天井走行クレーンランウェイの補強方法
【課題】吊り能力を増大させるために天井走行クレーンランウェイを補強する際に、工期の短縮、低コストを図る。
【解決手段】天井走行クレーンランウェイを吊り能力の増大により補強する方法において、クラブトロリー１０の走行方向及び横行方向の移動範囲ＥＲ，ＥＲ１，ＥＲ２を制限する移動制限手段を設けるとともに、この移動制限手段により横行方向の移動が制限されてクラブトロリーが近接せず、支持荷重が増大しないランウェイガーダー２ａ，２ｂに対しては補強を行なわず、移動制限手段による横行方向の移動が制限されず、クラブトロリーが近接することで支持荷重が増大するランウェイガーダーに対して補強を行なうようにした。
【解決手段】天井走行クレーンランウェイを吊り能力の増大により補強する方法において、クラブトロリー１０の走行方向及び横行方向の移動範囲ＥＲ，ＥＲ１，ＥＲ２を制限する移動制限手段を設けるとともに、この移動制限手段により横行方向の移動が制限されてクラブトロリーが近接せず、支持荷重が増大しないランウェイガーダー２ａ，２ｂに対しては補強を行なわず、移動制限手段による横行方向の移動が制限されず、クラブトロリーが近接することで支持荷重が増大するランウェイガーダーに対して補強を行なうようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、吊り能力の増大により天井走行クレーンランウェイを補強する方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
天井走行クレーンとして、例えば製鉄所の転炉、鋳造工程などにおいて溶銑を貯留したレードル（取鍋）を吊り上げて運搬するレードルクレーンがある。
このレードルクレーンは、天井付近で互いに平行に延在している少なくとも一対のランウェイガーダーと、これらランウェイガーダーの間に架け渡されて走行方向に移動するクレーン本体と、このクレーン本体上に搭載され、走行方向に対して水平に直交する横行方向に移動するクラブトロリーとを備えており、クラブトロリーには、フックで係合したレードルを昇降させる巻上げ装置が搭載している（例えば、特許文献１を参照）。
【特許文献１】特開平６−２２１９６９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
ところで、クラブトロリーの巻き上げ装置の吊り荷重を増大する（吊り能力を増大させる）工事を既存のレードルクレーンに対して行なう場合には、ランウェイガーダーの支持荷重が、クレーン（クレーン本体＋クラブトロリー）の自重とレードルの最大荷重の和となるように、ランウェイガーダーの全域を補強する工事が行なわれている。
しかし、このようなランウェイガーダー全域の補強工事は、工期とコストが大幅に嵩むという問題がある。
そこで、本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、吊り能力を増大させるために天井走行クレーンランウェイを補強する際に、工期の短縮、低コストを図ることができる天井走行クレーンランウェイの補強方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００４】
本発明の天井走行クレーンランウェイの補強方法は、天井付近で互いに平行に延在している少なくとも１対のランウェイガーダーと、これらランウェイガーダーの間に架け渡されて走行方向に移動するクレーン本体と、このクレーン本体上に搭載され、前記走行方向に対して水平に直交する横行方向に移動するクラブトロリーとを備えた天井走行クレーンを、吊り能力の増大により補強する方法において、前記クラブトロリーの走行方向及び横行方向の移動範囲を制限する移動制限手段を設けるとともに、この移動制限手段により横行方向の移動が制限されて前記クラブトロリーが近接せず、支持荷重が増大しないランウェイガーダーに対しては補強を行なわず、前記移動制限手段による横行方向の移動が制限されず、前記クラブトロリーが近接することで支持荷重が増大するランウェイガーダーに対して補強を行なうようにしたことを特徴とする方法である。
