説明

多重光符号ラベル処理

【課題】本発明は,ノードの数が増えてもアドレス(光符号ラベル)の数を指数関数的に増加させなくて済む光パケットマルチキャスト通信方法及びシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】上記の課題は,情報入力部(1)と,前記情報入力部に入力された1又は複数の受信器に対応する光符号ラベル(2)を生成する光符号ラベル生成部(3)と,光符号ラベル(2)を多重化するための光符号ラベル多重化部(4)と,前記1又は複数の受信器に伝える情報に関するペイロード(5)を生成するペイロード生成部(6)と,前記多重化された光符号ラベル(2)と,前記ペイロード(5)とを組み合わせ,光パケット(7)を得る光パケット生成部(8)と,前記光パケットを送信する光パケット送信部(9)とを具備する送信器(10),及びそのような送信器を具備するシステムなどにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,多重光符号ラベル処理を用いた光パケットマルチキャスト通信方法,及びそのような通信に用いられる送信器及び受信器などに関する。より詳しく説明すると,本発明は,受信者のアドレスに相当する光符号ラベルに,受信者ごとの光符号ラベルを多重化したものを用いる,光パケットマルチキャスト通信方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチキャスト通信は,1対多,又は多対多のように,ある情報が複数の受信器へと届けられる。特開2005−252815号公報には,発明の名称が,「マルチキャストMPLSノードテーブル及びマルチキャストMPLSノードテーブル検索方法」である発明が開示されている。
【0003】
この発明は,「本発明は,入力ラベル情報と該入力ラベル情報に関連付けられた行アドレス情報を格納する入力用CAMテーブルと,入力用CAMテーブルの空き行アドレス情報を格納する入力用CAMキューと,入力用CAMテーブルの行アドレス情報と該行アドレス情報に関連付けられた出力ラベル情報を格納する出力用テーブルと,を有し,当該テーブルを用いて,新規登録,追加登録,削除,検索を行う」というものである。
【0004】
しかしながら,上記の発明も,基本的には,一つの光符号ラベルを有するパケットを用いて光パケットマルチキャストを行うというものであった。このような従来の方法では,ノードの数をNとすると,すべての組み合わせに応じた光符号ラベルを用いるので,光符号ラベルを(2N−1)個要する。たとえば,ノードがノード1,ノード2及びノード3の3つの場合,(i)全てのノードに送信するためのラベル,(ii)ノード1とノード2に送信するためのラベル,(iii)ノード1とノード3に送信するためのラベル,(iv)ノード2とノード3に送信するためのラベル,(v)ノード1に送信するためのラベル,(vi)ノード2に送信するためのラベル,及び(vii)ノード3に送信するためのラベル7種類の光符号ラベルを用意する必要があった。従って,従来方法では,ノード数が増加すると,アドレス空間が2Nに従って増加することとなる。
【0005】
このため,従来の方法では,多くのアドレスを必要とするという問題がある。また,パケットの部分のうち,アドレスを示すヘッダ部分が大きくなるという問題がある。
【0006】
また,従来の光パケットマルチキャストでは,あるノードがいったん光パケットを受信した場合,自らのアドレスを除いたアドレスに相当する光符号ラベルを生成し直して,ペイロードとあわせ,光パケットを修正した後に,次のノードへと光パケットを送信していた。すなわち,光パケットを受け取ったノードでは,アドレスを書き換えるという処理を行っていた。
【0007】
たとえば,ある情報がノード1とノード3とに送信される場合,送信器ではある情報を複数のペイロードに分けて,それぞれのペイロードに上記の(iii)に相当する光符号ラベルを併せて光パケットとして,送信する。すると,たとえば,その情報をノード1が受信すると,受信した情報をノード3に送信するため,(vii)に相当する光符号ラベルを受信したペイロードと併せてノード3に送信する。このように,ノード1は,受信器及び送信器として機能するが,受信した光パケットを送信するためには,光符号ラベルを書き換えなければならない。
【特許文献1】特開2005−252815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は,ノードの数が増えてもアドレス(光符号ラベル)の数を指数関数的に増加させなくて済む光パケットマルチキャスト通信方法及びシステムを提供することを目的とする。
