフトしたエポシキ基、又はオレフィンにグラフトしたオキサゾリン基の様な他の相溶化剤形成材料も、ポリアミド及びオレフィン系加硫物ブレンドの相溶化剤を作るのに適している。本発明との目的において、相溶化剤形成材料はエンジニアリング樹脂にグラフトする場合に、相溶化剤を形成するように作用する機能性オレフィン、又はグラフト及び/又はブロックコポリマーと定義される。
【0047】
相溶化剤は、組成物の全重量に基づき、通常例えば、2-20重量%、好ましくは5-15重量%、より好ましくは5-10重量%の、相溶化に適した量で存在する。
【0048】
充填剤は、炭酸カルシウム、粘度、シリカ、タルク、二酸化チタンの様な無機充填剤、又は有機黒鉛、強化用繊維又は微小球、及びこれらの何れかの組み合わせたものであっても良い。何れのタイプの黒鉛、例えば、チャネルブラック、炉黒鉛、熱黒鉛、アセチレン黒鉛、ランプ黒鉛及びこれらの組み合わせを使用することができる。
【0049】
添加剤は加硫物の生成の間は、ゴムの加硫前、その間、又はその後において又は最終組成物の生成の間に加えても良く、添加剤の合計量が添加剤を含む全熱可塑性エラストマー組成物に基づき約75重量%を超えない条件で、その一部を両方において加えても良い。更に生成されるTPVは、可塑性ペレット化のための方法として知られている方法によりペレット化することにより仕上げても良い。その様なペレットは、有利なことに元の熱可塑性物質の最低量(例えば、熱可塑性物質及び非油展ゴムの全量に基づく2.4重量%から18.6重量%未満, 又は6.7重量%未満でさえある熱可塑性ポリマー)を含むゴム粒子含有中間物として使用しうるため、追加される熱可塑性物質は、同じもの、類似のもの又は全く異なるものであっても、続く溶融ブレンドステップに加えることができる。他の添加剤又は改質剤はこの方法により同様に加えることができる。
【0050】
この様に、硬化剤及びその様な他の添加材料の間で起こる不利な相互作用を避けることができる。例えば、過酸化物硬化剤の存在下で、知られているポリプロピレンポリマーの切断、又はポリエチレンの交差結合を避けることができる。何故なら硬化性反応は、通常反応性硬化剤を少なくとも殆んど使い尽す様に行われるからである。したがって、本発明はまた、添加剤により改質された熱可塑性エラストマー組成物を生成するプロセスを含み、同プロセスはa)上記に記載の方法により熱可塑性加硫物をペレットの形で溶融ブレンドプロセスに導入し、b) 追加される熱可塑性ポリマー、熱可塑性ポリマー系改質剤、固体微粒子充填剤、エキステンダー又はプロセスオイル及び着色剤から選択されるいずれの一以上の添加剤を、改質のために要する量を加えることを含む。
【0051】
ゴムエキステンダー及びプロセスオイルは、本発明の反応性プロセスにおいて可塑剤として特に有用である。ゴムエキステンダー及びプロセスオイルは、石油分画により得られるパラフィン系、ナフテン系又は芳香族プロセスオイルの何れの種類に属するかにより、特定のASTM名称を持つ。使用されるプロセスオイルの種類は、慣例的にゴム成分と関連付けて用いられる。特定のゴムについてどの種類のオイルを用いるべきかについては当業者に知られている。使用されるゴムプロセスオイルの量は全ゴム含有量に基づき、熱可塑性加硫物中のプロセスオイルの全ゴムに対する重量比として規定することができる。この比率は約0から約4.0:1、好ましくは約0.2:1から約3.0:1, より好ましくは約 0.3:1 から 約 2.0:1で変えることができる。プロセスオイルの一部は、得られたゴム(油展ゴム)に含まれていることもしばしばある。プロセスオイルはより多く用いることができ、その結果は通常組成物の物理的強度を低減させる。コールタール及びパインタールに由来するオイルの様な、石油ベース以外のオイルも用いることができる。石油由来のゴムプロセスオイルに加え、石油留分から分離された不飽和モノマー、例えば、ポリ−アルファーオレフィンの様な、オリゴマー系及び低分子量ポリマーオイル、有機エステル及び他の知られている合成可塑剤も用いることができる。これらの組成物に適した可塑剤は米国特許第5,290,886号及び米国特許第5,397,832号に記載されている。温度、粘度制御、及びより改良された混合を行うために、プロセスオイルがスクリュー軸に沿った1箇所以上で、例えば、2−5箇所で、好ましくは2−4箇所で加えられる。オイルの添加は、硬化の前、間又はその後であっても良い。熱可塑性加硫物では、プロセスオイルはオイルの熱可塑性ポリマーに対する比率が160:1から1:20で使用されることもある。
【0052】
本発明の説明のために用いる従来技術のリング押出機を表わす図1,3,4及び5では、スクリュー(14)は互いに噛み合い(intermesh)、共回転する(co-rotate)。3+Extruder GmbHのリング押出機の12のスクリュー(1-12)は時計の面の様に円の中に固定されて配置され、同じモータのギアに連動し、同じ速度で回転する。リング押出機の仕様はWO 2004/009327 Alに記載されている。
【0053】
説明されている実施の態様では、リング押出機(10A)はモジュール式設計となっており、固定されたものであっても良い(偶数番号のバレル)バレル部分、又はバレル(21-34)、又は組み合わせバレル(奇数番号のバレル)より成る。組み合わせバレルは、追加の成分を注入し又は押出物の揮発性ガスを放出するために用いる、最上部、底部及び側面のポート(43, 45, 47, 49, 49A, 51, 51A, 53 及び53A)を持つ。
【0054】
当業者であれば、押出機は加工の必要に応じて異なるバレル長さ、及び異なる配置の固定バレル及び組み合わせバレル用いて構成しても良いことを了解するであろう。また、ポートは有用と考えられる場合に含んでも良い。又当業者はギア比率を変えることで、適当なスクリュー設計をもつスクリューの一以上のスクリューの回転を変えることができることを了解するであろう。
【0055】
本発明の考え方は12の噛み合うスクリュー(intermesh screw)を用いて説明したが、少なくとも3つの噛み合うスクリューを用いた変更は本発明に包含される。例えば、図4に関し、リング押出機は、12及び6の位置でスクリューの噛み合わないブロッキングスクリューにより2つの部分に分けられ、2つの異なる混合プロセスが押出機で同時に実施することが可能である。ブロッキングスクリューは、材料が押出機のある部分から他の部分に超えて移動することを防ぐ様に設計することもでき、静止しており、または固定し且つ回転していても良い。本発明はまた、Technovel Corp. (大阪) 及び Coperion Corp.(Ramsey, NJ)製の4つのスクリューを持つ共回転混合機を用いても実施しても良い。
【0056】
以下説明すると、ブロッキングスクリューが12及び6に位置で用いられる場合には、ゴム硬化剤及び開始剤は、装置のある部分で熱可塑性ポリマー及び任意選択的に充填剤の様な他の成分と混合し、及び装置の他の部分で交差結合可能なエラストマー及び任意選択的に可塑剤、及びゴム加工産業で知られている他の非交差結合成分と混合してもよく、そして2つの押出物は、硬化剤及び開始剤の活性化温度未満の温度に冷却しても良く、そして他のミキサー、好ましい2軸スクリュー押出機又は他のリング押出機に投入され、交差結合が始まる前に、全ての成分が完全に混合される様に連続して混合しても良い。もし温度が、成分の溶融温度以上に維持することができる場合は、押出は連続プロセスの一部であっても良い。
【0057】
連続プロセスでは、材料は2軸スクリュー押出機で混合され、溶融され、そしてリング押出機に送られて、リング押出機で更に更に加工、動的硬化、又は混合され、そして、リング押出機中で溶融され、溶融体又はペレットとして他の押出機に送られ、更に加工、又は動的硬化、又は硬化剤の混合が行われ及び/又は動的硬化が一以上の混合機で実施されることもあり、使用される少なくとも一つの混合機は、3以上のスクリュー噛み合わせを持つ押出機である。当業者に知られた他の配置及び加工装置も加工の必要に応じて用いることができる。加工は米国特許第5,158,725号に記載の様にコンピュータ制御しても良い。
【0058】
実施の態様には、同様のインターメッシュスクリューが使用されることが記載されているが、当業者は、スクリューは同じ又は異なるプロフィールを持ち、又は、他の実施の態様においては、スクリューは、押出機の第一の部分の位置(6) 及び (12), 又は、位置 (4), (8),及び(12)で、及び任意選択的に押出機のL/Dの最初の1/4でブロッキングする様に構成され、また押出機の他の部分で噛み合うように構成されていることもあり、そして硬化剤を熱可塑性ポリマーと事前混合させ、更に同一の押出工程中で熱可塑性ポリマー及び硬化剤を交差結合可能なゴムと混合させることを了知している。本明細書で用いられる押出機の最初の1/4は、押出機の供給口(18)に最も近い、押出機の混合部分の長さの1/4の部分と規定される。
【0059】
再び図3及び4について述べると、混合バレル(16),コア (15) 及びスクリュー(14)の断面はスクリュー(14) の、スクリュー(14)を持つ混合室 (17)に対する関係を示す。スクリュー(14)は、コア(15)、又はバレル (16), 又はその両方で混合させる様に構成されていることもある。通気が行われる場合は、バレル(16)と通して行われる。
【0060】
