説明

大型未加硫タイヤの一時保管方法および装置

【課題】 一時保管時における未加硫タイヤMの変形を防止することでタイヤ品質を向上させる。
【解決手段】 シェーピング機構Sが装着された横置き状態の未加硫タイヤMを一時保管する際、下側ショルダー部Hを下方から支持する外側支持体39を流体シリンダ43により上昇させることによって、異なるサイズの未加硫タイヤMであっても、両ビード部Bの中間位置CとトレッドセンターRとを同一高さに保持するようにしたので、トレッドTが大重量であっても未加硫タイヤMが垂れ下がって変形するようなことはなく、規定形状に保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建設車両等に装着される大型タイヤの未加硫タイヤを一時的に保管する一時保管方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設車両等に装着される大型タイヤは、特許文献1に記載のように、タイヤ成形ドラムを用いて未加硫タイヤを成形した後、該未加硫タイヤをタイヤ成形ドラムから取り出し、次に、シェーピング機構によって未加硫タイヤの両ビード部を半径方向内側から把持しながら、該未加硫タイヤ内に内圧を充填してその形状を整えた後、該シェーピング機構を未加硫タイヤと共に加硫金型まで搬送して該加硫金型内に収納し、その後、加硫金型により前記未加硫タイヤを加硫して製造することが多い。
【特許文献1】特開2001−30254号公報
【0003】
ここで、前述のような大型の未加硫タイヤは加硫に長時間(長い場合には数十時間)が必要なため、加硫作業中に成形済の未加硫タイヤ、シェーピング機構からなる組立体が加硫金型に搬入されると、加硫装置が空となるまでの間、該組立体は加硫金型近傍に設置された一時保管装置において横置き状態で一時保管される。
【0004】
そして、このような一時保管装置としては、例えば、特許文献2の従来技術で説明したものを応用し、固定フレームと、該固定フレームの中央部に取付けられ、前記シェーピング機構を下方から支持する中央支持体と、中央支持体を囲むよう設けられ、未加硫タイヤの下側サイドウォール部、ショルダー部を下方から支持する外側支持体とを備えたものを用いることができる。
【特許文献2】特開平11−123773号公報
【0005】
ここで、前述した加硫金型、一時保管装置には、近年の多品種少量生産の要請から、種々のサイズの組立体が搬入されるが、最大サイズの組立体が搬入されたときでも未加硫タイヤに傷等が付与されないよう、通常、前述の一時保管装置は最大サイズの組立体に合わせて製作されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、最大サイズより小さなサイズの組立体が一時保管装置に搬入されたときには、外側支持体と未加硫タイヤのショルダー部との間に間隙が発生し、しかも、トレッドはゴムゲージが大きく大重量であるため、該未加硫タイヤはトレッドの自重によりショルダー部が外側支持体に接触するまで垂れ下がるよう変形する一方、シェーピング機構はその変形の影響を受けて中央支持体から浮き上がるのである。
【0007】
そして、このように変形した状態のままで組立体を加硫金型に搬入すると、未加硫タイヤと加硫金型のキャビティの形状に不一致が生じ、この結果、加硫時におけるゴム流れが不均一となって、加硫済みタイヤにトレッドゲージの不均一、トレッドへのエア入り、ベア等が発生してタイヤ品質が低下してしまうという課題がある。
【0008】
この発明は、一時保管時における未加硫タイヤの変形を防止することでタイヤ品質を向上させることができる大型未加硫タイヤの一時保管方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、第1に、シェーピング機構により形状が整えられた横置き状態の大型未加硫タイヤを一時保管する際、固定フレームの中央部に取付けられた中央支持体により前記シェーピング機構を下方から支持する一方、中央支持体を囲む外側支持体により、大型未加硫タイヤの少なくとも下側ショルダー部を下方から支持し、かつ、該外側支持体を昇降手段により昇降させることで、両ビード部の中間位置とトレッドセンターとを同一高さに保持するようにした大型未加硫タイヤの一時保管方法により、達成することができる。
【0010】