【0009】
本発明は,各ノードでアドレステーブルを書き換える必要のない光パケットマルチキャスト通信方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は,基本的には,光符号ラベルとして,複数の光符号ラベルを多重したものを用いることで,アドレスを増やすことなく効果的に光パケットマルチキャスト通信を行うことができるという知見に基づくものである。
【0011】
すなわち,上記の課題は,情報入力部(1)と,前記情報入力部に入力された1又は複数の受信器に対応する複数種類の符号化された光符号ラベル(2)を生成する光符号ラベル生成部(3)と,光符号ラベル(2)を多重化するための光符号ラベル多重化部(4)と,前記1又は複数の受信器に伝える情報に関するペイロード(5)を生成するペイロード生成部(6)と,前記多重化された光符号ラベル(2)と,前記ペイロード(5)とを組み合わせ,光パケット(7)を得る光パケット生成部(8)と,前記光パケットを送信する光パケット送信部(9)とを具備する送信器(10)及びそのような送信器を具備するシステムなどにより解決される。
【0012】
本発明の第1の側面は,受信器のアドレスに関する情報である光符号ラベルと,受信器に伝える情報に関するペイロードとを含む光パケットを用いた光パケットマルチキャスト通信方法であって,複数の受信器に向けて同一の情報を発信する場合,前記複数の受信器に関する光符号ラベルを生成する光符号ラベル生成工程と,前記光符号ラベル生成工程で生成された光符号ラベルを多重化する光符号ラベル多重化工程と,前記受信器に伝える情報であるペイロードを生成するペイロード生成工程と,前記光符号ラベル多重化工程で得られた多重化された光符号ラベルと,前記ペイロード生成工程で生成されたペイロードとを組み合わせ,光パケットを得る光パケット生成工程と,前記光パケット生成工程で生成した,光パケットを送信する光パケット送信工程と,前記複数の受信器が前記光パケット送信工程で送信された光パケットを受信する光パケット受信工程と,前記光パケット受信部が受信した光パケットの多重化された光符号ラベルから自分宛の光符号ラベルを抽出する作業を行い,前記光符号ラベルに自らの光符号ラベルが含まれているかどうかを分析して,受信した光パケットが自らに宛てられたものかどうか判断する宛先判断工程と,前記宛先判断工程で,前記光パケットが自らに宛てられたものであると判断した場合に,受信した光パケットを記憶する光パケット記憶工程と,を含む光パケットマルチキャスト通信方法に関する。
【0013】
この通信方法によれば,多重化した光符号ラベルを用いることで,送信パターンに応じたアドレスを作成する必要がなくなるので,アドレスの数を少なくすることができる。
【0014】
本発明の第1の側面の好ましい態様は,前記光符号ラベル多重化工程では,ある波長を用いて同一時間上に,複数の受信器に関する光符号ラベルを多重化する上記に記載の光パケットマルチキャスト通信方法である。アドレスを示すある時間領域に,複数のアドレスを示す光符号ラベルを多重化するので,ある一つのペイロードを用いても,複数のアドレスへと情報を送信することができる。すなわち,「ある波長」とは,光符号ラベルに用いられる光信号の波長を意味する。そして,「同一時間上」とは,光符号ラベルに割り当てられたヘッダ部分に相当する時間領域を意味する。
【0015】
本発明の第1の側面の好ましい態様は,前記光符号ラベル多重化工程では,複数の波長の光を用いて,波長ごとに複数の受信器に関する光符号ラベルを多重化する上記に記載の光パケットマルチキャスト通信方法である。すなわち,この態様の通信方法は,光符号ラベルのために複数の波長の光を準備し,波長ごとに光符号化を行い複数の光符号ラベルを得るというものである。
【0016】
この態様の通信方法では,複数の光符号ラベルが互に干渉しあわないように容易に制御できる。複数の波長の光を用いてアドレスを形成するので,多くのアドレス空間を確保できる。複数の受信器ごとに異なる波長を用いてもよいが,同じ波長を用いて複数の受信器のアドレスを形成してもよい。
【0017】
