説明

大気圧プラズマ誘導グラフト重合

ポリマー無機又は有機官能化基板表面を改質する方法が提供される。一実施形態では、大気圧(AP)プラズマ流を基板表面に向け、その結果、重合開始剤として機能する表面結合活性部位が形成される。モノマー又はモノマー溶液と接触させた場合、活性部位は、基板表面に共有結合したグラフトポリマーの稠密なアレイの形成を促進させる。別の実施形態では、無機基板を清浄化し、湿度チャンバ内で調整し、APプラズマで処理し、モノマー又はモノマー溶液に接触させて、基板表面でのグラフトポリマーの形成及び成長を促進させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[0001]本発明は、一般に、表面改質技法に関し、より詳細には、低温の大気圧プラズマ表面処理、及びグラフト重合プロセスに関する。
【0002】
[発明の背景]
[0002]基板表面に機能性ポリマーをグラフト化することによる表面ナノ構造化は、化学的機能性を高めるために、また未処理の無機及び有機材料の表面トポロジーを変えるために、使用されてきた。例えば、グラフト重合したエチレン系不飽和モノマーは、エレクトロニクス製作でのマイクロパターニング、炭素繊維及びゴム分散での接着、燃料電池及び分離膜での選択層などの適用例において、独自の性質をもたらす。グラフト化ポリマーで改質された有機及び無機表面は、分離膜での防汚特性、化学センサでの高い化学的選択性、及び表面潤滑特性があることを実証した。そのような適用例では、基板又は代理表面に共有結合され且つ末端が結合されている、ナノスケールの単分子鎖からなるグラフト化ポリマー相は、未変性の表面の化学的及び物理的完全性を維持しながら、独自の材料特性を基板に与える働きをする。さらに、グラフト鎖は、ポリマーが完全に混和している溶媒に曝された場合であっても、表面に結合したままである。
【0003】
[0003]係留されたポリマー相は、ポリマーグラフト化(「グラフト化する」)又はグラフト重合(「グラフト化形態」)によって形成することができる。ポリマーグラフト化によって実現された表面鎖の被覆範囲及び空間均一性は、立体障害によって制限される可能性がある。対照的に、本発明の焦点であるグラフト重合は、連続したモノマー付加によって進行し、それによって、より稠密な表面被覆が形成される。
【0004】
[0004]グラフト化ビニルモノマー及びその他のエチレン系不飽和モノマーによる構造化表面は、一般に、フリーラジカルグラフト重合(FRGP)によって実現されるが、この場合、ポリマー鎖のサイズ、鎖長の均一性、及び表面密度は、初期モノマー濃度、反応温度、及び表面固定化開始剤又は溶液中の開始剤の密度によって決定される。しかし、溶液中の制御されていないマクロラジカル反応、及びプレグラフト化表面開始部位の制限に起因する表面密度の制限から得られた、広範な分子量鎖サイズの分布により、この手法は、ナノスケールで設計製作されたポリマー表面構築にとって魅力の無いものになる。
【0005】
[0005]フリーラジカル重合は、溶液中で成長したポリマーをポリマーグラフト化によって反応性表面部位に結合させることができる溶液重合、又は、モノマーがグラフト重合(例えば、表面グラフト化反応性基)によって固定化表面開始剤(例えば、表面グラフト化反応性基)若しくは表面モノマー(例えば、エチレン系非飽和モノマー)から直接的な表面グラフト化を受ける表面重合を開始する、開始剤化学種を利用する。しかし、競合的ポリマー鎖グラフト化、連鎖移動反応、及び伸長(propagation)による表面鎖成長の発生は、均一サイズの予備形成ポリマー鎖のグラフト化によって実現される、より均一な表面鎖サイズとは対照的に、多分散グラフト化ポリマー鎖サイズをもたらす。さらに、無機基板では、グラフト重合のためのグラフト部位の密度は、酸化物表面の表面ヒドロキシル基の利用可能性によって限定され、したがって代理表面開始剤及びマクロ開始剤用の固定部位として働く。例えば、完全に加水分解したシリカ及びジルコニアのヒドロキシル基の表面濃度は、それぞれ7.6μmol/m(4.6分子/nm)及び5.6〜5.9μmol/m(3.4〜3.6分子/nm)である。
【0006】
[0006]近年、ナノスケールデバイス用の極めて高度な先端材料が求められていることから、ポリマー鎖の成長及びグラフト鎖の多分散性を制御することによってグラフト化ポリマードメインを精密に構造化することができる制御ラジカル重合(CRP)が、益々関心を集めている。CRPは、表面結合マクロラジカル鎖に可逆的に結合する制御剤を利用し、キャップポリマーにとって休止期が有利となる熱力学的平衡を確立する。制御剤の存在は、溶液中の「生きている」鎖の数を制限し、したがって、連鎖停止を減少させながら、表面重合の速度を制御することが可能になる。数平均分子量(M)及び多分散指数(PDI)と共に、制御されたポリスチレングラフト重合は、下記のCRP法に関するもの、即ち、シリカ及びポリマー材料(例えば、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)、ポリチオフェン、ポリプロピレン、及びポリアクリレート)にポリスチレンをグラフト化するための、原子移動ラジカルグラフト重合(ATRGP)(M=10400〜18000g/mol及びPDI=1.05〜1.23)、可逆付加開裂連鎖移動(RAFT)グラフト重合(M=12800〜20000g/mol、PDI=1.10〜1.40)、及びニトロキシド媒介性グラフト重合(NMGP)(M=20000〜32000g/mol、PDI=1.20〜1.30)に関するものが報告されている。
【0007】
[0007]しかし、ATRGP及びRAFTは、固有の制約をもたらす。例えばATRPは、開始剤と触媒とモノマーとの精密な比、最適な温度/溶媒条件、及び表面結合有機ハライド開始剤であって、潜在的には表面グラフト密度を制限するものを、必要とする。RAFTグラフト重合は、グラフト化のためにチオエステル表面開始剤を必要とする。一方、NMGPは、後に例えば制御された重合のためにアルコキシアミンに可逆的に結合され得る、ポリマー鎖ラジカルを形成するための従来の過酸化物開始剤及び/又は熱開始反応を利用する。
【0008】
[0008]プラズマ表面処理は、表面化学を変化させる手法として提案されており、潜在的に、高密度表面活性化による先の溶液相開始剤戦略に取って代わる。しかしプラズマ処理単独では、不十分な表面改質ツールであることが示されており、ポリマーのプラズマ処理表面は、その改質された化学的性質を経時的に及び空気に曝されたときに保持しない。プラズマ内を供給されるモノマーが気相中で惹起され次いで基板表面で重合される、気相プラズマ重合も、表面改質法として調査されてきた。しかし、気相からの縮合モノマーラジカルと重合するように設計された、表面吸着ラジカルモノマー種は、連続プラズマ衝撃によって実際にさらに改質することができ、その結果、表面に非共有結合的に吸着された、高度に架橋された化学的及び物理的不均一ポリマーフィルムになる。また、プラズマ残光中のモノマー種の局所濃度は、プラズマ源の半径の寸法に高度に依存しており、モノマー堆積速度で得られた空間のばらつきによって、不均一なフィルム構造及び形態に至る可能性がある。
【0009】
[0009]プラズマ誘導グラフト重合(PIGP)は、プラズマを使用して表面を活性化させ、液相中のエチレン系不飽和モノマーを、フリーラジカルグラフト化メカニズムを介して開始部位に順次グラフト化させる、代替の表面改質手法である。この手法により、基板表面から直接開始され重合されたポリマー鎖の高表面密度を特徴とするグラフト化ポリマー相、したがって多分散鎖成長が最小限に抑えられ、化学的、熱的、及び剪断応力下での安定性が改善されるポリマー相を設計製作することが可能になる。複雑な表面化学、及び反応性プラズマにより開始される表面化学種の限られた寿命を考えると、これらのプラズマにより生成された有機部分の正確な化学的性質は、依然として確立されていない。
【0010】
[0010]今日まで、PIGPは、低圧(即ち、大気圧より低い)プラズマ開始及びポリマー材料への表面グラフト化に、主に焦点を当ててきた。その一例は、Nafion燃料電池及び分離膜の表面構造化に使用される、低圧ポリスチレン表面グラフト化である。二酸化チタンなどの無機酸化物の、低圧プラズマ表面処理の限られた研究についても、報告されている。しかし、低圧プラズマ加工に関連した制約(例えば、真空チャンバが必要)は、工業的用途でスケールアップする潜在的な機会の障害になる。
【0011】
[0011]ポリマー材料とは異なり、無機基板上にPIGPを実現するための注目すべき制約は、プラズマ処理によってポリマー開始用の表面ラジカルを形成することができる、反応性モノマーのシリル化又はマクロ開始剤のグラフト化によって生成された表面活性部位の十分に稠密な層を必要とすることであった。表面ヒドロキシル化学の利用と組み合わせたそのような技法に必要とされる表面作製は、そのような方法の大規模な適用と、実現することのできる鎖密度のレベルを制限する。代理表面を使用しない、直接的なプラズマ開始及びグラフト化は、酸化チタン粒子及びシリコーンゴム材料に関して定性的に実証されており、特徴的な表面ラジカル形成は、処理時間及びRF出力の関数として知られており、有機材料と同様である。さらに、最近の研究では、シラス多孔質ガラスの低圧プラズマ表面処理下で、シラノール密度とグラフト化ポリマー密度との直接相関が観察されることが実証された。これは、無機酸化物基板の低圧プラズマ表面活性化で実現することができる、表面ラジカルの数密度が、自然酸化物表面の化学によって制限され得ることを示唆している。
【0012】
[0012]低圧プラズマ加工に必要な超高真空チャンバの追加要件と組み合わせた、これらの知見は、従来技術の手法が、高密度表面活性化及びグラフト重合を実現するのに不十分であり、有機及び無機基板の大表面積の改質に特に不適切であることを示している。
【0013】
[発明の概要]
[0013]本発明は、制御された手法で、基板の表面から末端グラフト化ポリマーを成長させることによって、無機及び有機基板を改質する新規な方法を提供する。一態様では、本発明は、(a)大気圧(AP)プラズマ、及び(b)エチレン系不飽和モノマー又はモノマー溶液で、基板表面を処理するステップを含む。AP処理は、表面に、表面固定重合開始剤として機能する「活性部位」を形成する。モノマーと接触すると、活性部位はモノマーを重合させ、その結果、基板に共有結合した複数の末端グラフト化ポリマー鎖が得られる。活性部位は、過酸化物、酸化物、ヒドロキシル、アミン、水素化物、ラジカル、エポキシド、又はその他の化学的部分、即ち重合を開始させることが可能な官能基にすることができる。重合は、古典的なフリーラジカルグラフト重合(FRGP)又は制御されたラジカル重合(CRP)、例えばATRGP、RAFT、NMGPなどによって、進行させることができる。表面活性化は、表面ラジカル又は過酸化物の形成を最大限にするために、プラズマ動作パラメータ、例えばプラズマ源、プラズマ前駆体及びキャリアガス、気体流量、気体分圧、高周波出力、及び印加電圧、並びに表面処理時間、及び基板表面の作製を調節することによって制御される。
【0014】
[0014]本発明は、いくつかの実施形態によって具体化される。例えば、無機基板の場合、本発明の一実施形態は、基板の表面を清浄化して、存在する場合には汚染物質及び自然酸化物層を除去するステップ;例えば基板を湿度チャンバ内に置くことにより、基板の表面に水の層を形成するステップ;基板を大気圧(AP)プラズマで処理することによって、基板表面に開始部位を生成するステップ;及び重合開始部位をモノマー又はモノマー溶液に曝すことによって、基板の表面からポリマーを成長させるステップを含む。別の実施形態では、有機ポリマー基板の表面は、基板を大気圧(AP)プラズマで処理することにより、基板表面に開始部位を生成すること、重合開始部位をエチレン系不飽和モノマー又はモノマー溶液に曝すことにより、基板の表面からポリマーを成長させることによって、改質される。さらに別の実施形態では、この方法は、ビニル官能化シリカ又はシリコンなどの有機官能化無機基板の表面を改質するのに使用される。
【0015】