図5は、混合バレル(16)の側面図であり、供給口(18)を示しし、其処にバルク熱可塑性ポリマー及び加硫化可能なゴムをペレット、又は果粒状で導入しても良い。所望の場合は、特に複数押出機が使用される反応器において、熱可塑性ポリマーは溶融した形で加えても良い。説明では、混合バレル(16)は14のバレル部分(21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33及び34)を含み、供給バレル(21)を除き奇数部分は、追加成分を注入し、又は、押出材料の揮発性ガスを放出するために用いることのできるポート(43, 45, 47, 49, 49A, 51, 51A, 53 及び53A)を含む組み合わせバレルを含む。
【0061】
図6及び7については、スクリュー(14B及び14A)は動的交差結合に用いることができるが、このスクリューは、使用されるRPM、材料の供給速度、及び材料の物理的特性を含み、交差結合に適した温度条件及び滞留時間を作り出すせん断及び混合を提供するために設計される混合要素を含む。
【0062】
図8は、本発明の熱可塑性加硫物の原子間力顕微鏡写真を示す。熱可塑性加硫物(40)は連続相熱可塑性ポリマー(38)中の小さいゴム粒子(36)が良好に分散していることを示す。ゴム粒子(36)は熱硬化性であり十分交差結合しているが、熱可塑性ポリマー(38)中に分散していることにより機械的特性を失うことなく熱可塑性加硫物(40)が再加熱され、最終製品に造形され、スクリムが除去され、そして最終的にリサイクルすることができる。
【0063】
熱可塑性エラストマーブレンド、特に、二つの成分が溶融して一体になる混合の初期の段階で、エラストマーの大部分を含むブレンドの加工では、比較的低温で溶融するエラストマーは熱可塑性ポリマーを含む分散の連続相を含む。エラストマーの交差結合が起こる場合には、硬化したエラストマーは徐々に溶融熱可塑性ポリマーに浸漬し、そして最終的には熱可塑性ポリマーの連続相中に分散した非連続相となる。このプロセスは位相反転と呼ばれ、もし位相反転が起こらなければ、熱可塑性ポリマーは押出された加硫物の交差結合したゴムの網目に取り込まれ、生成された押出物は熱可塑性製品を製造することが不可能となる。
【0064】
従来技術の殆んどの応用場面で、位相反転に必要な熱可塑性ポリマーの実際の下限は熱可塑性ポリマー及びエラストマーの全重量の約18.6%より大きいと考えられていた。比較的軟らかい材料は、シンジオタクチックポリプロピレン、又は低い温度で溶融する半結晶質ポリプロピレン又は、ポリプロピレンコポリマーの様な比較的軟らかい熱可塑性ポリマーを用いて生成することができる。しかし、これらの材料を用いて生成される熱可塑性加硫物は、時には135℃より可也低いTm又はTgを持ち、ある使用(例えば、自動車のフード内での使用)では、使用可能な温度範囲を狭め、また粘着性を持ちそのため梱包及び取り扱いを困難にし、オイルが滲み出て製品の応用範囲が制限されることもある。
【0065】
本発明によれば、熱可塑性加硫物組成物で使用される熱可塑性ポリマーの量を減らすことにより、高いモジュラス、又は高結晶質熱可塑性ポリマーを用いて非常に軟らかい材料を生成することができ、しかも高い温度で使用可能な点で損なわれず、ペレット化後においても清潔な(染み出さない)、非粘着性の押出製品が提供されることが分かった。非常に軟らかい組成物は、オイルの熱可塑性物質に対する比率が160:1から7:1、より好ましくは113:1から13:1であるプロセスオイルを含んでも良い。
【0066】
この発見により、より流動性があり、熱可塑性加硫物のマスターバッチの使用の開発がなされた。低い溶解点及び押出が容易であるという理由のためポリプロピレンを熱可塑性ポリマーとして使用するマスターバッチを作ることが現在の慣行となっているが、高いモジュラス及び高い溶融点を持つ製品を生成する場合、マスターバッチをポリアミド又はポリエステル 熱可塑性ポリマーの様な極性エンジニアリング樹脂と混合することを望む場合には、大量の相溶化剤が必要となる。その様な製品では、ポリプロピレンが存在することにより、必要とされる特性を低下させることもあるため、本発明のプロセスによりポリプロピレンの使用を減少させることにより、改良された極性樹脂をベースとする製品の生産が可能となる。同様に、熱可塑性物質の量を減少させることにより、熱可塑性相の重合相溶化剤の量を変える必要を減らすことが可能となる。したがって、柔軟なポリオレフィン、スチレンブロックコポリマー、グラフトランダム、又はブロックコポリマー等、及び他の相溶化剤又は特性改質剤の様な、基本の熱可塑性物質よりしばしば高価な材料が、基本の熱可塑性物質の効果を改変させるために必要である場合に、本発明のプロセスを用いることによりそれらの量を減少させる。
【0067】
本発明の更なる実施の態様においては、追加の熱可塑性ポリマーが、同じ又は異なる押出機において硬化剤を加えた後に、ポリマー溶融体に加えても良い。その様な実施の態様においては、追加の熱可塑性ポリマーは相溶化剤としての能力を持つ理由で加えられ、又は最初の熱可塑性物質、例えば、ポリプロピレンと同じものであっても良く、又はそのエンジニアリング特性の故に、例えば、ポリアミド又は、ポリエステルの様な極性熱可塑性物質として加えられても良い。したがって、ある実施の態様においては、熱可塑性ポリマーは一又は複数の異なる熱可塑性材料を含み、そして更に押出中に押出機の種々の位置でその様な熱可塑性ポリマーを加えるステップを含む。加えられる熱可塑性ポリマーはペレット又は、溶融した形、又は使用条件で有用と考えられる他の形で加えられても良く、ペレット投入機又は、溶融供給押出機を用いて下流ポートに加えることもできる。加硫物の特性は、熱可塑性ポリマーの一部を供給口で加え、及び硬化剤を加えた後に押出機の更に少なくとも一つの位置で、一以上の部分を加えることで改質することができる。他の実施の態様においては、熱可塑性ポリマーはその追加の一部を、硬化剤を加える前に更に押出機の少なくとも一つの位置で加える。その様な方法を採ることにより、加工エネルギーに影響を与え、温度を低減させ、そのため硬化ゾーンの制御を向上させ、反応速度、硬化反応の効率を改善させることができ、及びその他の点でプロセスをより効率的なものにする。
【0068】
実施の態様で説明した図6について言えば、スクリュー (14B)は19の異なる種類の要素を表わす37のスクリュー要素を含む。19の異なる種類の要素は、搬送要素 (50), ニーダー (52), バックフロー要素 (54), フロースプリッター (56), 及び制限搬送要素 (58, 58A)に分類される。 搬送要素 (50)は押出された物をバレル中で前方に移動させる様に設計されている、異なるピッチの溝付き(flute)スクリューである。ニーダー(52)は押出物のフローを制限する様に働き、ニーダーは、極めて高いせん断、粒子サイズの低減及び熱生成を可能にする。バックフロー要素(54)は押出物の流れを逆流させるように溝が刻まれており、限定又はブロック要素として働く。
【0069】
制限搬送要素(58, 58A)は、広い波頂(crest)(58)を持った単一のねじ山要素又は、押出物が前方に搬送される際に押出物を混練する溝の付いたねじ山(58A)でありうる。
【0070】
制限的搬送要素は2つの異なるタイプ、すなわち、低ピッチねじ山(58)及びスロット付きの高ピッチねじ山(58A)を持つ搬送要素を含む。同様なスクリュー要素の機能は「プロセスライン」(Processing lines)として知られるCoperion Corporationの刊行物(9巻, No. 1, January 1999)に記載されている。
【0071】
スクリュー要素は、商業的にはその設計の仕様は文字及び数字で記載されている。数字及び文字の表示及びスクリュー要素はCentury Extruders, Traverse City, Mich.から入手可能である。
【0072】
S及びSKは、ある程度混合をするが、主に押出機の材料を供給ホッパー端から押出機の端まで押すために用いられる搬送要素(50)を指す。SK要素は、通常の搬送要素より自由容量を多く持つ搬送要素であり、フローゾーンの間の転移要素として用いられる。SGは、実質的な混合を行いながら、押出材料を搬送する要素(58)を指す。
【0073】
KBはニード要素(52)を指す。ニーダーは押出材料を押し進めることには差程大きな役割を持たず、押出機の上流から材料を充填する役割がある。ニーダーは一以上の点を持つ板を幾つ持っても良い。例えば、2点のニーダー板は一般に、板の最大直径に対応する2点を持つ平行四辺形を持ち、3点の板は3つの同様な最大直径点を持ち、スクリュー軸の直径に近い直径を持つ3つの対応する平らな領域を持つ。バックフロー搬送機がニーダーと連結して用いられる場合、ニーダーの回りのフローゾーンの充填は確実に行われ、充填により起きる圧力及びせん断の増大は、押出材料の温度を劇的に上昇させる傾向がある。
【0074】
スクリュー要素の名称中の番号は溝 (flute)のピッチ、要素の長さ及び要素中の板の数を指す。追加された文字はこれらのタイプの左(L)又は右(R)への方向付けを指す。表示中の「N」の文字は要素が中立であり、何れの方向への搬送活動に関与しないことを示す。
【0075】
