説明

天地支持装置

【課題】 建物の屋根や庇と地盤間・天井と家具等の天地間・床下の大引きと地盤間、その他建造物の天地間を支持する装置として、汎用性があり且つ加工性や施工性を高めること。
【解決手段】 天(地)側の押えプレートには右ネジだけの長ボルトが組み付けられ、地(天)側の押えプレートには右雌ネジの長パイプが溶着され、長ボルトと雌ネジとを螺合させて一体の装置とすることにより、設置時やメンテナンス時においては高さ調節が容易となって加工性・施工性が高められ、更に、使用用途によって異なる高さと荷重や強度に対しては、材質,肉厚,長さ,外径等を加味した各部材を用意することによって汎用性のある天地支持装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根や庇と地盤間・天井と家具等の天地間・床下の大引きと地盤間・その他建造物の天地間に立設される天地支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天井と家具等の天地支持装置として一般的に樹脂製や鋼製のものが普及しているが、近年、高さ調節に対して上下に2本の同一ネジ方向のボルトを夫々にネジ回しして高さ調節をする構造が知られている。
【0003】
例えば、特許公開平8−308661号公報について高さ調節の技術を見ると、上下に2本の同一ネジ方向のボルトを夫々にネジ回しする技術と、上下夫々に右ネジ左ネジを配して高さ調節をする所謂ターンバックル方式の技術を開示している。
【0004】
又、床下の支持装置として、こちらも樹脂製や鋼製のものが普及しているが、高さ調節に関してはボルトの上下にそれぞれ右ネジと左ネジを施して高さ調節するターンバックル方式を用いた構造が大半である。
【0005】
例えば、本出願人の発明になる特開2002−147001号公報について見ると、上下プレートに夫々パイプを溶着し、該2本のパイプのうち1本は右ネジを、もう1本には左ネジを施し、中間の螺合用ボルトには左右に夫々左ネジと右ネジが施され、ターンバックル方式でパイプを上下に高さ調節できるような構造となっている。
【特許文献1】特許公開平8−308661号公報
【特許文献2】特開2002−147001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0003]に示した特許公開平8−308661号公報においては、上下に2本のボルトを、中間に使用される木製パイプには上下に2個の螺合用雌ネジを固着する構造であるが、部品点数と加工工数の両面からコスト高となってしまう。
【0007】
また、特許公開平8−308661号公報及び特開2002−147001号公報に見られるターンバックル方式ではパイプとボルト夫々に右ネジと左ネジを別々に加工しなければならず、加工工数が2倍もかかりこちらも高価格になるってしまうという問題がる。
【0008】
更に、特開2002−147001号公報に見られるボルトのゆるみ防止の部品として、突起を設けたナットであるがこちらも特殊加工のため、市販ナットよりも割高となってしまうという欠点があった。
【0009】
又、上記公報に限らず、この種の支持装置は床下の支持としてだけとか、あるいは家具等の転倒防止だけを目的とした限定的なものであり、汎用性を考慮していないという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の天地支持装置は、[0006]〜[0009]に指摘した様々の欠点を改良し、使用範囲を限定せず広く汎用性のある支持装置として、屋根や庇と地盤間,天井と家具等の天地間,床下の大引きと地盤間,その他建造物の天地間の支持に用いられる天地支持装置であって、天地面には夫々押えプレートが配され、押えプレートの中間は右ネジのみで長ボルトと長パイプが螺合されて支柱軸をなし、天地面の一方の押えプレートには長ボルト挿通用に穿孔されて長ボルトの頭部が収まる程度の深さをもたせた半球形エンボスを施し、該長ボルト挿通後 ナットを半球形エンボスのところまで螺合させて後、該長ボルトとナットを一体化させる措置を講じ、一体化されたナットと長ボルトは半球形エンボスを挟んで高さ調節のために若干の遊びをもたせて空転できる構造とし、前記天地面のもう一方の押えプレートは中心部で長パイプと一体化され、一体化された長パイプの上部位で前記長ボルトと螺合されて一体の支持装置とされていることを特徴とする天地支持装置を提供する。
【0011】
本発明の天地支持装置を立設するに当り、前記長ボルトには2個のナットで互いに締め付けて長ボルトと一体化される構造とした場合の2個のうちの1個は、ゆるみ防止用のナットとして用いられるナットが螺合された後、前記長パイプに螺合されて適宜の高さに右ネジのみで調節され、さらに前記ゆるみ防止用ナットを長パイプ端部の雌ネジとで上下互いに絞めつけてゆるみ止めをなして一体化され、天地を反転しても装置の機能に支障なく使用できることを特徴とする天地支持装置を提供する。
