説明

大環状ムスク

少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトンもしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトンもしくはジラクトン;または環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素もしくはチオエーテル硫黄を含有している前記オキシランもしくはチイランのもの;を含む化合物または化合物の混合物、およびその化合物または化合物の混合物を有効成分として含有する改良された香気、芳香、におい、フレーバーおよび/またはテーストを有する組成物、製品、調合品または物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的にはフレグランスの分野に関する。より詳しくは、本発明は香料やその他物品にジャコウ様におい(musk like odor)を付与する改良された誘導体に関する。これら誘導体は大環状ムスクによって与えられる主題香を要求する用途に有用性を見出す。本発明は新規な大環状ムスクおよび大環状ムスクの混合物に関し、また、それらを香料素材として様々な基質に適用する用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ムスクフレグランスは周知であり、そして膨大な範囲の製品向けの香料の中にしばしば使用されている香料成分である。たとえば、洗濯洗剤、布用柔軟剤、リンスコンディショナー、および編織物繊維上への使用を意図したその他製品に応用するための香料は主として、大環式および多環式ムスクの類のムスクフレグランスを含有している。ムスクフレグランスは多数のパフュームオイル(perfume oils)の中に僅かな量で存在する。従って、全世界の年間のムスクフレグランス需要は数千トンである。明らかに、最大部分はいわゆる多環式芳香族ムスクフレグランスによって提供されている。多環式芳香族ムスクフレグランス(この類の周知の例がエキストラリド(Extralide)、トナリド(Tonalide)、トラセオリド(Traseolide)、ガラクソリド(Galaxolide)などのような様々な商品名で市場に出ている)は生分解されるのが困難であり、そして従って極端に親油性の化合物であり、生体蓄積性挙動を示す、即ち、それらは生物の脂肪組織の中に蓄積し得る、ということが知られるようになってきた。従って、香料業界においては、多環式芳香族化合物に代わるものとして、におい発散性の観点と価格の観点の両方において適する生分解性ムスクフレグランスを緊急に必要としている。多環式芳香族化合物とは対照的に、大環状ムスクフレグランスは生分解性であるとされている(米国特許第6,034,052号明細書)。かかる代表的ムスクフレグランスは官能基としてケトンまたはエステルを担持している炭素原子数13〜17の大環式環を特徴としている。また、2つの官能基を担持している大環状ムスクフレグランスも知られている:たとえば、1,7−ジオキサシクロアルカン−8−オン(欧州特許出願公開第884,315号公報)である。
【0003】
大環状ムスクは香料製造においても長年知られている;この類の香料成分の周知の例は大環状ケトンおよび大環状ラクトン(マクロリド(macrolides))またはジラクトン、たとえば、シクロヘキサデカノン、ヘキサデカノリド、シクロペンタデカノン、シクロペンタデカノリドおよびそれらの様々な不飽和および/またはメチル置換類似体である[Williams, Synthesis 1999, No. 10, 1707-1723]。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大環状ムスクに似たオドラント強度(odorant intensity)を有する改良されたフレグランスおよびフレーバリング(flavoring)を開示する。特に、大環状ムスクのフレーバー特性および/またはフレグランス特性を維持または改良する誘導体を開示する。また、該誘導体の製造方法および該誘導体を含む製造物品も開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明は少なくとも一つの二重結合を含有する特定大環状ムスクにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランまたはチイランに転化されている前記特定大環状ムスクに関する。たとえば、下記式を有する周知の大環状ムスクの二重結合は
【0006】
【化1】

【0007】
本発明によれば、下記式に従って、オキシラン基に転化され、そして次いで望むならばチイラン基に転化される:
【0008】
【化2】

【0009】
本発明の一態様は、少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトンもしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトンもしくはジラクトン;または環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素もしくはチオエーテル硫黄を含有している前記オキシランもしくはチイランのもの;を含む化合物または化合物の混合物にして下記式の化合物を除いた前記化合物または化合物の混合物に関する:
【0010】
【化3】

【0011】
本発明の第二の態様は、少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトンもしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトンもしくはジラクトン;または環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素もしくはチオエーテル硫黄を含有している前記オキシランもしくはチイランのもの;を含む化合物または化合物の混合物を有効成分(active ingredient)として含む改良された香気(aroma)、芳香(fragrance)、又はにおい(odor)特性を有する組成物、製品、調合品または物品に関する。
【0012】
本発明の別の態様は、少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトンもしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトンもしくはジラクトン;または環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素もしくはチオエーテル硫黄を含有している前記オキシランもしくはチイランのもの;を含む化合物または化合物の混合物を有効成分として含有する改良されたフレーバー(flavor)またはテースト(taste)特性を有する組成物、製品、調合品または物品に関する。
【0013】
本発明の更なる態様は、組成物、製品、調合品または物品のテーストまたはフレーバー特性を付与、改良、強化または変更する方法であって、少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトンもしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトンもしくはジラクトン;または環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素もしくはチオエーテル硫黄を含有している前記オキシランもしくはチイランのもの;を含む化合物または化合物の混合物のテーストまたはフレーバー有効量を組成物、製品、調合品または物品に添加することを含む上記方法に関する。
【0014】
本発明の更に別の態様は、組成物、製品、調合品または物品の香気、芳香またはにおい特性を付与、改良、強化または変更する方法であって、少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトンもしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトンもしくはジラクトン;または環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素もしくはチオエーテル硫黄を含有している前記オキシランもしくはチイランのもの;を含む化合物または化合物の混合物の香気、芳香またはにおい有効量を、組成物、製品、調合品または物品に添加することを含む上記方法に関する。
【0015】
本発明の誘導体を組み込んでもよい適切な製品の例は香水およびコロン、キャンドル、エアフレッシュナー、洗剤組成物および消毒剤組成物が挙げられる。
【0016】
たとえば、本発明の誘導体は相当する大環状ムスクが適用されるあらゆる分野におけるフレグランスとして使用できる。
【0017】
(発明の詳細)
本発明は従来の大環状ムスクに比べて増強したオドラントおよび/またはフレーバラント(flavorant)強度を有する改良されたフレグランスおよびフレーバリングを発見したことに基づいている。特に、本発明の化合物は類似の大環状ムスクのフレーバー特性および/または芳香特性を維持しながらそれらに比べてにおい強度を増大する。該化合物の製造方法、該誘導体をフレーバラントおよび/またはフレグランスとして利用する方法、および該誘導体を組み込んだ組成物、製品、調合品および物品も開示されている。本発明の誘導体はムスク主題香を要求するいずれの分野にも有用性を見出している。本発明の化合物および誘導体を組み込む組成物、製品、調合品および物品はキャンドル、エアフレッシュナー、香水、フレグランス、コロン、石鹸、バスもしくはシャワーゲル、シャンプーもしくはその他のヘアケア製品、化粧品、ボディオドラント、デオドラントもしくは発汗抑制剤、液体もしくは固形の布用洗剤もしくは柔軟剤、漂白剤製品(次亜塩素酸塩)、消毒剤、家庭用もしくは工業用全目的クリーナー、食品、フレーバリング、飲料たとえばビールおよびソーダ、入れ歯洗浄剤(錠剤)、フレーバード経口送達製品たとえば舐剤、キャンディ、チューインガム、マトリックス、医薬品などが挙げられる。
【0018】
本発明の誘導体は二重結合がオキシランまたはチウラン基によって置換されているところの大環状ムスクとして見ることができる。より詳しくは、本発明の新規誘導体は少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトン(マクロリド)もしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトン(マクロリド)もしくはジラクトンを含み;下記式の化合物を除く:
【0019】
【化4】

【0020】
上記式の化合物は既知である;しかしながら、香料または香料素材としての用途については知られていなかった。
【0021】
本発明の誘導体には、さらに、環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素またはチオエーテル硫黄を含有している上記オキシランおよびチイランの全てが包含される。本発明の誘導体は、N.ブーダ他(1989年)「チオ尿素の存在下でのチイランからのエポキシドの合成」シンセティック・コミュニケーションズ第199号第491〜500頁(Bouda, N., et al (1989) Synthesis of Epoxides from Thiiranes in the presence of Thiourea. Synthetic Communications 199:491-500)に記載の方法に従って製造することができる。
【実施例1】
【0022】
【化5】

【0023】
500mL丸底フラスコに収容したジクロロメタン(200mL)の中のベルビオン(velvione)(5−シクロヘキサデセン−1−オン、5g)にmCPBA(8.0g、50〜85%)を少しずつ分けて45分かけて添加し、そしてこの溶液を5時間攪拌した。この混合物を飽和NaSO溶液(70mL)で洗浄し、次いで塩水(3×70mL)で洗浄した。有機相をNaSO上で乾燥し、濾過し、そして溶剤を真空蒸発させて純粋な所期生成物を無色油状物(6.0g)として得た。
【実施例2】
【0024】
【化6】

【0025】
エタノール(10mL)と水(6mL)の中の実施例1からのエポキシド生成物にチオ尿素(1.6g)を加え、そしてこの溶液をN雰囲気下で一晩攪拌した。溶剤を真空蒸発させた。この混合物から、ジクロロメタン/酢酸エチル(3:2)を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーによって、所期チイランを無色油状物として得た。
【0026】
本発明の誘導体は、従来の大環状ムスクまたはその物質の代わりに他のフレグランスを天然または人工であれ含有することができるどの製造物品の中にも実際上含有させることができる。例としては、漂白剤、洗剤、フレーバリングおよびフレグランス、アルコール飲料も含めて飲料、などが挙げられる。大環状ムスク誘導体は、石鹸、シャンプー、ボディデオドラントおよび発汗抑制剤、編織物を処理するための固形もしくは液体の洗剤、布柔軟剤、洗剤組成物および/または食器もしくは様々な表面を清浄にするための家庭用および工業用の両方に向く全目的クリーナーのような用途に使用できる。勿論、該化合物の使用は上記製品に限定されるものではなく、それらは香料製造におけるその他の現行用途にも使用される、すなわち、石鹸およびシャワーゲル、ハイジーン(hygiene)もしくはヘアケア製品の付香(perfuming)ばかりでなく、ボディデオドラント、エアフレッシュナーおよび化粧品の付香にも、そしてファイン香料製造すなわち香水およびコロンにさえ使用される。本発明の製品はまた、食品、フレーバリング、飲料たとえばビールやソーダ、入れ歯洗浄剤(錠剤)、フレーバー経口到達製品たとえば舐剤、キャンディ、チューインガム、マトリックス、医薬品など、にも有用性を見出している。これら用途を以下に詳述する。
【0027】
該化合物は付香性成分(perfuming ingredients)として、単独化合物として又はそれらの混合物として、好ましくは、香料組成物の少なくとも30重量%の範囲で、より好ましくは、組成物の少なくとも60重量%の範囲で、使用できる。該化合物は添加成分なしで、それらの純粋な状態で又は混合物として、使用することさえ可能である。個々の化合物の嗅覚的特性はそれらの混合物においても存在し、そしてこれら化合物の混合物も付香性成分として使用できる。これは化合物の混合物を使用することにより分離および/または精製の諸工程を回避できる場合には特に有利であろう。
【0028】
引用した用途の全てにおいて、大環状ムスク誘導体は単独で、又は互いの混合状態で、又は他の付香性成分、溶剤もしくは当分野で現在使用の助剤との混合状態で、使用することができる。これら補助成分(co-ingredients)の本性および種類はここではこれ以上詳細な説明を必要としない、また、それらは説明が完全でなくても当業者はその一般的知識を通してそして付香されるべき製品の本性および所期の嗅覚的効果の関数として選択することができるであろう。
【0029】
それら付香性成分は代表的には、天然または合成起源のエッセンシャルオイルばかりでなく、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、酢酸塩、亜硝酸塩、テルペン、炭化水素、硫黄および窒素含有複素環式化合物のような様々な化学的クラスに属する。これら成分の大多数は参照正本たとえばその内容全体が本明細書の中に組み入れられるS. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, N.J., USA、もしくはそれの最近のバージョンの中に、または似たような本性についてのその他研究の中に、記載されている。