本発明の第2の側面は,1又は複数の受信器に伝える情報が入力される情報入力部(1)と,前記情報入力部に入力された1又は複数の受信器に対応する光符号ラベル(2)を生成する光符号ラベル生成部(3)と,前記光符号ラベル生成部で生成された光符号ラベル(2)を多重化するための光符号ラベル多重化部(4)と,前記1又は複数の受信器に伝える情報に関するペイロード(5)を生成するペイロード生成部(6)と,前記光符号ラベル多重化部(4)で得られた多重化された光符号ラベル(2)と,前記ペイロード生成部(6)で生成されたペイロード(5)とを組み合わせ,光パケット(7)を得る光パケット生成部(8)と,前記光パケット生成部が生成した,光パケットを送信する光パケット送信部(9)とを具備する光パケットマルチキャスト通信に用いられる送信器(10)に関する。
【0018】
この送信器は,多重化した光符号ラベルを用いることで,送信パターンに応じたアドレスを作成する必要がなくなるので,アドレスの数を少なくすることができる。また,光符号ラベルの多重化方法として上記した各多重化方法を適宜採用することができる。特に,同一時間に複数の光符号ラベルを多重化することで,一つのペイロードと多重化された複数の光符号ラベルとを組み合せて送受信することができる。
【0019】
本発明の第3の側面は,多重化された光符号ラベルを含む光パケットを受信する光パケット受信部(31)と,前記光パケット受信部が受信した光パケットから多重化された光符号ラベルを抽出し,前記多重化された光符号ラベルに自らが受信することが予定されている光符号ラベルが含まれているかどうかを分析する宛先判断部(32)と,を具備する光パケットマルチキャスト通信に用いられる受信器(34)に関する。
【0020】
本発明の第3の側面の好ましい態様は,前記宛先判断部が,前記多重化された光符号ラベルに自らが受信することが予定されている光符号ラベルが含まれていると判断した場合であって,前記受信した光パケットを複数の受信器に送信する場合は,前記受信した光パケットを複製して前記複数の受信器へと送信する上記に記載の受信器(34)に関する。
【0021】
本発明の第3の側面の好ましい態様は,多重化された光符号ラベルを含む光パケットを受信する光パケット受信部と,前記光パケット受信部が受信した光パケットの多重化された光符号ラベルから自分宛の光符号ラベルを抽出する作業を行い,前記光符号ラベルに自らの光符号ラベルが含まれているかどうかを分析して,受信した光パケットが自らに宛てられたものかどうか判断する宛先判断部と,前記宛先判断部が,前記光パケットが自らに宛てられたものであると判断した場合に,受信した光パケットを記憶させる光パケット記憶部と,を具備する光パケットマルチキャスト通信に用いられる受信器に関する。
【0022】
通常の光パケット通信では,光符号ラベルが多重化されていないので,多重化された光符号ラベルに自らを示す光符号ラベルが含まれているか判断する必要がない。本発明においては,同じ波長の光符号ラベルを用いる場合であっても,符号化により多重化した光符号ラベルを用いるので,上記の受信器を用いることで,効果的に光パケットマルチキャスト通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば,ノードの数が増えてもアドレス(光符号ラベル)の数を指数関数的に増加させなくて済む光パケットマルチキャスト通信方法及びシステムを提供できる。
【0024】
本発明によれば,各ノードでアドレステーブルを書き換える必要のない光パケットマルチキャスト通信方法及びシステムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
1.光パケットマルチキャスト通信に用いられる送信器
図1は,本発明の光パケットマルチキャスト通信に用いられる送信器の基本構成を示すブロック図である。図1に示されるように,本発明の送信器は,1又は複数の受信器に伝える情報が入力される情報入力部(1)と,前記情報入力部に入力された1又は複数の受信器に対応する複数種類の符号化された光符号ラベル(2)を生成する光符号ラベル生成部(3)と,前記光符号ラベル生成部で生成された光符号ラベル(2)を多重化するための光符号ラベル多重化部(4)と,前記1又は複数の受信器に伝える情報に関するペイロード(5)を生成するペイロード生成部(6)と,前記光符号ラベル多重化部(4)で得られた多重化された光符号ラベル(2)と,前記ペイロード生成部(6)で生成されたペイロード(5)とを組み合わせ,光パケット(7)を得る光パケット生成部(8)と,前記光パケット生成部が生成した,光パケットを送信する光パケット送信部(9)とを具備する光パケットマルチキャスト通信に用いられる送信器(10) である。
【0026】
1.1.情報入力部