第2に、シェーピング機構により形状が整えられた横置き状態の大型未加硫タイヤを一時保管する大型未加硫タイヤの一時保管装置であって、固定フレームと、該固定フレームの中央部に取付けられ、前記シェーピング機構を下方から支持する中央支持体と、中央支持体を囲むよう設けられ、大型未加硫タイヤの少なくとも下側ショルダー部を下方から支持する外側支持体と、固定フレームに設けられ、前記外側支持体を昇降させることで、両ビード部の中間位置とトレッドセンターとを同一高さに保持する昇降手段とを備えた大型未加硫タイヤの一時保管装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明においては、シェーピング機構に装着された横置き状態の大型未加硫タイヤを一時保管する際、少なくとも下側ショルダー部を下方から支持する外側支持体を昇降手段により昇降させることによって、異なるサイズの大型未加硫タイヤであっても、両ビード部の中間位置とトレッドセンターとを同一高さに保持するようにしたので、トレッドが大重量であっても大型未加硫タイヤのショルダー部が垂れ下がって変形するようなことはなく、規定形状に保たれる。この結果、一時保管終了後の大型未加硫タイヤと加硫金型のキャビティの形状とが一致して加硫時におけるゴム流れが均一となり、タイヤ品質が向上する。
【0012】
また、請求項3に記載のように構成すれば、シェーピング機構に浮き上がりが生じようとしても、これを確実に阻止することができるとともに、この浮き上がり阻止によって間接的に大型未加硫タイヤの垂れ下がり変形を防止することもできる。
さらに、請求項4に記載のように構成すれば、簡単な構造でありながらシェーピング機構を外側支持体に確実にロックすることができる。
また、請求項5に記載のように構成すれば、簡単な構造でありながら複数の係止爪をシェーピング機構に同時に係脱させることができる。
【実施例1】
【0013】
以下、この発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1において、Mは建設車両に装着される大型(超大型)タイヤの未加硫タイヤであり、この未加硫タイヤMは図示していないタイヤ成形ドラムにより成形されるが、トレッドTはゴムゲージが大きく大重量であるため、長時間放置すると、該トレッドTの自重により変形するおそれがある。Sは前記未加硫タイヤMの形状を所定形状に整えるシェーピング機構であり、このシェーピング機構Sには前記未加硫タイヤMの両ビード部Bが装着されている。
【0014】
このシェーピング機構Sは下ホルダー11を有し、この下ホルダー11は、下側のビード部Bおよび下側のサイドウォール部Dでその半径方向内側部の双方に着座された着座部12と、着座部12の半径方向内端から上方に向かって延びる略円筒状の円筒部13と、円筒部13の下端部から半径方向内側に向かって延びるリング状のリング部14と、該リング部14の半径方向内端に軸方向(上下方向)中央部が一体的に連結され、上下方向に延びるとともに、下端が開放した有底円筒状の有底円筒部15とから構成されている。そして、この下ホルダー11の着座部12の半径方向内端部には屈曲可能なブラダ16の軸方向一端部(下端部)が取り付けられている。
【0015】
19はビード部Bの内径より小径である略リング状の上ホルダー本体であり、この上ホルダー本体19は円筒部13の上端に密着した状態で配置されるとともに、前記ブラダ16の軸方向他端部(上端部)が取り付けられている。20は上ホルダー本体19の内端部に回転可能に嵌合された締結リングであり、締結リング20の下端内周には半径方向内側に向かって突出する複数の突出部20aが形成され、これら突出部20aは周方向に等距離離れて配置されている。
【0016】
一方、円筒部13の上端外周には半径方向外側に向かって突出する複数の突出部13aが形成され、これら突出部13aも周方向に等距離離れて配置されている。そして、突出部20aが突出部13a間を通過して下側に突き抜けた後、締結リング20が回転して突出部13aと突出部20aとが上下に重なり合うと、下ホルダー11と上ホルダー本体19とは互いに締結される。
【0017】
23は上側のビード部Bおよび上側のサイドウォール部Dでその半径方向内側部の双方に着座された上ホルダー片であり、この上ホルダー片23の内周は前記上ホルダー本体19の外周に密着している。また、この上ホルダー片23の内周には半径方向内側に向かって突出する複数の突出部23aが形成され、これら突出部23aは周方向に等距離離れて配置されている。
【0018】