【0030】
大環状ムスク誘導体を様々な製品の中に組み込むことができる割合は広範囲の値の範囲内で変動する。これら値は付香を望んでいる物品または製品の本性および吟味されるにおい効果に依存し、また、化合物を付香用補助成分(perfuming co-ingredients)、溶剤または当分野で現在使用されている助剤との混合状態で使用する場合には与えられた組成物の中の補助成分の本性にも依存する。
【0031】
例としては、大環状ムスク誘導体は、これら化合物が組み込まれている付香性組成物の重量に対するこれら化合物の重量によって、代表的には約0.1〜約10重量%またはそれ以上の濃度で存在する。該化合物は先に引用した様々な消費製品を付香するのに直接に適用される場合には上記濃度よりも遥かに低い濃度が使用できる。
【0032】
該化合物は、たとえば、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、次亜ハロゲン酸塩(hypohalites)特に次亜塩素酸塩、過酸素化された漂白剤たとえば過ホウ酸塩などのような漂白剤および活性剤を含有する洗剤の中に使用されてもよい。該化合物は、ボディデオドランドおよび発汗抑制剤、たとえば、アルミニウム塩を含有するもの、の中に使用することもできる。これら態様を以下に詳述する。
【0033】
ここに記載された誘導体に加えて、ここでの組成物は洗浄性界面活性剤および場合によっては一つまたはそれ以上の追加の洗剤成分を含んでおり、追加の洗剤成分には、洗浄性能を支援もしくは強化するための又は清浄にされるべき基質のトリートメントのための又は洗剤組成物の美感を変えるための材料(たとえば、香料、着色料、染料など)も包含される。ここで代表的には約0.5〜約90重量%のレベルで有用である合成の洗浄性界面活性剤の非限定的な例はコンベンショナルC1〜18アルキルベンゼンスルホネート(「LAS」)や、第一(primary)、枝分れ鎖およびランダムC10〜20アルキルスルフェート(「AS」)などが挙げられる。
【0034】
合成洗剤だけを組み込んだ好ましい組成物は約0.5〜50%の洗剤レベルを含有する。石鹸を含有する組成物は好ましくは約10〜約90%の石鹸を含む。
【0035】
ここでの組成物は他の成分たとえば酵素、漂白剤、布柔軟剤、色移り防止剤(dye transfer inhibitors)、泡抑制剤(suds suppressors)、およびキレート剤、全て当分野で周知、を含有することができる。
【0036】
ここに記載された大環状ムスク誘導体は飲料の中に組み込むことができ、そして飲料に様々なフレーバリングを付与することができる。飲料組成物はコーラ飲料組成物であることができ、また、コーヒー、紅茶、乳飲料、果汁ドリンク、オレンジドリンク、レモンライムドリンク、ビール、モルト飲料、またはその他のフレーバード飲料であることもできる。飲料組成物は一つまたはそれ以上のフレーバリング剤;人工着色料;ビタミン添加物;保存料;カフェイン添加物;水;酸味料;増粘剤;緩衝剤;乳化剤;および/または果汁濃縮物も含むことができる。
【0037】
使用されてもよい人工着色料はカラメル色素、黄色6号および黄色5号が挙げられる。有用なビタミン添加物はビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC(アスコルビン酸)、ナイアシン、パントテン酸、ビオチンおよび葉酸を挙げられる。適する保存料は安息香酸ナトリウムまたはカリウムが挙げられる。使用されてもよい塩は塩化ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムが挙げられる。例示の乳化剤はアラビアガムおよびピュリティガム(purity gum)であり、そして有用な増粘剤はペクチンである。適する酸味料はクエン酸、燐酸およびリンゴ酸が挙げられ、そして可能性のある緩衝剤はクエン酸ナトリウムおよびカリウムが挙げられる。
【0038】
一態様においては、飲料は炭酸コーラ飲料である。pHは一般に約2.8であり、そしてこれら組成物向けのシロップをつくるために次の成分を使用することができる:ここに記載の誘導体の一つまたはそれ以上を含むフレーバー濃縮物(22.22mL)、80%燐酸(5.55g)、クエン酸(0.267g)、カフェイン(1.24g)、人工甘味料、シュガーまたはコーンシロップ(実際の甘味料に依存して、好みに応じて)およびクエン酸カリウム(4.07g)。飲料組成物はたとえば、上記シロップと炭酸水を、50mLシロップ対250mL炭酸水の割合で、混合することによって調製できる。
【0039】
ここに記載された誘導体の一つまたはそれ以上を含むフレーバー食品および医薬品組成物も調製できる。誘導体は当業者に周知の技法を使用して通常の食料の中に組み込むことができる。代わりに、ポリマー粒子の中に誘導体を組み込むこともでき、それを次いで、通常、固体または半固体の基質である経口送達可能なマトリックス材料の中に及び/又はその上に分散させることができる。チューインガム組成物の中に使用された場合には、誘導体は組成物を口の中で噛みつづけたときに経口送達可能ポリマーマトリックス材料の中に放出されることができ、従って、組成物のフレーバーが持続される。乾燥粉末またはミックスの場合には、フレーバーは製品が消費されるとき利用可能にされる又は組成物が更に加工されるときにマトリックス材料の中に放出されることができる。2種のフレーバーをポリマー粒子と組み合わせるときには、添加物の相対量はそれら化合物の同時の放出と消耗をもたすように選択することができる。