【0012】
本発明の天地支持装置は、「右ネジのみの構造として押えプレートを天と地に固定した場合、上下の高さ調節が出来なくなる」ことへの対策として、押ええプレートのエンボスを挟んで長ボルトが空回りできる構造とするが、具体的には、エンボスに長ボルトが挿通きるように穿孔を施し、この孔を挿通した長ボルトには2個のナットがエンボスの頂上部で若干の遊びをもたせて螺合され、(1)螺合された2個のナットは互いに締め付け合って長ボルトと一体化する、(2)プレスによって2個のナットのうちエンボス側の1個を圧殺して一体化する、(3)2個のナットのうちエンボス側の1個を長ボルトに熔接する、(4)エンボスから出ている長ボルトのネジ部分に接着剤等を塗布してナットと一体化する。等の長ボルトとナットの一体化措置を講じてエンボスを挟んで長ボルトが空回りできる構造とする。
【0013】
又、使用の用途によっての、高さ及び荷重や強度の違いに対しては、長パイプの長さと肉厚と外径とを、長ボルトの長さとネジ径を、その他螺合用ナットや押えプレート等についても必要に応じてネジの径や材質,板厚等の仕様を変更することで対応できる構造とする。
【0014】
又、素材として樹脂,非鉄,ステンレス又は鉄鋼等を装置全体に用いるか、又は部分的に前述のような素材を組合せて用いることが可能であり、鉄鋼の場合の防錆対策としては亜鉛メッキ、グリーンメッキ、ダクロ処理等、又は焼付け塗装等で防錆処理をする。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明による天地支持装置は使用用途によって、材質,板厚,肉厚,長さ,外径,外形形状,ネジ径等を変更することで天地間の高さや耐圧強度等への対応が可能であり、本装置の取り付け時やメンテナンス等では2本のスパナで調節できる構造であり、従来品に比べて加工性・施工性・汎用性に優れた天地支持装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を[図1][図2]に基づいて説明する。尚、[図1]は本発明の全体正面図であり、[図2]は本発明の天地支持装置が、(1)屋根・庇と地盤間に、(2)天井と家具等の天地間に、(3)床下の大引きと地盤間に取り付けられた状態の姿図である。
【0017】
本発明の天地支持装置[図1]において、[図2](2)天井と家具間に取り付けられる場合での実施例を詳述するが、[図2](1)屋根・庇と地盤間、[図2](3)大引きと土台間、その他天地支持装置を必要とする場所や建造物等によって[0013]で述べたように、材質,板厚,外形形状,外径,ボルト径や長さ,パイプ径と長さ及び肉厚,ネジ径等装置全体のサイズは異なってもよい。
【0018】
天地押えプレート2と3は、天地面にクギ又はビス等で固定されるか、長ボルト4と長パイプ5はネジを逆回転させることによって天と地に押圧される。この押えプレート2と3は例えば、外径φ100mm程度の円形状であり、板厚を2.3mm前後とし、円形の内側10mm〜20mm程のところに固定用の孔2aと3aを4ヶ所程設けている。この押えプレート2及び3の外形は必ずしも同一形状でなくともよいし、円形の他、四角や六角等多角形状を用いても何ら問題はない。
【0019】
この円形状をした押えプレート2と3の中心部には、長ボルト4の頭が納まる程度の高さをもたせた半球形エンボス2bと3bが設けられ、半球形エンボスの頂上には長ボルト貫通用の孔(見え隠れ)を設けてある。但し、押えプレート3については、必ずしも半球形エンボス3bを設ける構造としなくとも良い。
【0020】
又、[0012]で述べたように、「右ネジのみの構造として押えプレートを天と地に固定した場合、上下の高さ調節が出来なくなる」ことの対策として、押ええプレートのエンボスを挟んで長ボルトが空回りできる構造とする。具体的には、エンボスに長ボルト4が挿通きるように穿孔を施し、この孔を挿通した長ボルト4にはナット4aと4bがエンボスの頂上部で若干の遊びをもたせて螺合され、(1)螺合されたナット4aと4bは互いに締め付け合って長ボルトと一体化する、(2)プレスによってエンボス側の4aを圧殺して一体化する、(3)エンボス側のナット4aを長ボルトに熔接する、(4)エンボスから出ている長ボルトのネジ部分に接着剤等を塗布してナット4aと一体化する。等の長ボルトとナット4aの一体化措置を講じてエンボスを挟んで長ボルトが空回りできる構造とし、ナット4aと一体となった長ボルト4は長パイプ[図1]5の雌ネジと螺合され、長ボルト4に装着されているナット4bとで振動等でのゆるみ防止をする。
【0021】
長ボルト4のサイズはM8〜M16の右雄ネジで、長さは50mm〜200mmの範囲とし、天井と家具間の高さと荷重や強度の違いに対応できるサイズを用いることとする。