一方、前記上ホルダー本体19の上端外周には半径方向外側に向かって突出する複数の突出部19aが形成され、これら突出部19aも周方向に等距離離れて配置されている。そして、突出部23aが突出部19a間を通過して下側に突き抜けた後、上ホルダー片23が回転して突出部19aと突出部23aとが上下に重なり合うと、上ホルダー本体19と上ホルダー片23とは互いに締結され、全体として上ホルダー24を構成する。
【0019】
前述した下ホルダー11、ブラダ16、上ホルダー24は全体として、未加硫タイヤM、詳しくは両ビード部Bが装着された前述のシェーピング機構Sを構成する。そして、前述した未加硫タイヤMは成形後シェーピング機構Sに装着されてシェーピング機構Sと共に組立体Kを構成するが、このような組立体Kのブラダ16内にはシェーピング機構Sに形成された図示していないバルブおよび通路を通じて内圧が供給充填され、これにより、該ブラダ16、未加硫タイヤMは膨張し所定形状に整えられる。このようにして未加硫タイヤMの形状が整えられた組立体Kは、そのまま加硫金型近傍に設置された一時保管装置27まで図示していない搬送装置により搬送された後、該一時保管装置27上ににおいて横置き状態で一時保管される。
【0020】
前記一時保管装置27は固定フレーム28を有し、この固定フレーム28の上面には中心軸が上下方向に延びるリング状の受けリング29が取付けられている。そして、この受けリング29上に前記組立体Kが横置き状態で搬入されて載置されると、該受けリング29の上面にはシェーピング機構Sの着座部12の下面が当接する。
【0021】
30は受けリング29の軸方向(上下方向)中央部内周に外縁が固定された円板状の水平な支持プレートであり、この支持プレート30の中央部上面には上下方向に延び、シェーピング機構Sの有底円筒部15内に下側から挿入されることでシェーピング機構Sのセンタリングを行う円筒状のガイド筒31が固定されている。前述した受けリング29、支持プレート30、ガイド筒31は全体として、固定フレーム28の中央部に取付けられ、前記シェーピング機構Sを下方から支持する中央支持体33を構成する。
【0022】
図1、2において、36は前記中央支持体33を半径方向外側から囲むよう設置され、該中央支持体33の受けリング29と同軸の鍔状をした受け台であり、この受け台36の上面には複数のリング状をした受けリング37が同心円状に固定されている。また、前記受け台36の上面には半径方向に延び隣接する受けリング37同士を連結する複数の連結プレート38が固定され、これらの連結プレート38は周方向に等角度離れて配置されている。そして、これら受けリング37、連結プレート38は、一時保管装置27に組立体Kが一時保管されているとき、組立体Kを構成する未加硫タイヤMの少なくとも下側ショルダー部Hに、この実施例では下側ショルダー部Hおよび下側サイドウォール部Dの半径方向外側部に接触し、これらを下方から支持する。
【0023】
ここで、これら受けリング37、連結プレート38の高さは、これら受けリング37、連結プレート38に接触しているショルダー部H、サイドウォール部Dの形状にほぼ沿うよう半径方向内側に向かうに従い低くなっており、この結果、未加硫タイヤMは下方から支持されているとき、これら受けリング37、連結プレート38から余計な外力が付与されることはない。前述した受け台36、受けリング37、連結プレート38は全体として、中央支持体33を囲むよう設けられ、未加硫タイヤMの少なくとも下側ショルダー部Hを下方から支持する外側支持体39を構成する。
【0024】
43は前記固定フレーム28の四隅にそれぞれ設けられた上下方向に延びる昇降手段としての流体シリンダであり、これらの流体シリンダ43のピストンロッド44の先端(上端)は前記受け台36の下面に固定されており、この結果、これら流体シリンダ43が同期作動してピストンロッド44が突出したり引っ込んだりすると、外側支持体39は昇降する。
【0025】
そして、前述のように組立体Kが一時保管装置27に搬入されシェーピング機構Sが中央支持体33上に載置されると、前記流体シリンダ43のピストンロッド44を突出して外側支持体39を上昇させるが、この外側支持体39の上昇は、該外側支持体39が未加硫タイヤMの下側ショルダー部H、サイドウォール部Dに接触するとともに、該未加硫タイヤMのトレッドセンターRが両ビード部Bの中間位置Cと同一高さに保持されたとき停止する。ここで、未加硫タイヤMのサイズが異なっていても、前述の位置に到達したとき、外側支持体39の上昇を停止させるので、大重量であるトレッドTの自重に基づく未加硫タイヤMの垂れ下がり変形がタイヤサイズに関係なく確実に防止される。
【0026】