[0015]大気圧プラズマ誘導グラフト重合(APPIG重合)は、非プラズマの古典的なフリーラジカルグラフト重合、及び制御された「生きている」グラフト重合、気相プラズマ重合、及び低圧プラズマ誘導重合に関して、いくつかの利点がある。とりわけ、APPIG重合は、溶液中で化学開始剤を利用せず、高価な、潜在的にスケールアップを制限する超高真空チャンバ、及び関連したプラズマ処理用装置を必要としない。モノマー重合の開始は、基板表面で生じ、高分子量ホモポリマーの形成、及びバルクからのポリマーのグラフト化を最小限に抑える。その結果、APPIG重合で改質された表面は、古典的な方法よりも高度のポリマー鎖長の均一性を示す。本発明は、単分子グラフト化ポリマーの非常に稠密な、実質的に均一な層を、無機又は有機表面から順次成長させることも可能にする。例えば、無機基板に関する試験では、APプラズマ処理が無機表面格子を直接改質し、その結果、大規模な化学表面処理を必要とせずに、10nm以下でよいポリマー間分離を有するグラフト重合を可能にする、高密度の開始部位が得られることを実証する。したがって本発明は、マイクロエレクトロニクス、生物医学、膜分離、凝集及び凝固技術、化学センサ、一般的な表面コーティングなど、いくつかの分野において材料を改善する道を開く。
【0016】
[0016]本発明の、様々なその他の態様、実施形態、及び利点は、詳細な説明を読むことによって、また添付図面を参照することによって明らかにされよう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】[0017]本発明の一実施形態による、シリコン基板表面を改質する方法を示す概略図である。
【図2】[0018]図1に示される方法で使用された、APプラズマ発生器を示す概略図である。
【図3】[0019]本発明の一実施形態による、大気圧プラズマ表面処理(RF出力=40W、22℃でRH=50%)によって形成された表面ラジカル(FTIR分析によるTEMPO結合アッセイを使用して検出)の存在に対して、プラズマ処理時間が及ぼす影響を示すプロットである。
【図4】[0020]本発明の一実施形態による、大気圧プラズマ表面処理(処理時間=10秒、22℃でRH=50%)によって形成された表面ラジカル(FTIR分析によるTEMPO結合アッセイを使用して検出)の存在に対して、プラズマ高周波(RF)出力が及ぼす影響を示すプロットである。
【図5】[0021]本発明の一実施形態による、大気圧プラズマ表面処理(処理時間=10秒、及びRF出力=40W)によって形成された表面ラジカル(FTIR分析によるTEMPO結合アッセイを使用して検出)の存在に対して、吸収された表面水被覆率が及ぼす影響を示すプロットである。
【図6】[0022]本発明の一実施形態による、未処理の基板と、Rrms表面粗さ及び歪度(1×1μmのサンプル領域)を有する水性溶媒中[M]=30%(v/v)VPでのポリ(ビニルピロリドン)グラフト化シリコン基板との、1対のタッピングモードAFM 3−D表面レンダリングを示す図である。
【図7】[0023]本発明の一実施形態による、A)[M]=20%、B)[M]=30%、及びC)[M]=40%(1×1μmのサンプル領域)での、n−メチル−2−ピロリドン中で1−ビニル−2−ピロリドンとグラフト重合させたシリコン表面の、一組のタッピングモードAFM 3−D表面レンダリングを示す図である。
【図8】[0024]本発明の一実施形態による、水性溶媒の混合物中で[M]=30%(v/v)で1−ビニル−2−ピロリドンとグラフト重合させたシリコン表面の、一組のタッピングモードAFM画像を示す図であり、A)[NMP]=15%、B)[NMP]=40%、C)[NMP]=60%、及びD)[NMP]=100%(水なし)(1×1μmのサンプル領域)である。
【図9】[0025]本発明の一実施形態による、[M]=30%(v/v)で1−ビニル−2−ピロリドンのグラフト重合によって作製された1−ビニル−2−ピロリドン(PVP)グラフト化シリコンウェーハの、1対の高さヒストグラムであり、溶媒A)[NMP]=60%及びB)[NMP]=100%(処理時間=10秒、RF出力=40W、及び22℃でRH=50%)である。
【図10】[0026]本発明の一実施形態による、初期モノマー濃度M10〜M50、T=85℃及びt=8時間(LM30=M30での膜厚)での、スチレンのAPPIGPに関する相対的なポリスチレン膜厚を示すプロットである。
【図11】[0027]本発明の一実施形態による、T=70℃、85℃、及び100℃での、APPIGPに関する、反応時間に対するポリスチレンフィルム成長速度(即ち、ポリマー膜厚の変化の速度)を示すプロットであり、(a)M30及び(b)M50(処理時間での表面開始=10秒、RF出力=40W、及び22℃でRH=50%)である。
【図12】[0028]本発明の一実施形態による、M30での迅速な開始での、グラフトポリスチレン膜厚を示すプロットであり、ステップ1の時間間隔は、t=5〜30分の間で変わり、ステップ2の合計反応時間は3時間である(ステップ1=100℃、ステップ2−85℃)。
【図13】[0029]本発明の一実施形態による、(a)迅速な開始のAPPIGP(ステップ1=15分)及び(b)M30及びT=85℃でのAPPIGP(処理時間での表面開始=10秒、RF出力=40W、及び22℃でRH=50%)に関するグラフトポリスチレンフィルムの成長を示すプロットである。
【図14】[0030]本発明の一実施形態による、ポリスチレングラフト化シリコンに関するAPPIGPの、一組のタッピングモードAFM 3−D表面レンダリング(1×1μm)を示す図であり、M30で、(a)T=70℃、(b)T=85℃、(c)T=100℃であり、M50で、(d)T=70℃、(e)T=85℃、(f)T=100℃である。
【図15】[0031]本発明の一実施形態による、M50及び[TEMPO]=5、7、10、及び15mM(処理時間での表面開始=10秒、RF出力=40W、及び22℃でRH=50%)での、ニトロキシド媒介性APPIGPによる実験的ポリスチレンフィルム成長を示すプロットである。
【図16】[0032]本発明の一実施形態による、M50、T=120℃、及び[TEMPO]=10mMでの、ポリスチレングラフト化シリコンに対するニトロキシド媒介性APPIGPの、タッピングモードAFM 3−D表面レンダリング(1×1μm)を示すプロットである。
【図17】[0033]本発明の一実施形態による、M50、T=120℃、及び[TEMPO]=10mMでの、ポリスチレングラフト化シリコンに関するニトロキシド媒介性APPIGPの高さヒストグラム(当てはめたガウス分布を有する)及びAFM画像(右)である。
【図18】[0034]APプラズマ処理前のシリコン表面の、タッピングモードAFM 3−D表面レンダリングを示す図である。
【図19】[0035]APプラズマ処理前のシリル化シリコン表面の、タッピングモードAFM 3−D表面レンダリングを示す図である。
【図20】[0036]本発明の一実施形態による、APPIG重合改質シリコン表面の、タッピングモードAFM 3−D表面レンダリングを示す図である(実施例2)(水素プラズマ、10秒、40W;n−メチル−2−ピロリドン中30%(v/v)1−ビニル−2−ピロリドンモノマー;T=80℃)。
【図21】[0037]本発明の一実施形態による、APPIG重合改質シリコン表面の、タッピングモードAFM 3−D表面レンダリングを示す図である(実施例2)(水素プラズマ、10秒、40W;n−メチル−2−ピロリドン中30%(v/v)1−ビニル−2−ピロリドンモノマー;T=90℃)。
【図22】[0038]本発明の一実施形態による、APPIG重合改質シリコン表面の、タッピングモードAFM 3−D表面レンダリングを示す図である(実施例3)(水素プラズマ、10秒、40W;n−メチル−2−ピロリドンの60%(v/v)水性混合物中30%(v/v)1−ビニル−2−ピロリドンモノマー;T=80℃)。
【図23】[0039]本発明の一実施形態による、APPIG重合改質シリル化シリコン表面の、タッピングモードAFM 3−D表面レンダリングを示す図である(実施例4)(水素プラズマ、10秒、40W;DI水中30%(v/v)1−ビニル−2−ピロリドンモノマー;T=80℃)。
【図24】[0040]本発明の一実施形態による、APPIG重合改質ポリスルホン表面の、タッピングモードAFM 3−D表面レンダリングを示す図である(実施例6)(水素プラズマ、10秒、40W;DI水中30%(v/v)1−ビニル−2−ピロリドンモノマー;T=70℃)。
【図25】[0041]本発明の一実施形態による、APPIG重合改質シリコン表面の、タッピングモードAFM 3−D表面レンダリングを示す図である(実施例10)(水素プラズマ、10秒、40W;酢酸エチル中30%(v/v)酢酸ビニルモノマー;T=70℃)。
【0018】
[詳細な説明]
[0042]本発明によれば、APPIG重合を使用して基板表面のトポロジー及び物理化学的性質を改質する新規な方法が提供される。一般に、この方法は、大気圧(AP)プラズマ及びエチレン系不飽和モノマー又はモノマー溶液で、基板表面を処理するステップを含む。好ましい手法では、大気圧プラズマ流を、例えばAPプラズマジェットを使用して表面に向ける。APプラズマ処理は、表面結合活性部位、即ち過酸化物やラジカルなどの化学官能基を、基板上に形成させる。不飽和モノマー又はモノマー溶液と接触した場合、活性部位(重合開始剤とも呼ぶ)は、基板の表面からのグラフトポリマーの形成及び制御された成長を促進させる。この方法は、無機、有機、及び混合型無機/有機基板、例えばアルコキシシリル化シリコンなどの有機官能化基板の表面改質に適している。
【0019】
[0043]適切な無機基板の非限定的な例には、シリコン、アルミニウム、ハフニウム、ジルコニウム、チタン、鉄、及び金などの元素材料;シリカ、アルミナ、ハフニア、ジルコニア、チタニアなどの無機酸化物;及びその他の金属、メタロイド、又はセラミック材料であって、表面酸化物、水酸化物、過酸化物、又はモノマー若しくはモノマー溶液に曝されたときに重合を開始することができるその他の官能基の形成を支援することが可能な材料が含まれる。理論的には、重合開始部位の形成を支えることが可能な任意の有機又は無機基板は、本発明を使用して改質することができる。非限定的な例には、ポリマー材料、樹枝状材料、チオール、ラングミュア−ブロジェット膜、及びシリル化層が含まれる。有機ポリマー基板の具体的で非限定的な例には、ポリスチレン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリ(ビニルアルコール)、及び有機シリコンポリマーが含まれる。
【0020】
[0044]図1は、本発明の一実施形態によるAPPIG重合の多段階プロセスを示し、シリコンウェーハは、ウェーハの表面から1−ビニル−2−ピロリドンモノマーをグラフト重合することによって改質される。まず基板を、表面の汚染物質及び基板上の自然酸化物層が除去されるように、多段階クリーニング及び調整プロセスによって作製する。このように基板は、「ピラニア」溶液(例えば、硫酸:過酸化水素が3:1又は7:3)中で清浄化され、次いで脱イオン水で濯がれて、吸収された有機物及び酸が除去される。無機シリコン上に存在する自然酸化物膜は、その性質が不均一であり、容易にエッチングすることができ、したがって、効果的なグラフト重合が確実に行われるように除去される。これは、例えばフッ化水素酸を使用し、その後、水浴中に浸漬して残留する酸及び自然酸化物層を除去し、次いで基板を真空炉(例えば、60〜100℃の温度に加熱する)内で乾燥することによって実現される。乾燥したら、吸着水の制御層がAPプラズマ処理の前に確実に存在するように、基板を、湿度チャンバ内に数時間、好ましくは24時間程度にわたり置くことによって「調整」する。或いは表面は、適切な相対湿度が実現される場合には、周囲空気中で調製することができるが、一般に、湿度チャンバはより良好な制御を行う。
【0021】
[0045]シリコンなどの無機基板の場合、表面活性部位の最高密度は、APプラズマ処理の前に、基板表面に吸着された表面水の量が慎重に制御される場合に得られる。吸着水は、プラズマ処理中に、過酸化物又はその他の表面活性基の形成を促進させ、次いで基板表面がモノマーに曝されたときに重合開始剤として働くように見える。シリコンウェーハの場合、最適な結果は、表面水被覆がほぼ単一の単層である場合に得られ、基板表面の全体にわたって実質的に均一である場合に得られる。最適な被覆よりも著しく薄く又は厚い表面水膜厚は、APプラズマ誘導活性化部位の次善の形成をもたらすことになる。表面水被覆は、制御された湿度環境内に、即ち温度及び相対湿度(RH)が制御されている湿度チャンバ内に、無機基板を置くことによって、実現することができる。典型的なRH値は20〜70%であり、最適な結果は、22℃で、〜50%RHで実現される。或いは、表面化酸化物形成を促進させるため、水にプラズマ前駆体及び/又はキャリアガス(複数可)を含めることができる。
【0022】
[0046]APプラズマを使用する無機基板の表面活性化は、吸着水層が存在しなくても実現することができるが、活性部位密度は、吸着水の層が存在する場合よりも著しく低くなる。