【０００５】
ここで、前記移動制限手段は、前記クラブトロリーの横行方向の移動を機械的に制限する機械的制限手段と、前記クレーン本体及び前記クラブトロリーを移動させる駆動部を、前記クラブトロリーの位置情報に基づいて電機的に制御する電機的制限手段とを備えていることが好ましい。
また、前記電機的制限手段は、前記クラブトロリーの走行方向及び横行方向の位置を検出するセンサ手段と、このセンサ手段から得た位置情報と予め設定した前記クラブトロリーの走行方向及び横行方向の移動範囲との比較により、前記クレーン本体及び前記クラブトロリーを移動させる駆動部のｏｎ，ｏｆｆ制御を行なう演算・制御手段とを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【０００６】
本発明に係る天井走行クレーンランウェイの補強方法によると、吊り能力の増大により天井走行クレーンランウェイを補強する際に、クラブトロリーの走行方向及び横行方向の移動範囲を制限する移動制限手段を設けるとともに、この移動制限手段により横行方向の移動が制限されて前記クラブトロリーが近接せず、支持荷重が増大しないランウェイガーダーに対しては補強を行なわず、前記移動制限手段による横行方向の移動が制限されず、前記クラブトロリーが近接することで支持荷重が増大するランウェイガーダーに対してのみ補強を行なえばよいので、補強の工期短縮、コストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００７】
以下、本発明に係る天井走行クレーンについて、図面を参照しながら説明する。
図１及び図２は、本発明に係る１実施形態の連続鋳造設備に配置したレードルクレーンを示すものであり、図１はレードルクレーンを走行方向から示し、図２は、レードルクレーンを平面的に示した図である。
図１に示すように、本実施形態のレードルクレーンは、天井付近で互いに平行に水平方向に延在しているＨ型鋼からなるランウェイガーダー２ａ，２ｂと、ランウェイガーダー２ａ，２ｂ上に配置したレール４ａ，４ｂと、レール４ａ，４ｂ上に車輪６ａ，６ｂが乗った状態でランウェイガーダー２ａ，２ｂの間に架設されて走行方向に移動するクレーン本体８と、クレーン本体８上に搭載されて横行方向に移動するクラブトロリー１０と、クラブトロリー１０上に搭載されている巻き上げ装置１２とを備えている。巻き上げ装置１２は、フック１２ａで係合したレードル１４を昇降させる装置である。
そして、図２に示すように、一方のランウェイガーダー２ａの所定の長手方向位置の下方には、連鋳機のスイングタワー１６が配置されているとともに、他方のランウェイガーダー２ａの所定の長手方向位置の下方には、レードル１４を他の場所へ搬送する搬送台車１８が停車している。
【０００８】
次に、吊り能力を増大させる（巻き上げ装置１２の吊り荷重を増大させる）ために、上記構成のレードルクレーンランウェイを補強する方法について、図３から図６を参照して説明する。
本実施形態の補強方法は、クラブトロリー１０が走行方向及び横行方向に移動する範囲を、後述する移動制限手段により、図３の破線で示す走行・横行エリアＥＲ、第１拡張横行エリアＥＲ１及び第２拡張横行エリアＥＲ２に制限しているとともに、第１拡張横行エリアＥＲ１及び第２拡張横行エリアＥＲ２のように、クラブトロリー１０が近接する位置のランウェイガーダー２ａ，２ｂのみに、クレーン本体８及びクラブトロリー１０の荷重と、吊り能力を増大させた分の荷重を加えたレードルの最大荷重との和と同等の支持荷重となる補強を行なっている（図３の補強を行なう部分、補強無しの部分のランウェイガーダー２ａ，２ｂを参照）。