情報入力部(1)は,1又は複数の受信器に伝える情報が入力される装置である。受信器に伝える内容として,たとえば,ビデオで撮影したリアルタイムの映像及びマイクで集音したリアルタイムの音声などがあげられる。一方,1又は複数の受信器に伝える情報には,1又は複数の受信器へ情報を伝えるためのアドレスが含まれている。すなわち,情報入力部(1)へは,受信器へのアドレス情報や,受信器へ伝える情報の内容が入力される。アドレスとして,たとえば,相手の電話番号,相手のIPアドレスなどがあげられる。
【0027】
1.2.光符号ラベル生成部
光符号ラベル生成部(3)は,情報入力部に入力された1又は複数の受信器に対応する複数種類の符号化された光符号ラベル(2)を生成するための装置である。この光符号ラベル生成部(3)は,好ましくは,複数の光符号ラベルが生成され,多重化された場合であっても分離できるような光符号ラベルを生成する。光符号ラベルは,アドレスを,光情報を用いて符号化したものである。例えば,位相情報を用いて符号化した場合,位相情報を読み出すことで復号化できる。具体的には,位相「0」が二値情報の「0」に相当し,位相「π」が二値情報の「1」に相当するようにすればよい。また,位相も「0」又は「π」だけではなく,0,π/4,π/2,及び3π/4といった複数の位相変調を用いて符号化してもよい。これまで,ペイロードを多重化して通信する光情報通信技術は知られていたので,本発明では,ペイロードを多重化するのと同様にして,ヘッダ部分(光符号ラベル)をも多重化すればよい。すなわち,光情報通信技術の分野において,光情報を多重化する方法や,多重化された光情報から必要な情報を抽出する方法は公知であるので,本発明では,そのような公知の方法を適宜採用することができる。
【0028】
光ラベルは,例えば,π,0,π,0,及びπをこの順番に含むもののように,光の位相を情報とした複数の光パルスを有するものがあげられる。このものは,例えば,0,0,0,0,及び0という光パルス列や,π,π,π,π及びπという光パルス列,などから容易に区別できる。
【0029】
図2は,光符号ラベル生成部の例を示す概念図である。図2に示されるように,光符号ラベル生成部の例として,情報入力部からの入力情報を分析するとともに,同期信号を発生する制御部(11)と,制御部(11)からの同期信号に基づいて,所定の時間間隔を有する光パルス列(13)を発生する光源(12)と,前記制御部(11)からの同期信号と,入力情報とを受けて,同期されたタイミングで所定の情報に応じた制御信号を出力する情報出力部(14)と,前記情報出力部の制御タイミング及び制御情報に従って,高原(12)から出力された光パルス列(13)のそれぞれの光パルスの位相を制御する位相変調器(15)を具備する。そして,光源(12)で生成された光パルス列を構成する各光パルスの位相を,情報出力部からの制御情報に従って変調することで,光PSK変調を行うことができる。図2では,0,0,0,0,及び0というパルス列の位相が,位相変調器によりπ,0,π,0,及びπという位相を有するパルス列(光符号ラベル2)に変調されている。
【0030】
光符号ラベル生成部は,図2に示される位相変調器からの出力信号が入力するサーキュレータと,前記サーキュレータに入力した信号が入力するFBGなどの符号化器を具備し,前記符号化器で符号化された光が前記サーキュレータから出力されるようにされてもよい。このようにすることで,光パルス列に所定の符号化処理を施すことができ,符号化のルールを把握しないものには解析できない状態とされ,セキュリティが向上することとなる。
【0031】
1.3.光符号ラベル多重化部
光符号ラベル多重化部(4)は,前記光符号ラベル生成部で生成された光符号ラベル(2)を多重化するための装置である。
【0032】
光符号ラベル多重化部(4)としては,公知の多重化部を適宜採用することができる。例えば,上記の光符号ラベル生成部を複数並列して設けておき,カプラなどで合波することにより,ある時間空間内に複数の光符号ラベルを収容できる。なお,光符号ラベルは,公知の光符号分割多重通信方法におけるペイロード情報の多重化と同様にして,同一の時間に存在しても,互に干渉しあわないよう容易に調整できるので,光符号ラベル自体も互に干渉しあわないようにしつつ多重化することができる。本発明の第1の側面の好ましい態様は,前記光符号ラベル多重化工程では,ある波長を用いて同一時間上に,複数の受信器に関する光符号ラベルを多重化する上記に記載の光パケットマルチキャスト通信方法である。アドレスを示すある時間領域に,複数のアドレスを示す光符号ラベルを多重化するので,ある一つのペイロードを用いても,複数のアドレスへと情報を送信することができる。すなわち,「ある波長」とは,光符号ラベルに用いられる光信号の波長を意味する。そして,「同一時間上」とは,光符号ラベルに割り当てられたヘッダ部分に相当する時間領域を意味する。なお,同じ波長を用いて光符号ラベルを生成しても,相関特性の良い光符号を用いることや,光閾値処理を用いることで,効果的に干渉を抑圧することができる。なお,このような符号化された光信号の干渉を抑圧する方法自体は,公知であり,公知の方法を適宜採用すればよい。