【0022】
又、押えプレート2と3共に天地面への固定用孔の他に家具や天井への“当たりきず”を防止するウレタン,スポンジ,ゴム,軟質樹脂等のクッション緩衝材6を貼付してもよい。
【0023】
押えプレート3の中心部の上側には、長ボルト4に螺合されるナット5bが長パイプ5の上部位に熔接された状態で長パイプ5の下端で押えプレート3と一体化されている。尚、この押えプレート3の中心部の上側は、円筒突起形状のバーリング(見え隠れ)を施して、前記長パイプを嵌合した後に一体化できる構造としてもよい。
【0024】
この長パイプ5のサイズは、例えば外径を10mm〜26mm,肉厚を1mm〜2mm,長さは100mm〜1200mmの範囲で天井と家具間の、高さと荷重や強度の違いに対応できるサイズとする。又、この支持装置自体の現場での調節の可動範囲は1mm〜150mmとするのが適当である。
【0025】
次に、本発明の天地支持装置の現場における設置方法について説明する。本発明の天地支持装置は全体として、(1)上押えプレート2と長ボルト4と、(2)下押えプレート3と長パイプ5、の2部材で構成され、現場施工で支柱軸となる長ボルト4と長パイプ5を螺合して一体の支持装置となる。但し、使用用途によって高さと荷重や強度が異なるため、事前に最も現場に適応したサイズの装置を用意することが好ましい例である。
【0026】
現場施工ではまず2本のスパナを用意し、1本のスパナはナット4aに装填し、もう1本は長パイプ5に溶着されたナット5aに装填して、押えプレート2と3が夫々天地に接地押圧するまで逆ネジ回して押圧固定するか、クギ・ビス・ボルト・接着剤等で固定する。
【0027】
次に、長ボルト4に装着されているナット4bを長パイプ5に溶着されたナット5aに螺接するまでネジ回し、2本のスパナで二つのナットを上下互いに締めつけ、ゆるみ止めの措置をする。
【0028】
本発明の天地支持装置は[0025]で述べたように一体の支持装置であり、上押えプレート部と下押えプレート部の2部材で構成されているが、上押えプレート部と下押えプレート部を天地反転して使用することは一向に差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態による天地支持装置の正面図である。
【図2】本発明の実施形態による天地支持装置の現場での納まり姿図(1)(2)(3)である。
【符号の説明】
【0030】
1 天地支持装置
2 上押えプレート
2a 固定用孔
2b 半球形エンボス
3 下押えプレート
3a 固定用孔
3b 半球形エンボス
4 長ボルト
4a 一体化用ナット
4b 締め付け用ナット
5 長パイプ
5a 長ボルト螺合用ナット
6 クッション緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根や庇と地盤間,天井と家具等の天地間,床下の大引きと地盤間,その他建造物の天地間の支持に用いられる天地支持装置であって、天地面には夫々押えプレートが配され、押えプレートの中間は右ネジのみで長ボルトと長パイプが螺合されて支柱軸をなし、天地面の一方の押えプレートには長ボルト挿通用に穿孔されて長ボルトの頭部が収まる程度の深さをもたせた半球形エンボスを施し、該長ボルト挿通後 ナットを半球形エンボスのところまで螺合させて後、該長ボルトとナットが一体化される措置を講じ、一体化されたナットと長ボルトは半球形エンボスを挟んで若干の遊びをもたせて、高さ調節のために空転できる構造とし、前記天地面のもう一方の押えプレートは中心部で長パイプと一体化され、一体化された長パイプの上部位で前記長ボルトと螺合されて一体の支持装置とされることを特徴とする天地支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の天地支持装置を立設するに当り、前記長ボルトには2個のナットで互いに締め付けて長ボルトと一体化される構造とした場合の2個のうちの1個はゆるみ防止用のナットとして用いられるナットが螺合された後、前記長パイプに螺合されて適宜の高さに右ネジのみで調節され、さらに前記ゆるみ防止用ナットを長パイプ端部の雌ネジとで上下互いに絞めつけてゆるみ止めをなして一体化され、天地を反転しても装置の機能に支障なく使用できることを特徴とする天地支持装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−141745(P2006−141745A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336910(P2004−336910)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(598156011)有限会社星野企画 (4)
【出願人】(598169837)
【Fターム(参考)】