例えば、S060R030は溝付き(flute)のピッチが右方向(R)へ060 mmであり、長さが30 mmである搬送要素(S)を指す。同様にKBS405R030は、隣接する板の先端間が45度離れており、右方向へ搬送する役割を持ち、その長さが30 mmである5つの板を持つものを言う。S040RL040 Igel 及びKBS905N030は、押出されるフローを2以上の流れに分け、左(L)及び右(R)に分割された流れを再び重ねる様に方向付ける、フロースプリット要素である。これらのフロースプリット要素は、内部及び外部の押出物流の間で交錯を起す。 S030L015は、左(L)へ30 mmのピッチ、及び15 mmの長さを持つバックフロー搬送要素を指す。Lの記号は、溝のピッチ方向が、時には逆フローと呼ばれる、押出材料を供給口(18)の方へ押す傾向があることを示す。
【0076】
バックフロー要素、ニーダー及び他の非搬送又は低搬送要素は特定のフローゾーンで、供給材料の圧力及び上流の搬送要素により生じる圧力が背圧を乗り切るまで圧力の増大を招き、押出物材料を各フローゾーンを通し押し出す。
【0077】
実施の態様の記載では、バックフロー要素が、用いられる場合は、常にフロー又は混合ゾーンの端である。バックフロー要素は堰堤を作るためそれはフローゾーンの端を規定するとみなされる。同様に、制限的搬送要素はそのフローゾーンで高圧を作り出し、その様な要素の端は、そこで圧力が前方方向への搬送要素に解放され、フローゾーンの端と考えられる。
【0078】
表示されたスクリュー プロフィールB、スクリュー (14B)は、熱可塑性物質、ゴム及びオイルのレベルの調製に大きく依存し、60又はそれ以上のショアーA硬度を持つ熱可塑性加硫物を生成するために用いられることを示したが、柔らかい(ショアーA12.4から35)熱可塑性加硫物を作るために使用された。表示されたスクリュー プロフィールA、スクリュー14Aは、50までのショアーD硬度を持つ熱可塑性加硫物を生成するために用いられることを示したが、中間の硬度の熱可塑性加硫物(ショアーA35から90)を生成するために設計された。スクリュー プロフィールA及びBの各々は明確なフローゾーン、 Bは(71-85) で、Aは(91-107)を持っている。各々のフローゾーンは特定の機能を持ち、各フローゾーンの機能はそのせん断速度、及びフローゾーンで実施されるせん断数により規定することができる。
【0079】
例えば、ニーダー及びフロースプリッター装置は、混合に加えて溶融に使用されそして押出温度を上昇させ、多数のせん断を作りだす様設計される。搬送要素は一部の混合を行うが、主に押出を進める様に設計されており、ニーダー程の多くのせん断は行わない。他の混合要素の殆んどは、その混合能力及びせん断能力において、ニーダーと搬送要素の間の何処かの位置にある。
【0080】
米国特許第4,594,390号に記載の用に、せん断速度はC x RPM/先端間隔(tip clearance)(「先端間隔」はスクリューの先端と押出室の壁の間の距離である)により規定され、そしてCは要素の円周である。換言すると、せん断速度は先端速度を先端間隔で除したものである。したがって、せん断数は「せん断速度 X 特定のフローゾーンの長さ」であり、せん断速度は特定のスクリュー プロフィールの混合に対する積極的関与に直接関係する。本発明のプロセスを実施する場合、400 sec-1 以上のせん断速度を用いるのが効果的である。
【0081】
スクリューの先端と、隣接している互いに噛み合うスクリューの溝の底の間で実質的なせん断が起こり、先行技術による計算では混合プロセスを完全に解明することはできず、本発明の目的において、特定の特性のスクリュー プロフィールの混合能力はスクリューの「メッシュ」(mesh)及び複数の噛み合うスクリューの「インターメッシュ」(intermesh)により表わされる。本明細書に記載の「メッシュ」は特定のスクリュー要素又はプロフィールの混合潜在力を言い、「インターメッシュ」は複数の噛み合うスクリューの混合潜在力を言う。
【0082】
特定のスクリュー要素により作られるせん断(shear)の数は、その要素のプロフィールにより、及びスクリュー先端と混合バレルの間で作られるせん断数は要素のプロフィールの固有の特性であり、スクリューのメッシュ及びインターメッシュを計算することは、従来技術の方法よりもスクリュー プロフィールの加工能力を決定するためのより満足の行く決定方法である。
【0083】
加工中に、スクリューが特定のRPMで回転する場合に、秒当りのインターメッシュの数、又は、インターメッシュ/秒は、材料中でで起こる混合される量として計算される。熱可塑性ポリマー及び交差結合可能なゴムの特定のブレンドの加工される混合物の量は、更に材料の供給速度、押出機スクリューのPRM、材料の粘度比及び温度、表面湿気特性、粒子の表面張力、及びフロー特性による。
【0084】
FCAはスクリュー要素、バレル表面及びコア(図3及び4中の17)の間に存在するcm2で表示される自由断面積(free cross sectional area)である。これは押出機の製造者により設定される。押出機への材料供給速度はFCAにより特定される。例えば、30mmリング押出機において販売者により用意されたFCAは26.2 cm2である。400 RPM 及び200 Kg /時間で, 材料供給速度= (200 Kg /時間) / (26.2 cm2) = 7.63 Kg / (時間 x cm2)であり、及び100 RPM 及び50 Kg/時間で, 材料供給速度= (50 Kg /時間) / (26.2cm2) = 1.91 Kg / (時間x cm2)である。
【0085】
本発明のプロセスは、同様な種類のミキサーであるが、P.H.M. Elemans, H. E.H. Meijerによる刊行物, 「ポリマーの混合及び配合」(Mixing and compounding of Polymers), 457-470ページ (Hanser, N. Y. 1994)、及びまたC. Rauwendaalによる刊行物, 「ポリマーの押出」(Polymer Extrusion), 434-439ページ (CH Verlag Munich, 1986)に記載のスケールアップのための一般的ガイドラインに従った異なるサイズのミキサーでも用いることができる。
【0086】
実際には、供給速度、スクリュー速度、バレル温度及び他の加工条件は、しばしばスケールアップされた目標とする製品特性を得るために最適正化される。スケールアップ時において同様な品質を得るために、異なるサイズの機械において、同様な滞留時間、溶融温度、スクリュー軸に沿った硬化及び溶融 プロフィールを維持することが重要である。
【0087】
同じスクリュー速度でのスケールアップ率の計算は、所望の又は目標とする押出機のFCAを持つ既知の押出機の材料供給速度に、目標とする押出機と既知の押出機の直径の比を掛けて算出することができる。これは更に、50 mmのリング押出機の供給率が400 RPMの30 mmサイズの装置のデータから計算されるれいから説明される。
【0088】
率(Rate)50 mm (Kg /時間) = (材料供給速度(Kg / (時間x Cm2)))30 mm x FCA50 mm x (50 mm /30 mm) = 7.63 Kg / (時間x Cm2) x 74.1 Cm2 x 1.67 = 944 Kg /時間となる。
【0089】
本プロセスの押出機で実施される混合を規定する重要なパラメータは、以下の様に関連する:混合レベルは、先端の数係数、ピッチ係数、長さ又はL/D係数、制限係数(restriction factor)、自由断面積(FCA)、RPM 及び供給率(Rate)の関数である。
【0090】
使用される材料とは独立に、ある特定のフローゾーンでの秒当りメッシュは制限係数に、長さ係数、ピッチ係数、先端の数係数、秒当り回転数を掛けることで知ることができる。インターメッシュ/秒の数は、結果の数に押出に使用されたスクリューの数を掛けることで得ることができる。段落[0108]及び[0109]はこれについて更に詳細に記しており、以下のメッシュの表に示す。
【0091】
本明細書の実施例の結果を再現したスクリュープロフィールは、250 から 820 メッシュ, 好ましくは 300 から 800 メッシュ, より好ましくは340 から 745メッシュを持つても良い。実施例では、使用されたスクリューは約477 から 569 メッシュ、又はL/D当り10.86 から 13.03メッシュであり、L/D当りのメッシュは設計のスクリューのメッシュをそのL/Dで除して算出された。
【0092】
本発明の目的との関係では、フローゾーン又は混合ゾーンは更に一以上の混合要素のセット又は、一以上の搬送要素のセットとして規定される。各ゾーンの末端の点は搬送要素から混合要素、またはその逆への転移により規定される。例えば、後にS060R030が続くS060R060は一つのゾーンである。しかし、SE010R030が続く場合、又は他のどの様な混合要素が続く場合でもS060R060は、二つの異なるゾーンの間が分離していることを規定する。したがって、全ての0.5 L/D混合及び搬送要素が使用される場合は、理論的に100 L/Dのスクリューは200の混合ゾーンを持ちうる。当業者は、より大きい直径の機械は0.5未満及びL/Dのスクリュー要素を使用することができることを了知するであろう。
【0093】