図1、3、4において、前記ガイド筒31の下端部外側にはスプライン結合を介して支持リング46が回転不能でかつ昇降可能に嵌合され、この支持リング46には周方向に等距離離れて配置された複数(6本)の回動軸47が貫通している。ここで、これら回動軸47は上下方向に延びているため、これら回動軸47はシェーピング機構Sの中心軸と平行な軸線回りに回動することができる。48は周方向に等距離離れて設置された複数(回動軸47と同数)の係止爪であり、これら係止爪48は水平に延びるとともに、基端部が支持リング46から上方に突出した回動軸47の上端部に固定されている。
【0027】
前記支持リング46から下方に突出した回動軸47の下端部には該回動軸47の軸線(シェーピング機構Sの中心軸と平行な軸線)回りに回動可能な複数の小径外歯車50が固定され、この結果、これら小径外歯車50には回動軸47を介して係止爪48に連結されていることになる。51は支持リング46の下端部外側に軸受52を介して回動可能に支持され、支持リング46と同軸である1個の大径外歯車であり、この大径外歯車51には前記全ての小径外歯車50が噛み合っている。この結果、前記大径外歯車51が回動して小径外歯車50、回動軸47が回動すると、係止爪48は回動軸47の軸線を中心として、図3に仮想線で示す離脱位置Eと実線で示す係止位置Fとの間を揺動する。
【0028】
ここで、前述のように係止爪48が係止位置Fまで揺動したとき、該係止爪48の先端部下面は、前記シェーピング機構S、詳しくは有底円筒部15の下端外周に形成されたリング状を呈する係止リング54の上面に接触し、これにより、該係止爪48はシェーピング機構Sに係止される。一方、前述のように係止爪48が離脱位置Eまで揺動すると、該係止爪48はシェーピング機構S(係止リング54)から離脱する。55は前記支持リング46の外周にブラケット56を介して取付けられ、該支持リング46の外周に対して接線方向に延びる複数の水平な流体シリンダであり、これら流体シリンダ55のピストンロッド57にはガイド58にガイドされながら流体シリンダ55の延在方向に移動するラック59がそれぞれ連結されている。
【0029】
そして、これらラック59は流体シリンダ55の近傍に配置された小径外歯車50にそれぞれ噛み合っており、この結果、流体シリンダ55が作動してラック59が長手方向に移動すると、噛み合っている小径外歯車50を介して大径外歯車51に駆動力が付与され、該大径外歯車51を回動させる。前述した流体シリンダ55、ラック59は全体として、大径外歯車51に駆動力を付与して回動させる駆動体63を構成する。また、前述した回動軸47、小径外歯車50、大径外歯車51、駆動体63は全体として、係止爪48を同期して揺動させ、シェーピング機構Sに対し係止、離脱させる係脱機構64を構成する。そして、このように係脱機構64を回動軸47、小径外歯車50、大径外歯車51、駆動体63から構成するようにすれば、簡単な構造でありながら複数の係止爪48をシェーピング機構Sに同時に係脱させることができる。
【0030】
67は支持リング46の直下の支持プレート30に固定された上下方向に延びる昇降機構としての流体シリンダであり、該流体シリンダ67は周方向に離れて複数、ここでは2個だけ配置されている。これら流体シリンダ67のピストンロッド68の先端(上端)は前記支持リング46に連結されており、この結果、流体シリンダ67が作動してピストンロッド68が突出したり引っ込んだりすると、支持リング46、係止爪48、係脱機構64は一体となって昇降する。前述した係止爪48、係脱機構64、流体シリンダ67は全体として、係止爪48が係脱機構64によりシェーピング機構Sに係止された後、該係止爪48を流体シリンダ67により下降させることで、シェーピング機構Sを中央支持体33に押し付けロックするロック手段69を構成する。
【0031】
そして、このようなロック手段69を設けて未加硫タイヤMの一時保管時におけるシェーピング機構Sの移動を規制するようにすれば、シェーピング機構Sに浮き上がりが生じようとしても、これを確実に阻止することができるとともに、この浮き上がり阻止によって間接的に未加硫タイヤMの垂れ下がり変形を防止することもできる。また、前述のようにロック手段69を係止爪48、係脱機構64、流体シリンダ67から構成するようにすれば、簡単な構造でありながらシェーピング機構Sを中央支持体33に確実にロックすることができる。
【0032】
次に、前記実施例1の作用について説明する。