【0023】
[0047]シリコンウェーハを清浄化し調整した後、このウェーハを、密閉容器内の不活性ガス(例えば、窒素、アルゴンなど)中で又は周囲空気の開放環境下でAPプラズマに曝す。図2は、本発明の実施において使用に適したAPプラズマ装置の、1つの非限定的な例を概略的に示す。図示されるように、装置は、基板を配置することができるグローブバッグ又はその他のチャンバを含むことができ、又はそれらに収容することができ、また、プラズマ源、高周波(RF)発電器、RF発電器及びマッチング回路に結合された制御器(例えば、マイクロプロセッサ)、システム内にプラズマ前駆体ガス/キャリアガスを導入するための層流ミキサ及び質量流制御器、窒素ガス用入口、及びガスポンプに結合されていてもよい出口ラインを含む。プラズマ源は、好ましい幾何形状(例えば、長方形又は円形)を有する出口から生じ且つ基板表面に衝突するプラズマ流を生成する。出口ライン及び窒素入口によって、チャンバのパージを可能にし、且つ使用前に窒素でフラッシュすることが可能になる。しかしチャンバは、表面活性化及びグラフト重合プロセス中に大気圧下で維持される。
【0024】
[0048]別の実施形態(図示せず)では、グローブバッグ又はその他のチャンバが省略され、APプラズマを単純に発生させ、開放環境下で基板表面に向ける。この場合、窒素入口、真空ライン、及び真空ポンプを必要としない。
【0025】
[0049]APプラズマ発生器に関する追加の非限定的な詳細は、参照により本明細書に組み込まれるSchutze,A.;Jeong,J.Y.;Babayan,S.E.;Park,J.Selwyn,G.S.;Hicks,R.F.IEEE Trans.Plasma Sci.1998、26、(6)、1685〜1694に見られる。
プラズマガス、RF出力、電極電圧、処理時間、ガス流量、ガス分圧、全圧、及びガス温度。プラズマ処理は、1種又は複数のプラズマ前駆体ガスを使用することによって、実現することができ;非限定的な例には、任意選択でキャリアガスと、例えばヘリウムと組み合わせた、水素、酸素、窒素、空気、二酸化炭素、水、フッ素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、アンモニア、及びメタンが含まれる。
【0026】
[0051]表面清浄化のためにナノエレクトロニクスで一般に使用される水素プラズマは、放出領域のさらに下流で再結合することができ又は表面処理に使用することができる、電子衝撃解離によって形成された水素原子からなる。水素プラズマは、本質的に低いシリコンエッチング速度を有し、加工するのに高い電力密度を要する酸素プラズマとは異なって、低い加工温度で操作することができる。例えば、いくつかの実施形態では、水素プラズマガス温度は、60WのRF出力で60秒間曝露する間、100℃を超えなかった。
【0027】
[0052]APプラズマによる基板表面の活性化は、特にプラズマジェットを使用してAPプラズマを発生させた場合、低圧プラズマを使用する表面活性化よりも優れたいくつかの利点をもたらす。これらの利点は、APプラズマ発生器の構成及び動作パラメータと、発生したプラズマガスの性質との両方に関係し、特に、プラズマジェットAPプラズマ活性化と誘電体バリア放電(DBD)プラズマ活性化とを比較した場合に明らかである。
【0028】
[0053]DBDプラズマ源は、典型的には、2枚の平行板が最大でも数ミリメートルだけ互いに離れている、平行板型構成に設計されている。プラズマ粒子は、小さな独立したマイクロアークで上部電極から出ていき、底部電極へと移動する。マイクロアークは、その直径が約100μmであり、2cm程度切り離すことができる。ストリーマの構成及び間隔により、この方法は、不均一なプラズマ放電をもたらす。さらに、プラズマ発生を持続させるのに必要な最小電圧である、破壊電圧は、5〜25kVである。スケールアップ電位に関しては、平行板が固定され、電極間隔を増大させることはできない。また、DBD源は、プラズマ表面処理中に表面を走査するよう移動することができない。
【0029】
[0054]これとは対照的に、APプラズマジェットは、プラズマが放電される2個の同心電極からなる供給源である。この供給源は、表面処理のために基板上に容易に位置決めすることができる。プラズマ放電は、空間的及び時間的に均一であり、様々な流量で動作させることができる。プラズマジェット用の破壊電圧は、0.05〜0.2kVの範囲内にあり、DBD源の場合よりも著しく低い。また、プラズマジェットは、DBD源の場合よりも広範な且つより安定な電圧範囲で動作する。プラズマジェットは、あるプラズマにとって低い加工ガス温度を維持するが、これは熱感受性材料へのグラフト重合にとって理想的なものである。プラズマジェットは、横方向に間隔を空けた種々の配置に位置決めすることができる固定源として、又は可動源として、スケールアップ電位に多くの利点をもたらす。
【0030】
[0055]発生したプラズマガスの性質も、これら2つの技法では異なっている。DBD源は、1〜10eVの電子温度範囲で動作し、その結果、200℃に近付くプラズマガス温度が得られる。電子及びイオンは、ごく短い時間(約100ナノ秒未満)存在し、それが表面処理の有効性を制限する。プラズマ種、例えばヘリウム中の酸素の密度は、約1012粒子/cmである。一方、荷電種の密度は、約1012〜1015粒子/cmである。
【0031】
[0056]これとは対照的に、水素プラズマジェットは、100℃よりも低いガス温度(酸素プラズマの場合いはわずかに高い)に対応する1〜2eVというより低い電子温度範囲で動作する。酸素プラズマの場合、活性化酸素原子は、ガス出口領域から最大80mmまで、励起状態で存在する。プラズマ種、例えばヘリウム中の酸素の密度は、約1016粒子/cmであり、DBD源の場合よりも4桁高い。一方、荷電種の密度は、約1011〜1012粒子/cmである。この著しく高いプラズマ種密度によって、基板表面をかなりの程度まで改質することが可能になり、非常に稠密な活性部位が形成される。その後、重合性モノマーと接触することにより、平均ポリマー分離が少なくとも10nm程度に小さいものである、表面に結合されたグラフト化ポリマー鎖の非常に稠密なアレイが形成される。
【0032】
[0057]調整された基板を大気圧プラズマに曝した結果、基板表面には表面結合活性部位(「ポリマー開始部位」)の、即ちモノマーに曝されると重合を開始することが可能な官能基の、稠密で実質的に均質なアレイが形成される。そのような基の非限定的な例には、過酸化物、酸化物、ヒドロキシル、アミン、水素化物、エポキシド、及びラジカルが含まれる。ヘリウム中に希釈された水素の場合(1:99 H:He)、グラフト重合のための活性表面部位の稠密なアレイは、RF出力を約20から60Wまで様々に変えることによって、またこのときプラズマ処理時間を約5から120秒に様々に変えることによって、実現することができる。シリコン基板及び水素−ヘリウムプラズマの場合、活性部位の最高表面被覆率は、約40WのRF出力及び約10秒のプラズマ処理時間で得られた(ポリマー基板のAPプラズマ処理の場合も、これと同様であった)。しかし、最適な条件(重合開始用の表面活性部位が最高密度である)は、基板表面の性質、プラズマガス、及び表面活性化の所望のレベルに応じて、変えてもよい。吸着表面水の量、並びにプラズマ出力、処理時間、及びその他の加工パラメータは、可変であり、活性部位、最終的にはグラフトポリマーの密度が最大限になるように、必要に応じて制御することができる。
【0033】
[0058]表面官能性は、プラズマ処理の直後に、プラズマ処理した表面を所望のガス又は液体に曝すことによって調節することもできる。例えば、プラズマ処理した表面を、空気、純粋な酸素、又は水に曝すことにより、過酸化物基を形成することができる。ある実験では、水又は酸素に曝す時間を2分まで延ばすことによって、表面活性基の濃度は著しく低下しなかった。表面活性化は、プラズマで改質された表面を気体又は液体に浸漬することなく実現することもできる。さらに、水は、表面過酸化物の形成を促進させるために、プラズマ前駆体及び/又はキャリアガス(複数可)と共に含めることができる。
【0034】
[0059]基板表面をAPプラズマで所望の時間活性化した後、エチレン系不飽和モノマー又はモノマー溶液を導入し、基板表面のポリマー開始部位に接触させ、それによって、基板表面からの直接のポリマー鎖成長を促進させる。ポリマー鎖は、活性部位部分又はそれ以外の部分を通して基板に共有結合している。
【0035】
[0060]古典的なフリーラジカル重合又は制御されたラジカル重合を介して液相反応混合物中で重合することができる、任意のエチレン系不飽和モノマーを、使用することができる。非限定的な例には、ビニル及びジビニルモノマーが含まれ、具体的な例は、メタクリル酸、アクリル酸、その他の酸ビニルモノマー、メタクリル酸メチルやアクリル酸ブチルなどのアクリル及びメタクリルエステル、ビニルピロリドンやビニルピリジンなどの極性ビニルモノマー、スチレン及び酢酸ビニルなどの無極性ビニルモノマーである。ポリ(ビニルピロリドン)は優れた生体適合特性を有しており、膜汚染を低減する表面改質剤として呈示されており、水性及び有機媒体の両方に混和するので、1−ビニル−2−ピロリドン(VP)は興味深いものである。2つ以上のモノマーの組合せを使用して、グラフトコポリマーを形成することができる。
【0036】
[0061]エチレン系不飽和モノマーは、液相中の純粋なモノマーとして、又はモノマー溶液として提供することができ、グラフトポリマー鎖を基板表面から成長させるのに十分な時間及び温度でプラズマ処理面に接触することが可能である。
【0037】
[0062]特に、溶媒の選択は、モノマー(複数可)と基板表面との間の混和性(即ち、溶解度)を増大させることが可能であり、したがってモノマー湿潤力を改善することができるので、基板表面からグラフト重合を促進させるのに重要な役割を演ずることができる。例えば親水性(即ち、極性)モノマーの場合、水及び/又は別の極性溶媒を使用することができる。非限定的な例には、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、及びアルコールが含まれる。疎水性(即ち、無極性)モノマーの場合、溶媒は、典型的には無極性になり、例えばクロロベンゼン又はトルエンである。溶媒の混合物を使用することができる。一般的な経験から、グラフト化ポリマー鎖の最高表面密度は、最適な条件で実現されるプラズマ表面開始と共に高い表面湿潤力を有する、モノマー−溶媒の対によって得られる。
【0038】
[0063]プラズマ活性化基板表面からのポリマー成長は、古典的なフリーラジカルグラフト重合によって、又は制御された「生きている」グラフト重合によって、誘導することができる。前者の場合、重合は、初期モノマー濃度、反応温度、反応時間、及び任意選択で連鎖移動剤の使用によって制御され、高度な多分散性のポリマー鎖の長さ(典型的には、pI≧2)を有する表面が得られる。制御された「生きている」グラフト重合では、均一な鎖サイズ分布(pI<1.5)の高密度グラフト化ポリマー鎖を有する表面を、実現することができる。理論的には、重合は、終了するまで、即ちモノマーが使い尽くされるまで進行することができる。
【0039】
[0064]適切な、制御された「生きている」重合手法の非限定的な例には、可逆的付加断片化移動(RAFT)重合及びニトロキシド媒介性グラフト重合(NMGP)など、重合を制御するための溶液中のフリーラジカル分子(即ち、フリーラジカル制御剤)を要するものが含まれる。NMGPの場合、化学量論量のフリーラジカル分子をプラズマ活性化面と共に反応混合物に添加し、その表面から伸長(propagation)するフリーラジカルポリマーの成長を制御する。2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)制御剤を使用する、ニトロキシド媒介性重合に関しては、以下の実施例5に記載する。
【0040】
[0065]グラフト重合後、改質された表面を適切な溶媒で洗浄して、吸着されたホモポリマー(又は、2種以上のモノマーが重合に使用された場合はコポリマー)を物理的に除去することができる。このように、水又は別の極性溶媒を使用して、吸着された極性ホモポリマー(例えば、ポリ(ビニルピロリドン))を除去し、無極性溶媒、例えばトルエンを使用して、吸着された無極性ホモポリマー(例えば、ポリスチレン)を除去する。
【0041】