再び図6について言えば、スクリュープロフィールBは15フローゾーンを持つ。例えば、フローゾーン(71)は搬送ゾーンであり、深い溝のSK搬送要素及び異なるピッチを持つ標準S搬送要素が使用されても、フローゾーンの目的は材料を供給口(18)から溶融ゾーン(72)に搬送することである。溶融ゾーン(72)は5つのプレートニーダーを持つ。フローゾーン(72)の目的は、成分を分散的及び配分的に混合し、次第に小さくなる粒子の混合を促進するために熱可塑性ポリマー及び交差結合可能なゴムの溶融を開始し、動的交差結合が所望されるこれらのプロセスにおいて、混合の温度を、交差結合が開始できるまでの温度に上昇させることである。
【0094】
フローゾーン(76)は二つの5プレートニーダー及び逆フロー搬送要素を含む。逆フロー搬送要素は、フローゾーン(76)が押出中に材料で充填されることを確実にし、材料に対する圧力及びせん断を極め大きく増大させる。フローゾーン(78)は斜交平行線溝を持つ69度ピッチの6つの部分を含む特別混合要素SG690075R60を含む。
【0095】
同様に、フローゾーン(80)は同様な制限的搬送要素を多く含む。
【0096】
ある特定のスクリュー プロフィールの混合特性を数値化するために、発明者はプレート数、シアーの数、及び接触面積(例えば、制限搬送要素は短いピッチと高い滞留時間を持ち、ゾーン中の圧力を増大させる)及びその機能(例えば、逆フロー)及びバレル又は隣接スクリュー要素の間の先端の径方向間隔により決定される混合係数に基づき、あるスクリュー プロフィールで用いられる各要素に制限係数(Restriction factor)を割り当てた。
【0097】
特定のスクリュー要素に割り当てられた制限係数は以下の通りである。
【0098】
スクリュー要素(SCREW ELEMENT) 制限係数(Restriction Factor)
FC = 前進搬送(Forward Convey) (R) 1
KBFC = 混練ブロック(Kneading Block) (R) 2
LHKB = 左手混練ブロック(Left (L) Hand Kneading Block) 6/3
LHCE = (L) 搬送要素(Convey Element) 50/15
SFF =低ピッチ単一溝前進(Low pitch Single Flight Forward) 4
LHNI = 左手Igel(Left Hand Igel) 2.5
SPEF = 特別伸長フロー要素(Special Elongational Flow Element) 2.5
KBNC = 混練ブロック中立(N)搬送(Kneading Block Neutral (N) Convey) 3.5
ZME, SME, TME, (R) 3
ZME, SME, TME, (L) 4
伸長フロー要素(Elongational Flow element) 8
SFL = 低ピッチ単一溝、左手搬送 55/20
(low pitch single flight, Left Hand convey),
ZME, SME 及びTME要素はまた特徴的に「ギアタイプ」と呼ばれ、Coperion Corporation(Ramsey, NJ)の文献に記載されている高度に分配的(distributive)要素である。
【0099】
SFL, LHKB及びLHCE要素は、混合要素の後に置かれるとより高い制限的係数(各55, 6 及び50)を持つと考えられ、搬送要素の後に置かれると制限的効果(各20, 3 及び15)が小さい。一以上の左手要素が他の左手要素の隣に置かれる場合は、より高い制限的係数が割り当てられる。
【0100】
当業者は、既知のスクリュー要素は改変されることもあり、代替スクリュー要素が使用することができることを了知している。その様な要素の制限係数を精緻にするには何度か反復することが必要となるが、当業者はその様な改質スクリュー要素及び代替スクリュー要素の制限係数を決定することができ、その様な置換は、本発明の範囲内で可能である。
【0101】
図7について言うと、スクリュー プロフィールAではフローゾーンの多くはスクリュー プロフィールBで見られるフローゾーンに類似し、その違いはより多くのニーダーがスクリュー プロフィールAで使用され、フローゾーン (96), (98), (100) 及び(102)で中立(N)ニーダーが使用されることである。
【0102】
スクリュー プロフィールAはスクリュー プロフィールBよりも制限的であり、その違いは各スクリュー プロフィールにより作り出されるインターメッシュの数により数値化されうる。
【0103】
特定のスクリュープロフィールの混合値を絶対値で表わすために、スクリューをメッシュにより、すなわち、スクリュー回転数、L/D及び使用されるスクリューの数から独立したスクリューの混合潜在力で表わすのが便宜である。ある設計のスクリューのメッシュの数を、そのスクリューのL/Dで除すことにより、その設計のスクリューのL/D当りのメッシュの数を計算することができる。
【0104】
動的交差結合プロセスでは、L/D当りの17までのメッシュを持つスクリュー、170までの混合ゾーンを持つ100までのL/Dを使用することができると信じられている。交差結合をさせないでゴムを熱可塑性ポリマーと混合するために、L/D が15までの短いスクリューで、3つの少ない混合ゾーン及びL/D当り9メッシュを持つスクリューが使用できると信じられている。したがって、本発明の熱可塑性ポリマー及び交差結合可能なゴムの混合、及び少なくとも部分的な硬化は、5-100のL/Dを持ち, 3-170の混合ゾーン、及び(L/D)当り3-17のメッシュを持つスクリューを使用して実施しても良い。以下の両方の実施例における動的交差結合では(L/D)当り10-13 メッシュが使用された。
【0105】
個々の要素のメッシュの計算は、以下のメッシュの表に記載されている。表では、要素はそのタイプ、ピッチ係数、長さ係数(L/Dで与えられる)、要素上の溝の先端数、及び制限係数により表わされる。最終欄は要素の混合潜在力をメッシュにより示す。
【0106】
計算では、ピッチ係数=スクリュー直径/ピッチ、例えば、30mm / 60 mm = 0.5である。これはSG, SK 及びS要素に適用されるが、KBS, Igel, LH 要素又は、混練ブロックには適用されない。長さ係数は全ての要素に適用される。
【0107】
表中の要素の先端の数は、溝(flight)の数x要素又は、ディスクの数であり、単一溝の要素またはディスクについて1x1=1である。二重溝の要素については、先端の数は5ディスク二重溝混練ブロックに対し2x5=10、二重溝5セグメントIgelに対し、2x5=10、6セグメントSG要素に対し2x6=12である。5ディスクを持つ三重溝混練ブロックに対し、先端の数は3 x 5 = 15である。これらの実施例に従い、この計算は3溝より大きい搬送又は、混合要素に用いることができる。
【0108】
計算されたメッシュは、30mm直径のスクリューについてピッチ係数x長さ係数x先端の数x制限係数である。
【数1】

ZME, TME, SMEのような混合要素、及び伸長フロー要素は各々20, 15, 10,及び35のメッシュを持つ。示された計算式は直径、L/D、溝又は葉(lobe)の数、又は、ディスクの数に関わらず適用することができる。当業者は、特定の押出機で使用されるインターメッシュの数を決定するために、彼ら自身の計算式を使用することができる。例えば、もしスクリューが396 メッシュであり、及び6スクリューが360 RPMで使用される場合、秒当りインターメッシュは396 x 6/秒x 6 = 14,256となる。
【0109】
軟らかい熱可塑性加硫物を生成するために、45 から 55%が6-8ゾーンの搬送要素、4-5%が1-3 ゾーンのフロースプリッター、16から24 %が1-3 ゾーンの制限搬送要素、15から20%が2-4ゾーンのピッチ付きニーダー、及び1から5%が1-3ゾーンのバックフロー要素、スクリューは343から650メッシュの混合能力を持つ13から21の混合ゾーンをもつスクリュープロフィールを用いることができる。本発明で有用なスクリュー プロフィールのL/D比はL/D 36からL/D 60であるのが好ましい。
【0110】
図6に示す実施の態様においては、混合ゾーンが、順に3-7, 10-30, 1-3, 47-87, 3-7, 75-155, 3-7, 15-45, 3-6, 88-138, 4-8, 70-110, 3-6, 15-35, 及び3-6メッシュを持ち、メッシュの合計が343-650である15の混合ゾーンを持つスクリュー プロフィールを示す。
【0111】
図6に関しては、ショアーA硬度が80未満、好ましくは60未満、特に35未満である押出物を生成するために特別な有用性を持つ本発明のスクリュー プロフィールBは、
SK060R060, SK060R030, SKN60R030, S040R020, KBS405R030, S030R015, KBS405R040, KBS405L020, S060R060, S060R030, KBS405R030, KBS405R040, S030L015, S040R060, S030R030, SG690075R060, S030R030, S060R060, S040RL040 Igel, SE012.5R031.25, SE015R030, SG690075R060, SE010R030, SE012.5R031.25, SE015R030, S030R015, SK060R060, SKN60R030, S040R020, KBS405R030, KBS405R030, S030L015, S060R060, S040R040, S030RL030 Igel, S030R015, S030R060の配列を持つ。