タイヤ成形ドラムにおいて未加硫タイヤMの成形が終了すると、該未加硫タイヤMをタイヤ成形ドラムから取出した後、上ホルダー本体19が上昇することで円筒状を呈しているブラダ16の外側を、該未加硫タイヤMの下側ビード部B、サイドウォール部Dが着座部12に着座するまで下降させる。次に、上ホルダー本体19を円筒部13の上端に密着するまで下降させるが、この下降の途中で突出部20aが突出部13a間を通過し下側に突き抜ける。その後、突出部13aと突出部20aとが上下に重なり合うまで締結リング20を回転させ、下ホルダー11に上ホルダー本体19を締結する。
【0033】
次に、上ホルダー片23を上ホルダー本体19および未加硫タイヤMの上側ビード部B、サイドウォール部Dに着座するまで下降させるが、この下降の途中で突出部19aと突出部23aが突出部19a間を通過し下側に突き抜ける。その後、突出部23aとが上下に重なり合うまで上ホルダー片23を回転させ、上ホルダー本体19に上ホルダー片23を締結する。これにより、シェーピング機構Sが組み立てられるとともに、該シェーピング機構Sおよびシェーピング機構Sに装着された未加硫タイヤMとで組立体Kが構成される。その後、バルブおよび通路を通じてブラダ16に内圧が供給充填されると、ブラダ16が未加硫タイヤM内で円環状に膨張し、該未加硫タイヤMの形状が所定形状に整えられる。
【0034】
このようにして未加硫タイヤMの形状が整えられた組立体Kは、そのまま搬送装置により一時保管装置27まで搬送された後、シェーピング機構S(着座部12)が中央支持体33(受けリング29)上に載置され、これにより、シェーピング機構Sは中央支持体33によって下方から支持される。このとき、ガイド筒31がシェーピング機構Sの有底円筒部15内に下側から挿入され、シェーピング機構Sのセンタリングが行われる。
【0035】
次に、流体シリンダ67のピストンロッド68を突出させて支持リング46、係止爪48を、該係止爪48の下面がシェーピング機構Sの係止リング54の上面より上方となるまで上昇させる。その後、流体シリンダ55のピストンロッド57を同期して引っ込ませると、ラック59は小径外歯車50を介して大径外歯車51に駆動力を付与し、該大径外歯車51を回動させる。このとき、この大径外歯車51の回動は残りの小径外歯車50にも伝達されるため、全ての小径外歯車50は同一方向に同期して回動し、係止爪48を離脱位置Eから係止位置Fまで揺動させる。
【0036】
このようにして係止爪48がシェーピング機構S(係止リング54)に係止されると、流体シリンダ67のピストンロッド68が引っ込んで係止爪48が係止リング54と共に下降し、シェーピング機構S(着座部12)を中央支持体33(受けリング29)に押し付けロックする。これにより、シェーピング機構Sの浮き上がりが阻止されるとともに、未加硫タイヤMの垂れ下がり変形が間接的に防止される。
【0037】
次に、流体シリンダ43のピストンロッド44を同期して突出させ、図1に仮想線で示す待機位置Pの外側支持体39を上昇させる。そして、この外側支持体39の上昇は、図1に実線で示すように、該外側支持体39が未加硫タイヤMの下側ショルダー部H、サイドウォール部Dに接触するとともに、該未加硫タイヤMのトレッドセンターRが両ビード部Bの中間位置Cと同一高さに保持された保持位置Qに到達したとき停止させる。ここで、この外側支持体39の停止位置(保持位置Q)は、未加硫タイヤMのサイズに応じて異なっているが、いずれのタイヤサイズでも未加硫タイヤMのトレッドセンターRが両ビード部Bの中間位置Cと同一高さに到達した位置である。
【0038】
このような状態で未加硫タイヤM、シェーピング機構Sからなる組立体Kは一時保管装置27において未加硫タイヤMの加硫が開始されるまで一時保管されるが、この一時保管時間が数十時間に亘った場合でも、前述のように外側支持体39によって少なくとも下側ショルダー部Hを下方から支持し、未加硫タイヤMのトレッドセンターRを両ビード部Bの中間位置Cと同一高さに保持するようにしたので、トレッドTが大重量であっても未加硫タイヤMが垂れ下がって変形するようなことはなく、規定形状に保たれる。この結果、一時保管終了時の未加硫タイヤMと加硫金型のキャビティの形状とが一致して加硫時におけるゴム流れが均一となり、加硫済みタイヤのトレッドゲージが均一化するとともに、トレッドへのエア入り、ベア等が抑制され、タイヤ品質が向上する。
【0039】