【０００９】
すなわち、ランウェイガーダー２ａの補強位置は、連鋳機のスイングタワー１６が配置されている近傍であり、ランウェイガーダー２ｂの補強位置は、レードル１４を他の場所へ搬送する搬送台車１８が停車する位置の近傍である。
走行・横行エリアＥＲは、ランウェイガーダー２ａ，２ｂに対して十分に離間した距離Ｌ１，Ｌ２を有した矩形状のエリアである。
【００１０】
第１拡張横行エリアＥＲ１は、連鋳機のスイングタワー１６を配置した位置の上方であってランウェイガーダー２ａに近接するように横行方向に拡張したエリアである。
また、第２拡張横行エリアＲＥ２は、搬送台車１８が停車する位置の上方であってランウェイガーダー２ｂに近接するように横行方向に拡張したエリアである。
前述した移動制限手段は、クラブトロリー１０の横行方向の移動を機械的に制限する機械的制限手段と、クラブトロリー１０の位置をセンサで確認して、クレーン本体８及びクラブトロリー１０を走行方向、横行方向に移動させる駆動部の制御を行なう電機的制限手段とで構成されている。
【００１１】
機械的制限手段は、図４に示すように、クレーン本体８上を移動するクラブトロリー１０の車輪１０ａが転動する転動路の途中に設けたストッパ２０である。ストッパ２０は、図３に示すように、第１拡張横行エリアＥＲ１に位置するクラブトロリー１０が、この第１拡張横行エリアＥＲ１よりランウェイガーダー２ａ側の領域外に移動しようとするのを制限するとともに、第２拡張横行エリアＥＲ２に位置するクラブトロリー１０が、第２拡張横行エリアＥＲ２よりランウェイガーダー２ｂ側の領域外に移動しようとするのを制限する。
【００１２】
電機的制限手段は、図５に示すように、クラブトロリー１０の走行方向の位置を検出する走行方向センサ２２と、クラブトロリー１０の横行方向の位置を検出する横行方向センサ２４と、走行方向センサ２２及び横行方向センサ２４からの位置情報に基づいて演算処理を行なうとともに、クレーン本体８を走行方向に移動させるクレーン本体駆動部２６及びクラブトロリー１０を横行方向に移動させるクラブ駆動部２８のｏｎ，ｏｆｆ制御を行なう演算・制御装置３０とを備えている。なお、走行方向センサ２２及び横行方向センサ２４は、磁気近接スイッチ等の非接触式センサが使用されている。
【００１３】
演算・制御装置３０は、走行方向センサ２２及び横行方向センサ２４から得た位置情報と、予め記憶している走行・横行エリアＥＲ、第１拡張横行エリアＥＲ１、第２拡張横行エリアＥＲ２とを比較し、クラブトロリー１０の位置がエリアＥＲ、ＥＲ１、ＥＲ２の範囲内であればクレーン本体駆動部２６及びクラブ駆動部２８を駆動させるｏｎ信号を出力し、クラブトロリー１０の位置がエリアＥＲ、ＥＲ１、ＥＲ２の範囲外であればクレーン本体駆動部２６及びクラブ駆動部２８を停止させるｏｆｆ信号を出力する。
【００１４】
図６は、走行・横行エリアＥＲの一部と、第１拡張横行エリアＥＲ１を示すとともに、第１拡張横行エリアＥＲ１近くの移動制限を示す。前述した電機的制御手段は、矢印Ａ１，Ａ２で示す走行・横行エリアＥＲと第１拡張横行エリアＥＲ１との間のクラブトロリー１０の横行方向の移動、矢印Ａ３で示す第１拡張横行エリアＥＲ１内のクレーン本体８の走行方向の移動は、クレーン本体駆動部２６及びクラブ駆動部２８に対してｏｎ信号を出力することで移動を許容する。また、矢印Ａ４で示す第１拡張横行エリアＥＲ１の外側から第１拡張横行エリアＥＲ１内へのクレーン本体８の走行方向の移動、矢印Ａ５で示す走行・横行エリアＥＲの外側から走行・横行エリアＥＲ内へのクレーン本体８の走行方向の移動も許容する。
【００１５】
しかし、矢印Ａ６で示す第１拡張横行エリアＥＲ１内から第１拡張横行エリアＥＲ１の外側へのクレーン本体８の走行方向の移動は、クレーン本体駆動部２６及びクラブ駆動部２８に対してｏｆｆ信号を出力することで移動を制限する。また、矢印Ａ７で示す横行エリアＥＲ内から走行・横行エリアＥＲの外側へのクレーン本体８の走行方向の移動も制限する。