【0040】
一態様においては、フレーバー組成物は経口送達可能マトリックス材料を含んでおり;多数の水不溶性ポリマー粒子が経口送達可能マトリックス材料の中に分散されており、そこでは、ポリマー粒子は個々に内部細孔の網目構造を規定しておりそして消化管の中では非崩壊性である;そしてここに記載通りの一つまたはそれ以上の誘導体は内部細孔網目構造の内に閉じ込められている。誘導体はマトリックスを噛んだときに放出され口の中で溶解される、又は液体添加、乾燥ブレンディング、攪拌、混合、加熱、ベーキングおよびクッキングからなる群から選ばれた更なる加工を受ける。経口送達可能マトリックス材料は、ガム、ラテックス材料、結晶化シュガー、非晶質シュガー、フォンダン(fondants)、ヌガー(nougats)、ジャム、ゼリー、ペースト、パウダー、ドライブレンド、乾燥食品ミックス(dehydrated food mixes)、ベークトグッヅ(baked goods)、バッター(batters)、ドウ(doughs)、タブレットおよびレーズンからなる群から選ぶことができる。
【0041】
無臭ガムベースに大環状ムスク誘導体またはここに記載のその他の適する材料を所期フレーバー濃度になるように合わせることができる。代表的には、ブレートミキサーを約11OFに加熱し、ガムベースをそれが柔らかくなるように予熱し、それから、ガムベースをミキサーに装填しそして約30秒間混合する。それから、ミキサーにフレーバード誘導体を添加しそして適切な時間混合する。それから、ミキサーからガムを取り出しそしてガムを温かい間にワックス紙の上でスティック厚に圧延することができる。
【0042】
一態様においては、ここに記載の誘導体はコントロールされた仕方で芳香を放出することのできるシステムの中へ組み込まれる。これらはエアフレッシュナー、洗濯洗剤、布用柔軟剤、消臭剤、ローションおよびその他家庭用品目のような基質を包含する。フレグランスは一般には、ここに記載した通りのエッセンシャルオイルの一つまたはそれ以上の誘導体であり、各々は異なる量で存在する。内容全体が本明細書の中に組み入れられる米国特許第4,587,129号明細書は、90重量%以下のフレグランスまたはパフュームオイルを含有するゲル物品の製造方法を記載している。ゲルはヒドロキシ(低級アルコキシ)2−アルケノエート、ヒドロキシ(低級アルコキシ)低級アルキル2−アルケノエートまたはヒドロキシポリ(低級アルコキシ)低級アルキル2−アルケノエートを有するポリマーと、ポリエチレン性不飽和架橋剤とから製造される。これら材料は連続徐放性を有する、すなわち、それらは長期間にわたって連続的に芳香成分を放出させる。有利なことには、アルデヒド基を含むそれらの誘導体の全てまたは一部を、アセタール基を含むように改質することができ、それは配合物をしてアセタールが加水分解してアルデヒド化合物になるときに長期間にわたって芳香を放出せしめることができる。
【0043】
本発明の主題を開示してきたが、それに照らして、本発明の多数の変更、置換および変種が可能であるということが明らかであろう。本発明はとりわけ記述されたもの以外にも実施できるということを理解すべきである。かかる変更、置換および変種は本発明の範囲内にあることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトンもしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトンもしくはジラクトン;または環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素もしくはチオエーテル硫黄を含有している前記オキシランもしくはチイランのもの;を含む化合物または化合物の混合物にして下記式の化合物を除いた前記化合物または化合物の混合物:
【化1】

【請求項2】
少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトンもしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトンもしくはジラクトン;または環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素もしくはチオエーテル硫黄を含有している前記オキシランもしくはチイランのもの;を含む化合物または化合物の混合物を有効成分として含有している改良された香気、芳香またはにおい特性を有する組成物、製品、調合品または物品。
【請求項3】
化合物が少なくとも30重量%の量で存在している、請求項2記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項4】
化合物が少なくとも60重量%の量で存在している、請求項2記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項5】