なお、前述の実施例においては、シェーピング機構Sを中央支持体33によって下方から支持した後、外側支持体39を上昇させて未加硫タイヤMの少なくとも下側ショルダー部Hを下方から支持するようにしたが、この発明においては、外側支持体39を保持位置Qより若干上方で待機させた状態で組立体Kを一時保管装置27に搬入することにより、未加硫タイヤMの少なくとも下側ショルダー部Hを該外側支持体39によって下方から支持した後、外側支持体39を保持位置Qまで下降させることで、シェーピング機構Sを中央支持体33によって下方から支持するようにしてもよい。
【0040】
また、前述の実施例においては、受けリング29を周方向に連続したリング状のものから構成したが、この発明においては、周方向に等距離離れた複数の受け片から構成してもよい。さらに、前記受けリング37の上面に、最外側と受けリング37から最内側の受けリング37まで延在する鍔状の支持プレートを貼付けるようにすれば、未加硫タイヤMの支持面積が広くなり、一時保管時における未加硫タイヤMの変形を防止することができる。また、前述の実施例においては、建設車両用の大型未加硫タイヤについて説明したが、この大型未加硫タイヤは、トラック・バス用のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、建設車両等に装着される大型タイヤ用の未加硫タイヤを一時的に保管する産業分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の実施例1を示す正面断面図である。
【図2】図1のI−I矢視断面図である。
【図3】図1のII−II矢視断面図である。
【図4】係脱機構近傍の正面断面図である。
【符号の説明】
【0043】
27…一時保管装置 28…固定フレーム
33…中央支持体 39…外側支持体
43…昇降手段 48…係止爪
50…小径外歯車 51…大径外歯車
63…駆動体 64…係脱機構
67…昇降機構 69…ロック手段
S…シェーピング機構 M…未加硫タイヤ
B…ビード部 H…ショルダー部
R…トレッドセンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェーピング機構により形状が整えられた横置き状態の大型未加硫タイヤを一時保管する際、固定フレームの中央部に取付けられた中央支持体により前記シェーピング機構を下方から支持する一方、中央支持体を囲む外側支持体により、大型未加硫タイヤの少なくとも下側ショルダー部を下方から支持し、かつ、該外側支持体を昇降手段により昇降させることで、両ビード部の中間位置とトレッドセンターとを同一高さに保持するようにしたことを特徴とする大型未加硫タイヤの一時保管方法。
【請求項2】
シェーピング機構により形状が整えられた横置き状態の大型未加硫タイヤを一時保管する大型未加硫タイヤの一時保管装置であって、固定フレームと、該固定フレームの中央部に取付けられ、前記シェーピング機構を下方から支持する中央支持体と、中央支持体を囲むよう設けられ、大型未加硫タイヤの少なくとも下側ショルダー部を下方から支持する外側支持体と、固定フレームに設けられ、前記外側支持体を昇降させることで、両ビード部の中間位置とトレッドセンターとを同一高さに保持する昇降手段とを備えたことを特徴とする大型未加硫タイヤの一時保管装置。
【請求項3】
前記シェーピング機構を中央支持体にロックするロック手段をさらに設け、大型未加硫タイヤの一時保管時におけるシェーピング機構の移動を規制するようにした請求項2記載の大型未加硫タイヤの一時保管装置。
【請求項4】
前記ロック手段は、周方向に離れた複数の係止爪と、これら係止爪を同期してシェーピング機構に対し係止、離脱させる係脱機構と、これら係止爪を昇降させる昇降機構とを備え、係止爪が係脱機構によりシェーピング機構に係止された後、該係止爪を昇降機構により下降させることで、シェーピング機構を中央支持体に押し付けロックするようにした請求項3記載の大型未加硫タイヤの一時保管装置。
【請求項5】
前記係脱機構は、各係止爪が連結されシェーピング機構の中心軸と平行な軸線回りに回動可能な複数の小径外歯車と、これら小径外歯車に噛み合う1個の大径外歯車と、該大径外歯車に駆動力を付与して回動させる駆動体とから構成した請求項4記載の大型未加硫タイヤの一時保管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−21456(P2006−21456A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202605(P2004−202605)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】