【0033】
例えば,複数の光源(12)として,異なる波長を有する光源を用いれば,より干渉が生じる事態を防止できる。すなわち,この態様の通信方法は,光符号ラベルのために複数の波長の光を準備し,波長ごとに光符号化を行い複数の光符号ラベルを得るというものである。複数の波長の光を用いて受信器のアドレスを形成することで,光符号のみならず波長の相違によりアドレスを形成でき,より多くのアドレス空間を確保できる。なお,究極的には,複数の受信器ごとに異なる波長の光を用いて,光符号ラベルを生成し,多重化した場合,光符号ラベル間の干渉を抑えて光符号ラベル化を行うことができるが,アドレスの数が限られてしまうこととなる。このため,複数の波長の光を用いて光符号ラベルを得る場合であっても,それぞれの波長の光ごとに光符号化を行うものが好ましい。
【0034】
1.4.ペイロード生成部
ペイロード生成部(6)は,前記1又は複数の受信器に伝える情報に関するペイロード(5)を生成するための装置である。ペイロード生成部として,光情報通信における様々な変調方式を採用するものを用いることができ,例えば光符号分割多重通信における公知のペイロード生成部を用いることができる。具体的には,先に説明した図2に記載されるものを適宜用いてもよい。
【0035】
1.5.光パケット生成部
光パケット生成部(8)は,前記光符号ラベル多重化部(4)で得られた多重化された光符号ラベル(2)と,前記ペイロード生成部(6)で生成されたペイロード(5)とを組み合わせ,光パケット(7)を得るための装置である。各光信号は同期信号を用いて同期が取られているので,たとえば,カプラに所定のタイミングで光符号ラベル(2)とペイロード(5)を入力して合波することで,容易に光パケットを生成できる。
【0036】
1.6.光パケット送信部
光パケット送信部(9)は,前記光パケット生成部が生成した,光パケットを送信するための装置である。光パケット送信部として,公知のものを適宜採用すればよい。光パケット生成部で生成された光パケットがそのまま伝送路に出力されてもよい。
【0037】
2.光パケットマルチキャスト通信に用いられる受信器
図3は,光パケットマルチキャスト通信に用いられる受信器の基本構成を示すブロック図である。図3に示されるように,光パケットマルチキャスト通信に用いられる受信器(34)は,基本的には,多重化された光符号ラベルを含む光パケットを受信する光パケット受信部(31)と,前記光パケット受信部が受信した光パケットから多重化された光符号ラベルを抽出し,前記多重化された光符号ラベルに自らが受信することが予定されている光符号ラベルが含まれているかどうかを分析する宛先判断部(32)と,を具備する光パケットマルチキャスト通信に用いられる受信器(34)に関する。
【0038】
本発明の第3の側面の好ましい態様は,前記宛先判断部が,前記多重化された光符号ラベルに自らが受信することが予定されている光符号ラベルが含まれていると判断した場合であって,前記受信した光パケットを複数の受信器に送信する場合は,前記受信した光パケットを複製して前記複数の受信器へと送信する上記に記載の受信器(34)に関する。このような受信器を複数具備するシステムは,受信器が分析した光符号ラベルにより光パケットのスイッチングを行い,適切な受信器へ向けて光パケットを送信することができることとなる。
【0039】
本発明の第3の側面の好ましい態様は,多重化された光符号ラベルを含む光パケットを受信する光パケット受信部(31)と,前記光パケット受信部が受信した光パケットの多重化された光符号ラベルから自分宛の光符号ラベルを抽出する作業を行い,前記光符号ラベルに自らの光符号ラベルが含まれているかどうかを分析して,受信した光パケットが自らに宛てられたものかどうか判断する宛先判断部(32)と,前記宛先判断部が,前記光パケットが自らに宛てられたものであると判断した場合に,受信した光パケットを記憶させる光パケット記憶部(33)と,を具備するものである。
【0040】
2.1.光パケット受信部