【００１６】
さらに、矢印Ａ８で示す第１拡張横行エリアＥＲ１よりランウェイガーダー２ａ側の領域外にクラブトロリー１０が横行方向しようとするのを、機械的制限手段であるクレーン本体８上に設けたストッパ２０が制限する。
したがって、本実施形態によると、吊り能力を増大させるためにレードルクレーンランウェイを補強する際には、クラブトロリー１０が走行方向及び横行方向に移動する範囲を制限し、クラブトロリー１０が近接する位置のランウェイガーダー２ａ，２ｂのみに補強を行えば良いので、補強の工期が少なくて済み、コストも大幅に低減することができる。
【００１７】
また、クラブトロリー１０の移動範囲を制限する移動制限手段は、クラブトロリー１０の横行方向の移動を機械的に制限する機械的制限手段と、クラブトロリー１０の位置をセンサで確認して、クレーン本体８及びクラブトロリー１０を走行方向、横行方向に移動させる駆動部の制御を行なう電機的制限手段とで構成されているので、クラブトロリー１０の移動を制限する機構の簡便化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本発明に係る天井走行クレーンを走行方向から示した図である。
【図２】本発明に係る天井走行クレーンを平面的に示した図である。
【図３】本発明に係る天井走行クレーンのクラブトロリーの走行方向及び横行方向の移動範囲を示す図である。
【図４】本発明に係る天井走行クレーンで採用した機械的制限手段を示す図である。
【図５】本発明に係る天井走行クレーンで採用した電機的制限手段の構成を示す図である。
【図６】本発明に係る天井走行クレーンにおいてクラブトロリーが走行方向及び横行方向の移動範囲で移動する領域を示す図である。
【符号の説明】
【００１９】
２ａ，２ｂ ランウェイガーダー
８ クレーン本体
１０ クラブトロリー
１２ 巻き上げ装置
１４ レードル
２０ ストッパ（機械的制限手段）
２２ 走行方向センサ（センサ手段）
２４ 横行方向センサ（センサ手段）
２６ クレーン本体駆動部
２８ クラブ駆動部
３０ 演算・制御装置（演算・制御手段）
【技術分野】
【０００１】
本発明は、吊り能力の増大により天井走行クレーンランウェイを補強する方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
天井走行クレーンとして、例えば製鉄所の転炉、鋳造工程などにおいて溶銑を貯留したレードル（取鍋）を吊り上げて運搬するレードルクレーンがある。
このレードルクレーンは、天井付近で互いに平行に延在している少なくとも一対のランウェイガーダーと、これらランウェイガーダーの間に架け渡されて走行方向に移動するクレーン本体と、このクレーン本体上に搭載され、走行方向に対して水平に直交する横行方向に移動するクラブトロリーとを備えており、クラブトロリーには、フックで係合したレードルを昇降させる巻上げ装置が搭載している（例えば、特許文献１を参照）。
【特許文献１】特開平６−２２１９６９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
ところで、クラブトロリーの巻き上げ装置の吊り荷重を増大する（吊り能力を増大させる）工事を既存のレードルクレーンに対して行なう場合には、ランウェイガーダーの支持荷重が、クレーン（クレーン本体＋クラブトロリー）の自重とレードルの最大荷重の和となるように、ランウェイガーダーの全域を補強する工事が行なわれている。
しかし、このようなランウェイガーダー全域の補強工事は、工期とコストが大幅に嵩むという問題がある。