[0066]本発明の別の実施形態では、APPIG重合を使用して、シリコン以外の無機基板、例えば前述の金属、メタロイド、金属酸化物、及び表面活性部位の形成を支えることが可能なその他の金属又はセラミック材料の、いずれかの表面を改質する。シリコンウェーハの場合と同様に、この方法は、表面の清浄化及び調整のステップ、APプラズマを使用して表面に活性部位を形成するステップ、及び活性部位をモノマー又はモノマー溶液に接触させて、基板表面からのグラフトポリマー鎖の形成及び成長を促進させるステップを含む。
【0042】
[0067]本発明の別の実施形態では、有機官能化無機基板は、APPIG重合によって改質される。例えばシリカ及び同様の材料は、(a)加水分解、及び(b)ビニル置換分子との反応によって、ビニル官能化(即ち、ビニル基含有シリル分子でシリル化)することができ、それによってビニル官能化表面が得られるが、これはAPプラズマ処理によって活性化することができ、次いでモノマー又はモノマー溶液に接触させ、それによって、末端グラフト化ポリマー鎖を基板表面から成長させることができる。無機酸化物表面を活性化させるための、ビニル低級アルコキシシランの使用については、米国特許第6440309号(Cohen)に記載されており、その内容全体を、参照により本明細書に組み込む。簡単に言うと、この方法は、表面ヒドロキシル基の形成(例えば、水性酸溶液を使用する)と、その後のビニル活性化との反応(例えば、ビニル−シラン)を含む。代表的なビニル活性剤は、下式を有するビニルアルコキシシランを含む
【0043】
【化1】


(式中、Rは有機基であり;Rは、少なくとも1個のビニル官能基を含有する有機基であり;Rは、低級アルキル(即ち、C1〜C3アルキル)であり;mは、0、−1、又は2であり;nは1から3であり;pは1から3であり;m、n、及びpの合計は4である)。ビニル低級アルコキシシランの、具体的な非限定的な例には、ジアリルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、エチルビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルトリメトキシシランが含まれる。本発明の一実施形態では、大気圧プラズマを使用してビニル基を酸化し、後に行われるモノマーのグラフト重合のための重合開始剤として働く過酸化物を生成する。プラズマは、アジドやカルボニルなどのその他の不飽和基を酸化して過酸化物を生成するのに使用してもよい。しかし、表面活性化部位は不飽和基である必要はなく、任意の有機又は無機基をプラズマで処理して、限定するものではないが表面ラジカル及び過酸化物を含めた重合用の表面開始部位を生成することができる。
【0044】
[0068]本発明の別の有意な実施形態では、ポリマー基板の表面が、APプラズマを使用したグラフト重合によって改質される。原則として、任意の有機又は無機ポリマーを、本発明の方法により処理することができる。無機ポリマーの非限定的な例には、ポリスチレン、ポリアミド、及びポリスルホンが含まれる。ポリマー基板はAPプラズマに曝され、それによって、表面結合活性部位(ポリマー開始部位)が基板上に形成される。活性部位とモノマー溶液とを接触させることにより、ポリマー鎖の形成及び成長が促進され、それが活性部位部分又はそれ以外の部分を通して基板に共有結合する。
【0045】
[0069]ポリマー基板の表面改質は、任意選択でキャリアガスと共に、上述のプラズマ前駆体ガスのいずれかを利用することができる。典型的には、改質されるポリマー基板の表面は清浄化されるが(即ち、汚染物質を実質的に含まない)、ピラニア溶液などの攻撃的な酸は、一般にこの目的では用いられない。代わりに基板を、単に1種又は複数の溶媒に浸漬し又はその溶媒で濯ぎ、次いでAPプラズマ処理の前に乾燥する。活性部位の形成は、強力なプラズマ種と、ポリマー基板そのものに固有の化学部分との間の相互作用から生ずるので、湿度チャンバでの調整は典型的には不要である。しかし、過酸化物などの表面活性部位の形成のさらなる制御が行われるように、水を、プラズマ前駆体及び/又はキャリアガス流(複数可)に導入することができる。吸着表面水の量、並びにプラズマ出力、処理時間、及びその他の加工パラメータは、可変であり、活性部位、最終的にはグラフトポリマーの密度を最大限にするために、必要に応じて制御することができる。
【0046】
[0070]ポリマー基板からのグラフト重合は、任意の所望の不飽和モノマーと共に、液体モノマー又はモノマー溶液を使用して実施することができる。例えば、1−ビニル−2−ピロリドン(極性ビニルモノマー)のグラフト重合は、APプラズマ活性化(水素プラズマを使用)の後に、水性反応混合物(80℃でのモノマー濃度20%v/v)中で実現し、その結果、2時間後に約80オングストロームの厚さを有する、薄く稠密なポリマーフィルムが得られた。同様に、メタクリル酸(イオン系ビニルモノマー)のグラフト重合が、APプラズマ活性化(水素プラズマを使用)後に、メタクリル酸水溶液(60℃でのモノマー濃度20%v/v)中で実現され、その結果、2時間後に約40オングストロームの厚さを有する薄く稠密なポリマーフィルムが得られた。
【0047】
[0071]本発明による大気圧プラズマ誘導グラフト重合によって、ポリマー表面を改質することにより、ポリマー材料に、より大きな表面接着をもたらし;プラスチック材料の表面湿潤性、耐水性、及び耐溶媒性を制御し;化学センサの表面化学官能性、化学選択性、及び表面トポロジーを設計製作し;耐摩耗性を増大させ;医療機器に対する生体適合性を改善し;分離膜の用途に合わせて表面付着(例えば、有機物付着、生物付着、及び鉱塩スケーリング)を減少させることが可能になる。
【実施例】
【0048】
[0072]下記の材料及び方法を使用して、本発明によりいくつかのナノ構造シリコン、有機官能化されたもの、及びポリマー基板を作製した(表1)。
【0049】
【表1】

【0050】
[0073]材料。最高級シリコン<100>ウェーハを、Wafernet,Inc.(San Jose、CA)から得た。未処理のウェーハサンプルを、片面研磨し、加工用に1×1又は2×2cm片に切断した。脱イオン(DI)水を、Millipore(Bedford、MA)Milli−Q濾過システムを使用して生成した。フッ化水素酸、硫酸、水性過酸化水素(30%)、工業用塩酸、クロロベンゼン(99%)、及びテトラヒドロフランを、Fisher Scientific(Tustin、CA)から購入した。無水n−メチル−2−ピロリドン(99.5%)、試薬級トルエン、及びテトラヒドロフランは、Fishcer Scientific(Tustin、CA)から得た。水酸化ナトリウム阻害剤(<0.1%)を含む1−ビニル−2−ピロリドン(99%)は、入手したままの状態で使用し、Alfa Aesar(Ward Hill、MA)から得た。Sigma Sldrich(St.Louis、MO)から得たカテコール阻害剤(<0.1%)を含むスチレン(99%)を、シリカカラム(Fisher Scientific、Tustin、CA)を使用したカラムクロマトグラフィにより精製した。水酸化アンモニウム水溶液(50%)はLabChem,Inc.(Pittsburg、PA)から購入した。Sigma Aldruich(St.Louis、MO)から得た2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO、98%)は、表面ラジカル決定のために使用し、ニトロキシド媒介性グラフト重合用の制御剤として使用した。
【0051】
[0074]シリコン表面の作製。シリコン基板を多段階表面クリーニング及び調整プロセスにかけて、入手したままの状態のウェーハ上の表面汚染物質及び自然酸化物層を除去した。基板をピラニア溶液(7:3(v/v)硫酸/過酸化水素)中で、90℃で10分間清浄化し(実施例1〜3、7〜10)、次いで3回濯いで残留物を除去した。次いで基板を、フッ化水素酸の20%(v/v)水溶液に浸漬して、自然酸化物層を除去し、次いで以前の通り3回濯いだ。親水性(即ち、極性)ビニルモノマーグラフト重合では(実施例1〜3)、シリコン基板を周囲温度で8時間、1%(v/v)塩酸水溶液に浸漬し、次いでDI水中に1時間置いて、シリコン表面を完全にヒドロキシル化した(即ち、ウェーハ表面の親水性を増大させる表面ヒドロキシルを生成した)。次いで加水分解されたシリコンウェーハを、100℃で10時間、真空中で炉内乾燥して、表面水を除去した。疎水性(即ち、無極性)重合では(実施例7〜10)、表面加水分解を必要としなかった。
【0052】
[0075]シリル化シリコン表面の作製。シリコン基板を、まずピラニア溶液(7:3(v/v)硫酸/過酸化水素)中で、90℃で10分間清浄化し、次いで3回濯いで残留物を除去することにより、シリル化した(実施例4〜5、11〜12)。次いで基板を、フッ化水素酸の20%(v/v)水溶液に浸漬して、自然酸化物層を除去し、次いで以前の通り3回濯いだ。シリコン基板を周囲温度で8時間、1%(v/v)塩酸水溶液に浸漬し、次いでDI水中に1時間置いて、シリコン表面を完全にヒドロキシル化した(即ち、ウェーハ表面の親水性を増大させる表面ヒドロキシルを生成した)。次いで加水分解したシリコンウェーハを、100℃の真空中で10時間、炉内乾燥して、表面水を除去した。加水分解したシリコン表面を、トルエンにビニルトリメトキシシランを混合した10%(v/v)混合物中に浸漬することによって、シリル化し(実施例4〜5、11〜12)、所望の期間(典型的には24時間以下)にわたり周囲温度で反応させた。シリル化シリコン基板をトルエン中で超音波処理し、テトラヒドロフランで洗浄し、真空炉内で一晩乾燥した。
【0053】
[0076]ポリマー表面の作製。ポリマー基板(実施例6、13、14)を、窒素ガス流により一様に清浄化して、表面吸着粒子を除去した。
【0054】
[0077]シリコンのグラフト重合。シリコン上のAPプラズマ処理表面からのグラフト重合は、基板をモノマー溶液に浸漬することによって実現した。1−ビニル−2−ピロリドン(実施例1〜3)グラフト重合の場合、10〜50%(v/v)の初期モノマー濃度を使用して、水溶媒(実施例1)及びn−メチル−2−ピロリドン溶媒(実施例2)中でグラフト重合を行った。また、1−ビニル−2−ピロリドンのグラフト重合は、水及びn−メチル−2−ピロリドンの混合物中の初期モノマー濃度30%(v/v)に関しても、シリコン上で実証した(実施例3)。水性重合反応混合物のpHを、水酸化アンモニウムで調節して、副反応を低減させた。反応混合物の温度を80℃(±1℃)に維持し、各反応を少なくとも8時間にわたり進行させた。反応の後、表面改質シリコン基板をDI水で3回濯ぎ、次いで超音波処理して、潜在的に吸着されホモポリマーを除去した。次いで清浄化した基板を、100℃の真空中で一晩、炉内乾燥した。実施例2では、原子間力顕微鏡により観察された表面鎖被覆範囲は、膜厚が約55オングストローム、ポリマー鎖間隔が5〜10nmの範囲、及び平均フィーチャ直径が約17nmの、薄い稠密なポリマーフィルムを示した。その他の結果を以下に示す。
【0055】
[0078]実施例7及び9では、水素プラズマ処理シリコン基板を、クロロベンゼン(実施例7)及びトルエン(実施例9)溶液にスチレンを混合した混合物中でグラフト化したが、このときの初期モノマー濃度範囲は10〜50%(v/v)であり、T=70℃、85℃、及び100℃であった。反応後、表面改質シリコン基板をトルエン中で超音波処理し、テトラヒドロフランで清浄化し、真空炉内で乾燥した。偏光解析法によって測定されたポリマー膜厚は、70及び85℃でクロロベンゼンに溶かした30%(v/v)の初期モノマー濃度で、表面改質用に安定したポリマー膜厚であることを実証した。85℃で20時間経た後、30%(v/v)のスチレンでは、グラフト化フィルムのポリマー膜厚が120オングストロームであった。ポリスチレンフィルム成長の速度は、反応温度及び初期モノマー濃度に依存したが、100℃で30及び50%(v/v)のスチレンでのグラフト重合は、フィルム成長の制御が不十分であり、不均質な表面トポロジーをもたらした。
【0056】
[0079]実施例8では、クロロベンゼン溶液にスチレンを混合した50%混合物中、100〜130℃(120℃)の温度範囲及び5〜15mMのTEMPO制御剤濃度で、72時間にわたる反応時間で基板をグラフト化した。反応後、ポリマー改質シリコン基板を超音波処理して、表面吸着ホモポリマーを除去し、テトラヒドロフランで濯ぎ、100℃で乾燥した。実施例8では、制御され改善された表面鎖成長は、プラズマで開始されるニトロキシド媒介性グラフト重合によって、クロロベンゼンにスチレンを溶かしたものを用いて実現したが、このときTEMPO制御剤は[T]=5〜15mMであり、反応温度は120℃であり、初期モノマー濃度は50%v/vであり、反応時間は72時間であった。制御されたニトロキシド媒介性グラフト重合でのポリマーフィルム成長は、[T]=10mMの時間で線形に増大し、約280オングストロームの膜厚に達した。さらに、表面粗さは0.52nmであり、滑らかな未処理のシリコンウェーハで予測される表面粗さと同様であった。経時的な線状ポリマーフィルム成長及び低い表面粗さは、プラズマ誘導ニトロキシドグラフト重合が、制御されたフリーラジカル重合反応であることを示している。