光パケット受信部(31)は,多重化された光符号ラベルを含む光パケットを受信するための装置である。多重化された光符号ラベルは,光パケットを受信する受信器がひとつの場合は,光符号ラベルは一種類のもののみを含むものであってもよい。光パケット受信部(31)として,光情報通信に用いられる公知の受信器を用いることができ,例えば,光パケットマルチキャスト通信に用いられる公知の光パケット受信器を適宜採用すればよい。
【0041】
2.2.宛先判断部
宛先判断部(32)は,前記光パケット受信部が受信した光パケットの多重化された光符号ラベルを抽出し,前記多重化された光符号ラベルに自らが受信することが予定されている光符号ラベルが含まれているかどうかを分析するための装置である。具体的には,光パケット受信部が受信した光パケットの多重化された光符号ラベルから自分宛の光符号ラベルを抽出する作業を行い,前記光符号ラベルに自らの光符号ラベルが含まれているか又は自らが受信し次の受信器へと伝えるべきものかどうかを分析するための装置である。
【0042】
宛先判断部(32)は,例えば,光パケット(7)から光符号ラベルとペイロード(5)とを分離するカプラなどの分離部を具備するものがあげられる。また,送信器において,光符号ラベルが符号化された場合は,復号器により,符号化を解いた後に,光符号ラベルを抽出すればよい。多重化された光信号から所定の情報を取り出す方法は,公知である。そこで,本発明では,多重化された光符号ラベルを分離するなどして,自らが受信することが予定される光符号ラベルがあるかどうか判断すればよい。例えば,分離した光符号ラベルが,(i)π,0,π,0,及びπ,(ii)0,0,0,0,及び0であって,自らを示す光符号ラベルがπ,π,π,π及びπである場合,宛先判断部(32)は,受取った光パケットが自分宛てではないと判断すればよい。このとき,例えば,「0」という信号が出力され,その出力信号に従って,光パケットのペイロード情報が捨てられればよい。一方,分離した光符号ラベルが(i)π,0,π,π,及びπ,(ii)0,0,π,0,及び0であって,自らを示す光符号ラベルが0,0,π,0,及び0の場合,受け取った光パルスが自らに宛てられたものであると判断すればよい。一方,この光パルスは,(i)π,0,π,π,及びπ,という光符号ラベルをアドレスとする受信器においても,自らに宛てられた光パルス又は自らが受信すべき光パルスであると判断されるので,一つの光パルスを生成するだけで,複数の受信器が受信できる光パルスを得ることができる。なお,多重化された光符号ラベルを分離することなく,自らを示す光符号ラベルが含まれるかどうか判断する方法を採用してもよい。その様な方法も,特に例を挙げるまでもなく公知である。
【0043】
2.3.光パケット記憶部
光パケット記憶部(33)は,宛先判断部が,前記光パケットが自らに宛てられたものであると判断した場合に,受信した光パケットを記憶させるための装置である。このような記憶装置は,ハードディスク,RAMなど公知の記憶装置があげられる。自らに宛てられた光パケットのペイロード部分が蓄積されるので,例えば,記憶された情報に基づいてモニタなどに情報を表示することや,音声を出力することができる。
【0044】
3.光パケットマルチキャスト通信システム
本発明の光パケットマルチキャスト通信システムは,基本的には,送信器から送信された光パケットを伝送する伝送路と,伝送路を経た光パケットが入力される受信器とを具備する。送信器及び受信器は,上述したものを適宜採用すればよい。伝送路は,公知の光ファイバなどの光情報通信路などを適宜採用することができる。
【0045】
4.光パケットマルチキャスト通信方法
本発明の光パケットマルチキャスト通信方法は,基本的には,受信器のアドレスに関する情報である光符号ラベルと,受信器に伝える情報に関するペイロードとを含む光パケットを用いた光パケットマルチキャスト通信方法であって,複数の受信器に向けて同一の情報を発信する場合,前記複数の受信器に関する光符号ラベルを生成する光符号ラベル生成工程と,前記光符号ラベル生成工程で生成された光符号ラベルを多重化する光符号ラベル多重化工程と,前記受信器に伝える情報であるペイロードを生成するペイロード生成工程と,前記光符号ラベル多重化工程で得られた多重化された光符号ラベルと,前記ペイロード生成工程で生成されたペイロードとを組み合わせ,光パケットを得る光パケット生成工程と,前記光パケット生成工程で生成した,光パケットを送信する光パケット送信工程と,前記複数の受信器が前記光パケット送信工程で送信された光パケットを受信する光パケット受信工程と,前記光パケット受信部が受信した光パケットの多重化された光符号ラベルから自分宛の光符号ラベルを抽出する作業を行い,前記光符号ラベルに自らが受信すべき光符号ラベルが含まれているかどうかを分析して,受信した光パケットが自らが受信すべきものかどうか判断する宛先判断工程と,を含む光パケットマルチキャスト通信方法である。なお,前記宛先判断工程で,前記光パケットが自ら受信すべきものであると判断した場合に,受信した光パケットを記憶する光パケット記憶工程を具備してもよく,また,前記宛先判断工程で,複数の他の受信器へ光パケットを送信すべきと判断した場合に,光パケットを複製して,それらの受信器へ光パケットを送信するようにしてもよい。