そこで、本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、吊り能力を増大させるために天井走行クレーンランウェイを補強する際に、工期の短縮、低コストを図ることができる天井走行クレーンランウェイの補強方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００４】
本発明の天井走行クレーンランウェイの補強方法は、天井付近で互いに平行に延在している少なくとも１対のランウェイガーダーと、これらランウェイガーダーの間に架け渡されて走行方向に移動するクレーン本体と、このクレーン本体上に搭載され、前記走行方向に対して水平に直交する横行方向に移動するクラブトロリーとを備えた天井走行クレーンを、吊り能力の増大により補強する方法において、前記クラブトロリーの走行方向及び横行方向の移動範囲を制限する移動制限手段を設けるとともに、この移動制限手段により横行方向の移動が制限されて前記クラブトロリーが近接せず、支持荷重が増大しないランウェイガーダーに対しては補強を行なわず、前記移動制限手段による横行方向の移動が制限されず、前記クラブトロリーが近接することで支持荷重が増大するランウェイガーダーに対して補強を行なうようにしたことを特徴とする方法である。
【０００５】
ここで、前記移動制限手段は、前記クラブトロリーの横行方向の移動を機械的に制限する機械的制限手段と、前記クレーン本体及び前記クラブトロリーを移動させる駆動部を、前記クラブトロリーの位置情報に基づいて電機的に制御する電機的制限手段とを備えていることが好ましい。
また、前記電機的制限手段は、前記クラブトロリーの走行方向及び横行方向の位置を検出するセンサ手段と、このセンサ手段から得た位置情報と予め設定した前記クラブトロリーの走行方向及び横行方向の移動範囲との比較により、前記クレーン本体及び前記クラブトロリーを移動させる駆動部のｏｎ，ｏｆｆ制御を行なう演算・制御手段とを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【０００６】
本発明に係る天井走行クレーンランウェイの補強方法によると、吊り能力の増大により天井走行クレーンランウェイを補強する際に、クラブトロリーの走行方向及び横行方向の移動範囲を制限する移動制限手段を設けるとともに、この移動制限手段により横行方向の移動が制限されて前記クラブトロリーが近接せず、支持荷重が増大しないランウェイガーダーに対しては補強を行なわず、前記移動制限手段による横行方向の移動が制限されず、前記クラブトロリーが近接することで支持荷重が増大するランウェイガーダーに対してのみ補強を行なえばよいので、補強の工期短縮、コストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００７】
以下、本発明に係る天井走行クレーンについて、図面を参照しながら説明する。
図１及び図２は、本発明に係る１実施形態の連続鋳造設備に配置したレードルクレーンを示すものであり、図１はレードルクレーンを走行方向から示し、図２は、レードルクレーンを平面的に示した図である。
図１に示すように、本実施形態のレードルクレーンは、天井付近で互いに平行に水平方向に延在しているＨ型鋼からなるランウェイガーダー２ａ，２ｂと、ランウェイガーダー２ａ，２ｂ上に配置したレール４ａ，４ｂと、レール４ａ，４ｂ上に車輪６ａ，６ｂが乗った状態でランウェイガーダー２ａ，２ｂの間に架設されて走行方向に移動するクレーン本体８と、クレーン本体８上に搭載されて横行方向に移動するクラブトロリー１０と、クラブトロリー１０上に搭載されている巻き上げ装置１２とを備えている。巻き上げ装置１２は、フック１２ａで係合したレードル１４を昇降させる装置である。
そして、図２に示すように、一方のランウェイガーダー２ａの所定の長手方向位置の下方には、連鋳機のスイングタワー１６が配置されているとともに、他方のランウェイガーダー２ａの所定の長手方向位置の下方には、レードル１４を他の場所へ搬送する搬送台車１８が停車している。