【0112】
スクリュー プロフィールBはフローゾーン(71-85)を持つ。要素(87)は、材料がバレルの最初の位置で閉じ込められるのを防ぐために用いられるシールであり、混合はしない。搬送ゾーン(奇数番号のゾーン)は混合ゾーン(偶数番号のゾーン)と別に規定され又はそれと分離される。
【0113】
搬送要素の計算は、フローゾーン(71)及び(75)について説明するするものである。フローゾーン(71) 及び(75)は5メッシュを持つ搬送要素を含む。
【0114】
560 RPMでは、スクリューは秒当り9.3333回転し、搬送要素は5 x 9.33 = 46.7 メッシュ/秒を押出材料に提供する。もし12のスクリューが押出機使用される場合は、これらの各々の混合ゾーンにより12 x 46.7 = 560インターメッシュ/秒が提供される。
【0115】
記載された実施の態様においては、搬送フローゾーン(71), (73), (75), (77), (79), (81), (83)及び(85)は、それぞれ5, 1, 5, 5, 4, 6, 4及び5メッシュを提供する。スクリュー プロフィールBの混合ゾーンのメッシュは以下の表Iに示す。
【数2】

【0116】
スクリュー プロフィールBは、1317.5 mmの長さ,及び43.92 のL/D、 ここに混合要素のL/Dは19.75である。スクリュー プロフィールの全算出メッシュは477であり、その7%は搬送要素により提供される。スクリュー プロフィールBのL/D当りの算出メッシュ=477 (メッシュ)/43.92 (L/D) = 10.86である。硬化剤が、押出機の最初の46%内の少なくとも1箇所で熱可塑性ポリマー及び加硫エラストマーの溶融加工ブレンドに添加されたが、ブレンドの硬化を開始させるために、代替的にこのスクリュー設計の押出機に少なくとも一つの硬化物質又は硬化剤を添加し、第二の押出機に残りの硬化剤添加することにより実施することも可能であった。加硫可能なエラストマーは、その後反応性溶融プロセスにより少なくとも部分的に硬化させた。12インターメッシュスクリューを560 RPMを用いるリング押出機において、スクリュー プロフィールBは押出物に53,424 インターメッシュ/秒を与える。押出物の滞留時間が判っている場合は、使用されるインターメッシュの合計数を計算することができる。
【0117】
当業者は、各スクリューでスクリュー要素が同じでない場合は、異なるスクリュー要素を考慮に入れて計算式を修飾することを了知している。
【0118】
図7は、スクリュー プロフィールAは、その60から70%が7から9 ゾーンの搬送要素であり2-3%が1-2ゾーンのフロースプリッターであり、7から9%が3-5 ゾーンでのピッチを持たないニーダーであり、18から22%が 5-7ゾーンでのピッチを持つニーダー、及び1から3% は1-2 ゾーンでのバックフロー要素である15から19の混合ゾーンを持ち、、スクリューは385 から742 メッシュの混合潜在力を持つスクリュー プロフィールを示す。
【0119】
特にスクリュー プロフィールAは、混合ゾーンが順に3-7, 5-25, 1-3, 40-80, 3-7, 82-142, 3-7, 68-113, 3-7, 28- 68, 4-8, 50-108, 3-7, 70-110, 3-7, 15-35, 及び4-8メッシュを持ち、合計で 385-742メッシュを持つ17の混合ゾーンを持つ。
【0120】
各スクリューが742 メッシュを持ち、1200 RPMで回転する設計を持つL/D = 44の12スクリューリング押出機は、秒当り、単位L/D当りのインターメッシュの数は次の様に計算される:
742メッシュ x 1200 RPM x 12 x (1 分/60 秒) x (1/44 L/D) = 6047
スクリュー プロフィールAは次の配列を持つ:
SK060R060, SK060R030, SKN60R030, S040R020, KBS405R020, S030R015, KBS405R030, KBS405L020, S040R060, S030R030, KBS905N030, KBS405R040, S030L015, S040R060, S030R030, KBS905N030, KBS405R020, KBS405L020, S040R060, S030R030, KBS905N030, KBS405R020, S030R030, SK060R060, S030R030, KBS905N030, KBS405R020, KBS405L020, S030R030, SK060R060, S030R030, KBS405R030, KBS405R030, S030L015, S040R060, S040R040, S030RL030 Igel, S040R020, S030R015, S030R060.
スクリュー プロフィールAの17のフローゾーンについて計算した結果を以下に示す。実施の態様に記載されたスクリュー プロフィールAはフローゾーン(91-107)を含み、搬送ゾーン(奇数番号ゾーン)は混合ゾーン(偶数番号ゾーン)と別に規定され、又はそれと分離される。実施の態様では、搬送フローゾーン(91, 93, 95, 97, 99, 101, 103, 105及び107)は、各 5, 1, 5, 5, 5, 6, 6, 5, 及び6 メッシュを提供する。
【0121】
スクリュー プロフィールAを持つ混合ゾーンにより提供されるメッシュを以下の表IIに示す。
【数3】

スクリュー プロフィールAは1310 mmの長さの43.67のL/Dを持ち、混合要素のL/D は15である。スクリュー プロフィールの計算による全メッシュは569であり、内7.7%が搬送要素により提供される。スクリュー プロフィールAのL/D当りのメッシュは569 (メッシュ)/43.67 (L/D) = 13.03と計算される。再び硬化剤が、押出機の長さの最初の46%内の少なくとも1箇所で熱可塑性ポリマー及び加硫可能なエラストマーの溶融加工されたブレンドに添加されたが、代替的に、このスクリュー設計を持つ押出機に少なくとも一つの硬化物質又は、助剤(coagent)を添加し、第二の押出機に残りの硬化剤を添加し、ブレンドの硬化を開始させることもできたであろう。加硫可能なエラストマーは、その後反応溶融プロセスにより少なくとも部分的に硬化剤された。
【0122】
12のスクリューを用いるリング押出機のスクリュー プロフィールAは押出物に560 RPMで秒当り63,728のインターメッシュを与える。
【0123】
熱可塑性加硫物を生成するのに用いられる熱可塑性ポリマーの溶融温度は、例えば、シンジオタクチックポリプロピレンでは40-120°Cの低い温度であっても良く、一方ナイロンの融点は、例えば、350℃にまで高くなり得る。材料がせん断され、分散する際に、材料中で生ずる摩擦及び粘性消散は、溶融ゾーンでの材料の温度を決定する。ペレット又は果粒材料が溶融を開始するに連れて、摩擦が減少し温度が横ばいになるが、加工条件に応じて更に操作することができる。ゴムの交差結合は、存在する官能基及びゴムの化合的性質に幾らか影響されるが、通常165 から250℃の間で起こり、熱可塑性加硫物の加工で用いられるゴムの殆んどでは、交差結合は175から230°Cで起きる。
【0124】
リング押出機を用いる加工の滞留時間は、経験的に金型からの押出開始後に押出機の供給口に色素を加えて、その色が押出金型で変化する時間を測定することで決定された。ある試験では、400RPM でl00kg/時間の供給率を持つリング押出機は44秒の滞留時間を示した。加工される材料に依るが、所望の特性を得るためには、15から180秒の滞留時間が必要である。
【0125】
成分が押出中で混合する間交差結合するまでに遅れが生じ、また温度はより緩やかに伝播し、また混合はこれらのフローゾーンで起こるため、交差結合したエラストマーの大きな凝集が形成されない。すなわち、小さい、十分交差結合した粒子が高せん断下で形成され、交差結合及び熱可塑性相が、押出が進む間に交差結合した粒子が、追加されるエラストマーと結合するのを防ぐ。リング押出機は効果的な混合を提供することによりこのプロセスを促進する。以下に説明する様に、本発明のプロセスを用いることにより、加工に必要なエネルギーを減少させる一方で、交差結合を増大させることが実現できることが見出された。
【0126】
また、以下の実施例2に示す様に、混合は十分効果的であり、所望の特性を持つ製品を生成するために用いる硬化剤の量を減少させることが出来ることが見出された。実施例2では、硬化剤の量が従来技術で最適量と考えられていた量の約0.75で良く、実質的に同様な特性が実現されることが示されている。
【0127】
以上の記述及び以下の例から明らかな様に、2つ以上の熱可塑性ポリマーの混合物が、熱可塑性加硫物を形成するために用いても良く、及び2つ以上のゴムの混合物が使用されても良い。触媒は固形で又は液状で添加されても良く、液状触媒は濃縮又は希釈されたものでも良い。加硫物の特性を制御すると共に、加工中の組成物の温度及びその堅さを制御するため、オイルが1箇所又は複数の箇所で添加されても良い。
【0128】