【0057】
[0080]実施例10では、水素プラズマ処理したシリコン基板を、酢酸エチルに酢酸ビニルを混合した混合物中でグラフト化したが、このときの初期モノマー濃度範囲は10〜30%(v/v)であり、T=50℃、60℃、及び70℃であった。
【0058】
[0081]シリル化シリコンのグラフト重合。シリル化シリコン基板(実施例4、5、11、12)を、プラズマ表面処理及びモノマー溶液中への浸漬によって、グラフト重合した。1−ビニル−2−ピロリドンのグラフト重合は、DI水溶媒(実施例4)及びn−メチル−2−ピロリドン(実施例5)の両方において、10〜50%(v/v)のモノマー濃度範囲で、80℃で8時間にわたって実現した。反応後、改質された表面をDI水で清浄化し、次いで超音波処理して、吸着される可能性のあるホモポリマーを除去した。次いで清浄化された基板を、100℃の真空中で一晩、炉内乾燥した。またシリル化シリコンを、酢酸ビニル(実施例11)及びビニルピリジン(実施例12)により改質した。酢酸ビニルグラフト重合は、酢酸エチル中30%(v/v)のモノマー濃度で、60℃で8時間にわたり実施した。ビニルピリジングラフト重合は、メトキシプロパノール中30%(v/v)のモノマー濃度で、80℃で8時間にわたり実施した。
【0059】
[0082]ポリマー表面のグラフト重合。ポリスルホン(実施例6)を、DI水中での1−ビニル−2−ピロリドンのプラズマ誘導グラフト重合によって改質した。初期モノマー濃度は、2時間にわたり70℃で20%(v/v)であった。ポリアミドも、DI水中でのメタクリル酸(実施例13)及びアクリル酸(実施例14)のプラズマ誘導グラフト重合によって改質した。初期モノマー濃度は、両方のモノマーに関し、2時間にわたり50〜70℃の温度範囲で、5〜20%(v/v)の範囲内であった。ポリアミド表面からポリメタクリル酸をグラフト化するために実現された膜厚は、60℃で2時間にわたり、20%(v/v)のモノマー濃度で約40オングストロームであった。
【0060】
[0083]表面開始剤の決定。プラズマ処理中に形成される表面ラジカルが存在しまた比較的豊富であることが、シリコン表面ラジカルに共有結合する周知のフリーラジカル捕捉剤である、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)を使用して決定された。表面結合したTEMPO(FTIRによって検出された)の存在は、表面ラジカルの密度の間接的測定に役立った。例えば、シリコン基板(1×1cm)をプラズマ処理し、直ぐに、n−メチル−2−ピロリドンに溶解した0.1mM TEMPOの溶液に浸漬し、90℃で24時間にわたり反応させた。次いで基板を取り出し、テトラヒドロフラン中で2時間超音波処理して、表面吸着TEMPOを除去し、最後に100℃の真空中で、残留溶媒を除去するのに十分な時間、炉内乾燥した。
【0061】
[0084]グレージング角FTIR分光法を使用して、各ウェーハ毎に少なくとも3カ所からスペクトルを収集することにより、表面結合TEMPOを検出した。TEMPOの存在は、芳香族炭素原子及びニトロキシド官能基に関してそれぞれ3019cm−1及び1100cm−1でのFTIR吸収ピークによって、確認された。吸収スペクトルを、溶液濃度と比較して、1.0〜0.001mMの初期TEMPO濃度範囲での濃度と吸光度との線形較正曲線を作成した。
【0062】
[0085]表面の特徴付け。フーリエ変換赤外(FTIR)分光法による表面分析を、グレージング角アタッチメント(Varian Digilab Division、Cambridge、MA)を備えたBio−Rad FTS−40(実施例1〜3)を使用して実施し、又は減衰全反射アクセサリ(BioRad Digilab Division)を備えたBioRad FTS−40FTRを使用する減衰全反射フーリエ変換赤外(ATR−FTIR)分光法(実施例4及び5)を使用して実施した。TEMPO反応表面及びプラズマ処理表面に関するグレージング角IRスペクトルを、清浄な未処理の基板のスペクトルから差し引くことによって加工した。得られたスペクトルは、表面化学種濃度に比例した吸光度の値を有するクベルカ−ムンク単位で表した。
【0063】
[0086]ポリ(ビニルピロリドン)グラフト化基板表面に関する接触角の測定値は、KrussモデルG−23接触角機器(Hamburg、ドイツ)を用いた液滴法によって得られた。測定前に、各ポリマーグラフト化基板を濯ぎ、テトラヒドロフラン及びDI水中でそれぞれ15分ずつ個別に超音波処理した。その後、ポリマーグラフト化基板を真空中で炉内乾燥したが、そのときの温度は、基板及びグラフト化ポリマー層の乾燥を促進させるが熱損傷が回避される適切な温度であった。例えば、80℃で30分という乾燥時間は、ポリ(ビニルピロリドン)グラフト化シリコンウェーハに適切であった。接触角の測定は、40〜50%の相対湿度及び22℃で、DI水を使用して行った。各接触角のデータは、所与の表面の種々の領域における個別の5滴から得た結果を、平均することによって得られた。液滴のサイズ及び体積は、接触角測定値のばらつきを抑えるために、ほぼ一定に保持した。
【0064】
[0087]プラズマ処理表面及びポリマーグラフト化基板の膜厚は、Sopra GES5分光偏光解析器(SE)(Westford、MA)を使用して決定した。広域可変角SEを、250〜850nmの範囲にわたって操作し、収集された偏光解析データを、ユーザ定義多層フィルムモデルに当てはめたが、このとき膜厚は、Levenberg−Marquardt回帰法の使用を通して計算されたものである。各測定値を、基板上の5カ所について平均し、標準偏差は10%を超えなかった。
【0065】
[0088]原子間力顕微鏡(AFM)撮像を、Nanoscope IIIaSPM制御器(Digital Instruments、Santa Barbara)を備えたマルチモードAFMを使用して行った。全てのAFMスキャンは、力の定数が20〜70N/mであり公称曲率半径が5〜10nmであり且つサイドアングルが20°であるNSC15窒化シリコンプローブ(Digital Instruments、Veeco Metrology Group、Santa Barbara、CA)を使用して、周囲空気中でタッピングモードで行った。シリコン基板上のAFMスキャン(1×1μm)は、0.5〜1Hzのスキャン速度で行った。少なくとも5カ所で、各改質基板毎にサンプリングし、各部位毎に2回スキャンした。表面を、0及び90°で撮像して、画像に方向性の誤差が無いことを確認した。高さデータ及び位相データを、同じスキャン領域に関して同時に採取した。表面粗さの二乗平均平方根(RMS)は、1×1μmスキャンの高さデータから直接決定し、但しRrmsはRMS粗さであり、Zは、合計でN個のサンプルの中でi番目の高さサンプルであり、Zavgは、平均高さである。
【数1】


平均に対する高さ分布データの非対称の尺度である歪度Sskewは、下式から決定され、
【数2】


但しσは標準偏差である。グラフト重合表面のポリマー体積は、ポリマー表面フィーチャのz高さプロファイルに関するグラフト化ポリマー領域の体積積分によって、1×1μmの領域に関して決定した。グラフト化ポリマー体積に対する未処理の表面フィーチャの寄与を最小限に抑えるために、全グラフト化ポリマー体積を得ようとして積分するときに、各表面毎に5カ所から決定された未処理の基板表面の平均Z高さを表面フィーチャ高さデータから差し引いた。改質表面の高さ分布を決定するために、ポリマー体積測定に使用されたZ高さデータをガウス分布と比較して、分布内のテール(小さい、又は大きなフィーチャ)の存在が明らかになるようにした。フィーチャ間隔及び平均フィーチャ直径は、1×1μmの領域上で10カ所の種々の部位から得られた測定値によって決定したが、この場合、フィーチャの境界は、デジタル画像画素分析に基づいて画定された。
【0066】
[0089]ポリマー基板のプラズマ活性化に関する先の研究と矛盾すること無く、得られた表面開始部位の表面密度は、部分的には、プラズマ処理時間及び高周波(RF)出力によって決定された。しかし、無機基板の場合、高密度の活性部位(したがって、稠密なグラフトポリマー層)の形成は、基板表面に吸着される水の量を、慎重に制御する必要があることがわかった。吸着表面水は、ポリマー基板に必要ではなかった。表面開始部位の生成に対する、プラズマ表面処理と吸着表面水とを組み合わせた影響を、TEMPO結合アッセイを使用して評価した。
【0067】
[0090]基板のAP水素プラズマ表面処理によって発生した表面ラジカル種の存在を、TEMPO結合アッセイを使用して検証した。プラズマ処理時間及びRF出力の両方の影響を、最初に評価して、最適なプラズマ処理条件を選択した。TEMPO表面結合分析によって呈示されたラジカル種の表面密度は、図3に示されるように、べき乗則依存性に従ってプラズマ曝露時間と共に、10秒の処理時間で到達する最大被覆範囲まで増大した(RF出力 40W)。シリコン表面の場合、プラズマ処理時間を10秒よりも長くすると、20及び30秒の曝露時間でそれぞれ70%及び90%よりも高い割合で、ラジカル表面被覆範囲に同様の低下が生じた。これらの知見は一般に、表面ラジカル密度を最大限にする最適なプラズマ曝露処理時間が見出された、有機材料に関して行われたその他の研究と、一致していた。この挙動は、表面ラジカル形成及びその後の不動態化に起因し、水素プラズマ種の滞留時間が表面で増大するので、表面開始剤の除去又は不活性化をもたらす。しかし、ポリマー材料の低圧プラズマ活性化を使用した、最適な表面ラジカル形成に必要な処理時間間隔は、無機表面のAPプラズマ処理よりも著しく長いと報告されたことに留意すべきであり:ポリエチレンのアルゴンプラズマ処理では180秒であり、ポリアクリル酸のアルゴンプラズマ処理では60秒であり、ポリウレタンの酸素プラズマ処理では30秒であった。
【0068】
[0091]RFプラズマ出力は、図4に示されるように、ラジカル開始剤部位の形成及び表面被覆範囲に関する処理時間と定性的に同様の効果を発揮した。表面ラジカルの部位密度は、RFプラズマ出力と共に増加して、最大で40WのRF出力に到達し(処理時間10秒)、次いでRF出力がさらに増大するにつれて、ゆっくりと低下した。プラズマ加工では、RFプラズマ出力の増大によって、気相内での電子−原子間衝突が増大し、プラズマガス中により高い密度の反応性種が発生し、したがって基板表面に発生する。このように、増加したプラズマ処理時間の影響と同様に、表面に生成されたラジカルは、引き続きプラズマ種への過剰曝露によって、不動態化された。
【0069】
[0092]無機基板上の表面ラジカルの安定化に関与する表面化学の考慮は、表面ラジカルの数密度を改善するさらなる戦略をもたらした。ポリマー表面の化学的表面特性により、プラズマ処理後に擬似安定開始部位(例えば、エポキシド)が形成されるが、無機表面ラジカルは不安定であり、原子の組換え及び/又は分解などの分子内転位を受けて、非ラジカル性休止種が形成される。十分に長い時間、表面活性を維持するために(その後のグラフト重合のために)、本発明の研究では、無機基板の表面ラジカルの形成及び安定化において吸着表面水が極めて重要であることがわかった。理論に拘泥するものではないが、吸着表面水の有益な役割は、表面過酸化物を形成するための表面ラジカルと水との反応の結果と考えられ、又はおそらくは、水との水素結合を通してシリコンラジカルの安定化に起因すると仮定される。したがって、表面開始部位の生成に対する表面水の影響は、湿度制御チャンバ内で基板を平衡化することによって表面水被覆度が変化する、連続実験で評価した。
【0070】