【０００８】
次に、吊り能力を増大させる（巻き上げ装置１２の吊り荷重を増大させる）ために、上記構成のレードルクレーンランウェイを補強する方法について、図３から図６を参照して説明する。
本実施形態の補強方法は、クラブトロリー１０が走行方向及び横行方向に移動する範囲を、後述する移動制限手段により、図３の破線で示す走行・横行エリアＥＲ、第１拡張横行エリアＥＲ１及び第２拡張横行エリアＥＲ２に制限しているとともに、第１拡張横行エリアＥＲ１及び第２拡張横行エリアＥＲ２のように、クラブトロリー１０が近接する位置のランウェイガーダー２ａ，２ｂのみに、クレーン本体８及びクラブトロリー１０の荷重と、吊り能力を増大させた分の荷重を加えたレードルの最大荷重との和と同等の支持荷重となる補強を行なっている（図３の補強を行なう部分、補強無しの部分のランウェイガーダー２ａ，２ｂを参照）。
【０００９】
すなわち、ランウェイガーダー２ａの補強位置は、連鋳機のスイングタワー１６が配置されている近傍であり、ランウェイガーダー２ｂの補強位置は、レードル１４を他の場所へ搬送する搬送台車１８が停車する位置の近傍である。
走行・横行エリアＥＲは、ランウェイガーダー２ａ，２ｂに対して十分に離間した距離Ｌ１，Ｌ２を有した矩形状のエリアである。
【００１０】
第１拡張横行エリアＥＲ１は、連鋳機のスイングタワー１６を配置した位置の上方であってランウェイガーダー２ａに近接するように横行方向に拡張したエリアである。
また、第２拡張横行エリアＲＥ２は、搬送台車１８が停車する位置の上方であってランウェイガーダー２ｂに近接するように横行方向に拡張したエリアである。
前述した移動制限手段は、クラブトロリー１０の横行方向の移動を機械的に制限する機械的制限手段と、クラブトロリー１０の位置をセンサで確認して、クレーン本体８及びクラブトロリー１０を走行方向、横行方向に移動させる駆動部の制御を行なう電機的制限手段とで構成されている。
【００１１】
機械的制限手段は、図４に示すように、クレーン本体８上を移動するクラブトロリー１０の車輪１０ａが転動する転動路の途中に設けたストッパ２０である。ストッパ２０は、図３に示すように、第１拡張横行エリアＥＲ１に位置するクラブトロリー１０が、この第１拡張横行エリアＥＲ１よりランウェイガーダー２ａ側の領域外に移動しようとするのを制限するとともに、第２拡張横行エリアＥＲ２に位置するクラブトロリー１０が、第２拡張横行エリアＥＲ２よりランウェイガーダー２ｂ側の領域外に移動しようとするのを制限する。
【００１２】
電機的制限手段は、図５に示すように、クラブトロリー１０の走行方向の位置を検出する走行方向センサ２２と、クラブトロリー１０の横行方向の位置を検出する横行方向センサ２４と、走行方向センサ２２及び横行方向センサ２４からの位置情報に基づいて演算処理を行なうとともに、クレーン本体８を走行方向に移動させるクレーン本体駆動部２６及びクラブトロリー１０を横行方向に移動させるクラブ駆動部２８のｏｎ，ｏｆｆ制御を行なう演算・制御装置３０とを備えている。なお、走行方向センサ２２及び横行方向センサ２４は、磁気近接スイッチ等の非接触式センサが使用されている。
【００１３】
演算・制御装置３０は、走行方向センサ２２及び横行方向センサ２４から得た位置情報と、予め記憶している走行・横行エリアＥＲ、第１拡張横行エリアＥＲ１、第２拡張横行エリアＥＲ２とを比較し、クラブトロリー１０の位置がエリアＥＲ、ＥＲ１、ＥＲ２の範囲内であればクレーン本体駆動部２６及びクラブ駆動部２８を駆動させるｏｎ信号を出力し、クラブトロリー１０の位置がエリアＥＲ、ＥＲ１、ＥＲ２の範囲外であればクレーン本体駆動部２６及びクラブ駆動部２８を停止させるｏｆｆ信号を出力する。
【００１４】