当業者は、油展ゴムが熱可塑性加硫物を形成するために用いられる主要な選択肢であることを了知しており、したがって、ある従来技術の方法では使用された熱可塑性ポリマーのパーセントを計算する際に油展ゴム(オイルを含み)の量を用いる、そして本明細書に記載のパーセントを従来技術の参考数値と正確に比べるためには再計算が必要となることもあろう。
【0129】
2軸スクリュー押出機による従来技術の加工では異なる触媒系で異なるスクリュー プロフィールを使用するのに対し、本明細書の実施例で、加工は低スクリュー速度で最適化され、スクリュー プロフィールBは全ての触媒系で使用することができることが示された。
【0130】
実施例より、2軸スクリュー押出機を用いる場合、種々の加工プロセスでの比エネルギーは通常約0.30から0.36 Kw時間/Kgであるが、リング押出機を用いる場合は、押出機の比エネルギーはその約2/3である。通常リング押出機を用いる比エネルギーは約0.17〜0.28 Kw 時間/Kgに低減された。
【0131】
実施例に示す2軸スクリュー押出機を用いて比較をするため、300 RPMの回転速度を使用した。これらの比較例はL/D = 46.6を持つ共回転する、十分インターメッシュするタイプの、Coperion Corp(Ramsey, NJ)製の2軸スクリュー押出機により米国特許第4,594,294号に記載の方法より準備された。
【0132】
本発明を更に以下の実施例を参照して説明する。
【0133】
実施例1
この実施例では、リング押出機でスクリュー プロフィールA及びBを用いた熱可塑性加硫物の特性が検討された。スクリュー プロフィールAを用いて実験用4つの熱可塑性加硫物(thermoplastic vulcanizates (TPV))が生成され、3つのTVPがスクリュー プロフィールAを用いて生成された。各TPVでフェノール樹脂が使用された。実験用の組成物は2軸スクリュー押出機で加工された比較実施例と比較された。
【0134】
アイソタクチック ポリプロピレン(PP)が熱可塑性ポリマーとして使用された。この実施例及び以下の例では、断らない限り使用されたPPはSunoco Inc. (Chemicals)の高分子量 F008F PP、又は、ExxonMobil Chemical Co.の5341 PP又は、 Sunoco Inc. (Chemicals)の低分子量Fl 80A PP、又はこれらのポリプロピレンの2つ又は3つ全てのブレンドである。ExxonMobil Chemical Co.のEPDM V3666がゴム成分として使用された。
【0135】
この実施例及び以下の例では、断らない限り「フェノール性硬化樹脂」はSchenectady Chemicalから入手可能なフェノール樹脂HRJ 14247 Aを言う。これは1.26 phr の塩化第一スズ触媒(Stanchlor Anhydros(登録商標)名でMason Corpより入手可能)及び2 phr ZnO (Kadox(登録商標)911, Zinc Corp. of America)と合わせて使用される。
【0136】
本発明の実施例及び比較例の調剤は以下のもの(phr表示)を含んでいた:
PP = 34, EPDM ゴム(V3666, ExxonMobil Chem. Co.) = 175 (この内75 phr はエキステンダーオイル), 酸化亜鉛 = 2.0, 塩化第一スズ= 1.26, プロセスオイル = 59.1, HRJ-14247A = 8.4 (この内5.88 phrは 希釈オイル)、粘土 (Icecap K(登録商標), Burgess Pigment Co.) = 42, 及びワックス(Okerin 2709 Astor(登録商標)、Honeywell) = 3.27。
【0137】
TPVは、560 RPMで200 Kg/時間の全供給速度により生成された。組成物は100 部分ゴム(phr)当り34部分のPPを含んでいた。134.1 phr 全オイルが使用された。PP は25.4重量%を占めた。
【0138】
反応は、各TPVのバレル温度 プロフィール整定値(set point)が同じになる様に実施された。
【0139】
フェノール硬化樹脂のバレル温度の設定は,供給バレル=冷却;バレル部分2-6 = 180°C (356°F);バレル部分7-11 = 170°C (338°F); 部分12-14 = 160°C (320°F); 金型 = 200°C (392°F)であった。
【0140】
硬化剤はオイルで希釈され、追加のオイルが、硬化剤の添加の下流プロセスで加えられた。スクリュー プロフィールBでは、硬化剤が加えられる前に10%のオイルが添加され,スクリュー プロフィールAでは、硬化剤が加えられる前に25%のオイルが添加された。本発明で使用されるプロセスオイルは、断らない限りR.E. Carolのパラフィン系オイルSunpar 150Mであった。この実施例及び以下の例では、プロセスオイルは可塑剤として用いられた。低分子汚染物質、反応副生成物、残留湿気等は2箇所で排気することにより除去された。これより多い排気口も必要に応じて用いることができる。
【0141】
この実施例では、硬化剤はバレル部分23, 25 又は27で加えられ、結果を表1に示す。フェノール硬化系は、実施例7では同じL/Dで、同じ量が、2つの異なる径方向の位置で供給された。
【表1】

【0142】
表中の略記号を以下に説明する。
【0143】
LocCur は、樹脂硬化剤が加えられるバレル部分の位置である。
【0144】
Hard はASTM D2240により測定されたTPVのショアー(Sh)A 又はショアー(Sh)D単位による硬度である。
【0145】
M100は材料のモジュラスであり、M100テストは、ASTM D412 (ISO 37 タイプ2)による単位面積当たりの100%伸長の歪み抵抗を示す。
【0146】
UE% は最大伸びであり、ASTM D412 (ISO 37 タイプ 2)により、一本の材料が破断するまでに伸長することのできる距離を示す。
【0147】
WtGn% はオイル膨潤抵抗試験でサンプルが吸収するオイルの量の測定値である。この試験は米国特許第6,150,464号に示されている。試験はASTM D471及びISO 1817に基づくもので、TPVのサンプルをIRM 903 オイルに24 時間、121℃で浸すことが求められる。重量の増加パーセントが加硫物の交差結合の完全さの指標になる。重量の増加は、同じ組成を持つTPV中で、エラストマーが油展されているか、またそれの程度により変わり得るが、その数値は加硫物の相対的な交差結合量を示すものである。
【0148】
TnSet%は 残留伸び(tension set)であり、これは伸長された場合の、TPV の永久歪みの指標である。射出成形された板から切り取られた50.8 mm (2 インチ) 長さ, 2.54 mm (0.1インチ)幅及び2.03 mm (0.08インチ) 厚さのテスト見本が100%伸長され、23℃で10分保持される。その後23℃で10分間緩和された。元の見本の長さの変化が測定され、TnSet%が次の式により計算される:
TnSet% = ((L1 - Lo)/Lo) x 100, L0 は元の長さ、L1 は最終長さである。
【0149】
ESRは TPVの表面の滑らかさの指標であり、ここで数値が小さい程表面が滑らかであることを示す。ESR はFederal社製のSurfanalizerにより、製作者指示に従い測定された。
【0150】
UTS は,最大引張り強さであり、 ASTM D412 (ISO 37 タイプ2) により単位面積当りの力で示す。
【0151】
SpE はKW-時間/Kgで示す押出プロセスでの比エネルギーであり、加工効率の指標である。SpE は、押出機により消費されたKW表示の全電力を、Kg/時間による生産率で除したものである。
【0152】
Std. Dev.は標準偏差であり、数値(Xn)が平均又は中間値(Xave)からどの程度分散しているかの測定値の目安である。これは原材料供給ソース、加工サンプル、テストサンプル準備、試験の内容及びオペレータ等の偏差を含む。これは以下に示すn-1法,ここでn> 21、により計算される:
Std.DeV. = [((X1- Xave)2 + (X2- Xave)2 + (X3- Xave)2 + (Xn-Xave)2)/(n-l) ] 0.5
これらのデータは、リング押出機の加工効率は、比較実施例を作るのに使用された2軸スクリュー押出機よりも良く、スクリュー プロフィールAよりもスクリュー プロフィールBを用いて作られたTPVの特性の方が良く、バレル部分23で樹脂硬化剤が添加された場合に、スクリュー プロフィールBの特性が良いことを示す。
【0153】
スクリュー プロフィールBにより生産された押出物の硬度は比較例(比較例I)と同等である。スクリュー プロフィールBでバレル部分23で硬化剤が注入されたものは、重量の増加パーセント、残留伸び及び表面の滑らかさにおいて良い特性を示す。UTSは、幾分低下しているが、比較例のある標準的な偏差値内の範囲に近い。
【0154】
実施例2
この実施例は加工中に用いられる硬化剤の量を変えることにより特性が異なる結果となることを示す。この実施例では、プロセスオイルで希釈された樹脂が、全ての実験でバレル部分23に加えられたが、樹脂の量は変えた。実施例1に記載された材料と同じものが用いられた。この実施例の生産ではスクリュー プロフィールBが使用された。記載のTPVは黒鉛で強化された組成物であり、9.6 phrの黒鉛が用いられた。各組成物は41.5 phr PP及び142.7 phr オイルを含んでいた。