【0046】
以下,例えば,受信器(A),受信器(B)及び受信器(C)に情報(I)を送信する場合に基づいて,本発明の光パケットマルチキャスト通信方法を具体的に説明する。なお,光パケットマルチキャスト通信システムには,上記の3つの受信器のほか,受信器(D)及び受信器(E)も存在するとする。
【0047】
すなわち,このシステムでは,受信器が5つ存在するので,ある情報を送信するパターンは,5個全てに送信するものから,いずれか一つのみに送信するものまで31通りのパターンがある。従って,従来の光パケットマルチキャスト通信方法では,31通りのアドレスを割り当てて,様々な送信パターンに対応していた。一方,本発明においては,光符号アドレスを多重化するので,5個で済む。
【0048】
情報入力部へ,受信器に関する情報及び受信器に伝える内容に関する情報が入力される。光符号ラベル生成部(3)は,受信器(A),受信器(B)及び受信器(C)に関する光符号ラベルを生成する。この際に,全ての信号は同期が取られており,所定のタイミングで処理を行うことができるようにされている。
【0049】
受信器(A),受信器(B)及び受信器(C)を示す光符号ラベルは,多重化され,所定の時間領域内(例えば,同一時間領域)に存在することとなる。
【0050】
一方,公知の光パケットマルチキャスト通信方法と同様に,前記受信器に伝える情報であるペイロードが生成される。そして,光パケットマルチキャスト通信方法において,光符号ラベルとペイロードとが組み合せられるように,多重化された光符号ラベルと,ペイロードとが組み合わされ,光パケットが得られる。
【0051】
得られた光パケットは,送信器から送信される。送信された光パケットは,伝送路を介して,複数の受信器に到達する。受信器は,光パケットを受信する。受信器は,受信した光パケットの多重化された光符号ラベルから光符号ラベルを抽出する作業を行い,前記光符号ラベルに自らの光符号ラベル又は自らが受信すべき光符号ラベルが含まれているかどうかを分析する。そして,光パケットが自らに宛てられたものであると判断した場合に,受信した光パケットを記憶する。記憶された光パケットのペイロードは適宜蓄積されて,モニタやスピーカなどから出力される。一方,自らが受信すべき光符号ラベルが含まれていると判断した場合であって,他の複数の受信器へ光パケットを送信すべき場合は,スイッチングを行い,光パケットを光カプラなどで分岐(複製)して,次の受信器へと光パケットを送信する。そして,光パケットを受信した次の受信器は,先の受信器と同様の処理を行う。すなわち,光パケットが自らに宛てられたものである場合は,光パケットのペイロード情報を抽出する。また,光パケットが,自らが受信して次の受信器に伝えるものである場合は,適宜光パケットを複製して,1又は複数の受信器へ向けて光パケットを送信する。一方,自らが受信すべきでない光パケットについては,以後の処理を行わず,光パケットを廃棄する。いずれにせよ,光パケットの光符号ラベルには,複数のアドレスが多重化されているので,一つの光パケットを用いても,複数のアドレスへとペイロード情報を伝えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は,光パケットマルチキャスト通信方法,及びそのような通信方法に用いられる装置を提供するものであるから,光情報通信などの分野で利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は,本発明の光パケットマルチキャスト通信に用いられる送信器の基本構成を示すブロック図である。
【図2】図2は,光符号ラベル生成部の例を示す概念図である。
【図3】図3は,光パケットマルチキャスト通信に用いられる受信器の基本構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1 情報入力部
2 光ラベル
3 光符号ラベル生成部
4 光符号ラベル多重化部
5 ペイロード
6 ペイロード生成部
7 光パケット
8 光パケット生成部
9 光パケット送信部
