説明

多軸射出成形装置

【課題】 従来の一般的な射出成形装置を改造するだけで、容易且つ低コストで多軸化を実現することができる多軸射出成形装置を提供する。
【解決手段】 固定プラテン1と可動プラテン2の間に、キャビティ3に溶融樹脂8を充填する複数の射出機7を備えた多軸射出成形装置であって、固定金型4と固定プラテン1の間に、樹脂8の可塑化と射出を行なう一つのインライン式射出装置9から複数の射出機7に溶融樹脂8を供給するランナー11を形成した中間盤6を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプランジャによりキャビティへ溶融樹脂を充填する多軸射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のプランジャによりキャビティに溶融樹脂を充填する射出成形装置としては、特許文献1に記載のように、固定プラテンの背面側に複数の射出プランジャユニットを設け、これらの射出プランジャユニットに1つのインライン式射出装置(可塑化装置)から可撓性を有する樹脂供給配管を介して可塑化された樹脂を供給し、射出プランジャユニットに供給された溶融樹脂をキャビティに注入することによって製品を成形する射出成形装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−280025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明においては、複数の射出プランジャと金型に設けた複数のノズルタッチとを接触させるために、固定プラテンに複数の孔を設けなければならない。そのため、固定プラテンの必要強度を維持するために固定プラテンを専用に作製しなければならず、また成形装置全体を新たに設計し直さなければならず、コストアップになってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の一般的な射出成形装置を改造するだけで、容易且つ低コストで多軸化を実現することができる多軸射出成形装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、固定プラテンと可動プラテンの間に、キャビティに溶融樹脂を充填する複数の射出機を備えた多軸射出成形装置であって、固定金型と固定プラテンの間に、樹脂の可塑化と射出を行なう一つのインライン式射出装置から前記複数の射出機に溶融樹脂を供給するランナーを形成した中間盤を設けたものである。
【0007】
また、前記射出機には、前記中間盤からの溶融樹脂の供給を調整する樹脂供給側バルブと、前記キャビティへの溶融樹脂の供給を調整する樹脂射出側バルブを設け、これらのバルブの開閉動作と前記射出機のプランジャの動作を夫々別個に制御する制御装置を備えることができる。
【0008】
また、前記射出機は、移動自在に設置することができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、従来の一般的な射出成形装置にランナーを形成した中間盤と射出機を付加するだけで、固定プラテンを改造することなく、多軸タイプの射出成形装置を構成することができる。また、中間盤の取り付け・取り外しにより、既存の射出成形装置と多軸射出成形装置の切り替えを容易にすることができる。
【0010】
また、射出機に中間盤からの溶融樹脂の供給を遮断する樹脂供給側バルブとキャビティへの溶融樹脂の供給を遮断する樹脂射出側バルブを設けると共に、これらのバルブの開閉動作と射出機のプランジャの動作を夫々別個に制御する制御装置を備えれば、複数の射出機の同時射出で個別に圧力・流量を制御することができる。
【0011】
また、射出機を移動自在に設置すれば、製品毎に最適なランナーおよびゲートの設計が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る多軸射出成形装置の概要説明図で、(a)は型閉状態の一部断面の側面図、(b)は(a)のA−A線断面矢視図
【図2】射出機の説明図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は要部概要断面図
【図3】多軸射出成形装置の動作説明図で、(a)はインライン式射出装置による樹脂の可塑化作業、(b)はインライン式射出装置の射出による射出機への樹脂供給作業、(c)は射出機による樹脂射出作業、(d)はキャビティへの樹脂充填状態
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係る多軸射出成形装置は、図1に示すように、固定プラテン1と、可動プラテン2と、キャビティ3を形成する固定金型4及び可動金型5と、中間盤6と、複数の射出機7と、これらの射出機7に中間盤6を介して溶融樹脂8を供給するインライン式射出装置9などを備えてなる。固定金型4は中間盤6を介して固定プラテン1に取り付けられ、可動金型5は可動プラテン2に取り付けられている。なお、本発明の実施の形態では、6つの射出機7としているが、1つ以上であればよい。
【0014】
固定プラテン1には、インライン式射出装置9のノズル9aが臨む貫通孔1aが一つ設けられている。固定金型4には、各射出機7が射出した溶融樹脂8をキャビティ3に充填するためのランナー10が射出機7毎に別個独立に形成されている。また、中間盤6には、インライン式射出装置9が可塑化して射出した溶融樹脂8を射出機7毎に供給するため、ランナー11が分岐して形成されている。
【0015】
射出機7は、固定プラテン1と可動プラテン2の間に配設され、図2では、周囲をヒータ14で覆い溶融樹脂8を貯めるシリンダ15と、シリンダ15内を摺動し溶融樹脂8を射出するプランジャ16と、プランジャ16を前進・後退させる一対のポールネジ17,17と、各ポールネジ17を駆動するサーボモータ18,18と、サーボモータ18,18を固定する取付部材19を備えているが、樹脂を射出する機構を備えていれば良く、駆動形態は問わない。
【0016】