【0155】
PP は、熱可塑性物質プラス交差結合したゴムの重量に基づき、29.3重量%を占めていた。全てのサンプルは560 RPMで操作された。組成は、表2に示す様に僅かに異なっていた。
【0156】
本発明及び比較例の調剤は、以下のもの(phr表示)を含む:PP = 27.08, EPDMゴム(V3666, ExxonMobil Chem. Co.) = 175 (その内75 phr はエキステンダーオイルであった), 酸化亜鉛 = 2.0, 第一塩化スズ = 1.26, プロセスオイル= 62.4, HRJ-14247A = 7.58 ((その内5.31 phrは希釈オイルであった), 粘土(Icecap K(登録商標), Burgess Pigment Co.) = 42, ワックス(Okerin 2709 Astor(登録商標)、Honeywell) = 3.25, 黒鉛(Ampacet Co.) = 23.96 (その内14.4 phrはPP担体樹脂であった)。
データは、2軸スクリュー押出機で加工された組成(比較例)と同じ組成を必要とすると判明したものに基づき、100%硬化剤(2.2 phr)を用いて生成されたTPVは、一般的に、樹脂の量を減らし、及び樹脂の量を増やしたものを用いて生成されたTPVと比べて、通常良い物理的特性を示した。ただし、75% (1.7 phr)の受け入れ可能な量の硬化剤を用いて生成された組成物は、比較例と適度に近い特性を示した。このことは、2軸スクリュー押出機での比較例に比べて、100%硬化剤はリング押出機の混合動力学では最適な量であるが、混合が十分改善されると、硬化剤の量が25%まで減らされても十分な特性が得られることを示す。
【0157】
2.27 phr硬化剤は、比較例で使用される100%の量を表わし、2.68 phr硬化剤は、比較例で使用される118%の量を表わし、1.71 phr及び1.14 phr硬化剤は、比較例で使用されるは夫々の75%及び50%の量を表わす。
【表2】

【0158】
実施例3
この実施例では、押出機のRPMの効果を示す。調剤は実施例1の場合と同じである。この実施例では、全てのサンプルは200Kg/時間の供給率であり、使用されたPPの重量パーセントは25.4%であった。他の全てのパラメータは実験用TPVと同じであった。スクリュー プロフィールAが使用され、プロセスオイルで希釈された樹脂がバレル部分25に注入され、そして加工中に追加のオイルが硬化剤を加える上流及び下流で加えられた。表3のデータは、低いrpm、及び恐らくはその結果による滞留時間の増大が物理的特性を改善することを示している。
【表3】

【0159】
比エネルギーは840 RPMで増加したが、2軸スクリュー押出機で押出された比較例よりまだ遥かに小さいものであった。
【0160】
実施例4
この実施例では、柔らかい組成物を生成するためのリング押出機の加工特性が検討された。PP及びプロセスオイルの量を除いては実施例1と同じ調剤が用いられた。以下を参照願いたい。スクリューBの設計が用いられ、及び供給速度は150Kg/時間が維持され、オイル中のフェノール性樹脂が硬化剤として用いられ、フェノール性樹脂はバレル部分23に注入された。加工の過程で、硬化剤の添加される上流及び下流で追加のオイルが加えられた。押出機は840 RPMで運転された。
【0161】
実施例で使用されるオイルの含有量のばらつきのため、オイルの吸収による重量の増加はエラストマーの交差結合の完全さを示す意味ある指標とはならない。表4のデータは、TPVの軟らかさを考慮すると、物理的特性、残留伸び及びUTSは非常に良好であることを示す。物理的特性はPPの量が減ると悪化するが、受容できる水準を保った。
【表4】

【0162】
実施例5
この実施例では、軟らかい熱可塑性加硫物の特性が、PP及び使用されるオイルの量を変えて検討された。更に特性に対するRPMの影響を測定について検討された。スクリュー プロフィールBが使用され、供給速度が150 Kg/時間に保たれた。水素化ケイ素(SiH)硬化剤が使用され、特にDow Corningの2-5084 Silicon Hydrideが使用された。水素化ケイ素硬化剤がバレル部分23で加えられ、プラチナ触媒がバレル部分25で加えられた。プラチナ触媒はUnited Chemical TechnologyのPC085であった。実験18及び19で0.66 phr SiHが使用され、実験20で0.83 phrが使用された。各実施例でプラチナ触媒、066 phrが使用された。断らない限り、この実施例及び以下の実例で使用されたSiH硬化剤はDow Corningから入手可能なポリメチルシロキサン及びそのコポリマーであった。
【0163】
使用されたゴムはExxonMobil Chemical Co.のVistalon(登録商標) VX 1696であり、使用されたPPはSunoco Inc. (Chemicals)の D008F又は、ExxonMobil Chemical Co. のPP 5341であった。オイルはRenkertから購入したパラフィン系オイルChevron 6001Rであった。これらの発明の実施例での結果の調剤は、次のもの(phr表示)を含む:PP = 15-31, EPDM ゴム = 200 (内100 phrはエキステンダーオイルであった), 酸化亜鉛= 2.0, プラチナ触媒溶液=3.0-3.75 (オイル中0.022 重量%の金属複合物), プロセスオイル = 138.5-175.5, 水素化ケイ素= 3.01-3.76, 粘土= 42。
【0164】
水素化ケイ素硬化のためのバレル温度は実施例1の場合と同じであった。
【0165】
表5のデータは、押出機を560 RPMに維持しつつオイル及びPP含有量を変化させた影響を示す。実験19の製品は図8にその形態を示す。
【表5】

【0166】
表6は表5に示す最も軟らかいTPVに対するリング押出機RPMの影響を示す。サンプル20の特性は380, 560及び840 RPMで生成されたTPVについて決定された。
【表6】

【0167】
データは、840 RPMで混合されたTPVと比較した場合の、TPVの極めて大きいオイル膨潤の性低下、伸長特性の低下、及びM100の増加を示す、より低いRPMでの良好な特性を示す。
【0168】
実施例6
この実施例は更に熱可塑性加硫物のリング押出機の混合容量を表わす。この実施例では、同様な組成物が2軸スクリュー押出機及びリング押出機で加工された。スクリューBの設計が、本発明のリング押出機の全ての実施例で用いられ、比較実施例が実施例1で上記の様に生成された。この用いられた組成物では厳密に相関させることは出来ないが、ここに見られる差は機器による加工の差であると思われ、また各比較サンプルの組成物は同じである。
【0169】
表7に4つの組成物について比較がされ、縦欄に、各組成物を比較し、2軸スクリュー押出機(TS)のデータが左側に、及びリング押出機(RE)のデータが右側に示される。オイルスプリットは硬化前%/硬化後%として示す。使用された硬化剤は「Cure」(硬化)として示され、Nはフェノール樹脂、SiHは水素化ケイ素、ペロクス(perox)は過酸化物、”inj. pt”は供給口からのL/Dと定義される注入点を表わす。使用される過酸化物硬化剤は2,5 ジメチル-2,5-di(t- ブチルペロキシ)ヘキサン(2,5 dimethyl-2,5-di (t- butylperoxy) hexane (DBPH)であり、ここでシアヌル酸トリアリル(triallylcyanurate) (TAC)が共触媒として使用される。1TS及び1REの調剤は実施例1に記載のものと同じであり、2TS及び2REの調剤は実施例2に記載のものと同じである。3TS及び3REで使用される調剤は(phr表示): PP = 50, EPDM (VX 1696) = 200 (内100 phr はエキステンダーオイル),酸化亜鉛 = 2.0, プラチナ触媒溶液 = 2.5 (オイル中の0.022 重量%金属), プロセスオイル = 65.5, 水素化ケイ素= 2.51, 粘土(Icecap K(登録商標)) = 42を含んでいた。4TS 及び4RE (phr表示)の調剤は、PP = 46, EPDM (V3666) = 175 (内75 phr はエキステンダーオイル),酸化亜鉛= 1.94, TAC = 6.0,プロセスオイル = 56.7, DBPH = 6.5 (オイル中の50重量%の 過酸化物), 粘土(Icecap K(登録商標))= 42, ワックス(HoneywellのOkerin 2709 Astor(登録商標)) = 3.27, 安定剤(CIBA Speciality ChemicalsのIrganox(登録商標)1010) = 2, 黒鉛(49974 黒鉛濃縮物 Ampacet Co.) = 24.4 (内14.6 phrは PP担体樹脂)であった。
【0170】
使用した過酸化物硬化剤は以下のバレル温度整定値を用いた。
【0171】
フィードバレル(Feed Barrel) = 冷却、バレル2-5 = 130°C (266°F); バレル 6-11 = 142°C (268°F); バレル12-14 = 125°C (257°F); 及び金型 = 200°C (392°F).