10 送信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信器のアドレスに関する情報である光符号ラベルと,受信器に伝える情報に関するペイロードとを含む光パケットを用いた光パケットマルチキャスト通信方法であって,
複数の受信器に向けて同一の情報を発信する場合,前記複数の受信器に関する複数種類の符号化された光符号ラベルを生成する光符号ラベル生成工程と,
前記光符号ラベル生成工程で生成された光符号ラベルを多重化する光符号ラベル多重化工程と,
前記受信器に伝える情報であるペイロードを生成するペイロード生成工程と,
前記光符号ラベル多重化工程で得られた多重化された光符号ラベルと,前記ペイロード生成工程で生成されたペイロードとを組み合わせ,光パケットを得る光パケット生成工程と,
前記光パケット生成工程で生成した,光パケットを送信する光パケット送信工程と,
前記複数の受信器が前記光パケット送信工程で送信された光パケットを受信する光パケット受信工程と,
前記光パケット受信部が受信した光パケットの多重化された光符号ラベルから自分宛の光符号ラベルを抽出する作業を行い,前記光符号ラベルに自らの光符号ラベルが含まれているかどうかを分析して,受信した光パケットが自らに宛てられたものかどうか判断する宛先判断工程と,
前記宛先判断工程で,前記光パケットが自らに宛てられたものであると判断した場合に,受信した光パケットを記憶する光パケット記憶工程と,
を含む光パケットマルチキャスト通信方法。
【請求項2】
前記光符号ラベル多重化工程では,ある波長を用いて同一時間上に,複数の受信器に関する光符号ラベルを多重化する請求項1に記載の光パケットマルチキャスト通信方法。
【請求項3】
前記光符号ラベル多重化工程では,複数の波長の光を用いて,波長ごとに複数の受信器に関する光符号ラベルを多重化する請求項1に記載の光パケットマルチキャスト通信方法。
【請求項4】
1又は複数の受信器に伝える情報が入力される情報入力部(1)と,
前記情報入力部に入力された1又は複数の受信器に対応する光符号ラベル(2)を生成する光符号ラベル生成部(3)と,
前記光符号ラベル生成部で生成された光符号ラベル(2)を多重化するための光符号ラベル多重化部(4)と,
前記1又は複数の受信器に伝える情報に関するペイロード(5)を生成するペイロード生成部(6)と,
前記光符号ラベル多重化部(4)で得られた多重化された光符号ラベル(2)と,前記ペイロード生成部(6)で生成されたペイロード(5)とを組み合わせ,光パケット(7)を得る光パケット生成部(8)と,
前記光パケット生成部が生成した,光パケットを送信する光パケット送信部(9)と
を具備する光パケットマルチキャスト通信に用いられる送信器(10)。
【請求項5】
多重化された光符号ラベルを含む光パケットを受信する光パケット受信部(31)と,
前記光パケット受信部が受信した光パケットから多重化された光符号ラベルを抽出し,前記多重化された光符号ラベルに自らが受信することが予定されている光符号ラベルが含まれているかどうかを分析する宛先判断部(32)と,
を具備する光パケットマルチキャスト通信に用いられる受信器(34)。
【請求項6】
前記宛先判断部が,前記多重化された光符号ラベルに自らが受信することが予定されている光符号ラベルが含まれていると判断した場合であって,前記受信した光パケットを複数の受信器に送信する場合は,前記受信した光パケットを複製して前記複数の受信器へと送信する請求項5に記載の受信器(34)。
【請求項7】
多重化された光符号ラベルを含む光パケットを受信する光パケット受信部(31)と,
前記光パケット受信部が受信した光パケットの多重化された光符号ラベルから自分宛の光符号ラベルを抽出する作業を行い,前記光符号ラベルに自らの光符号ラベルが含まれているかどうかを分析して,受信した光パケットが自らに宛てられたものかどうか判断する宛先判断部(32)と,
前記宛先判断部が,前記光パケットが自らに宛てられたものであると判断した場合に,受信した光パケットを記憶させる光パケット記憶部(33)と,
を具備する光パケットマルチキャスト通信に用いられる受信器(34)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−177720(P2008−177720A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7662(P2007−7662)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】