[0093]図5に示すように、TEMPO結合分析によって示唆される表面ラジカルの密度は、22℃で最大50%の相対湿度(%RH)になるまで、増大する吸着表面水被覆範囲と共に増加した(最適なプラズマ曝露は、RF出力40Wで10秒間)。他の箇所で既に述べたように、シラノール濃度が7.6μmol/mである完全ヒドロキシル化シリカ表面の場合、水の単一吸着単層の形成は、22℃で約51%RHで生じ、表面水とシラノールとの比が1:1と想定される。このように、50%RHで本発明の研究で得られた表面活性部位の最大密度は、ほぼ単一の表面水単層被覆範囲に相当することが推測できる。単層上の表面水被覆範囲では、相対湿度が50%から60%に上昇するにつれ、表面ラジカル密度に90%という著しい低下が生じた。水素プラズマ種の原子半径が約0.5Åであるのに対し、1、2、及び3つの単層に関する吸着表面水の膜厚は、それぞれ1.2、2.7、及び4.3Åであることに留意されたい。表面水の層厚が増大するにつれ、水の被膜はプラズマ粒子の物理的障壁になったと考えられ、それによって、下に在る面との直接的な相互作用が減じられる。上述の結果は、無機基板上での表面水被覆範囲の最適な制御は、プラズマ処理時間及びRF出力と一緒に、グラフト重合に必要な表面開始部位の密度を制御するのに必須であったことを示す。
【0071】
[0094]シリコンウェーハのAFM撮像は、未処理のシリコンウェーハのRMS表面粗さ(Rrms=0.17nm)が、60秒の処理時間にわたる表面加水分解及びAPプラズマ処理の後に、本質的に変化しない(Rrms=0.20nm)ことを実証した。しかし、シリコン基板のプラズマ処理は、プラズマ曝露時間が長くなると共に水接触角が低下することによって示されるように、表面親水性の増大をもたらした。しかし、表面ラジカル形成(処理時間=10秒)に最適なプラズマ活性化曝露時間では、プラズマ処理した表面の接触角が、未処理の表面の場合よりも13%だけ低下したことに(即ち、61°から53°)、留意されたい。
【0072】
[0095]シリコン基板への1−ビニル−2−ピロリドン(VP)のAPPIG重合(シリコン−g−PVP)を、最適な表面プラズマ活性化条件(プラズマ曝露時間10秒、RF出力40W、及び22℃で50%RH)で、最初に実施した。ポリマー改質表面を、表面フィーチャの数密度及び間隔、表面フィーチャの高さ分布、RMS表面粗さ(Rrms、方程式1)、及びポリマー体積に関して、原子間力顕微鏡法によって特徴付けた。また、表面粗さに対しては、小さなフィーチャの寄与よりも、より低い密度のより大きな表面フィーチャが優る可能性があることが示された。したがって、表面トポグラフィのより記述的な特徴付けを行うために、ポリマー表面フィーチャの高さ及び歪度(Sskew、方程式2)の分布について分析した。
【0073】
[0096]プラズマ処理したシリコン基板へのAPPIG重合を、VPの重合に最も一般的に使用される水性溶媒中で、最初に行った(例えば、実施例1)。初期モノマー濃度が[M]=10%〜50%(v/v)から増大した水性溶媒中のグラフト重合の結果(表2)は、グラフト化ポリマー体積が約[M]=30%で最大限にされ、[M]=10%に対して、ポリマー体積はほぼ9倍に増加し、表面粗さは増大したことが明らかになった。さらに、[M]=30%でグラフト化された表面のRMS表面粗さ(Rrms=0.41nm)は、未処理のシリコンウェーハのRMS表面粗さよりも約2.4倍大きかった。初期モノマー濃度が30%よりも高く増大するにつれ、ポリマー体積は、[M]=50%で50%よりも低下した。
【0074】
【表2】

【0075】
[0097]水性溶媒中のPVP−グラフト化表面の水接触角の測定(図示せず)は、グラフト化ポリマーの表面被覆範囲が低いために、表面の親水性の測定可能な変化(<5%)を明示しなかった。上述の水性グラフト重合ステップで生成された、シリコン−g−PVPウェーハのAFM撮像を使用して、改質表面のトポグラフィを明らかにした(図6)。これらの研究は、[M]=30%でグラフト化するのに最適なモノマー濃度を特定するのに有用であるが、AFM撮像は、上述のグラフト化の手法では高密度の表面グラフト化を生成することができないことを示したが、これは1つには、水性溶媒に原因があると考えられた。加水分解した表面の水接触角の測定(61°)は、親水性の程度が低いことを示唆し、溶媒−基板表面間の濡れが不十分であることが示され、水性溶媒中でグラフト重合するには不十分であると考えられた。N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、即ちモノマー及び基板の両方に混和する有機溶媒は、グラフト化密度を改善するための、DI水の代用溶媒であることがわかった。湿潤剤としてNMPを用いた接触角の測定は、有機溶媒によって表面が完全に濡れた(<5°)ことを実証した。
【0076】
[0098]NMP中でのグラフト重合は、AFM撮像により観察した場合(図7)、確かに、より高い密度の表面グラフト化フィーチャをもたらし、水性溶媒中のグラフト重合に比べてより高い密度のポリマー鎖であることが明示された。NMP中でのグラフト重合によって得られたPVPグラフト化表面は、初期モノマー濃度の増大と共に(表3)、[M]=30%で得られた最大限に至るまで、ポリマー体積の増大を示したが、これは、水性溶媒で行われた研究と定性的に矛盾するものではなかった。[M]=30%でグラフト化された表面は、[M]=10%でグラフト化されたものと比較して、ポリマー層の厚さが3倍に増加すると共に、それに応じて水接触角が30%減少したことを示した。初期モノマー濃度の増加に伴うグラフト化層の厚さの増加は、初期モノマー濃度と共に表面ポリマーグラフト収率の上昇を最終的に示した1−ビニル−2−ピロリドンのフリーラジカルグラフト重合の動態に関する先の研究と、矛盾するものではない。しかし、初期モノマー濃度が30%よりも高く上昇した場合(即ち、表2に示すように40%及び50%)、グラフト化ポリマー体積はそれぞれ60%及び75%だけ減少したことが観察された。[M]=40%で得られたポリマー層の厚さは、[M]=30%で実現された最大厚さに対して約51%だけ減少したが、ポリマーフィーチャの表面グラフト密度には、明らかな低下は見られなかった。初期モノマー濃度に伴う層の厚さの増大では(約[M]≦30%で)、予測通りに、成長鎖に対してより速い速度でモノマーが付加された(即ち、伸長(propagation))。しかし、連鎖停止(連鎖移動及び連鎖間停止の両方による)も、モノマー濃度と共に増加する。したがって膜厚は、表3に報告されるように、高い初期モノマー濃度で降下すべきである。原則として、且つ初期モノマー濃度40%までのデータにより検証されるように、鎖表面密度は主に、プラズマ処理プロセスによる活性表面部位の生成によって影響を受けるように見えた。しかし予期しないことに、[M]=50%で観察されるような、十分に高いモノマー濃度では、[M]=30%及び40%に比して見掛けのフィーチャ間隔が減少した。NMP溶媒中でグラフト化された表面を水性溶媒に対して比較すると、表面フィーチャ間隔に著しい違いがあることが実証された。例えば、初期モノマー濃度[M]=30%では、水性溶媒中でグラフト化した場合に表面フィーチャ間隔が100から200nmの範囲であるのに比べ、NMP溶媒中でのグラフト化は、5から10nmの表面フィーチャ間隔をもたらした。さらに、水性溶媒の研究に比べ、NMPでのグラフト重合は、グラフトポリマー体積に160%超の増加をもたらし、表面粗さに75%の増加をもたらし、且つポリマーグラフト密度に著しい増加をもたらした。
【0077】
【表3】

【0078】
[0099]溶媒混合物中の有機媒体と水性媒体との比を調節することによって、表面形態及びポリマーグラフト密度は独自に調整されることがわかった。表4に示されるように、平均ポリマーフィーチャの直径は、純粋な水性溶媒に対して[NMP]=60%で9倍近く増大し、フィーチャ間隔サイズは10から50nmの範囲に減少したが、これは、大きく近接したフィーチャが表面に形成されることを示唆している。しかし、NMP:水の比が[NMP]=80%までさらに増大するにつれ、フィーチャの直径は50%よりも大きく減少し、フィーチャ間隔は5から20nmの範囲までさらに減少し、これはより高い表面数密度のより小さなグラフト化ポリマー鎖が形成されることを示している。
【0079】
【表4】

【0080】
[00100]AFM画像は、[NMP]=60%で形成されたグラフト化PVP層(図8c)が、[NMP]=40%(図8b)並びに[NMP]=15%(図8a)でのグラフト化から得られたより小さなグラフト化ポリマーフィーチャに比べて、大きなグラフト化ポリマーのクラスタからなるものであったことを示す。NMP:水の混合物の比が低い場合、改質表面は、均一に分布した表面フィーチャの均質な分布を特徴とした。NMP:水の混合物の比が[NMP]=60%まで増加するにつれ、AFM撮像によって示されるように、大小の球状ポリマー島の明らかな混合物が形成された。また、RMS表面粗さでは、[NMP]=15%でのRrms=0.35nmから[NMP]=60%でのRrms=0.92nmまでの著しい増加があった。これらの知見は、グラフト化ポリマーの表面形態を、溶媒−基板間湿潤特性を変化させることによって調整できることを示唆している。
【0081】
[00101]高表面密度(即ち、ポリマーフィーチャ間隔>50nm)グラフト化ポリマー層のトポロジーに対するNMPの影響は、ポリマー表面フィーチャの高さヒストグラムを調べることによって、都合良く示すことができる。比較として、[M]=30%で[NMP]=60%及び[NMP]=100%のNMP/水混合物中で形成された、グラフト化PVP層に関する高さヒストグラムを、それぞれ図9a及び9bに示す。先の結果は、[NMP]=100%(Rrms=0.72nm)に比べて[NMP]=60%(Rrms=1.52nm)でのグラフト化で表面粗さが増大したことが示されたが、表面フィーチャの高さヒストグラムは、[NMP]=60%で形成されたグラフト化ポリマー表面が二峰性フィーチャ高さ分布を有することを、明らかに示している。これは、[NMP]=60%(図8c)でAFMによって撮像されたポリマー表面フィーチャの形状、形態、及び高さを、[NMP]=100%と比較して考慮したときに、予測することができる。二峰性分布は、サイズ範囲が1nmよりも下の小さいフィーチャと、1〜8nmの範囲のより大きいクラスタとを特徴とすることができる(図9a)。より小さいフィーチャは、表面フィーチャの全数密度に寄与するが、ポリマークラスタとして出現するより大きいフィーチャは、フィーチャの直径又は表面積の増加に起因して、RMS表面粗さに対して不釣合いに大きな寄与を行う(方程式1)。大きなポリマークラスタ又は凝集体は、NMP/水の混合物溶媒によって濡れた不均一な表面の結果、形成されたと仮定される。これとは対照的に、純粋なNMPにおけるグラフト化は、[NMP]=60%でのグラフト化の場合に歪度Sskew=3.42であるのに対し(図9a)、Sskew=1.12である表面フィーチャ高さの連続単一モード分布をもたらした(図9b)。上述の結果は、純粋なNMPでの1−ビニル−2−ピロリドングラフト重合が、NMP/水の混合物に比べてより狭いサイズ分布の係留鎖をもたらしたことを示している。
【0082】
[00102]これらのデータは、グラフト化ポリマー層のトポロジーが、反応条件及び水/NMP混合物組成の適正な選択によって制御でき、それによって広範な可能性ある実用化が可能になることを実証している。
【0083】
[00103]シリコン上でのポリスチレンのプラズマ誘導FRGP層成長。実施例7及び9では、APプラズマ表面開始及びフリーラジカルグラフト重合(FRGP)からなる二段階手法を使用して、ポリスチレンをシリコン基板に化学的にグラフト化した。プラズマ表面開始によるポリスチレングラフト化シリコンの合成は、ATR−FTIR分光分析によって確認した。FRGPでは、スチレンのプラズマ誘導グラフト重合によるモノマー開始が、プラズマ表面開始及び熱溶液開始によって生ずる。前者では、モノマー開始は、プラズマ表面処理による表面ラジカルの形成によって、比較的低い反応温度(T 〜70℃)で実現され、そこからモノマーの付加を引き起こすことができる。後者では、溶液中のモノマーの分解及び重合(T≧100℃)によって、溶液中に残留することができ又は活性化表面部位にグラフト化するためのモノマーと競合することができる、マクロラジカルが形成される。したがって本発明者等は、開始経路と、下記の条件でグラフト化を研究することによる遷移レジームとの両方によって、グラフト化ポリマー鎖成長を考慮に入れた:レジームI=70℃、レジームII=85℃、及びレジームIII=100℃。
【0084】
[00104]グラフト化ポリスチレン表面開始剤及びポリマー鎖密度は、前述のようにプラズマ加工パラメータ(即ち、処理時間、RF出力、表面調整)に依存し、表面結合ポリマー鎖長(即ち、ポリマーブラシの厚さ)は、FRGPに関して確立されたメカニズムで述べたように、初期モノマー濃度及び反応温度に依存した。ポリスチレンのプラズマ誘導グラフト重合は、10〜50体積%の初期モノマー濃度範囲において、図10に示すようにM30グラフト化シリコンに関して最大限の層成長をもたらした。初期モノマー濃度がさらに増加した結果、層成長全体は、M40及びM50基板に関してそれぞれ25%超及び50%超減少した。