図６は、走行・横行エリアＥＲの一部と、第１拡張横行エリアＥＲ１を示すとともに、第１拡張横行エリアＥＲ１近くの移動制限を示す。前述した電機的制御手段は、矢印Ａ１，Ａ２で示す走行・横行エリアＥＲと第１拡張横行エリアＥＲ１との間のクラブトロリー１０の横行方向の移動、矢印Ａ３で示す第１拡張横行エリアＥＲ１内のクレーン本体８の走行方向の移動は、クレーン本体駆動部２６及びクラブ駆動部２８に対してｏｎ信号を出力することで移動を許容する。また、矢印Ａ４で示す第１拡張横行エリアＥＲ１の外側から第１拡張横行エリアＥＲ１内へのクレーン本体８の走行方向の移動、矢印Ａ５で示す走行・横行エリアＥＲの外側から走行・横行エリアＥＲ内へのクレーン本体８の走行方向の移動も許容する。
【００１５】
しかし、矢印Ａ６で示す第１拡張横行エリアＥＲ１内から第１拡張横行エリアＥＲ１の外側へのクレーン本体８の走行方向の移動は、クレーン本体駆動部２６及びクラブ駆動部２８に対してｏｆｆ信号を出力することで移動を制限する。また、矢印Ａ７で示す横行エリアＥＲ内から走行・横行エリアＥＲの外側へのクレーン本体８の走行方向の移動も制限する。
【００１６】
さらに、矢印Ａ８で示す第１拡張横行エリアＥＲ１よりランウェイガーダー２ａ側の領域外にクラブトロリー１０が横行方向しようとするのを、機械的制限手段であるクレーン本体８上に設けたストッパ２０が制限する。
したがって、本実施形態によると、吊り能力を増大させるためにレードルクレーンランウェイを補強する際には、クラブトロリー１０が走行方向及び横行方向に移動する範囲を制限し、クラブトロリー１０が近接する位置のランウェイガーダー２ａ，２ｂのみに補強を行えば良いので、補強の工期が少なくて済み、コストも大幅に低減することができる。
【００１７】
また、クラブトロリー１０の移動範囲を制限する移動制限手段は、クラブトロリー１０の横行方向の移動を機械的に制限する機械的制限手段と、クラブトロリー１０の位置をセンサで確認して、クレーン本体８及びクラブトロリー１０を走行方向、横行方向に移動させる駆動部の制御を行なう電機的制限手段とで構成されているので、クラブトロリー１０の移動を制限する機構の簡便化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本発明に係る天井走行クレーンを走行方向から示した図である。
【図２】本発明に係る天井走行クレーンを平面的に示した図である。
【図３】本発明に係る天井走行クレーンのクラブトロリーの走行方向及び横行方向の移動範囲を示す図である。
【図４】本発明に係る天井走行クレーンで採用した機械的制限手段を示す図である。
【図５】本発明に係る天井走行クレーンで採用した電機的制限手段の構成を示す図である。
【図６】本発明に係る天井走行クレーンにおいてクラブトロリーが走行方向及び横行方向の移動範囲で移動する領域を示す図である。
【符号の説明】
【００１９】
２ａ，２ｂ ランウェイガーダー
８ クレーン本体
１０ クラブトロリー
１２ 巻き上げ装置
１４ レードル
２０ ストッパ（機械的制限手段）
２２ 走行方向センサ（センサ手段）
２４ 横行方向センサ（センサ手段）
２６ クレーン本体駆動部
２８ クラブ駆動部
３０ 演算・制御装置（演算・制御手段）
【特許請求の範囲】
【請求項１】
天井付近で互いに平行に延在している少なくとも１対のランウェイガーダーと、これらランウェイガーダーの間に架け渡されて走行方向に移動するクレーン本体と、このクレーン本体上に搭載され、前記走行方向に対して水平に直交する横行方向に移動するクラブトロリーとを備えた天井走行クレーンを、吊り能力の増大により補強する方法において、
前記クラブトロリーの走行方向及び横行方向の移動範囲を制限する移動制限手段を設けるとともに、この移動制限手段により横行方向の移動が制限されて前記クラブトロリーが近接せず、支持荷重が増大しないランウェイガーダーに対しては補強を行なわず、前記移動制限手段による横行方向の移動が制限されず、前記クラブトロリーが近接することで支持荷重が増大するランウェイガーダーに対して補強を行なうようにしたことを特徴とする天井走行クレーンランウェイの補強方法。