香水、フレグランスもしくはコロン、石鹸、バスもしくはシャワーゲル、シャンプーもしくはその他のヘアケア製品、化粧品、ボディオドラント、デオドラントもしくは発汗抑制剤、エアフレッシュナー、液体もしくは固形の布用洗剤もしくは柔軟剤、漂白剤、消毒剤または家庭用もしくは工業用全目的クリーナーの形態の、請求項3記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項6】
化合物または化合物の混合物が他の付香性成分、溶剤、または当分野で現在使用の助剤との混合状態で存在する、請求項5記載の付香性組成物、製品、調合品または物品。
【請求項7】
化合物または化合物の混合物が他のボディオドラント、デオドラントまたは発汗抑制剤成分、溶剤または助剤との混合状態にある、ボディオドラント、デオドラントまたは発汗抑制剤の形態の、請求項6記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項8】
香水もしくはコロン、石鹸、バスもしくはシャワーゲル、シャンプーもしくはその他のヘアケア製品、化粧品、ボディデオドラントもしく発汗抑制剤、エアフレッシュナー、布用洗剤もしくは柔軟剤、または家庭用全目的クリーナーの形態の、請求項5記載の付香された物品。
【請求項9】
化合物または化合物の混合物が他の付香性成分、溶剤または助剤との混合状態にある、香料の形態の、請求項8記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項10】
請求項5記載のボディデオドラントまたはアンチパースピラント組成物、製品、調合品または物品。
【請求項11】
化合物または化合物の混合物が他の付香性成分、溶剤、または当分野で現在使用の助剤との混合状態で存在する、請求項10記載のボディデオドラントまたは発汗抑制剤組成物、製品、調合品または物品。
【請求項12】
請求項5記載の洗剤組成物、製品、調合品または物品。
【請求項13】
化合物または化合物の混合物が他の洗剤成分、溶剤または助剤との混合状態にある、請求項12記載の洗剤組成物、製品、調合品または物品。
【請求項14】
請求項5記載の漂白剤組成物、製品、調合品または物品。
【請求項15】
化合物または化合物の混合物が他の漂白剤成分、溶剤または助剤との混合状態にある、請求項13記載の漂白剤組成物、製品、調合品または物品。
【請求項16】
消毒剤の形態の、請求項5記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項17】
化合物または化合物の混合物が他の消毒剤成分、溶剤または助剤との混合状態にある、請求項16記載の消毒剤組成物、製品、調合品または物品。
【請求項18】
少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトンもしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトンもしくはジラクトン;または環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素もしくはチオエーテル硫黄を含有している前記オキシランもしくはチイランのもの;を含む化合物または化合物の混合物を有効成分として含有する改良されたフレーバー特性またはテースト特性を有する組成物、製品、調合品または物品。
【請求項19】
飲料の形態の、請求項18記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項20】
化合物または化合物の混合物が他の飲料成分、溶剤または助剤との混合状態にある、請求項19記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項21】
フレーバリングの形態の、請求項18記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項22】
化合物または化合物の混合物が他のフレーバリング成分、溶剤または助剤との混合状態にある、請求項21記載のフレーバリング組成物、製品、調合品または物品。
【請求項23】
化合物または化合物の混合物が他の食品成分、溶剤または助剤との混合状態にある、食品の形態の、請求項18記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項24】
化合物または化合物の混合物が他の食品成分、溶剤または助剤との混合状態にある、請求項23記載の食品組成物、製品、調合品または物品。
【請求項25】
チューインガムの形態の、請求項18記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項26】
化合物または化合物の混合物が他のチューインガム成分、溶剤または助剤との混合状態にある、請求項25記載のチューインガム組成物、製品、調合品または物品。
【請求項27】
医薬品の形態の、請求項18記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項28】
化合物または化合物の混合物が他の医薬品成分、溶剤または助剤との混合状態にある、請求項27記載の医薬品組成物、製品、調合品または物品。
【請求項29】