【0085】
[00105]レジームIIのM30に関する高い反応温度は、グラフト化ポリマー層の厚さを3.6倍よりも大幅に増大させたが、これは開始の増加と、ポリマーブラシ層の成長に繋がるグラフト化効率とに起因するものであった。レジームIIIのM30に関するグラフト重合は、5時間以内での層成長停止の他に、レジームIIのグラフト化に対しグラフト化ポリマー層の厚さに36%の低下をもたらした。
【0086】
[00106]100℃でのレジームIIIにおけるポリマー鎖の熱開始は、短い反応間隔での溶液粘度の増大、並びに不均質ポリマーグラフト化を明らかにもたらしたが、これらは、層厚の、標準偏差±10%という実質的な増大及び表面の目に見えるポリマー凝集体の存在によって確認された(10×解像度の光学顕微鏡で観察された)。反応時間によるポリマー鎖成長速度(図11)は、表面連鎖伸長及び連鎖停止に対する反応温度の影響を、さらに示す。レジームIIIでのM30に関するグラフト重合は、レジームI及びIIでのグラフト化に比べ、初期表面連鎖成長速度に100%超の増加をもたらした(反応時間<0.5時間)(図11a)。しかし、より長い反応時間にわたり(反応時間 〜8時間)、レジームIIでの表面連鎖成長速度はレジームI及びIIIよりも速く、その初期成長速度は、レジームIIでのグラフト化に関して22.6Å/時であった。
【0087】
[00107]初期モノマー濃度が増加することにより、グラフト化ポリマー層の厚さだけではなくポリマー層成長の制御においても低下が生じた。同様に、M50表面グラフト化に関する連鎖成長の初期速度(t=0.5時間)は、レジームI、II、及びIIIに関してそれぞれ10%、20%、及び24%よりも大きく増大した(図11b)。また、M30表面グラフト化に対する、連鎖停止が開始する前に観察された反応時間間隔の減少については、各反応レジーム毎に示した。このように、レジームI、II、及びIIIでは、モノマーと溶媒との体積比が1:1であることによって、層成長及び全層厚の制御が共に低下した。
【0088】
[00108]本発明の別の実施形態では、グラフト化ポリマーの表面密度は、グラフト化した鎖の高表面密度を実現する高温開始と、ポリマーグラフト化及び早期連鎖停止を低減させる低温表面重合との組合せによって、増加させることができる。このように、高速開始(RI)と言われるグラフト重合手法を使用し、それによって、30%のスチレンをクロロベンゼンに溶かしたものを用い、短い指定時間間隔で、100℃でプラズマ処理シリコン基板をグラフト重合し(ステップ1)、次いで反応時間間隔の残りの時間で、85℃の個別の加熱浴に移した(ステップ2)。RIグラフト化ポリマーフィルム成長は、ステップ1の時間間隔(ts1)に対する独自の依存性を示し、ステップ2の時間間隔(ts2)の後に観察された層の厚さによって測定した(図12)。ts2層厚の38%の増加は、重合速度と、高い反応温度により長く曝されたときに実現される表面開始部位の部分被覆とによって予測されるように、ts1が5〜15分まで増加したときに観察された。最大ts1ポリマー層厚は15分で観察され、ts2層厚の30%の低下は、ts1が30分まで増加したときに観察された。ts1=15分でのRIグラフト化ポリマーフィルム成長は、85℃で30%(v/v)のスチレンをクロロベンゼンに溶かしたもののグラフト重合と比べたとき、それと同様のポリマー層成長挙動を示し、20時間にわたる準線形層成長であった。また、20時間の間隔をおいた後のポリマー膜厚は、表面グラフト化の初期速度の増大によって予測されるように、25%増加した(図13)。
【0089】
[00109]原子間力顕微鏡(AFM)を使用して、レジームI、II、及びIIIでグラフト重合されたポリスチレン層のナノスケールフィーチャを、撮像し比較した(図14)。空気中のポリマー表面フィーチャのタッピングモードAFMは、表面フィーチャ密度、フィーチャ高さ及び直径(即ち、鎖長)、及び1×1μm領域でのフィーチャの空間分布の分析を行うことが可能である。レジームI及びレジームIIでのM30からM50までの初期モノマー濃度の増加は、表面フィーチャ密度及び平均フィーチャサイズの両方の増加を示した。レジームIでのM50グラフト化表面は、側方フィーチャサイズが30〜40nmの範囲内であり且つRMS表面粗さ(Rrms、方程式1)がレジームIでのM30表面グラフト化と比較して100%超増加した、均一に分散した窪みのあるフィーチャ形態をもたらした。同様に、レジームIIにおけるM30及びM50のグラフト化表面を比較すると、Rrmsは0.55nmから1.11nmに同様に増加したことが明らかにされ、このときの平均フィーチャサイズは、それぞれ15〜25nmから50〜60nmの範囲内であった。しかし、モノマー濃度がレジームIIでM50に増加した場合、より小さなポリマー表面フィーチャと入り混じった不均質に分散された大型球形グラフト化ポリマーフィーチャの存在が、AFMによって観察されたことに留意することが重要である(図14d)。見たところ無作為で非対称な表面フィーチャの配置構成は、表面から断片化した開始剤化学種によって開始された高モノマー濃度の結果、溶液中で形成された鎖のポリマーグラフト化に起因する。M50表面に関するAFM研究は、見掛けの速度係数が低下し且つ制御された層成長が少ないというレジームIIにおける先の観察事項を確認しており、このとき停止は、M30表面に比べてより短い時間間隔で生じている。レジームIIIにおけるポリスチレングラフト化M30表面は、レジームIIでグラフト化した層に対してRrmsが3倍超増大し(図14e)、側方フィーチャ寸法が70〜90nmの大きな表面フィーチャからなるものであった。しかし、レジームIIIでグラフト化したM50表面の場合、高いモノマー濃度で熱溶液開始と組み合わせたプラズマ表面開始によって、おそらくは溶液からの鎖グラフト化の結果である、連続したピーク及び谷からなる不均質な層が形成された。グラフト化層の不十分な品質は、制限されたグラフト化ポリマー層成長の制御と共に、これらのグラフト化層が高レベルの表面均一性を必要とする適用例に適していないと考えられることを示唆している。
【0090】
[00110]プラズマ誘導NMGP層の成長。実施例8では、溶液中及び表面から成長するポリマー鎖を可逆的にキャップし、それによって、制御されない重合が防止されるように、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)を使用して、制御されたニトロキシド媒介性グラフト重合(NMGP)の研究を実施した。経時的なグラフト化層の厚さの線形増大によって示される、制御されたラジカル重合は、[T]=10mMでTEMPOの存在下、120℃でのM50表面のグラフト重合によって実現し、その結果、283.4Åのポリスチレンブラシ層厚が得られた。TEMPO([T]=5〜15mM)を加えたNMGPの動力学的成長曲線を、図15に示す。表面グラフト化の制御の増大は、表5に示される全ポリマー層成長の35%の増加によって示されるように、TEMPOの濃度が5から10mMに増加することによって実現した。
【0091】
【表5】

【0092】
[00111]TEMPOをさらに添加しても、線形層成長の挙動は変化しなかったが、全体的な層成長は著しく低下した。TEMPOの増加に伴う層成長の低下は、おそらく、休止期に向かう平衡シフトの直接的な結果であり、したがって、連鎖キャッピングの頻度は増加し、溶液中のラジカルポリマー鎖の成長は低下する。
【0093】
[00112]NMGPに関する反応温度の影響は、表6に示されるように、T=100〜130℃の温度範囲にわたり非線形依存によって示された。
【0094】
【表6】

【0095】
[00113]原子間力顕微鏡法を使用して、NMGPポリマーグラフト化層のトポロジーを撮像し(図16)、高さヒストグラムで表面フィーチャサイズの寄与について解明した(図17)。NMGPポリマー層のAFM画像は、空間的に均質な、非常に稠密なグラフト化ポリマー相であることを特徴とし、この均一な表面の高さの特徴はRrms 0.36nmによって表され、レジームIIでのM30グラフト化表面の場合(Rrms=1.70nm)よりも80%近く低かった。実際に、制御されたポリスチレングラフト化層の表面フィーチャ高さの均一性は、未処理のシリコン表面の場合(Rrms≒0.20nm)に驚くほど似ていた。図14に示される高さヒストグラムデータは、ガウス分布の特徴的な幅ω=1.3mmで0に近付く高さ分布の歪度によって確認されるように、非常に均一なポリマーフィーチャ高さ分布を示唆していた。その他の制御された「生きている」フリーラジカルグラフト重合法との比較では、RMS表面粗さ0.7nmが、シリコンに対するポリスチレンの「生きている」表面開始陰イオングラフト重合に関して報告された。また、表面トポロジー陰イオングラフト重合ポリスチレンは、AFM撮像によって示されるように、層全体に均一に分散された、そのサイズが直径0.2〜0.3μm及び深さ11から14nmに及ぶ「ホール」欠陥を有する、樹枝状構造を示唆した。欠陥形態に関して筆者により提供された理論は、シリコン表面上の低いグラフト化密度に起因するものであった。したがって、シリコン上のNMGPに関する現行の方法は、その他のFRGP又は「生きている」制御された重合方法と比較すると、プラズマ表面開始に起因した、グラフト化ポリマーの高い部分表面密度を実現しただけではなく、TEMPOの存在下で、1)時間に対する線形の層成長と、2)低下したRMS表面粗さと、3)低下した高さ分布歪度とを有する制御された重合を実証したとも結論付けることができる。
【0096】
[00114]TEMPO制御剤が存在しない場合、プラズマ誘導FRGPによるポリマー層の動力学的成長は、モノマー濃度30体積%及び85℃で、表面グラフト化において最大限の層の厚さを示した。反応温度(T=100℃)及びモノマー濃度(50体積%)が共に増大することにより、初期成長速度は増大したが、制御されていない熱開始及び溶液からのポリマーグラフト化が原因で、ポリマー層の厚さは減少した。グラフト化ポリスチレン層のAFM画像では、低モノマー濃度及び反応温度での非常に均一な表面グラフト化と、高モノマー濃度及び反応温度での不均質な球形表面フィーチャの形成とが見られる、動力学的成長データが確認された。制御されたNMGPによる表面グラフト化は、時間に対して線形動力学的成長を示し、AFNによって撮像された表面は、表面フィーチャ高さの分布が均一であると共に表面粗さが低いことを特徴とした。
【0097】
[00115]本発明の実施例2〜4、6、及び10のタッピングモード3D表面レンダリングを、図20〜25に示す。比較のために、図18及び19はそれぞれ、プラズマ処理前のシリコン及びシリル化シリコンの3D表面レンダリングである。
【0098】
[00116]本発明について、例示的な実施形態及び態様を参照しながら述べてきたが、これらに限定するものではない。当業者なら、本発明から有意に逸脱することなく、その他の修正例及び適用例を構成できることが理解されよう。したがってこの記述は、文字通りに且つ均等物の原則に従って、その最も完全且つ公平な範囲を有することになる下記の特許請求の範囲と矛盾することなく且つ下記の特許請求の範囲を支持するものとして、読むべきである。
【0099】
[00117]本文及び特許請求の範囲の全体を通して、値の範囲に関連した「約」という用語の使用は、引用された高い値及び低い値の両方を修正するものであり、本発明が関係する当業者によって理解されるように、測定値、有効数字、及び互換性に関連した変動周辺を反映する。
【0100】
[00118]本出願は、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる、2006年11月10日出願の米国仮特許出願第60/857874号に基づくものであり、且つその優先権を主張するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)大気圧(AP)プラズマ及び(b)エチレン系不飽和モノマー又はモノマー溶液で、基板表面を処理するステップ
を含む、プラズマ誘導グラフト重合によって基板表面を改質する方法。
【請求項2】