サンプル 2 TS, 2 RE, 4 TS, 及び4 RE は、主に熱可塑性相に組み込みするために、ゴム相を交差結合させ/硬化させた後に黒鉛をペレット濃縮として導入して強化された黒鉛であった。
【表7】

【0172】
サンプル3TSでは誤って2軸スクリュー押出機で0.6重量% SiH硬化剤が使用され、サンプル3REではリング押出機で0.7重量%硬化剤が使用されたが、水素化ケイ素の量の差は結果に違いをもたらさなかった様に見られる。
【0173】
M100 及び最大抗張力(ultimate tensile strength)(UTS) はpsi/MPa,で表わし、伸長(Elongation)(UE%)及び残留伸び(Tension Set) (TnSet) は%で表わす。
【0174】
3つの異なる触媒系を用いて、TPVを生成するために同じ混合スクリューが使用されたため、データはスクリューBの設計の能力を示すものである。これらの組成物の各々が2軸スクリュー押出機を用いて生成される場合には異なるスクリューの設計が使用され、また異なるスクリュー設計が必要であった。データはまた、この実施例で提供される熱可塑性加硫物の硬度はショアーA約60から71を示しスクリューBの設計は広い用途があることを示唆しているおり、スクリュー プロフィールB用いた前の例ではショアーAの硬度は約10までの低いものである。同様な硬度は、2軸スクリュー押出機及びリング押出機で生成されたサンプルに見られたが、弾性率、引張り強さ及び残留伸びでは明確な有利な点は見られなかった。伸びは全体として、2軸スクリュー押出機で加工されたサンプルの方が僅かに良かった。オイル膨潤抵抗(Oil Swell Resistance) (WtGn%) 及び比エネルギー(SpE)はリング押出機で加工されたサンプルで極めて改善されている。
【0175】
実施例7
この実施例では、リング押出機がより高い硬度のグレードのTPVを生成するために使用された。より高い硬度のグレードのTPVを生成することは一般に、より容易であると考えられている。何故ならより多くの熱可塑性ポリマー(TP)が使用され、位相反転が容易であり、ゴムよりTPが多く使用される場合にはTPは加工工程の最初から連続相であることがあるからである。
【0176】
表8の実施例を生成する場合、硬化剤の注入にバレル位置23が用いられた。実施例27を除いてスクリュー プロフィールBが使用された。実施例27はスクリュー プロフィールAを用いた。
【0177】
バレル2−6=210°C (410 °F)であることを除き、バレルは実施例1同様加熱された。
【表8】

【0178】
樹脂硬化剤系を使用するサンプルでは、90 phrオイルで油展されたVX4779ゴムが使用されたことを除いて、全ての材料は実施例1に記載の通りのものであった。水素化ケイ素硬化のための材料は実施例4に記載のものと同じであった。過酸化物硬化剤はRhein ChemieのDBPH/PAR 100#過酸化物で、助剤はRhein ChemieのPLC/(TAC) - 50BCであり、3 phrで使用された。Ciba Specialty ChemicalsのIrganox(登録商標)1010安定剤が2 phrで使用され、ゴムは75 phrで油展されたExxonMobil Chemical Co. EPDM V3666であり、熱可塑性物質はSunoco Inc. (Chemicals)のPP F008Fであった。
【0179】
結果はリング押出機を用い、硬化後に追加のPPを溶融し混合することは可能であることを示す。そしてデータは、商業的に受け入れられる特性を持つ硬い熱可塑性加硫物は、種々の硬化及び触媒系を用いてリング押出機を使って生成することができることを裏付けている。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】図1はリング押出機中のインターメッシュスクリューを表す。
【図2】図2はリング押出機の押出末端を表す。
【図3】図3は混合バレルの断面及びリング押出機の内容を表示したものである。
【図4】図4は混合スクリューの幾つかを置き換えたブロッキングスクリューを持つリング押出機の断面を表す。
【図5】図5はリング押出機のバレルの側面図である。
【図6】図6は本発明で用いる混合要素を示すあるスクリューの構成を表す。
【図7】図7は本発明を用いる別のスクリュー構成を表す。
【図8】図8は本発明の熱可塑性加硫物の原子間力顕微鏡写真(AFM)を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性加硫物を生成する方法であって、
a) 少なくとも3つの噛み合う(intermeshing)スクリューを持つ複数スクリュー押出機で熱可塑性ポリマー及び加硫可能なエラストマーのブレンドを溶融加工し、前記スクリューは3−170の混合ゾーンを持ち、前記押出機は15−100のL/D比、及びL/D当り13−17メッシュを持つスクリュープロフィールを持ち;
b) 前記押出機の最初の46%の長さの少なくとも1箇所で、少なくとも一つの硬化剤をa)の溶融加工されたブレンドに加え、又は第二の押出機で少なくとも一つの硬化物質又は補助剤(coagent)をa)の溶融加工されたブレンドに加えて、ブレンドの硬化を開始させ;及び
c) 前記エラストマーを反応性溶融加工により少なくとも部分的に硬化させる、
ことを含む前記方法。
【請求項2】
L/D当り5−17メッシュを持つスクリュープロフィールを用いるステップを含む請求項1の方法。
【請求項3】
L/D当り9−17メッシュを持つスクリュープロフィールを用いるステップを含む請求項1の方法。
【請求項4】
前記硬化剤がプラチナ触媒を含む水素化ケイ素を含有する組成物である請求項2の方法。
【請求項5】
前記硬化剤がフェノール樹脂及び有機過酸化物組成物よりなる群から選択され、前記硬化剤は前記第一又は第二の押出機の最初の25%の長さにおいて加えられる、請求項2の方法。
【請求項6】
ステップa)の前記押出機がリング押出機であり、各スクリューが他の2つのスクリューに隣接している請求項1の方法。
【請求項7】
更に、押出材料がリング押出機の一の部分から他の部分へ超えることをブロックする様にされた2以上の非回転軸を用いて前記リング押出機を複数の混合部分に分けるステップを含む請求項6の方法。
【請求項8】
前記押出機のL/Dのある部分の材料が越えることをブロックし、また前記押出機のL/Dのある部分が噛み合う(intermesh)様に適合させた共回転(co-rotate)軸を提供するステップを含む請求項7の方法。
【請求項9】
更に、前記スクリューを100から1200PRMで回転させ、材料を前記押出機に1.91- 22.9 Kg/(時間 x cm2自由断面積)で供給するステップを含む請求項2の方法。
【請求項10】
前記スクリューを250から850PRMで回転させ、材料を前記押出機に4.78 - 16.22 Kg /(時間 x cm2自由断面積)で供給するステップを含む請求項9の方法。
【請求項11】
前記スクリューを500から850PRMで回転させ、材料を前記押出機に9.54 - 16.22 Kg /(時間 x cm2自由断面積)で供給するステップを含む請求項9の方法。
【請求項12】
前記スクリューを500から850PRMで回転させ、材料を前記押出機に9.54 - 16.22 Kg /(時間 x cm2自由断面積)で供給し、前記押出機で混合物に770 から2900インターメッシュ/(秒xL/D)を与える請求項9の方法。
【請求項13】
前記エラストマーを動的硬化させ、混合物に2軸スクリュー押出機で同じ材料を加工するのに必要な硬化剤の全重量の75から100%の重量の硬化剤を加えるステップを含む請求項2の方法。
【請求項14】
前記交差結合可能なエラストマーが、任意選択的に複数のエラストマーの混合物であり、及び更に硬化物質及び触媒、任意選択的にエラストマーを押出中に前記押出機の種々の位置で加えるステップを含む請求項9の方法。
【請求項15】
前記熱可塑性ポリマーの一部が供給口で加えられ、一以上の部分が、硬化剤が加えられた後に、押出機の更に少なくとも一つの位置で加えられる請求項9の方法。
【請求項16】
前記熱可塑性ポリマーが、一又は複数の異なる熱可塑性材料を含み、更に、その様な熱可塑性ポリマーを押出中に押出機の種々の位置で加えるステップを含む請求項9の方法。
【請求項17】
硬化剤が添加される前に、前記熱可塑性ポリマーが押出機の少なくとも一つの位置で加えられる請求項15の方法。
【請求項18】
硬化剤を加え、前記エラストマーを動的硬化させ、及び重量で前記熱可塑性加硫物の2.4%から85%含む前記熱可塑性ポリマーを提供するステップを含む請求項1の方法。
【請求項19】
前記エラストマーを動的硬化させ、重量で前記熱可塑性加硫物の2.4%から18.6%未満を含む前記熱可塑性ポリマーを提供するステップを含む請求項18の方法。
【請求項20】
前記熱可塑性ポリマーが前記熱可塑性加硫物の6.7重量%未満含む請求項19の方法。
【請求項21】
プロセスオイルが押出中に2から5箇所の位置で加えられる請求項9の方法。
【請求項22】
プロセスオイルが、硬化の前、硬化中及び硬化後に加えられる請求項9の方法。
【請求項23】
更に、オイル対熱可塑性ポリマーの重量比率が160: 1から1:20であるプロセスオイルを用いるステップを含む請求項2の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−546575(P2008−546575A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519280(P2008−519280)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/015757
【国際公開番号】WO2007/001609
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(591162239)アドバンスド エラストマー システムズ,エル.ピー. (14)
【住所又は居所原語表記】388 South Main Street,Akron,Ohio 44311−1059,United Stetes of America
【Fターム(参考)】