また、シリンダ15の先端には、溶融樹脂8を中間盤6に形成されたランナー11を介してシリンダ15内に供給するためのノズル状の入口15aと、シリンダ15内に貯めた溶融樹脂8を固定金型4に形成されたランナー10を介してキャビティ3に充填するためのノズル状の出口15bが形成されている。
【0017】
そして、入口15aの近傍には、入口15aを開閉する樹脂供給側バルブ21が設けられ、出口15bの近傍には、出口15bを開閉する樹脂射出側バルブ22が設けられている。更に、多軸射出成形装置は、樹脂供給側バルブ21及び樹脂射出側バルブ22の開閉動作と、プランジャ16の前進・後退動作を射出機7毎に別個に制御する制御装置(不図示)を備えている。ただし、ノズル9aと入口15aの経路間には樹脂供給側バルブ、出口15bとキャビティ間には射出側バルブが備わっていれば良い。
【0018】
射出機7は、ガイドとレールなどからなるスライダ23を介して固定プラテン1にスライド(昇降)自在に取り付けられ、油圧シリンダ24により固定金型4に対して当接・離脱することができる。射出機7を固定金型4に当接させると、シリンダ15の先端に形成した入口15aが中間盤6のランナー11に接続され、出口15bが固定金型4のランナー10に接続される。ただし、個々の射出機と一体又は個別に金型及び中間盤に当接、離脱する機構を有しておれば良い。
【0019】
また、射出機7は、固定金型4において、製品毎に最適なランナー10およびゲート(不図示)の設計が可能になるようにするため、取付部材19の形状や取付部材19を取り付けるスライダ23の組付け位置を調整することにより、移動自在に設置することができる。
【0020】
以上のように構成された本発明に係る多軸射出成形装置の動作について説明する。図3(a)に示すように、インライン式射出装置9のノズル9aが固定プラテン1の貫通孔1aに挿入され、ノズル9aが中間盤6のノズルタッチ部6aに当接し、ノズル9aと中間盤6のランナー11が接続状態になる。
【0021】
この時、インライン式射出装置9では、スクリュ9bを回転させ樹脂8を可塑化させている。また、射出機7のシリンダ15先端は、油圧シリンダ24の作動により中間盤6及び固定金型4に当接し、シリンダ15の先端に形成した入口15aが中間盤6のランナー11に接続され、出口15bが固定金型4のランナー10に接続されている。
【0022】
次いで、図3(b)に示すように、各射出機7の樹脂射出側バルブ22を閉状態にすると共に、樹脂供給側バルブ21を開状態にする。そして、インライン式射出装置9のスクリュ9bを前進させ、溶融樹脂8を中間盤6の分岐したランナー11を介して各シリンダ15内に供給する。この時、射出機7では圧力を感知しながらプランジャ16を後退させる。すると、各シリンダ15内に溶融樹脂8が充填される。
【0023】
次いで、図3(c)に示すように、各射出機7の樹脂供給側バルブ21を閉状態にすると共に、樹脂射出側バルブ22を開状態にする。そして、射出機7のプランジャ16を前進させ、溶融樹脂8を固定金型4のランナー10を介してキャビティ3に供給する。この時、射出機7ではプランジャ16の速度を制御しながらプランジャ16を前進させる。
【0024】
すると、図3(d)に示すように、各射出機7の射出動作によって固定金型4のランナー10を介してキャビティ3に溶融樹脂8が適切なタイミングで充填される。
【0025】
このように、射出機7における樹脂供給側バルブ21及び樹脂射出側バルブ22の開閉動作と、射出機7のプランジャ16を前進させるタイミングやプランジャ16の前進速度は、制御装置(不図示)により、射出機7毎に別個に制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、従来の一般的な射出成形装置に、分岐したランナーを形成した中間盤と、この中間盤のランナーを介して溶融樹脂が供給される複数の射出機を付加するだけで、固定プラテンを改造することなく、多軸タイプの射出成形装置を構成することができ、また中間盤と離脱、付加射出機の後退を行うことで、従来射出成形機としての使用もできる。
【符号の説明】
【0027】
1…固定プラテン、2…可動プラテン、3…キャビティ、4…固定金型、5…可動金型、6…中間盤、7…射出機、8…溶融樹脂、9…インライン式射出装置、10,11…ランナー、15…シリンダ、16…プランジャ、17…ポールネジ、18…サーボモータ、21…樹脂供給側バルブ、22…樹脂射出側バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プラテンと可動プラテンの間に、キャビティに溶融樹脂を充填する複数の射出機を備えた多軸射出成形装置であって、固定金型と固定プラテンの間に、樹脂の可塑化と射出を行なう一つのインライン式射出装置から前記複数の射出機に溶融樹脂を供給するランナーを形成した中間盤を設けたことを特徴とする多軸射出成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多軸射出成形装置において、前記射出機に、前記中間盤からの溶融樹脂の供給を調整する樹脂供給側バルブと、前記キャビティへの溶融樹脂の供給を調整する樹脂射出側バルブを設け、これらのバルブの開閉動作と前記射出機のプランジャの動作を夫々別個に制御する制御装置を備えたことを特徴とする多軸射出成形装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多軸射出成形装置において、前記射出機は、移動自在に設置されることを特徴とする多軸射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−183712(P2011−183712A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52522(P2010−52522)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】