【請求項２】
前記移動制限手段は、前記クラブトロリーの横行方向の移動を機械的に制限する機械的制限手段と、前記クレーン本体及び前記クラブトロリーを移動させる駆動部を、前記クラブトロリーの位置情報に基づいて電機的に制御する電機的制限手段とを備えていることを特徴とする請求項１記載の天井走行クレーンランウェイの補強方法。
【請求項３】
前記電機的制限手段は、前記クラブトロリーの走行方向及び横行方向の位置を検出するセンサ手段と、このセンサ手段から得た位置情報と予め設定した前記クラブトロリーの走行方向及び横行方向の移動範囲との比較により、前記クレーン本体及び前記クラブトロリーを移動させる駆動部のｏｎ，ｏｆｆ制御を行なう演算・制御手段とを備えていることを特徴とする請求項２記載の天井走行クレーンランウェイの補強方法。
【請求項１】
天井付近で互いに平行に延在している少なくとも１対のランウェイガーダーと、これらランウェイガーダーの間に架け渡されて走行方向に移動するクレーン本体と、このクレーン本体上に搭載され、前記走行方向に対して水平に直交する横行方向に移動するクラブトロリーとを備えた天井走行クレーンを、吊り能力の増大により補強する方法において、
前記クラブトロリーの走行方向及び横行方向の移動範囲を制限する移動制限手段を設けるとともに、この移動制限手段により横行方向の移動が制限されて前記クラブトロリーが近接せず、支持荷重が増大しないランウェイガーダーに対しては補強を行なわず、前記移動制限手段による横行方向の移動が制限されず、前記クラブトロリーが近接することで支持荷重が増大するランウェイガーダーに対して補強を行なうようにしたことを特徴とする天井走行クレーンランウェイの補強方法。
【請求項２】
前記移動制限手段は、前記クラブトロリーの横行方向の移動を機械的に制限する機械的制限手段と、前記クレーン本体及び前記クラブトロリーを移動させる駆動部を、前記クラブトロリーの位置情報に基づいて電機的に制御する電機的制限手段とを備えていることを特徴とする請求項１記載の天井走行クレーンランウェイの補強方法。
【請求項３】
前記電機的制限手段は、前記クラブトロリーの走行方向及び横行方向の位置を検出するセンサ手段と、このセンサ手段から得た位置情報と予め設定した前記クラブトロリーの走行方向及び横行方向の移動範囲との比較により、前記クレーン本体及び前記クラブトロリーを移動させる駆動部のｏｎ，ｏｆｆ制御を行なう演算・制御手段とを備えていることを特徴とする請求項２記載の天井走行クレーンランウェイの補強方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２００７−２６９４６５（Ｐ２００７−２６９４６５Ａ）
【公開日】平成１９年１０月１８日（２００７．１０．１８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−９８５６４（Ｐ２００６−９８５６４）
【出願日】平成１８年３月３１日（２００６．３．３１）
【出願人】（０００００１２５８）ＪＦＥスチール株式会社 (8,589)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年１０月１８日（２００７．１０．１８）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年３月３１日（２００６．３．３１）
【出願人】（０００００１２５８）ＪＦＥスチール株式会社 (8,589)
【Ｆターム（参考）】
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