前記基板が無機基板を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無機基板が、シリコン、アルミニウム、ハフニウム、ジルコニウム、チタン、鉄、及び金からなる群から選択される元素材料を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記無機基板がシリコンウェーハを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記無機基板が無機酸化物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記無機酸化物が、シリカ、アルミナ、ハフニア、ジルコニア、及びチタニアからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記無機基板が、表面酸化物、水酸化物、過酸化物、又は不飽和モノマーの重合を開始することが可能なその他の官能基の形成を支援することが可能な、金属又はセラミック材料を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記基板がビニル官能化基板を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基板がポリマー基板を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー基板が有機ポリマーを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機ポリマーが、ポリスチレン、ポリアミド、及びポリスルホンからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー基板が無機ポリマーを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記基板が、その表面に吸着されたポリマー層を有する無機基板を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記基板が樹状基板を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記基板がラングミュア−ブロジェット膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記基板がチオール又はシリル化層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記APプラズマが、水素、酸素、窒素、空気、アンモニア、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、HO、メタン、エタン、プロパン、ブタン、及びこれらの混合物からなる群から選択される前駆体ガスから形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記前駆体ガスがキャリアガスによって運ばれる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
プラズマ処理が、水素プラズマを使用して、約5から120秒間にわたり且つ約20から60WのRF出力で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
プラズマ処理が、約10秒間にわたり且つ約40WのRF出力で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記基板を清浄化するステップと、前記基板をAPプラズマで処理する前に、所望の長さの時間にわたって湿度チャンバ内で前記基板を調整するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記基板を調整するステップの結果、前記基板上に吸着水の層が形成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記吸着水の層が実質的に分子の単層である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーが、ビニル又はジビニルモノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記エチレン系不飽和モノマーが、酸ビニルモノマー、アクリル又はメタクリルエステル、極性ビニルモノマー、又は無極性ビニルモノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記酸ビニルモノマーが、アクリル酸又はメタクリル酸を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記エチレン系不飽和モノマーが、1−ビニル−2−ピロリドンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記エチレン系不飽和モノマーがスチレンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
基板表面を、(a)大気圧(AP)プラズマ及び(b)モノマー溶液で処理するステップ
を含む、基板表面を改質する方法。
【請求項30】
前記モノマー溶液が、50体積%までのモノマーを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記モノマー溶液が、少なくとも1種のモノマー及び少なくとも1種の溶媒を含み、モノマー(複数可)及び溶媒(複数可)の両方が極性である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記モノマー溶液が、少なくとも1種のモノマー及び少なくとも1種の溶媒を含み、モノマー(複数可)及び溶媒(複数可)の両方が無極性である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記モノマー溶液が、前記基板に対し、前記基板の表面を濡らすのに十分低い接触角を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記モノマー溶液が、N−メチルピロリドン、水、及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
大気圧(AP)プラズマを基板に向けることによって、基板表面に活性部位を形成するステップと、
前記活性部位をモノマー又はモノマー溶液に接触させることによって、前記基板表面に結合したグラフトポリマーを形成するステップと
を含む、基板表面を改質する方法。
【請求項36】
前記APプラズマがプラズマジェットによって提供される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記グラフトポリマーをフリーラジカルグラフト重合によって成長させる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記グラフトポリマーを、制御されたラジカル重合によって成長させる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記グラフトポリマーを、フリーラジカル分子の存在下で成長させる、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記フリーラジカル分子がTEMPOフリーラジカル分子を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記グラフトポリマーが、pI≧2で多分散鎖長をまとめて有する、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記グラフトポリマーが、pI<1.5で実質的に均一な鎖長をまとめて有する、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
(a)基板の清浄な表面を提供するステップと、
(b)前記基板から、存在する場合には自然酸化物層を除去することによって、清浄な表面を調整するステップと、
(c)前記基板上に吸着水の層を形成するステップと、
(d)プラズマ前駆体ガスから、実質的に大気圧のプラズマを発生させるステップと、
(e)プラズマを前記基板の前記表面に向けることによって、前記基板上にポリマー開始部位を形成するステップと、
(f)前記ポリマー開始部位をモノマー又はモノマー溶液に接触させることによって、前記基板に共有結合される複数のポリマー分子を含むポリマーフィルムを形成するステップと
を含む、ポリマーフィルムを形成し、基板に固定する方法。
【請求項44】
前記ポリマーフィルムを溶媒中で洗浄して、吸着された未結合ポリマーを除去するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
基板表面を、(a)大気圧(AP)プラズマ及び(b)エチレン系不飽和モノマー又はモノマー溶液で処理するステップ
を含み、プラズマ処理時間、高周波(RF)出力、プラズマ源、プラズマ前駆体ガス(複数可)、プラズマキャリアガス(複数可)、及び/又は印加電圧は、表面開始部位の形成が最大限になるように調節される、プラズマ誘導グラフト重合によって基板表面を改質する方法。
【請求項46】
前記基板を、約40WのRF出力で約10秒間プラズマ処理する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
表面に吸着水の層を有する基板表面を、(a)大気圧(AP)プラズマ及び(b)エチレン系不飽和モノマー又はモノマー溶液で処理するステップ
を含み、プラズマ処理による表面過酸化物開始部位の形成は、前記基板表面の吸着水の量に対して最大限にされる、プラズマ誘導グラフト重合によって基板表面を改質する方法。
【請求項48】
前記吸着水の量は実質的に分子の単層である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記基板表面は、約40WのRF出力で約10秒間、水素プラズマで処理される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
基板表面を大気圧(AP)プラズマで処理することによって、プラズマ処理した基板表面を形成するステップと、
第1の温度Tで第1の時間間隔tで、その後、第2の温度Tで第2の時間間隔tで(但し、t<t及びT>T)、エチレン系不飽和モノマー又はモノマー溶液にプラズマ処理した基板表面を接触させることによって、前記基板表面からグラフトポリマー鎖を成長させるステップと
を含む、プラズマ誘導グラフト重合によって基板表面を改質する方法。
【請求項51】
請求項1〜49のいずれか一項に記載の方法に従って、大気圧プラズマ誘導グラフト重合により改質された表面を有する無機又は有機基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A)】
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【図7B)】
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【図7C)】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a)】
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【図14b)】
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【図14c)】
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【図14d)】
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【図14e)】
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【図14f)】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2010−509445(P2010−509445A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536333(P2009−536333)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/023785
【国際公開番号】WO2008/060522
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(504471296)ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ カリフォルニア (13)
【Fターム(参考)】