経口送達可能マトリックス材料の形態の、請求項18記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項30】
化合物または化合物の混合物が他のマトリックス材料成分、溶剤または助剤との混合状態にある、請求項29記載の組成物、製品、調合品または物品。
【請求項31】
組成物、製品、調合品または物品のテースト特性またはフレーバー特性を付与、改良、強化または変更する方法であって、少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトンもしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトンもしくはジラクトン;または環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素もしくはチオエーテル硫黄を含有している前記オキシランもしくはチイランのもの;を含む化合物または化合物の混合物のフレーバー有効量を、組成物、製品、調合品または物品に添加することを含む上記方法。
【請求項32】
前記組成物、製品、調合品または物品が飲料の形態にある、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記組成物、製品、調合品または物品がフレーバリングの形態にある、請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記組成物、製品、調合品または物品が食品の形態にある、請求項31記載の方法。
【請求項35】
前記組成物、製品、調合品または物品がチューインガムの形態にある、請求項31記載の方法。
【請求項36】
前記組成物、製品、調合品または物品が医薬品の形態にある、請求項31記載の方法。
【請求項37】
前記組成物、製品、調合品または物品が経口送達可能マトリックスの形態にある、請求項31記載の方法。
【請求項38】
組成物、製品、調合品または物品の香気、芳香またはにおい特性を付与、改良、強化または変更する方法であって、少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトンもしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトンもしくはジラクトン;または環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素もしくはチオエーテル硫黄を含有している前記オキシランもしくはチイランのもの;を含む化合物または化合物の混合物の香気有効量または芳香有効量またはにおい有効量を、組成物、製品、調合品または物品に添加することを含む上記方法。
【請求項39】
前記組成物、製品、調合品または物品が香水の形態にある、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記組成物、製品、調合品または物品がボディオドラント、デオドラントまたは発汗抑制剤の形態にある、請求項38記載の方法。
【請求項41】
前記組成物、製品、調合品または物品が洗剤の形態にある、請求項38記載の方法。
【請求項42】
前記組成物、製品、調合品または物品が漂白剤製品の形態にある、請求項38記載の方法。
【請求項43】
前記組成物、製品、調合品または物品が消毒剤の形態にある、請求項38記載の方法。
【請求項44】
包装材と前記包装材の中に収容された香気、におい、芳香、テーストまたはフレーバーを強化する薬剤とを含む製造物品であって、前記薬剤はそれが添加される組成物、調合品、製品または物品の香気、におい、芳香、テーストまたはフレーバーの強化に有効であり、かつ、前記包装材は前記薬剤が香気、におい、芳香、テーストまたはフレーバーを強化するのに使用できるということを示すラベルを含んでおり、かつ、前記薬剤は、少なくとも一つの二重結合と15〜20個の炭素原子を有する大環状ケトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ケトン、または少なくとも一つの二重結合と14〜19個の炭素原子を有する大環状ラクトンもしくはジラクトンにおいて少なくとも一つの二重結合がオキシランもしくはチイランに転化されている前記大環状ラクトンもしくはジラクトン;または環上にメチル置換基および/または環中のどこかのCHの代わりにエーテル酸素もしくはチオエーテル硫黄を含有している前記オキシランもしくはチイランのもの;を含む化合物または化合物の混合物である、上記製造物品。

【公表番号】特表2006−520395(P2006−520395A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507235(P2006−507235)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/007977
【国際公開番号】WO2004/083357
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505274829)フレシトラル、インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】